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Ⅲ.ゴールキーパーを指導する際の留意点
Ⅲ.ゴールキーパーを指導する際の留意点 (1)導入期 10歳∼12歳 ①フィールドプレーを重視して行う ゴールキーパーにもフィールドプレーヤーのスキルが求められてきていることから、導入期(小学生 時代)ではとくにフィールドプレーヤーと同様のトレーニングを重視する必要があります。その時期に フィールドプレーヤーのスキルを身に付けることは、将来良いゴールキーパーになるための基礎をつく ることになります。 ②チーム全員がゴールキーパーを経験する ゴールキーパーがフィールドプレーヤーと同様のトレーニングを行う必要があると述べてきました が、逆にフィールドプレーヤーがゴールキーパーを経験することもフィールドプレーヤーにとって必ず 役立ってきます。 ゴールキーパーを経験することでフィールドプレーヤー側からの見方が理解でき,試合でのゴールキ ーパーとの関係を考える際にひとつの参考になります。また、ゴールキーパーを行ってみることで、ゴ ールキーパーをやりたいという気持ちが生まれる選手も出てくるかもしれません。 ③さまざまな球技スポーツを取り入れる さまざまな球技スポーツを取り入れることによって、選手たちはさまざまな動きをすることになりま す。どうしてもゴールキーパーの動きだけでは動きの質が偏ってしまいます。 さらに種目によっては両手を使うことが必要となり、そのことで両手が自由に使えるようになります。 両手が自由に使えるということは、ゴールキーパーにとって非常に大切なことです。さまざまな球技ス ポーツを取り入れることは、ゴールキーパーの運動感覚を向上させるのに大いに役立つのです。 (2)自立のための準備期 12歳∼15歳(基礎要素徹底期)、16∼17歳 ①ゴール前でトレーニングを行う 小学生から中学生になると、ゴールの大きさが変わります。ゴールキーパーにとって、ゴールの大き さを感覚として身につけていることは重要なことです。その感覚を身につけるために、トレーニングは できる限りゴール前で行うことが求められます。 ②段階的指導を行う 選手のレベルや年齢に応じて,段階的な指導を行うことが必要です。 「6.Ⅱブレイクアウェイ」のトレーニングの中で1対1のトレーニングをあげましたが、その中で はまずラインゴールで1対1を行い、その後、コーンゴール(普通のゴールよりは狭いが)にしていま す。これは段階的指導の一例であるといえます。このように、段階的にレベルをあげていくことも重要 といえます。 ③恐怖心を与えない 恐怖心を持ってしまうと、選手は思い切ったプレーができなくなります。また、正しくない動作や悪い フォームに結びつく要因にもなってしまいます。それによってケガを引き起こしてしまうこともあります。 選手に恐怖心を与えないということは、段階的指導を行うことや場所、用具に配慮することで解決でき ます。たとえば、砂場やマットの上でトレーニングを行ったり、膝当てや肘当てのような用具を着用させ るといったことがあげられます。 ④場所を設定する 場所、つまりボールの位置(角度と距離)を設定することが重要です。シュートにおいて、いつも同じ 地点からのシュートばかりでは、その場所からのシュートに対しては対処できるかもしれませんが、その 他の場所からのシュートに対して対処できるかはわかりません。 ですから、試合中に起こりうる状況を想定して、さまざまな場所からのプレーをトレーニングする必要 があります。 ⑤状況を設定する ここでいう 状況 とは、ボールの状況のことです。場所を設定することが重要であると述べましたが、 同じ場所にボールがあっても、たとえばボールが静止しているのか、動いているのかによってゴールキー パーの対応は変わってきます。ボールが「静止しているのか、動いているのか」 、「グラウンダーなのか、 空中に浮いているのか」 、 「シュートを打つ選手の蹴り足は左なのか、右なのか」といったことを設定して トレーニングを行う必要があります。 ⑥負荷を設定する たとえば、ダイビングを身に付けることを目的としてトレーニングする場合、反復してトレーニングを 行う必要はありますが、十数回も連続でダイビングを行ったら果たして目的は達成されるでしょうか。 最初は正しいフォームを意識して行えるかもしれませんが、最後は恐らく正しいフォームを意識できな くなるでしょう。この場合では体力トレーニングになってしまいます。指導者はトレーニングの目的を考 える必要があります。目的が技術の習得なのか、体力の向上なのか、精神的な面を強調することなのか、 ということを考えなければなりません。 そして、その目的に応じて、強さ、回数、プレーの時間、インターバル(休息の時間)、ベースといっ た点を考慮してトレーニングを設定することが大切です。 ⑦判断を伴うトレーニング ゴールキーパーがフィールドプレーヤーと一緒に行うことによって、判断を伴った実戦に近い状況で トレーニングさせることが可能です。その中で、ディフェンダーへの指示、ポジショニング、ゴールキ ーパー自身のプレーの判断などについて指導していくことが重要です。 ⑧成功して終わる チームの練習において、最後の1点をとったら終わりということがよく見られます。最後の1点をと ってフィールドプレーヤーは気持ちよく終わっていますが、そのとき1人寂しく、悔しい気持ちで終わ っているのはゴールキーパーです。 ゴールキーパーが自信をもってプレーできるようになったり、向上心をもってトレーニングに取り組 むようになるためには、やはり成功することが不可欠です。ですからトレーニングの最後にゴールキー パーも成功して終えるということがゴールキーパーの自信につながっていきます。