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生態学における 社会的環境管理能力の指標化
第5回COE研究会 2003/12/19 国際協力研究科大会議室 生態学における 社会的環境管理能力の指標化 技術評価班・生態グループ COE研究員 長島 啓子 都市と生態系 都市・・・人口が集中し,政治,行政,経済といった人間活動の集積する場であり, そのため非自然の人工的要因が強く影響している空間 都市の人間生活と都市機能の維持・・・多量な資源とエネルギーが必要 自然環境の変化 陸域・・・緑地の減少と分断化,土壌のアルカリ化,地下水位の低下 水域・・・池沼,干潟や砂浜の埋立,水質汚染, 富栄養化,水温上昇, 大気・・・汚染物質の増加,気温上昇,乾燥化 生物の生息・生育環境の連続性と多様性の減少 地域本来の生物相の貧化 外来種や移入種の進入・定着の増加 都市緑地 陸域・・・生物の生息場所の提供、生物多様性の維持 大気・・・大気汚染物質の吸着,気温低減機能 生態グループの研究課題 社会経済的発展(都市化)に伴い、 1)緑地の分布がどのように変化し、その要因は何か? 2)現在の緑地の環境保全機能(生物多様性の維持、大気浄 化、気温低減)は?その評価指標は? 3)緑地の環境保全機能を維持するには,どうすればいいか? 社会的環境管理能力の関連要因 1)地理的条件 傾斜、標高、土壌 2)社会・経済的背景 人口、人口密度、地価、交通整備状況 3)政策 都市計画・・・都市計画法、マスタープラン、ゾーニング 緑地政策・・・都市公園法、都市緑地保全法、グリーンベルト 4)社会的アクター 行政、企業、市民の緑地管理における役割・関係 1)緑地の分布がどのように変化し、その要因は何か? 1984 1990 総面積(ha) パッチ数(個) 平均パッチ面積(ha) 平均周長(m)/面積(ha) 1984年 44,188 1,943 22.74 0.029 1995 1990年 43,521 1,988 21.89 0.032 1995年 42,866 2,016 21.26 0.033 Source: 自然環境GIS 広島県 (環境省) 解析方法 緑地分布図 傾斜 地理情報システム(GIS)による 重ね合わせ 標高 土壌 人口分布 地価 交通網 統計解析による要因分析 現在の緑地の環境保全機能は?その評価指標は? フィールドレベル 緑地の構造と環境保全機能の関係 緑地の構造の把握・・・植生調査 主要構成種による緑地の類型化 生物多様性・・・種数(植生調査,遺伝子解析) 外来種・移入種の占める割合 植栽木….緑化における生物多様性への配慮 気温低減力・・・緑地内の垂直的な気温の測定, 周辺と土地利用との水平的な気温(計画) 大気浄化力・・・実験による浄化力モデル作成(計画) 緑地の構造把握 (広島県) 中越・堀田(2001)、中越(2001) 対象地域:広島市デルタ地区 公園:134個 総面積: 28.8 ha 調査方法 ・1つの公園を1つの調査区とみなし, 植被率,階層構造,樹種(木本のみ) を調査. ・主要構成樹種をもとにクラスター分 析により,公園を分類. ・階層構造をもとに特徴付けを行う. データ提供:森口 結果 主要構成種による 公園の類型化→ 階層ごとの植被率(%) 分類群とその特徴 生物多様性 (広島県) 中越・堀田(2001) 広島デルタ地区の公園 全出現樹種:146種,5215本(株) 主要39種で全体の90% クスノキ,ケヤキ,サクラ類で40% 高木層:13種(11種:落葉 2種:常緑) 外来種は9種 中木層:常緑や郷土種が増加する傾向 種別の本数(主要構成種) 生物多様性の評価方法 生物遺体 集合サンプル DNA抽出 PCRによる rRNA遺伝子座の 増幅 地点間類似度 地点A 0 地点B 量 地点C 多様性 評価 GENE スキャン 制限酵素 による切断 ピークの多さが 生物多様性に対応 地点D 地点E 0.057 0.11 0.17 0.23 M1,5 M3,7 M2,6 M4,8 P1,5 P3,7 P2,6 P4,8 K1,5 K3,7 K4,8 K2,6 E1,5 E2,6 E4,8 E3,7 Y1,5 Y3,7 Y4,8 Y2,7 Mi 1,5 Mi 3,7 Mi 4,8 Mi 2,6 On 1,5 On 3,7 On 4,8 On 2,6 O1,5 O4,8 O2,6 O3,7 DNA断片のサイズ 日本緑化工学会 生物多様性保全のための緑化植物の取り扱いに関する提言 日本緑化工学会誌 27(3):481-498 緑化植物に関わる問題 1)移入種の増殖による自生種の生息地の消失 2)移入種と自生種間の浸透性交雑 3)外来の系統の導入による在来の地域性系統の遺伝子かく乱 注意を要する地域 1)遺伝子構成保護地域・・・3つの危険すべてを排除すべき地域(原生的な自然地域) 2)系統保全地域・・・地域に自生する系統を用いた緑化を行う(島嶼、高山、河川など) 3)種保全地域・・・遺伝子レベルの攪乱を認めざるを得ない地域。