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デジタルシネマの標準技術に関する研究

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デジタルシネマの標準技術に関する研究
重要課題解決型研究
事後評価
「デジタルシネマの標準技術に関する研究」
責任機関名:東京大学
国際・産学共同研究センター
研究代表者名:安田
浩
研究期間:平成16年度~平成18年度
目次
Ⅰ.研究計画の概要
1.課題設定
2.研究の趣旨
3.研究計画
4.ミッションステートメント
5.研究全体像
6.研究体制
7.研究運営委員会について
Ⅱ.経費
1.所要経費
2.使用区分
Ⅲ.研究成果
1.研究成果の概要
1.1 はじめに
1.2 研究の内容
(1)研究目標と目標に対する結果
(2)ミッションステートメントに対する達成度
(3)当初計画どおりに進捗しなかった理由
(4)研究目標の妥当性について
(5)情報発信(アウトリーチ活動等)について
(6)研究計画・実施体制について
(7)研究成果の発表状況
2.研究成果:サブテーマ毎の詳細
2.1サブテーマ1 デジタルシネマ標準映像技術に関する研究開発
2.2サブテーマ2
コンテンツ制作に関する研究開発
2.3サブテーマ3
デジタルシネマ情報の伝送蓄積に関する研究開発
2.4サブテーマ4
デジタルシネマ映像配信に係る DRM に関する研究開発
2.5サブテーマ5
デジタルシネマ・アーカイブ技術の研究開発・国際標準化推進・
検証実験
Ⅳ.実施期間終了後における取組みの継続性・発展性
1.総論
2.サブテーマ別
Ⅴ.自己評価
1.目標達成度
2.情報発信
3.研究計画・実施体制
4.実施期間終了後における取り組みの継続性・発展性
Ⅰ.研究計画の概要
■プログラム名: 重要課題解決型研究 (事後評価)
■課題名:デジタルシネマの標準技術に関する研究
■責任機関名:東京大学 国際・産学共同研究センター
■研究代表者名(役職):安田浩(教授、センター長)
■研究実施期間: 3 年間
■研究総経費: 総額 1247.1 百万円 (間接経費込み)
1
課題設定
広帯域ネットワークが普及しつつあり、それを利用した映像の配信が容易となるため、感性・文化を対象
とするコンテンツビジネスがこれからの基幹産業と想定されている。特に、デジタル技術に基づく撮像・編
集・表現技術の進歩は、デジタル映像(シネマ)の有用性を高め、集合映画館や家庭における映画上映
の機会の増加は、コンテンツ資料の普及を促し、新たな文化国家および新産業の形成に大きく貢献する
ことが予想される。
本プロジェクトの最終目標は上記のような世界的潮流の中にあって、我が国のデジタル映像(シネマ)産
業を質、量ともに国際レベルに高めるため、従来の米国主導のフィルム技術を基本にしたフイルシネマ関
連技術の壁を超えて、我が国が得意とするデジタル技術で、創作から消費までの、コンテンツ流通の一貫
した「価値の連鎖」を構築し、デジタル映像(シネマ)の制作から上映までの技術の一貫した規格つくりとそ
の共通仕様化を行うことである。更に、これら研究開発活動の結果、我が国主導の標準技術を生み出し、
技術標準・マニュアル・品質標準という知的財産の輸出と、技術標準に基づくデジタル映像(シネマ)制
作・鑑賞機器などの製造業の興隆や、デジタル映像(シネマ)関連産業における指導的地位を築き、我が
国の新しい基幹産業の発展に貢献することである。
2
研究の趣旨
2.1 目的
デジタル映像による上映の優位性は、フィルム映像(「映画」)に比較して制作、機器等が手軽に、低廉
なコストで実現できることにあり、近い将来コンテンツ配給(配信)方法も含め大幅にデジタル化が進み、大
型コンテンツのグローバル同時配信の実現が期待されている。
しかしながら、完全に外光を遮断した環境で上映される「映画」の観賞スタイルは、白昼や照明下で、T
V受像器等で視聴する「ビデオ映像」の場合とは異なり、試聴環境仕様の設定がかなり異なることが要求さ
れる。業務用映像の世界では、制作者の意図した場面を画面で完全に再現するため、「映画」、「ビデオ
映像」ともに相当数の調整要素(パラメータ)に関して綿密な調整を行って、業務用に供しているのが現状
で、関連機器や媒体及びその伝達・変換方法も多種多様にわたり、担当技術者にとって、これらの特徴を
的確に捉えた上での「絵作り」を行うことが、一つの「技」とされているのも事実である。
こうした「プロのこだわり」も大切なことであるが、デジタル映像(シネマ)を手軽に活用し、広範囲にわた
る展開をはかりたいと言うニーズが、大勢を占めつつあることも事実である。このようなニーズに対応する施
策として考えられるのは、デジタル映像(シネマ)、デジタル映像機器に関する各種技術要素に関して共
通仕様を定め、この規格に準拠したコンテンツ制作、上映を行えば、制作者及び鑑賞者にとって十分な満
足が得られ相応のクオリティが確保できるシステムを開発することである。
デジタル映像(シネマ)規格の標準化は、部分的には我が国でも海外でも試みられているが、いずれも
何らかの形で米国映画業界のフィルム規格の影響を受けており、純粋のデジタル映像(シネマ)に関する
共通仕様化の試みは内外ともに初めての試みである。本事業の本格的な展開によりデジタル映像(シネ
マ)の制作から上映は更に容易になり、急速な普及を遂げることにより、コンテンツ業界をはじめとして関連
業界の成長に資することが期待できる。
具体的なプロジェクト達成目標を図 1 に示す。基本的には、本プロジェクトでは、標準モニター画面の
画像を参照基準として、この画面の持つコンテンツと色空間情報をセキュアーに且つ忠実に伝送する仕
組みと、エンドユーザで得られた表示画面を標準モニターの参照画面と一致させる為の各種制御の仕組
みを研究開発することである。
図 1. プロジェクト達成目標
上記目標を達成するため、本プロジェクトでは分野別のサブテーマを設定し、それぞれの専門家を招集
し、一致した方針の下で積極的に課題に取り組んだ。図 2 に本プロジェクトのサブテーマ別課題を示した。
図 2. プロジェクトの取組課題
一方、デジタル映像(シネマ)の研究とその普及を目指して、これら各種の優位性を生かして従来の映
画興業ルートとは別個に、デジタル映像の上映会を全国各地において行う経済産業省委託事業による、
「デジタル de みんなのムービー」プロジェクト事業が展開され、本研究主要メンバーもその一役を担ってい
る。
2.2 研究の必要性、国家的・社会的重要性、緊急性について
従来、映像関連技術ではフィルム映像は勿論、デジタル化が進んだ今日においても、米国主導の体制
は依然として続いている。我が国が 21 世紀における映像産業で国際的な地位を確保するためには、こう
した影響から脱却した純粋のデジタル技術に基づく独自の手法を規格化することが急務である。本研究
による成果であるこれらの規格に準拠することは、特定の大手制作・配給系列社のみでなく、独立系等零
細な制作社にも容易に映像制作ができるため映像産業全体の底上げが期待でき、その為にも本事業の
推進が必要である。
本事業における研究・開発の項目は、デジタル映像(シネマ)に関する制作、編集、蓄積、伝送、権利
保護、上映等、多岐にわたっている。コンテンツ制作や配信に関する、関連各項目における技術の得意
分野は、大学、企業ともに特定の機関に限定されるのが現状であり、組織を越えて貴重な専門者の総力
を挙げて研究を推進する必要があり、国の指導力も切望される。
2.3 具体的な達成目標
デジタル映像(シネマ)のうち、最も普及が早いと考えられる HD(高精細=ハイビジョン)レベルの画面
構成・色彩空間構造および色補正に関わる変換方式を研究し、共通仕様化すべき仕様とその最適要素
値を決定、導出する。映像品質をなるべく維持したままで、劇場から携帯端末までのすべてに同時に上映
するための、スケーラブル化に必要な符号化技術や伝送・蓄積技術、さらには、著作権管理のためのメタ
データ群を研究し、共通化すべき仕様を導出する。
デジタル映像(シネマ)を容易に早く制作できるよう、プリプロダクション、プロダクション、ポストプロダク
ション各工程管理情報および管理様式の共通仕様化を検討する。また、デジタル映像(シネマ)最適上映
環境、簡単化制作環境の普及を目指すため、実証実験環境および実証実験に必要なツールの研究開発
を行い、実用化と普及促進に務める。
3
研究計画
研究の推進は、下記の 5 つのサブテーマに分け推進する。各サブテーマ名と研究開発内容は以下の
通りである。
サブテーマ 1;デジタルシネマ標準映像技術に関する研究開発
デジタル映像(シネマ)の基本要素である色空間(色再現範囲)、色温度、コントラスト輝度等の標準仕
様を目指して、これらの数値評価に資する標準テスト画像の制作を行う。本テスト画像は、画像品質全体
を評価するための標準動画像を含む構成とする。これらの画像の検討及び他サブワーキングの研究開発
成果は、新しく準備する標準劇場において実証・確認を行う。
サブテーマ 2;コンテンツ制作に関する研究開発
デジタル映像(シネマ)の制作に関連する企画、制作、運用における各段階の進捗状況を関係者が常
に把握でき、システム運用を効率化するための研究を行う。特に、企画段階や、制作の上流工程である
脚本、デザイン、絵コンテなどの情報を一元化し、その進行や内容を容易に掌握できる統合システムの構
築を目指す。
サブテーマ 3;デジタルシネマ情報の伝送蓄積に関する研究開発
メタデータを活用したコンテンツの管理手法に関する研究を行い、電子透かしによるコンテンツの流通
追跡(トレーサビリティ)を実現する技術を開発する。
HD 薄型 TV および携帯 TV にてデジタルコンテンツを再生表示可能とするための階層符号化技術を
開発する。
サブテーマ 4;デジタルシネマ映像配信に係る DRM※に関する研究開発
将来デジタル映像(シネマ)の広帯域伝送が可能になると、映像コンテンツのセキュア配信がますます
重要になり、それと共に、コンテンツの著作権等の権利処理が重要な技術課題となる。その為、デジタル
映像(シネマ)のコンテンツ ID を含む権利メタデータ標準と権利メタデータ管理、作品や素材の流通メタ
データ標準と流通メタデータ管理、利用許諾、加工編集許諾メタデータ標準とメタデータ管理として、
Creative Commons ポータル技術を開発する。
デジタル放送、デジタル配信、デジタルモバイル通信などのユビキタス環境において、自由で平等、安
全なデジタル映像(シネマ)配信、コミュニティ共有や協調制作を実現する P2P(Peer to Peer)映像コンテン
ツ交換技術を開発する。
※ DRM(Digital Right Management)
サブテーマ 5;デジタルシネマ・アーカイブ技術の研究開発・国際標準化推進・検証実験
デジタル映像(シネマ)の普及促進を考えるにあたって、重要技術のひとつにデジタルシネマ・アーカイ
ブが挙げられる。デジタルシネマ・アーカイブにおいては、コンテンツを再生目的で利用するエンドユー
ザに加え,新たに作成するコンテンツの素材として 2 次利用することを希望するコンテンツクリエータに対
しても、コンテンツを最適な形で提供することが必用である。本研究開発では、このような デジタルシネ
マ・アーカイブ構築のため次世代インターフェース技術、即ち、DMD(Digital Movie Director)技術の研
究開発を重点に取り組む。
コンテンツ配信時のセキュリティレベルをどのように構築し発展させるかを課題とし、2 次、3 次配信につ
ながる、セキュアな配信環境を構築する要素技術・システム技術を統合的に研究開発し、その有用性を
実証実験で確認する。これらの研究で得られた要素技術、システム技術を国際標準化機構に提案、内容
を訴求し、国際規格化を目指す。
更に、デジタル映像(シネマ)関連の制作から上映まで一貫した共通仕様化を行うために、現在から将
来までを見越した各種標準の調査、整理と項目別マッピングを行う。また、共通仕様化促進の為の方策と
して、簡易実験装置を活用し実証実験を通じて各種課題の抽出と啓発活動を行う。
以上のサブテーマ毎の年度別研究計画を以下に示す。
研
究
項
目
1年度目
2年度目
3年度目
サブテーマ 1
デジタルシネマ標準映像技術に関
○デジタルプロセスを
○劇場映像として求
○標準劇場の実証実験
する研究開発
踏まえた劇場映像
められるマスター映像
「小項目」
(参画研究機関)
のための色空間範
の作成
①マスター映像を使
東京工業大学
囲の確定
「小項目」
用した統一色空間管
①劇場映像として
理手法の評価検証
求められるマスター
②標準劇場の運用マ
映像の作成
ニュアル作成および
②標準劇 場 の運
実用化
用に関する調査
研究
サブテーマ 2
コンテンツ制作に関する研究開発
○制作工程の調査
○ダイナミックシミュレー
○プログラムの統合と連
(参画研究機関)
○マクロランゲージ
ションシステムの研究
結
東京工科大学
構築
開発
○映像制作プロセスの
○脚本・映像変換
○脚本・映像変換
最適化技術の実験
コア技術の研究開
プログラムの構築
○マニュアル制作
発
○ライブラリデータ制
「小項目」
○ライブラリデータ制作
作
①ダイナミックシミュレーション
システムの完成
②上記システムの検
証のための実証映像
コンテンツ制作
③ダイナミックシミュレーション
システムを使用した映像
制作マニュアルの作
成
サブテーマ 3
デジタルシネマ情報の伝送蓄積に
○セキュリティを考
○セキュリティを
○セキュリティを考慮し
関する研究開発
慮した配信方式
考慮した配信方
た配信方式
(参画研究機関)
○デジタルシネマ
式
○デジタルシネマ情
三菱電機(株)
情報の階層符号化
○デジタルシネマ
報の階層符号化技術
技術
情報の階 層 符号
実証実験
基礎実験
化技術
評価改善
「小項目」
①映像電子透かしに
よるセキュア配信方式
の完成
②高品質映像(4:4:4)
の階層符号化方式の
確立と標準化への貢
献
サブテーマ 4
デジタルシネマ映像配信に係る
○デジタルシネマ
○デジタルシネマ
○デジタルシネマ流
DRM に関する研究開発
流通管理技術標準
流通管理 技 術の
通管理技術の検証実
(参画研究機関)
の策定・検証実験
検証設備運用・メ
験・メタデータ標準の
国立情報学研究所
設備の構築
タデータ群の解析
標準化
「小項目」
①デジタルシネマメタ
データ流通管理の検
証実験
②メタデータ流通標準
仕様の作成と標準化
への貢献
サブテーマ 5
デジタルシネマ・アーカイブ技術の
○ DMD の 基 本 設
○ DMD の 詳 細 設
○DMD 開発、実証実験
研究開発・国際標準化推進・検証実
計
計
○標準化推進
験
○標準化推進
○標準化推進
(参画研究機関)
○実証実験
○実証実験
東京大学(運営委員会含む)
「小項目」
「小項目」
①DMD の完成
②IPMP DRM システ
①DMD の詳細設
ムの完成
計
③プロジェクト全体の
②IPMP DRM シ
研究技術仕様の体系
ステムの詳細設計
化と標準化への貢献
③標準化推進
④研究成果取りまとめ
④実証実験
4 ミッションステートメント
デジタル映像(シネマ)ミッションステートメント(システム改革により生み出される成果の目標)
4.1 概要
デジタル映像による上映の優位性は、フィルム映像(「映画」)に比較して制作、機器等が手軽に低廉な
コストで実現できることにあり、将来コンテンツ配給(配信)方法も含め大幅にデジタル化が進むことが期
待されている。
しかしながら、完全に外光を遮断した環境で上映される「映画」の観賞スタイルは、白昼や照明の下、
TV 受像器等で視聴する「ビデオ映像」の場合とは、各種仕様の設定がかなり異なることが要求される。業
務用映像の世界では、制作者の意図した場面を画面で完全に再現するため、「映画」、「ビデオ映像」とも
に相当数の調整要素(パラメータ)に関して綿密な調整を行って、業務用に供しているのが現状である。
また、関連機器や媒体及びその伝達・変換方法も多種多様にわたり、担当技術者にとって、これらの特徴
を的確に捉えた上での「絵作り」を行うことが、一つの「技」とされているのも事実である。
こうした「プロのこだわり」も大切なことであるが、デジタル映像(シネマ)を手軽に活用し、広範囲にわた
る展開をはかりたいと言うニーズが、大勢を占めつつあることも事実である。このようなニーズに対応する
施策として考えられるのは、デジタル映像(シネマ)、デジタル映像機器に関する各種技術要素に関して
共通仕様(標準規格)を定め、この共通仕様(規格)に準拠したコンテンツ制作、上映を行えば、制作者及
び鑑賞者にとって十分な満足が得られ、相応のクオリティが確保できるシステムを開発することである。
デジタル映像(シネマ)規格の標準化は、部分的には我が国でも海外でも試みられているが、いずれも
何らかの形で米国映画業界のフィルム規格の影響を受けており、純粋のデジタル映像(シネマ)に関する
試みは内外ともに初めての試みである。本事業の本格的な展開によりデジタル映像の制作から上映は更
に容易になり、急速な普及を遂げることにより、コンテンツ業界をはじめとして関連業界の成長に資するこ
とが期待できる。
本プロジェクトのミッションは、デジタル映像(シネマ)関連、コンテンツ制作の全工程を、メタデータ流通
技術で、一貫したデジタル技術の共通仕様(標準規格)として統一基準を作成することである。この共通
仕様を日本発の国際標準として関連各標準化団体に提案し、開発技術を関連業界に訴求する。また、こ
の共通仕様を普及させ、共通仕様環境を実現することで、デジタル映像(シネマ)産業における我が国の
国際的地位を大幅に高め、同業界の事業基盤の安定化、規模の拡大に貢献することである。
4.2 具体的な達成目標
各サブテーマ別の達成目標は以下の通りである。
サブテーマ 1;デジタルシネマ標準映像技術に関する研究開発
映像上映特性が、数値評価可能な標準テスト映像(動画、静止画、テストパターン)を開発・制作する。
これらの映像作成の評価は、あらかじめ設置した標準上映劇場で行うが、最終的には同劇場がデジタル
シネマ共通仕様(標準規格)を準拠している上映環境であることを目指す。
サブテーマ 2;コンテンツ制作に関する研究開発
コンテンツの企画・制作・運用における各段階の進捗状況を記述するコンピュータ言語(マクロランゲー
ジ)とそのビジュアルエディタ技術(ダイナミックシーンシミュレータ)を開発する。さらにこれらの技術を実
証するために実証コンテンツ制作を行い、その手順を取りまとめる。
本研究を通じて、主に次の 2 つの目標の達成を目指す
・
マクロランゲージにより,コンテンツ制作工程の上流から下流までの一貫した管理技術を開発する。
