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生細胞の非侵襲スクリーニング技術
生細胞の非侵襲スクリーニング技術 関西学院大学 理工学部 生命医化学科 助教 松吉 ひろ子 1 現在の試み 細胞特性の変化を捉えたい! 光による検出 電気による検出 パッチクランプ法 Potential 刺激 分化 疾患 Relative intensity ラマン分光法 Raman shift Time 2 従来技術とその問題点 モデル動物によるスクリーニング 動物愛護等の問題 細胞の使用 標識・遺伝子組み換え等による 細胞の変化 同一細胞の経時的測定が難しい 3 新技術の特徴・従来技術との比較 • 顕微鏡と組み合わせることにより、生きた細胞1個か らラマン散乱光を検出することができる • 1本のファイバーで励起光照射とラマン散乱光検出が 可能な微小ラマンプローブの開発により、測定におけ る空間的制約を小さくすることができた(体腔などの 測定が可能) • 細胞の生理機能も加味できる 4 ラマン分光法 1923年 ラマン散乱光の観察 1928年 ラマン散乱に関する最初の論文発表 Raman CV and Krishnan KS. Nature 121, 501. “A New Type of Secondary Radiation” The new type of light scattering discovered by us naturally requires very powerful illumination for its observation. In our experiments, a beam of sunlight was converged successively by a telescope objective of 18 cm…... 1930年 Raman CV ノーベル物理学賞受賞 1980年代 ラマン散乱の生物学分野への応用 5 Raman Intensity ラマン分光法の原理 10000 5000 0 1800 1600 1400 1200 1000 800 Raman shift / cm-1 600 400 6 データ解析(市販の解析ソフトで実施可能) PC 2 主成分分析 (PCA) PC 1 PC 2 PC 1 7 Factor 2 A B Factor 1 Factor 2 最小二乗回帰(PLSR)と判別モデル Factor 1 8 顕微ラマン測定装置 小型CO2インキュベーター搭載 細胞毒性が低い励起波長 (785 nm) のレーザー光使用 レーザー焦点径約1 μm 共焦点光学系を採用 XY平面方向1 µm間隔で移動可能な 電動ステージ搭載 9 ラット海馬分散培養系を用いた神経細胞の生育モデル 生きた神経細胞のラマンスペクトルの経時変化 2日目 8日目 30日目 60日目 90日目 120日目 10 主成分分析による解析 2日 8日 15日 60日 120日 結果 主成分分析によって神経細胞が培養日数依存的に特徴的なスペクトル 変化をすることが判明し,細胞の成熟段階の弁別が可能であることが 示唆された. 11 組織変化検出にも応用可能 Relative Intensity 微小ラマンプローブ(光ファイバー) 600 mm Without filters MRP 1500 1000 500 Raman Shift (cm-1) 光ファイバー束 長さ: ~3.0 m ステンレス管 (To cut off cross-talk) Raman spectra of calcium carbonate (CaCO3) Large sampling volume 200~1000um ロングパスフィルター, レンズ (To cut off Rayleigh light) バンドパスフィルター (To cut off Raman scattered light of the core material) Y. Komachi, H. Sato, K. Aizawa and H. Tashiro, Appl. Opt., 44, 4722-4732 (2005) Y. Komachi, T. Katagiri, H. Sato, and H. Tashiro, Appl. Opt., 48, 1683-1696 (2009) 12 微小ラマンプローブ(中空糸ファイバー) Total diameter 620 μm 焦点 中空糸の断面に垂直な光線だけが 伝搬される 空間分解能: 50~200um 13 光バイオプシー装置 Image bundle fiber (7000 fibers in 0.3 mmf) Illumination fiber Channel 0.9 mmf Channel for probes 微小ラマンプローブ 2.5 mm Image Illumination Y. Hattori, et al., Appl. Spectrosc., 61 (2007) 14 モデルマウス大腸がんの経時変化 Tumor (n=8) 15 weeks 1440 1654 CH def AmideⅠ 1304 CH2twist 1263 AmideⅢ 1003 Phe 933 Pro Rel.Int. 17 weeks 19 weeks 600 800 1000 1200 Raman Shift 1400 1600 1800 [cm-1] A. Taketani, R. Hariyani, M. Ishigaki, B. B. Andriana and H. Sato, Analyst, 138, 4183-4190 (2013) 15 PLSRによる解析 0.15 17weeks 0.1 Intensity (a.u.) 19weeks 15weeks 0.05 0 -0.05 -0.1 -0.15 600 800 1000 1200 1400 Factor-1 Variables (cm-1) 1600 1800 Raman spectrum of collagen type I A1:15 weeks (n=8) A2:17 weeks (n=7) A3:19 weeks (n=7) • 腫瘍中のコラーゲンが腫瘍の 進展マーカーになる可能性がある • Quantitative analysis is expected 16 想定される用途 • 本技術の特徴を生かすという点では、医薬品開発・ 製造に適用することで開発時間の短縮につながり、 医薬品の価格が抑えられる可能性がある。 • 上記以外に、病気の診断・臨床検査、食品管理、 化粧品・健康食品開発等への応用が期待される。 • また、達成された経時変化検出機能に着目すると、 製品管理等の用途に展開することも可能と思われる。 17 実用化に向けた課題 • 現在、生細胞について経時変化の検出ができる ところまで開発済みである。しかし、その変化の 生理学的意義についてはラマン分光法のみでは 明らかにできない。 • 今後、生細胞の生理学的特性変化について 実験データを取得し、ラマン分光法による測定 結果と対比させ、生体利用を目指す。 18 企業への期待 生きたまま非標識で細胞全体の分子変化を検出 できるラマン分光測定技術を持ち、加えて、生理学 的変化を対比させて細胞特性を知ることが可能で あると考えるが、この技術を活用できる分野を提案 いただき、共同研究できる環境を整えたい。 19 問い合わせ先 関西学院大学 ◆研究推進社会連携機構 TEL:079-565-9052 FAX:079-565-7910 e-mail:[email protected] ◆理工学部生命医化学科 佐藤研究室 住所:〒669-1337 兵庫県三田市学園2-1 Ⅴ号館 TEL・FAX:079-565-7228 20