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神戸行動宣言

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神戸行動宣言
神戸行動宣言
現在地球上の人口の過半数が都市部に居住し、その比率は増加の一途をたどっています。都市部は文化の宝庫であり、
インフラや各種施設が整備が進み、これまで長きにわたって文明の発展を培い、繁栄と成功の機会の象徴です。国の発
展状態にかかわらず、都市部では人々が収入を増やし、政治運動を起こし、教育、健康、社会福祉事業の恩恵を受ける
ための独特の基盤が提供されています。同時に、都市は非正規居住区やスラムに住む人々のニーズに応えなくてはなり
ません。都市化は希望だけでなく健康格差も産み出すのです。
気候変動その他の環境問題(大気汚染など)に対処し、保健医療システム強化に努める一方、都市の多くは、劣悪な
居住条件下の過密状態で発生する感染症疾患、暴力と傷害(交通事故を含む)、不健全なライフスタイル(喫煙、不
健康な食生活、運動不足、過度のアルコール摂取など)に起因する生活習慣病、という三重の脅威に直面しています。
そうした脅威の中でひときわ深刻なのが都市部の健康格差です。しかし、誤解を招くような平均値の使い方のせいで問
題が顕在化していないのが現状です。ほとんどの国において、政府による安全かつ健康的で充実した都会生活に必要な
基本的インフラの構築は、性急で無計画な都市化の速度に追いついていません。都市部における健康格差の根本原因と
その是正対策に関しては、たくさんの証拠が存在します。こうした根本原因のほとんどは保健医療部門の管轄外にあり
ますが、変革を指導・推進して管理責任の役割を担うのは保健医療部門です。
地方自治体は、多くの都市部の健康決定要因に直接的な影響をもち、健康づくりや健康を守る条例の作成と強化を担う
立場にあります。もし行動を起こさなければ、健康格差はますます助長され、よりたくさんの人が様々な疾病や健康問
題に不必要に苦しめられることになるでしょう。都市は全ての住民にとって健康的な場所たりうるのです。そして住民
は、所得、年齢、性別、あるいは国籍の別を問わず、可能な限り高度な健康水準を享受すべきなのです。これを実現す
るには、都市の住民間の健康格差を是正することに特別の注意を払いながら、都市政策が健康に及ぼす影響を考慮する
必要があります。あらゆる状況に通用する万能策は存在しませんが、これまでの経験から、地方自治体がリーダーシッ
プを取りすべての部門の人材や能力を結集することが根本的に重要だと言えます。
「健康」を都市政策の中心に位置付ける機運が熟しつつあります。今こそ、健康リスクを緩和し、保健効果向上が期待
できる革新的で効果的な解決案に向け、あらゆる部門が一致協力して乗り出すべきです。WHOは、プライマリー・ヘル
スケアの再生の呼びかけを通じ、政治的、社会的、経済的に生じた不条理な健康格差を是正すべく、Agenda 21やアル
マアタ国際会議での宣言など、国際的な公約に基づく行動を推進しています。
WHOは、2010年を都市部の健康に関する問題意識を高める年として位置づけ、キャンペーンを展開するとともに、健康
格差是正への都市政策決定者の取り込みに力を入れました。2010年の世界保健デーのテーマ「進行する都会化と健康を
考える」のキャンペーンには、世界中で1500以上の都市が参加しました。これにWHO西太平洋地域委員会の「都市部の
健康解決のための決議」、アメリカ地域における「都市化と健康な生活に関する円卓会議」、南東アジア地域の「都市
化と健康に関するバンコク宣言」などが続き、WHOヨーロッパ地域では「健康都市会議」や「都市部の健康に関する国
www.gfuh.org
「都市化と健康を考える」グローバルフォーラム
際会議」などが開かれ、あらゆる自治体の政策に健康と健康の公平性への支援が集結しつつあります。
2010年11月15日 - 17日
2010年11月15日 - 17日
基本原則
神戸行動宣言
我々、各国政府の指導者、市長その他の「都市化と健康を考える」グローバル・フォーラム出席者
我々、「都市化と健康を考える」グローバル・フォーラムに出席した各国政府の指導者、市長他の出席者は
は、都市保健政策の発展に重要な三大原則を下記に掲げます。
以下の行動を誓います:
1.
