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「電子デバイス製造プロセスで使用するエッチングガスの 代替ガス

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「電子デバイス製造プロセスで使用するエッチングガスの 代替ガス
第3回研究評価委員会
資料 3-2-6
「電子デバイス製造プロセスで使用するエッチングガスの
代替ガス・システム及び代替プロセスの研究開発」
事後評価報告書(案)概要
目
次
(頁)
1.分科会委員名簿・・・・・・・・・・・・
1
2.プロジェクト概要・・・・・・・・・・・
2
3.評価概要(案) ・・・・・・・・・・・・・
5
4.評点結果 ・・・・・・・・・・・・・・・
10
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 研究評価委員会
「電子デバイス製造プロセスで使用するエッチングガスの代替ガス・システム
及び代替プロセスの研究開発」(事後評価)
分科会委員名簿
(平成16年3月現在)
氏名
分科会
会長
真壁
分科会
会長代理
田坂
まかべ
としあき
たさか
あきまさ
おの
明政
こういち
斧
高一
たけいち
つとむ
ときまさ
つとむ
竹市
分科会
委員
利明
時政
ふ
わ
不破
むろた
室田
力
勗
やすひろ
保博
じゅんいち
淳一
所属、役職
慶応義塾大学
同志社大学
京都大学
理工学部電子工学科
教授
工学部機能分子工学科
教授
大学院工学研究科
豊橋技術科学大学
広島修道大学
ローム株式会社
東北大学
教授
工学部物質工学系
人間環境学部
教授
学部長(教授)
MIXED-SIGNAL LSI 製造部
電気通信研究所
部長
教授
敬称略、五十音順
事務局:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究評価部
1
プロジェクト概要
作成日
制度・施策(プログラ
ム)名
次世代半導体デバイスプロセス等基盤技術プログラム
事業(プロジェクト)名
電子デバイス製造プロセスで使用する
エッチングガスの代替ガス・システム及
びプロセス技術研究開発
担当推進部/担当者
電子・情報技術開発部/山中崇己
0.事業の概要
Ⅰ.事業の位置付け・必
要性について
プロジェクト番号
平成 16 年 2 月 1 日
P99019
電子デバイス製造プロセスでは、集積回路の微細加工技術として、多層配線構造を形成するた
めのドライエッチング工程が不可欠である。しかし、この電子デバイス製造プロセスのエッチング
工程で使用される PFC ガスは、地球温暖化効果が大きく、地球温暖化防止京都会議において
新たな削減対象物質に指定され、2010 年までにできる限り使用・排出量を削減することが求め
られている。この対策として、エッチング効率・省エネルギー性が高く、かつ地球温暖化効果の少
ない PFC 代替ガスを使用するドライエッチングプロセス技術の研究開発、及びこれらに代替する
新たなドライエッチングプロセス技術の研究開発を行う。
地球温暖化問題に対する各国の認識は非常に高く、COP3 はもとより様々な国際会議において
も議論されている。これらの会議の中で、本分野における、技術開発を含めた協力体制の必要
性が相互に認識されている。よって、本問題の解決に積極的に取り組むことは、環境問題にお
いて世界に対してリーダーシップをとっていく良い機会となる。
Ⅱ.研究開発マネジメントについて
事業の目標
エッチングプロセスの効率化、ガスの反応性の向上、新プロセスの開発等により、現状エッチン
グに比べ、50%以上のエネルギー消費量の低減を目指すとともに、最終的には、エッチングプロ
セスからの PFC 排出量の大幅な削減を開発目標とする。
主な実施事項
H11fy
H12fy
H13fy
H14fy
H15fy
エッチングガスの使用量の削
減に向けた技術の研究
開発
事業の計画内容
代替ガスを用いるトライエッチ
ング技術の研究開発
低誘電率層間絶縁膜を
用いたドライエッチング技術
の研究開発
新配線構造及びその形
成技術の研究開発
会計・勘定
開発予算
(会計・勘定別に実績
額を記載)
(単位:百万円)
開発体制
情勢変化への対応
