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2016/4/4 に取り上げた柳原 (2015)

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2016/4/4 に取り上げた柳原 (2015)
2016 年 4 月 4 日 フツーの LGBT をクィアする ミーティング 配付資料 ver. 2
柳原良江. 2015.「収奪と利益が絡み合う卵子提供ビジネス―使い捨てられる女性たち」『世界』2015 年 11 月号, pp206-16, 岩波書店.
Feminism and Lesbian Art working group [http://feminism-lesbianart.tumblr.com]
[email protected]
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2016 年 4 月 4 日
フツーの LGBT をクィアする
ミーティング配付資料 ver. 2
柳原良江. 2015.「収奪と利益が絡み合う卵子提供ビジネス―使い捨てられる女性たち」
『世界』2015 年 11 月号,
pp206-16, 岩波書店.
※実際に配布したものを編集しています。ミーティングで話し合った内容を反映していますが文責は Janis
ミーティングの案内ページはこちら http://feminism-lesbianart.tumblr.com/post/141843254386/
[導入部分] (206-7)
- 自民党「生殖補助医療に関するプロジェクトチーム」が議論する法案
- 日本国内での代理出産と卵子提供の容認
- 代理出産については禁止措置の動きもあるが、卵子提供は容認されそう
- 日本産科婦人科学会 [本文では「日本産婦人科学会」]
- 卵子提供を伴う妊娠と代理出産は禁止
- 会告=法的強制力のない自主規制
- 野田聖子参議院議員によるメキシコ人女性からの提供卵子を用いた妊娠出産の公表
- 参考: 野田. 2011.『生まれた命にありがとう』新潮社.
- [野田聖子が卵子購入後妊娠出産を公表した出来事について “善行と位置づけられた”とあるけどそうだっけ?
か
なり批判があったのでは?]
- [卵子バンクは “女性同士の助け合い” として報道されたとのこと。ここで「不妊」女性と「不妊」ではない女性同
士の助け合い、というときの「女性」からあらかじめ想定に入っていない「女性」がいるのではないか?]
- 卵子提供に問題はないのか?
何が問題なのか?
1. 「女性の卵子」という売りもの (206-8)
- 現在、日本人(男女夫婦、独身男性、独身女性)が卵子提供により子を得るには [本文全体を通じて「日本人」や
「国民」として含意されているのは誰か。たとえば在日朝鮮人はいないことになっているように読めるがどうか。]
- 「生殖ツーリズム」: 斡旋業者に依頼し、国外の医療機関に赴く。
- 卵子バンクから購入した卵子を受精させ、妻や代理母の子宮に受精卵を移植して妊娠成立を待つ
- [“依頼者たちはまず卵子バンクから卵子を購入し、それを依頼者自身の精子、または精子バンクから購入した精子
と受精させてから、妻や代理母の子宮に移植し…”とありその後 “依頼者は男女の夫婦に限らず” (207) と続くが、
その間「依頼者」と想定されているひとの単複・性別の一貫性ないし多様性が一文の中ですら揺らいでいる。異性
との婚姻関係にあるシス男性の夫が中心で、
「依頼者」のうちの ”独身男性や独身女性” はおまけ?]
- 卵子提供者:日本人とは限らない
- 米国の場合…アジア系米国人、在米韓国人、在米中国人、白人 [メキシコ人?メキシコ系アメリカ人?
米国在
住アジア人内部での国籍による差異を際立たせつつ他には「白人」とまとめてあるのは少数事例だから?] (eg. 野
田)
- 依頼者が自身と同一の国籍や人種の提供者からの卵子= “遺伝的条件” に拘らない理由 [この文脈で「遺伝的」とい
2016 年 4 月 4 日 フツーの LGBT をクィアする ミーティング 配付資料 ver. 2
柳原良江. 2015.「収奪と利益が絡み合う卵子提供ビジネス―使い捨てられる女性たち」『世界』2015 年 11 月号, pp206-16, 岩波書店.
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う言葉を使うのは人種が、国籍すらも、遺伝子レベルで違いがあるとの理解に基づいているように読める。]
- 白人への身体的特徴への嗜好
- “なるべく妊娠をしたい” ”高齢で一日も早く卵子を入手したい” [依頼者=妊娠出産者?]
- 参考:Almeling, Rene. 2011. “Sex Cells: The Medical Market for Eggs and Sperm.” University of California Press.
