Comments
Description
Transcript
青少年科学館を活用した理科教育推進の在り方検討調査報告書
平成26年度 青少年科学館を活用した理科教育推進の在り方検討 調査報告書 2015 年 3 月 青少年科学館を活用した理科教育推進の在り方検討・調査有識者会議 株式会社 道銀地域総合研究所 目 第Ⅰ章 次 調査の概要 ................................................................................................... 1 1.調査の目的 ...................................................................................................... 1 2.調査の内容・方法 ............................................................................................ 1 3.調査フロー ...................................................................................................... 6 第Ⅱ章 札幌市における青少年科学館等を活用した理科教育推進の現状と課題 ......... 7 1.アンケート調査の概要 ..................................................................................... 7 2.アンケート結果の考察 ..................................................................................... 9 3.ヒアリング調査の概要 ................................................................................... 15 4.ヒアリング結果の考察 ................................................................................... 16 第Ⅲ章 他都市における科学館等を活用した理科教育推進の先進事例 ..................... 18 1.先進事例他都市調査の概要 ............................................................................ 18 2.先進事例他都市調査結果 ............................................................................... 19 3.結果の考察 .................................................................................................... 53 第Ⅳ章 青少年科学館を活用した理科教育推進の方向性と展開方策 ........................ 57 1.有識者会議開催概要 ...................................................................................... 57 2.本調査結果から見た課題の整理 ..................................................................... 63 3.札幌市における青少年科学館等を活用した理科教育推進の方向性 ................. 65 4.札幌市における青少年科学館等を活用した理科教育推進の展開方策 .............. 68 第Ⅰ章 調査の概要 1.調査の目的 平成 26 年 2 月に策定した「札幌市教育振興基本計画」において、札幌市の教育が 目指す人間像を「自立した札幌人」と掲げ、その実現のため、自ら疑問や課題をもち、 主体的に解決する「課題探究的な学習」の一つとして、「科学的リテラシーを育む学 び」を進め、理科教育を充実させることとなった。 青少年科学館は、科学及び科学技術に関する知識の普及啓発を通して創造性豊かな 青少年の育成を図ることを目的として昭和 56 年に設置され、現在まで 30 年以上に わたり、科学・技術などに触れながら楽しく学ぶことができる施設として多くの子ど も達に親しまれてきた。 平成 22 年 3 月には、社会教育委員会議より、今後の青少年科学館の在り方につい て「青少年の学習の場として、また、生涯学習の学びの場として重要不可欠な施設で あり、青少年はもとより、幼児からお年寄りまで、広く市民が科学について楽しく学 べる場として、常に魅力的な施設であるべき」との提言を受けたところである。 このことを受け、今までの青少年科学館の目的であった知識の普及啓発に加え、学 校教育はもちろんのこと、企業や大学、研究機関などと連携しながら、子ども達が自 ら体験し、考え、創造・発展させていくような学習の推進を図ると共に、市民誰もが 科学について楽しく学べる場としていくことが求められている。 本事業は、生涯にわたり、自分に必要な知識や能力を自ら認識し、それらを身に付 け、他者との関わり合いや実生活の中で活用し、実践できるような主体的・能動的な 力を身に付けた「自立した札幌人」を育成するため、また、市民が気軽に科学を学習 できる学びの場として、青少年科学館を活用した理科教育の在り方について検討、調 査することを目的とする。 2.調査の内容・方法 (1)調査研究 青少年科学館に望むサービスや機能、科学館運営ボランティアへの興味関心など について、科学館来館者へのアンケート調査を行うとともに、札幌市内の教育機関、 企業・団体における科学館と連携した事業の可能性や内容等について、具体的なア ンケート調査を実施した。さらに市内の小・中学校教職員に対して理科教育への意 識や現状を調査するためのアンケート調査を実施した。 また、札幌市における理科教育推進のための課題等を踏まえ、学校教育や企業・ 大学等と連携を視野に入れて先進事例他都市調査を実施した。 さらに大学や教育機関、理科教育を実践している企業・団体へのヒアリング調査 を実施し、その運営手法、札幌市での展開可能性等について調査した。 (2)調査結果の検討 これらアンケート調査、ヒアリング調査の結果等について、有識者会議にて報告 し委員間で協議・検討する方法で調査結果を取りまとめる。 1 (3)調査の種類 ①青少年科学館来館者アンケート調査 ②教員アンケート調査 ③企業団体アンケート調査 ④企業・大学ヒアリング調査 ⑤先進事例他都市調査 (4)有識者会議 ①有識者会議委員5名 氏 名 渡部 英昭 大久保 大槻 太田 小路 西村 昇 博 俊一 徹 喜憲 主な役職 備 北海道教育大学札幌校 教授(副学長) 考 専門:生物学、教材開発(学識経験者) 公社)日本理科教育 内田洋行取締役専務執行役員(H26.7.21 振興協会会長 代表取締役社長)(学識経験者) 札幌商工会議所副会頭 北海道ガス株式会社代表取締役社長 (経済団体) 平岸高台小学校長 (小学校長会推薦) 宮の森中学校長 (中学校長会推薦) 教育委員会教育次長 (内部委員) ②オブザーバー等 公社)日本理科 教育振興協会 常任理事 岩瀬英人 氏 足利昌俊 氏 教育委員会 (生涯学習部) 所管部・担当課 生涯学習部長、生涯学習推進課長、推進担当係長、事務職員 教育政策担当課長、教育政策担当係長 (学校教育部) 教育課程担当課長、企画担当係長、義務教育担当係長 研修担当課長、研修担当係長 青少年科学館 (指定管理者) 公財)札幌市生涯学習振興財団青少年科学館学芸課長 ③進行 司会進行 道銀地域総合研究所 調査報告 道銀地域総合研究所 2 (5)札幌市青少年科学館の概要 【青少年科学館事業概要】 青少年科学館は、日進月歩の科学技術と未来社会に対応するため、北方圏の拠点都市とし ての札幌の特色をふまえ、青少年の科学に対する関心を高め、科学する心を培い、創造性豊 かな青少年を育成することを目的として、昭和 56 年 10 月 4 日に開館した。新たな展示 物の導入と施設機能の拡大整備を図る第 2 期整備を平成 7 年度から平成 8 年度にかけて実 施し、平成 16 年度には、プラネタリウムに新しい映像装置等を導入するリニューアルを行 った。また、平成 25 年 1 月には、宇宙飛行士の山崎直子氏が名誉館長に就任した。 施設の管理運営は、(公社)札幌市生涯学習振興財団を指定管理者に指定し行っている。 なお、平成 25 年 5 月 7 日~平成 26 年 4 月下旬の間は、耐震改修工事に伴い休館中で ある。 1 施設概要 ○ 所 在 地 厚別区厚別中央 1 条 5 丁目 ○ 電 話 892-5001 ○ 敷地面積 7,374 ㎡ ○ 建物構造 鉄筋鉄骨コンクリート 地下 1 階、地上 4 階建 ○ 建物延面積 ○ 会館時間 10,017 ㎡ 5~9 月 午前 9 時 00 分~午後 5 時 00 分 10~4 月 ○ 休 館 日 午前 9 時 30 分~午後 4 時 30 分 月曜日、毎月最終火曜日、祝日の翌日、 特別展最終日の翌日、年末年始 (ただし、4 月 29 日から 5 月 5 日まで及び特別展期間中は無休) (1)施設内容と観覧料金 名 称 面積 (㎡) 791 内 容 個人料金 団体料金 大人 小人 大人 小人 円 円 円 円 特別展示室 344 広い無料ゾーンを設け、シンボル展示等 を設置 2 階 1,947 ㎡・3 階 1,839 ㎡、展示数 約 300 点 夏休み、冬休み等に特別展を開催 プラネタリウム 335 200 席、球形恒星球、スペースタイプ サイエンスホール 224 講演等の他、学校団体等の休憩場所とし て使用 60cm 反射望遠鏡 - - - - - - - - 日 曜 日 ・祝 日 、 夏 休 み 、 冬 休 み 等 に 工 作 会 (教 室 ) を開催 展示物の制作・修理 - - - - - - - - 物理・化学等の実験室で、実験教室・講座等 を開催 - - - - エントランスホール 展示室 3,786 天文台 48 工作室 85 製作工房 75 実験実習室 160 (注)団体料金は大人 30 名以上、小人は中学生以下 3 - - - - 700 無料 630 無料 - - - - 500 無料 450 無料 (2) 主な展示内容 展示は、青少年はもとより広く市民が気軽に利用しながら、科学技術について正しい 理解ができるように配慮されている。また、知的・創造的な遊びの場として興味を誘う よう、各展示物は島状に配した探索型で、見学者が自由に好きな展示物に触れ合えるよ う配置されている。 主な展示内容は次のとおりである。 ア 宇宙「太陽と星の序曲」 プラネタリウム(18m ドームに 6.5 等級以上の恒星約 10,000 個投影)、フーコー の振り子(長さ 10m の振り子で地球の自転を示す)、天文台(15 等星程度まで見える 口径 60cm の反射望遠鏡を 5.5m ドームに設置)、宇宙天文コーナーなど。 イ 北方圏「雪・氷の詩」 人工降雪実験装置(高さ 18m、直径1mの大型垂直風洞による降雪実験)、スーパー ドリームライド(3軸油圧式、16 人乗りの大型疑似体験装置)、気象レーダー(雲の動 きを画像表示)、低温展示室(氷琴、人工つらら、南極の氷)など。 ウ 原理・応用「探索の航海図」 音と光の広場(音のすがた、人間万華鏡、ホログラム)、力のふしぎ(てこ・滑車、 アルキメデスの原理、パスカルの原理、力学コーナー)、のりものの科学(リニアモー ターカーのしくみ、フライトシミュレータ、札幌の地下鉄、ヘリコプター)、化学の 世界(ふしぎなあぶりだし、かおりをつくる)、パソコン工房、電気(水力発電、人力 発電、太陽電池)、熱のひみつ(気体の粒の動き、ジャンボ体温計、放射)、バーチャ リウム(400 インチの大型映像と油圧で動揺する椅子で、環境と生命の関わりをダイ ナミックに疑似体験)、生命(生命の営み、細胞の不思議)、環境・エネルギー(環境地 球儀、CO2 コート、太陽光発電)、人体(不思議なレントゲン、人体スキャナー、内 臓パズル)、運動と感覚(ななめの部屋、2メートルダッシュ、反射カテスト)、ロボ ットコーナーなど。 2 入館状況(平成 20 年度~24 年度) 年度 20 21 22 23 24 施 観 設 展 示 プ ラ ネ タ リ 計 展 示 プ ラ ネ タ リ 計 展 示 プ ラ ネ タ リ 計 展 示 プ ラ ネ タ リ 計 展 示 プ ラ ネ タ リ 計 大 室 ウ ム 室 ウ ム 室 ウ ム 室 ウ ム 室 ウ ム 人 81,246 40,636 121,882 83,625 38,743 122,368 88,832 48,422 137,254 93,350 48,523 141,873 90,103 44,715 134,818 4 覧 小 者 人 154,824 65,552 220,376 147,409 58,391 205,800 150,321 70,537 220,858 160,529 71,217 231,746 160,519 71,342 231,861 計 236,070 106,188 342,258 231,034 97,134 328,168 239,153 118,959 358,112 253,879 119,740 373,619 250,622 116,057 366,679 3 移動天文台 市民が気軽に天体観察を楽しめるよう、天体望遠鏡を搭載した移動天文車と天体について の知識・経験の豊富な指導者を市内各地に派遣し、星空の観察会を行っている。 (1) 移動天文車の設備内容 ○ 名 称 オリオン 2 世号 ○ 車 両 CNG車、定員 9 名 ○ 望遠鏡 クーデ式望遠鏡(口径 25cm、焦点距離 2,250mm) ○ その他 小形望遠鏡(10 台)、人工衛星追尾望遠鏡、太陽望遠鏡 (2) 実施状況(平成 20 年度~24 年度) 20 区分 年 実施 回数 度 参加 人数 春 期 夏 期 秋 期 合 計 24 2 21 年 実施 回数 度 22 参加 人数 年 実施 回数 度 23 参加 人数 年 実施 回数 度 24 参加 人数 年 実施 回数 度 参加 人数 186 - - - - - - - - 8 917 20 1,828 24 2,648 23 1,996 22 2,202 14 1,574 12 1,182 21 1,843 9 812 10 999 2,677 32 3,010 45 4,491 32 2,808 32 3,201 4 さっぽろ星まつり 青少年科学館では、多くの市民・家族に星に親しんでもらうため、平成 14 年から市内の 広域公園を会場にした『さっぽろ星まつり』を開催している。 平成 22 年度 2 日間 6,000 人 平成 23 年度 1日 400 人(悪天候のため、1日のみ開催) 平成 24 年度 2 日間 4,100 人 5 科学館観望会 ほぼ毎月行っている「プラネタリウム夜間特別投影」の開催日や特別な天文現象がある時 に随時行っている。 平成 22 年度 8回 750 人 平成 23 年度 4回 440 人 平成 24 年度 4回 262 人 6 天文台 札幌市天文台は、昭和 33 年に道内では旭川市に次いで 2 番目に開館され、以来 50 年 以上にわたって市民が気軽に天体を観察できる場所として親しまれている。 施設概要 ○ 所 在 地 中央区中島公園1番 17 号(中島公園内) ○ 開館時間 午前 10 時~正午、午後 2 時~午後 4 時(夜間公開の場合は随時) ○ 休 館 日 月曜日、火曜日の午後、祝日の翌日、年末年始 ○ 設備内容 口径 20cm 屈折式望遠鏡 利用状況(平成 20 年度~24 年度) 年 度 昼間公開(人) 夜間公開(人) 計(人) 22 2,705 1,477 4,182 23 2,814 1,227 4,041 24 3,696 1,351 5,047 5 3.調 調査フロー 有識 識者会議内 内で調査内容 容を検討し した後、ア ンケート・ ヒアリング グ調査及び び先進事 例他都 都市調査等 等を実施した た。各調査 査結果を有識 識者会議に に都度フィー ードバック クして今 後の推 推進体制や や方向性を考 考察した。 < <本事業におけ ける有識者会 会議のスケジ ュールと位置 置づけイメー ジ> 6 第Ⅱ章 札幌市における青少年科学館等を活用した理科教育推進の 現状と課題 「青少年科学館を活用した理科教育推進の在り方」を検討するにあたって、青少年科 学館への要望や評価、ボランティアへの興味・関心等を明らかとするために青少年科 学館来館者(児童・生徒、保護者)へのアンケート調査を実施した。また、企業・団 体の現場における現在の理科教育に対する考えや・関心等を明らかにするために、札 幌市内にある企業・団体へのアンケート調査を実施し、さらに学校現場における理科 教育の実態等を明らかとするために、小学校および中学校教員へのアンケート調査を 実施した。以下にその結果の概要を示す。 1.アンケート調査の概要 (1)科学館来館者アンケート調査の概要 【調査方法】調査員による聞き取り調査 【実施体制】現場責任者 1 名、調査員 2 名 【実施時期】平成 26 年 8 月 7 日(木)、11 日(月)2 日間 【調査時間】午前 10 時から午後 4 時 【調査対象】青少年科学館来館者(児童・生徒、同行の保護者等) ○回収状況 児童・生徒 保 護 者 計 181 件 153 件 334 件 (2)教員アンケート調査の概要 【調査方法】 (小学校)北海道小学校理科研究会の実験研修会にて記入・回収方式で実施 (中学校)郵送発送、郵送回収によるアンケート調査 【実施時期】 (小学校)平成 26 年 8 月 11 日(月) (中学校)平成 26 年 9 月 24 日(水)~10 月 8 日(水) 【調査対象】 (小学校)北海道小学校理科研究会主催の研修に参加した札幌市内の小学校教員 (中学校)北海道中学校理科教育研究会所属の札幌市内の中学校理科教員 7 ○回収状況 (小学校) 107 件 (中学校) 67 件企業・団体アンケート調査の概要 (3)企業・団体アンケート調査の概要 【調査方法】郵送発送、郵送回収によるアンケート調査 【実施時期】平成 26 年 8 月中旬~下旬 【調査対象】札幌市内に在籍する製造業、通信業、放送業、電気・ガス・熱供給 業、映像・音声・文字情報制作業、情報サービス業・インターネッ ト付随サービス業、教育関連・団体等 計 1,688 社 ○回収状況 企業・団体 319 件 (回収率 18.9%) 8 2.