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直轄国道の維持管理基準について ~ 現場での取り組み(除草偏)~
直轄国道の維持管理基準について ~ 現場での取り組み(除草偏)~ 安次富 長一1・城間 和樹2 1南部国道事務所 与那原維持出張所 出張所長(〒901-1032 与那原町字上与那原346-1) 2南部国道事務所 与那原維持出張所 管理係長(〒901-1302 与那原町字上与那原346-1) 平成22年度より道路の維持管理(巡回、除草、清掃等)について全国統一の基準が定められ、運用 していくこととなった。中でも除草に関する基準(年1回)は、亜熱帯な沖縄の気候条件と除草頻度 とが大きく乖離しており、雑草に対する多くの苦情が寄せられた。改善策として沖縄独自の除草作 業の目安を設定し、除草を実施した。 キーワード 維持管理、除草、除草目安 1.はじめに 伴った雨により雑草の成長も促されることから成長ピークは、 9月~10月頃と想定した。 したがって、与那原維持出張所としては、10月以降を除草 これまで直轄国道の維持管理については、気象条件、 沿道状況により作業が異なることから巡回、除草、清掃 等の全国統一の基準を定めず、地域ごと適切に維持管理 を実施してきたが、平成22年度より直轄国道の維持管 理基準が定められ、運用していくこととなった。 管理基準の主な内容は、以下のとおりである。 ・道路巡回:1回/2日(夜間巡回なし) ・路面清掃:6回/年(DID 地区) 1回/年(その他地区) ・除草:原則として年1回(除草すべき箇所を抽出) ・剪定:1回 /3年(高木) 1回/年(寄植) など。 この維持管理基準は、従来の管理水準を下げざるを得 ない状況であり、特に除草や剪定の基準に関しては、亜 熱帯な沖縄にとって大変厳しいものであった。 本稿では、平成22年度における与那原維持出張所の除 草に関する取り組みを報告する。 2. 除草の実施方針について 実施時期として設定した。 (2) 苦情対応 従来の除草頻度(年3回)においても雑草に関連する苦 情が寄せられていることから、平成22年度においては、 相当数の苦情が寄せられるものと想定されたため、対応 を下図のフローのとおりとした。 除草関係の苦情対応フロー 3.苦情・要望と雑草繁茂の状況について これまで与那原維持出張所の管理する道路においては、 年3回程度の除草を実施してきたが、年1回という基準で 管理を行うために年度当初に除草についての実施方針を (1)苦情・要望件数 決めた。 H20~H22年度の与那原維持出張所管内における苦情・ (1)除草時期の設定 要望件数(四半期毎)は、下表のとおりであった。 沖縄の亜熱帯な気候を考慮すると、年間を通して雑草 は成長するものと考えられるが、その間の梅雨や台風に 与那原維持出張所管内における テレビ報道(QAB:H22.11.3) 除草関係の苦情・要望件数(H20~H22年度) H22年度の総件数は、H20、H21年度と比較すると2倍 以上となっている。 苦情件数は、慰霊の日を迎える6月以降、増加した。 内容としては、以下のようなものが多かった。 ・雑草で歩きづらい、視認性が悪い ・景観が悪い、見苦しい ・ハブが出る、出そう ・イベントに合わせて除草してほしい 新聞報道(沖縄タイムス:H22.9.28) (2)雑草繁茂状況と対応 寄せられた苦情・要望に対しては、方針どおり、現地 状況を確認し、現地状況に合わせて対応した。 ① 除草対応した箇所例(写真1) 写真1 ② 除草対応しなかった箇所例(写真2) 4.除草実施状況について 6月以降、苦情件数が増加とともに交通安全上支障と なる箇所も増加していった。 さらに、沖縄での全国高校総体に皇太子殿下がご臨席す るため、雑草は警備上、好ましくないとして、県警から の除草要請もあり、当初、10月以降と設定していた除草 時期を7月に前倒しし、実施せざるを得ない区間もあっ た。 (1) 除草作業における問題点 例年よりも実施時期を遅らせたため、除草作業時には、 以下のような問題点があった。 ① 背丈ほど伸びた雑草 1.5m以上伸びた雑草の除草作業は、作業性が悪く、 通常よりも時間がかかった。また、刈った後の雑草が 作業員にもたれかかる状況であったため、刈払機にて 振り払う行為により事故も発生した。 写真2 現況として除草対応できない箇所については、植栽ボ ランティアとして除草の協力依頼を行った。