・
ダイナミックシーンシミュレータにより,複雑なシーン設定や撮影,画像生成の試行及びその効率化
する技術を開発する。
サブテーマ 3;デジタルシネマ情報の伝送蓄積に関する研究開発
デジタル映像に電子透かしを埋め込み、流通を経た後にも検出可能とすることによって、デジタル映像
コンテンツの改ざん・改変を検出可能にする。再生時に行われたコピー(再撮)から流通履歴情報の獲得
及び確認を行えるようにする。再撮において、埋め込みビット数は ID20 ビット、他の情報では 64 ビットの
埋め込みを可能にする。本開発技術によって、電子透かしによるセキュアなデジタル映像の配信方式に
関する SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)などにおける標準の確立に貢献す
る。
高品質映像(4:4:4)の符号化方式を開発し、HDTV とモバイルのように、異なる表示解像度を持つ再生
環境に適したデジタル映像を容易に提供可能とする階層型符号化技術を確立する。開発した符号化方
式および技術を国際標準 ISO/MPEG に提案し、高品質映像符号化方式の標準確立に貢献する。
サブテーマ 4;デジタルシネマ映像配信に係る DRM に関する研究開発
デジタル映像(シネマ)関連、コンテンツ制作の全工程を、メタデータ流通技術で、一貫したデジタル技
術の共通仕様(標準規格)として統一基準を作成する。この共通仕様を日本発の国際標準として各関連
標準化団体に提案し、開発技術を関連業界に訴求する。
デジタル映像(シネマ)のコンテンツ ID を含む権利メタデータ標準と権利メタデータ管理、作品や素材
の流通メタデータ標準と流通メタデータ管理、利用許諾、加工編集許諾メタデータ標準とメタデータ管理
として、Creative Commons ポータル技術を開発する。
デジタル放送、デジタル配信、デジタルモバイル通信などのユビキタス環境において、自由で平等、安
全なデジタル映像(シネマ)配信、コミュニティ共有や協調制作を実現する P2P(Peer to Peer)映像コンテン
ツ交換技術を開発する。
さらに、本プロジェクトの研究成果を活用し、国内及び国際の映像教育機関で製作されたデジタル映
像(シネマ)作品の新しい映像流通チャネルを開拓し、映像メタデータのポータル事業化を目指す。
サブテーマ 5;デジタルアーカイブ技術の研究開発・国際標準化推進・検証実験
サブテーマ 5-1;シナリオ入力デジタルシネマ制作技術
DMD 技術を開発する。DMD 技術とは脚本を執筆し、データベースに用意された CG キャラクタと舞台
(背景)を、あらかじめ用意された演出テンプレートを活用して映像化することを目的としている。本研究の
具体的な研究課題としては次の課題に取り組む。
・
シナリオを XML 文書に変換する機能,ならびに必要な XML スキーマの規定変換された XML 文書
から CG コンテンツデータベースへの入力クエリーの自動作成技術
・
CG コンテンツデータベースのデータ構造ならびにメタデータ構造の定義
・
CG コンテンツデータの生成
・
自動 CG 映画生成機能
・
ユーザフレンドリーなプレビューならびに編集インターフェース
・
各 CG コンテンツならびにシナリオに対する著作権保護機
サブテーマ 5-2;更新型 DRM 技術の研究開発
定期、不定期に、セキュリティーのレベルやツールを更新可能な DRM システムを開発する。また標準
化については ISO 標準である IPMP(Intellectual Property Management & Protection)の XML 拡張型
IPMP 技術を開発し、DRM 共通プラットホームの基礎技術を確立、デジタル映像(シネマ)、デジタルコン
テンツの共有と再利用を目標としたコンテンツ新流通システムを開発し、機能検証を行い、国際標準化を
目指す。
サブテーマ 5-3;デジタルシネマアーカイブ技術の研究・国際標準化推進・検証実験
内外の映像関連研究機関、映像関連機関における当該技術の標準化状況、標準化に関する考え方、
関連商品への適用等の調査を行い技術マップにまとめ報告書とする。
映像の簡易調整装置を製作して、各種媒体からの映像をデジタルコンテンツ関連事業において上映実
験を実施、上記活動の報告書を作成する。
4.3 ミッション達成後の波及効果
これらのミッションを達成した結果として、デジタルコンテンツ流通環境が整備され、新規産業としての、
コンテンツ業界、エレクトロニクス業界の更なる発展が期待できる。更に、制作工程管理、著作権管理など
の共通仕様(標準)マニュアルを必要箇所に提供でき、本分野への参画を容易ならしめ、かつこの共通仕
様(標準)マニュアルが教育手段としての使用が可能となり、デジタル映像(シネマ)関連人口の裾野を広
げる効果も大である。
事業完了後、国の援助および映像産業界の出資等で、内外におけるモデル事業、人材育成事業等の
展開を行うことで、構築した標準規格の内外への浸透を図る。この結果、北京オリンピックを起点とする、
中国・アジア圏のデジタル映像(シネマ)ブームを日本産業が支える構造を演出し、東京オリンピック時の
カラーTV ブームによる産業隆盛を、デジタル映像(シネマ)関連機器で再来させる。因みに現在の中国
の TV 受像器台数は 3.5 億台で、アジア圏を含めて考えれば、東京オリンピック時の 20 倍を越える規模
の映像産業の興隆となるはずであり、この地域のデジタル映像(シネマ)環境の整備、即ち、本プロジェク
トによるデジタル映像(シネマ)共通仕様(標準化仕様)の普及で、日本の映像産業のアジア地域参入の
基盤を固めることが可能である。
5.研究全体像
図 3. 研究の全体像
6.研究体制
図 4. 研究体制図
実施体制一覧
研 究 項 目
担当機関等
研究担当者
デジタルシネマの標準技術に関する研究
サブテーマ 1;
デジタルシネマ標準技術に関する研究
(1)色空間と標準映像
東京工業大学大学院
◎中嶋正之
(教授)
(2) 標準デジタルシネマ施設の設置運用
同上
川上一郎
同上
秋山雅和
東京工業大学大学院
◎中嶋正之
(教授)
同上
川上一郎
同上
秋山雅和
サブテーマ 2;
コンテンツ制作に関する研究
(1) 映像作品の企画・制作・管理・のためのマ
東京工科大学片柳研究所
(教授)
クロランゲージの開発
(2) ダイナミックシミュレーションによる映像コン
◎金子 満
同上
三上浩司
同上
伊藤彰教
東京工科大学片柳研究所
◎金子 満
(教授)
テンツ企画・制作・管理技術
同上
三上浩司
同上
中村太戯留
サブテーマ 3;
デジタルシネマ情報の伝送蓄積に関する研究
(1) デジタルシネマ情報のセキュアな伝送技
三菱電機株式会社
(役員技監)
術
(2) デジタルシネマ情報の階層符号化技術
◎村上篤道
同上
浅井光太郎
同上
鈴木光義
三菱電機株式会社
◎村上篤道
(役員技監)
同上
浅井光太郎
同上
山田悦久
サブテーマ 4;
デジタルシネマ映像配信に係るDRMに関す
る研究
(1) Creative Commons ポータル技術
◎曽根原登
国立情報学研究所
(教授)
(2) P2P 映像コンテンツ交換技術
同上
釜江尚彦
同上
金子利佳
同上
沼田秀穂
同上
松本美佳
同上
三神万里子
同上
若槻絵美
同上
国崎みちる
◎曽根原登
国立情報学研究所
(教授)
中泉 卓也
同上
サブテーマ 5;
デジタルアーカイブ技術の研究開発・国際標
準化推進・検証実験
(1) シナリオ入力デジタルシネマ制作技術
◎安田 浩
東京大学
(教授)
(2) 更新型 DRM 適用技術
同上
青木輝勝
(3) デジタルシネマの標準化に関わる研究
同上
小暮拓世
同上
工藤浩輔
・実証実験
◎ 代表者
7.研究運営委員会について
研究運営委員会委員一覧
氏名
所属機関
役職
◎安田 浩
東京大学国際・産学共同研究セ
教授
ンター
坂内正夫
国立情報学研究所
所長
中嶋正之
東京工業大学
教授
金子 満
東京工科大学
教授
村上篤道
三菱電機株式会社
役員技監
曽根原 登
国立情報学研究所
教授
秋山雅和
東京工業大学
研究員
辻 英男
東北芸術工科大学
教授
川上一郎
東京工業大学
研究員
日高恒義
東海大学
講師
工藤浩輔
東京大学
特任研究員
青木輝勝
東京大学
講師
小暮拓世
東京大学
特任研究員
◎研究運営委員長
運営委員会等の開催実績及び議題
(a) 運営委員会
第一回(平成 16 年 9 月 30 日) 於;日本工学院専門学校
議題: 各サブテーマの達成目標説明と質疑応答
第二回(平成 17 年 4 月 5 日) 於;三菱電機株式会社
議題:*各サブテーマの H16 年度活動報告
*研究内容への PO コメント、アドバイス
*JST 新担当紹介
第三回(平成 17 年 9 月 20 日) 於;東京工業大学
議題:*各サブテーマの研究進捗報告
*各研究の連携に関する PO コメント、アドバイス
第四回(平成 18 年 4 月 14 日) 於;東京大学
議題:*各サブテーマの H17 年度活動報告
*各サブテーマ間の質疑応答
第五回(平成 18 年 9 月 15 日) 於;東京工科大学
議題:*各サブテーマの研究進捗報告と研究のまとめ方検討
*研究進捗状況フォロー、終了に関するコメント
(b) 研究成果報告会
第一回(平成 17 年
5 月 25 日~26 日)
「第 1 回デジタルシネマフェスティバル」 於; 日本工学院専門学校(東京・蒲田)
*シンポジウム:挨拶;河村潤子(文部科学省)
千葉 茂(日本工学院専門学校)
講演:「デジタルシネマへの招待」
E.M.Daley(南カリフォルニア大)
「世界のデジタルシネマビジネス」
P.V.Sychowski(ユニークデジタル社)
「中国におけるデジタルシネマの現状」
坂井常雄(㈱シネトン)
「デジタルシネマ制作の現場から」
小栗康平(映画監督)
「デジタルシネマ技術のフロンティア」
R.Weinberg(南カリフォルニア大) 他
成果報告;安田 浩
*標準シアター公開:中嶋 正之 他
*デジタルシネマ上映会:「ウィニング・パス」(監督;中田新一) 他
第二回(平成 17 年 12 月 12 日)
「第 2 回デジタルシネマフェスティバル」 於 日本工学院専門学校(東京・蒲田)
*シンポジウム:挨拶;田村直子(文部科学省)
講演;「ILM におけるデジタル映像制作の最新動向」
J.Harb(ILM 社)
「超高精細映像システムとコンテンツ制作技術の高度化に向けて」
榎並和雅(NHK技術研究所)
成果報告;安田 浩
第三回(平成 18 年 11 月 8 日~10 日)
「第 3 回デジタルシネマフェスティバル」 於; 日本工学院専門学校(東京・蒲田)
*シンポジウム:挨拶;生川浩史(文部科学省)、片柳 鴻(片柳学園)、相磯秀夫(東京工科大学)
講演;「EDCF におけるデジタルシネマ普及への取組」
S.Perrin(UK Film Council)
「韓国におけるデジタルシネマの現状と将来」
李 忠稙(韓国中央大学校教授)
成果報告;安田 浩
*公開講座:「DVD プログラムによるデジタルシネマの制作実習」
青木輝勝
他、6 テーマに関する講座を各サブテーマの講師により実施。
*成果展示
各サブテーマの成果の展示・説明を行った。
*デジタルシネマ上映会
「戦場のピアニスト」(監督;R.Polanski)
「爆心地」(監督;田邉雅章)
「チェリーパイ」(監督;井上春生)
「地球交響曲第六番」(監督;龍村 仁)
(c) 研究連絡会(「共通仕様開発委員会」として開催)
第一回(平成 16 年 9 月 30 日) 於;日本工学院専門学校
*各サブテーマの 7~9 月の活動状況報告
*16 年度及び 3 年後の達成目標審議
第二回(平成 16 年 11 月 17 日) 於;東京大学
*各サブテーマ活動状況報告と審議
*H17 年度予算計画審議
第三回(平成 17 年 1 月 12 日) 於;財団法人デジタルコンテンツ協会
*各サブテーマ活動状況報告と審議
*シンポジウム計画審議(名称を「デジタルシネマフェスティバル」とする)
第四回(平成 17 年 3 月 2 日) 於;国立情報学研究所
*各サブテーマ活動状況報告と審議
*サブテーマ 4 関連テーマ報告(コンテンツ流通と DRM 技術)
*「第 1 回デジタルシネマフェスティバル」計画と役割分担審議
第五回(平成 17 年 4 月 5 日) 於;三菱電機株式会社
*各サブテーマの H16 年度活動報告
*標準化マニュアルの進捗と内容審議
*サブテーマ 3 関連テーマ報告(高精細映像信号の蓄積・伝送)
第六回(平成 17 年 7 月 6 日) 於;東京工科大学
*各サブテーマ活動状況報告
*「第 1 回デジタルシネマフェスティバル」結果報告
*サブテーマ 2 関連テーマ報告(映像制作用マクロランゲージとダイナミックシミュレーション
技術)
第七回(平成 17 年 9 月 20 日) 於;東京工業大学
*各サブテーマ活動状況報告
*成果報告書の作成に関する討議
*サブテーマ 1 関連テーマ報告(LMS 測色技術 他)
第八回(平成 18 年 2 月 20 日) 於;国立情報学研究所
*各サブテーマ活動状況報告
*年度末報告書作成に関する討議
*サブテーマ 4 関連テーマ報告(メタデータ体系について)
第九回(平成 18 年 4 月 14 日) 於;東京大学
*各サブテーマ活動状況報告
*標準化マニュアル制作進捗状況報告、審議
*「第 2 回デジタルシネマフェスティバル」計画審議
第十回(平成 18 年 7 月 4 日) 於;日本工学院専門学校
*各サブテーマ活動状況報告
*標準映像視聴と質疑応答
*「第 3 回デジタルシネマフェスティバル」企画案審議
第十一回(平成 18 年 9 月 15 日) 於;東京工科大学
*各サブテーマ活動状況報告
*成果普及用パンフレット完成報告、配布
*サブテーマ 2 関連テーマ報告(アニメーション映画「ヨーカイ」制作について 他)
第十二回(平成 18 年 12 月 22 日) 於;三菱電機株式会社
*「第 3 回デジタルシネマフェスティバル」報告
*各サブテーマ活動報告
*成果報告書作成計画審議
Ⅱ.経費
1.所要経費
(単位:百万円)
(直接経費のみ)
研 究 項 目
担当機関等
研 究
所要経費
H16
H17
H18
年度
年度
年度
1)設備備品費
0.0
0.0
0.0
0.0
2)試作品費
0.0
0.0
0.0
0.0
3)消耗品費
0.0
0.0
0.1
0.1
4)人件費
7.1
8.8
8.8
24.7
5)その他の経費
5.9
39.4
16.4
61.7
13.0
48.2
25.3
86.5
44.9
0.0
0.0
44.9
2)試作品費
0.6
0.0
0.2
0.8
3)消耗品費
6.1
2.2
0.1
8.4
4)人件費
8.0
8.0
6.9
22.9
10.0
30.0
10.0
50.0
69.6
40.2
17.2
127.0
82.6
88.4
42.5
213.5
1)設備備品費
9.5
0.0
0.0
9.5
2)試作品費
0.0
0.0
0.0
0.0
3)消耗品費
1.7
1.6
6.3
9.6
4)人件費
3.0
4.8
3.7
11.5
5)その他の経費
24.3
23.7
15.2
63.2
小
38.5
30.1
25.2
93.8
1)設備備品費
2.2
1.1
0.0
3.3
2)試作品費
0.0
0.0
0.0
0.0
3)消耗品費
2.8
6.5
3.8
13.1
4)人件費
5.3
2.1
2.1
9.5
5)その他の経費
10.9
11.6
15.5
38.0
小
21.2
21.3
21.4
63.9
1.デジタルシネマの標準技術に関
東京工業大学
担当者
合計
中嶋正之
する研究
(1)色空間と標準映像
小
計
(2)標準デジタルシネマ施設の設
置運用
1)設備備品費
5)その他の経費
小
計
1. 合
計
2. コンテンツ制作に関する研究
東京工科大学
金子 満
(1)映像作品の企画・制作・管理の
ためのマクロランゲージの開発
計
(2)ダイナミックシュミレーションによ
る映像コンテンツ・企画・制作・
管理技術
計
59.7
51.4
46.6
157.7
1)設備備品費
2.2
0.0
0.0
2.2
2)試作品費
0.0
0.0
0.0
0.0
3)消耗品費
0.0
0.0
0.0
0.0
4)人件費
2.5
2.7
3.5
8.7
5)その他の経費
21.5
23.1
13.6
58.2
小
26.2
25.8
17.1
69.1
1)設備備品費
0.0
0.0
0.0
0.0
2)試作品費
0.0
0.0
0.0
0.0
3)消耗品費
0.0
0.0
0.0
0.0
4)人件費
2.4
2.7
3.5
8.6
5)その他の経費
24.4
20.7
29.9
75.0
小
26.8
23.4
33.4
83.6
53.0
49.2
50.5
152.7
1)設備備品費
5.6
0.0
0.0
5.6
2)試作品費
0.0
0.0
0.0
0.0
3)消耗品費
0.3
0.0
0.0
0.3
4)人件費
6.1
9.1
7.7
22.9
5)その他の経費
27.1
11.2
14.5
52.8
小
39.1
20.3
22.2
81.6
1)設備備品費
0.0
0.0
0.0
0.0
2)試作品費
0.0
0.0
0.0
0.0
3)消耗品費
0.3
0.0
0.0
0.3
4)人件費
6.0
9.1
7.0
22.1
5)その他の経費
10.0
10.0
10.0
30.0
小
16.3
19.1
17.0
52.4
55.4
39.4
39.2
134.0
2. 合
計
3. デジタルシネマ情報の伝送蓄
積に関する研究
三菱電機株式会
村上篤道
社
(1)デジタルシネマ情報のセキュア
伝送技術
計
(2)デジタルシネマ情報の階層符
号化技術
計
3. 合
計
4. デジタルシネマ映像配信に係
る DRM に関する研究
国立情報学研究
曽根原登
所
(1)Creative Commons ポータル技
術
計
(2)P2P 映像コンテンツ交換技術
計
4. 合
計
5. デジタルシネマアーカイブ技
東京大学
安田 浩
術の研究開発・国際標準化推
進・検証実験
(1)シナリオ入力デジタルシネマ制
作技術
1)設備備品費
2.9
1.6
1.6
6.1
2)試作品費
0.0
0.0
0.0
0.0
3)消耗品費
1.2
0.1
0.2
1.5
4)人件費
1.9
15.6
5.9
23.4
5)その他の経費
54.6
29.0
29.0
112.6
小
60.6
46.3
36.7
143.6
1)設備備品費
0.0
0.0
0.0
2)試作品費
0.0
0.0
0.0
3)消耗品費
0.0
0.0
0.0
4)人件費
12.4
12.9