アンケート結果の考察 (1)科学館来館者アンケート結果について ・利用者は小学校高学年(4 年生~5 年生)が多く、来館した児童・生徒数全体の 46.4%を占める。 ・札幌市内からの児童・生徒の居住地別来館者数は、近隣の厚別区が比較的高い率 だが、遠隔地であるが、南区が一番多く 16.5%、ほとんどの区が 6~12%台と なっており、一番低かったのは手稲区の 1.6%であった。 来館者の居住地 7.1% 中央区 西区 7.1% 清田区 9.3% 7.2% 5.2% 4.1% 白石区 6.3% 南区 手稲区 1.6% 0.0% 10.3% 東区 手稲区 7.9% 北区 豊平区 13.4% 北区 11.0% 東区 白石区 14.4% 西区 12.6% 11.8% 清田区 16.5% 豊平区 16.5% 中央区 17.5% 厚別区 18.1% 南区 厚別区 5.0% 10.0% 15.0% 2.1% 0.0% 20.0% 5.0% 児童・生徒 10.0% 15.0% 20.0% 保護者 ・来館目的は展示物の見学が 69.6%、次いでプラネタリウムの利用が 53.6%であ った。 ・来館頻度は 2~5 回目の児童・生徒が 47.5%と最も多く、次いで 10 回以上が 19.9%であった。 ・展示物やイベントに対する要望では、 「自然に関する展示」が 38.1%、次いで「友 達と一緒に参加できる実験」が 35.9%であった。 ・保護者に対する「科学館に求める施設やサービスの要望」では、「実験などの体験 型のプログラム」に対する要望が 62.1%と非常に高い。 ・保護者に対する「科学館ボランティアへの関心度」は、「関心がある」が 66.7% と最も高い。 ・保護者に対する「学校での理科教育への要望」は、 「実験を伴う授業を増やしてほ しい」という意見が 22 件と最も多く、次いで「体験学習を増やしてほしい」と いう意見が 10 件あった。 ・保護者に対する「青少年科学館に期待すること」は、「特にない」、「今のまま長く 存在してほしい」という意見が 14 件と最も多く、次いで「子どもたちに興味の あるものを提供し続けてほしい」5 件、 「新しい技術を紹介してほしい」3 件であ った。 9 ●科学館来館者アンケートの考察 (アンケート内容の整理) ・居住地別来館者数では、夏休み期間中でもあり、近隣(厚別区)の来館者に偏ること なく、各区から来館者があった。 ・来館目的では、展示物の見学、プラネタリウムの利用が大半を占めていた。 ・今後求める展示物やイベントでは、 「自然関係」 「友達と一緒の実験」 「自然災害メ カニズム」を求めるものが多く、保護者も「自然関係」「自然災害メカニズム」を 求めるものが多い。 ・保護者からは、施設やサービスについて、「実験等プログラム」「フードコート等 飲食関係」「大人も参加できるプログラム」を求める声が高い。 ・保護者の科学館ボランテイアへの関心度は高い。 ・保護者の学校の理科教育に対する要望には、「実験を多くしてほしい」「体験学習 を増やしてほしい」の意見が非常に多い。 (調査結果から見る考察) ・近隣(厚別区)の児童・生徒の利用に限定されている可能性については、今回の夏休 み期間での調査からは必ずしも見受けられない。 ・児童・生徒のリピーターが多い。リピーターを飽きさせない取組が必要。 ・保護者からは、科学館を肯定的に捉える意見が多い。科学館が果たしている役割 について市民理解が得られている。 ・展示物については、子ども、保護者ともに「自然関係」「自然災害メカニズム」に 関する要望が多いことから、何らかの取組が必要。 ・「実験する」ことへの要望は多い。また、学校の理科についても、同様の意見が多 い。科学館ばかりではなく、学校の理科においても、「観察、実験」を行う機会・ 学習を増やす取組みが必要。 ・大人が参加できるプログラムを求める声もあり、生涯学習の観点や新たな利用者 増の取組として何らかの検討をすべき。 (2)教職員アンケートについて ・理科授業等での科学館の利用頻度は、受け持つ学年にもよるが、小学校教員で年 間 1 回が 58.9%、0 回が 32.7%。中学校教員で 0 回が 74.6%、1回が 17.9%。 ・利用しなかった理由として、小学校では「学年で利用する機会がない、単元との 関連性が認識できない」が多く、中学校でも「単元との関連性」を上げるものが 多かった。その他、移動距離・時間を上げるものも多くあった。 ・利用目的では小学校の 93.3%が 4 学年「月と星」、6.7%が 6 学年「月と太陽」 の単元で来館利用している。中学校では、来館利用は少なく主な利用は、実験・ 実習セットの貸出しによるものが多い。来館している中学校では、3学年の「エ ネルギー」や「天体の日周運動、星の年周運動」などで利用している。 10 ・青少年科学館に必要と思われる展示物やイベントでは「地震や津波、火山噴火な どの自然災害発生のメカニズム」が小学校で 64.5%、中学校で 53.7%となり両 者ともに最も高い。 ・学校が科学館を更に活用するためには、どのようなことが必要かという設問に対 しては、小学校では「6 学年の『月と太陽』の学習において、利用できるプログ ラムがあればよい」、中学校では「学校ではできない観察や実験」という意見が多 かった。 ・小学校教員に対する、観察、実験を伴う授業等における支援についての設問に対 しては、 「観察、実験アシスタントの充実」、 「理科支援システムのような形での学 校内での研修」、「学習単元に即した実験・実習セットの充実化」といった意見が 多く見られた。 ・実験・実習セットについて、中学校教員への設問では、貸出を受けるためには科 学館に取りに行く必要がある、単元に則した実験セットの充実などの意見が多く あった。 ・中学校が青少年科学館を活用するための提案については、科学館で学習できる内 容とカリキュラムとの関連性や交通手段の確保に関するものが多かった。 ・理科学習における子どもたちの実態や理科教育に対する考えについての設問では、 小中学校ともに、観察、実験を伴う授業は、子どもたちの興味・関心が高く、意 欲的であること。小学校の教員からは、観察、実験を多く取り入れたいが、準備 に時間を費やしたり、実施の際に危険を伴う等の理由から増やし難いとの回答が 多く見られた。 ・理科における観察、実験を伴う授業についての苦手意識を問う設問(小学校教員 にのみ実施)では、 「苦手意識は無い」47.7%、 「苦手意識がある」45.8%と拮抗 した数値結果となった。教員の男女別でみると男性「苦手意識は無い」73.2%「苦 手意識がある」25%に対して、女性「苦手意識は無い」20.0%「苦手意識があ る」68.0%と相反する結果となった。 理科における観察、実験を伴う授業についての意識(男女教員別) 無回答, 1.8% 観察、実験 を伴う授業 に苦手意識 がある, 25.0% 観察、実験 を伴う授業 に苦手意識 はない, 73.2% 無回答, 12.0% 観察、実験 を伴う授業 に苦手意識 はない, 20.0% 男性教員 観察、実験 を伴う授業 に苦手意識 がある, 68.0% 女性教員 11 ●教職員アンケートの考察 (アンケート内容の整理) ・担任となる学年にもよるが、小学校が青少年科学館を訪れる頻度は高いが、中学 校は低い。 ・小学校で利用する学年で最も多いのが、小学4年生の「月と星」の 93.3%である。 ・小学校、中学校ともに必要な展示物として、「自然災害メカニズム」が最も高い。 ・青少年科学館の更なる活用については、小学校では6年生の「月と太陽」、中学校 では、学校ではできない観察や実験との回答が多い。 ・観察、実験を伴う授業への支援策については、小学校では「観察、実験アシスタ ント」の派遣等を求めるものが多く、中学校では実験・実習セットの充実等を求 めるものが多い。 ・青少年科学館を中学校が利用するためには、カリキュラムとの関連性を高めるこ とと交通手段の確保を求める意見が多い。 ・小学生、中学生ともに理科への関心度や意欲は高い。 ・小学校の教員の観察、実験を伴う授業に対する意識は、男性より女性の方が苦手 との回答が多い。 (調査結果から見る考察) ・学校利用のほとんどが、小学 4 年生での「月と星」の単元であり、その他の学年 での活用策を検討すべきである。 ・青少年科学館を活用するものとして、学校では学習し難いもの、特に「自然災害 メカニズム」については、展示物の整備を求める声が多く計画的な整備が必要。 ・中学校が青少年科学館を利用するには、学校ではできない観察や実験ができるこ とを求める意見が多いことから、施設機能の拡充に向けた取組が必要。 ・小学生、中学生ともに理科への関心度や意欲が高いとの意見が多いことから、観 察、実験を伴う授業が行われやすくなるような取組が必要。 ・小学校教員において、理科の観察、実験を伴う学習に対する自信がそれほど高く ない。観察、実験に対する支援として、多くが「観察、実験アシスタント」を希 望している。 ・中学校理科教員が求める支援は、実験・実習セットの充実等であり、貸出数や貸 出手法等の改善に取組むことが必要。 12 (3) 企業・団 体アンケー ート結果に について ・回答 答の多かっ った企業・団 団体の業種 種は、製造業 業が 38.6% %、情報サ ービス業・ ・インタ ーネ ネット付随 随サービス業 業が 24.8% %であった た。 ・理科 科教育に活 活用可能な製 製品やサー ービス、技術 術等を所有 有している企 企業・団体 体は全体 の 19.1%で あった。 ・理科 科教育関連 連イベントな などに出展 展したことが がある企業 業・団体は全 全体の 4.4 4%、青 少年 年科学館を を活用又は連 連携したイ イベントに参 参加した企 企業・団体は は 2.5%であ あった。 ・青少 少年科学館 館で充実した た方が良い いと思われる る機能・サ ービスにつ ついては、 「体験型 「 のプ プログラム ム」が 64.3%と最も高 高く、次いで で「地域の特 特色を活か したプログ グラム」 が 33.5%で あった。 少年科学館 館と連携した た事業展開 開については は、 「今のと ところ連携事 事業は想定 定してい ・青少 ない い」がもっ っと多く 78 8.7%であ り、「製品 ・サービス ス・技術の提 提供・貸出 出し等で 連携 携したい」 が 10.0% %あった。 と連携した事 青少年科学館 青 事業展開につ いて ・企業 業・団体が が求める人材 材像の育成 成に必要な能 能力等に関 関する意見に については は、探究 心 ・好奇心を を高めるこ とを期待す するものや人 人格形成・ 一般常識等 等に関する るものが 多く く、論理的 的思考力やコ コミュニケ ケーション能 能力に関す する意見も多 多くあった 。 ・青少 少年科学館 館への意見 ・提案につ ついては、先 先端技術を を意識した展 展示物の更 更新や体 験的 的なメニュ ューを取り入 入れること とに関する提 提案が多く くあった。ま また、大人 人が利用 でき きる、中学 学生、高校生 生、大学生 生になっても も学習に利 利用できるこ ことを求め める意見 もあ あった。 13 ●企業・団体アンケートの考察 (アンケート内容の整理) ・回答のあった企業・団体のうち、製造業の占める割合は 38.6%である。 ・理科教育に活用可能な製品やサービス、技術等を所有している企業・団体は、全 体(319 団体)のうち 2 割程度(61 団体)。理科教育関連イベントなどに出展したこ とがある企業・団体は 4.4%(14 団体)、青少年科学館を活用したイベントに参加 した企業・団体は 2.5%(8 団体)であった。 ・今後科学館と「製品・サービス・技術の提供・貸出し等で連携したい」という企 業・団体が 1 割程度(32 団体)ある。 ・企業が求める人材像に関する意見への回答数は非常に多く、内容として人格形成 やコミュニケーションに関するものも多くあったが、探究心・好奇心や思考能力、 想像力、実体験に関するものもが多くあった。 ・青少年科学館で充実した方が良いと思われる機能・サービスについては、体験型 のプログラムに関するものが最も多く、次に展示物に関するものが多くあった。 (調査結果から見る考察) ・企業等の求める人材像として、 「科学的リテラシー」を育む学びにより培うことが できる探究心や想像力、実体験能力を求めるものが多くあることを確認できた。 ・理科教育に活用可能な製品や技術等を有する企業は、61 団体あるが、イベント等 への参加経験のある団体は 14 団体、青少年科学館を活用したイベントに参加し たことがある企業・団体は 8 団体であり、今後、これらの製品や技術等を有する 企業等との協力が深められるような取組みが必要。 ・企業等が青少年科学館に求めるものは、身近な製品や自然現象などから体験的に 学ぶ機能の構築への取組みに対する期待が多いことから、イベントや展示物の整 備に反映させていくことが必要。 14 3.ヒアリング調査の概要 (1)調査の目的 札幌市における理科教育推進のための課題等を踏まえ、科学館と連携した事業 の可能性や内容等について調査することを目的とし、ヒアリング調査を実施した。 (2)調査方法・時期 ●調査方法:訪問によるヒアリング調査 ●実施時期:平成 26 年 11 月~12 月 (3)調査対象 札幌市の理科教育推進において企業や大学等と連携した取組が少ないといった 現状・課題を踏まえ、web 情報やアンケート結果を参考に理科教育推進に先進的 に取り組んでいる企業・大学・研究機関等の候補を選定し、6 事例について調査 した。 ヒアリング調査先一覧 日 時 (平成 26 年) 11 月 18 日 11 月 26 日 11 月 28 日 11 月 19 日 調査先団体名 理科教育の実施内容 ・出張授業 ・施設見学プログラム 北海道ガス株式会社 ・出前授業 ・施設見学 科学であそぼ「おもしろ実験室」 ・体験学習 北海道電力株式会社 株式会社北海光電子 ・理科支援授業 (出前授業) 北海道大学(CoSTEP) ・電子顕微鏡の貸出し ・科学技術コミュニケーター 養成プログラム 北海道科学大学 ・高大連携授業 ・「 青 少 年 の た め の 科 学 の 祭 12 月 8 日 典」への協力 千歳科学技術大学 ・理科工房 ・小中学校との連携 12 月 12 日 ・公開講座 15 4.ヒアリング結果の考察 ヒアリング調査結果一覧 ヒアリング先 理科教育の 学校教育との 青少年科学館 企業や大学、ボ 研究成果発表 実施状況 連携 との連携 ランティアとの連 の場としての科 携 学館活用の可 能性 北海道ガス ・出張授業 副読本を作 環境科学展へ 企業との連携は 当面は子どもた 株式会社 ・施設見学 成・配布 の出展等 バスツアー等で ちへの体験活動 バスの無料貸 実績あり の場として考え 出 北見工大と共同 たい プログラム 研究 北海道大学 科学技術コミュ 北大内外での ガイドブック作 大学間連携 工夫次第で成果 (CoSTEP) ニケーター養 連携 成 ボランティア・企 発表の場として 科学におけるコ 業向科学コミュ 科学館を活用す ミュニケーショ ニケーション技 ることは可能 ン能力の開発 術向上の支援 成プログラム 北海道電力 ・出前授業 理科実験教室 ブースでの出 北大生に各教 北理研、道中理 株式会社 ・施設見学 定期コース 展はコスト的な 室のアシスタント の研究の成果 科学であそぼ ・体験学習 1 日教室の実 面から現状で として来てもらっ 発表の場として 施 は難しい ている 活用可能 「おもしろ実験 室」 株式会社 電子顕微鏡の 理科支援授業 実験装置の貸 北海道大学教 北大と科学館を 北海光電子 貸出し (出前授業)の 与や操作方法 授や研究所との つないで顕微鏡 理科支援授業 実施 の説明などの つながりは強い をリモート操作し (出前授業) 人的支援等で 成果発表するこ 連携できる可 とが可能 能性がある 北海道科学 高大連携授業 出前授業 科学館主催の 企業・機関等と 教員の成果を子 大学 「青少年のた 公開講座の実 「大学生による の連携、研究者 ども向けに発表 めの科学の祭 施 科学教室」に参 の受入や応用・ することは難し 加、移動天文 実証研究・製品 い。講演等を行 車イベント利用 テスト等の受託 う方が現実的 典」への協力 千歳科学 高大連携 出前授業 「大学生による 教職課程学生 近隣学校の科 技術大学 理科工房 公開講座の実 科学教室」を科 学習ボランティ 学クラブの発表 小中学校との 施 学館で実施 ア の場、体験でき 連携、公開講 るラボ、大人向 座 けのサロンとして 活用すべき 16 ●ヒアリング調査の考察 (ヒアリング内容の整理) ・企業等が行っている市民対象の理科教育について、北海道ガスや北海道電力では、 独自の理科教育プログラムを構築し理科実験教室・施設見学等を実践している。 北海光電子においても自社製品の電子顕微鏡を活用した理科支援教室を実施して いる。 ・学校教育との連携については、北海道ガスでは副読本を作成し配布している。 また、科学技術大学や千歳科学大学、北海光電子では、出前講座等を行っている。 ・青少年科学館との連携について、既にイベント等で連携した経験がある企業も多 く、中には過去に展示物を提供した企業もある。 ・企業、大学、ボランティアとの連携について、大学や企業ともに様々な大学・企 業等と連携を図っている。また、ボランティアについて、北海光電子では、OB 等 を活用し出前講座等を実施している。千歳科学技術大学においては児童生徒の学 習支援を行う学生のボランティアの育成に励んでいる。なお、北海道大学 (CoSTEP)では毎年、科学技術コミュニケーターを養成している。 ・研究成果の発表の場としての青少年科学館の活用については、自社製品を使った 研究成果の提供は可能とした企業がある一方で、大学の持つ研究成果等の発表に 活用するには、主な対象者が小中学生である青少年科学館では、馴染まないので、 実施の際にはインタラクティブ性等の工夫を凝らすなどの必要があるとの回答も あったが、総じて協力的である。 (調査結果からの考察) ・理科教育の実施について、今回調査した大学・研究機関の中には、自ら理科実験 教室等を持つ企業もある。また、青少年科学館で行われた科学体験イベント等で 協力した経験を持つ企業等がある。連携・協力を深め、研究成果や最新科学技術 の提供を受けるための何らかの取組や、常日頃から企業等の持つ製品や研究開発 に関する情報を蓄積し、連携を模索するなどの取組が必要。 ・青少年科学館を大学・企業等の発表の場とするためには、インタラクティブ性等 を取り入れるなど、企業・大学等の製品、成果、発表の場として成り立つような 工夫と、青少年科学館での活動が社会貢献となり市民へ還元されていることを公 表していくことが重要。 17 第Ⅲ章 他都市における科学館等を活用した理科教育推進の先進事例 本調査事業では、他都市における科学館等を活用した理科教育推進の先進事例を 調査し、札幌市における課題を抽出・克服するためのヒアリングや事例調査等を実 施した。以下にその結果の概要を示す。 1.先進事例他都市調査の概要 (1)調査の目的 札幌市における理科教育推進のための課題等を踏まえ、学校教育や企業・大学 等と連携した先進事例を調査することを目的とし現地訪問・ヒアリング調査を 実施した。 (2)調査方法・時期 ●調査方法:訪問によるヒアリング調査 ●実施時期:平成 26 年 8 月~9 月 (3)調査対象 ①札幌市の理科教育推進において企業や大学等と連携した取組が少ないといった 現状・課題を踏まえ、web 情報や文部科学省が 2007 年に実施した「科学館・ 博物館の特色ある取組みに関する調査」等を参考に理科教育推進や企業・大学・ 市民との連携に先進的に取り組んでいる地域・施設等候補を選定し、6 事例を 調査した。 視察・ヒアリング先一覧 日 時 科学館名 ヒアリング対応者 8 月 18 日 出雲科学館 科学館副館長他2名 8 月 19 日 大阪科学技術館 普及事業部副長他3名 8 月 20 日 京都まなびの街生き方探究館 事務局長、室長 9月3日 伊勢原市立子ども科学館 副主幹、研修指導主事 9月4日 静岡科学館る・く・る 主査、エデュケーター 9月4日 日本科学未来館 運営調整担当2名 (平成 26 年) 18 2.先進事例他都市調査結果 出雲科学館 日 時:平成 26 年 8 月 18 日(月) 対応者:出雲科学館副館長 木村 15:00~17:00 和之氏、教諭 中山 慎也氏 ●出雲科学館の概要 事 業 主 体 出雲市 活 動 内 容 理科授業、科学実験、工作、木工 館 2002 年 地 島根県出雲市今市町 1900-2 数 147,417 人(平成 25 年度) 特色ある取組み の カ テ ゴ リ ー 大人向けの展示・プログラム 学校教育や企業・大学等と連携 取 組 み 事 例 当館で開催した木工教室において参加者が製作した作品や、木 工教室の講師の作品約 20 点を展示 事 容 出雲科学館では、市内の小中学校の児童・生徒(小学 3 年~中 学 3 年)が、正規の理科学習を行っている。1 回当たりの授業 時間は 3 単位時間(45 分× 3 単位時間)。また土日祝日を中 心に、子どもから一般を対象とした科学・ものづくりに関する さまざまな生涯学習事業を展開している。年間計画に基づく体 系的な理科学習(学校教育)と生涯学習(社会教育)の機能を合 わせ持つ全国でも珍しい施設である。 考 理科学習後の生徒の反応も大多数が肯定的で、学力調査結果も 県内平均点を上回っている 開 所 来 備 在 館 業 者 内 (管理運営:出雲市教育委員会) 延べ床面積 出雲科学館の外観 2,824 ㎡ 理科学習棟入口 19 (1)経 緯 出雲科学館は、平成 7 年に検討委員会を設置し、平成 14 年 7 月に開館した。 平成 17 年に 2 市 4 町の合併に伴い、理科学習棟が不足するので新館を増設した。 平成 23 年 1 町編入合併以降、現状の施設で運営している。 当館の設立主意は、 「科学技術創造立国をめざす我が国の科学技術の発展と人材の 育成に資するため、学校教育での理科学習の充実と、市民各層の科学技術の知識や 技術の高度化を図り、もって 21 世紀出雲の発展を目指す」こととなっている。具 体的な目標、成果としては、 1.豊富な実験器具、機材、高度な設備、充実したスタッフで構成された理科学 習センターを設置して、学校ではできない感動と驚きに満ちた理科授業を展 開していくことで、子どもたちの科学への興味、関心を喚起する。 2.子どもから大人までを対象にさまざまな実験教室やものづくり教室を開催し、 新たな発見やものづくりでの感動を共有していくことで科学技術に関する知 識や技術の習得をめざしていく。 3.地域の大学、高等学校などの各種教育機関や民間識見者、ボランティアなど と密接な連携をとりながら、人、もの、手法など教育資源の効率的な活用を 図っていくことで、地域全体の教育環境の充実を図る。 としている。 (2)施設、サービスの現状について(利用者数、利用者属性、サービス等) 入館者数は平成 25 年度で約 14.7 万人である。平成 19 年の 16.4 万人をピーク に減少傾向にあるが、ここ数年 15 万人を切る程度で推移している。 休館日は月 1 回第 3 月曜日となっているが、理科学習が入っているので完全休館 日は年末年始のみである。開館時間は 9:30~17:30。 利用者属性では理科学習の生徒来館者が約 2.1 万人、幼稚園の体験学習 428 人、 それ以外の約 12 万人が生涯学習等での来館者となっている。近年は、就学前の子 どもと保護者の来館が多く、低年齢化している。イベントとしては、年に 1~2 回 ノベール賞受賞者の講演会等を実施している。 20 出雲 雲科学館 21 館内図 (3)学 学校教育と との連携につ ついて 理科 科学習は、私立の小学 私 学校 40 校、 、中学校 15 5 校全校を 対象に、年 間 13 回実 実施し、 延べ 719 クラ ス、参加人 人数は平成 25 年で 20,920 2 人に達して 人 いる。また た、私立 中学校 校も学校か からの要望に により受け け入れている る。 連携 携を図るう うえでは市の の教育委員 員会の管理下 下にある組 組織であるこ ことが大き きなメリ ットと となってお おり、 「出雲 雲科学館の設 設置及び管 管理に関す条 条例」に基づ づいて市内 内全校で 理科学 学習が実施 施できるこ とになって ている。そ ういう意味 味で連携も取 取りやすい いし、学 校現場 場との意思 思疎通も図れ れる。 出雲 雲科学館 出 展 : 平 成 25 年 度 小中 中学校理科学 学習カリキュ ラム 出雲科学館年報 22 23 13 3 単元の理 理科学習を実 実施するた めに、「理 科学習内容 容検討委員会 会」を設置 置してい る。小 小・中学校 校の地域を代 代表する先 先生(小・中各 各 7~8 名)に委嘱し 名 し、単元の内 内容・実 施時期 期等を検討 討している (年 3 回程 程度開催)。 それ れぞれの単 単元ごとに事 事前の打ち ち合わせ会を を実施し、引率の先生 生が T1(全 体指導) として て、科学館 館からは T2 2(実験指導 導)、T3(机 間指導)とい いうかたち ちで実施する る。 不登 登校傾向に にある生徒を を対象にし した授業も 9 回~10 回程度行っ っている。 4 月当 とした工作 初には は学校に戻 戻そうと考え え行ってい いる。特別支 支援のこど どもも対象と 作や実験 授業も もある。バ バスで科学館 館へ移動し し、子どもた たちとの交 交流を兼ねて て行ってい いる。全 ての子 子どもたち ちが科学館を を活用して て学習すると というコン セプトのも もと行って いる。 また た、トップ プ層を引き上 上げたいと という思いか から、レベ ベルアップ☆ ☆サイエン ンスとい う教室 室も行って ている。人数 数は少ない が全学年の の 1%16 人程度の参 人 参加がある。全国規 模の科 科学コンク クールでの受 受賞者も出 出てきている る。 一方 方で教員研 研修を実施し している。 年 2 回程 度行い、教 教職員のスキ プを図っ キルアップ ている る。また、 教職員が 自主的に理 理科教育につ ついて学べ べるサイエン ンスサロン ンという 場も提 提供してい いる。 (4)理 理科学習後 後の生徒の反 反応につい いて アン ンケートで で生徒の反応 応を見ると と、大多数の の生徒が「で できた」、 「だ だいたいで できた」 という う回答であ あった。自己 己肯定感を 高めること とが学習意 欲につなが がるとの考 えから、 非常に に良い結果 果が出ている ると評価し している。 また た、引率の の先生の反応 応も大多数 数が「効果的 的であった 」「やや効 果的であっ った」と いう回 回答であっ った。 出雲科学館 館 出展:平成 2 25 年 度 理科学習 アンケート 出雲科学館年報 24 (5)地域の企業や大学、ボランティアとの連携について 中学校 3 年生の「科学技術の発展」という単元で、最先端ロボット技術として「ム ラタセイサク君」が登場しているが、これは企業のボランティアで協力してもらっ ている。また、この単元では、島根大学医学部附属病院から内視鏡カプセルの技術 などを紹介してもらっている。教員研修でも大学に協力してもらって題材を提供し てもらっている。 ボランティアについては、登録者数は 40 人。教室等の指導補助や植栽管理、展 示装置の説明等の活動をしてもらっている。活動者数は年間延べ 1,007 人になる。 初年度からほぼこの人数規模なので適正数だと考えている。土・日の教室を自分た ちで開催したいという意見も出てきており、人材が育っていると評価している。 (6)運営上の課題について(予算、人材等) 人材については、科学館所属が館長を含め市教委の職員が 7 名、講師が 8 名、指 導助手 8 名の計 23 名、理科学習棟の方では 6 名の教諭派遣を受け入れており、計 29 名の職員が勤務している。 予算は年間で約 1.3 億円(管理費 0.5 億、人件費 0.6 億、理科学習経費 0.2 億) で運営している。光熱費が特にかかる。理科学習経費のうち約 0.15 億がバスの運 行経費。課題は、現在島根県から教諭の派遣を受けているが、加配(通常より教員を 多く配置すること)の制度の中で派遣されており、生徒数減による加配教員数削減を 危惧している。 また、講師は臨時的採用(定年まで働ける)で処遇も低いため、人材の安定的な確保 が大きな課題となっている。理科学習を推進するには職員が定着し、レベルアップ する必要があると考えているが、財政再建中の出雲市としては対応が難しい状況で ある。 (7)将来的に実現したいプログラム、カリキュラム・展示等について 将来的には粒子やエネルギーといったような分野での系統性を重視したカリキュ ラムの構築ができないか検討している。今までは興味関心をひく内容が多かったが、 より専門性の高い系統だった内容を提供していきたいと考えている。 施設・設備の更新もしていきたい。平成 25 年度は地元企業等から 3 件の寄付の 申し出があった。 (8)理科教育の在るべき姿、将来像、行政への要望等について 小学校の理科の先生のレベルアップを図っていきたいと考えている。また、幼・ 小・中・高の連携を図っていく必要があると考えている。幼稚園には出前授業、高 校と大学との連携もスタートした。高校は受験科目としての理科・科学となってし まっているので少しでも実践的なものを提供していきたい。 人材確保の面からは、例えば科学館経験者に僻地学校を経験したこととするみな しの扱いをするなどを検討して欲しいと考えている。 また、科学館で勤務すると理科の教材研究に没頭できるというメリットがあるの で、良質な理科学習教材を開発していきたいとも考えている。 25 大阪科学技術館 日 時:平成 26 年 8 月 19 日(火) 13:30~15:15 対応者:大阪科学技術センター普及事業部 部長 足立 昌隆氏、課長 橋本 一 氏 課長 松本 尚子氏、副長 中村 雅憲氏 ●大阪科学技術館(て く て く テ ク ノ 館 ) の 概 要 一般財団法人大阪科学技術センター 事 業 主 体 活 動 内 容 開 館 所 在 地 来 館 者 数 特色ある取組み のカテゴリー 事 業 概 要 取 組 み 事 例 備 考 企 業 や 研 究 機 関 の 出 展 に よ る 産 業 技 術 及 び 科 学 技 術 に 関 する 先端技術を体験型の展示物等で学ぶ科学館 1963 年 延べ床面積 1,300 ㎡ 大阪府大阪市西区靱本町一丁目 8 番 4 号 約 24 万人(平成 25 年度) 学校教育や企業・大学等と連携 大阪科学技術センタービルの 1F-2F に施設がある。 館内は 出展企業単位でブースが設けられており、環境技術・資源エネ ルギー・建設技術・生活科学・エレクトロニクス・地球環境・ 新 素 材 等 そ れ ぞ れ の 分 野 の 先 端 科 学 技 術 を ゲ ー ム 感 覚 で 学ぶ ことができる、体験参加型の科学館である。 科学技術や産業技術を紹介し、見学者自身が見て・聞いて・触 れ、科学技術の知識が容易に理解できる展示を実施している。 出展企業・団体 関西電力、ケイ・オプティコム、プランテック、非破壊検査、 新日鐵住金、大阪ガス、日立造船、大林組、日本原子力発電、 NTN、宇宙航空研究 開発機構、海洋研究開発機構、音羽電 機工業、利昌工業、三社電機 製作所、堀場製作所、日本原 子力研究開発機構、東芝、日立製作所 パナソニック、宇部 興産、三菱電機、大阪科学技術センター 大阪科学技術館の外観 大阪科学技術館(大阪科学技術館センター)入口 26 (1)経 経 緯 大阪 阪科学技術 術館は、19 960 年 4 月 月に発足し た財団法人 人日本科学技 技術振興財 財団関西 地方本 本部大阪科 科学技術セン ンターの主 主要事業とし して、196 63 年に誕生 生した。大 大阪科学 技術セ センターは は、関西財界 界をはじめ め、大阪府、 大阪市、 ならびに科 科学技術庁 の支援 によ り財団法人 人として創設 設され、そ その後、昭和 和 55 年に 、科学技術 術庁と通商 産業省 の共管 管団体とな なった。平成 成 24 年 4 月からは、 、一般財団 団法人として て新たな一 一歩を踏 み出 している。 平成 22 年には設立 年 立 50 周年を を迎えた。 当館 館の設立主 主意は、 「科 科学技術の振 振興に関す る諸事業及 及び地域開発 発の促進に に関する 事業を を産学官連 連携等により り総合的か かつ効果的に に推進し、 関西産業発 発展の基盤 の強化 に資す するととも もに、わが国 国科学技術 術水準の向上 上に寄与す ることを目 目的とする 。」とな ってい いる。 (2)施 施設、サー ービスの現状 状について て(利用者数 数、利用者 者属性、サー ービス等) 入館 館者数は平 平成 25 年 度で約 24 4 万人とな っている。 毎年ほぼ 同じ人数で で推移し ている る。当館は は、天文や科 科学技術と といったテ ーマを集約 約した展示館 館ではなく く、大阪 近辺も もしくは全 全国の様々な な企業、研 研究機関の先 先端技術に について、体 体験展示物 物を通し て広く く普及啓発 発する科学館 館となって ている。現在 在 23 ブー スに 19 社 5 団体が が参加し ている る。分類上 上のテーマ としてマテ テリアル、ニ ニューライ イフ、アース ス、インフ フォメー ション ン、エネル ルギーの 5 つのカテゴ ゴリーを設 定して、各 各ブース色分 分けして判 判別でき るよう うにしてい いる。学校向 向けにワー ークシート も用意して ており、分類 類ごとに紹 紹介して いる。 。ターゲッ ットは小学校 校高学年と となっている る。常設展 展示以外にも も工作教室 室、実験 ショー ーや期間限 限定の特別展 展等を実施 施し、いつ来 来ても新し しい発見があ あるように に努力し ている る。 大阪 阪科学技術館 大阪科学技術 術館 館内図 フロア ガイド・出展 展企業 27 28 (3)学校教育との連携について 学校への出前事業は小学校で実験授業を年間 20 回、中学校はエネルギー、環境 教育の授業で年間 10 回前後、教職員向けのティーチャーズスクールを年間 10 回 前後実施している。小学校は地域を限定して教育委員会に協力を得て実施している。 1 校あたり低・中・高学年別に 3 回実施し、体育館に 150 名程度集めて実施して いる。中学校では今年度放射線教育についての要望が非常に多くなっている。 基本的には無料で実施しているが、企業・団体から依頼があった時などは有償で 実施する場合もある。企業の一般工場見学があるとき等にイベントとして実施して いる。キッザニアでも実施したことがある。 ティーチャーズスクールは直接的に授業で使えるものを題材に実施しているので、 先生方からは非常に評判が良く、リピーターも多い。材料費等は企業等の事業協賛 金でまかなっている。所要時間は 60 分から 3~4 時間まで様々である。 また、科学館には社会見学等で交通機関の乗り放題チケットを使ってグループ単 位で来館する生徒さん達もいる。学校単位で来館することもある。 (4)地域の企業や大学、ボランティアとの連携について 科学館への企業出展者は継続的に出展しており、特別な公募をしている訳ではな いが厳しい経済情勢の中、関西の企業 2 社が出展を取りやめたこともあり、何とか 新しい出展者を誘致しようと努力している。 年間出展料は 25 ㎡で 246 万円、49 ㎡で 492 万円、74 ㎡で 738 万円となっ ている。商品の PR は禁止事項としている。 ブースの管理はなるべく費用がかからないようにお願いしている。企業側から展 示説明等に人を出してもらうことはしていない。科学館の 14 名(平成 26 年 10 月 10 日現在)の職員で効率よく対応している。 財団の賛助会員数は 400 社弱あり、会費(1 口 10 万円)をいただいている。