- “卵子の多国籍化” [卵子提供者の国籍の多様さ] は卵子提供全般にみられる現象
- 2008 年「マンジ事件」… ネパール人提供卵子+インド人代理出産の子を日本人男性が連れ出せず国際問題化
- [参考:松尾瑞穂. 「インドの代理出産にみるジェンダーと格差――なぜ子宮を「貸す」のか?」 http://synodos.jp/international/7357]
- 2014 年発覚、
日本人男性がタイで多くの子を作った例…様々な人種・国籍の女性の卵子が用いられたとの報道 [こ
の事例以外の部分では「依頼者」が生まれてくる子どもの養育者であることも前提されているように読める。]
- 日本人女性が国外で卵子を提供・売る場合 [たとえばこのときの「日本人」と「日本居住」は区別されていないよ
うに読めるが、ここで在日の「日本人」でない人が考慮されていないのは問題ではないか。]
- 外国 (米国など) 在住の若い日本人女性が現地で採卵手術を受ける;報酬は 50-80 万円程
- 日本居住の若い女性が外国に渡航し現地で採卵手術を受ける;渡航滞在費を引いた報酬は 40-60 万円程
- 卵子提供者が結ぶ契約
- 報酬は、卵子提供者の容姿や学歴、過去に提供卵子で妊娠・出産成功しているかによって増額
- 契約の対象は、卵子だけでなく身体機能そのもの
- 採卵まで数週間にわたる管理 (“夫や恋人との性行為”、アルコールやタバコ、嗜好品 [←タバコは嗜好品扱い]
の禁止、自主的な医療受診や服薬の制限)
- 提供者の行動により卵子提供に影響を与えた場合、提供者が生じた損害を支払う
- 業者側から契約解除されることはあっても、自らの意思で契約を解除することは困難 [契約体系について。業者 A
対卵子提供者と業者 B 対依頼者の2つと、業者 A と業者 B が同一か AB 間に契約があるだろうが、卵子提供者と依
頼者の間に解約はないということ?]
- 賠償金の支払い義務+もともとの金銭的問題
2. 金銭で売り渡す健康 (209-10)
- 採卵に伴う医学的リスク
- 短期的リスク:卵巣過剰刺激症候群 (OHSS)
- 長期的リスク:十分な研究がされていない
- (米国 2000 年代以降) がん罹患、早期閉経の報告;結果として不妊や死亡の例も
- 斡旋業者や採卵実施不妊クリニックの言い分 (「リスクはない」
、リスクはあっても軽微なものとするイメージ流布)
- 「研究がなされていない」≠「リスクはない」、卵子提供経験者の声との違い
- 参考:ドキュメンタリー映画 “Eggsploitation” (2010, 2013) 『卵子提供―美談の裏側』
- 日本での卵子提供・採卵についての情報も同様 (斡旋業者や卵子バンク OD-NET の広告や説明文など)
- リスクは「ない」と公言するものが多い;長期リスクへの言及がない
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柳原良江. 2015.「収奪と利益が絡み合う卵子提供ビジネス―使い捨てられる女性たち」『世界』2015 年 11 月号, pp206-16, 岩波書店.
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3. 管理され、使い捨てられる女性の性 [この「性」はヘテロセクシュアリティ前提? 「性行為」は特定の挿入行為?]
(210)
- 卵子提供という制度:身体的リスクを減らせばよいのか
- ホルモン剤を減らし時間をかける→採取できる卵子が少なくなる (ゼロになるかも)
- 長期間にわたり細心の注意を払う→提供者の身体を他者の管理下に置く
- 卵子提供の構造:いわゆる「人身売買」や「奴隷制」との共通性
- 「契約」による支配、搾取・収奪
- 参考:ケビン・ベイルズ著. 大和田英子訳. 2002. 『グローバル経済と現代奴隷制』凱風社.
- 24 時間、投薬・食事・行動に気を配り、”契約通り「自らの身体を管理される」仕事を遂行する” [cf. 生政治的な
/生権力による諸身体の管理]
- “自由な性行為の禁止、それにともなう妊娠の制限” [「自由」といいながら、
「自由な性行為」にはすでに「妊娠
をともなう可能性のある性的行為」という制限がある?
異性愛主義的な、生殖に直結する、挿入行為中心の、性
行為しか認識されていない。]
- 依頼者や医療者は (特に契約期間後に判明した) 卵子提供者の (卵子提供の結果生じた) 健康被害に対し責任を
取らない
4. 全国民を巻き込む卵子提供の「コスト」 (210-3)
- 日本国内で卵子提供合法化された場合の影響:期待される依頼者たち [「日本人」限定?] の金銭的負担軽減はうそ
- 法案が意図する「無償の卵子提供」
:卵子売買が行われる可能性は高い
- 提供者への必要経費名目での対価支払い
- 医療者への自費診療の費用支払い
- 現在の費用:日本人向け、米国の卵子提供費用は 300 万円程 (提供者の契約違反による損害は提供者負担)
- 日本で行われる場合の費用予測:依頼者が一回で妊娠・出産できた場合
採卵~体外受精までの事務・医療費 (130-160 万) + 提供者&斡旋業者の必要経費 (20-30 万) =計 150-90 万円
- 夫婦間体外受精費用 (50-60 万円) + 卵子提供者へのカウンセリングや身体検査
- 国内での家族間卵子提供実施団体 JISART の審議費用:80-100 万円
- “比較的健康な子が無事に生まれる確率は 34.8%である。つまり 3 人のうち 2 人は、この金額を払っても子を持つ
ことはできず...” [「比較的健康な子」だけを「子」とカウントするのだろうか?