平成22年度 は6箇所で協力して頂き、内3箇所については、今年度も 引き続き、ご協力頂いている。 除草作業状況 (3)新聞・メディアによる報道 苦情件数のピークとなった8月頃より各新聞・テレビ でも国道の雑草について、取り上げられた。 ② 処分量の増加 雑草が大きく繁茂していたことから下表のとおり、 同一路線・同一面積による除草後の処分量がH21年 度と比較して約1.4倍となった。 国道331号・332号における除草後の処分量 また、年間で比較した場合でも除草面積は、半分以 下となっているが、処分量は、ほとんど変わらなかっ た。 そこで、平成22年10月、南北国道事務所の意見を基に 本局・道路管理課において、国道における除草作業に係 る目安を設定した。主な内容は、以下のとおりである。 ① 車道部における除草目安 a.雑草が外側線にかかる等、視認性が確保できな い状況になった場合(図1) b.路肩部の安全性の低下が懸念される場合 平成21・22年度の除草面積及び処分量 適切な時期に除草を実施すること必要であると考えら れる。 ③ 危険生物の出没(ハブ、ハチ) 平成22年度は、例年以上に除草作業時でのハチやハ ブなどの危険生物に遭遇ことが多かった。 これも雑草が大きく繁茂したことによるものと考えら れる。(写真5・6) 図1:車道部の除草目安 ② 歩道部における除草目安(図2) a.歩道空間(1.5m~2.0m)が確保できない場合 b.視覚誘導ブロックの左右0.6mを確保できない場合 1.5m~2.0mを確保 視覚誘導ブロック 左右0.6mを確保 写真5(ハチの巣) 写真6(ハブ) (2) 除草作業目安の設定 当初設定時期(10月)より3ヶ月前倒しして除草を実施 したため、年度内に2回目の除草を実施しなければなら ない箇所が発生することが想定された。 実際、除草実施後、1ヵ月では、除草実施前の状況に 戻っていた箇所もあった。(写真3・4) 図2:歩道部の除草目安 上記、目安により頻度ではなく、状況に応じた対応を 実施したことで、10月以降は、苦情も大きく減少した。 5.防草対策の実施について 今後の除草頻度や面積を減少させる取り組みとして防 草対策を実施した。 (1) 交差点部での対策 交差点部では、歩行者や車両への適切な視距が確保 できていなければ、交通事故等の恐れがあるため、特 に交通島のある交差点や右折レーンのある交差点を優 先に防草対策を実施した。(写真5・6) 写真3:除草実施後(H22.7) 写真4:除草1ヶ月後(H22.8) 写真5:施工前(交通島) 写真6:施工後(交通島) (2) 試験的な防草対策 本局・道路管理課において、効率的・効果的な維持管 理を実施するため、防草対策検討会を開催し、防草対策 のあり方についての検討が行われた。 検討会では、「防草植栽」と「構造的な防草」という 2つの側面から検討が行われ、平成22年度は、以下の 取り組みを実施した。 ① 植栽による防草対策 雑草の進入を防ぐことを目的として防草植栽(ムラ サキオモト)の植栽を実施した。(写真7・8) 施工前 施工前 6.おわりに 写真7:施工前 写真8:施工前 ② 目地部の防草対策 歩道縁石とアスファルト舗装との隙間や中央分離帯 の縁石と張りコンクリートとの隙間から生える雑草の 抑制を目的とした対策(Ⅴカット工法)を実施した。 (図3) 施工内容:舗装・縁石を切断(V字)し、充填剤を注入。 防草シート貼付。 As舗装・張りコンクリート 縁石 図3:施工断面図 平成22年度の維持管理基準における除草に関する基 準(年1回)は、沖縄の気象条件と除草頻度とに大きな 隔たりがあることが確認された。そのため、多くの苦情 も寄せられ、その状況は、マスコミにも取り上げられた。 改善策として沖縄総合事務局独自の除草作業の目安を設 定し、除草頻度(回数)ではなく、現地の状況に応じた 除草を実施した。 結果として今年度は、維持管理基準における除草基準 は、頻度から状況に応じて除草を実施するように見直さ れた。 防草対策については、除草に係る費用の削減も期待さ れることから今後も引き続き実施していきたい。 また、試験的な防草対策の効果については、経過観察し、 検証していく必要があり、今後の防草対策検討会でさら に良い提案が行われることを期待する。 今回は、除草基準について、見直しが行われることと なったが、高木剪定の基準(1回/3年)についても見直し を行う必要があると考える。