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第4回世界創傷治癒学会連合会議ランチセミナー2記録集

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第4回世界創傷治癒学会連合会議ランチセミナー2記録集
WUWHS 2012
4th Congress of the World Union of Wound Healing Societies
PACIFICO YOKOHAMA, Yokohama, Japan
第4回世界創傷治癒学会連合会議 ランチセミナー2
開催:2012年9月3日 会場:パシフィコ横浜
抗菌性ハイドロコロイドドレッシング
(バイオヘッシブ®Ag)の
機能とその臨床応用
司会のことば
抗菌性ハイドロコロイド創傷被覆材(バイオヘッシブ ®Ag)は,2011年1月に承認を
得た新規創傷被覆材です。創傷内に細菌が存在すると,治癒が遷延するリスクとなるこ
とが知られています。この創傷被覆材は,ハイドロコロイド中の親水性粒子が滲出液を
吸収,保持し,創傷面に柔らかいゲルを形成するとともに,スルファジアジン銀(SSD)が
抗菌効果を発揮することで創傷治癒に適した環境を提供します。近年,創傷の基本的な
司会 北里大学 名誉教授
塩谷 信幸
先生
治療戦略として注目を集めるmoist wound healingやwound bed preparationにも
適合した創傷被覆材であり,創傷管理における新たなステージにつながるものと期待
されます。ここでは,2人のエキスパートをお迎えし,バイオヘッシブ®Agを中心に,創傷
管理の最新知見についてご講演いただきます。
演者
感染創の病態とバイオフィルムの役割
福岡大学医学部 形成外科学 教授
大慈弥 裕之
先生
バイオヘッシブ®Agの臨床応用
北里大学医学部 形成外科・美容外科学 准教授
武田 啓
先生
共催:第4回世界創傷治癒学会連合会議/アルケア株式会社
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感染創の病態とバイオフィルムの役割
The pathophysiology of wound infection and the role of biofilms
大慈弥 裕之 先生 福岡大学医学部 形成外科学 教授
の表層部周辺にMRSAのコロニーが認められました。また,免
創傷内の細菌負荷は
創傷治癒を遅延させる
疫蛍光染色により,これらコロニーは肉芽組織の表層部内に形
成されていることが確認されました。一方,colonization段階の
熱傷創では,MRSAの細菌数は1×102CFU/gと少なかったもの
通常,慢性創傷には細菌が存在しますが,多くの場合創傷
のHE 染色では高度な炎症反応が確認され,免疫蛍光染色で
治癒において有害作用を及ぼすことはありません。しかし,創
はやはりMRSAが肉芽組織表層に見られました。
傷の細菌負荷
(bacterial load)
が増大すると,細菌は創傷組織
細菌は肉芽組織でなく
“cover layer”に局在している
に損傷を与え,近接組織に侵入して創傷治癒を遅延させ,全
身状態の悪化を引き起こします。また,創傷内の膿,壊死組織,
sloughは細菌増殖の培地となります。慢性創傷内の肉芽組織
には創傷治癒過程に影響を及ぼす細菌が含まれていますが,
それでは,細菌負荷は創傷組織にどのような影響を及ぼして
その作用機序は十分には解明されていません。
いるのでしょうか。われわれは,黄色ブドウ球菌(以下 SA)
にお
,高
いて細菌非検出創,低細菌負荷創(SA:5×103 CFU/g)
感染創のステージ分類
の比較を行い,細菌が肉芽
細菌負荷創(SA:1×106 CFU/g)
組織に及ぼす影響について検討しました。
Harding
(2008)
,Dow(1999)
およびKingsley
(2003)
は,感
その結果,組織生検全てにおいてわれわれが“cover layer”
染創をcontamination
(汚染創)
,colonization
(コロニー形成
と呼ぶ,おそらく堆積したsloughや凝固層が存在し,その下方
創)
,critical colonization(臨界保菌創)
〔もしくはlocalized
に肉芽組織を認め,細菌(SA)
はこの“cover layer”
に局在し
infection(局所感染創)〕