2012 年に一般財団法人に移行した際に会員企業の見直しをしたが、結果的に賛助会員の 減少はほとんどなかった。 大学との連携では、大阪大学と大阪市立大学、大阪府立大学との包括協定を結ん でいる。現状は協定内での情報交換が主であり、まだ特別な取組は実施していない。 ボランティアの歴史は比較的新しい。50 周年を機に採用を開始し、現在は 12 名 程度。企業の OB が多い。交通費のみ支給している。市外の方も多い。 大阪市立科学館との連携は、かつては交流があったが現在は特に実施はしていな い。イベントごとにチラシ配布協力程度である。てくてくミュージアム※との連携 では、スタンプラリー等はあるが、動員の面での連携、共同事業などの展開はない。 (5)運営上の課題について(予算、人材等) ブースの空きスペースがまだある。工作・実験等のイベント時に利用しているが、 経費とのバランスがあるので出展者を増やすことが課題である。 29 (6)将来的に実現したいプログラム、カリキュラム・展示等について 目ざすプログラムの方向性としてはショーアップしたかたちで子どもたちの興味 をひく実験授業にしていきたい。ただ単に結果を見せるのではなく、 「なぜそうなる のか」という学習要素に加え、科学マジック等を駆使して興味・関心をひかせるこ とが大事だと考えている。 施設として増やしたいブースは化学(医療)、生物、IT、ゲーム企業等のブースを 増やしたい。 ※てくてくミュージアム:大阪市立の博物館・美術館・動物園の 8 施設(大阪市の博物館群)では、 「大 阪てくてくミュージアム」の愛称のもとに相互に連携し、市民の皆様をはじめとする多くの方に向 けて、総合案内パンフレットの発行や共同キャンペーン「ミュージアムウィークス」などの魅力あ る事業実施に取り組んでいる。 【てくてくミュージアム参加施設】 大阪市立東洋陶磁美術館 大阪市立科学館 大阪市立美術館 天王寺動物園 大阪城天守閣 大阪歴史博物館 大阪新美術館建設準備室 大阪市立自然史博物館 30 京都まなびの街生き方探究館 日 時:平成 26 年 8 月 20 日(水) 対応者:事務局長 永田 9:20~11:00 和弘氏、 企画推進室長 小嶋 明氏 ●京都まなびの街生き方探究館の概要 事 業 主 体 活 動 内 容 開 所 館 在 業 概 取組み事例 (管理運営:京都市教育委員会) 職業体験、生活設計体験実習、モノづくりに関する展示学習・工 房体験等 2007 年 延べ床面積 5、949 ㎡ 京都市上京区西洞院通下立売下る東裏辻町 402 地 特色ある取組み のカテゴリー 事 京都市 要 学校教育や企業・大学等と連携 1 スチューデントシティ・ファイナンスパーク 元滋野中学校の校舎を改修し,平成 19 年 1 月に京都まなびの街 生き方探究館を開設。施設内に設置した実際の「街」で,ジュニ ア・アチーブメントの教育プログラムを活用し,小中学生が職業 体験や生活設計体験を学校教育活動の一環として行っている。 2 京都モノづくりの殿堂・工房学習 京都のモノづくり企業の創業者・科学者等の努力や情熱を紹介・ 展示する「京都モノづくりの殿堂」と殿堂に関連するものづくり の体験学習を行う「モノづくり第一工房」を平成 21 年 2 月に開 設。平成 22 年 8 月には地階に「モノづくり第二工房」を開設し、 小学生が学校教育活動として体験学習を行っている。 3 生き方探究・チャレンジ体験推進事業 学校・総合支援学校の対象学年の全員が市内の 3,700 箇所の事業 所の協力を得て,3~5 日間の職場体験・勤労体験を行う「生き方 探究・チャレンジ体験」を推進している。 施設の運営に年間約 5,300 名余りのボランティアに協力を受け ている。ボランティアの登録者数は 440 名(平成 26 年 3 月末 現在)であり、増加傾向にある。ブース出展企業 42 社も全てボ ランティアであり、ブース設置の初期投資、学習運営上の商品・ 教材、人件費も企業側が負担している。 京都まなびの街生き方探究館 入 口 京都まなびの街生き方探究館の外観 31 (1)経 経 緯 当館 館は、平成 成 19 年 1 月 19 日に に元京都市立 立滋野中学 学校跡地に開 開設された た。 京都 都まなびの の街生き方探 探究館では は、平成 14 4 年に設立 された「2 1 世紀型教 教育コン テンツ ツ開発委員 員会」 (委員 員長:堀場雅 雅夫 堀場 場製作所最高 高顧問)の 提案を受け け、産学 公連携 携の下、小 小・中学校段 段階から子 子どもたち に勤労観、 職業観を育 育む「生き き方探究 教育 (キャリア ア教育)」等 等の更なる推 推進を図る ため、世界 界最大の経済 済教育団体 体である ジュニ ニア・アチ チーブメン ト(日本本 本部代表理事 事:椎名武 雄 日本 IIBM 株式会 会社相談 役)の の教育プロ ログラムであ ある「スチ チューデン トシティ・ ファイナン ンスパーク ク学習」 を実施 施している る。このプ ログラムは は、京都な らではの伝 伝統・景観、 、また環境 境の視点 を取 り入れた特 特色あるもの のとなって ている。 た、平成 21 2 年 2 月 には、京都 都の伝統文 化・工芸か から発展して てきた現在 在の先端 また 技術産 産業を中心 心に「ものづ づくり都市 市・京都」の の企業創業 業者・科学者 者等の歩ん んできた 道やモ モノづくり りにかける情 情熱・努力な などを学び び、子どもた たちが自らの の生き方を を考え、 生きる る力を育む む「京都モ ノづくりの の殿堂」並び びにモノづ づくりの体験 験を行う「 「モノづ くり工 工房」を生き き方探究館 館の 1 階に 開設。さら に平成 22 2 年 8 月に には地下 1 階に 階 「モ ノづく くり第二工 工房」を開設 設し、子ど どもたちが幅 幅広いモノ ノづくりを行 行えるよう う取組の 充実を を図ってい いる。 京都 都まなびの街 街生き方探究 館 32 コンセプ プト (2)施 施設、サー ービスの現状 状について て(利用者数 数、利用者 者属性、サー ービス等) 京都 都まなびの街 街生き方探究 館 館内案内 内図 ○スチ チューデン ントシティ (小学校 4 4~6 年生対 対象) 校 校舎の中に に銀行、商店 店、新聞社、区役所等(12 ブース ス)からな る「街」を再 再現し、 その の「街」で児 児童は、学校 校での事前学 学習を基に に、消費者役 役と企業に勤 勤める会社 社員役、 それ れぞれの立 立場での役割 割を担い、体 体験学習を を通して、社会の働きや 社 や経済の仕 仕組み、 社会 会と自分と との関わりな などを学ぶ ぶ。 ○フ ァイナンス スパーク学習 習(中学校 校 1、2 年生 生・総合支 援学校対象 象) に、税金・ 保険を 校 校舎の中に に再現した 「街」で、生 生徒は、学校 校での事前 前学習を基に は じ め 食 費 や 光 熱 費 など 生 活 に 必 要 な 費 用 の 試 算 、様 々 な 商 品 や サ ービ ス の 購 経験し、社会 会に溢れる る情報を適切 切に活用す する力や自ら らの生き方 方に繋が 入 ・契約を経 生活設計能 能力等を育成 成する。 る生 授業実施風 風景 33 学習時間数 スチューデントシティ 18 時間=事前学習 10 時間、体験学習 6 時間、事後学習 2 時間 ファイナンスパーク 12 時間=事前学習 5 時間、体験学習 6 時間、事後学習 1 時間 平成 25 年度実施結果 区分 学校数 児童生徒数 開催回数 参加ボランティ ア数 スチューデントシティ 167 校 10,710 人 77 回 延べ 3,171 人 ファイナンスパーク 51 校 5,396 人 63 回 延べ 1,198 人 合計 218 校 16,106 人 140 回 延べ 4,369 人 スチューデントシティ・ファイナンスパーク出展企業・団体一覧 スチューデントシティ 企業等 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 株式会社井筒八ッ橋 本舗 KDDI 株式会社(au) 株式会社京都銀行 株式会社京都新聞社 クオール株式会社 セコム株式会社 西陣織工業組合 (西陣織会館) 株式会社西利 パナソニック株式会社 富士ゼロックス京都 株式会社 株式会社ローソン 京都市(スチューデ ントシティ区役所) 業 ファイナンスパーク 種 1 2 3 4 5 京銘菓 電話・通信 銀行 新聞社 薬局 警備 6 西陣織 7 8 京つけもの 家庭電化製品 9 10 印刷サービス 11 コンビニエンスストア 12 区役所 13 14 15 16 17 18 34 企業等 業 KDDI 株式会社(au) 大阪ガス株式会社 関西電力株式会社 株式会社京都新聞社 京都中央信用金庫 京都トヨペット 株式会社 京都料理 芽生会 株式会社公益社 ジブラルタ生命保険 株式会社 学校法人 大和学園 株式会社大和証券 グループ本社 電話・通信 ガス 電気 新聞社 銀行 株式会社高島屋 パナソニック 株式会社 三井不動産株式会社 ジェイコムウエスト 京都みやびじょん局 株式会社HMV エンタテイメント ワタベウェディング 株式会社 京都市立病院 京都市上下水道局 種 自動車 外食 冠婚葬祭 保険 教養 証券 衣料品・食 料品 家庭電化製品 不動産 TV レジャー 冠婚葬祭 病院 上下水道 ○京都モノづくりの殿堂・工房学習 京都モノづくりの殿堂・工房学習は、市立小学校 4~6 年生が京都の企業創業 者等の情熱や努力等をパネルや映像で学ぶ展示学習と,モノづくり体験を行う工 房学習を通して自分たちの将来や夢の実現に向けて考えを深める。 京都モノづくりの殿堂では、先端技術産業を中心に「ものづくり都市・京都」 を支える京都の企業創業者・科学者等の創業や研究の動機・あゆみ,日常生活と 密接につながる技術・製品等を紹介する 17 企業 16 のブースを設置している。 各ブースでは、パネルや映像コンテンツの上映、製品見本の設置、クイズ形式に よる学習等、工夫を凝らした展示を展開している。 〈京都モノづくりの殿堂 17 企業 16 ブースの内訳〉 ・石田 隆一氏(株式会社イシダ) ・立石 一真氏(オムロン株式会社) ・川島 甚兵衞氏(株式会社川島織物セルコン) ・稲盛 和夫氏(京セラ株式会社) ・島津 源蔵氏(株式会社島津製作所・株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション) ・大日本スクリーン製造株式会社 ・ニチコン株式会社 ・鈴木 直樹氏(日本写真印刷株式会社) ・日本新薬株式会社 ・永守 重信氏(日本電産株式会社) ・任天堂株式会社 ・堀場 雅夫氏(株式会社堀場製作所) ・村田 純一氏(村田機械株式会社) ・村田 昭 氏(株式会社村田製作所) ・ローム株式会社 ・塚本 幸一氏(株式会社ワコールホールディングス) 学習時間数 京都モノづくりの 殿堂・工房学習 6 時間=事前 2 時間、体験学習 2 時間、事後 2 時間 平成 25 年度実施結果 区分 学校数 児童生徒数 開催回数 京都モノづくりの 殿堂・工房学習 118 校 7,251 人 112 回 35 参加ボランティ ア数 延べ 967 人 (3)学 学校教育と との連携につ ついて スチ チューデン ントシティ, ,ファイナ ナンスパーク ク,京都モ モノづくりの の殿堂・工 工房学習 は,教 教育機関と として実施し している。 スチ チューデン ントシティは は全市立小 小学校が実施 施,ファイ イナンスパー ークと京都 都モノづ くりの の殿堂・工 工房学習は希 希望校が実 実施してお り、連携で ではなく学校 校教育の一 一部とな ってい いる。教員 員は、体験学 学習中は外 外から生徒た たちを観察 察・評価する る役割を担 担うこと として ており,生 生徒たち主体 体の体験学 学習となって ている。 (4)理 理科学習後 後の生徒の反 反応につい いて ア ンケートの の実施結果と としては トシティ:各 各設問とも も「しっかり りできた」 「できた」 という肯定 定的な回 スチ ューデント 答が 90%以上 であり、9 98%以上の の項目も多数 数あった。 フ ァイナンス スパーク: 「よくできた 「 た」 「できた た」という肯 肯定的な回 回答が 90% %以上で 、98%以上 上の項目も も多数あった た。 あり、 スチューデ ントシティア アンケート結 果 36 ファイナン ンスパークア ンケート結果 果 出展:京都 市 スチュー デ ントシティ ・ファイナン ス パ ーク 平 成 2 5 年 度 事 業報 告 書 37 (5)地域の企業や大学、ボランティアとの連携について スチューデントシティ出店企業は、井筒八ッ橋本舗、富士ゼロックス京都、ロー ソン、西陣織会館、京都新聞社、京都銀行など 11 社 1 団体、ファイナンスパーク には、関西電力、高島屋、パナソニック、大阪ガス、KDDI、大和証券など 16 社 1 団体が出店し、企業・団体がブース構築の費用を負担しているほか、スチューデン トシティの販売商品を無償提供している。 また、スチューデントシティでは、8 企業から担当者が学習に派遣され、担当の 児童に対して当日の仕事内容のほか、自社の方針や顧客に対する心得等を指導する など、社会経験を積む場となるように協力してもらっている。 京都モノづくりの殿堂・工房学習では、殿堂出展企業等から学習教材の提供を受 けるほか、モノづくり企業のOBによるモノづくり学習支援員「京(みやこ)モノ レンジャー」を設置し、子どもたちへの学習支援、教材開発等に活動いただいてい る。また、人的なボランティアの協力なしでは当館の運営は成り立たない側面があ る。スチューデントシティ・ファイナンスパークのボランティア確保の取組として ア 市役所、区役所、図書館等、市民の目につく場所へパンフレットを配架 イ 市営地下鉄の主要駅 9 駅に、年 4 回、募集パンフレットを配架 ウ 関西にある大学、短期大学等 18 か所にパンフレットを配架 エ 体験見学会を年 2 回実施し、参加者にパンフレットを配布 オ 学校ボランティアとして参加した保護者等への呼びかけを毎回開催時実施 カ ボランティア募集説明会を年 2 回開催 等 これらの施策によって年々登録者数が増え、平成 25 年度末で 315 名となっている。 一方、「京(みやこ)モノレンジャー」は、モノづくりの経験や実績といった専門 性が求められていることから、NPO法人京都シニアベンチャークラブ連合会等の 協力を受け、平成 25 年度末で 125 名の登録をいただいている。 平成 25 年度の延べ活動人数は、スチューデントシティ・ファイナンスパークで 4,369 人、京都モノづくりの殿堂・工房学習で 967 人となっている。 (6)運営上の課題について(予算、人材等) 人材面では、専任が 23 名(行政職 8 名、教育職 4 名、専門主事(元校長)9 名、 非常勤嘱託(アルバイト)2 名)で運用している。 課題としては、事業の効果・成果をデータとして示すことが出来ないことにある。 アンケート調査では非常に良い評価をもらっているが、市財政からは効果について データで示すように言われる。スチューデントシティの全校実施を開始して 7 年度 目になるので、卒業後の生徒の進路・就職先等をデータ化できないか検討している。 中学校の学力実態調査等での実績もトレースできないか検討している。 また、多くのボランティアの方に参加していただいており大変ありがたいと考え ているが、量的な部分だけではなくボランティアの方々の質の向上も課題である。 多くの企業から無償で資材・教材を提供してもらっているが、こちらも毎年運用 可能な量を確保していくことが課題となっている。 38 伊勢原市立子ども科学館科学館 日 時:平成 26 年 9 月 3 日(水) 対応者:伊勢原市立子ども科学館 15:00~17:00 副主幹 諏訪間 伸氏、研修指導主事 齊藤 勝彦 氏 ●伊勢原市立子ども科学館の概要 事 業 主 体 伊勢原市 活 動 内 容 理科授業、科学実験、工作、木工 館 地 1989 年 延べ床面積 神奈川県伊勢原市田中 76 数 55,000 人(平成 22 年度) 開 所 来 在 館 者 (管理運営:伊勢原市教育委員会) 2,675 ㎡ 特色ある取組み のカテゴリー 大人向けの展示・プログラム 学校教育や企業・大学等と連携 取 組 み 事 例 図書館と科学館とを併せ持つ施設 事 容 伊勢原市立子ども科学館は、科学の不思議や楽しさを体験できる 施設として人気がある。館内にはプラネタリウムをはじめ、エコ ートンネルや、立体迷路など、実際に自分で触れて確認したり考 えたりできる体験型の展示物が並んでいる。展示物以外にも、入 館料だけで参加できる、キラキラスティック作りやパターンブロ ックで楽しむふれあいミニ教室、わんぱく工作教室、サイエンス ショーなどを土・日曜を中心にほぼ毎週開催している。 考 子供の料金 大人の料金 入館料:100 円 入館料:300 円 プラネタリウム:200 円 プラネタリウム:500 円 定休日 月曜日(祝日、夏休み期間中は除く) 備 業 内 伊勢原市立子ども科学館の外観 科学館入口 39 (1)経 緯 昭和 59 年 12 月に建設検討委員会プロジェクトチームを発足し、昭和 60 年 2 月に小・中学校理科教諭による子ども科学館検討委員会を立ち上げた。平成元年に 開館し26年目を迎える。隣接する図書館と同時にオープンした。 伊勢原市立子ども科学館では、同年に施行された『伊勢原市立子ども科学館条例 施行規則』に則って ・科学に関する資料及び装置の展示に関すること。 ・プラネタリウム等の投影に関すること。 ・科学に関する講座、講演会等の開催に関すること。 ・科学館資料の調査研究、作成及び紹介に関すること。 ・市内の小学校並びに中学校の教育課程に基づく授業への協力及び援助に関する こと。 ・教育施設及び関係団体との連絡調整に関すること。 ・その他科学館の趣旨を達成するために必要があると認める事業に関すること。 の 7 つの事業を展開している。 (2)施設、サービスの現状について(利用者数、利用者属性、サービス等) 入館者数は平成 25 年度約 5.5 万人、そのうち有料の入館者数が約 3.3 万人(一 般入館:大人・子ども・学校利用等、無料入館:幼児・市内学校利用等、30 人以上 団体利用:2割減免 手帳所持者及び介護者・市内子ども会育成会:5割減免、市 内学校・幼保・県内の特別支援学校:全額減免となっている) 入館者の推移としては平成 10 年の 6.5 万人をピークに緩やかな減少傾向にある が、ここ数年 5 万人を上回る程度で維持している。休館日は毎週、月曜日となって いる。 主な施設として、展示室、プラネタリウム、天体観測室、工作/実験室、パソコン 室(現在稼働停止中)がある。プラネタリウムでは小学生以上向けと、幼児および低学 年向けの 2 種類の番組を投影しているため、小さな子も楽しく夜空の不思議に親し むことができる。工作・実験教室では遊べる工作やサイエンスショーが楽しめる。 40 41 (3)学 学校教育と との連携につ ついて ①市内小 小中学校・ 移動教室 :子ども科 科学館に学習 習の場を移 移動して活動 動する 市内の の小学校 1 0 校、中学 学校 4 校 ムでの天文 全校を対象 象とし、プラ ラネタリウム 文学習、 工作実 実験等の学 学習を行って ている。対 対象学年は小 小学校 3,4,6 年生と中 中学校 1 年生。平 年 成 24 4 年度は 42 4 回実施し し、2,759 9 名の生徒 が参加した た。 ②市内小 小中学校・ 出張科学館 館:学校の の要請により り職員を学 学校に派遣し し授業を行 う 依頼の のあった市 市内の教育機 機関等へ出 出向き、工作 作や実験等 等、科学の楽 楽しさを伝 伝える教 室を実 実施してい いる。所要時 時間は 1 時 時間~1 時 間 30 分程 程度。平成 24 年度は は 57 回 実施 し、3,716 6 名の生徒 徒が参加した た。内容と しては、工 工作・実験が が 48 回、 2,459 名参加 加、天文( (天体観測会 会、太陽系 系シミュレ ーター、活 活発な太陽活 活動を調べ べよう) が 9 回、1,257 7 名の参加 加となってい いる。 ③市内小 小中学校・ 教職員研修 修受入事業 業:学校の要 要請により 理科に関す する研修を 行う 市内小 小中学校の の教員の理科 科に関する る研修(理科 科実験や天体 体観測、パ ソコンの操 操作等) を科学 学館職員と とともに館内 内で行い、 教職員の資 資質の向上 上を図り、児 児童・生徒 徒の理科 や科学 学に対する る理解の深ま まりと興味 味関心を高め めることを 目的として て実施して いる。 平成 成 24 年度 度は 8 名の 教員を受け け入れた。 ④市内 内小中学校・ ・理科支援員 員派遣事業 業:学校の要 請により職 職員を派遣 し授業補充 充を行う 市内 内小中学校に における理 理科に関する る授業へ科 科学館職員を を派遣し、授 授業補助を を行うこ とで で、実験・観 観察等の円 滑な実施と と充実を図 り、もって て児童生徒へ への理解を を深める こと とを目的とし して実施し している。平 平成 24 年 度は、理科 科室備品整備 備補助や顕 顕微鏡の 整備 備・修繕等で で 65 人回 回支援員を派 派遣した。 42 (4)理科学習後の生徒の反応について 平成 26 年度移動教室のアンケートより ・移動教室の効果について「興味関心が高まったような児童の姿が見られましたか」 という設問に対して「多く見られる」 「やや見られる」が 57%、43%であり、合 算すると 100%何らかの効果があるという結果 ・「迫力ある実験いつもありがとうございます。印象に残り、理科に興味を持つ(持 ち続ける)きっかけになるかと思います。」 ・ 「プラネタリウムを使った学習はわかりやすくて児童の理解も深まったようです。」 (5)地域の企業や大学、ボランティアとの連携について ・東海大学と伊勢原市のとの連携:フェスティバル・実験教室・ロボットコンテス トの参加 ・企業との連携:フェスティバル・工作教室・ロボットコンテストの参加 ・企業展示:地元企業の業績を紹介(H26 年度大山電鉄ケーブルカー写真展示等) ・ボランティアとの連携: 豊富な知識と経験を持つ定年退職者等に「子ども科学館支援会員」としての登録 を募り、運営への参画を推進することで科学館の機能強化を図るとともに、科学 する心を持った子どもたちの育成に努めることを目的とし、平成 21 年 4 月に発 足。現在 16 名登録。折り紙教室の実施・教室補助・教室講師・展示物の作成展 示や月 1 回の「おもちゃ病院」でのおもちゃ修理等を行っている。支援会員養成 講座も実施しており、現在 5 名が受講中である。 (6)運営上の課題について(予算、人材等) 現在、館長 1 人(図書館との兼務)、館員 7 人、望む時職員4人が担当。予算も 例年どおり。歳入は 1200 万ほど(H25 年度)。前年比 98 万円アップ。開館 26 年 が経過しており、展示資料の老朽化、冷暖房装置の傷みが激しく、プラネタリウム のリューアルも検討中。 (7)将来的に実現したいプログラム、カリキュラム・展示等について ・実験・工作教室1回あたりの人数を増やしたい。 ・展示物の更新をしたいが予算的に難しいので、手作りでも魅力的な展示物を作り たい。 ・小学校高学年から中学生向きの講座を増やしていきたい。 ・プラネタリウム内で科学・宇宙関連の講演会を実施したい。 (8)理科教育の在るべき姿、将来像、行政への要望等について 理数教育の重要性が叫ばれている状況で、今後科学館の役割も高まっていくと思 われる。しかし、行政的には財政が厳しい中での運営を強いられているので、運営 していくこと自体かなり厳しい状況である。地域の理数教育の拠点として期待でき るが、学校現場での多忙化により、効果的に科学館を利用できる学校は少なくない が、そこの活路を見出したい。 43 静岡科学館 日 時:平成 26 年 9 月 4 日(木) 9:30~11:00 対応者:静岡科学館 主査 鈴木 芳徳氏、エデュケーター 坂田 尚子氏 ●静岡科学館の概要 事 業 主 体 活 動 内 容 開 館 所 在 地 来 館 者 数 特色ある取組み の カ テ ゴ リ ー 取 組 み 事 例 事 備 業 内 容 考 静岡市(管理運営:公益財団法人静岡市文化振興財団(指定 管理者)) 理科授業、科学実験、工作、木工 2004 年 3 月 21 日 延べ床面積 7,870 ㎡ 静岡県静岡市駿河区南町 14-25 エスパティオ 8~10F 258,420 人(平成 25 年度) 大人向けの展示・プログラム 学校教育や企業・大学等と連携 「みる・きく・さわる」などの5かん感覚を通して、楽し みながら科学の原理を理解する体験型科学館。科学ショ ー、工作教室のほか、特別企画展も開催 静岡科学館は、静岡市駿河区のエスパティオ 8 - 10 階に ある静岡市立の科学館である。施設の老朽化と、立地して いた駿府公園(現在の駿府城公園)の再整備事業によって 閉館した静岡市立児童会館に代わる施設として開設され た。愛称は「る・く・る」。それぞれ「みる」「きく」「さ わる」の末尾をつないだもの。 年間入場者数は 26 万程度で、2011 年 9 月 17 日に入場 者 200 万人を達成した。当初見込みより 5 年 9 カ月早い 達成となった。 開館 : 9:30~17:00 休館日 : 月 (休日の場合はその翌 日)、年末年始、臨時休館日 料金 : 大人:510 円 15 歳以上 : 中学生以下無料(平成 26 年 10 月現在) 静岡科学館の外観 科学館入口 44 (1)経 緯 前身の静岡市立児童会館(昭和 32 年開館)が施設の老朽化と、立地していた駿 府公園(現在の駿府城公園)の再整備事業によって閉館したことにより、それに代 わる施設として 2004 年 3 月に開設された。静岡駅前の複合ビル、エスパティオの 8~10 階にて開館し、今年で 10 周年を迎えたところである。 運営は公益財団法人静岡市文化振興財団が指定管理を受けるかたちで開館以来管 理を続けている。開館当時は市の教員が出向し、指導的な役割を担っていったが、 徐々に指定管理者に管理運営を移行し、4 年前の時点で教員が完全にいなくなった。 科学館設置の主意は、 「市民が自ら体験することを通して身近な科学に親しみ、及 び科学への関心を高める場を提供することにより、市民の創造力及び感性の向上に 資することを目的とする」と謳っており、基本理念として、「“遊び”を通して、一 人・ひとりの想像力・創造力を解放し、科学を“くらし”の中にいかしていく」を 掲げている。 (2)施設、サービスの現状について(利用者数、利用者属性、サービス等) 入館者数は平成 25 年度約 26 万人で多少の微減傾向があったが、昨年度 10 年目 で初めて展示更新があり、盛り返している。 利用者の年齢層は小学校低学年~幼児が多い。また特徴としては市内の児童のリ ピート率が高く、駅前という場所柄、学校帰りの利用もいくらかみられる。団体利 用では学校単位で校外活動の対象施設として利用してもらっている。 土・日で 1500 人から 2000 人前後、平日で多い日は 300 人から 400 人程度 の来館者数となっている。事業としては土・日には必ずイベントやサイエンスショ ー等を実施することをポリシーとしてやっている。具体的には、科学工作、サイエ ンスショー、テーブルサイエンス、サイエンス玉手箱(外部講師によるワークショ ップ)を柱として行っている。 以下、年間の、学校等の団体利用数、3 年間の平均値を示す。 市内の学校等・・・256 団体、12646 人 市外の学校等・・・262 団体、14888 人 県外の学校等・・・8 団体、524 人 (3)学校教育との連携について 学習利用案内を毎年 4 月に各学校に配布し、当館を会場とした学習支援プログラ ムに申し込んでもらうかたちで実施している。教育課程に基づいて当館を利用する 場合に限定される。その他の支援も実施しており、大きく分けると、 ・当館のプログラムを使っての来館学習 ・学校に呼んでもらう移動科学館 ・教材の貸出支援 の 3 つが学校教育との連携といった部分になる。 実際には見学学習的に利用される場合が多く、授業としての利用は少ない。移動 科学館は年間で 20~30 件程度、市内の小中学校数は 130 ほどあるのであまり利 用率が高いわけではない。 45 平成 26 6 年度 静岡 岡科学館る・く・るの学習 習 利用案内 46 (4)地 地域の企業 業や大学、ボ ボランティ ィアとの連携 携について て サイ イエンスナ ナビゲーター ーが 60 名 名登録してい いる。平均 して 15~ ~20 名が科 科学工作 の時に に各ブース スで指南役 として活動 動してもら っている。 経歴として ては理系企 企業や学 校で リタイアさ された方が多 多いが、大学 学生も入っ てくるとき きがある。交 交通費を上 限 600 支給してい いる。お昼を を跨ぐとき きは弁当も支 支給してい る。 円で支 春と と秋に募集 集をしている る。児童会 会館時代か らの方もお おり、あま り大々的な な広報を しなく くとも人づ づてで集まっ ってくれる る。 年に に 1 度「お おもしろ科 科学フェステ ティバル」 があり、そ そこではボ ランティア アの方々 が主体 体的に企画 画運営してい いる。実行 行委員会を立 立ち上げて 内容を検討 討している 。 てもらい担 フロ ロアに立っ っての展示説 説明に関し しては、3 日間ほど研 研修を受けて 担当ブー スの内 内容を理解 解してもらう うようにし している。 静岡 科学館ボラン ンティア募集 集ホームページ ジ(抜粋) 47 (5)運 運営上の課 課題について て(予算、 人材等) ・職員 員は現在 26 2 名在籍 している。 イベント企 企画は館長 長含めて 10 0 人で運用 用してい る。 。スタッフ フの数は足 りていない い。サイエ ンスナビゲ ゲーターに支 支援しても もらって 何 とか成り立 立っている。 。また、科 科学コミュニ ニケーター ーの育成講座 座をやって ており、 人材 材を育成し してさらに高 高度な支援 援を受けられ れるように に取り組んで でいる。 ・先生 生方の人脈 脈で繋がって ている「サ サイエンス ミュージア アム研究会」 」という自 自主的な 部会 会があり、 小・中・高 高の先生 2 25 名ほど が当館の運 運営や移動授 授業等の支 支援に対 して てつなぎ役 役をやって下 下さってい いる。 ・駅前 前にあるメ メリットは非 非常に大き きいが、地面 面が無いの ので野外活動 動と直結が ができな いと という課題 題もある。 48 日本科学未来館 日 時:平成 26 年 9 月 4 日(木) 対応者:日本科学未来館 13:30~15:00 運営調整担当 吉田 直史氏、菅野 和彦氏 ●日本科学未来館の概要 事 業 主 体 独立行政法人 活 動 内 容 先端科学技術展示等 館 地 2001 年 延べ床面積 東京都江東区青海二丁目 3 番 6 号 数 85.7 万人(平成 25 年度) 開 所 来 在 館 者 特色ある取組み のカテゴリー 科学技術振興機構 40,589 ㎡ 科学コミュニケーター育成 取 組 み 事 例 日本科学未来館では、自分自身で触れ、楽しむことのできる常設 展示や企画展のほか、実験教室やトークイベントなど多彩なプロ グラムがある。科学コミュニケーターと意見やアイディアを交換 しながら、日々の素朴な疑問から最新テクノロジー、地球環境、 宇宙の探求まで、さまざまなスケールで現在進行形の科学技術を 体験することができる。 事 容 日本科学未来館は東京都江東区青海の国際研究交流大学村内にあ る科学館である。館長は宇宙飛行士の毛利衛氏。展示物をわかり やすく解説するインタープリター(科学コミュニケーター)や多 くのボランティアらが展示解説を行っている。また科学コミュニ ケーションの手法試行、科学コミュニケーターの育成、輩出も主 な事業として行っている。 考 開 館 : 10:00~17:00 休館日 : 火曜日、12 月 28 日~1 月 1 日 料 金 : 大人:620 円 : 18 歳以下:210 円 備 業 内 日本科学未来館の外観 日本科学未来館入口 49 (1)経 緯 2001 年 7 月 9 日に開館。館長は宇宙飛行士の毛利衛。科学技術振興事業団(現、 (独)独立行政法人科学技術振興機構)が設立。当初運営は財団法人科学技術広報財団 に委託されていたが、2009 年に事業仕分けの対象となりその運営方法が見直され、 現在は科学技術振興機構の直轄運営となっている。 ・最新の科学技術の紹介 ・社会一般への科学技術者の成果の発表 ・一般社会からの科学技術の所感・見解などを学会・論文などを通じての研究者へ フィードバックするなど科学の交流をコンセプトとし、展示物をわかりやすく解 説するインタープリター(科学コミュニケーター)や多くのボランティアらが展 示解説を行っている。また科学 コミュニケーションの手法試行、科学コミュニ ケーターの育成、輩出も主な事業として行っている。 (2)施設、サービスの現状について(利用者数、利用者属性、サービス等) ・入館者数は平成 26 年度 8 月末現在で約 60 万人、年間で 100 万人前後と予想。 ・利用者属性 大人(19 歳以上) :57% 18 歳以下 : 8% 中学生 :13% 小学生 :14% 幼児 : 8% 例年と比較して大人の割合は、ほぼ横ばい。小中学生の割合は年度によってばら つきがあるが、合計するとほぼ横ばい。幼児については「おやっこ広場」のオー プン、「トイレ展」の開催に伴い、5 月の割合の約 2 倍となった。 ・サービスについて 昨年 10 月より発券システムの入れ替えを行い、自動販売機から対面式に移行。 これにより入館前の待機時間の大幅な短縮を図った。 50 日本科学未来館 フロアマップ 1 階 3 階 5 階 6 階 7 階 51 (3)学校教育との連携について ①学校団体向けプログラム 小学校 4 年生から高校生までを対象としたプログラムを実施。平日のみ 128 回実 施し参加者は述べ 3,934 人。内容は、宇宙・深海・iPS 細胞等“聞く”プログラ ム 5 種、DNA の抽出、放射線、超電導等“実験する”プログラム 4 種、4D2U ス ペースウオークの“シアター系”プログラム 1 種。 ②大学院生向け授業 展示物を活用した解説実習の導入などにより、実践的な科学コミュニケーション能 力の習得を目的とした院生向けの授業を実施した。 芝浦工大大学院「科学コミュニケーション学」2013 年 6 月~11 月受講者:52 人 筑波大学大学院「未来社会を考える科学コミュニケーション学」2013 年 10 月 受講者:8 人 ③長期研修教員 埼玉県教育局より現職の高校教諭 1 名の長期研修を通年で受入。 ④教員向け科学コミュニケーション研修 教員免許講習:受講者 33 人 埼玉県高等学校初任者研修:受講者 57 人 (4)地域の企業や大学、ボランティアとの連携について 日本科学未来館のボランティアは、館の活動にみずからパートナーとして広く関 わり、ともに成長していく仲間として、スタッフとともに活動している。それぞれ の持つ専門性を活かして、展示解説等の来館者対応、ボランティア主体のグループ 活動などの科学コミュニケーション活動を行っている。登録者数は 800 名程度。交 通費のみ支給している。募集は年 3 回行っており一般向けの募集の他、大学単位で の募集も実施している。 科学コミュニケーターは、最長 5 年の任期制職員として採用し、展示フロアでの 解説やイベント、展示の企画・広報などの科学コミュニケーション活動を行ってい る。任期終了後は研究機関や大学、科学館・博物館、企業、教育機関などで活動す る。文系出身でも構わないが修士課程修了が条件となる。 (5)運営上の課題について(予算、人材等) さらなるサービス向上を目指し、新規システムの導入を検討中。 2017 年の世界科学館サミット、2020 年の東京オリンピック開催に向けて語学 対応や展示の多言語化、施設の改修などを計画中。 (6)将来的に実現したいプログラム、カリキュラム・展示等について 未来館の活動の中心になるのが「先端の科学技術」であり、これは時代とともに 変化し続けるものである。時代の変化に対応出来得るプログラムを計画していく。 52 3.