H11fy
H12fy
H13fy
H14fy
H15fy
総額
一般会計
特別会計
(電多・高度化・石油)
総予算額
1,500
1,523
1,250
1,500
925
6,698
1,500
1,523
1,250
1,500
925
6,698
経産省担当原課
運営機関
プロジェクトリーダー
商務情報政策局情報通信機器課
新エネルギー・産業技術総合開発機構
委託先
技術研究組合超先端電子技術開発機構
基本計画の変更:平成12年10月、「5.その他の重要事項(1)研究開発成果の取扱
い②知的所有権の扱い」について改訂。
平成14年3月、産構審電子デバイス製造プロセスで使用するエッチングガスの代替ガ
ス・システム及び代替プロセスの研究開発評価検討会の中間評価結果を踏まえ、「研究
開発の目的」について改訂。平成14年3月、省庁再編に伴う経済産業省とNEDOの
役割分担の見直し、プログラム/プロジェクト制度の導入を受けて、研究開発の目的、
内容、目標を統一的に明記する等の改訂。
2
既存のシリコン酸化膜を基本とした層間絶縁膜のドライエッチング技術では、PFC
ガスの使用が必須である。これに対して、ドライエッチング技術の効率を改善すること
により使用するPFCガス量の削減および排出ガスの削減とエネルギー消費量の削減を
図り、また大気中寿命の短いPFC代替ガスを用いたドライエッチング技術を開発し
た。これにより、約40%の省PFC・省エネルギーを実現した。
低誘電率有機層間絶縁膜を用い、アンモニアガスまたは窒素と水素との混合ガスを
エッチングガスに用いたドライエッチング技術を開発し、省PFC効果90%以上、省
エネルギー40%以上を実現した。
ドライエッチング技術を用いない新配線プロセスを開発した。これによる省PFC効
果は100%、省エネルギー効果は50%以上の見込みである。
(1)高効率エッチング技術の研究開発
シリコン酸化膜のエッチング機構を解明し、エッチング条件の最適化を図ることによ
り、加工の選択比、形状を維持したままで、従来のエッチング速度に比較して1.4倍
の高効率エッチング技術を開発した。これは、省PFC、省エネルギー30%に相当す
る効果がある。
Ⅲ.研究開発成果につい
て
(2)代替ガス技術を用いたドライエッチング技術の研究開発
PFC代替ガスの分子構造、分子量、フッ素/炭素比に注目して、PFC代替ガスの
エッチング特性、PFC排気の抑制効果を調べ、PFC代替ガスの選定基準を構築し
た。成果として、直鎖状C4F6ガスの実用化を実現した。
(3)低誘電率有機層間絶縁膜を用いた非PFCドライエッチング技術の研究開発
低誘電率層間絶縁膜を用いる場合、ハードマスク、エッチングストッパーおよび配線
材料である銅の拡散防止膜を必要とする。これらに使用する目的で、比誘電率2.5∼
3.0であり、非PFCガスのドライエッチングで加工できるボラジン・シロキサンポ
リマーを開発した。この新開発ポリマーと市販の有機層間絶縁膜とを組み合わせた構造
により、省PFC効果90%以上、省エネルギー40%以上であり、最大900nm/
minの高速なエッチング速度を有するドライエッチング技術を開発した。
(4)新構造及びそれを用いた配線プロセスの研究開発
プラズマCVD技術、ドライエッチング技術、化学的機械的研磨技術を用いない新配
線形成プロセスを開発した(ライン・ピラープロセスと呼ぶ)。このプロセスは、パター
ニングしたレジストをマスクとして電解めっきで銅を形成する技術と、銅配線および上
下の配線層を接続するためのピラーを形成したウェハに絶縁膜を熱圧着する絶縁膜の貼
り付け技術からなる。これら新開発の技術により省PFC効果100%、省エネルギー
効果50%以上であることを実証した。
Ⅳ.実用化、事業化の見
通しについて
Ⅴ.評価に関する事項
Ⅵ.基本計画に関する事
項
投稿論文
「査読付き」90件、「その他」507件
特
許
「出願済」26件(外国出願9件)、「登録」4件、「実施」0件
シリコン酸化膜の高効率ドライエッチング技術は、研究開発成果を公表し、日本のド
ライエッチング装置メーカが自社の装置開発に応用研究している。順次実用化される見
込み。
PFC代替ガスを用いたドライエッチング技術の研究開発では、直鎖状C4F6ガス
の日本ガスメーカにより、量産化が展開された。