健康的な都市作りに向けて、都市部の健康格差を
明らかにし、その是正に取り組みます
都市部の健康を理解するためには、どの住民に、どのような健康問題があり、その
理由は何かを調査することから始まります。これが自治体にとって問題の内容、所
在、最善の対策を理解する糸口となるのです。
•都市の健康と健康の公平性を推進します。
•都市の健康格差を明らかにする細分化されたデータを定期的、恒常的に収集・分析できるようなシステムを開発します。
•多部門協調によってあらゆる都市政策(教育、水質衛生、住宅、喫煙対策、交通や交通安全、身体運動、健康な食習
慣、こころのケアなど)に健康の視点を取り組む(主流化する)ことにより健康の公平性を実現します。
•健康の公平性評価ツールを体系立てて使うことにより健康格差を明らかにし、都市政策や都市でのプログラムが住民の
健康に与える影響について評価します。
都市の健康格差、特に安全な水の不足と衛生状態、生活習慣病などの決定要因調査
•都市計画の策定過程で健康格差を解決する機会を見出し、活用します。
には、信用度の高い測定方法を使うことが重要です。
•住民が十分に情報を得た上で地域社会での政策決定に参加できるメカニズムを活性化させます。
•住民がより健康的な生活を送れるよう、健康リテラシーを奨励します。
2.
多部門連携により健康問題に取り組み、
「健康」の視点をあらゆる都市政策に主流化する
ために指導力を発揮します
全ての自治体の行政機関に対する要求:
•上記の誓いを実行に移すこと。
都市部の健康格差への取り組みにおいて、最も重要な役割を果たすのは自治体で
市民社会に対する要求:
す。自治体には、レベルや分野の異なる行政機関の力を結集して、公平な健康の実
•上記の誓いを実行する自治体をサポートし、かつ積極的に関与すること。
現を、都市政策立案プロセスの中心に据える能力があります。
こうした行動を実現するには、幅広い分野の地元リーダーの支援、健康と健康の公
平性についての共通のビジョン、実施支援体制の整備、政策及びプログラムが健康
に及ぼす影響の測定、市民社会、民間セクターなどの協力者との連携、などが絶対
必要な条件となります。
全ての中央政府に対する要求:
•健康と健康格差の視点をすべての都市政策に組み込むこと。
•健康格差とその影響評価に関するデータを、行政のあらゆるレベルや部門に提供できるようにすること。
•自治体レベルで多部門協調により健康格差問題に取り組めるよう、組織的な支援体制を整えること。
•国家の元首に、2011年9月の国連総会で開催予定の非感染症ハイレベル会議において都市部の健康の公平性への配慮を
3.
都市政策・都市計画策定に地域社会の参加を促す
ために効果的なメカニズムを用います
世界保健機構(WHO)、国連ハビタットや他の国連機関に対して:
す。地域社会は往々にして自らの状況を最も良く知っており、何をすべきなのかに
•都市の健康と健康の公平性への取り組みのための協調、証拠収集、多部門連携に関する政策や行動を支持すること。 ついても分かっているからです。また、状況変化に対応する力も持っています。自
•都市の健康と健康の公平性の視点を自治体ネットワークや市民社会団体の政策や行動計画に組み込むことを奨励すること。
地域社会の参加を確保しなくてはなりません。
これは都市計画の過程で個人と地域社会のエンパワーメント及び住民参加を促すこ
•地方における意思決定や健康の格差是正に向けて地域社会をエンパワーするツールやプロセスを開発すること。
•都市部の健康改善、および健康格差是正に向けて、また都市政策が健康に及ぼす負の影響を減らすため、技術及び能力
開発の面で加盟国や自治体を支援すること。
•「健康都市ネットワーク」や類似のネットワークを、健康的で持続可能な開発に向けた地域レベルでの政治的公約や行
とで実現します。
•プライマリーヘルスケア、都市の健康と健康の公平性に取り組む都市のリーダーシップを支援すること。
地域社会は彼らの生活に影響を及ぼす政策決定に積極的に関与する必要がありま
治体は健康格差を是正するのに適した立場にありますが、政府の他のレベル、特に
提案に含めることへの支持を働きかけること。
動につなげる効果的なメカニズムとして支援すること。
2010年11月15日 - 17日
2010年11月15日 - 17日
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