結果の考察 (1)調査の内容 ○出雲科学館 ・理科学習は、市内小学校 40 校、中学校 15 校全校を対象に、年間 13 回実施し延 べ 719 クラス、参加人数は平成 25 年で年間 20,920 人に達している。 ・連携を図るうえでは市の教育委員会の管理下にある組織であることが大きなメリッ トとなっており、 「出雲科学館の設置及び管理に関す条例」に基づいて市内全校で理 科学習が実施できることになっている。 ・13 単元の理科学習を実施するために、 「理科学習内容検討委員会」を設置している。 小・中学校の地域を代表する先生(小・中各 7~8 名)に委嘱し、単元の内容・実施時 期等を検討している(年 3 回程度開催)。 ・科学館で教員研修を実施している。年 2 回程度実施し、観察、実験の指導に係る教 員のスキルアップを図っている。 ・教員を複数配置しており、人材の長期確保の面から県には、科学館経験者に僻地学 校を経験したのと同じ扱いをすることを検討して欲しいと要望している。 ○大阪科学技術館 ・大阪近辺もしくは全国の様々な企業の先端技術について、体験展示物を通して広く 普及啓発する科学館となっている。現在 23 ブースに 19 社 5 団体が参加している。 ・学校への出前事業は小学校で実験授業を年間 20 回、中学校はエネルギー、環境教 育の授業で年間 10 回前後、教職員向けのティーチャーズスクールを年間 10 回前 後実施している。小学校は地域を限定して教育委員会に依頼している。1 校あたり 低・中・高学年別に 3 回実施し、体育館に 200 名程度集めて実施している。 ・企業出展者は過去からのつながりで集まっており、特別な公募をしている訳ではな い。年間出展料は 25 ㎡で 246 万円、49 ㎡で 492 万円、74 ㎡で 738 万円とな っている。企業の賛助会員数は 400 社弱あり、会費(1 口 10 万円)をいただいて いる。 ・ボランティアの歴史は比較的新しい。2 年ほど前から採用を開始し、現在は 12 名 程度。企業の OB が多い。交通費のみ支給している。市外の方も多い。 ○京都まなびの街生き方探究館 ・スチューデントシティ(小学校 4~6 年生対象)では、校舎の中に銀行、商店、新 聞社、区役所等(12 ブース)からなる「街」を再現し、その「街」で児童は、学校での 事前学習を基に、消費者役と企業に勤める会社員役、それぞれの立場での役割を担 い、体験学習を通して、社会の働きや経済の仕組み、社会と自分との関わりなどを 学ぶ。 ・ファイナンスパーク学習(中学校 1、2 年生・総合支援学校対象)では、校舎の中 に再現した「街」で、生徒は、学校での事前学習を基に、税金・保険をはじめ食費や 光熱費など生活に必要な費用の試算、様々な商品やサービスの購入・契約を経験し、 53 社会に溢れる情報を適切に活用する力や自らの生き方に繋がる生活設計能力等を育 成する。 ・スチューデントシティ・ファイナンスパークとも当館は教育機関としてやっている。 京都市内の全学校が実施しており、連携ではなく学校教育の一部となっている。先 生は外から生徒たちを観察・評価するだけであり、児童・生徒たち主体の体験実習 となっている。 ・スチューデントシティ出展企業は 11 社 1 団体、ファイナンスパークには 16 社 1 団体が出展し、全て企業・団体からの持ち出しで運営している。 ・ボランティア確保の取組として ア 市役所、区役所、図書館、公民館等市民の目につく場所へパンフレットを配架 イ 市営地下鉄の主要駅 9 駅に、年 4 回、募集パンフレットを配架 ウ 関西にある大学、短期大学等 18 か所にパンフレットを配架 エ 体験見学会を年 2 回実施し、参加者にパンフレットを配布 オ 学校ボランティアとして参加した保護者等への呼びかけを毎回開催時 カ ボランティア募集説明会を年 2 回開催 キ ボランティア意見交流会の実施 等を行っている。 これらの施策によって年々登録者数が増え、今年度は 315 名となっている。 延べ人数では、平成 25 年度 4,369 人となっている。 ○伊勢原市立子ども科学館 ・市内小中学校・移動教室:市内の小学校 10 校、中学校 4 校全校を対象とし、プラ ネタリウムでの天文学習、工作実験等の学習を行っている。対象学年は小学校 3,4,6 年生と中学校 1 年生。平成 24 年度は 42 回実施し、2,759 名の児童・生徒が参加 した。 ・市内小中学校・出張科学館:学校の要請により職員を学校に派遣し授業を行う。 依頼のあった市内の教育機関等へ出向き、工作や実験等、科学の楽しさを伝える教 室を実施している。所要時間は 1 時間~1 時間 30 分程度。 平成 24 年度は 57 回実施し、3,716 名の児童・生徒が参加した。内容としては、 工作・ 実験が 48 回、2,459 名参加、天文(天体観測会、太陽系シミュレーター、 活発な太陽活動を調べよう)が 9 回、1,257 名の参加となっている。 ・市内小中学校・教職員研修受入事業:学校の要請により理科に関する研修を行う。 市内小中学校の教員の理科に関する研修(理科実験や天体観測、パソコンの操作等) を科学館職員とともに館内で行い、教職員の資質の向上を図り、児童・生徒の理科 や科学に対する理解の深まりと興味・関心を高めることを目的として実施している。 平成 24 年度は 8 名の教員を受け入れた。 ・市内小中学校・理科支援員派遣事業:学校の要請により職員を派遣し授業補充を行 う市内小中学校における理科に関する授業へ科学館職員を派遣し、授業補助を行う ことで、実験、観察等の円滑な実施と充実を図り、もって児童生徒への理解を深め ることを目的として実施している。平成 24 年度は、理科室備品整備補助や顕微鏡 54 の整備・修繕等で 65 回支援員を派遣した。 ・ボランティアとの連携: 豊富な知識と経験を持つ定年退職者等に「子ども科学館支 援会員」としての登録を募り、運営への参画を推進することで科学館の機能強化を 図るとともに、科学する心を持った子どもたちの育成に努めることを目的とし、平 成 21 年 4 月に発足。現在 16 名登録。折り紙教室の実施・教室補助・教室講師・ 展示物の作成展示や月 1 回の「おもちゃ病院」でのおもちゃ修理等を行っている。 ○静岡科学館 ・学習利用案内を毎年 4 月に各学校に配布し、当館を会場とした学習支援プログラム に申し込んでもらうかたちで実施している。その他の支援も実施しており、大きく 分けると、 ・当館のプログラムを使っての来館学習 ・学校に呼んでもらう移動科学館 ・教材の貸出支援 の 3 つが学校教育との連携といった部分になる。 実際には見学的に利用される場合が多く、授業としての利用は少ない。移動科学館 は年間で 20~30 件程度、市内の小中学校数は 130 ほどあるのであまり利用率が 高いわけではない。 ・ボランティアとしてのサイエンスナビゲーターが 60 名登録している。平均して 15 ~20 名が科学工作の時に各ブースで指南役として活動してもらっている。経歴とし ては理系企業や学校をリタイアされた方が多いが、大学生が入ってくるときもある。 交通費を上限 600 円で支給している。お昼をまたぐときは弁当も支給している。 ○日本科学未来館 ・学校団体向けプログラム:小学校 4 年生から高校生までを対象としたプログラムを 実施。平日のみ 128 回実施し参加者は述べ 3,934 人、内容は、宇宙・深海・iPS 細胞等“聞く”プログラム 5 種、DNA の抽出、放射線、超電導等“実験する”プ ログラム 4 種、4D2U スペースウオークの“シアター系”プログラム 1 種。 ・大学院生向け授業:展示物を活用した解説実習の導入などにより、実践的な科学コ ミュニケーション能力の習得を目的とした院生向けの授業を実施した。芝浦工大大 学院「科学コミュニケーション学」2013 年 6 月~11 月 受講者:52 人 学大学院「未来社会を考える科学コミュニケーション学」2013 年 10 月 筑波大 受講者: 8人 ・長期研修教員:埼玉県教育局より現職の高校教諭 1 名の長期研修を通年で受入。 ・教員向け科学コミュニケーション研修:教員免許講習:受講者 33 人 埼玉県高等学校初任者研修:受講者 57 人 ・ボランティアは、館の活動に自らパートナーとして広く関わり、共に成長していく 仲間として、スタッフとともに活動している。それぞれの持つ専門性を活かして、 展示解説等の来館者対応、ボランティア主体のグループ活動などの科学コミュニケ ーション活動を行っている。登録者数は 800 名程度。交通費のみ支給している。募 55 集は年 3 回行い、科学コミュニケーターの支援のもと大学単位で行っている。 ・科学コミュニケーターは、最長 5 年の任期制職員として採用し、展示フロアでの解 説やイベント、展示の企画などの科学コミュニケーション活動を行っている。任期 終了後は研究機関や大学、科学館・博物館、企業、教育機関などで活動する。文系 出身でも構わないが修士課程修了が条件となる。 ●先進事例他都市調査の考察 ・出雲科学館や伊勢原市立子ども科学館では、効果的な学習の一環として、市内の 小中学校の児童・生徒に対して、正規の理科実験学習を行っている。札幌市にお いては、青少年科学館のプラネタリウムにより「学習投影」は理科学習の一環と して位置づけているが、このほか、更なる効果的な学習を提供し、施設の有効活 用の図るためには、他の単元にも拡大していくよう取組む必要がある。 ・学校教育(学習指導要領)に沿った理科実験授業を科学館で実施するためには、出雲 科学館にある「理科学習内容検討委員会」のような検討母体を設置し、教職員・ 科学館職員のみならず、企業関係者・大学研究者・学校関係者 OB 等を加えた産 学官の連携体制を構築していく、地域ぐるみで検討する取組が必要である。 ・京都まなびの街生き方探究館や静岡科学館では、民間ボランテイアを採用してい るが、単なる経費縮減の効果を期待して行っているものではなく、多様な人材が 集うことで幅広い運営主体が確保され事業が拡大することを目的として行われて いる。ボランティアを採用する際には、施設運営や事業コンセプトを明確にし、 同様に事業内容の拡大を目指し取組むべきである。 ・大阪科学技術館や京都まなびの街生き方探究館のように地域の企業・団体・大学 等と連携し最新のテクノロジーや研究動向を体験できる展示スペースを設置する ことにより、施設の魅力が向上し子ども達への効果的な学習が提供できることか ら、同様な取組を検討すべきである。 ・伊勢原市立子ども科学館や大阪科学技術館では、学校向け出前講座の拡充を行っ ており、青少年科学館においても出前講座による学校教育との連携度を高める取 組みについて検討すべきである。 56 第Ⅳ章 青少年科学館を活用した理科教育推進の方向性と展開方策 本章では、これまで展開してきた札幌市における青少年科学館等を活用した理科 教育推進の現状と課題、他都市における科学館等を活用した理科教育推進の先進事 例調査、企業・大学等へのヒアリング結果などを踏まえ、札幌市における青少年科 学館を活用した理科教育推進の方向性と展開方策について有識者会議を開催し、考 察と検討を行った。以下にその結果の概要を示す。 1.有識者会議開催概要 (1)有識者会議委員構成 ※敬称略 氏 名 主な役職 備 考 渡部 英昭 (座長) (わたべ ひであき) 北海道教育大学 札幌校 教授(副学長) 専門:生物学、教材開発 (学識経験者) 大久保 昇 (おおくぼ 公益社団法人 日本理科教育振興協会 会長 株式会社 内田洋行 代表取締役社長 (学識経験者) 札幌商工会議所副会頭 北海道ガス株式会社 代表取締役社長 (経済団体) 札幌市立平岸高台小学校 校長 北海道小学校理科研究会会長 札幌市立小学校長会推薦 (学校教育・小学校) 札幌市立宮の森中学校 校長 北海道中学校理科教育研究会 副会長 札幌市立中学校長会推薦 (学校教育・中学校) 札幌市教育委員会 教育次長 (内部委員) 大槻 博 (おおつき のぼる) ひろし) 太田 俊一 (おおた しゅんいち) 小路 徹 (こうじ とおる) 西村 喜憲 (にしむら よしのり) 57 (2)有識者会議の概要 第1回 ●日 時 : 平成 26 年 7 月 16 日(水)13:30~15:30 ●場 所 : 札幌市教育委員会 4 階 教育委員会会議室 ●次 第 : 1.開 会 2.教育長挨拶 札幌市教育委員会教育長 町田 隆敏 氏 3.委員紹介 4.事業主旨について 5.青少年科学館の概要について 6.座長選出 7.議 事 (1)アンケート・ヒアリング調査について (2)先進事例他都市調査について (3)目指すべき方向性・在り方等についてのディスカッション (4)今後のスケジュールについて (5)その他 8.閉 会 ●委員意見交換概要 ・子どもたちの周りには様々なモノがあり、そのモノ自体が科学の集積物であっても、 そのモノの仕組み等を考えることもなく、当然そこに存在するモノとして捉えてい る。今の子どもたちは、何事に対しても「気付き(見付ける力)」が、衰えてきてい るような印象を受ける。 ・教員も文系大学出身が多くなっており、観察、実験に疎くなっているのが現状。こ の点から、科学館が何らかの助力等ができることが重要。 ・現在の科学館の展示物では、中学生には物足りなさを感じさせる。小学生の視点と は別に、中学生から大人までが面白みを持って体験し学習できるものとしていくべ き。 ・様々な疑問に対し、自らが実験などを行い学習できるスペースがあると良い。 ・社会全体の問題を、科学館だけの中に凝縮するのはなかなか難しいと思う。札幌市 全体で考えるのであれば、理科教育をどのようにしていくのか。自然科学もあるし、 札幌は寒冷地で多雪。郊外に行けば豊かな自然があって、だからそういうものと科 学館をうまくくっつけて、全体の理科教育っていうものを体系的に考えていかない と、なかなかうまくいかない。 ・科学館には 2 つの役割があると考える。1 つは社会教育という側面、それともう 1 つは学校教育の牽引、同時なのか引っ張るのかはわからないが、その両方の側面で 良い科学館になってもらいたいと思う。 58 第2回 ●日 時 : 平成 26 年 9 月 10 日(水)13:30~15:30 ●場 所 : 札幌市教育委員会 4 階 教育委員会会議室 ●次 第 : 1.開 会 2.議 事 (1)アンケート調査結果について (2)先進事例他都市調査結果について (3)今後の理科教育推進の為のディスカッション (4)今後のスケジュールについて (5)その他 3.閉 会 ●委員意見交換概要 ・多くの小学4年生で科学館を活用しているが、 「夏の星」 「冬の星」 「月と星」など夜 間観察の代わりに「プラネタリウム」を活用しているのであって、 (科学館の)展示 物などを使って教育課程に沿った学習を行っているわけではない。科学館(主に展 示物)の活用を踏まえると、教育課程に位置付けるには、小学6年生が適当ではな いか。特に「電気の利用」「電流による発熱」「土地のつくりと変化」などは、科学 館が得意とするところであり、今後更なる整備を期待したいところ。 ・どの学校も参加できるようにするには、科学館まで来るための手立て(バスや地下 鉄などの交通面)なども併せて検討していくべき。(小・中共通) ・実際には、様々な事情から理科の観察、実験をしない教員もいると聞く。科学館に おいて、授業に観察、実験を取り入れていくような取組やサポートを行うことと、 科学館に来れば、学校では行い難い又は行わない(少し危険な)実験を体験でき学 ぶことができるようにし、子どもたちの学習に観察、実験を取り入れてくようにす ることが必要。 ・昔、大学での学習においては、自分なりに装置を作り、その装置で実験を行ってい たが、現代は PC によるシミュレーションが主体となっている。本人は学んできた と思い込んでいるが、実際に体験してきたものではないことから、企業の戦力とは なっていない。より幼い段階から、体験的プログラムを通して学ぶことができる場 が重要。そこで、自分が「やる(体験する)」ことが大切であることを学ぶことで、 後の学びに繋がっていくものと考える。 ・JAXA(宇宙航空研究開発機構)や JAMSTEC(海洋研究開発機構)などの機関は、 地域への活動広報等のための予算も相当額保有すると聞く。連携を考えていくべき ・機能を拡充していく上で、人員や人材確保は必要である。よって元教員や企業 OB その他天文などに詳しい人材などを、科学館ボランティアとして活用していくこと を検討するとともに、それらを統括していく職員も養成していくべき。 ・市内(道内近郊も含め)にある様々な施設(動物園やさけ科学館、北方自然教育園 等)とも連携したイベントやグッズ、利用者割引などを企画し連携することで、更 なる学びの効果を高める取組をしていくべき。 59 第3回 ●日 時 : 平成 26 年 10 月 23 日(木)10:30~12:30 ●場 所 : 札幌市教育委員会 4 階 教育委員会会議室 ●次 第 : 1.開 会 2.議 事 (1)中学校アンケート調査結果について (2)アンケート調査結果の考察 (3)先進事例他都市調査の考察 (4)課題の抽出、理科教育推進の方向性、展開方策についての ディスカッション (5)ヒアリング調査について (6)次回のスケジュールについて (7)その他 3.閉 会 ●委員意見交換概要 ・観察、実験を行うための導入部分「科学的思考」や「興味・関心」を高めるための 手立てや事前の準備に時間がかかるため、どの教員も苦労している。そのため、貴 重な授業時間を費やすには、科学館に行くだけの価値を持たせる(高めていく)必 要がある。 ・中学校は理科の専門教員による授業であるが、授業を担当する教員と観察、実験の 準備等を主に行う教員とに、機能を分けてみてはどうか。また、過去にあった補助 教員(観察、実験助手)的な人的手立てを行うなどを含め負担感解消のため何らか の検討をしていくべきである。一方で科学館の持つ展示物等の教育的効果と実験器 具等の貸出等の利用方法を知らない教員がいる。この教員に側面的支援と直接的支 援を行えることを検討すべき。 ・小学校・中学校教員と連携し、多くの教員が悩む理科教材の作成等について、科学 館が観察、実験の貸出教材の開発を行うとともに教員からの相談場所となり、企業 とも関わり企業製品を活用するなどの教材開発を行う。 ・教育課程に即した展示物で学び、最新イノベーションにも触れられることで科学館 の価値が高まる・学校にある科学部の活動との連携の方策を検討すべき。 ・科学甲子園ジュニアが昨年度より開催されており、そのような取組とも連携すべき。 ・夏休み・冬休みには理科好きの子が科学館に集まって、自由に観察、実験を行い、 発表する場を設け、主体的に活動できるような施設となるべき。 ・科学館と子どもをつなぐ会議体を構築するべき。 ・理科好きなボランティアの活用を拡充するとともに、ボランティアを統括する職員 研修等を同時に行うべき。 ・最新のイノベーションは企業にある。企業・大学等の協力のもと、期間限定でブー スを設け、1か月交代で社員を派遣してもらうなど、先端技術、製品を使った科学 イベント・展示を検討していくべき。札幌市内にとらわれるのではなく、北海道内 企業との連携も図るべき。 60 第4回 ●日 時 : 平成 26 年 12 月 15 日(月)13:30~15:30 ●場 所 : 札幌市教育委員会 4 階 教育委員会会議室 ●次 第 : 1.開 会 2.議 事 (1)札幌市における青少年科学館を活用した理科教育推進の方向性に ついて (2)ヒアリング結果について (3)理科教育推進の方向性、展開方策についてのディスカッション (4)次回のスケジュールについて (5)その他 3.閉 会 ●委員意見交換概要 ・大切なのは本物に触れるということと、プログラムをどう組んでいるかというのが 重要な部分であると考える。小学校が行ってプラネタリウムを見た、ただ見たので はなくて、それが授業にあったプログラムになっているかどうか。そして中学校で 行くのが難しいのであれば、小学校では必ずこういうプログラムを経験していると いうことを、中学校の先生が知ってもらうことが大事である。 ・プログラムを作るためには小学校、中学校の教員、科学館の職員、さらに企業の方 が加わった運営組織・検討組織が大切。 ・理科教育振興協会では東日本大震災が起こった後に、理科室が津波で流されて実験 が出来ないということがあったので、その後毎年出前授業を1年間のカリキュラム に合うかたちで、機材を全部持ち込んで行っている。 ・100 人規模の学校が行った時に、なかなか一度に実験・観察が出来ないので、40 人規模のラボがあれば、40 人で実験、40 人で展示物見学、40 人でプラネタリウ ムの3つのクラスを同時に回すことが可能。1日活動になるが、そうすればかなり 学校のカリキュラムとプログラムとプラネタリウムと実験と展示が組み合わさって 総合的な理科学習になると考える。 ・一連の流れをどこで考えるか、プログラム開発から始まってアクセスまで、それか ら 40 人規模のラボ、カリキュラムにみ合う展示、一緒にプログラム開発したプラ ネタリウムがあると良い。 ・札幌市民のサイエンス・リテラシーの向上も大切。市民にあまねくサイエンスの面 白さというのを伝えるというのも、青少年科学館の活用方法の一つと考える。 ・企業側からすると、出来れば事前にプログラム委員会みたいなのを開いていただい て、企業でどういうお手伝いなり準備をすればいいのかというのがわかると取り組 みやすくなる。 61 第5回 ●日 時 : 平成 27 年2月 16日(月)10:00~11:30 ●場 所 : 札幌市教育委員会 4 階 教育委員会会議室 ●次 第 : 1.開 会 2.議 事 (1)青少年科学館を活用した理科教育推進の在り方検討調査報告書案 について (2)その他 3.閉 会 ●委員意見交換概要 ・ 「次代を担う子どもたちの育成が必要不可欠」という姿勢だけはこれからも強く貫い ていきたいと思っている。さらに「自ら考え、自ら問題を解決する学ぶ力」という、 問題解決学習というのはこれまでも言われてきたことだし、これからも求められて いくであろう学習の姿であるので、これを通して科学する心をもって“自立した札 幌人”になれば、札幌市の科学館としては大変すばらしい姿勢ですし、ここが一番 感銘受けている部分。 ・最後の考察の中で素晴らしいなと思ったのが「学ぶ力=科学する心」となっている。 子どもたちに必要なのは学ぼうとする力であり、それと同時にそのエネルギーにな っていく基本的なものとをイコールで結んでいる部分は非常に感銘を受けている。 中学生になると心がないなと感じる。心を常に掻き立ててくれるような設備を科学 館に設けていただければ我々としてもありがたい。 ・ 「学年単位で受入可能な実験室の整備」とあるがランニングコストの面でなかなか造 った施設が結果的にうまく使えないケースがある。ランニングにはなかなかお金が つかない場合が多い。一気にたくさんの実験施設を作ると厳しい。逆に運用の工夫 も同時にやれたら良い。 ・これまでの会議を経て理科・科学というキーワードを中心にして学校で行われてい る理科教育と科学館が非常に近付いてお互いに新しい物を作っていこうと議論が深 まっていると感じた。 ・どちらかというと子どもの理科教育という話になっているが、もう一方を見ると社 会の賢い市民を育てる、社会常識としての自然科学などの知識をもつ市民を育てて いくための理科教育の大事さを訴え続けていく必要があると感じる。 ・課題探求的な学習を推進していくこと、この考え方自体は札幌市の教育委員会の考 え方そのものです。できるだけここで書かれていることを今後どう実現していくか、 かなりその道筋は提言されていると思うので、それに基づいて教育としては実現し ていきたいと考える。 62 2.本調査結果から見た課題の整理 ①学校教育との連携上の課題 [理科の授業を科学館で実施するための課題] ・出雲科学館(島根県出雲市)では、市内の小中学校全 55 校に対し正規の理科授業 が行われていた。札幌市において同様に科学館で行うためには、出雲科学館のよう な実験室を複数設ける必要があるとともに、1学年が同一時間に同時に授業を行う ことができるか、学年・単元を踏まえたカリキュラムをどのように作成するか、市 内小学校 204 校、中学校 99 校の日程調整をどのように行うかなどの課題がある。 [展示物の位置付けに関する課題] ・教員アンケートなどから、今後必要とされる展示物については、学校で再現が難し い自然災害発生のメカニズムに関する展示や先端技術などを紹介する展示など、授 業内容を補完するものの要望が多数あった。また、実験・実習セットの貸出数等の 充実を求めるものも多数あり、実験授業を支援する取組の拡充も検討すべき課題と なっている。 [地理的な課題] ・青少年科学館は、札幌市東部の厚別区新さっぽろ地区に位置し、地下鉄・JR駅に 隣接するなど交通至便ではあるが、都心部より東に 10 ㎞程離れており、市北西部 や南部に位置する学校が利用する際には、貸切バスの利用となることや移動に長時 間かかることなどが課題である。 ②児童生徒の興味や探究心を高める理科授業構築のための課題 [理科授業を担う教員の現状] ・小学校教員からのアンケートにおいて、観察、実験に対する知識や経験の不足とと もに授業の準備にも時間がかかるため、観察、実験に苦手意識をもつ教員も多いの が実態である。中学校教員アンケートにおいては、教科担任制であることから、小 学校とは異なり実験に対する知識や経験に関して支障は見られないが、授業を構成 する上で、中学生の思考を踏まえた観察、実験への動機付けの工夫が必要であり、 他の教科の教員と異なる面での負担を感じている傾向が見られた。 [学校の理科授業の実験に関する課題] ・科学館利用者アンケートにおいて、子どもと一緒に来館した保護者からは、学校の 理科教育に対して「観察、実験を増やしてほしい」という要望が 62.1%と非常に高 い。一方で観察、実験教材や事前準備に係る費用・時間、教員の苦手意識の克服な ど様々な課題がある。 63 ③企業・大学や民間団体との連携上の課題 [企業・団体等からの支援・協力に関する課題] ・企業・団体アンケートから、子どものうちにどのような能力等を身に付けることが 必要か、また今後、科学館にどのような期待をするかとの設問に、子どものうちに 探究心や思考力、創造力と言った自ら考え取り組む力を身に付ける取組が必要とし、 青少年科学館には、体験型メニューやイベントを増やしてほしいとの意見が多かっ た。 また、自社商品等を理科教育関連イベント等に活用可能であるとの回答が 2 割程度 あった。 京都まなびの街生き方探究館(京都市)では、産学公連携・市民ぐるみで小中学生 がものづくりを学び・体験する機会を創出している。小中学生の探究心や思考力、 創造力を高めるため、京都まなびの街生き方探究館のような、産学公連携・市民ぐ るみの取組をどう構築するか課題である。 [企業・大学の先端技術や研究成果の公表と連携に関する課題] ・企業・大学とも、次世代を担う人材育成には関心が高い。 企業・大学からは、開発した先端技術や研究成果を市民へ伝える場が求められてい る。自らの研究成果や製品を活用した発表の場を設けることにより、子どもたちの 学ぶ意欲を高め、ものづくりや研究に対する魅力を発信することでの地域貢献につ いては、企業・大学等の関心は高い。企業・大学からの要望の実現は、科学的リテ ラシーを育む学びにつながることから、どのように活用し連携するかが課題である。 [ボランティアの活用] ・静岡科学館(静岡市)や日本科学未来館(東京都江東区)では、多数のボランティ アを受け入れ、フロアに立っての展示の説明等が行われていた。 また、ボランティアが説明しやすいよう、展示物の仕組みの説明プレートを設置す るとともに、日常生活に関連した製品等を使った展示物を取り入れるなど、教員 OB の他、企業 OB など様々な人たちがボランティアとして活動しやすい環境を提供し ていた。科学館の取組を更に高めるため、ボランティア人材をどのように確保して いくのかが課題である。 64 3.札幌市における青少年科学館等を活用した理科教育推進の方向性 平成 26 年に策定された札幌市教育振興基本計画において、札幌市の教育が目指 す人間像「自立した札幌人」の実現のための3つの方向性の1つ「自ら学び、共に 生きる力を培う学びの推進」の一つの取組として「青少年科学館の活用」が位置づ けられ、学校教育との連携強化、教員研修・実験教材支援、企業大学との連携など について調査研究するため、 「青少年科学館を活用した理科教育推進の在り方検討調 査有識者会議」が設置された。 この検討にあたり、幼児期から生涯にわたり「自ら学び、共に生きる力を培う学 び」を推進するため、どのようなことが必要となるのかを念頭に置き、 「青少年科学 館」という場を活用して、「理科教育推進」をどのような手法で図るべきか、また、 いかにして科学館でのサイエンス・リテラシー 1 を育む学びを定着させ魅力ある施設 としていくかについて、各委員がそれぞれの立場や知識・経験を基に様々な意見を 出し合った。 また、本会議は、各種アンケートやヒアリングなどの調査結果から、各委員の意 見やアイディアを基に議論することで進め、青少年科学館を活用した理科教育推進 をどのように進めていくべきか検討を行った。 その結果、札幌における青少年科学館を活用した理科教育推進の方向性として、 次のとおり「目的とねらい」を定め、必要な方向性として「3つの重点テーマと取 組むべき課題」を取りまとめた。 (目的とねらい) 青少年科学館は、子ども達が主体的・能動的に行動し、自ら「考える力」を身に 付けるきっかけとなりうる魅力ある施設であり、あらゆる世代に科学の面白さを発 信し、サイエンス・リテラシーを醸成することができる施設である。 このことから、札幌市の教育が目指す人間像「自立した札幌人」の実現に向け、 青少年科学館を有効に活用し、理科教育推進を図ることは非常に高い成果を期待で きる取組であると考える。 現在、文部科学省において、 「科学技術イノベーション」を担う人材育成の取組が 進められ、優れた研究人材の育成とともに、科学技術人材の裾野拡大を図り、体系 的に人材育成を行うこととしており、大学などの高等教育機関のほか、初等中等教 育においても、児童生徒の知的好奇心や探究心に応じた学習機会を設ける様々な取 組が進められている。 札幌市においては、これらの取組内容も踏まえ、青少年科学館が担う生涯学習や 博物館的機能を一層充実するとともに、小・中学校の教育課程の一環として利用で きるよう整備し、併せて学校での理科授業に対する支援を強化するなど、より一層、 多くの児童生徒が、理科・科学への興味関心を高め、自ら考え主体的に学習する力 を身に付ける様々な取組を行うべきと考える。 そのためには、先進他都市(京都市や出雲市等)で取り組まれている「産・学・ 1 サイエンス・リテラシー(科学的リテラシー) 自然界及び人間の活動によって起こる自然界の変化について理解し、意思決定するために、 科学的知識を使用し、課題を明確にし、証拠に基づく結論を導き出す能力。 ( 文部科学省 PISA 調査に基づく定義より) 65 官・市民の連携」を、青少年科学館を中心として具現化し、市民自治、サイエンス・ リテラシーの薫る札幌ならではの取組として構築し、あらゆる市民が共に意見や知 恵を出し合い、札幌市の教育が掲げる「自立した札幌人」の育成に向け、また、将 来の札幌を代表するような有望な人材の育成・発掘に向けて取組んでいくことが必 要である。 以上のことを踏まえ、当会議において、理科教育推進のために必要とされる方向 性を3つの重点テーマと取組むべき課題として、以下のように取りまとめることと した。 この方向性に基づく取組が実現され、新たな青少年科学館が機能する中で、主体 的・能動的に学習する市民が増え、正にサイエンス・リテラシーを育む魅力的な施 設として、そして、札幌市民が誇ることができる施設となることを期待するもので ある。 重点テーマ(目標) ① 青少年科学館と学校教育との連携強化 ② 児童生徒の興味や探究心を高める理科授業構築のための取組の強化 ③ 企業・大学等と連携したサイエンス・リテラシーを育む機能の拡充 ①青少年科学館と学校教育との連携強化 現在、小学4年生で学習する月や星の日周運動については、市内のほとんどの小学 校が、青少年科学館のプラネタリウムを活用した授業を実施している。今後は、天文 関係以外でも、教育課程に則った学習を提供していくことが必要である。 そのためには、科学館の展示物の状況と教育課程の内容との関連を検討する必要が ある。例えば、小学6年生の学習での活用を想定した展示物の整備(特にエネルギー や電気、環境)が考えられる。中学校においても十分に活用できるよう、中学生の思 考を捉え、課題追究にも対応した展示物の掲示方法等の工夫が必要である。併せて、 学校単位での学習を想定し、一度に一学年が同一時間に実験を行い学習できる機能の 整備が求められる。 また、世界中で理数系人材の確保のための人材育成や発掘が進められており、時代 に応じた人材育成を図る観点から、理科が得意であり、将来、科学や理科に関係した 道に進みたい、もっと学びを深めたいと思っている札幌の子どもたちの受け皿となる ような場が必要となる。 そこで、青少年科学館において、小学校の理科クラブ・中学校の理科部等に所属す る児童生徒や、科学や理科へ強い興味・探究心を持ち、放課後や長期休業期間に青少 年科学館を訪れる児童生徒に対し、学びを深めたいという気持ちをより一層高められ るようなプログラム作りを学校の教員と連携して取り組むことが必要である。 66 ②児童生徒の興味や探究心を高める理科授業構築のための取組の強化 理科の学習における観察、実験は、科学的な見方や考え方を養い、子どもたちの探 究心や思考力、創造力を高めるのに効果的である。これらの能力は 21 世紀を生きる 市民にとって必要とされ、企業からもこれらの能力を身に付けた人材の育成や創出に 関する要望が強い。学校において観察、実験の充実を図るためには、様々な課題を解 消する必要がある。例えば、実験の準備にかかる時間や手間を改善する手法として、 青少年科学館において新たな実験・実習セットを開発するとともに、学校への貸出数 を増やし、貸出・返却の仕組みを改めることを検討する必要がある。 また、小学校では、理科の観察、実験等の経験が少なく、苦手意識をもつ教員が少 なくない現状を踏まえ、教員向けに理科の観察、実験の研修が十分に行えるような研 修室を設けるほか、電話や電子メール等による相談窓口機能を設けるなど、授業に観 察、実験を取り入れやすい環境を構築し、教員をサポートする体制の構築が必要であ る。中学校の理科教員は、観察、実験を伴う授業を行う際、生徒の思考や興味・探究 心を踏まえた課題の設定への工夫が必要であり、常に様々な分野の理科に関する知識 や専門性を広げ、深めていく必要があることから、観察、実験を伴う専門的な研修が 欠かせない。さらに、大学等で学ぶ教員志望者が、科学館で行われる学校の理科授業 を支援することで、より実践的な研修を体験できる制度を設けるなど、将来教員とな った際、授業で観察、実験を行い、実感を伴った理解を図ることができるよう、大学 等の教員養成機関等と連携して取り組むことが求められる。 ③企業・大学等と連携したサイエンス・リテラシーを育む機能の拡充 青少年科学館では、北方圏の拠点都市である札幌・北海道の特色を生かした「雪・ 氷」や「環境」、「宇宙・天文」など、様々な分野の展示物を設け、イベント等を通し 科学の普及啓発を行ってきたところである。しかしながら、開館より 33 年が経過し、 科学技術の進歩とともに、老朽化や時代にそぐわない展示物も多数存在しており、学 習効果を高め、魅力ある施設として維持するためには、計画的かつ継続的に展示物の 更新を行う必要がある。一方、企業や大学・研究機関等が持つ最先端の研究活動や科 学技術の成果に、触れられる機会を創出することは、市民のサイエンス・リテラシー 向上に大いに役立つものである。また、企業や大学・研究機関等は、自らの先端科学 技術等を地域社会に広め還元するため、研究者と市民のコミュニケーション活動の場 を求めているところである。 この両者の置かれている現状を踏まえ、青少年科学館において、雪、環境、エネル ギー等の分野の更新とともに、先端科学技術の新分野として IT、バイオ、食関連分野 といった新たな札幌・北海道特有の内容を取り入れる視点が大変重要であると考える。 また、企業や大学・研究機関等の研究開発や技術開発の発表の場として「特別展示コ ーナー」を設け、市民が気軽に先端科学技術に触れ、学ぶことができる、科学技術コ ミュニケーション活動機能(サイエンス・カフェ)の整備を検討すべきと考える。 