緑化は自生種を用い、 その系統は問わない。 4)移入種管理地域・・・上記以外のすべての地域。一般に自然生態系から隔離された環 境で、人間による植物の管理が可能な領域。植栽した植物が自 然生態系に逸出しないように管理しながら、移入種を植栽する 植栽する場所によっては、自生種なのか、あるいは系統が同じ自生種なのかを を問題にする必要がある ランドスケープレベル 緑地の空間分布と環境保全機能の関係 緑地の空間分布の把握・・・緑地分布図の解析 パッチサイズ,パッチの形状,連結性 生物多様性・・・現地調査データを植生図に適用 広域的な生物多様性の分布の予測・評価 気温低減力・・・ランドサットデータによる表面温度分布データ 緑地近隣と遠距離の住宅地・市街地の温度差 大気浄化力・・・モデルのランドスケープレベルでの適用(計画) 緑地の空間構造の把握 パッチサイズ 小パッチ 大パッチ パッチサイズと種多様性 パッチサイズとエッジ効果 小パッチ 大パッチ Source: Forman (1995) パッチの形状 形状に関する指標 (Forman & Godron, 1986; Turner et al., 2001) D= Shape index (D) 2 πA p= Perimeter-area ratio (p) Fractal dimension (d) L d= L A ln( A) ln( L) + ln(k ) A: パッチ面積 L: 周長 K:定数 パッチの連結性 パッチの連結性と動物の移動 Source: Forman (1995) 連結性の解析 network theory (Kozova et al., 1986:Linehan et al., 1995) percolation theory (Schippers set al., 1996; With et al., 1997) →複雑 fragmentation ratio (Young and Jarvis, 2001) Fragmentation ratio (Young and Jarvis, 2001) Connectivity Total connections= A+((B+C)/2) Connectivity = A + (B/2) Contiguity = C/2 Fragmentation ratio = Connectivity/Contiguity Contiguity 緑地の気温低減力:データ ランドサットデータ 画像:(財)リモートセンシング技術センターパンフレット 観測所の気温とTMデータ による表面温度 → (入江・平野、1999) 表面温度分布図 画像:名大・院・環境学 地球環境システム学講座 HP http://sys.eps.nagoya-u.ac.jp/ee/ee_main.html 緑地の気温低減力:解析例 (入江・平野, 1999) 緑地のサイズと気温低減力 ・緑地の幅員と表面温度の関係 →幅員が大きいほど表面温度が低い ・緑地の幅員と周辺の温度 →幅員が大きいほど遠方まで表面温 度が低下 緑地の幅員と表面温度 緑地の幅員と周辺の温度 社会的環境管理能力 グリーンとブラウン Hiroshima System-making System-working Self management SCEM indicators Dynamic change Beijing Regional interaction Green space management Jakarta Backcasting time Green space management 現在 今後の見通し 社会経済的背景 政策 社会的アクター ? 緑地の分布 気温低減機能 大気浄化機能 維持・促進 生物多様性