,spreading infection(拡大感染
“cover layer”
ていることが明らかとなりました
(図2)。また,
創)
,systemic infection
(全身感染症)
の5ステージに分類し,
は細菌非検出創で0.11mmと薄く,低細菌負荷創,高細菌負
critical colonization ∼ systemic infectionは治療を要する病
。さらに,
荷創の順に細菌数が多いほど厚さを増しました
(図3)
態としています。
Contaminationでは,創傷内の微生物は定着
図1 感染ステージに及ぼす細菌数の影響
していない状態にあります。一方,colonization
Colonization
Critical
Colonization
では微生物は増殖可能となり創傷に定着するもの
の,局所の免疫とバランスがとれており,宿主に障
害を与えることはありません。これに対し,critical
colonization
(もしくはlocalized infection)
では創
傷治癒を遅らせる微生物が認められますが,周囲
組織の炎症(cellulitis)
を起こすことはありません。
しかし,spreading infectionでは炎症を伴って,
周囲組織の損傷が進展します。そしてsystemic
infectionでは微生物により全身性の炎症反応が引
き起こされます。
創傷における細菌負荷の検討
MRSA
2.8×102CFU/g
MSSA
2×102CFU/g
MRSA
3×103CFU/g
MRSA
2.6×104CFU/g
図2 肉芽組織表層の“cover layer”の形成
われわれの検討では,創傷内の細菌数が増加
するほど感染ステージが進展することが示されてい
。感染創における細菌負荷の分布を
ます(図1)
調べると,熱傷創の壊死組織(焼痂)
やspreading
infectionを伴う糖尿病性足潰瘍における壊死組織
に細菌コロニーが形成されていました。
そこで創傷の肉芽組織における細菌負荷を組織
学的に検討しました。HE 染色で軽度の炎症を認
めたcritical colonizationの仙骨部褥瘡患者の肉
“covered layer(堆積層)”
は,エオジン好性の凝固性滲出物から成り,
炎症性細胞を含む場合と含まない場合がある
芽組織にグラム染色を行ったところ,主に肉芽組織
2
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“cover layer”
には好中球やジブロモチロシン
(DiBrY:好中球
colonizationなど,感染ステージの進展とともに亢進します。細
由来の酸化損傷生成物)
の蓄積が見られ,SA感染創の
“cover
菌負荷は
“cover layer”
を介してバイオフィルムの形成をもたらし,
layer”
の肥厚には局所免疫反応が関与する可能性が考えられ
好中球やマクロファージなどの炎症性細胞がこのバイオフィルム
ました
(Manabe T, Ohjimi H, et al. 福岡大学医学紀要 2012;
周辺に浸潤します
(図4)。これらの細胞は貪食性で酸化作用
39: 79-86)
。
を示し,最終的にアポトーシスを引き起こします。こうして生じた
これらの知見により,この“cover layer”
を含めた構造がバイ
死細胞が,おそらく肉芽組織の“cover layer”
を肥厚させている
オフィルムを形成していることも分かり,組織修復が困難となる悪
ものと考えられます。
条件を創出するものと推察されました。
“cover layer”の治療戦略
バイオフィルムの形成と感染創増悪のメカニズム
―マウスによる検証―
“cover layer”
は,エオジン好性成分から成り,多核白血球な
どの炎症性細胞を伴う場合と伴わない場合があります。創傷の
バイオフィルムの形成は感染創の増悪因子であることが知ら
感染管理においては,細菌が凝集する
“cover layer”
の治療こ
れています。そのメカニズムを解明するため,われわれは慢性
そ重要であり,慢性創傷におけるwound bed preparationの
創傷感染マウスを作製し,バイオフィルム感染の病態生理を検
重要戦略に位置付けられます。
“cover layer”
の具体的治療
討しました。マウスは,5-FU 投与により免疫機能を低下させ
方法としては,創傷面の洗浄,スクラビング,搔爬などによる物