このほか、市内の理科関連施設(動物園、さけ科学館、北方自然教育園、植物園、 北大博物館等)との連携を深め、各施設の活用方法やイベント等の情報を蓄積し、児 童生徒や市民の科学や理科への興味・関心を高める学習を支援する拠点として、理科 学習に関する様々な情報を提供する機能を設けることなど、科学館に理科分野の総合 窓口の機能を持たせることにより、市民サービス向上に繋げていくべきである。 67 4.札幌市における青少年科学館等を活用した理科教育推進の展開方策 (1)重点テーマ 1:青少年科学館と学校教育との連携強化 青少年科学館の魅力を生かし、理科教育の充実を図る取組は、今後、札幌の科学技術を 担う人材の育成に効果が期待されるところである。 出雲市では、科学館を活用し、理科の教育課程に則った授業を小学 3 年生以上の全学 年、全小中学校で行っており、理科教育を通した人材育成の取組が進められている。 本市でも、小学4年生の授業の一環として、プラネタリウムを活用した学習が行われて いるが、教育課程を踏まえた展示物を活用した学習プログラムも無く、観察、実験を伴う 学習を行う実験室等も無いため、効果的学習が行えるよう施設機能の拡充が必要である。 今後、青少年科学館を活用し、一層の理科教育を推進するため、学校教育との連携強化 を図り、教育課程を踏まえた実験施設の整備や展示物の再構築が求められる。 ■具体的な事業(例) ●学年単位で受入可能な実験室の整備 小学校が青少年科学館プラネタリムによる学習投映を利用する場合、学校単位で一 学年が一緒に観覧し利用している。この機会に、学校では実現の難しい観察、実験を 伴う授業を行うことは大変有意義であることから、学校単位での活用を想定し、プラ ネタリウム、観察・実験体験、展示物などを連動させた学習活用モデルを構築すると ともに、同一学年が一度に観察、実験を行うことができる実験室を整備する。 また、青少年科学館で授業を行う際、学年や単元の進捗に左右されないよう、様々 な学習カリキュラムをあらかじめ構築し、学校の要望に応じた単元・授業に関する観 察、実験を提供していく仕組みを構築する。 ●教育課程を踏まえた魅力ある展示物の再構築 市 内 小 中 学 校 の 全 学 年 が 、 青 少 年 科 学 館 を 訪 れ 学 習 利 用 す る こ と は 現 実 的 に 難し い。来館時期を調整することを前提に、各学校の教科の進み具合を踏まえた単元の学 習を提供できるよう、教育課程を踏まえた展示物等を整備する。 また、学校では再現が難しい自然災害発生のメカニズムに関する展示や最新 IT 機 器やバイオテクノロジー関連機器、札幌や北海道の四季を再現した植生や生物の環境 展示、雪氷冷熱や風力等自然エネルギーなどの最新設備、大規模設備等を設けるなど、 特徴的な先端科学技術等についての展示等を整備し、学校では体験できない、小中学 生が興味・関心を高める魅力ある展示物を整備する。 ●科学・理科好きが集う研究実験サロンの整備 将来の科学技術イノベーションや科学技術開発を担う人材の確保・育成は、国内外 で重要性を増しており、今後、札幌においても、サイエンス・リテラシーの育む様々 な学びを通した人材育成を進める必要がある。 特に小学校の理科クラブ、中学校の理科部に所属する児童生徒や、科学や理科へ強 い興味・探究心を持つ児童生徒が、科学や理科への学びを深め、高められるような活 動の場として、研究・実験室的機能を有するサロンを青少年科学館に整備する。 また、サロンには、科学や理科に興味関心のある市民が、自由に集い、自ら考え、 予測した理論を基に自らが、観察、実験を行い実証し発表する場として活用し、市民 のサイエンス・リテラシーを育む学びを推進する拠点とする。 68 (2)重点テーマ 2:児童生徒の興味や探究心を高める理科授業構築のための取組の強化 子どもたちにサイエンス・リテラシーを育む学びを推進するためには、興味・関心が高 い観察、実験を伴う学習機会を増やすことが効果的である。そのためには、授業を担う教 員のスキルアップや興味・探究心を育む工夫された授業モデルの構築が重要である。 特に、小学校の教員については、アンケート結果から、理科の観察、実験等の経験が少 なく、苦手意識をもつ教員も少なくない状況であること。中学校の理科教員からは、中学 生の思考を踏まえた観察、実験への動機付けの工夫が必要であり、この点で他の教科の教 員と異なる負担があるという課題が明確になったところである。 今後、これらの課題を踏まえ、学校において観察、実験の充実を図るためには、教員研 修や理科授業に関する実験・実習セットや器具等の開発を進める必要がある。 ■具体的な事業(例) ●理科の観察、実験を充実するための教員研修研究機能の整備 理科における観察、実験を伴う学習を充実させるためには、授業を担う教員の理科 に関する知識や経験を向上させ、授業を行うための研究実践の情報の蓄積提供が必要 であることから、理科教育推進のための研修施設と研究機能を整備する。 青少年科学館は、児童生徒が多く来館することから、この環境を生かし研修機能を 整備し、知識や経験を向上させるとともに、教育課程を踏まえた授業プログラムの研 究を進め、子ども達の興味関心を高める授業を提供する。 ●理科の観察、実験を伴う授業を実施するための支援体制の充実 理科における観察、実験を伴う学習は、他の教科とは異なり、教材の準備や実験結 果の確認など事前の準備を必要とすることから、学級担任制の小学校では、負担と感 じる教員が多い。 青少年科学館では、理科において観察、実験を積極的に取り入れやすくするため、 理科教員と協力し実験・実習セットの開発・貸出を行っており、貸出数や種類を拡充 し、貸与手法を改める また、小中学校の理科を専門とする教員 OB や先端技術開発を担ってきた技術者 OB 等を活用し、青少年科学館を拠点として理科の観察、実験を行う学校へ準備や授 業支援を行う、観察、実験アシスタントの派遣等の方策について検討する。 ●大学と連携した観察、実験を伴う学習機会拡充のための教員育成機能の整備 小学校の多くの教員は、専門分野外であるため等の理由から、理科の十分な知識や 経験を得られないまま教員となり、理科の観察、実験を伴う授業に取組むことになる ため負担感が強いと思われる。 このことから、大学等の教員養成機関等と連携して、必要とする知識や経験をあら かじめ得られるよう、教員志望者の研修の場として青少年科学館を活用し、観察、実 験を伴う学習を実践的に体験できるよう施設を整備し、理科授業に関する教員研修セ ンター的機能を設ける。 青少年科学館は、教員志望者の研修を受け入れることで、施設の運営等を支える ボランティア等としても活用し、利用者サービスの向上に繋げる。 69 (3)重点テーマ 3:企業・大学等と連携したサイエンス・リテラシーを育む機能の拡充 市民誰もが、自立した社会人として生きる力を身に付けるためには、社会が求める人材 像を把握し、教育を通してその資質を養うことが重要である。札幌市の産業構造は、サー ビス業の割合が最も高いが、先端技術や科学技術イノベーションに関連する大学や企業、 研究機関も数多く存在しており、その担い手となりうる科学技術人材の育成の取組の重要 性が増している。 札幌を代表する主なものとして、IT 関連企業、農水産物を活用した機能性食品分野や 化粧品分野、大学シーズを活用したライフサイエンス分野のバイオ企業、エネルギー関連 企業などがある。中には、自ら欲する人材の確保に向けた取組みとして、地域貢献として の理科教育関連事業を展開する企業も存在しており、今後、同様な取組みが増加するもの と思われる。 高度な研究などを担う大学等の高等教育機関や国立、道立の試験研究機関についても、 同様に科学技術を支える人材を必要としており、人材確保に向けて、今後、更に一層、小 中学生を中心にサイエンス・リテラシーを育む学びを推進する青少年科学館の役割や可能 性に対し期待が高まるものと思われる。 ■具体的な事業(例) ●最新科学技術を体験する展示スペースの設置 青少年科学館の魅力向上のため、札幌や北海道にある身近な企業等が持つ先端科学 技術や特色ある製品を紹介することは、市民の企業等に対する印象や製品に対する認 知度の向上に役立つとともに、科学・理科に対する興味・関心を高めことに繋がる。 これらの企業や大学等研究機関が持つ、特色のある最新技術が体験できる常設の展 示体験スペース「仮称・札幌のものづくり体験コーナー」を設置し体験的に学ぶこと で市民自ら学ぶ力を培う。 ●企業や大学等の研究成果発表の場の整備 企業や大学等研究機関が、自ら持つ技術や研究成果を発表し、市民、特に子ども 達に触れる機会を与えることは、科学の普及啓発のための重要な取組である。 青少年科学館において、先端科学技術を担う企業や大学等の持つ製品や研究成果 を発表する特別展等のイベント(科学展)の開催し、企業・大学間のマッチングの 場としても活用する。また、ある一定期間を定めて利用する常設の展示・発表の場 を整備し、子どもから大人まで誰もが科学に対する関心・探究心を高め、楽みなが ら学べる機会を創出する。 ●産学官市民ぐるみの札幌らしい人材育成の取組 あらゆる市民が将来の札幌の科学人材育成について共に意見や知恵を出し合う、市 民自治、サイエンス・リテラシーを育む札幌らしい意見交換の場と組織を形成する。 青少年科学館、企業、大学等研究機関、小中学校等、そして市民が、共に協力し合 い、自由に意見交換し活動する場と組織を青少年科学館中心に形成し、理科教育の推 進を図る。そこに参加する各々が、得意分野を生かし様々な活動を行うことで、新た な関係が構築され、理科・科学に限らず環境教育や国際交流などにも活用する。 70 【理科 科教育推進 進における青 青少年科学 学館の位置づ づけ(イメ メージ)】 子 ども達が自 自ら体験し考 考え、創造 ・発展させ せていくよう うな学習の推 推進を図る と共に 市民・企 企業・大学、 、誰もが理 理科・科学に に参加できる る 札幌 幌の理科教 教育を推進 進する中 中核施設 学校教育 育と連携し した学習の の場 市民が気軽 市 軽に科学に に触れられ れる場 企業、大学 企 学等の最新 新技術体験 験の場 サイエン ンス・リテ ラシーを育 育む学びを を体験する る場 将来的に にあるべき機 機能・設備 現在ある機能 現 能・設備 常設展示 物、 プラネタリ リウム 実験器具貸出 出し 等 実験学習授 授業 人材育成の のための ラボ・プロ ログラム 成果発表ス スペース 等 青 青少年科学 館と学校 教 教育との連 連携強化 児童生 生徒の興味 味や探究 心を高 高める理科 科授業構 築のた ための取組 組の強化 ●学 年単位で受入可能な実験 室 の整備 ●理科の 観察、実験を充実する ための教 教員研修研究機 機能の整備 ●最新科学 技術を体験する展 示スペー ースの設置 ●教 育課程を踏まえた魅力あ る 展示物の再構 構築 ●理科の 観察、実験を伴う授業 への支 支援体制の充実 実 ●企業や大 学等の研究成果の 発表の場 場の整備 ●科 学・理科好きが集う研究 実 験サロンの整 整備 ●大学と と連携した観察 察、実験を 伴う学 習機会拡充の のための教 員育成 機能の整備 ●産学官市 民ぐるみの札幌ら しい人材 材育成の取組 等 企業・大 大学等と連 連携した サイエ ンス・リテ テラシー 育む機能の拡 拡充 を育 等 等 71 72 73 (4)札幌の現状と課題、将来への期待 (札幌の現状と課題) 札幌市は、まちの発展とともに多くの大学や研究機関が集積し、活発な研究活動が 展開され、最近では研究成果の活用に向けた産学官の連携も広がりを見せ始めてい る。以前より札幌への IT 企業の集積は、全国的にも知られるところだが、現在はラ イフサイエンスやエネルギーなどの新しい分野の研究も盛んになっている。これらの 知的資源は、国全体としてはもちろん、札幌、そして北海道全体にとっても重要な財 産であり、これらに関する科学技術の可能性を大切な地域資源として再認識し、地域 が一体となって盛り上げていくことで、より豊かな市民生活の実現や新たな産業の創 出など、まちの活力向上に結び付くものと考えられる。 そのためには、次代を担う子どもたちの育成が必要不可欠であり、豊かな自然や科 学技術に触れられる場や機会をより多く創出するとともに、科学的なものの見方や考 え方を身に付け、子どもたちが自然や科学に親しみ、 「自ら課題を見付け、自ら学び、 自ら問題を解決する学ぶ力=科学する心」をもった「自立した札幌人」を育てる環境 整備を図る必要がある。 しかし、子どもたちは、身近ないたる所で比較的豊かな自然や先端科学技術を伴う 製品に囲まれ、普段から何気なく扱っているため、それらに含まれる自然の現象や変 化を感じ取ることができにくくなっている。そのような自然の精妙さや科学の有用性 をなかなか実感できない子どもたちの「理科」に対する学習意欲は他の教科と比較す ると高いといえるが、先端の科学技術や研究など理科に関連した職業に就くものはそ れほど多くない。理科に対して子どもたちが持つ印象と「職業」としての関係性を結 び付けるのが難しいなどの理由が考えられる。 また、小学校では、理科を専門とする教員が少なく、観察、実験等の研修機会も少 なかったりすることから「理科の授業において観察、実験に取り組みにくい環境」と なっていることが想像される。中学校でも、知識や経験を伸長させた理科教員の授業 は、生徒に適切な課題探究能力を育むよう工夫され、質の高い授業となっているが、 この実践経験が他の学校において生かされる機会が少ない状況にある。観察、実験は、 児童・生徒が目的を明確にもち、その結果を表やグラフなどに整理して考察すること で、はじめて意図的、目的的な活動となり、意味や価値をもつ、有用で体験的な学習 となる。 このことは、札幌において、理科に関する研修・研究拠点となる施設が特に設けら れてこなかったこと、近年、教員・教員希望者向けの観察、実験を体験する研修機会 が設けられるようになってきたが、最近まで観察、実験を体験する場が非常に少なか ったことがあげられる。 74 (将来への期待) このような現状や課題を踏まえると、今後、青少年科学館が担うべき役割への期待 は非常に大きなものがあると言える。 これまで科学館が担ってきた、科学知識や技術の普及啓発に加え、子どもたちが、 体験を通し自ら考え、創造し発展させていくような学習を推進するために、このたび、 理科教育に精通したメンバーが一堂に会し、意見交換の機会を得ることができ、改め て子どもたちへの理科教育の必要性・有用性を再認識することができた。 また、各委員からの意見に共通していたのは、子どもたちが社会人へと成長する過 程で、理科の授業、特に観察、実験を通した学びは決して無駄にはならないというこ とである。 子どもたちにとっては、受験科目ではないなどの理由から、理科の教科としての優 先順位は高くはないのかもしれないが、他の教科には無い、観察、実験などによる体 験的な学習により、興味や探究心を呼び起すだけではなく、そこで学んだ論理的、客 観的思考は、社会人として生きていくために必要なものであるとの思いを一層強くし たところである。 特に、産学官連携の取組においては、科学技術の分野で活躍する人材の育成に向け た取組が徐々に広がりを見せ始めていることから、「子どもたちのサイエンス・リテ ラシーの育成」をキーワードとした、成功事例を多く創出することが重要である。 具体的には、科学館を舞台に、企業や大学等の最新技術や研究成果を市民へ還元し ていくような学習の機会を増やすことは、異分野の専門家同士が刺激し合い、融合し、 市民からイノベーションを起こしていくことにつながっていくものと考える。 そのことは、子どもたちだけではなく、市民・企業・大学等さまざまな人材が、協 力し合い、互いに成長し、共に社会に貢献することにつながっていく。 このように、サイエンス・リテラシーの育成を通じ、将来の札幌から世界に羽ばた くイノベーターを育てていくために、市民や企業、大学が英知を結集していくことが 正に求められるところである。 しかし、構想を具現化し、実現していくことこそが、もっとも重要なことであり、 小さな成功事例を積み上げて実績を作る視点も忘れてはならない。 そこで、試行的に夏・冬の特別展示期間などの機会を通じて、企業や大学と連携し た短期的な展示やイベントの機会を増加し、科学館とのネットワークを深め、徐々に これを広げていくことが重要と考える。 また、札幌市は、国内はもとより世界の国々から、魅力的な観光都市の1つに挙げ られていることから、教育施設という見方に加えて、観光・集客施設としての観点か ら、国内外の修学旅行生から成人までを呼び込む施設整備やソフト事業展開の検討が 将来的に必要である。 特に、成人をターゲットにしたソフト事業展開は、科学館の収入面の効果と、科学 館を支える市民サポーターの育成につながるなど、これからの科学館を考えていく上 で、非常に重要な視点である。 例えば、新規利用者を増加するために、都心部に科学館サテライトを作り、成人向 けや親子をターゲットとする、ミニ科学実験や工作会などを実施し、もっと深く学び たい市民などが、科学館へ関心がもてるような事業の企画が有効である。 75 一方、2020 年の実施が予定されている学習指導要領には、いわゆる従来の知識詰 め込み型学習から、自ら課題を見付け、主体的に学ぶ学習への「学びの大転換期」を 迎えようとしている。札幌市の教育推進において、理科の観察、実験を通じて、論理 性や客観性などを身に付けさせていく取組は先駆的であり、将来的には、このような 思考のできるスマート(賢い)な市民を育てていくことにつながるものと考える。 また、将来的な科学館の発展と、今回の報告書でまとめた3つの重点テーマを実現 していくために、現施設が開館後30年以上経過していることを踏まえ、札幌市の科 学館施設の将来構想について、今から準備を進めるべきであると提言したい。 今後、札幌市においては、有識者会議の5回に亘る議論が、教育行政を始めとする さまざまな市の施策に活用、応用するヒント、アイデアとなるとともに、青少年科学 館が、科学や理科への興味・関心の高い子どもや大人が、いつでも集い共に楽しみな がら学習でき、また、観察、実験などの体験を通して自らの好奇心や探究心を満たす ことができ、さらに、次世代を担う人材育成に役立つ施設となることを期待している。 平成 27 年 3 月 青少年科学館を活用した理科教育推進の在り方検討・調査 有識者会議メンバー一同 76