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モデル2 売場にいるのが私の「天職」。 「明るく、元気に、前向きに」を

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モデル2 売場にいるのが私の「天職」。 「明るく、元気に、前向きに」を
モデル2
売場にいるのが私の「天職」。
「明るく、元気に、前向きに」をモットーに
常に立ち止まらず、楽しく仕事をしてきました。
株式会社東武百貨店
取締役・本店店舗運営室長兼本店販売推進室長
池原照恵さん
るなど、未経験の仕事が次から次へと出て
同期バイヤーのサポートで
初の女性係長に
くる。そういう立場になるとは思ってもい
なかったので、大変困りました。その時も
前出の同期バイヤーが、毎日閉店後に売場
私が東武百貨店に入社したのは昭和 37
に残って、一から十まで半年くらい、教え
年4月。池袋本店のオープンを翌月に控え、
てくれたのです。おかげで日々の定型的な
皆、内装工事をしている中で埃まみれにな
仕事は何とかこなせるようになりました。
りながら研修を受けている最中でした。翌
そういう仲間に恵まれたことは大きかった
5月末に全店オープン。私はレジスターを
ですね。その同期とは、今もお互い言いた
2年間担当した後、リビングの売場担当に
いことを言い合える、生涯を通じてのよき
なりました。仕事が面白いと思い始めたの
同志といった関係になっています。
はこの頃からです。催事があるといえば上
司に言われる前に自分から進んで準備をす
自分の売場を任されることに
やりがいを感じて
るなどして、次第に売場の中でリーダー的
な役割をするようになっていました。
28 歳の時、社内で資格制度が導入されま
係長になった時、自分なりにいくつか決
した。自分では受けようなどと考えていな
意をした中で「負けない、泣かない、愚痴
かったのですが、同期の男性バイヤーから
らない」と決めていました。仕事の質に関
「受けてみろ」とすすめられたのです。当
しては男性に負けない仕事をしよう。それ
時、彼は係長で、彼が仕入れた商品を私が
と部下から常に見られる立場になるので、
売場に並べて展開する、というように、よ
辛いことや悲しいことがあっても売場では
く組んで仕事をしていました。そこで受け
いつも笑顔でいよう。部下に対してもお天
たところ、合格し、半年後には係長として
気屋にならず、いつも変わらない自分でい
ひとつの売場を任されるようになったので
たいと思ってきました。これは今も心がけ
す。
ています。
最初は自分の売場がもてて、とてもうれ
その後、42 歳まではずっとリビングの係
しかったですね。ところがすぐに困りまし
長をしていました。しかし自分の売場と部
た。役職者となったからには、予算書をつ
下を任されて、売場レイアウトから何もか
くったり棚卸しをしたり、催事計画をつく
も自分で思ったようにでき、お客さまの反
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応にしろ、売上げの数字にしろ、毎日毎日、
その結果を報告しに行く、また、そこでア
結果が出る売場の仕事というのは非常に面
ドバイスをいただく。そういうキャッチボ
白いと思っていました。ですから昭和 62 年
ールが楽しかったし、社長とそういうふう
に課長になり、フロアインストラクターと
にお話できることに感動しました。会長に
いう教育の担当になった時は、かなり落ち
なられた後も最後まで励ましてくださり、
込みました。今思えば、そういう経験をし
私にとっても「この方のためなら頑張ろう」
たからこそ、同じような立場の人の気持ち
と思える方だったのです。仕事の原点のよ
を思いやれるようになったといえます。け
うなものを教えていただき、自分もこうい
れどもその時は、売場で働けなくなったこ
う上司になりたいという目標をいただいた
とが、辛くてしかたありませんでした。そ
方でもありました。
れだけに2年後、婦人服の販売課長として、
このように私が山中さんに対して、
「この
再び売場を担当できるようになった時は、
方のためなら」と思えたのは、やはりそこ
本当にうれしく思いました。
に心と心の触れ合いがあったからだと思う
平成 13 年、役員になりました。役員にな
のです。お客さまやお取引先との関係も同
ったことで、自分のフロアだけでなく、会
じように、基本は人間対人間の関係です。
社全体のことも考えるようになり、また今
たとえ仕事であっても人と接する時には、
までとは違ったやりがいを感じています。
会社を離れても「池原さん」と言っていた
こうして 40 年以上、この会社に勤めていま
だけるような気持ちの触れ合いを忘れない
すが、一度も長いとか辛いとか思ったこと
こと。そうしたことが「あの人のためなら」
はありません。嫌なことがあっても一晩寝
と思ってもらえる相手や助け合える関係を
ればすぐ切り替えができてしまうし、いつ
築き、自分の財産になっていくのではない
も仕事を楽しいと思っています。いい意味
でしょうか。
で仕事を楽しむことが、いい仕事をするこ
また、仕事をしているとさまざまな困難
とにつながるのではないでしょうか。
にぶつかることがあります。でもその時に、
決してそこで立ち止まらず、何か自分にで
仕事の原点を教わり、
目標でもあった山中前会長
きることをして、一歩を踏み出す。そこで
停滞したり、女だからと諦めたりせずに動
くこと。それがとても大事だと思っていま
私が仕事上、最も尊敬し、影響を受けた
す。
方が、伊勢丹、松屋を歴任されて平成2年、
東武百貨店の社長に就任された故・山中鏆
(カン)さん(後に会長)です。社長はふ
と気がつくとよく、売場におひとりで立っ
ていらして「池原くん、売れているかい」
などと気さくに声をかけてくださいました。
いつも
「何か迷ったらその答えは現場に
あるんだよ」とおっしゃって、店舗増床後、
売上げが伸び悩んだ時にも「売上げは必ず
上がるから頑張れ」と励ましてくださいま
した。私も社長のおっしゃったことを試し、
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<略歴>
池原照恵さん
株式会社東武百貨店
取締役・本店店舗運営室長兼本店販売推進室長
昭和 37 年、入社。会計課出納係を経てリビング
フロアに。昭和 47 年女性初の係長となる。32 歳
の時に結婚。昭和 62 年、これも女性初となるリ
ビングフロア課長に。平成3年婦人服第一部次
長、平成9年婦人服飾雑貨部DS(部長)を経て
平成 13 年5月より、取締役・池袋本店婦人服飾
雑貨部長となる。
平成 16 年 3 月より現職。
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