低誘電率層間絶縁膜を用いた非PFCドライエッチング技術の研究開発で開発された
ボラジン・シロキサンポリマー材料は、日本のデバイスメーカに持ち帰り、数年の実用
化研究を経て、実用化することが検討されている。
ライン・ピラープロセスは、日本のデバイスメーカで数年の実用化研究を検討する。
このプロセスで必須の絶縁膜貼り付け技術は、他の用途で実用化研究が開始されてい
る。
評価履歴
平成 13 年度
中間評価実施
評価予定
平成 15 年度
事後評価実施予定
策定時期
平成 11 年 4 月
策定
変更履歴
平成 14 年 4 月
変更
3
「電子デバイス製造プロセスで使用するエッチングガスの
代替ガス・システム及び代替プロセスの研究開発」
プロジェクト全体の研究開発実施体制
総会
監事
技術研究組合
超先端電子技術開発機構
理事会
(プロジェクト運営組織)
理事長
環境エッチング技術研究室
(横浜研究センタ)
副理事長
業務委員会
事務局長
専務理事
技術委員会
参加組合員(略称):13 社
富士通、日立製作所、松下電器産業、三
菱電機、日本電気、三洋電機、シャープ、
ソニー、東芝、アネルバ、日本真空技術、
東京エレクトロン、サムソン電子
研究本部長
環境プロセス技術研究室
(横浜研究センタ)
総務部
環境技術研究部
参加組合員(略称):10 社
富士通、日立製作所、松下電器産業、三
菱電機、日本電気、沖電気工業、三洋電
機、シャープ、ソニー、東芝
省PFC支援委員会
大学
(再委託研究)
4
「電子デバイス製造プロセスで使用するエッチングガスの
代替ガス・システム及び代替プロセスの研究開発」
(事後評価)評価概要(案)
1.総論
1)総合評価
半導体立国の一極である日本が地球温暖化防止に関する京都プロトコル遵守
の姿勢を国内外に表明し、ULSI の超微細加工技術をエッチング効率、省エネル
ギー、地球温暖化ガス排出量削減の諸点から、基礎学術的に解明した点におい
て、本事業はその国際的リーダーシップを含めて高く評価できる。
適切な事業運営の下、今日の実用に供せられる成果から、技術開発の基礎と
なるメカニズムの理解の深ぼり、さらには近未来の画期的な実用技術の展開が
期待できる成果までバランス良く得られており、目標をおおむね達成すると共
に、各企業が実用化を進めていく上での技術基盤を構築したと判断する。
なお、プロジェクトの中間評価にて自主的数値目標(以下、目標)を下方修
正したが、初期にもう少し慎重にサーベイして目標を設定すべきであった。ま
た、材料メーカー、原料メーカーとのコンカレントな研究開発や、装置メー
カーとの連携も検討すべきであった。
2)今後に対する提言
本成果の中には、国家的視点に立って継続的かつ長期的にも研究開発を進め
なければならない極めて重要な技術課題が多く含まれているので、今後とも必
要とされる技術開発には国家資金を投入して実用化を目指して欲しい。
デバイス加工の次世代フェーズは、プラズマプロセス装置から対象とするナ
ノスケールのエッチングと下地のナノスケールデバイス要素までを含んだマル
チスケール下でのデザインテクノロジー開発になるので、計算機支援 CAD の早
急な開発・運用体制を強く求めたい。
実用化技術確立のためには、各企業からの一律人材出向という形でなく、責
任体制の明確化と競争力の発揮しやすい開発システムを望む。
2.各論
1)事業の位置付け・必要性について
電子デバイス製造プロセスにおける PFC(パーフルオロカーボン)の使用を
削減することは、地球温暖化対策推進大綱に基づき必要となっているものであ
り、早急に対策が講じられるべき課題である。付加価値の高い先端電子デバイ
ス製造プロセスの開発が精力的に進められている中、産業界がエッチングガス
削減と代替化、さらにエッチングガスを使用しない微細化・高集積化といった
広範囲な研究開発に取り組むインセンティブは殆どなかったことから、NEDO
5
事業として妥当であると判断する。
地球環境に調和した技術開発が社会のコンセンサスとなり、電子デバイスを
取り巻く経済環境に閉塞感のあった時期に、NEDO がリーダーシップをとり産
学官が一体となって取り組み再生した事業として、その目的も妥当と評価する。
2)研究開発のマネジメントについて