25.3
5)その他の経費
21.1
19.6
40.7
小
33.5
32.5
66.0
計
(2)更新型 DRM に関する研究
計
(3)デジタルシネマの標準化推進
に関わる技術
1)設備備品費
7.9
0.0
0.0
7.9
2)試作品費
9.9
0.0
0.0
9.9
3)消耗品費
0.2
0.0
0.0
0.2
4)人件費
1.0
15.8
12.4
29.2
5)その他の経費
16.0
17.6
16.6
50.2
小
35.0
33.4
29.0
97.4
95.6
113.2
98.2
307.0
346.3
341.6
277.0
964.9
計
5. 合
計
所 要 経 費
(合 計)
2.使用区分
サブテーマ
1.デジタルシネマの標準技術に関する研究
2.コンテンツ制作に関する研究
3.デジタルシネマ情報の伝送蓄積に関する研究
4.デジタルシネマ情報の映像配信に係る DRM に関する研究
5.デジタルシネマアーカイブ技術の研究開発・国際標準化推進・検証実験
(単位:百万円)
サブテーマ
1
2
3
4
5
計
44.9
12.8
2.2
5.6
14.0
79.5
試作品費
0.8
0.0
0.0
0.0
9.9
10.7
消耗品費
8.5
22.7
0.0
0.6
1.7
33.5
人件費
47.6
21.0
17.3
45.0
77.9
208.8
その他
111.7
101.2
133.2
82.8
203.5
632.4
64.0
39.6
47.1
39.5
92.0
282.2
277.5
197.3
199.8
173.5
399.0
1247.1
設備備品費
間接経費
計
※備品費の内訳(購入金額 5 百万円以上の高額な備品の購入状況)
【装置名:購入期日、購入金額、購入した備品で実施した研究テーマ名】
① PR705 分光放射輝度計:2004 年 11 月、7 百万円,サブテーマ 1
② ハイビジョン液晶プロジェクタ:2004 年 12 月、9 百万円、サブテーマ 1
③ デジタルシネマ用画像サーバー1 式:2004 年 12 月、10 百万円、サブテーマ 1
Ⅲ.研究成果
1.研究成果の概要
1.1
はじめに
平成 13 年に政策として提案された「e-Japan 戦略」において、5 年以内に世界に冠たる IT 立国を目指
すと謳われているが、この目標を実現するに重要な媒体としてデジタルコンテンツが挙げられる。このデジ
タルコンテンツ導入の成否が上記目標達成の鍵を握っているとしても過言ではない。従来から人々の娯
楽媒体として、また時代の世相を反映した代弁者として映画(シネマ)の果たしてきた役割は大きい。一時、
TV番組に押され、低調を託ってきたシネマ(映画)産業であるが、一部の根強い支持層や関係者の努力
によって、徐々にその地位を回復しつつある。
映画の世界では保守的であった業界においても、周囲環境のデジタル化の波に抗すべくもなく、制作
から上映までの各工程においてデジタル技術が積極的に導入されつつあるが、同時にこれまでのフィル
ムによるシネマ上映には存在しなかった、デジタル化固有の技術、業務課題が提起されて来ていることも、
また事実である。
デジタル映像による上映の優位性は、フィルム映像(「映画」)に比較して制作、機器等が手軽に、低廉
なコストで実現できることにあり、将来コンテンツ配給(配信)方法も含め大幅にデジタル化が進むことが期
待されている。しかしながら、完全に外光を遮断した環境で上映される「映画」の観賞スタイルは白昼や照
明の下で、TV 受像器等で視聴する「ビデオ映像」の場合とは各種仕様でかなり異なることが要求される。
業務用映像の世界では、制作者の意図した場面を画面で完全に再現するため、
「映画」、
「ビデオ
映像」ともに相当数の調整要素(パラメータ)に関して綿密な調整を行って業務用に供している
のが現状である。また、映画関連機器や媒体、及びコンテンツ伝達や方式変換方法も多種多様に
わたり、担当技術者にとって、これらの特徴を的確に捉えた上での「絵作り」を行うことが一つ
の「技」とされている。こうした「プロのこだわり」も伝統を守る意味で大切であるが、デジタ
ル映像(シネマ)を手軽に活用し、広く一般用途の範囲に応用展開をはかりたいと言うニーズが
高まりをみせつつある。
このようなニーズに応え、シネマ産業を活性化する施策として考えられるのは、デジタル映像(シネマ)
の制作から上映にいたるまでの各工程における映像のクオリティに関する情報の記述方式(メタデータ記
述)を定め、これをデジタル映像機器制御に反映させるような標準を定め、この規格に準拠したコンテンツ
制作、上映を行えば、コンテンツ制作者及び一般の鑑賞者にとって十分な満足が得られる画質が確保で
きる、統合的なデジタルシステムを開発することである。
本プロジェクトにおいては、デジタル映像(シネマ)に関連した、各種技術テーマを5分野に分け、それ
ぞれ専門分野ごとにサブテーマ化しできるだけ広範囲で専門的な掘り下げを可能にした。とりわけ、デジ
タル映像の色空間の管理制御技術は、デジタル映像(シネマ)の普及をはかる上での主要課題であり、プ
ロジェクトの重点施策に取り上げ、所期の成果を挙げることができた。
デジタル映像(シネマ)規格の標準化は、部分的には我が国でも海外でも試みられているが、本プロジ
ェクトでは、我が国がこれまで築いてきたHD技術を積極的に活用し、応用展開を図る意味で、取り扱う映
像の解像度を、業界で通常2Kと称している1920×1080と定めた。超高精細度である2K以上の、映像コン
テンツも徐々に実用化の段階に入りつつあるが、当面の実用性を考慮し、且つ、色空間の忠実再現を目
指し、当プロジェクトでは、色空間の伝送規格を4:4:4とし、またプログレッシブ画像にすることで、鑑賞に耐
える十分なクオリティが得られることを確認すると共に、事業としての継続性や投資環境を考慮し、当面の
解像度は2Kが最良であると判断した。これまでのデジタル映像(シネマ)規格に関する研究は、何らかの
形で、米国映画業界(ハリウッド)のフィルム(アナログ)規格の影響を受けており、純粋のデジタル映像(シ
ネマ)に関するシステム的な規格化の試みは内外ともに初めてである。
本事業の本格的な展開によりデジタル映像の制作から上映は更に容易になり、急速な普及を遂げるこ
とにより、コンテンツ業界をはじめとして関連業界の成長に資することが期待できる。
シネマ業界における関連技術では、フィルム映像は勿論、デジタル化が進んだ今日においても、米国
主導の状態は依然として続いている。我が国が21世紀における映像産業で国際的な地位を確保するた
めにはこうした影響から脱却した純粋のデジタル技術に基づく独自の手法を規格化することが急務であ
る。
本研究による成果であるこれらの規格に準拠することは、特定の大手制作・配給系列社のみでなく、独
立系等零細な制作社にも容易に映像制作ができるため、映像産業全体の底上げにも資することが期待
できる。
1.2
研究の内容
(1) 研究目標と目標に対する結果
サブテーマ 1;デジタルシネマの標準技術に関する研究
1)色空間と標準映像
目標:多様な光源(キセノン・高圧水銀ランプ)と投影方式(素子:DLP(Digital Light Processing)、反射/
透過 LCD(Liquid Crystal Display)等)が混在するデジタル映像(シネマ)用プロジェクタにおける統
一色空間(再現)管理手法の研究開発と、色空間(再現)および画質の総合的な管理標準に資す
るデジタル映像(シネマ)標準映像の制作及び普及活動を行う。
結果:デジタル映像(シネマ)の色空間(再現)範囲研究用及びデジタル映像(シネマ)に要求される階調
再現や動画特性などの多様な要素を加味した標準映像の撮影・評価・編集を日本映画撮影監督
協会の協力を頂き制作した。この一般配布は平成 19 年 2 月から 3 月までの 2 ヶ月間ですでに 39
社から利用許諾の申請が寄せられている。なお、本プロジェクトにおける研究成果である標準映像
については SMPTE、テクニカルカンファレンスでの論文発表及び試写に続き、韓国映画振興委員
会(KOFIC)での試写・講演および標準動画像を提供、本プロジェクトの最終目的である国際標準
への提案に向けての活動を積極的に行った。
2)標準デジタルシネマ施設の設置運用
目標:デジタル映像(シネマ)シアターにおける色空間(再現)および画質再現に関わるシアター運営に関
わる様々な技術要因の抽出を行うとともに、本プロジェクト全体の共通施設として運用し研究成果
の広報拠点として活用する。
結果:標準シアター運用上の技術課題について調査研究を行い、CG による HD 解像度でのテストチャー
ト作成、3 次元色空間範囲自動計測システムの構築を行った。この計測結果を用いた標準映像の
色空間(再現)範囲の測定および統一色空間管理手法の実証実験を行うとともに、サブテーマ 3 の
電子透かしの実証実験およびサブテーマ 5 のカラーコレクターによる色空間補正映像の感性評価
実験シアターとしても活用された。また、欧米およびアジアの 10 カ国からの海外視察に加えて、国
内の映像関連学会・団体への標準動画像試写にも使用され、延べ来場者数はプロジェクト期間中
の累計で 1,000 名を超える利用実績となった。
サブテーマ 2;コンテンツ制作に関する研究
1)映像作品の企画・制作・管理のためのマクロランゲージ開発
目標:企画段階や、制作の上流工程である脚本・デザイン・絵コンテなどの諸工程の情報を一元化し、そ
の内容や変更状況、進行状況を容易に把握できるシステムの基盤となるマクロランゲージを開発す
る。
結果:映像制作における企画・制作・管理のためのマクロランゲージ「IPML」(Integrated Production
Mark-up Language)を設計し、XML(eXtensible Markup Language)形式で定義した。さらに、本言
語を使用し、ストレージシステムと連動して動作可能なプログラムを開発した。
2)映像制作のためのダイナミックシーンシミュレータの開発
目標:上記マクロランゲージのビジュアルエディタとして、制作予定の映像をシミュレーションするシミュレ
ータアプリケーションを開発した。
結果:映像コンテンツのシーンをシミュレートするダイナミックシーンシミュレータを、Windows 用アプリケー
ションとして開発した。3DCG を活用し、従来の絵コンテに比べて実写映像のシミュレートを容易に
するアプリケーションであり、IPML の入出力機能も含まれる。
3)実証コンテンツ制作
目標:1)、2)の技術検証のため、フル 3DCG、実写、および実写と CG の合成を含むコンテンツ制作を行
う。
結果:1)、2)の技術検証のため、7分程度のコンテンツ制作を行った。プリプロダクション情報をトリガーとし
た制作情報管理システムには 1)を、撮影前のプレビジュアライゼーションには 2)を利用し、フル
3DCG、実写、および実写と CG の合成を含むコンテンツ制作を行い、本システムの有用性を実証
した。
サブテーマ 3;デジタルシネマ情報の伝送蓄積に関する研究
1)デジタルシネマ情報のセキュア伝送技術
目標:再生されている映像を市販カメラで再撮し、DVD やビデオ CD に不正コピーして販売する犯罪に対
する不正コピー流通経路追跡、蓄積コンテンツ破損部分検出、メタデータを用いた蓄積管理、流
通管理を目的として再撮対応電子透かし方式の検討・開発を行い、方式を確立するとともにシミュ
レーションを実施、技術の有効性を確認する。
結果:本研究開発において、以下の成果があげられた。
*デジタル映像(シネマ)に適用可能な再撮耐性電子透かし方式を開発した。
*デジタル映像(シネマ)の不正コピーに適用可能な著作権流通電子透かし方式を開発した。
2)デジタルシネマ情報の階層符号化技術
目標:高品質映像(色空間フォーマット 4:4:4)の符号化方式を開発するとともに、HDTV とモバイルのよう
に、異なる表示解像度を持つ再生環境に適したデジタル映像(シネマ)を容易に提供可能とする階
層型符号化技術を確立する。
結果:本研究開発において、以下の成果があげられた。
*シネマ情報の符号化として必要とされる「高品質」を実現するために、色信号に対して色空間変換
や間引き処理などを必要としない色空間フォーマット 4:4:4 を直接符号化処理の対象とした符号化方
式を検討・提案し、国際標準方式として採用された。
・ISO/IEC 14496-10 および ITU-TH.264 の拡張方式として 2005 年 7 月から 2007 年 1 月にかけて
JVT(Joint Video Team)において技術提案・検討を実施し、提案方式を標準に盛り込むとともに標
準文書策定作業に貢献した。2007 年中に最終国際投票を終え、標準書が出版される予定である。
・符号化方式としては、実装・開発が比較的容易に実現可能であることと符号化性能とのバランスを
念頭に置き、既存の方式の中では符号化効率が最も高い AVC/H.264 方式をベースにして、親和
性の高い拡張方式を提案した。
・既存の AVC/H.264 復号ソフトウェアをベースにして 4:4:4 クロマフォーマットへの拡張を行い、容易
に実装が可能であることを実証した。
・符号化されたデータに対して容易な編集機能を可能とするために、フレーム内符号化のみで構
成される「High 4:4:4 Intra Profile」と、より高い符号化性能が得られる「High 4:4:4 Predictive
Profile」の策定に技術貢献を行った。
・標準規格文書の作成、標準モデルソフトウェアの作成に技術貢献を行った。
*HDTV 解像度の符号化データから VGA/QVGA 解像度の符号化データを取り出す方式について
検討・実装開発を行った。
・既存の方式に対して一切の拡張を行うことなく実現する手法についてアルゴリズム検討を行い、ソ
フトウェアへ実装することにより提案手法の技術検証を実施した。
・学会発表を行い、技術アピールを行った。
サブテーマ 4;デジタルシネマ映像配信に係る DRM に関する研究
目標:デジタル映像(シネマ)の権利メタデータ、作品や素材の流通メタデータ、利用許諾や加工編集許
諾メタデータの体系化と、権利、流通、再利用メタデータ管理サービス、メタデータ連携サービスな
どメタデータ制御サービスを研究開発する。また、デジタル映像(シネマ)のコミュニティ共有や
P2P(Peer to Peer) 流通技術、流通モデルを研究開発し、国内及び国際の映像教育機関で制作さ
れたデジタル映像(シネマ)作品のWebベースの流通チャネルについて研究開発し、その知的財
産権の確保、学術成果の公開を通した社会実装を目指す。
結果:
*デジタル映像(シネマ)流通のためのデジタルシネマメタデータ流通方式およびデジタルシネマメ
タデータ標準を体系化し、メタデータID連携によるメタデータ・アライアンスを考案した。
*デジタル(シネマ)流通のためのメタデータ流通ネットワークを考案し、P2Pコンテンツ流通の経済
学的分析と必要となるデジタル権利管理技術基盤を明らかにした。デジタル映像(シネマ)流通の
電子取引基盤の研究、Webによるデジタルシネマ販売のための開示度と料金の設定の研究を行
い、Web系のデジタル映像(シネマ)流通モデルを研究開発した。
*デジタル映像(シネマ)視聴により形成される動的なコミュニティにおけるユーザ行動特性の分析、
ネットワークコミュニティ情報の空間属性など事後のメタデータ記述表現について研究し、コンテン
ツ流通システムを開発した。日本映画学校、日大芸術学部、東京大学安田研究室のコンテンツの
事前および事後メタデータ設計原理、有効性検証を実施した。
*上記研究開発成果を学術および産業界での活用を促進し、技術普及させるために、国内特許出
願、外国特許出願、国際会議、研究会、報道発表、市民講座、公開シンポなどの社会貢献活動
を積極的に展開した。
サブテーマ 5;デジタルシネマアーカイブ技術の研究開発・国際標準化推進・検証実験
1) シナリオ入力デジタルシネマ制作技術
目標:本プロジェクトでは誰もが簡単にムービーが制作できるシステムとして DMD と呼ぶ新しい技術を研
究開発した。DMD とは Digital Movie Director の略であり、本システムを用いることにより」、難しい
専門的な技能・知識が一切なくても誰でも簡単にムービー制作を楽しむことを目指す。
結果:本提案による、いわゆるシンク&スタビライズ的な工程によって映像制作を進めてゆくことを大きな
特徴とした、DMD は、後述のように数十回にわたる実証実験において、講習会に参加したメンバ
ーの大半から、「満足した」という意見が得られ、その有効性を実証している。
2)更新型 DRM に関する研究
目標:DRM ツールの自動ダウンロードや、定期的、或は不定期に、暗号鍵や暗号解読ツール等の自動
ダウンロードや DRM システムのセキュリティーレベルの更新やツールの更新を可能にする新 DRM
システムを研究・開発する。また、国際標準である DMP のコンテンツ記述仕様 DCI(DMP Content
Identification)に IPMP DRM 標準を組み込み、機能化した組み合わせ標準を策定し国際標準化機
構に提案する。
結果:システムの実用例であるユースケースを、「期間限定視聴」と「永久視聴」との複数条件とし、暗号化
ツールを AES と DES の複数種類に設定可能とし、且つ、IPMP の管理制御やリモートからの IPMP
ツールの取得が可能なDRM方式を開発した。また、本ソフトウェア構成を、MPEG 及び DMP 標準
仕様に準拠とした、システム検証用ソフトウェアを開発した。
本 プ ロ ジ ェ ク ト の 各 サ ブ テ ー マ と 連 携 し 、 統 合 Digital Video/Cinema MAF(Multimedia
Application Format) の 提 案 を 策 定 し た 。 本 提 案 は MPEG 標 準 化 審 議 文 書 M8781 ( MAF
Overview)に標準化予定候補として登録された。
3) デジタルシネマの標準化推進に関わる技術・実証実験
目標:本事業の最終目的は、デジタルシネマの制作から上映に至るプロセス全体の規格統一化を行い、
映像業界への定着をはかり、将来標準規格として運用を目指す。
このため、事業終了後の啓発活動も重要であるが、事業推進課程においても定着のための啓発活
動および利用者の課題を抽出し、研究内容に還元することも、各事業のレベルを向上に資すること
に努める。
また、実証実験では、任意のデジタル映像機器の組み合わせによって生ずるカラーバランスの崩
れを、新しく開発した簡易型のカラーコレクターによって補正を行い、その効果を感性評価によって
実証を行う。
