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愛媛大学 - Ehime University This document is
>> 愛媛大学 - Ehime University Title Author(s) Citation Issue Date URL A STUDY ON AIR-POLLUTION CHARACTERISTICS AND THREE-DIMENSIONAL BEHAVIOR OF PHOTOCHEMICAL OZONE IN MEXICO( 審査結果の要旨 ) SANDY EDITH BENITEZ GARCIA . vol., no., p.- 2015-02-17 http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/handle/iyokan/4553 Rights Note 受理:2015-01-21,審査終了:2015-02-17 This document is downloaded at: 2017-03-31 11:29:52 IYOKAN - Institutional Repository : the EHIME area http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/ (第5号様式) 学位論文審査の結果の要旨 氏 審 論 文 名 査 委 員 SANDY EDITH BENITEZ GARCIA 主査 河野 公栄 副査 松枝 直人 副査 森 牧人 副査 松村 伸二 副査 高橋 真 名 A STUDY ON AIR-POLLUTION CHARACTERISTICS AND THREE-DIMENSIONAL BEHAVIOR OF PHOTOCHEMICAL OZONE IN MEXICO (メキシコにおける大気汚染の特徴と光化学オゾンの立体的挙動に関する研究) 審査結果の要旨 メキシコは 1990 年代に深刻な大気汚染に悩まされ、以後様々な対策が施されたが、現在も環境基準 を達成するには至っていない。近年、大気汚染の原因物質として、比較的対策の容易な一酸化炭素や二 酸化イオウなどの 1 次物質に代わって、大気中反応生成物である 2 次物質が問題視され、2 次物質の中 でも特に健康影響の観点からも光化学オゾンが注目されている。また、メキシコでは首都メキシコシテ ィーのほか、第 2 の都市であるグアダラハラ、さらに第 3 の都市モンテレーでも人口集中が進み、自動 車や種々の産業活動に伴う排ガスなど人為起源の大気汚染が著しい状況にある。そこで本研究では、メ キシコにおける大気汚染の特徴把握と光化学オゾンの立体的動態解明を目指して、モニタリングデータ 解析、フィールド観測によりメキシコの代表的な都市であるメキシコシティー、グアダラハラ及びモン テレーの大気汚染の構造を明らかにし、特にメキシコシティーについて、気球観測と数値シミュレーシ ョンを組み合わせて光化学オゾンの立体的挙動に関する詳細な検討を行った。得られた研究成果の概要 は、次のようにまとめられる。 まず、2009 年度の 1 年間を対象として、日本とメキシコの地域間で大気質モニタリングデータの比較 解析を行っている。共通の観測項目である、一酸化炭素、二酸化窒素、二酸化イオウ、オゾン、PM2.5 においては、全般的にメキシコが比較的高濃度であるが、愛媛県の二酸化イオウ濃度はメキシコと同レ ベルであることが見出されている。また両国とも、降水量が少なく、かつ、大気安定度が高くなる季節 (日本は冬、メキシコは乾季)に大気汚染物質の濃度が高くなることが示されている。 更に、メキシコの上記 3 大都市については、2000-2011 年の 11 年間の大気質モニタリングデータを 解析し、経年変化や日内変動を詳細に解析している。検討の結果、メキシコにおける多くの大気汚染物 質は減少傾向にあり、特に一酸化炭素は、主要発生源である自動車に対する排出抑制技術の導入時期を 反映し、濃度が低下傾向にあることを確認している。また、呼吸器系や心肺系疾患を引き起こすおそれ のある粒子状物質 PM10 は、モンテレーにおいて特異的に高く、砕石場など地域特有の発生源への対策 が重要であることを指摘している。光化学オゾンは、メキシコシティーでは減少傾向であったが、グア ダラハラ、モンテレーでは増加傾向にあることを解明し、喫緊な対策が必要であることを提言している。 光化学オゾンの生成には太陽光が不可欠であるが、累積日射量の指標である気温とオゾン濃度の相関を 調べた結果、日最高気温と日最高オゾン濃度の間に正の相関関係があることを見出している。さらに詳 細な検討の結果、この相関関係は経年的に変化していることを明らかにし、その要因としてオゾン生成 に関与する二酸化窒素や揮発性有機化合物に対する法的規制によって、オゾン生成光化学反応の態様が 変化していることを推論している。 次に、光化学オゾンの立体的挙動を解明するために、メキシコシティーにおいてフィールド観測を実 施している。観測には、in-situ 手法であるオゾンゾンデを用い、従来よりも高頻度(1 日 2 回)の観測 を行っている。このフィールド観測によって得られたデータについて検討した結果、オゾン生成に関与 する大気汚染物質の人為的排出と日射の増加に伴ってオゾンの光化学生成が進み、また、大気境界層の 発達に伴ってオゾンが鉛直方向に拡散することを明らかにしている。さらに詳細に検討し、午前と午後 の鉛直プロファイルの差分を取ることにより光化学オゾンの生成量を求め、日最高気温との関係を解析 している。その検討の結果、全般的にはオゾン生成量は日最高気温と正の相関関係にあることを明らか に し 、 相 関 が 低 い 場 合 に つ い て も 、 観 測 さ れ た 各 種 気 象 要 素 の 鉛 直 分 布 か ら 求 め た Ventilation Coefficient(換気係数)という指標を用いることにより、メキシコシティー外から移入する比較的清浄 な大気との混合・換気の効率に顕著な差異があったことが原因であると推論していることが評価される。 更に高い空間的・時間的分解能で大気汚染の立体的挙動を解明するために、数値モデルによるシミュ レーションを実施している。数値モデルとしては、米国で開発され広く利用されている領域化学輸送モ デル WRF-Chem を用いている。検討の結果、気温・湿度・物質濃度の日周変動や大気境界層の成長衰退 などの基本的気象要素が観測データと良く一致する解析結果を得ている。光化学オゾンについては、昼 ・夜の時間スケールでは WRF-Chem によるモデル計算結果と観測データが良く一致するが、数時間スケ ールでは観測と合わないケースが多く、オゾンゾンデ観測で得られたオゾンの鉛直分布との差異が大き いことを見出している。その原因として、入力データである排出量分布に問題があることを推論し、今 後、排出量に関するより詳細な統計データが整備され、そのデータを用いることによりシミュレーショ ンの精度が上がることを指摘している。 以上、本研究により、メキシコ都市圏の大気汚染の特徴が明らかになり、また、光化学オゾンの立 体的挙動が従来よりも高い時間的・空間的分解能で把握され、気象条件との関係が明らかになった。 本研究の手法は、2 次生成物質が主体となる現代の大気汚染対策において有効であり、メキシコのみな らず、今後深刻な大気汚染が予想される開発途上国等において適用されることが期待される。 本学位論文の公開審査会は平成27年2月7日に愛媛大学農学部で開催され、口頭発表と質疑応答 が行われた。引き続いて学位論文審査委員会を開いて本学位論文の内容を審査した。その結果、本学 位論文に記載された研究成果は、新規性と学術性が非常に高く、その内容は農学(大気関連化学)、理学 (気象学)、工学(都市環境工学)など複数の学問領域に関連することから、審査委員全員一致して、博士 (学術)の学位を授与するに値するものと判定した。