エッチング機構の学術的な解明に重点を置きながら、目標達成度を科学的・
定量的に設定した点は、研究開発のあるべき姿として評価できる。研究開発計
画は良く練られており、現在から近未来まで、また基礎的テーマから実用的、
さらには画期的な実用成果が期待できるテーマまで、バランスよく取り上げて
いる。
代替ガスを安易に探求するシナリオや一部の初期目標は、やや疑問に感じら
れた。しかし、プロジェクトの進捗の過程で、社会情勢の変化に対応して組織
の変更を行い、それぞれの組織が連携しながら機能的に活動したと評価できる。
ただし、材料開発がキーになるテーマについては、事業体制の中に材料メー
カー、原料メーカーの参画をはかり、材料、プロセス、装置のコンンカレント
な研究開発を進めた方が良かった。また、PFC の削減方法などの先行きが見え
ない問題に対しては、中間の見直しの3年は長すぎるので、1 年ごとの短期の見
直しを行うべきであった。
3)研究開発成果について
世界に先駆けてSiO2エッチング機構を物理的に解明し、高エネルギーエッチ
ングに汎用性ある学術的知見を供することで、次世代のナノスケール加工開発
に大きな影響を与える成果を得た。PFCを全く使用しない新しいシステムの構
築に向けては、絶縁膜をSiO2から有機膜あるいは有機−無機ハイブリッド膜に
変更して目標を達成し、さらにライン・ピラープロセスによる配線も実験的に
は成功した。総合的には目標値を 80%以上達成しており、省エネルギー・省
PFCの実現のために、どこに重点を置いて研究開発を進めるべきかという世界
最高レベルの指針を得た。
研究内容がエッチング機構や再結合反応の解明といったサイエンティフィッ
クな要素が多いためか、発表された論文数に比べて取得した特許件数は少な
かった。特に国際出願はもう少し積極的に行うべきであった。
研究会やフォーラムの開催による情報発信は有意義であったが、一般への情
報発信はもう少し積極的に進めた方が良かった。
4)実用化、事業化の見通しについて
現製造技術に基づく改善のテーマは、研究会やフォーラムなどでの情報提供
を通じて、民間企業が適宜実用化開発を行っている。代替エッチングガスとし
6
てのl-C4F6(直鎖状C4F6)は、既に実用化している。
近未来の技術に関しては、プロジェクト終了と同時に即実用化というフェー
ズではないが、技術的ブレークスルーを達成しているので期待できる。エッチ
ングガスを固体であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からその場生成して
エッチングを行うゼロエミッション閉ループシステムは、斬新で魅力的ではあ
るものの実用化には課題もあり、残存PTFEガス処理システムとしての利用価値
が高いであろう。有機膜や有機-無機ハイブリッド膜は好結果が得られているが、
膜の耐久性や塩素エッチングガスの問題が残されている。ライン・ピラープロ
セスは、まだ技術的ハードルが高い。
実用化には、性能対コストの考え方が重要であり、新技術のコスト競争力に
まで踏込んだ議論が必要である。また、環境問題としての側面が強い技術開発
なので、実用化にあたっては、行政からのサポートも必要である。
7
個別テーマに関する評価(1)
エッチン
グガスの
使用量の
削減に向
けた技術
の研究開
発
8
代替ガス
を用いる
ド ラ イ
エッチン
グ技術の
研究開発
成果に関する評価
実用化の見通しに関する評価
今後に対する提言
SiO2 のエッチング機構を学術的に解明し、高エネル
ギーイオン律速過程であるとの結論を世界に先駆けて実
証し、今後のエッチングプロセスの開発基盤となる国際
的に見ても優れた先進性のある成果を得た。エッチング
要素技術やエッチングメカニズムの理解に基づいてプロ
セスを最適化することにより、目標である省PFC(パー
フルオロカーボン)・省エネ 30%をほぼ達成したと判断
する。
イオンビームやプラズマビームによる基礎的なエッチ
ング機構の理解の深ぼりは、世界中を探しても本プロ
ジェクトのみであり、日本発の基礎研究および基礎デー
タによる貢献という観点からも、大変望ましい成果と言
える。
現段階ではビームエッチング実験によるデータに留
まっていることから、今後は実機との整合性を検証する
必要がある。また、汎用性を考慮するならば、イオン