結果:調査の件数は、本研究グループが行ったものに、他のサブテーマグループから得たデータも加え
て 135 件に上ったが、細かなプレゼンテーションや、講義等を加えれば、この倍になるものと思われ
る。また、所定の調査項目に加え、担当者と面談を行うことにより、その後再度訪問し懇談できたり、
電子メールで連絡を取り、情報交換したりして、本プロジェクトの理解者になってもらった例も少なく
ない。
実証実験では、開発したカラーコレクターは、簡易型であるにもかかわらず、ほぼ満足すべき色補
正機能を発揮し、これを実証実験で確認できた。
本研究は、学術面よりも一般への実用化を主体に行ったが、興行館以外の映像上映会等に積極
的に持ち込み、その効果の確認と、デジタル映像(シネマ)における色補正の重要性を訴求するこ
とができた。
映像の感性評価に関しても、所定の評価プログラム、評価用語、評価映像、解析方法等一定の手
法を完成し、活用ができるようになった。
(2) ミッションステートメントに対する達成度
サブテーマ 1;デジタルシネマの標準技術に関する研究
デジタル映像(シネマ)の色空間管理手法の研究については、視覚的に最も鋭敏である肌色の色空間
(再現)について色相軸の誤差を最小とする色空間管理手法の実験を行った。標準映像から抽出した特
定カットの静止画ベースによる感性評価であり、連続した動画としての色再現実験に迄はいたらなかった。
標準映像は日本映画撮影監督協会の協力もいただきデジタル映像(シネマ)に要求される画質(階調再
現)と色空間および動画再現特性までを加味した世界初となる HD 解像度 RGB4:4:4 での非圧縮標準動
画像が制作でき、平成 19 年 2 月より一般配布を開始した。この一般配布は平成 19 年 2 月から 3 月まで
の 2 ヶ月間ですでに 39 社(映画制作関連 5 社、業務用映像機器メーカー9 社、放送局 2 社、FPD関連
メーカー13 社、画像圧縮関連メーカー2 社、プロジェクタメーカ 3 社)から利用許諾の申請が寄せられて
いる。また、標準動画像としての撮影時基本データおよび色空間再現範囲に関する技術情報もメタデー
タとして逐次公開予定である。
デジタル映像(シネマ)標準施設として、国内外の映像関連機関に公開を行い、本プロジェクトによる標
準映像の試写を中心にして統一色空間管理手法の実証実験を行うとともに、本プロジェクトでスケーラブ
ル画像圧縮や次世代電子透かしの技術開発を担当するサブテーマ 3(三菱電機情報技術総合研究所)
とも連携して標準動画像に埋め込んだ電子透かしの実証実験、とサブテーマ 5 で担当した RGB 信号の
階調再現変換テーブルのみを変化させて色空間範囲の補正を簡易的に行う民生機器向けカラーコレク
ターによる色空間補正映像の感性評価実験シアターとしても活用された。また、韓国映画振興委員会デ
ジタルシネマ推進委員会・ASEAN メディア視察団・中国メディア視察団・英国通商産業省映画政策顧
問・米国南カリフォルニア大学などの海外からの視察に加えて、映画撮影監督協会・映画テレビ技術協
会・映像情報メディア学会・画質学会・芸術科学会などの映像関連学会・団体への標準動画像試写にも
使用され、延べ来場者数はプロジェクト期間中の累計で 1,000 名を超える利用となった。
サブテーマ 2;コンテンツ制作に関する研究
1)様々な制作現場の調査・分析、およびコンテンツ構造分析により、制作工程をプリプロダクションから一
貫して記述できるマクロランゲージ「Integrated Production Mark-up Language」の仕様を策定し、XML
による記述定義を行い、完成させ公開した。
2)3DCG を利用したコンピュータソフトウェアとして、上記 XML の入出力機能を持つダイナミック・シーン・
シミュレータを開発した。
3)上記 2 点の検証のため、HD レベルの実写および CG 合成を利用したコンテンツを実証コンテンツとし
て制作した。これによりデジタル映像制作一般において必要となる新たなシステム・フロー・人材をとりま
とめ報告書にまとめた。
サブテーマ 3;デジタルシネマ情報の伝送蓄積に関する研究
いずれの研究目標においても目標を達成した。
デジタル映像(シネマ)に適用可能な再撮耐性電子透かし方式を開発した。デジタル映像(シネマ)の不
正コピーに適用可能な著作権流通電子透かし方式を開発した。
シネマ情報の符号化として必要とされる「高品質」を実現するために、色信号に対して色空間変換や間引
き処理などを必要としない色空間フォーマット 4:4:4 を直接符号化処理の対象とした符号化方式を検討・
提案し、国際標準方式として採用された。
HDTV 解像度の符号化データから VGA/QVGA 解像度の符号化データを取り出す方式について検
討・実装開発を行った。
既存の方式に対して一切の拡張を行うことなく実現する手法についてアルゴリズム検討を行い、ソフトウ
ェアへ実装することにより提案手法の技術検証を実施し、学会発表を行った。
サブテーマ 4;デジタルシネマ映像配信に係る DRM に関する研究
デジタル映像(シネマ)の権利メタデータ、作品や素材の流通メタデータ、利用許諾や加工編集許諾メ
タデータの体系化と、権利、流通、再利用メタデータ管理サービス、メタデータ連携サービスなどメタデー
タ制御サービス開発目標をほぼ達成した。
サブテーマ 5;デジタルシネマアーカイブ技術の研究開発・国際標準化推進・検証実験
1)シナリオ入力デジタルシネマ制作技術
誰もが簡単にムービーが制作できるシステムとして新しい技術 DMD を開発した。DMD とは Digital
Movie Director の略であり、これを用いることにより難しい専門的な技能・知識が一切なくても誰でも簡単
にムービー制作を楽しむことが可能となる。いわゆるシンク&スタビライズ的な工程によって映像制作を進
めてゆくことを大きな特徴とした DMD は、数十回にわたる実証実験において、ムービー塾(演習付き講習
会)に参加したメンバーの大半から、「満足した」という意見が得られ、その有効性を実証している。
2)更新型 DRM に関する研究
コンテンツ受信端末において、実装中の DRM ツールの自動更新が可能な DRM システムを開発でき
た 。 今 回 開 発 し た DRM シ ス テ ム は 国 際 標 準 で あ る ISO/IEC21000-4IPMP ( Intellectual Property
Management & Protection)方式の概念モデルを採用して、DRM 共通プラットホームを開発しそれを前期
概念モデル上に実装し、目的とする更新機能を検証実験で確認した。
IPMP 関連成果は、MPEG21 標準の記述形式に準拠して、国際コンテンツ流通互換の可能性を検証し、
新 DRM の基礎技術を確立して実装への途を開いた。構築したプラットホーム構成は、MPEG 新複合標
準体系である MAF に提案し、2007 年 2 月現在、最新の MPEG 会合である第 80 回 MPEG San Jose 会
合で審議される予定である。
3)デジタルシネマの標準化推進に関わる技術
調査の件数は、本研究グループが行ったものに、他のサブテーマグループから得たデータも加えて
135 件に上ったが、細かなプレゼンテーションや、講義等を加えれば、この倍になるものと思われる。また、
所定の調査項目に加え、担当者と直接聞き取り面談を行って感触を得るとともに、その後のフォローとし
て再度、同場所を訪問し、参加者と懇談、或は電子メールでの情報交換連をしたりして、本プロジェクトの
良き理解者になってもらった例も少なくない。
実証実験では、開発したカラーコレクターは、簡易型であるにもかかわらず、ほぼ満足すべき色補正機
能を発揮し、これを実証実験で確認できた。
(3) 当初計画どおりに進捗しなかった理由
サブテーマ 1;デジタルシネマの標準技術に関する研究
ミッションステートメントは計画通り進捗し結果を得たが、以下の問題点を残した。
標準映像の制作に関しては、継続事業でありながら当該年度予算執行時期の確定が遅れたために映
像制作の着手が当初予定より半年以上遅延し、結果として当初の配布予定より半年以上遅れて一般配
布となった。この映像制作着手時期遅延のため、配布映像の個別シーンに対する様々な画質妨害事例
の収集・分析や、多様な視聴環境での色空間(再現)範囲のデータ収集・分析は、時間的な制約もあり、
十分に行えなかった。また、異なる光源(分光スペクトル分布)での色空間管理手法の実証実験について
も標準映像の制作遅れに伴い、連続した動画シーンでの色再現実験は機材の都合もあり、確認までは
至らなかった。
また、多様な分光スペクトル強度分布における色空間(再現)範囲を実際のシアターを想定した環境で
行うことには、非常にアナログ的な光源ランプそのものの点灯毎の輝度・分光プペクトル強度分布の変動
などがデジタル映像(シネマ)に要求される色空間(再現)にとって制御範囲外の要因として存在するため
に、さらなる研究が必要である。
サブテーマ 2;コンテンツ制作に関する研究
ミッションステートメントの計画通り進捗し、結果を得た。
サブテーマ 3;デジタルシネマ情報の伝送蓄積に関する研究
ミッションステートメントの計画通り進捗し、結果を得た。
サブテーマ 4;デジタルシネマ映像配信に係る DRM に関する研究
ミッションステートメントの計画通り進捗し、結果を得た。
サブテーマ 5;デジタルシネマアーカイブ技術の研究開発・国際標準化推進・検証実験
1)シナリオ入力デジタルシネマ制作技術
計画どおりに進めることができた。
2)更新型 DRM に関する研究
開発は、計画通りに進捗し、実装と検証実験を完了できた。標準化に関しては、標準の概要を確立し、
MPEG(ISO IEC JTC-1 SC29 WG11)へ提案を行った。Requirement グループにおける審議の過程にある
が、利害が対立する参加各国の代表からの十分なサポートを得るに至っておらず、標準としての確立ま
でには尚相当の審議時間を要する見込みである。
3) デジタルシネマの標準化推進に関わる技術
標準化のための活動方法、実証実験の方法等は手法を確立することができたが、本来目指したプロジ
ェクトとしての統一規格化が時間の関係で完全にまとまらなかったことと、ほぼ同時に進行している米国ハ
リウッド中心に DCI の 4K シネマの標準化との調整がうまく進まなかったので、普及活動には至らなかっ
た。
(4) 研究目標の妥当性について
サブテーマ 1;デジタルシネマの標準技術に関する研究
研究目標として掲げたデジタル映像(シネマ)色空間管理用標準動画像については、ほぼ当初目標と
した画質(階調再現・動画像再現特性)および色空間(再現)の技術要素を盛り込んだ映像シーンで構成
されており、デジタル映像(シネマ)関連諸団体からも高い評価を頂いている。なお、民生用デジタルプロ
ジェクタや多様な大画面フラットパネルディスプレー等のでフィールドテストに相当する評価実験と解析が
研究期間の不足から未達に終わったことが残念である。この点は反省材料として今後に生かしたい。
また、デジタル映像(シネマ)標準施設の運用整備については研究目標をほぼ達成できたと考えている
が関係諸団体からはより長期間での運用が可能とならないかとの意見要望も寄せられている。
サブテーマ 2;コンテンツ制作に関する研究
既存のコンテンツ関連の技術開発は、上映技術や伝送技術、著作権管理など、コンテンツの利用に関
するものが中心であり、制作技術に関してはほとんど取り上げられていない。しかし、コンテンツの利用と
制作は表裏一体であり、連携して標準化を行うことで、制作と利用の双方が活性化することとなる。特に、
制作技術に関しては、現場の理解なくしては標準化は達成されない。こうした状況を踏まえ、コンテンツの
制作技術に取り組み、技術基盤として確立する本研究の目標は妥当であると考えられる。
サブテーマ 3;デジタルシネマ情報の伝送蓄積に関する研究
本研究期間に DCI 標準が策定され電子透かしの埋め込みは 35 ビットに決定したが、本研究ではそれ
を上回る目標を設定していたので、DCI 標準に適用でき、目標は妥当であった。
シネマ情報の符号化品質に必要な「高品質」処理を実現する映像符号化方式を MPEG-4 AVC/H.264 の
拡張方式として国際標準の成立に至り、今後のデジタル映像(シネマ)・映像市場の形成に対して大きな
貢献を行えた。標準化の成立により、各国・各社において同一方式の装置開発が可能となるため、性能
の高い製品供給が期待できる。
サブテーマ 4;デジタルシネマ映像配信に係る DRM に関する研究
これまで提案された今後のメタデータを体系化し、デジタル映像(シネマ)の標準技術として提案する本研
究は、本プロジェクトの中核をなすものとしてきわめて妥当なテーマであるといえる。
サブテーマ 5;デジタルシネマアーカイブ技術の研究開発・国際標準化推進・検証実験
1)シナリオ入力デジタルシネマ制作技術
本プロジェクトの成果は、その成果を映像業界に普及させ、デジタル映像(シネマ)の品質向上に資す
ることを目指すものであるが、一方、制作者人口の裾野拡大もきわめて重要な課題である。
本研究は、そうした入門者を育成する目的に最適であり、目標とその成果は極めて妥当なものといえる。
2)更新型 DRM に関する研究
コンテンツ流通が基幹産業と目される現在、その流通に不可欠なセキュリティ技術は、基本的にコンテ
ンツプロバイダ主導となっており、コンテンツクリエータや、ユーザの望む柔軟性が十分に確保されていな
い。更新型 DRM は、その柔軟性を提供するものであり、コンテンツ流通に関する標準化において、テー
マとして取り上げられている。したがって、産業界に寄与するテーマ設定である上、標準化を行ううえで時
機を得ており、研究目標は極めて妥当な目標と成果である。
3) デジタルシネマの標準化推進に関わる技術
本研究は主として大学および企業の研究所が担当して進められたが、研究成果の実用化は民間、業
界において行わなければならない。いわゆる、学術研究に終わらせないための、両者の接点として機能
するテーマとして目標は妥当である。
(5) 情報発信 (アウトリーチ活動等)について
サブテーマ 1;デジタルシネマの標準技術に関する研究
標準映像については平成 19 年 2 月 1 日からの一般配布開始後約1ヶ月で 39 社の利用許諾申請があ
り、本プロジェクトの目的とするデジタル映像(シネマ)の色空間(再現)および画質管理に関する目的が
十分に評価された結果と考えられる。さらに韓国映画振興委員会への標準映像贈呈に伴い、日韓両国
間でのデジタルシネマ標準化技術に対する共通の技術基盤構築に向けた技術交流が促進されることが
大いに期待できる。
また、デジタル映像(シネマ)標準施設については韓国映画振興委員会デジタルシネマ推進委員会・
ASEAN メディア視察団・中国メディア視察団・英国通商産業省映画政策顧問・米国南カリフォルニア大
学などの 10 各国を越える海外からの視察に加えて、映画撮影監督協会・映画テレビ技術協会・映像情報
メディア学会・画質学会・芸術科学会などの映像関連学会・団体への標準動画像試写にも使用され、延
べ来場者数はプロジェクト期間中の累計で 1,000 名を超える利用となった。
サブテーマ 2;コンテンツ制作に関する研究
本研究機関は、コンテンツ制作に関する企業を中心に「クリエイティブ・コンソーシアム」を結成しており、
様々な共同研究プロジェクトを推進している。また、アニメーション制作の企業との定期的な勉強会などの
中心メンバーでもある。こうした制作現場との密な連携において、本プロジェクトの主に制作者側からみた
本研究の成果と有用性について理解を広めている。
また、研究機関の定例行事として、月 1 回の公開講座、年に 1 回の国際シンポジウムを行っており、こ
の中でも折に触れて本研究に関する成果と有用性について、広く一般にアピールを行っている。
サブテーマ 3;デジタルシネマ情報の伝送蓄積に関する研究
2005 年 6 月 1 日~3 日、SMPTE DC28 技術委員会(米国カリフォルニアで開催)においてリアルタイム
に再撮耐性電子透かしを検出するデモンストレーションを行い、技術的に実用可能であることを実証し、
電子透かしに関する議論を活発化させた。
高性能符号化方式については、ISO/IEC(MPEG)および ITU-T の国際標準化活動において技術提案を
行うとともに、国内外の学会に対してその活動のアピールを行い、本研究・開発の広報を実施した。
サブテーマ 4;デジタルシネマ映像配信に係る DRM に関する研究
市民講座、公開シンポ、公開セミナー、公開シンポを27回実施し、研究開発成果を学術および産業界
での活用を促進、技術普及させる社会貢献活動を積極的に展開した。
サブテーマ 5;デジタルシネマアーカイブ技術の研究開発・国際標準化推進・検証実験
1)シナリオ入力デジタルシネマ制作技術
公開の実証実験として、子供から老人まで広く受講者を募り、数十回にわたって「ムービー塾」と称して
講座を開催した。
受講者の評価は極めて高く、情報が口コミで伝わり、更に応募者があり、また、各種講演会における紹介、
マスコミの取材も多く受ける等、訴求効果が十分であった。
2)更新型 DRM に関する研究
MPEG(ISO/IEC JTC-1 SC29/WG11)および DMP(Digital Media Project)における標準化活動としての
提案そのものが、デジタル映像(シネマ)の必要性と本プロジェクトの技術とを情報発信する活動であり、
これを 3 年間を通じて、定常的に行ってきた。
デジタル映像(シネマ)シンポジウムでの講演および開発ソフトウェアのデモンストレーションを行った。
研究室公開時に開発ソフトウェアのデモンストレーションを行った。
3) デジタルシネマの標準化推進に関わる技術
通常の調査活動に加え、プロジェクトの成果を一般に公開することを目的として、催事「デジタルシネマ
フェスティバル」の開催を、本研究グループ担当した。同催事へは、約 1,100 名近い来場者があり、研究
の趣旨徹底に効果があった。
また、研究内容を記載したパンフレット、報告書を 3 回、3,500 部発行して、関係先に配布を行った。
実証実験にも約 200 名がパネルとして参加があった。
(6) 研究計画・実施体制について
1)研究計画
本プロジェクトは、デジタル映像(シネマ)の制作から上映までの広い範囲の中から研究テーマを設定
して、これにメタデータ技術をいわば横串のように考え、総合的に標準化ができることを目指した。
各々のテーマは、デジタル映像(シネマ)にとって緊急の解決課題であり、これまで研究に着手されてい
ないものが多かった。