SAを感染させる群と,非投与でSAを感染させる群で比較しま
理的な除去が考えられますが,近年では,銀を含有する創傷被
した。その結果,非投与感染群では感染創内に継続的に好
覆材の使用が創傷のバイオフィルムに有効であることを示すエビ
中球,マクロファージなどの炎症性細胞が誘導され,感染10日
デンスが報告され,大いに注目されています。
目までにはSA が消退したのに対し,5-FU 投与感染群では炎
症性細胞は見られず,SA のコロニー形成が感染
10日目以降も持続しました。また,PAS染色および
アクリジンオレンジ染色を行ったところ,コロニーの
周辺に膜構造が観察され,これがバイオフィルムで
図3 黄色ブドウ球菌負荷による肉芽組織表層の“cover layer”の肥厚
細菌非検出創
低細菌負荷創
高細菌負荷創
(SA:5×103CFU/g)
(SA:1×106CFU/g)
“cover layer”厚
0.21mm
“cover layer”厚
1.84mm
あることが示唆されました。つまり,バイオフィルム
はSAコロニーを取り囲むように形成されていること
を確認しました。
さらに,同じマウスの実験で,SAにより形成され
たバイオフィルムが破綻し,その下方の肉芽組織中
にSA が遊走し深く侵入している様子が観察できま
した。細菌コロニーの下方ではアポトーシスが誘導
されており,このことは肉芽組織中への貪食性好中
球の浸潤を示唆しています。
バイオフィルムの形成は,被覆材として使用したプ
“cover layer”厚
0.11mm
ラスチックシート上にも見つかりました。プラスチック
“cover layer”
は薄い
SAの細菌数が多いほど
“cover layer”の厚さが増す
シート上のSAコロニーは菲薄な膜構造で仕切られ,
このSAのバイオフィルム下には遊離したSAや,炎
症性細胞などに貪食されたSAを含む壊死細胞塊
図4 バイオフィルム周辺への炎症性細胞の浸潤
が観察されました。
●肉芽組織の“cover layer”の肥厚化
異物
細菌負荷が“cover layer”
を介し
バイオフィルムを形成
黄色ブドウ球菌
異物
バイオフィルム形成
以上から,慢性創傷のバイオフィルム感染にお
ける病態メカニズムをまとめますと,まず細菌負荷
壊死
■ cover layer
■ 肉芽組織
は壊死組織や異物に多く分布します。また,肉芽
免疫能低下
組織の表層部は“cover layer”
で覆われ,細菌
は肉芽組織ではなく,主にこの“cover layer”
に
白血球
局在しています。
“cover layer”
は細菌数に依存
創傷
して肥厚し,肥厚の程度はcolonization,critical
貪食細胞
創傷
3
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バイオヘッシブ®Agの臨床応用
Clinical evaluation of Biohesive Ag
武田 啓 先生 北里大学医学部 形成外科・美容外科学 准教授
SSDの抗菌効果を検証するために,バイオヘッシブ ® Agと
抗菌物質としての「銀」
(以下SSD非含有
SSD非含有バイオヘッシブ ®Ag創傷被覆材
HCD)
を用いて
での比較試験を行いました。その結果,
銀は抗菌物質として長い歴史があり,銀製品は熱傷や慢性
緑膿菌および大腸菌に対するバイオヘッシブ ® Agの良好な抗
潰瘍の治療に広く使用されています。また近年は,さまざまなタイ
菌効果が寒天培地および被覆材表面の双方において確認さ
プの銀含有創傷被覆材が開発され,臨床で用いられています。
れました。
スルファジアジン銀(SSD)
を含有する抗菌性ハイドロコロイド
次に,ハイドロコロイドに含有されるSSD 濃度別の検討で
®
創傷被覆材であるバイオヘッシブ Agは,日本で開発され2012
は,SSD 濃度が高いほど抗菌効果も上昇することが示されまし
年9月に上市された新規抗菌薬配合創傷被覆材です。ここで
。黄色ブドウ球菌と大腸菌ではバイオヘッシブ ® Agと
た
(図2)
は,開発期間中に実施した研究結果を紹介します。
同濃度の1.0倍量 SSD 含有 HCDで抗菌効果が表れ,特に緑
膿菌に対しては,その2分の1の濃度に当たる0.5倍量 SSD 含
SSDはグラム陽性菌/陰性菌の双方に
高い抗菌効果を発揮
有HCDでも優れた抗菌効果が確認されました。
良好な創傷治癒,上皮化促進,
抗菌効果のエビデンス
®