エッチングとラジカルエッチング・デポジションの競争
過程領域の解明にまで踏み込んで欲しかった。
本テーマの成果は、一言でいうとプラズマエッチン
グ機構の理解の深ぼりであり、直接、実用化に関与す
るものではないが、産業界で今後発展するプラズマ
エッチング装置とそのプロセスをデザインする際に基
盤となるデータが得られており、プロセスや装置の開
発に供することによる貢献が期待できる。既に成果の
一部は、装置メーカーによる実用化の検討につながっ
ている。
なお、基礎的データに基づく実用技術開発を促進す
るためには、イオンビームエッチング、プラズマビー
ムエッチング、実際のプラズマエッチング間のデータ
の統一的な比較を可能にする必要がある。
イオンビームやプラズマビームによる基礎的なエッ
チング機構の理解の深ぼりは、より一層重要になると
思われる。我が国が酸化膜エッチングに関して技術覇
権を取ることができた事実を教訓に、学術の解明から
先端技術を基盤技術化する体制を維持して欲しい。さ
らに、基礎研究や基礎データの発信により貢献すると
いう観点からも継続することを望む。
今後は、本研究成果の公表を積極的に行うと同時
に、プラズマプロセスで用いられるイオン種とその反
応性について継続的に研究を進めて欲しい。また、本
研究成果は実機による結果ではないので、得られた知
見との対応性を調べる必要がある。
PFC 代 替 ガ ス 選 定 基 準 を 構 築 し 、 l-C4F6 ( 直 鎖 状
C4F6 )ガスが実用上有効であることを示した。また、
PFCガスによるSiO2層間絶縁膜エッチングにおけるPFC
削減とエッチング技術の高精度化に不可欠な成果を得て
おり、省PFC・省エネ 30%という目標は概ねクリアした
と判断する。
省 PFC の目標は中間評価の段階で 70%から 30%へと
引き下げられているが、当初目標は疑問であり、プロ
ジェクト開始時点で学術サイドから明確な方向性・指針
提示をすべきであった。固体 PTFE(ポリテトラフルオ
ロエチレン)を代替ガスのソースに用いたゼロエミッ
ション閉ループは非常にユニークなアイディアであり評
価できるが、ガス生成速度の制限による適用範囲の見極
めは課題と言える。また、代替ガスの効果等を調べる際
には、目的の代替ガスにより実験を行うべきであった。
代替ガス選定基準とPFC排ガス計測技術は、既に実
用化されている。PFC代替ガスとしてのl-C4F6ガスは、
既にガスメーカーでの量産体制が構築されており、半
導体デバイス量産工場における実用化が期待できる。
固体 PTFE を代替ガスソースとして用いるシステム
の実用化には、ガス生成の高速化など残された課題の
克服や実機での検証などが必要である。
プロセス後の排ガス処理や再利用は産業上の重要課
題となっているので、省エネ問題とも関連して、産官
は大局的な指針を提示すべき時期に来ている。
ゼロエミッション・クローズドエッチングシステム
の開発は、PFC ガス削減のブレークスルーに成り得る
技術なので、今後も何らかの形で研究を継続すること
を望む。実用化可能性の検討は、企業と組んで進めた
方が良い。
プラズマ下流での再合成反応制御の研究と PFC 代替
ガスの研究開発とは密接に関係するので、もっと連携
して研究開発を進めて欲しい。
個別テーマに関する評価(2)
低誘電率
層間絶縁
膜を用い
たドライ
エッチン
グ技術の
研究開発
9
新配線構
造及びそ
の形成技
術の研究
開発
成果に関する評価
実用化の見通しに関する評価
今後に対する提言
新ハードマスク材料として BSP(ボラジンシロキサン
ポリマー)という独創的な材料を開発し、非 PFC エッ
チングのビーム実験により世界初の先見性のある成果を
示して、国内外に強いインパクトを与えた。有機層間絶
縁膜を用いたドライエッチングにおいて、PFC ガスを殆
ど使わずにエッチングマスク形成から有機膜エッチング
まで行っており、目標である省 PFC80%以上、省エネ
40%はクリアしたと判断する。
X線によるパターン露光を想定して、有機膜上にSiO2
膜を用意しているが、今後は、エキシマやBE等により
BSP膜の露光を想定して、このSiO2膜が必要であるか否
かを調べるとともに、BSP膜の耐熱性(400℃以下)、耐