本プロジェクトにやや先行して、米国の DCI から 4K の超高精細デジタル映像(シネマ)に関する標準
化の提案があり、2K の精細度の、いわゆる HD 方式を中心に進める本プロジェクトに対して、DCI 関係者
から、異論が出る時期もあったが、本プロジェクトが展開した、各種広報活動等で理解を得るに至った。な
お、のちに、DCI は 2K も下位規格に設定して対応している。
2)実施体制
本プロジェクトは、5 つのテーマを 4 つの大学・研究所及び企業の研究所が担当して推進することとした
が、各々の機関は、それぞれ風土、習慣も異なり、これを一本化して統一規格をまとめ上げることは相当
な困難を伴うこととなった。
事業の実施は、代表機関である東京大学に事務局を設置し、適宜、「共通仕様開発委員会」と称する
連絡会を開催して、研究の進捗フォロー、研究内容の紹介等を行い、情報を共有するよう努めた。
(7) 研究成果の発表状況
1)研究発表件数
原著論文発表(査
左記以外 の 誌面
読付)
発表
口頭発表
合計
国
内
5件
28 件
75 件
108 件
国
外
7件
0件
56 件
63 件
合
計
12 件
28 件
121 件
171 件
※ 国内の出版社の英文誌は「国内」とする。国内で開催された国際会議は「国外」とする。
2)特許等出願件数:国内 15 件、国外 0 件、合計 15 件
非公開(付録に記載)
3)受賞等:6 件
① 伊藤彰教、三上浩司、中村太戯留、金子満 :デジタルコンテンツシンポジウム船井賞「コンテンツ
制作統合化における音楽・音響情報記述に関する諸問題」, デジタルコンテンツシンポジウム
2005.5,芸術科学会他
② 東倉洋一、曽根原登:情報文化学会賞 「情報セキュリティと法制度の研究」,(2006)
③ 東京工業大学・NII:DWES 優秀論文賞「Web サーバー間での部分 Web グラフ同期方式の提案」
(2007)
④ 青木輝勝:文部科学大臣表彰若手科学者賞,(2007.4)
⑤ 青木輝勝:情報処理学会優秀教育賞,(2007.3).
⑥ 青木輝勝:情報処理学会 GN 研究会優秀発表賞、(2006.5).
4)原著論文(査読付)
【国内誌】(国内英文誌を含む)
① 釜江尚彦,沼田秀穂,曽根原登,「ディジタルコンテンツ販売のための開示度と料金の設定」,電
子情報通信学会誌,条件付採録 2007
② 廣田啓一,曽根原登,招待論文「コンテンツ流通における不正利用防止技術」,電子情報通信学
会誌, 2005
③ 廣田啓一,曽根原登,招待論文「デジタル映像流通に関わる著作権保護の今後の展望」,映像情
報メディア学会誌,2005
④ 青木輝勝、安田浩、”シナリオ入力映像制作システムとその制作工程”、情報処理学会論文誌、
2007.9 掲載予定(情報処理学会 GN 研究会推薦論文)
⑤ 江村恒一, 青木輝勝, 安田浩, "隠れマルコフモデルに基づくインタラクティブな仮想カメラワーク
遷移制御", 映像情報メディア学会誌投稿中
【国外誌】
① Kanokwan Atchariyachanvanich,Hitoshi Okada and Noboru Sonehara,「 What Keeps Online
Customers Repurchasing through the Internet?」, ACM SIGecom Exchanges,Vol. 6,No. 2,
Pages 47-57,(2006.12).
② Nakaizumi, T. and N. Sonehara , 「 Reward-based Peer-to-Peer Digital Contents Distribution
Model」,‘Current Research in Information science and technologies Volume II’ (I International
Conference on Multidisciplinay Information Sciences and Technologies InSciT2006 October,
25-28th 2006, Mérida, Spain),pp. 514-519,(2006)
③ Matsumoto, M,N. Sonehara and H. Yasuda,「Metadata Distribution platform for digital Moving
Image Content 」 , (I International Conference on Multidisciplinay Information Sciences and
Technologies InSciT2006 October,25-28th 2006,Mérida,Spain),pp.315-319,(2006)
④ Nakaizumi, T. and N. Sonehara,「Reward-based Peer-to-Peer Digital Cinema Distribution Model」,
2006 IEEE International Conference on Service Operations and Logistics and Informatics ,
Shanghai June 20-23, 2006, Conference Proceedings, pp. 942-947,(2006)
⑤ Takao Nakamura, Atsushi Katayama, Masashi Yamamuro, Noboru Sonehara, 「Fast Watermark
Detection Scheme for Camera-captured Images on mobile phone Phones」, INTERNATIONAL
JOURNAL of PATTERN RECOGNITION AND ARTIFICIAL INTELLIGENCE,(2005.11)
⑥ Nakaizumi, T. and N. Sonehara,「A Study of Reward-based Peer-to-Peer Content Distribution
Models」 Centre of Digital Enterprise e-Commerce Seminar,Auckland University,New Zealand,
(March.2005)
⑦ Koichi Emura, Makoto Yasugi, Toshiyuki Tanaka, Seiya Miyazaki and Sachiko Motoike, “Personal
Media Producer: A System for Creating 3D CG Animation from Mobile Phone E-mail”, Academy
Publisher, Journal of Multimedia, Vol.1, Issue 2, pp.30-37,(May 2006)
5)その他の主な情報発信(一般公開のセミナー、展示会、著書、Web等)
本項には、代表的なもののみとし、全項目は各サブテーマに記載した。
①セミナー、シンポジウム
1) 川上一郎・秋山雅和・中嶋正之「Outlook of Color Space Management Evaluation Material for Digital
Cinema:"CoSME"」,SMPTE Technical Conference(2006)
2) 三上浩司、金子満、中村太戯留、伊藤彰教 :「マクロランゲージを利用した制作工程の統合管理手
法に関する研究」,デジタルコンテンツシンポジウム 2005
3) 馬養浩一、伊藤浩、藤井亮介、鈴木光義、浅井光太郎、村上篤道、「再撮影画像から検出可能な電
子透かし方式開発のための基礎実験」、第 28 回情報理論とその応用シンポジウム (SITA2005、予稿
集 2/2
P479-482)、2005 年 11 月 20 日~23 日
4) Hiroshi Yasuda:「Toward the digital entertainment explosion over HD equipment」, ,NAB2005 Las
Vegas,2005.4.16
他 25 件
②研究会発表
1) 中嶋正之、川上一郎、秋山雅和「デジタル標準映像"CoSME"について」、NICOGRAPH2007 春季大
会(2007)
2) Sekiguchi, Isu, Sugimoto, Yamada, Asai, Murakami「On Separate Color-Plane Prediction for Direct
4:4:4 Video Coding」、ICIP(International Conference on Image Processing)、2006 年 10 月
3) Kogure, Koike, Yasuda, "Proposal of Extension on ISO/IEC 23000-5/AMD1:Media Streaming Player
MAF, AMENDMENT 1: Digital Video/Cinema Content Profile m14141, 79th MPEG Marrakech,
(2007.1)
他 89 件
③著書
1) 曽根原登,岸上順一他共著,「メタデータ技術と Semantic Web」,東京電機大学出版,2006
他5件
④新聞報道
1)
デジタルシネマの標準技術、NHK 経済最前線、2005 年 4 月
2)
DMD(Digital Movie Director),NHK「おはよう日本」に出演、2006 年 8 月
他 20 件
2.研究成果:
2.1 サブテーマ 1;デジタルシネマ標準化技術に関する研究
(分担研究者名:中嶋 正之、所属機関名:東京工業大学)
(1)要旨
本研究においては、特に色情報伝達の重要性に着目し、デジタル映像(シネマ)の制作から上映に至
る全工程を貫く色空間の共通仕様化に取り組んできた。クリエイターの創作した映像を、その意図通りに
上映するためには色調と諧調の再現を正確に行うことが必須の条件である。即ち、色空間(色調再現)の
コントロールが最も重要な要素としてあげられる。
従来、上映される映像の色彩調整は、色彩制御の責任者が目視で主観的に作業を行ってきた。フィル
ムの世界ではラボでの仕上がりが全てであり、上映時の色調と階調のコントロール範囲は限られていたが、
電子映像系では変動要素が多く、一旦決定された色調を維持することは困難であった。しかも、輝度や
ガンマ、ダイナミックレンジ、色温度などの要素が複合的に色空間範囲に影響を及ぼすので、主観的な
評価では変動幅も大きくなる懼れがあった。従って、本グループでは主観的な評価だけではなくて定量
的(数値で)に評価する必要があると考え、デジタル画質の「ものさし」づくりを目指した。
(2)目標と目標に対する結果
1)色空間と標準映像
目標:多様な光源(キセノン・高圧水銀ランプ)と投影方式(素子:DLP、反射/透過 LCD 等)が混在する
デジタル映像(シネマ)用プロジェクタにおける統一色空間(再現)管理手法の研究開発と、色空間
(再現)および画質の総合的な管理標準に資するデジタル映像(シネマ)標準映像の制作及び普
及活動を行う。
結果:デジタル映像(シネマ)の色空間(再現)範囲研究用及びデジタル映像(シネマ)に要求される階調
再現や動画特性などの多様な要素を加味した標準映像の撮影・評価・編集を日本映画撮影監督
協会の協力を頂き制作した。この一般配布は平成 19 年 2 月から 3 月までの 2 ヶ月間ですでに 39
社から利用許諾の申請が寄せられている。なお、本プロジェクトにおける研究成果である標準映像
については SMPTE テクニカルカンファレンスでの論文発表及び試写に続き、韓国映画振興委員
会(KOFIC)での試写・講演および標準動画像の贈呈を行い、本件プロジェクトの最終目的である
国際標準への提案に向けての活動を積極的に行った。
2)標準デジタルシネマ施設の設置運用
目標:デジタル映像(シネマ)シアターにおける色空間(再現)および画質再現に関わるシアター運営に関
わる様々な技術要因の抽出を行うとともに、本プロジェクト全体の共通施設として運用し研究成果
の広報拠点として活用する。
結果:標準シアター運用上の技術課題について調査研究を行い、CG による HD 解像度でのテストチャー
ト作成・3 次元色空間範囲自動計測システムの構築を行った。この計測結果を用いた標準映像の
色空間(再現)範囲の測定および統一色空間管理手法の実証実験を行うとともに、サブテーマ 3 の
電子透かしの実証実験およびサブテーマ 5 のカラーコレクターによる色空間補正映像の感性評価
実験シアターとしても活用された。また、欧米およびアジアの 10 カ国からの海外視察に加えて、国
内の映像関連学会・団体への標準動画像試写にも使用され、延べ来場者数はプロジェクト期間中
の累計で 1,000 名を超える利用となった。
(3)研究方法
「ものさし」をつくるにあたって、目盛をどうするか、どの様に刻むかが重要である。はじめにすべきこと
は、常に同じ条件で測定できる環境を整えることである。そのため、メタデータを持つ評価用映像とコント
ロールされた上映環境を準備することにした。蒲田の日本工学院専門学校内に、上映環境の仕様を正確
に定めた「デジタル映像(シネマ)標準シアター(デジタルシネマ・テストベッド)」を設置し、デジタル映像
(シネマ)における画質評価を行うために、画質に影響を及ぼす諸要素を盛り込んだ標準映像(名称:
CoSME)を、フル HD、色空間フォーマット 4:4:4 非圧縮収録で制作することにした。
評価映像は本研究グループでの研究利用のみならず、ワールドワイドで利活用して頂くことが重要で
すあり、研究目的を十分に理解した上で、作品としての芸術性・娯楽性も備えながら、研究目的のための
定量的な測定を可能とする欲張った画作りが求められる。また、日本映画界全体として取り組みたいとの
気持ちから、日本撮影監督協会(JSC)の全面的な協力を仰ぐことにした。評価用映像の制作意図やデジ
タル映像の画質を決定する要素として何を取り上げるべきか、その要素をどの様に盛り込んで映像を構
成していくかなど、数ヶ月に及ぶ討議を重ねると共にデジタル映像(シネマ)に最適な撮影条件を決定す
るためにテスト撮影を行って本番に臨み、満足できる映像の制作が順調に行えた。なお、“CoSME”とは、
色空間管理用標準映像素材の英語訳「Color Space Management Evaluation Material」 から抽出した愛
称である。
デジタル映像(シネマ)の標準仕様に関しては、ハリウッドの 7 大スタジオが結成した DCI が、フィルムで
撮影された映像のデジタル上映を想定したデジタル映像(シネマ)の評価映像素材(Standard Evaluation
Material:StEM)を ASC(American Society of Cinematographers)と協同で制作している。一方、放送規格
としては、現行 HDTV 規格となっている ITU-R BT Rec.709 がある。しかし、デジタル撮影による劇場環境
での上映に関する最適仕様の研究提案はなされていない状況である。
完成したデジタル画質評価映像は、実写部分と計算式で作成されたテストパターンから構成されてい
るので、この評価映像とデジタル映像(シネマ)標準シアターを組み合わせることによって、プロジェクタ、
映写レンズ、スクリーンなどの特性や迷光の影響などによる色空間の変化などを主観的な評価だけでなく、
客観的に測定することができることになる。
異なる環境でも同じ状態で上映できるように、また、定量的な画質評価を可能にするために、撮影時の
データと監督が画調を決定したときのマスモニ上での XYZ 値、テストベットでの上映(色再現)データをメ
タデータとして付加している。また、ポストプロダクション工程などでの加工を一切排除して、撮影時の生
データが直接手元に届けられるようなメタデータ構成とその転送方式になっている。
前記したように、“CoSME”には、デジタル画質を左右する要因を多く含んだ映像構成であるので、各種
ディバイスやディスプレーの開発、画像処理のハード、ソフト開発などに幅広く活用できる。また、撮影か
ら上映までのトータルデジタルによる映画製作の標準化に資することになる。
(4)研究結果
「色空間と標準映像」においては、デジタル映像(シネマ)の色空間(再現)範囲研究用及びデジタル映
像(シネマ)に要求される階調再現や動画特性などの多様な要素を加味した標準映像 CoSME を制作し
た。この一般配布は平成 19 年 2 月から 3 月までの 2 ヶ月間ですでに 39 社から利用許諾の申請が寄せら
れている。なお、本プロジェクトにおける研究成果である標準映像については SMPTE テクニカルカンファ
レンスでの論文発表及び試写に続き、韓国映画振興委員会(KOFIC)での試写・講演および標準動画像
の贈呈を行い、本件プロジェクトの最終目的である国際標準への提案に向けての活動を積極的に行った。
また学会(情報処理学会関西地区大会招待講演)などにおいて積極的に研究発表を行った。
「標準デジタル映像(シネマ)施設の設置運用」に関しては、標準シアター運用上の技術課題について
調査研究を行い、CG による HD 解像度でのテストチャート作成・3 次元色空間範囲自動計測システムの
構築を行った。この計測結果を用いた標準映像の色空間(再現)範囲の測定および統一色空間管理手
法の実証実験を行うとともに、サブテーマ 3 の電子透かしの実証実験およびサブテーマ 5 のカラーコレク
ターによる色空間補正映像の感性評価実験シアターとしても活用された。
本研究のうち特に注力した標準映像 CoSME について以下に述べる。
デジタル画質評価映像“CoSME”について
1)CoSME の仕様
①
使用機材
HD カメラ:SONY HDC-F950 w/HDCU-F950
モニター :SONY BVM-D24(6500°K に設定)
レンズ
:FUJINON 単焦点シリーズ&10 倍ズーム(但しズーム使用はなし)
レコーダー:計測技術研究所 UDR-2E(4:4:4 非圧縮 RGB 記録)
バックアップ:SRW-1 4:4:4 HDCAM-SR(RGB)
明 :ARRI HMI(野外)、3200°K(スタジオ)
照
②
カメラの設定条件
カメラの設定は、撮影条件の再現性や標準性を考慮し、ITU-R709 を基本とすることにし、テスト撮影の
結果、80%までは ITU-R709 のカーブを使用、ニーポイント 80%から圧縮をかけ、400%(2 絞り開け)を
105%に設定した。図 5 にカーブ(通称ガンマカーブ)を示した。
ITU-709 80% 105
120
