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野下 裕市:「電流レギュレータの変調により正弦波入力電流を実現する
電流レギュレータの変調により正弦波入力電流 を実現する LED 駆動回路の動作検証 野下 裕市*(東京都立産業技術高等専門学校) A Experimental Verification of Linear AC LED driver with the variable current regulator. Yuichi Noge (Tokyo Metropolitan College of Technology) 1.はじめに 近年,長寿命や高効率などの利点から,白色 LED を使用 した照明器具が普及している(1)。これらの交流電源用 LED 駆動回路の多くは DC-DC コンバータにより LED の電流を 制御するため,キャパシタやリアクトルが必要となり,高 Bias circuit 温動作による寿命の短縮や,部品の大型化が課題となる。 そこで筆者らは,これらの受動部品を使用せずに高力率動 文献 2 では, 作を実現する LED 駆動回路を提案している(2)。 ダイオード整流器の直流部に,電流値が一定かつ通流開始 電圧が異なる LED 列を複数設け,電源電圧に比例して LED の並列数を可変することで高力率かつ低ひずみの入力電流 を得ている。しかし,ひずみを低減するためには LED 列を 増加させる必要があり,部品点数が増加する問題があった。 そこで本論文では LED 列を 1 列のみ使用し,従来は一定 としていた電流レギュレータの設定値を直流部の電圧に比 Fig. 1. Equivalent circuit diagram. 例して変調することで,入力電流を正弦波に制御する交流 Table 1. Circuit parameters. LED 駆動回路を提案する。実験の結果,入力電圧 100 V, 消費電力 7.5 W 時に入力電流ひずみ率が 2.1%,入力力率が LED XLamp ML-B (Cree) VF=3.1V, IF=100 mA, 40-series MOSFET (Q1~Q9) IRLML2803 (International rectifier) Vds=30 V, Ron=0.25 Ω, Ciss=85 pF 0.999 の良好な結果を得たので報告する。 2.提案回路 ZDgate, ZDbias Vz=6.2 V 入力電圧の最大値に合わせて設定する。また文献 2 の従来 Rbias, Rgate 100 kΩ 回路と同様に,LED 列と並列に電流バイパス用の MOSFET Diode bridge DF08SA (Vishay) を接続し,直流部の電圧変動に合わせて LED 列の順方向電 Vin 圧を切り替える。これにより電流制限動作に伴う MOSFET OPAMP (U1) AC 100 V, 50 Hz AD8613 (Analog devices) Vs=5 V, GBW=400 kHz, Iq=38 µA FDS6630A (Fairchild) Vds=30 V, Ron=38 mΩ, Ciss=460 pF 図 1 に提案回路の原理図を示す。LED の直列数は,交流 と電流レギュレータへの印加電圧が低減され,効率が改善 できる。従来回路では電流レギュレータとして低ドロップ MOSFET (Qc) アウト電圧の 3 端子レギュレータ(LM1086)を使用していた。 Rfb 5.1 Ω しかし LM1086 の電流制限値は外付け抵抗器で設定される Rref1 ,Rref2 900 kΩ, 3 kΩ ため,必然的に固定値となる。そこで従来回路では入力電 ZDU1 5V 流を正弦波化するために,電流値が一定で通流が開始する RU1, CU1 500 kΩ, 0.01 µF 電圧が異なる LED 列を複数設けていた。従来回路は 10 列 構成時に入力電流 THD 5.1%,入力力率 0.999 の良好な特性 を得られるものの,部品点数の増加が課題となっていた。 図 2 および表 1 に提案回路の実際の回路図と回路パラメー タを示す。提案回路では,電流レギュレータの設定値を直 流電圧に比例して可変させることで,LED 列を 1 列のみと して部品点数を削減する。電流レギュレータを可変させる ために,MOSFET と OP アンプを用いた可変電流レギュレ ータ回路を使用する(3)。この回路は OP アンプの入力電圧と, 出力部のフィードバック抵抗器の電圧が平衡するように動 VF0 VF1 VF2 VF3 VF5 VF4 VF6 VF7 VF8 VF9 LED Q1 Rbias Rgate1 Q2 Q3 Q4 Rgate3 Rgate2 Q5 Rgate4 Q6 Rgate5 Q7 Q8 Rgate7 Rgate6 Q9 Rgate8 Rgate9 Bypass circuit RU1 Vin Rref1 ZDU1 + CU1 Vref +Vs ー U1 ZDbias QC -Vs Rref2 Rfb t 0 Variable current regulator Fig. 2. Circuit diagram of the proposed LED driver. 作する。直流部の電圧を Rref1 と Rref2 で分圧し,OP アンプ に入力することで,全波整流波形の電流を生成する。OP ア ンプの電源は ZDU1 と RU1 および CU1 を用いて作成する。消 費電力を低減するため,RU1 を 500 kΩの高抵抗に設定し, 小容量のキャパシタ CU1 によりバッファリングする。 3.実験結果 実験用の電源はひずみの少ない任意波形交流電源装置 (高砂製作所 AA2000XG)を使用する。また入力電流ひずみ 率はパワーメータ(横河電機 WT2030)と 100 mΩの外付けシ ャント抵抗器を使用して測定している。シャント抵抗器に よる電流測定精度については,6 と 1/2 桁のマルチメータと 高精度電流発生器による校正作業を行い,0.1%以上の精度 が得られることを確認している。 Fig. 3. Operating waveforms (Experimental) 図 3 に実験波形を示す。入力電流は正弦波状に制御され ており,100 V 入力,入力電力 7.5 W 時の入力電流ひずみ率 2 減された。また入力力率も 0.999 の高い値が得られた。極性 切り替わり付近の段付きは, 1 段目の LED の順方向電圧 VF0 による。電流値の大きい領域で部分的に波形が振動的にな っているのは,バイパス用 MOSFET の切替えに伴うものと 考えられ,今後詳細な解析を進める予定である。 図 4 に入力電流の高調波解析結果を示す。3 次高調波が 1.55%,それ以上は 0.5%以下となり,IEC61000-3-2 などの 高調波規制に対応できると考えられる。 Harmonic current [%] は 2.1%と低い。これは従来回路の 5.1%と比較して大幅に低 1.5 1 0.5 0 3 7 11 15 19 23 27 31 文 献 (1) T. Kunimatsu, Panasonic Tech. Journal, Vol. 58, No. 1 (2012) (2) 野下 他, 電学論 D, Vol. 134, No. 5, pp. 554-563 (2014) (3) 岡村 廸夫,定本 OP アンプ回路の設計,CQ 出版社 (1990) Fig. 4. Input current harmonics. 35 39