久性やエッチングガスとして塩素利用の妥当性などを検
討する必要がある。また、既に発売されている他材料に
対するアドバンテージを示す必要がある。
実用化には BSP 膜の密着性、プラズマ耐性、耐熱
性、吸湿性、さらに BSP 材料の品質・コストや量産時
の安定供給などを検討する必要がある。クリアすべき
課題は多いが、総合的で的確なアプローチにより実用
化の可能性はあると判断する。
量産工場で用いていくためには、薄膜の信頼性等の
数多くのデータを収集する必要がある。
有機膜あるいは有機−無機ハイブリッド膜の非 PFC
エッチングのビーム実験によるエッチングイールドの
解明は、今後の技術展開に極めて重要なので継続性の
ある研究開発を責任を持って進めることを望む。
実用化には、BSP 膜合成材料について材料・原料
メーカーを巻き込んだ研究開発体制が不可欠である。
BSP 作製時に使用する金属触媒除去技術や他の触媒系
の開発も継続して欲しい。さらに、有機膜との密着性
の解決や、塩素に変わる新しいエッチングガスの探索
も必要である。
微細パターン形成においては、X 線露光以外の露光
手段 (エキシマ、EB) も検討して欲しい。
全く新しいエッチングレスプロセスへの挑戦であり、
独創的であり先進性のある開発テーマとして評価出来
る。PFC を全く使用しないので、実用化できれば地球温
暖化ガス使用量の削減に大いに寄与できる。
意欲的、挑戦的な課題のため完成度は低いが、新配線
構造及びその形成技術としてライン・ピラープロセスを
実現し、課題を把握して将来の技術開発方向も示した。
この分野での大きな研究開発の道筋が出来たことから、
目標である省 PFC 100%・省エネ 50%以上はクリアした
と判断する。
課題として、メッキに耐性のあるレジスト材料の開発
や、シード Cu 加工におけるエッチングメカニズム等の
把握等が挙げられる。
ライン・ピラープロセス技術を実用化するには、
メ ッ キ 耐 性 の あ る レ ジ ス ト の 開 発 や STP ( Spin
coating film Transfer and hot-Pressing)技術のより一
層の加速が必要である。非真空系で湿式メッキと貼り
付けを行う工程を採用するかぎり現時点での実用化は
厳しいが、今後、産業界で実用化を進めていくことを
期待する。
なお、STP 技術は、一般的なプロセス技術・装置と
して研究開発・発展していくことが十分期待できる。
本テーマは、実用化した時のインパクトが最も大き
いので、現時点では完成度は低いが継続して開発する
価値がある。実用化に向けては、材料、プロセス、装
置が一体となった総合的なアプローチが望ましい。
なお、産業界がこの成果を利用出来るようにするた
めには、成果公表や情報提供の体制を構築する必要が
ある。STP 技術については切り離し、独立して開発す
ることも有意義である。
評点結果
2.7
1.事業の位置付け・必要性
2.1
2.研究開発マネジメント
3.研究開発成果
2.0
4.実用化、事業化の見通し
2.0
0.0
1.0
2.0
3.0
平均値
評価項目
平均値
素点(注)
1.事業の位置付け・必要性について
2.7
A
A
A
A
B
A
B
2.研究開発マネジメントについて
2.1
B
A
A
B
B
B
C
3.研究開発成果について
2.0
B
A
A
B
B
C
C
4.実用化、事業化の見通しについて
2.0
B
B
B
B
B
B
B
(注)A=3,B=2,C=1,D=0 として事務局が数値に換算し、平均値を算出。
<判定基準>
(1)事業の位置付け・必要性について
(3)研究開発成果について
・非常に重要
・重要
・概ね妥当
・妥当性がない、又は失われた
・非常によい
・よい
・概ね妥当
・妥当とはいえない
→A
→B
→C
→D
(2)研究開発マネジメントについて
・非常によい
・よい
・概ね適切
・適切とはいえない
→A
→B
→C
→D
(4)実用化、事業化の見通しについて
→A
→B
→C
→D
・明確に実現可能なプランあり
・実現可能なプランあり
・概ね実現可能なプランあり
・見通しが不明
10
→A
→B
→C
→D
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