x4 105%
100
x1 87%
x2 96.5%
Output
80
60
40
20
0
0
100
200
300
Input
400
500
600
図 5. ガンマーカーブ
③
記録方式
10 ビット非圧縮で収録するが、1024 階調のうち 4~1019 階調を使用し、0%黒レベルを 64 階調に、
100%白を 940 階調に割り当てた。最大は 1019 階調となり 109%でクリップすることになる。結果的に暗部
の描写に強さを発揮した。
④
色再現
今回の映像制作では色再現が大変重要であるが、厳密には使用するカメラやレンズ、モニターによっ
て色調は異なってしまう。プロジェクトの最終ゴールとしては、これらの変動要素を補正して一定の色再現
を確約する方程式を見付けることであるが、今回は撮影時の変動を考慮しなくて済むように、全ての撮影
機材を特定することで再現可能なデータを確保し、規格化された ITU-R709 標準定数を使用することにし
た。
⑤
色温度
通常のフィルムによる映画撮影で標準とされている野外撮影では 5600°Kに室内撮影では 3200°Kを基
本設定とした。HDC-F950 には 5600°Kの色温度変換フィルターが内蔵されていないので、内蔵フィルタ
ーディスクの A ポジションを 5600°Kの変換フィルターに変更した。
⑥
感度設定
HDC-F950 の標準感度は、ASA640 相当であるが、今回は 24p 収録のため 1/48(180°開角度)の電子シ
ャッターをいれてフィルムと同じ露光時間にしたので、感度は 1 絞りアンダーの ASA320 が基本となった。
⑦
レンズによる色味の違い
レンズの光学特性やコーティングの状態で微妙に色味が異なってしまう。数の豊富なフィルム撮影では
事前のテストで色味をそろえている。用意したフジノンの単焦点レンズシリーズを事前チェックしたところ、
ビデオレベルで 2~3%のバラツキがあった。実用上は問題のないレベルであるが、定量的な測定を求め
られる今回の映像制作では無視できないレベルなので、カメラ側にこの誤差を吸収し補正するためのファ
イルをメモリーさせた。
⑧
色シェーディング(色むら)
プリズムを使用した分解光学系では,レンズの射出瞳位置によって縦方向の色シェーディング(色む
ら)が発生する。事前チェックで認められたので、誤差を 1%以内に調整してレンズファイルにメモリーして
使用した。
⑨
黒レベル
黒レベルの変動を絶対的にに避けるため、ヒートラン後本番直前に必ず黒レベルを確認することを励
行した。レンズクローズ時(絶対黒)のブラックを波形上で 2%に設定した。本来の HD 規格では 0%とする
が、野外撮影などカメラの温度特性や他の変動のため信号がクリップしないよう少し余裕を見る必要があ
るからである。
⑩
ディテール補正
通常、HD カメラでは CCD の画素とのモアレ防止のフィルターやレンズの MTF の低下を補正するため
補正回路使用しているが、今回は余分な信号処理を避けるため、使用レンズの解像度状態も考慮してデ
ィテール補正はオフとした。
⑪
モニター環境
デジタルシネマの評価映像であり、映画と同じ暗い環境での上映が前提となっている。この条件では暗
部の再現性が大変重要になると同時に、暗部表現を効果的に使用することができる。しかし、撮影現場で
のモニターの監視環境が明るいと正確な露出を決めることが出来ないので、24 インチモニターを置いた
モニター車とカメラベースの 24 インチモニターと波形モニターを設置してある収録車は、内部に黒幕を張
って遮光し暗室状態にして映像管理を行った。
⑫
“CoSME”のシーン構成
*A Day in SHIMODA
撮影監督:藤石
修
夜明け前から日中、日没後までの刻々と色温度が変化していく自然光の屋外で色彩豊かな、動きの早
い被写体と補助ライトを用いた屋内での陰影からなり、色再現や動きの再現を評価する。
*和 (NAGOMI)
撮影監督:磯貝
均
数寄屋造りの室内と日本庭園を舞台に、和の色調(記憶職を意識して)や微妙なテクスチャーでの再
現、特にシズル感の再現を評価する。
*Color and Tone
撮影監督:千葉 真一
スタジオに於ける計算されたライティングの下で、微妙に異なる同系色での色解像度やダイナミックレン
ジの評価を定量に行うことを目的としたシーンで構成
*資料映像
撮影監督:荒井
滋
数値的測定のためのチャート類と画像圧縮による歪を検出する映像構成
“CoSME”の各シーンと評価ポイント及び撮影メタデータを一部抜粋して図 6 に示す。
図 6. “CoSME”の評価ポイントと撮影メタデータ例
2)“CoSME”を活用した色空間関連計測
撮影条件の再現を可能とするために、CoSME の各カットには使用機材(カメラ・レンズ・計測機器)及び
撮影条件(カメラの設定条件・レンズのミリ数・絞り(T 値)・色温度・フィルター)、ライティング状況(ライトの
数と位置と種類・ワット数)、カメラ位置、また、屋外撮影では日時・天候などの状態を克明に記録するとと
もに、ディスプレー時の再現性を評価するために、被写体の主要部分の LV 値をメタデータとした。
さらに、映像制作統括と監督とで「OK 出し」したときの、波形モニター及びベクトルスコープの出力をそ
の映像カットと共に記録した。
図 7 は、資料映像のうちのマクベスチャートを活用して各種再現条件下で測定を行った例である。色表
現を従来慣例とされていた 2 次元表示を行っているのでやや色空間の概念が把握しにくい欠点があり、
概要の項で述べたように、これを 3 次元表示にして、色空間の補正を行う研究にも着手して、ほぼ、その
理論は確立することができた。
図 7. マクベスチャートの色空間再現範囲
(5)考察・今後の発展等
標準映像 CoSME に関しては平成 19 年 2 月から 3 月までの 2 ヶ月間ですでに 39 社から利用許諾の
申請が寄せられている。今後も、デジタルコンテンツ協会を通して、配布を続行する予定である。また韓
国、中国から欧州においても配布啓蒙活動を続行する予定である。またそれに伴い CoSME の普及のみ
ならず、必要に応じてその利用方法などの講習を続行する予定である。
また日本工学院専門学校内に設置した「標準デジタル映像(シネマ)施設」の設置運用に関しては、今
後も、日本工学院との協力のもとに、プロジェクト本来の目標に沿った運営を続行し、日本で最初のデジ
タルシネマ標準映像施設として積極的に活用を図る予定であり、今後もデジタルシネマシアターにおける
色空間(再現)および画質再現に関わるシアター運営に関わる様々な技術要因の抽出を行うとともに、本
プロジェクト全体の共通施設として運用し研究成果の広報拠点として活用を続行する予定である。
(6)関連特許
基本特許(当該課題の開始前に出願したもので、当該課題の基本となる技術を含む特許)について
該当なし
(7)研究成果の発表
(成果発表の概要)
1. 原著論文(査読付き)
0 報 (筆頭著者: 0 報、共著者: 0 報)
2. 上記論文以外による発表
国内誌:0 報、国外誌:0 報、書籍出版:0 冊
3. 口頭発表
招待講演:2 回、主催講演:0 回、応募講演:8 回
4. 特許出願
出願済み特許:0 件 (国内:0 件、国外:0 件)
5. 受賞件数
0件
1. 原著論文(査読付き)
【国内誌】
該当なし
【国外誌】
該当なし
2. 上記論文以外による発表
【国内誌】(国内英文誌を含む)
該当なし
【国外誌】
該当なし
3. 口頭発表
招待講演
1) 川上一郎「デジタルシネマ統一色空間管理用標準映像 CoSME の概要」、韓国映画振興委員会特
別シンポジウム(2006)
2) 中嶋正之「デジタルシネマ 最新の技術動向」、情処学会関西支部大会特別講演(2006.9)
主催・応募講演
1) 中嶋正之「3D contents and digital cinema activity in Japan」、3DI&DT 2006 (International
Symposium on 3D Imaging and Display Technology)(2006)
2) 川上一郎「デジタルシネマが要求する画質とは」、FPDインターナショナルプレセミナー(2006)
3) 川上一郎「デジタルシネマにおける色空間」、デジタルアニメーション制作技術研究会(2007)
4) 川上一郎・秋山雅和・中嶋正之「Outlook of Color Space Management Evaluation Material for Digital
Cinema:"CoSME"」,SMPTE Technical Conference(2006)
5) 中嶋正之、川上一郎、秋山雅和「デジタル標準映像"CoSME"について」、NICOGRAPH2007 春季大
会(2007)
6) 井澤信介、張英夏、齋藤豪、川上一郎、中嶋正之「異なる光源下におけるカテゴリカル知覚の変化
に関する研究~デジタルシネマにおけるガミュットマッピングに関する一考察」、電子情報通信学会
総合全国大会(2006.3)
7) 岡村光展、張英夏、齋藤豪、 川上一郎、中嶋正之 「フォーカルカラー選定の規則性に関する研究
ーデジタルシネマ環境における効果的なガミュットマッピングのための研究ー」、電子情報通信学会
総合全国大会(2006.3)
8) 岡村光展、張英夏、齋藤豪、川上一郎、高橋裕樹、中嶋正之「異なる光源下におけるフォーカルカラ
ー選定の変化に関する研究-デジタルシネマにおける忠実な色再現に関する基礎研究」第2回デジ
タルコンテンツシンポジウム(2006.6.21)
4. 特許出願
該当なし
5. 受賞件数
該当なし
2.2 サブテーマ2;コンテンツ制作に関する研究
(分担研究者名:金子 満、所属機関名:東京工科大学)
(1)要旨
コンテンツ制作技術の標準化および技術基盤の開発として、コンテンツの企画・制作・運用を一貫して
管理できる技術の開発を行った。具体的には、制作情報を扱うメタデータであるマクロランゲージ「IPML」
(Integrated Production Mark-up Language)を設計し、XML 形式で定義した。また、このビジュアルエディ
タとして、制作予定の映像をシミュレーションするシミュレータのアプリケーションソフトウェアを開発した。こ
の両者の有用性の検証のため、実写と CG を含む5分程度の実証コンテンツの制作を行った。これらはす
べて、日米双方の制作現場の現状を調査・分析した結果に基づいて開発されたソフトウェアであり、広く
制作現場に受け入れられることが期待できる。
(2)目標と目標に対する結果
プロフェッショナルのコンテンツ制作においては、プリプロダクション段階で緻密に企画、設計した内容
に従い、プロダクション段階、ポストプロダクション段階において、携わるスタッフが的確な作業を行うこと
が要求される。また、それぞれの工程により特殊な技能や技術を必要とし、こうしたスキルを有する人間の
集団により、初めてコンテンツが出来上がる。このようなプロジェクトを成功させるためには、各工程におけ
る、工程管理、素材管理、進捗管理などあらゆる管理が重要になる。また、プリプロダクション段階での企
画、設計内容を、携わるスタッフに対して早く正確に伝達することが重要である。
本研究の目的は、デジタル映像(シネマ)の企画・制作・運用等各段階の進捗状況を、制作関係者が
常に把握できる一貫システムの構築である。特に企画段階や、制作の上流工程である脚本・デザイン・絵
コンテなどの諸工程の情報を一元化し、その内容や変更状況、進行状況を容易に把握できるシステムの
構築を目指す。
その実現のために、具体的な研究項目として次の 2 点を挙げる。
1)映像作品の企画・制作・管理のためのマクロランゲージの開発
2)ダイナミックシミュレーションシステムの開発
1)については、企画・制作・管理のためのマクロランゲージ「IPML」(Integrated Production Mark-up
Language)を設計し、XML 形式で定義した。さらに、本言語を使用し、ストレージシステムと連動して動作
可能なプログラムを開発した。
2)については、映像コンテンツのシーンをシミュレートするダイナミックシーンシミュレータを、Windows
用アプリケーションとして開発した。3DCG を活用し、従来の絵コンテに比べて実写映像のシミュレートを
容易にするアプリケーションであり、IPML の入出力機能も含まれる。
(3)研究方法
マクロランゲージ開発に関しては、基礎調査として、映像制作ワークフローの現状分析およびシナリオ
のデジタル化と映像コンテンツ構造分析を行い、制作現場における情報フローと、それに対応するプリプ
ロダクション情報の洗い出しを中心に行う。並行して、先行して実用化が行われている、ポストプロダクショ
ンにおけるメタデータ活用の現状やアセットマネジメントシステムについての調査を行う。このように実際の
制作現場に即した形での調査結果を元に、企画から運用に至るまでの情報フローを明確化し、リストを作
成の上、言語化を行う。このデータの有用性の検証のため、実証制作を通じて、企画書・シナリオなどの
デジタルデータをトリガーとして様々な情報を共有・閲覧可能なプログラムを開発する。
シミュレーションシステムに関しては、3DCG を用いた Windows アプリケーションソフトとして開発する。
マクロランゲージのビジュアルエディタとしての機能を満たすため、マクロランゲージの入出力機能を実装
する。
開発した技術の検証のため、実写と CG を用いた実証用コンテンツを、プロの制作者との共同作業で
制作する。この際、上記マクロランゲージによる情報や素材の共有と管理、および映像シミュレーションシ
ステムを用いたプレビジュアライゼーション等を行い、こうしたシステムの無い場合との制作工程と比較し
ての優位点を明確化する。図 8 は制作ワークフローの検討例である。
映像コンテンツの制作・運用(プロデューシング)作業の全体図
資金調達
A 提案(プロポーザル)
(プレプロダクション)
スループロダクション
制作・
運用の時間経過
コンテンツプロデューシング
B 確認(コンファメーション)
E 感情化(ドラマティゼーション)
(プロダクション)
F 具体化(リアリゼーション)
G 調整(アジャスティング)
C 管理
資金回収
利益配分
D 配備(リスティング)
H 仕上げ(ファイナライゼーション)
(ポストプロダクション)
I 運用(アプリシエーション)
図 8. デジタル映像制作ワークフローの検討例
(4)研究結果
マクロランゲージに関しては、制作フローの基礎調査、シナリオやコンテンツの構造の調査分析を元に、
プリプロダクション情報のリスト化を行った上で、XML の形式で表記された「Integrated Production
Mark-up Language(IPML)」の中心部分である「IPML Core」を完成させた。本仕様に関しては、東京工科
大学片柳研究所クリエイティブ・ラボの Web ページ(http://www.teu.ac.jp/clab/)から閲覧可能にした。また、
制作フローにおける IPML によるアプリケーションの例として、工程・素材管理アプリケーションを設計し、
ストレージシステムと連携する部分の一部実装を行った。図 9 に制作システムの検討案を示す。
Plannning
Level
BizPlayers’Tool
仕様
企画書
デザイン
音楽
プロット
設定
XML構造化データ
実デジタルデータ
Creators’Tool
DataBase
脚本・設定
シナリオエンジン<For Scenarist>
タグ付けされた
シーン
にかかわる情報
設計
シナリオ
(コンテンツ仕様書XML)
コンテ・シミュレーション
情報追加により
アップデート
ジオラマエンジン(Storyboard tool)<For Director>
シーンの設定情報
制作に必要な
設定情報
製造
モデリング
コンテ
(コンテンツ設計書XML)
MOCAP
アニメーション
素材の更新により
アップデート
工程管理・品質管理・進行管理
制作状況把握
管理用とにより
必要な情報
プレビュー
(コンテンツ素材XML)
レンダリング
エフェクト
素材データ
(High QTY)
ノンリニア編集
制作された
実情報
セリフ
効果音
XMLレンダラによる
工程ブラウザ
(プロデューサ向けとクライアント向け)
現状のHPブラウザに表示する方法も検討
(音楽)
録音
素材の更新により
アップデート
工程管理ブラウザ(Process Browser)<For Producer>
ミキシング
マスタリング
管理に必要な
設定情報
各種ソフトウェア<For Artist>
完成品
図 9. XML ベースの管理情報による統合的コンテンツ制作システム検討案
シミュレーションシステムでは「ダイナミック・シーン・シミュレータ」を開発した。IPML 入出力や、モーショ
ンキャプチャデータの入力・一部編集にも対応し、実写の撮影や CG におけるプレヴィジュアライゼーショ
ンツールとして利用する。図 10 が本方式の流れを表したものである。
両者の技術検証のため、これらの言語とシステムを用いて、7分程度の実際のコンテンツ制作を行った。
プリプロダクション情報をトリガーとした制作情報管理システムには IPML を、撮影前のプレビジュアライゼ
ーションには本シミュレーションシステムを利用し、フル 3DCG、実写、および実写と CG の合成を含むコン
テンツ制作を行い、本システムの有用性を実証した。また、一連の開発および実証制作を通じて得られた
知見の詳細を報告書にまとめた。
ステ
キャ
ィング
■シミュレーションの流れ
1.セット構築・キャスティング
2.キャラクタの配置
3.キャラクタの動きの設定
4.カメラの位置の設定
5.シミュレーション結果の出力
セット構築
図 10. ダイナミックシミュレーションの流れ
(5)考察・今後の発展等
マクロランゲージに関しては、現場の情報を元に抽象化と記述化を進めたものであり、コンテンツ制作
の標準的なフローを具体化したものといえる。図 11 に、マクロランゲージを中心においた映像制作データ
流通のイメージを示した。
また、シーンシミュレータに関しても、本プロジェクト進行中にいくつかの製品が発表され、これまでの絵
コンテに変わる技術と制作手段として注目を集め始めている。こうした、標準化が難しいとされる映像制作
工程において有効な基盤技術としていち早くこうした技術開発を行った。今後は、情報技術による制作の
効率化と質の向上に興味を持つ制作現場が増えることが予想されるため、こうした技術を広く広め、本研
究の成果を公開し、周知と利用促進に努める。
DPA
監修する人
(プロデューサ,ディレクタ)
(クライアント,スポンサ?)
