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ふるさとの家(香川県東かがわ市)

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ふるさとの家(香川県東かがわ市)
受賞団体資料
ふるさとの家(香川県東かがわ市)
1.東かがわ市の紹介
東かがわ市は、市名からイメージで
なかでも特に過疎化・少子高齢化が顕
舎。
「レジや机は無いし、椅子もない…」
著な地域です。
無い無いづくしのなか、農作業や家業
きるように、香川県の一番東に位置し
しかしいま、この地域が起爆剤とな
に追われる3人の夢を後押ししたのは
ています。総面積153.35à、人口約
り、まちおこしの取り組みが始まって
地域の人たちでした。ゼロからのスタ
35,600人が暮らすこのまちは、北は美
います。
ート…。しかし、店内には誰からとも
なく事務用品が持ち寄られ、野菜や手芸
しい瀬戸内海東部の播磨灘に臨み、南
は阿讃山脈を境に徳島県と隣接してお
り、豊かな自然環境と瀬戸内海特有の
温暖で穏やかな気候に恵まれています。
2.活動のきっかけ
人口の減少、進む少子高齢化、若者
不在のコミュニティ運営、地元小学校
平成の大合併といわれるなか、本市
の廃校などさまざまな要因により、地
は経済、文化、生活の面で古くから深
域の力が次第に失われつつあった五名
い結びつきのあった旧引田町、旧白鳥
地域。しかし、そこに暮らす人たちは、
町、旧大内町の三町合併により、平成
「美しい山々や豊かな自然に囲まれた地
15年4月1日に県内7番目の市として
域、そこから生み出される新鮮な野菜
誕生しました。歴史的には、明治中期
などの特産品を活かして何かできない
まで讃岐三白の一つとして有名な砂糖
か?」と、絶えず地域の活性化について
の積出港として栄え、東讃の商都とも
模索していました。昭和56年まで使わ
いわれた商店街を有しています。また
れていた五名郵便局の旧局舎を地域交
その昔、日本武尊が伊勢で崩御され、
流の場として開放しようと、いろいろ
その神霊が一羽の白鳥となりこの地に
な方法が模索されましたが、どの案も
舞い降りたとされる伝説がある白鳥神
具体化には至らず、静かにその役目を
社の門前町としても栄えていました。
終えようとしていました。
地場産業では、全国シェアの9割を
やがて新たな地域活性化の原動力へと
製品製造業や、世界初のハマチ養殖発
繋がっていきます。平成13年、高松市
祥の地に起因する養殖漁業のほか、先
内の商店街で五名を紹介する展示会を
に述べた讃岐三白の一つ和三盆糖の製
してみないかという話が持ちかけられ
造販売など伝統産業を今なお受け継ぐ
ました。そして、この展示会をきっか
とともに、市内の各工業団地には新し
けに「展示会で五名を紹介するだけでは
い産業の芽が育っています。
ダメだ。地元で地域をPRする場、特
産品を販売する場をみんなでつくろう」
は、本市の最南端、香川県と徳島県と
との声があがり、ふるさとの家の代表
ごみょう
いしました。こうして同年7月『ふるさ
との家』が、オープンしました。
ふるさとの家の運営メンバー
しかし、五名に対する深い愛情は、
超える手袋製造を中心とした皮・繊維
そんな中、私たちの『ふるさとの家』
品などの商品類も入りきれないほど勢揃
店内は新鮮野菜、工芸品など豊富な商品が勢揃い!
3.イノシシ料理で地域活性∼地域資
源の活用と創意工夫∼
の県境に位置する山間部地域「五名 」に
者の一人である木村さんがかねてから
オープンから5年。ふるさとの家で
あります。人口は、昭和40年代前半ま
抱いていた<産地直売所の運営計画>
は会員制を導入し、店番は会員が交代
で1,000人を超えていましたが、平成9
が動き出し始めます。その中心にいた
で行い運営しています。会員は五名に
年には500人を割り込むまで減少し、現
のは、木村さんに加え地元在住の小北
在住し、ふるさとの家の趣旨に賛同・
在は158世帯401人の方が暮らしていま
さん、そして平成9年に徳島から夫婦
協力してくれる人なら誰でもO.K.で、
す。ここ3年間における人口減少率は
で移住してきた篠原さんでした。
10%以上、高齢化率は46%と、本市の
地域活性化の起爆剤「ふるさとの家」
現在約90名の方が活躍しています。営
展示会は好評でした。丹精込めて育
業日は、毎週土曜日と毎月10日。商品
てられた野菜や加工品、竹工芸品。さ
となる新鮮な野菜や各種加工品・工芸
らには地元アマチュアカメラマンが撮
品は会員が自主提供し、どれも良心的
影した四季に富んだ五名の美しい風景
と思える価格で販売しています。品揃
写真や、五名小学校の児童の活動紹介
えも幅広く、売上金のうち9割を商品
など、五名に関するあらゆるもので彩
提供者の会員へ、残りの1割をふるさ
られ、五名の元気を来場者の心に残し
との家の運営費に充てています。また、
ていきました。
ふるさとの家を単なる産地直売所でな
一方で、地域の拠点づくりも進みま
く、地域PRの場・交流の場にしてい
した。選ばれたのは五名郵便局の旧局
くために、売り場に隣接して休憩室を
− 42 −
設け、ここで五名を紹介する風景写真
『五色の里』を自宅横に開設し、持ち込
これからもたくさんのお客さんに来て
を展示、誰もが自由に休憩できる憩い
まれたイノシシを解体処理し精肉に加
いただくためには、新しいPRが必要」