バイオヘッシブ AgはSSDを含有するハイドロコロイドから成
り,被覆材内部での細菌を減少させ,被覆材と接触する創傷
面に抗菌作用をもたらすようデザインされています
(図1)。ハイ
ラットモデル
(体重約300g)
を用いた全層皮膚欠損創の治
ドロコロイド中の親水性粒子が創傷面の滲出液を吸収し,ゲル
癒効果に関する
化します。そしてSSDはゲル化した被覆材内および創傷面の
膚欠損創(直径25mm)
を作製し,バイオヘッシブ ® Ag(5×5
滲出液中の細菌に抗菌作用を発揮し,抗菌薬が体内および肉
cm)
およびSSD非含有HCDで被覆し,6日目に創傷面積の収
芽組織内に到達することはありません。
。
縮および上皮化を評価しました
(図3)
図1 バイオヘッシブ®Agの構造と組成
ハイドロコロイド
試験では,体幹両側部に円形全層皮
図2 SSD濃度別の抗菌効果
9.0
ポリウレタンフィルム
大腸菌
黄色ブドウ球菌
緑膿菌
O
O
S
Log10(細菌数)
8.0
N
N
N
6.0
バイオヘッシブ®Ag
5.0
4.0
3.0
2.0
Ag
H2N
7.0
1.0
スルファジアジン銀
(SSD)
0.0
×0.0
バイオヘッシブ®Agは,スルファジアジン銀(SSD)
を含む
ハイドロコロイドとポリウレタンフィルムから成る
×0.5
×1.0
SSD濃度
×1.5
×2.0
各播種菌種の量:104CFU
図3 バイオヘッシブ®Agの全層皮膚欠損創の創傷治癒効果(ラット)
創傷面収縮
上皮形成
背部の円形全層皮膚欠損創
(直径25mm)
をバイオヘッシブ®Ag
(5×5cm)
で被覆。6日目には創傷面積収縮および上皮形成を認めた
4
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バイオヘッシブ ® Ag(バイオヘッシブ ® Ag 群)
とSSD 非含有
poorの4段階で総合評価を行いました。その結果,急性創傷
HCD(対照群)
において,創傷面積率,上皮化面積率,肉芽
の91.2%,慢性創傷の86.1%でexcellentまたはgoodが達成さ
組織の細菌数,被覆材表面の細菌数を比較した結果を図4
れ,急性創傷ではpoorは1例も認めませんでした。以下に症
に提示します。創傷面積率については,バイオヘッシブ ®Ag群
例を呈示します。
は対照群に対し有意差を認めませんでした
(図4 a)。一方,
上皮化面積率はバイオヘッシブ ® Ag 群で有意に高く,SSD が
■ 症例1
。抗菌薬は
上皮化を促進することが示唆されました
(図4 b)
56歳女性,糖尿病性足潰瘍に対し再建術および分層植皮
通常,細胞毒性を有するため,上皮化時の創傷治癒には特に
による治療が施行されました。採皮部の半面ずつにバイオヘッ
不利に働くと考えられましたが,今回のラットによる創傷治癒実
シブ ® AgとSSD 非含有 HCDを貼付し,転帰を比較しました。
験では,創傷面積率の推移に差はなく,逆にSSD配合HCDの
12日目には2種類の被覆材ともに採皮部のほとんどで良好な上
上皮化面積率の方が高く,SSDの存在により,上皮化に有利
。
皮化および治癒が得られました
(図5)
に働いていました。これは抗菌薬の種類,濃度にも影響を受け
ると思われますが,SSD が HCDと滲出液で生成されるゾル層
上皮化に要する日数を10例の患者で検討したところ,バイオ
中の菌数を抑制することにより,菌による創傷治癒遅延が抑制
ヘッシブ®Ag群は平均8.8日で,SSD非含有HCD群の平均9.3日
され,上皮化に有利に働いたと考えられます。また,SSDを配
と有意差はなく,SSD配合による治癒遅延はないことが分かりま
合している抗菌性クリームでも,豚による創傷治癒実験におい
した
(表)。また,創傷面の細菌培養ではSSD 非含有 HCD 群
て,抗菌作用の他に上皮化を28%早めたという研究結果があ
から5例検出されたのに対し,バイオヘッシブ ® Ag 群では1例
り,今回の実験と同様の結果を得ています。さらに,肉芽組織
検出されたのみで,バイオヘッシブ ® Ag 群で少ない傾向が見ら
および被覆材表面の細菌数(図4 d)
における細菌数(図4 c)
れました。
®
については,全てのサンプルでバイオヘッシブ Ag 群が対照群
炎症性細胞の浸潤を抑制
に比べ有意に低値を示しました。
SSDを加えても治癒は遅延せず
■ 症例2
鼠径部リンパ節切除後の縫合部の皮膚壊死に起因する皮
®
バイオヘッシブ Agの有用性を検討する臨床試験は,144例