作る人
(モデラー,アニメータ,コンポジッタなど)
(カメラマン&アシスタント)
①Local
DHTML的
Exchange用
シナリオ
データ
Ⓢ
シナリオ
エンジン
IPML
素材ストレージ
DPAの手元DB
(Web)へのホスト制
SCP
②暫定版
CGI_XML版
Web
Server
SQL
Server
Ⓓ
③最終版
DB版
DSS
IPMLサーバー
図 11. マクロランゲージを中心においた映像制作データ流通のイメージ
(6)関連特許
基本特許(当該課題の開始前に出願したもので、当該課題の基本となる技術を含む特許)について
該当なし
(7)研究成果の発表
(成果発表の概要)
1. 原著論文(査読付き)
0 報 (筆頭著者:0 報、共著者:0 報)
2. 上記論文以外による発表
国内誌:1 報、国外誌:0 報、書籍出版:0 冊
3. 口頭発表
招待講演:0 回、主催講演:1 回、応募講演:4 回
4. 特許出願
出願済み特許:0 件 (国内:15 件、国外:0 件)
5. 受賞件数
1件
1. 原著論文(査読付き)
【国内誌】
該当なし
【国外誌】
該当なし
2. 上記論文以外による発表
【国内誌】(国内英文誌を含む)
1) 三上浩司、金子満、中村太戯留、伊藤彰教 :「メディアコンテンツ制作におけるクリエイティブ技術の
統合化とその管理手法に関する研究」, 映像情報メディア学会誌 Vol.59 No.12,1761-1764,(2005)
【国外誌】
該当なし
3. 口頭発表
招待講演
該当なし
主催・応募講演
1) 三上浩司、金子満、中村太戯留、伊藤彰教 :「マクロランゲージを利用した制作工程の統合管理手
法に関する研究」,デジタルコンテンツシンポジウム 2005
2) 芸術科学会他伊藤彰教、三上浩司、中村太戯留、金子満 :「コンテンツ制作統合化における音楽・
音響情報記述に関する諸問題」, デジタルコンテンツシンポジウム 2005, 芸術科学会他
3) Koji Mikami, Mitsuru Kaneko:「Production management method for Digital Cinema using macro
language」,Cyberworld2004
4) Akinori Ito, Mitsuru Kaneko:「Planning Sound Section of Production Workflow」,Cyberworld2004
5) 三上浩司:「制作現場からの提言 2006−高画質時代のディジタルアニメ制作」,東京国際アニメフェア
2006 シンポジウム
4. 特許出願
該当なし
5. 受賞件数
1) 伊藤彰教、三上浩司、中村太戯留、金子満 :デジタルコンテンツシンポジウム船井賞「コンテンツ制
作統合化における音楽・音響情報記述に関する諸問題」, デジタルコンテンツシンポジウム 2005.5.27,
芸術科学会他
2.3 サブテーマ 3;デジタルシネマ情報の伝送蓄積に関する研究
(分担研究者名:村上 篤道、所属機関名:三菱電機株式会社)
(1)要旨
本研究では、デジタル映像(シネマ)情報を「高品質」な状態で、「安全確実」に伝送・蓄積する技術を
開発することを目的に、「デジタルシネマ情報のセキュア伝送技術」と「デジタルシネマ情報の階層符号化
技術」の 2 つの課題を取り上げた。
「デジタルシネマ情報のセキュア伝送技術」では、デジタル映像(シネマ)の映像信号自体に視覚的劣
化を加えずに著作権保護のための情報を付加することにより、デジタル映像(シネマ)情報のセキュアな
伝送・流通を実現することを目標として、上映された映像の再撮画像から著作権情報検出が可能な再撮
耐性電子透かし方式、不正コピーされたデジタル映像(シネマ)コンテンツからの流通経路情報の検出が
可能な著作権流通電子透かし方式の研究開発を行い、実証実験によりその有効性を確認した。また、電
子透かし導入を規格に採り入れている SMPTE において本研究開発の成果である再撮耐性電子透かし
のデモンストレーションを行い、電子透かしによるセキュアな映像伝送方式に関する標準化の促進に貢献
した。
「デジタルシネマ情報の階層符号化技術」では、シネマ情報の符号化として必要とされる「編集が容
易」であることと「高品質」であることの 2 つの要素を目標として、最新の国際標準動画符号化方式である
MPEG-4 AVC/H.264 におけるフレーム内符号化(イントラ符号化)の品質に対する性能検証、MPEG-4
AVC/H.264 符号化方式をベースにして高品質な色空間フォーマットに対する符号化処理を実現するた
めの方式拡張の検討を行った。これらの成果については国際学会等へ報告を行うとともに MPEG へ提案
を行い、高品質な色空間フォーマットへの方式拡張については、ISO/IEC 14496-10:2005/Amendment
2:2007 および ITU-T H.264(2005) Amendment 2(2007)として国際標準化され、2007 年中に最終投票を終
了し標準書が国際標準化団体 ISO/IEC および ITU-T から出版される見込みである。
また、これらの符号化方式をベースにして、高解像度ディスプレーを持つ家庭や、低解像度ディスプレ
ーで視聴されるモバイル環境に対して、符号化されたシネマ情報を伝送・配信することを想定して、
HDTV 解像度のものと VGA もしくは QVGA 解像度のコンテンツを容易に扱うことを実現する階層符号化
技術の研究開発を行い、関連学会への報告を行った。
(2)目標と目標に対する結果
1)目標:再生されている映像を市販カメラで再撮し、DVD やビデオ CD に不正コピーして販売する犯罪
に対する不正コピー流通経路追跡、蓄積コンテンツ破損部分検出、メタデータを用いた蓄積管
理、流通管理を目的として再撮対応電子透かし方式の検討・開発を行い、方式を確立するととも
にシミュレーションを実施、技術の有効性を確認する。
結果:「デジタルシネマ情報のセキュア伝送技術」の研究開発において、以下の成果があげられた。
デジタル映像(シネマ)に適用可能な再撮耐性電子透かし方式を開発した。
DCI(Digital Cinema Initiatives)の要求条件である「30 分の再撮ビデオから 35bit の情報検出」を
上回る性能となる「10 分の再撮ビデオから 64bit の情報検出」が可能な方式を開発し、標準シアタ
ーにて実証実験を行い、本方式の有効性を示した。
SMPTE において本方式のデモンストレーションを行い、電子透かしによるセキュアな伝送方式の
標準化促進に貢献した。
デジタル映像(シネマ)の不正コピーに適用可能な著作権流通電子透かし方式を開発し、ソフト
ウェアへ実装することにより提案手法の技術検証を行って実験により本方式の有効性を示した。
2)目標:高品質映像(4:4:4)の符号化方式を開発し、HDTV とモバイルのように、異なる表示解像度を持
つ再生環境に適応したデジタル映像(シネマ)を容易に提供可能とする階層型符号化技術を確
立する。
結果:「デジタルシネマ情報の階層符号化技術」の研究開発において、以下の成果があげられた。
(a) シネマ情報の名にふさわしい高品質な映像符号化を実現するために、色信号に対して変換や間引
き処理を必要としない色空間フォーマット 4:4:4 を対象とした符号化方式を検討・提案し、国際標準方
式として採用された。
1) ISO/IEC 14496-10 および ITU-T H.264 の拡張方式として 2005 年 7 月から 2007 年 1 月にかけて JVT
(Joint Video Team)において検討が行われ、当社方式が標準に採用された。2007 年中に最終国際
投票を終え、標準書が出版される予定である。
2) 符号化方式としては、実装・開発が比較的容易に実現可能であることと符号化性能とのバランスを念
頭に置き、既存の方式の中では符号化効率が最も高い AVC/H.264 方式をベースにして、親和性の
高い拡張方式を提案した。
3) 既存の AVC/H.264 復号ソフトウェアをベースにして 4:4:4 クロマフォーマットへの拡張を行い、容易に
実装が可能であることを実証した。
4) 符号化されたデータに対して容易な編集機能を可能とするために、フレーム内符号化のみで構成さ
れる「High 4:4:4 Intra Profile」と、より高い符号化性能が得られる「High 4:4:4 Predictive Profile」の策
定に技術貢献を行った。
5) 標準規格文書の作成、標準モデルソフトウェアの作成に技術貢献を行った。
b) HDTV 解像度の符号化データから VGA/QVGA 解像度の符号化データを取り出す方式について検
討した。
1) ソフトウェアへ実装することにより提案手法の技術検証を実施した。
2) 学会発表を行い、技術アピールを行った。
(3)研究方法
以下の 2 テーマに分けて研究を行った。
1)デジタルシネマ情報のセキュア伝送技術
本研究では、デジタル映像(シネマ)の映像信号自体に視覚的劣化を加えずに著作権保護のための
情報を付加することにより、デジタル映像(シネマ)情報のセキュアな伝送・流通を実現することを目標とし
て、上映された映像の再撮画像から著作権情報検出が可能な再撮耐性電子透かし方式、不正コピーさ
れたデジタル映像(シネマ)コンテンツからの流通経路情報の検出が可能な著作権流通電子透かし方式
の研究開発を行い、実証実験によりその有効性を確認した。また、SMPTE において本研究開発の成果
である再撮耐性電子透かしのデモンストレーションを行い、電子透かしによるセキュアな映像伝送方式に
関する標準化の促進に貢献した。
2)デジタルシネマ情報の階層符号化技術
本研究では、シネマ情報の符号化として必要とされる「編集が容易」であることと「高品質」であることの
2 つの要素を目標として、最新の国際標準動画符号化方式である MPEG-4 AVC/H.264 におけるフレーム
内符号化(イントラ符号化)の品質に対する性能検証、MPEG-4 AVC/H.264 符号化方式をベースにして
高品質なクロマフォーマットに対する符号化処理を実現するための方式拡張の検討を行った。
これらの成果については学会等へ報告を行うとともに MPEG へ提案を行い、高品質なクロマフォーマッ
トへの方式拡張については、ISO/IEC 14496-10:2005/Amendment 2:2007 および ITU-T H.264(2005)
Amendment 2(2007)として 2007 年春ごろには国際標準化される見込みである。また、これらの符号化方
式をベースにして、高解像度ディスプレーを持つ家庭や、低解像度ディスプレーで視聴されるモバイル環
境に対して、符号化されたシネマ情報を伝送・配信することを想定して、HDTV 解像度のものと VGA もし
くは QVGA 解像度のコンテンツを容易に扱うことを実現する階層符号化技術についての検討を行い、学
会への報告を行った。
(4)研究結果
1)デジタルシネマ情報のセキュア伝送技術
再撮耐性電子透かしの研究においては、画像の時間および空間の両方を利用することにより、再撮
や DVD 化などの処理を行っても電子透かし自体の減衰が少なく、電子透かし埋め込みによる視覚的劣
化が人間の目に認められない再撮耐性電子透かし方式を開発した。シアターにおける再撮実験により、
本方式では、再撮映像からの 64 ビットの埋め込み・検出が可能であることが実証された。また再撮後に
DVD 化された映像からも電子透かしが検出されるため、著作物ルーツのトレースが可能になり、シアター
において盗撮された映像を用いて製造される海賊版 DVD に対しても有効な手段である。
著作権流通電子透かしの研究においては、電子透かしの埋め込み強度を維持しつつ画質劣化を最
小限に抑えるために、時間方向のスペクトラム拡散を利用する電子透かし方式を開発した。デジタル映像
をダウンコンバートし、アナログビデオへの繰り返しコピーによってもコンテンツ流通経路の特定が可能な
著作権流通電子透かし方式の開発を行った。不正に流出したコンテンツの流通経路を特定することによ
り、不正コピーをした犯人を特定する有力な情報を提供することができるだけでなく、電子透かしの存在
そのものが不正コピー流出に対する抑止力となることが期待できる。
従来の電子透かしとしては、DCTやDFTなどの直交変換を用いて周波数領域に埋め込む方法や、画
像の時間方向のみを利用した方法が提案されているが、これらはいずれも時間および空間方向に画素
値を持つ動画像の特徴を十分に利用したものであるとはいえない。
本研究開発では、画像の時間および空間の両方を利用することにより、再撮やDVD化などの処理を行
っても電子透かし自体の減衰が少なく、電子透かし埋め込みによる視覚的劣化が人間の目に認められな
い再撮耐性電子透かし方式を開発した。
また、デジタル映像を蓄積・配信する上でコンテンツが不正にコピーされることも考えられる。この場合
には不正コピーされたデジタル映像はダウンサンプリングやデジタル-アナログ変換などの処理が行わ
れ、著作権で保護されるべきコンテンツが流出してしまう可能性がある。デジタル映像が不正流出した場
合にも著作権を保護するために、不正流出経路を追跡するための電子透かし方式を検討した。
不正流出映像には電子透かし検出が妨害されるような、圧縮処理、幾何学変換、アナログビデオなど
へのダビング処理などの様々な攻撃が施されている可能性がある。このような不正流出映像からも電子透
かしを抽出するためには、電子透かし信号を強く埋め込む必要がある。しかし、電子透かし信号を強く埋
め込むと視覚的劣化が人間の目に認められやすくなる。
そこで、電子透かしの埋め込み強度を維持しつつ画質劣化を最小限に抑えるために、時間方向のスペク
トラム拡散を利用する電子透かし方式を開発した。
次ページより詳細について述べる。
再撮耐性電子透かしについて
シアターで上映されるデジタル映像に対して電子透かしを埋め込んでも、盗撮を未然に防ぐことはでき
ない。しかしながら、上映時にスクリーンを撮影する再撮行為を経由しても残存する電子透かしによって、
シアターのID情報や上映時刻情報を埋め込むことにより、盗撮映像の流出をもたらしたシアターやその
時刻の特定が可能となる。デジタル映像の提供者は不正流出を防ぐために充分に警備が強化されるま
での期間、問題の発生したシアターへのコンテンツ提供を見合わせるなどの対処が可能となる。
モニタ、PC
いつどこで上映された
映像であるかを示す
情報を透かしで埋め込む
モニタ
パッケージメディア
購入者
再撮
犯人
インター
ネット
監視機関
透かし
検出装置
警備強化指示
映画配給停止
映画館特定
図 12. 再撮耐性電子透かしによる不正流出防止
なお、米国ではシアターで上映中の映画を録画する行為を違法とし、シアター内で録画可能な機器を
保有しているだけでは犯罪にならないが、上映中の映像を録画している疑いがある場合にはその観客を
拘束させる権利をシアター側に与える、「Family Entertainment and Copyright Act」と呼ぶ新法が2005年4
月にブッシュ大統領の署名により施行されるなど、シアターでの再撮による不正流出に対する法整備も進
められている。
このようなケースにおいて再撮耐性電子透かしは不正な録画をしていたことを証明する有力な証拠を
提供する有効な手段である。埋め込み原理であるが 再撮映像の特徴として中域から高域にかけての周
波数特性が再撮前に比べて減衰することが知られている。したがって、人の目に識別されない微弱な電
子透かし信号を中域から高域周波数成分に埋め込む手法では再撮行為によって映像データと共に電子
透かし自体の利得も減衰してしまい検出が困難になると考えられる。そこで本手法では時間・空間ともに
低域周波数成分に対して電子透かしの埋め込みを行うことによって、再撮後においても電子透かしが十
分検出可能となる利得を保持できるようにしている。
2)デジタルシネマ情報の階層符号化技術
デジタル映像(シネマ)の高い映像質感を再現する高品質な符号化処理を実現するため、4:4:4 クロマ
フォーマットでの符号化処理を検討した。ソースレベルでの信号劣化がない RGB 直接符号化について、
各色成分を独立に符号化する手法を検討して、MPEG/JVT 標準化に提案し AVC/H.264 拡張としての新
4:4:4 クロマフォーマット符号化規格に採用された。提案方式は、従来の AVC/H.264 ハイプロファイル符
号化方式と互換性の高い方式であるとともに色成分ごとの並列処理化が容易であり、HDTV 超の高精細
映像を高ビットレートで符号化する場合に動き検出や CABAC(Context-based Adaptive Binary Arithmetic
Coding)などの演算負荷の高い処理の負荷を分散・軽減することが可能である。
また、国際標準規格に準拠した方式での階層符号化方法として、符号化ストリーム埋め込みによる階
層符号化の開発を行った。符号化ストリーム埋め込み式階層符号化では、上位レイヤ・下位レイヤ共に国
際標準規格に準拠したビットストリーム構成で実現可能であるため、既に普及している映像装置や今後普
及する映像装置での利用が可能である。また、下位レイヤストリームの抽出においても、階層符号化ストリ
ームの一部を可変長復号するだけで、埋め込んだストリームを劣化なしに抽出可能である。そのため、符
号化データをそのまま伝送・受信することにより HDTV 解像度のコンテンツを視聴可能にするとともに、符
号化データに適当な処理を適用することにより容易に携帯映像端末などで受信し QVGA 解像度のコンテ
ンツを視聴することも可能となる。
本映像符号化方式は、主として家庭向けを想定しているため、ある程度の品質劣化を許容する代わり
に圧縮率をできるだけ大きく得られるようにし、コンパクトなメディアや実現可能な通信帯域を用いて、マ
ルチメディアコンテンツの伝送・流通を実現している。しかし、本研究が目指す「デジタル映像(シネマ)」
の名にふさわしい高品質な映像符号化には、そもそも「4:2:0クロマフォーマット」では十分な性能が得ら
れないものである。また昨今のプラズマ・液晶をはじめとする表示デバイスの高解像度化と高品質化、今
後見込まれる蓄積メディアや通信容量の大容量化を考えれば、今後高品質な映像符号化方式の需要は
大きく見込まれるものである。
これまで「4:2:2クロマフォーマット」や「4:4:4クロマフォーマット」を対象とした映像符号化方式としては、
表に掲げるようなものがあった。
表 1 既存の 4:2:2 クロマフォーマット符号化・4:4:4 クロマフォーマット符号化方式
符号化方式
クロマフォーマ
ビット幅
ビットレート
ット
最大解像
度
MPEG-2 4:2:2 プロファイル
4:2:2/4:2:0
8~11 ビット
300Mbps 以下
HDTV
MPEG-4 Studio Simple プロフ
4:4:4/4:2:2/4:2:0
