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ノルウェーの子ども達 ノルウェーの子ども達 伊賀上 ミヱ子(シ17)
ノルウェーの子ども達 伊賀上 ミヱ子(シ 17) ノルウェー(諾威)はスカンディナビア半島西岸に位置し、北極海・ノルウェー海に面した立憲君主国。豊か な自然やフィヨルドの景観は日本人にも人気の国だ。緯度は高いが、暖流のメキシコ湾流の影響で温暖、夏は 30℃ にまで上がると言う。但し湿度は低く過ごしやすい。豊かな海洋の恵を享受している。国土は大体日本の広さ、 人口は約 480 万というから兵庫県の人口より少ない。福祉国家、男女完全平等、長寿国という点でも有名だ。 神戸っ子・中 英公子さん は渡諾して 13 年。 環境デザ イナーとしてフルタイムで 仕事をしながら2人の男児 を育てているママでもある。 お住まいは首都オスロから 東南に 60 ㎞、 オスロフィヨ ルドに面した港町モス。夫君メーク氏は北海ガス油田開発プロジェクトに参加のシステムエンジニア、ただ今単 身赴任中である。とは言え、週の内 3 日は帰宅されるとか。このほど帰国した英公子さんに、ノルウェーでの生 活あれこれをお聞きした。 ノルウェー子育て事情 大学で環境デザインを学んだ英公子さんは、卒業後 の進路に、ノルウェー国立農業大学大学院を選んだ。 当時交際中のメーク氏がノルウェー人であったせいも あるが、小さい頃からなぜか北欧びいき。読む絵本は 北の国のものばかりだったと母みつ子さんは笑う。 結婚後、修士課程を終え、ランドスケープアーキテ 無料。大体 18、19 才で奨学金制度を使って親から独立 すると言う。彼女は現在、ケビン君(5才)・トーマ ス君(2才)を保育園に預けエネルギッシュに仕事を こなしている。 仕事はコアタイムが 9:00~ 3:00、前後はそれぞれ の事情でフレキシブルに対応する。ステージに合わせ て仕事が出来るのだ。犠牲にするものは無いとの言葉 に私は考え込んだ。仕事と子育ての両立に苦しむ日本 (特に女性)の若い人たち。少子化の解消はこのよう な支援あってこそだ。英公子さんはこども達を 7:30 から預け、8:00~4:00 仕事のコースを取っているが、 保育園は朝食付き。40 名(0~5 才)を2班に分けそれ ぞれを 4 名で担当する。雨が降ろうが雪が降ろうが、 とにかく外遊び。きちんとしたスケジュール等はあま りない。夏は紫外線対策で帰宅すると顔も体もクリー ムでべとべとと笑う。パワフルで活発な子どもが否応 なく育つシステムだ。小学校入学前の、いわゆるプレ・ スクールのカリキュラムはやや少ないらしいが、体力 と豊かな感受性を育む保育園の方針には大賛成とのこ とだ。園の行事や保護者会は夕方から夜に行われ、子 どもが病気の時は 10 日間の有給が気兼ねなく取れる。 仕事に支障は出ない。「お互い様」だからだそうだ。 見事な子育て支援だ。 アトランティックロードの橋 クチャー (景観設計) の仕事に就き現在に至っている。 職場は女性が多い。 建築・土木の世界でも男女比は半々 というお国柄。この世界で働く上で、子どもがいるこ とはとても役に立っている。子どもがいるからこそ主 張・意見にも説得力があると言う。 今ノルウェーでは子供がどんどん増えていて、建築 ラッシュ、当然ながら景観設計の仕事も大忙しの日々 だが、学生時代ワンゲルで鍛えた英公子さん、精力的 に仕事をこなしている。 医療費・教育費は無料 福祉の国であるから子育ての施策は手厚い。妊娠す ると、各種検診から出産まで全て無料。子供が 12 才ま で医療費も無料。育休は1年、そのうち3ヶ月は父親 に。前年の収入 80~100%が保証される。教育費は全額 -6- 生活全般 生活全般 福祉の国の税金は高い。消費税 25%、所得税 40%前 後(社会保障を考えれば仕方がないか)。食生活はシ ンプル、茹でるかソテーと英公子さんは笑うが、食材 が新鮮で美味しい。とにかく沢山食べる。サバ・甘エ ビ・オヒョウ・カキ等々魚類が多い。しかし圧倒的な 野菜不足。これはスペイン・フランス等からの輸入に 頼っているそうだ。 お国柄と言えるかどうか、ともかく英公子さん周辺 ではお互いをリスペクトしあう間柄が多く、あまり他 人に干渉をしない。この距離感がとても合っていると の事だ。いい意味で雑・おおまか。万事にスローペー ス、のんびりゆったりの生活だからストレスを生まな いのかしらと言う。恵まれた環境で生活を楽しんでお いでのようだ。又、「家族あっての仕事、仕事あって の家族」で、このバランスが私にはとても居心地がい いと言われたのが印象的だった。 自然とのかかわり 自然が一杯の北の国。国民性として、とてもスポー ツ好きなのだそうだ。 日常的にスポーツをするからか、 皆さん体力がおあり でエネルギッシュ。 やはりヴァイキング の国だ。 冬はスキー・スケ ート・アイスホッケ ー・クロスカントリ ー。夏はサッカー・サイクリング・ハイキング・山登 り・カヌー・ボート・ヨットセーリング。中でもヨッ トは車感覚で買う。とにかく広い国土。都市でもすぐ 側に森があり、入れば広々と明るい、海も湖も至る所 にあるから、心おきなく歩き、走り、泳ぐ。 羊と乳牛の放牧にや ってくる農家だけ。 電気はソーラーパネ ル1枚。飲料水も行 水も湖。ボート遊 び・水泳・マス釣り・ ハイキング・バード ウォッチング・クレ ー射撃。一種サイバ ルを幼児から徹底的 に実践する。火を熾 し食事も勿論自分た ちで。冷蔵庫・電話・ 携帯・テレビ等文明 の利器から隔絶した 生活だ。始めは退屈 そうなこども達もす ぐ慣れて自分なりに 遊びを見つけるという。ケビン君は鳥博士。大好きな 日本も鳥が少なくこれだけは不満のようだ。農家のこ ども達とも仲良しになり、互いを訪問し合うと言う。 英公子さんは契約上 1 年 4 週の無給休暇を取る。こ れで毎年友人の建築家たちとツアーを組んで帰国する。 日本の近代建築に触れ、こども達に日本の文化を伝え ることがここ数年の行 事だ。 親の出来ることは、 基礎体力・基礎学力を しっかりつけることと 悠々と語る英公子さん。 成長する坊やたちと進 化する英公子さんに帰 国の都度会えるのが私 はとても楽しみだ。 現在ノルウェーは極 夜。日の出は9時、日 の入りは3時、更に北 極圏では、太陽は東か ら西へ水平線を移動す るだけなのだそうだ。 彼女たちが帰国する と間もなくクリスマス、 そして新年の準備と心 弾む季節がやってくる。ノルウェーでは国中が一斉に 華やいでくるとの事だ。 彼女のおかげで遠い国がにわかに近くなった私で ある。 バカンス 休暇は年間有給5週間、内保育園では3週間をまと めて取ることになっていて、これが夏期休暇というこ とになる。毎年、ファミリーの持つコテージで1週間 余りを過ごすのが恒例だ。ノルウェー中部の山中(気 温 20℃水温 15℃)、湖のほとりにある。周囲は夏場、 ※ 写真は中みつ子さん・英公子さん提供 7