文字数?]
- 完全無償で行われるのであれば…→数が取れない、停滞・頓挫→必要経費がかさむ
- 何か問題が生じた場合の経済リスク負担→JISART ガイドラインでは依頼者が負担する (米国なら提供者に丸投げ)
- 必要経費の内訳は人件費:先進国の高品質なサービス vs 人件費の安い国での [そこそこの?と読める] サービス
[サービスを提供される場所が「先進国」であることと、提供されるサービスが「高品質」であることは、それらが関
係しているイメージこそあれ論理的な関係はない。先進国以外で提供される国外からの医療ツーリズムのための医療
サービスは「先進国の高品質なサービス」と競合している。]
- 経済的負担は当事者 [依頼者と提供者] だけではなく、公的保険のシステムにかかるので、“健康保険料を負担する全
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国民に関わる“ [日本で運用されている国民健康保険を含めた健康保険の被保険者が皆日本国籍のあるひとたちでは
ない。また医療サービスの提供を可能にしている資源は健康保険制度以外に医療職の人々や施設など様々なので、社
会全体の負担をいうのに保険料負担のみに焦点を当てるのは無理があるのではないか。]
5. 日本の「卵子提供容認」が人身売買の渦になる (213-4)
- もう一つの法案の目的:日本人による外国人女性からの卵子購入抑止: 実際に起こることは問題の深刻化
- 潜在的な需要が喚起される→慢性的な卵子不足→外国での購入を検討せざるを得なくなる
- 日本人の身体資源を外国人 [日本国外に居住する日本国籍を持たないひと] に開放+国内を外国人を巻き込んだ
人身売買の場に変える
- 若い日本人女性の卵子が海外の富裕層によって利用される (たとえば中国)
- [参考:2016.「チャイナセンセーション:第2部
変わる家族の形/2(その1)
代理出産、闇ビジネス」. (2016/3/16, 毎日新聞東京朝刊).
http://mainichi.jp/articles/20160319/ddm/001/030/184000c」]
- 「日本人の卵子」にこだわらない人々向けの貧困国女性 [貧しいのは国?] を日本に渡航させ国内で採卵・受
精・移植が行われる
6. 「女性の犠牲=美徳」という差別構造 (214-5)
- 精子提供とはどこが同じでどこが違うのか
- 精子提供が禁止されていなくて卵子提供が禁止されているのは女性差別という意見;男に許されていて女に許され
ていないのはおかしい、平等ではない、というロジック [この文書作成者は初め理解できずミーティングで判明]
- 精子提供は問題がないのか
- 規制がないだけの話;民法の嫡出推定制度を利用
- 倫理的問題:精子提供で生まれた人たちが公の場で問題化している
- 卵子提供のみ禁止するのは女性差別ではない:人権意識にもとづく対応の違い
- 精子提供:“再生産可能な排泄物を何の医学的処置もなく自ら採取できる“
- 卵子提供:”投薬により身体を変化させた上で、再生できない身体部品が、手術で...強引に身体外に取り出される”
- 身体を差し出す女性たちの「自由」を重要視する傾向:”同じ事を男性が主張したら” 社会の反応は違うはず
‐ 近代的人権意識、近代社会の社会的合意のジェンダーによる二重基準 – 性差別
- “卵子提供を推進する女性たちは、意識的であれ無意識的であれ、自らが受ける性差別を隠れ蓑に、他の女性を差別
し、彼女からの搾取/収奪をすすめている。” (215)
7. 卵子の搾取で潤う者がいる (215-6)
- 今回の法案に関連し最も恩恵を得るのは?:公的に容認されること、批判をかわせること、認可制の市場の登場
- 富裕層 vs 外国で実施するための経済力の及ばない不妊カップル – 貧しい方のカップル一時的な恩恵しか受けな
い
- 不妊産業に携わる医療者たち
2016 年 4 月 4 日 フツーの LGBT をクィアする ミーティング 配付資料 ver. 2
柳原良江. 2015.「収奪と利益が絡み合う卵子提供ビジネス―使い捨てられる女性たち」『世界』2015 年 11 月号, pp206-16, 岩波書店.
Feminism and Lesbian Art working group [http://feminism-lesbianart.tumblr.com]
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- [卵子提供契約によって自発的に自らを管理するような卵子提供者の身体管理のあり方を書きつつ、搾取する/され
る、恩恵を受ける/受けない、損害を被る/被らない、と再度主客を二項対立的に分けるような結論は、矛盾してい
るのではないか。]
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