の場として活用しています。
工しています。五色の里のオープンに
と始めたのは、五名の特産品や民芸品
さらに、活性化の起爆剤として考え
より、杉菜への安定した食肉供給が確
を紹介し、販売するカタログ『五名便り
ついたのが、地域の農作物を好き放題
立されたほか精肉販売という道も開け
∼拝啓、五名は元気です。∼』の製作で
に荒らすイノシシの活用でした。平成
ました。
した。製作には、市のニューツーリズ
16年度に市内で捕獲されたイノシシは
107頭と県内でも最多、被害額は1,400
ム協会のサポートもあり、現在市の内
4.宝が集う地域の茶の間
万円を超え捕獲のペースがイノシシの
店内にあるものすべてに地域のあた
増加ペースに追いついていない深刻な
たかさが注ぎ込まれています。地元陶
状況が続いていました。しかし、この
芸家がつくった食器をはじめ、頭の部
イノシシに小北さんは注目しました。
分に焼き目を入れた割りばし、レトロ
「地域の害獣も地域ならではの資源。活
な柄の紙で折られた箸袋、中央に置か
性化の起爆剤になるのでは」と、逆転の
れた火鉢。杉菜が開店して以来、遠方
発想から生まれたイノシシ肉を使って
からの来店客も多く「やわらかくておい
のメニューづくりが始まりました。家
しい」と笑顔がこぼれます。料理は1日
畜の牛や豚の肉を食べ慣れているなか
50食。完売する日もあるなど、盛況の
で、野生の肉を扱うことは並みならぬ
背景には常にお客様の声に熱心に耳を
工夫が必要でした。「イノシシとわかる
傾け、イノシシ肉の先入観を変えよう
ような味わいを失わずに、皆さんに食べ
とするメンバーの探求心がありました。
外へ向けて情報発信中です。
五名で取れる新鮮野菜はみんな光ってます!
さらに小北さんらは、これからの課
ていただくには…」と試行錯誤を重ね、
オープン以来、ふるさとの家にはた
煮込むことで固さを克服し、調理前の
くさんの人が集まります。年に一度、
下ごしらえで臭みをなくすなどの工夫
11月最後の土曜日には、お客さまへの
をして味を練り、絞り込みました。結
日頃の感謝の気持ちを込めて、地域の
「ふるさとの家の運営には、時間と費用
果、生まれたメニューは地元でとれた
自然薯祭りをかねた記念イベントを開
と後継者が必要。今は会員のボランテ
新鮮な野菜と一緒に調理された“猪カレ
催し、シシ汁を無料でふるまうなど、
ィアで運営しているが、完全なボラン
ーうどん”と“猪ギョーザ”におにぎり、
地域をあげた取り組みも行っており、
ティアによる継続には限界がある。将
題として、ふるさとの家の<経営>に
ついて試行錯誤を繰り返しています。
デザートがセットになった「杉菜膳」な
〈宝が集う地域の茶の間〉として、地域
来的な経営を見据えて“利益を生み出す
ど3種類。こうして昨年7月、ふるさ
の交流拠点の機能を果たしながら、賑
(儲け)”ことの意識づけが必要」と、店
との家の一角にイノシシ食堂『ふるさと
わいを創りだすことに成功しています。
番やお手伝いをした会員に、ポイント
茶屋 杉菜』がオープンしました。ネー
また、杉菜をはじめたことで客層に
が貯まると買い物ができるスタンプカ
ミングの由来は、「抜いても抜いても取
も変化が見られ、これまでお年寄り中
ードを発行しています。最終的な目標
れないスギナのように、地域にしっか
心だったのが、徐々に若者の来店者も
は、会員の意識を“ボランティア精神”
り根付くように」との願いが込められて
増えるようになりました。来店者が増
から“経営の精神”に変え、ふるさとの
います。
えれば商品も売れる。今では、杉菜膳
家を地域の雇用創出の場にすること。
を目当てに来ていた遠方の来店客も、
「地元の特産品を使った加工品で〈五
の家を支援する動きが活発化してきま
五名で取れる安くて新鮮な野菜を目当
名ブランド〉をつくりたい。地元の空き
す。「もっと地域全体に活性化の波を広
てに来てくれるほどになりました。
この活動を契機に、さらにふるさと
屋を活用したプロジェクトを進めたい。
げよう」とイノシシ肉の直売所を開設し
ふるさとの家の休憩室も重要な役割
“五名”の名が広まることで、団塊の世
たのは、代表者の一人、木村さんでし
を担っています。来店者が増えたこと
代を見据えて五名へ帰ってくる人を増
た。食肉処理や販売に必要な許可を取
で、地域内外の情報交換がより活発化
やしたい。次世代へのバトンタッチが
得し、“キュウリ、栗、自然薯、竹炭、
し、若い世代を巻き込んだ交流人口の
できる地域活性化に努めたい…」 ふる
そしてイノシシ肉”という5つの特産品
増加に繋がるとともに地域のお年寄り
さとの家の新しいチャレンジがはじま
と五名への愛着も込めて名付けられた
が持つ知恵や知識の伝承の場にも貢献
ります。
しているなど、さまざまな成果があら
われています。
5.これからの展望と課題
地域の力を取り戻し、五名の元気を
発信する交流拠点として好調な成果を
挙げている『ふるさとの家』。しかし、
毎週土曜日は、県内外
からのお客で賑わって
います
「おいしぃー」
と評判の
杉菜膳
小北さんらは現状に満足せず、将来的
な課題を見据えた次の取り組みにかか
っています。
「今の来店客は口コミで広がったもの。
− 43 −
大好評の「五名便り」
では、地域の特産品を
お送りします。
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