膚潰瘍に対し植皮術を計画しました。植皮術の2日前からバイ
(採皮創,熱傷などの急性創傷80例,褥瘡などの慢性創傷
オヘッシブ®AgとSSD非含有HCDを創傷部位の半面ずつに貼
64例)
を対象に行いました。創傷治癒率,疼痛軽減,感染コン
付し,いずれの被覆材も滲出液の吸収は良好で1日1回交換し
トロールおよび被覆の操作性を指標にexcellent,good,fair,
ました
(図6 a)。2日後の植皮術中のデブリードマンで肉芽組
図4 バイオヘッシブ®AgとSSD非含有HCDの比較(ラット)
(%)
120
a. 創傷面積率( =11)
(%)
40
b. 上皮化面積率
( =11)
35
創傷面積率
上皮化面積率
100
80
60
40
30
25
20
15
10
20
0
5
バイオヘッシブ®Ag
0
SSD非含有HCD
バイオヘッシブ®Ag
SSD非含有HCD
=0.859
=0.003
c. 肉芽組織における細菌数( =11)
(CFU/g)
9
8
8
7
7
Log(細菌数)
Log(細菌数)
(CFU/g)
9
6
5
4
3
6
5
4
3
2
2
1
1
0
0
検出限界
バイオヘッシブ®Ag
SSD非含有HCD
=0.027
d. 被覆材表面の細菌数
( =11)
検出限界
バイオヘッシブ®Ag
SSD非含有HCD
=0.043
5
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織を採取し,組織学的解析を行ったところ,炎症性細胞の浸潤
®
壊死組織を伴っていましたが,バイオヘッシブ ® Agの作用で軟
はバイオヘッシブ Ag 貼付部位の方が抑制されていることが確
化し,交換のたびに徐々に除去されました。MRSA が検出され
認できました
(図6 b)。その後,両側とも移植片は良好に生着し,
ましたが,肉芽組織表面の細菌数は壊死組織の除去が進むに
治癒が得られました。
従って減少しました。これらの効果は創傷面と被覆材が十分に
密着していることが重要であると考えます。
また,皮膚潰瘍でのバイオヘッシブ ® Agの使用による創傷面
の細菌数の変化について検討しました。創傷面は生理食塩水
有害な作用もなく,感染予防,創傷治癒に有効
で洗浄し,
スワブで採取した細菌を培養しました。次にバイオヘッ
シブ ® Agを貼付し,24時間後に再び細菌培養を行いました。7
以上のように,SSDを含有したバイオヘッシブ®Agは良好な抗
例の結果は,肉芽組織表面の細菌数はバイオヘッシブ ® Ag 貼
菌効果を発揮することが確認されました。また,バイオヘッシブ ®
付後の方が低い傾向が見られましたが,有意差はありませんで
Ag 群の上皮化促進作用はラットではSSD 非含有 HCD 群よりも
した
( =0.094)。
優れ,臨床における採皮創への使用ではSSD非含有HCD群と
同等でした。また皮膚潰瘍の肉芽組織における炎症性細胞の
ハイドロコロイドの作用により壊死組織が軟化
浸潤や細菌数はSSD非含有HCDよりも少ないことが確認されま
した。
■ 症例3
新規の抗菌性ハイドロコロイド創傷被覆材であるバイオヘッシ
筋膜張筋皮
ブ ® Agは,組織に有害な影響を及ぼすことなく創傷面の細菌数
弁術を行いました。移植片は部分的に生着せず,潰瘍形成し
を低減させたことから,critical colonizationや感染の予防に有
たためバイオヘッシブ ® Agを貼付しました。潰瘍は比較的硬い
用と考えられます。
悪性腫瘍の切除術後の胸壁再建術として大
図5 糖尿病性足潰瘍への再建術ならびに分層植皮と
上皮化へのSSDの影響
表 上皮化に要した日数
上皮化に要した日数
採皮直後
バイオヘッシブ®Ag
SSD非含有HCD
バイオヘッシブ®Ag
8.8±3.3日
SSD非含有HCD
9.3±2.9日
NS
対象:10例,男女比8対2,平均年齢64歳
(42∼83歳)
図6 鼠径部リンパ節切除後の縫合部の
皮膚壊死に起因する皮膚潰瘍
7日目
a. バイオヘッシブ®AgとSSD非含有HCDの比較
バイオヘッシブ®Ag
SSD非含有HCD
12日目
b. 肉芽組織の組織学的所見
(HE染色)
100μm
®
バイオヘッシブ Ag
100μm
SSD非含有HCD
発行:アルケア株式会社
編集制作:株式会社メディカルトリビューン
2012年12月作成
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