12 ビット以下
1800Mbps 以下
HDTV
4:4:4/4:2:2/4:2:0
10 ビット以下
900Mbps 以下
HDTV
ァイル
MPEG-4 Studio Core プロファ
イル
MPEG-2の4:2:2プロファイルは、DVDやデジタル放送などで採用されているメインプロファイルの単純
な拡張方式ではあるが、4:4:4クロマフォーマットには対応していない。一方4:4:4クロマフォーマットには
対応しているMPEG-4の2つのプロファイルは、いずれも放送局内での利用などの業務用用途を想定した
特殊なものであり、携帯電話やIPストリーミングなどで利用されているMPEG-4との互換性はきわめて薄い
方式が採用されている。
我々は、デジタル映像(シネマ)情報の伝送・蓄積は、近い将来に一般家庭にも普及されるものと考え、
その符号化方式についても単に符号化性能が高いだけでは不十分であり、安価に実現が可能な方式が
必要であると考えた。そこで、現在国際標準方式の中では最高性能を誇っているAVC/H.264符号化方式
に対する拡張を検討した。また、デジタル映像(シネマ)情報は、編集段階ではフレーム単位の編集機能
が必要となるため、AVC/H.264符号化におけるフレーム内符号化(イントラ符号化)方式の性能検証につ
いても実施した。
次いで、解像度の異なる表示デバイスに対する符号化方式の検討を行った。
従来の映像符号化方式では、異なる解像度の符号化データを得るためには、それぞれの解像度で符
号化処理を行っていた。例えばHDTV解像度の映像についてはHDTV解像度で符号化処理をおこない、
QVGA解像度の映像についてはQVGA解像度で符号化処理を行うものである(このような形態はサイマ
ル符号化と呼ばれている)。そのため、符号化処理を必要な解像度の回数だけ行うものとなり、さらに符号
化後の圧縮データに対して編集処理が必要となった場合には、解像度の回数だけ編集処理が必要とな
るものであった。このような形態では、サーバーでデジタルコンテンツを管理する際に非常に煩雑な処理
が必要となる。
このような問題を解消するために、階層符号化(スケーラブル符号化)と呼ばれる方式が従来から検討
されてきており、例えばMPEG-2やMPEG-4の規格の中にもスケーラブル符号化方式は規定されている。
しかし、これまで長期にわたって研究・標準化が行われているスケーラブル符号化が実用されることはなく、
放送やIPストリーミングの世界ではサイマル符号化が採用されてきていた。この理由の一つとして、従来
のスケーラブル符号化は、解像度の小さいものを基準として解像度の高いものへ拡張する、という方式が
とられていたため、解像度の高いものを再生する際には煩雑な復号処理を必要としたり(必要なメモリ量
が大きくなったり、処理量がかなり大きくなったりする)、処理遅延が大きくなったりする、というデメリットが
挙げられる。
我々は、デジタル映像(シネマ)情報の伝送・蓄積のひとつの形態として、家庭向けの安定した通信路
を利用した高解像度・高品質(例えば4:4:4クロマフォーマット)な映像伝送と、モバイル端末向けのエラ
ーが発生する不安定な通信路を利用して低解像度・低品質(例えば4:2:0クロマフォーマット)な映像伝
送を実現する階層符号化方式を検討した。その際に、従来の階層符号化方式とは発想を逆転し、高解
像度のものを基準として、その中から低解像度の符号化データを取り出す、という手法について検討を行
った。
主な成果としては
「デジタルシネマ情報の階層符号化技術」の研究開発において、以下の成果があげられた。
*高品質な映像符号化方式として、4:4:4クロマフォーマットを対象とした方式を検討し、JVTに提案・
採用された。
*符号化方式として、容易に実装・開発が可能であることを念頭に置き、既存のAVC/h.264方式との親
和性の高い拡張方式を提案した。
*既存のAVC/H.264復号ソフトウェアをベースにして4:4:4クロマフォーマットへの拡張を行い、容易に
実装が可能であることを実証した
(5)考察・今後の発展等
電子透かしの技術に関しては、シアターでの盗撮映像に対する画像処理技術は年々進化しており、
再撮耐性電子透かし方式においてより耐性の強い手法の検討・開発を続けていく必要がある。盗撮映像
に対する画像処理技術と電子透かしによる埋め込み・検出技術はいたちごっこであり、常に進歩した方式
の開発が要求される。今後も現方式の改善、ならびに新方式の検討・開発を進める予定である。また、不
正コピーに対してはより多くの情報を埋め込むことにより、より広範に流通経路の特定や著作権情報の特
定が可能となる。今後も方式の改善を進める予定である。
符号化技術に関しては、色空間フォーマット 4:4:4 符号化の標準化作業の残件として、「コンフォーマンス
ストリーム」と「参照ソフトウェア」の作成があり、これらはいずれも 2008 年夏ごろに作業完了を目標として
進められてゆく。「コンフォーマンスストリーム」とは、復号器(ハードウェアやソフトウェアなど、どちらでもよ
い)の正常動作を確認するために使用される、標準に正しく準拠した圧縮データであり、「参照ソフトウェ
ア」は、標準の規格の全てを含んだソフトウェアの符号化器および復号器である。これらはいずれも
ISO/IEC および ITU-T の標準の一部となるものである。一方、この成立した色空間フォーマット 4:4:4 符号
化方式が広く利用されるためには、プロモーションならびに実機開発によるデモンストレーション等が必要
であり、今後も継続して検討・開発を進める予定である。
(6)関連特許
基本特許(当該課題の開始前に出願したもので、当該課題の基本となる技術を含む特許)について
該当なし
(7)研究成果の発表
(成果発表の概要)
1. 原著論文(査読付き)
0 報 (筆頭著者: 0 報、共著者: 0 報)
2. 上記論文以外による発表
国内誌:1 報、国外誌:0 報、書籍出版:0 冊
3. 口頭発表
招待講演:1 回、主催講演:0 回、応募講演:25 回
4. 特許出願
出願済み特許:7 件 (国内:7 件、国外:0 件)
5. 受賞件数
0件
1. 原著論文(査読付き)
【国内誌】
該当なし
【国外誌】
該当なし
2. 上記論文以外による発表
【国内誌】(国内英文誌を含む)
1) 「MPEG-4 AVC/H.264 4:4:4 高品質符号化技術」、三菱電機技報 2007 年 1 月号の「技術の進歩特集」
号、2007 年 1 月
【国外誌】
該当なし
3. 口頭発表
招待講演
1) 関口俊一、「AVC/H.264 と高品位映像アプリケーション」、情報科学技術フォーラム(FIT)チュートリア
ルセッション「ビジュアル最新動向 2006」、2006 年 9 月
主催・応募講演
1) 馬養浩一、伊藤浩、藤井亮介、鈴木光義、浅井光太郎、村上篤道、「再撮影画像から検出可能な電
子透かし方式開発のための基礎実験」、第 28 回情報理論とその応用シンポジウム (SITA2005、予稿
周 2/2
P479-482)、2005 年 11 月 20 日~23 日
2) 関口、井須、杉本、山田、浅井、「画像解像度に対する MPEG-4 AVC のイントラ符号化効率」、電
子情報通信学会 2005 年総合大会、2005 年 3 月
3) 「AVC/H.264 による 4:4:4 映像符号化方式に関する一検討」、FIT2005(第 4 回情報科学技術フォーラ
ム)J-071、2005 年 9 月
4) 井須、関口、杉本、山田、浅井「AVC/H.264 における 4:4:4 映像符号化方式改善に関する一検討」、
映像情報メディア学会冬季大会、2005 年 12 月
5) 井須、関口、山田、「AVC/H.264 における 4:4:4 映像符号化方式に関する一検討」、映像情報メディ
ア学会年次大会、2006 年 9 月
6) Sekiguchi, Isu, Sugimoto, Yamada, Asai, Murakami「On Separate Color-Plane Prediction for Direct
4:4:4 Video Coding」、ICIP(International Conference on Image Processing)、2006 年 10 月
7) 杉本、関口、山田、浅井「符号化情報埋め込みによる階層符号化に関する一検討」、PCSJ(Picture
Coding Symposium of JAPAN)、2006 年 11 月
8) Yamada, Sugimoto, Asai, Murakami,「Coding performance of intra-only coding in AVC High Profile」、
ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 M11295、2004 年 10 月
9) Asai, Yamada,「Intra coding tools for AVC High Profile」、ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 M11319、2004
年 10 月
10)Yamada, Sugimoto, Asai, Murakami,「Coding performances of intra-only MPEG coding and still picture
coding」、ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 M11583、2005 年 1 月
11)「Textual Description for AVC@BP」、ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 M11920、2005 年 4 月
12)Yamada, Sugimoto, Asai, Murakami,「Video Resolution Conversion on Intra Only AVC」、ISO/IEC
JTC1/SC29/WG11 M11921、2005 年 4 月
13)Sugimoto, Yamada, Asai, Murakami,「Contribution to VCTR Reference Software - Intra Only Decoder
for AVC Baseline Profile」、ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 M12242、2005 年 7 月
14)Sugimoto, Yamada, Asai, Murakami,「Proposed update of TD 3.0」、ISO/IEC JTC1/SC29/WG11
M12243、2005 年 7 月
15)Sugimoto, Yamada, Asai, Murakami,「Proposed update of TD 4.0」、ISO/IEC JTC1/SC29/WG11
M12513、2005 年 10 月
16)Sugimoto, Yamada, Asai, Murakami,「Contribution to VCTR Reference Software - Intra Only Decoder
for AVC High Profile」、ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 M12514、2005 年 10 月
17)Sugimoto, Yamada, Asai, Murakami,「Smaller Functional Units on Reconfigurable Video Coding」、
ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 M13721、2006 年 7 月
18)Sugimoto, Yamada, Asai, Murakami, 「 Block-based FUs for MPEG-4 AVC Profiles 」 、 ISO/IEC
JTC1/SC29/WG11 M14129、2007 年 1 月
19)Yamada, Sekiguchi, Isu, Asai, Murakami,「A Consideration on Intra Coding Efficiency of the High 4:4:4
Profile」、Joint Video Team (JVT) of ISO/IEC MPEG & ITU-T VCEG (ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 and
ITU-T SG16 Q.6) JVT-P083、2005 年 7 月
20)Sekiguchi, Isu, Yamada, Asai, Murakami,「An improved entropy coding for intra prediction modes」、
Joint Video Team (JVT) of ISO/IEC MPEG & ITU-T VCEG (ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 and ITU-T
SG16 Q.6) JVT-Q032、2005 年 10 月
21)Isu, Sekiguchi, Yamada, Asai, Murakami「Verification results on the existing advanced 4:4:4 coding
proposals」、Joint Video Team (JVT) of ISO/IEC MPEG & ITU-T VCEG (ISO/IEC JTC1/SC29/WG11
and ITU-T SG16 Q.6) JVT-Q033、2005 年 10 月
22)Sekiguchi, Isu, Yamada, Asai, Murakami,「Results of CE on separate prediction modes for 4:4:4 coding
(CE9) 」、Joint Video Team (JVT) of ISO/IEC MPEG & ITU-T VCEG (ISO/IEC JTC1/SC29/WG11
and ITU-T SG16 Q.6) JVT-R031、2006 年 1 月
23)Sekiguchi, Isu, Yamada, Asai, Murakami,「Results of Core Experiment on 4:4:4 Coding (CE5) 」、Joint
Video Team (JVT) of ISO/IEC MPEG & ITU-T VCEG (ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 and ITU-T SG16
Q.6) JVT-S014、2006 年 4 月
24)Sekiguchi, et al.「Unified Syntax for Advanced 4:4:4 Profiles」、Joint Video Team (JVT) of ISO/IEC
MPEG & ITU-T VCEG (ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 and ITU-T SG16 Q.6) JVT-T045、2006 年 7 月
25)Sekiguchi,「Proposed changes to the 4:4:4 FPDAM」、Joint Video Team (JVT) of ISO/IEC MPEG &
ITU-T VCEG (ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 and ITU-T SG16 Q.6) JVT-U136、2006 年 10 月
4. 特許出願
7 件(非公開)
5. 受賞件数
該当なし
2.4 サブテーマ 4;デジタルシネマ映像配信に係る DRM に関する研究
(分担研究者名:曽根原 登、所属機関名:国立情報学研究所)
(1)要旨
デジタル映像(シネマ)の権利メタデータ、作品や素材の流通メタデータ、利用許諾や加工編集許諾メ
タデータの体系化と、権利、流通、再利用メタデータ管理サービス、メタデータ連携サービスなどメタデー
タ制御方式を研究開発する。また、デジタル映像(シネマ)のコミュニティ共有や P2P(Peer to Peer)流通技
術、流通モデルを研究開発し、国内及び国際の映像教育機関で製作されたデジタル映像(シネマ)作品
のWebベースの流通チャネル方式について研究開発し、その実装を目指す。
(2)目標と目標に対する結果
デジタル映像(シネマ)の権利メタデータ、作品や素材の流通メタデータ、利用許諾や加工編集許諾メ
タデータの体系化と、権利、流通、再利用メタデータ管理サービス、メタデータ連携サービスなどメタデー
タ制御サービスを研究開発する。また、デジタル映像(シネマ)のコミュニティ共有や P2P(Peer to Peer) 流
通技術、流通モデルを研究開発し、国内及び国際の映像教育機関で製作されたデジタル映像(シネマ)
作品のWebベースの流通チャネルについて研究開発し、その知的財産権の確保、学術成果の公開を通
した社会実装を目指す。
1)デジタル映像(シネマ)流通のためのデジタルシネマメタデータ流通方式およびデジタルシネマメタ
データ標準を体系化し、メタデータID連携によるメタデータ・アライアンスを考案した。
2)デジタル映像(シネマ)流通のためのメタデータ流通ネットワークを考案し、P2Pコンテンツ流通の経
済学的分析と必要となるデジタル権利管理技術基盤を明らかにした。デジタル映像(シネマ)流通の
電子取引基盤の研究、Webによるデジタルシネマ販売のための開示度と料金の設定の研究を行い、
Web系のデジタル映像(シネマ)流通モデルを研究開発した。
3)デジタル映像(シネマ)視聴により形成される動的なコミュニティにおけるユーザ行動特性の分析、ネ
ットワークコミュニティ情報の空間属性など事後のメタデータ記述表現について研究し、コンテンツ流
通システムを開発した。日本映画学校、日大芸術学部、東京大学安田研究室のコンテンツの事前お
よび事後メタデータ設計原理、有効性検証を実施した。
4)上記研究開発成果を学術および産業界での活用を促進し、技術普及させるために、国内特許出願、
外国特許出願、国際会議、研究会、報道発表、市民講座、公開シンポジウムなどの社会貢献活動を
積極的に展開した。
(3)研究方法
デジタル映像(シネマ)の著作権メタデータ、作品や素材の流通メタデータ、利用許諾や加工編集許諾
メタデータの体系化は、単に技術と市場メカニズムの研究だけでは不十分である。社会の規範、商習慣
や公共政策、法制度との連携が不可欠であるため、工学のみならず法学と経済の側面から総合的学術
研究の手法を用いた。また、メタデータ標準では、流通前に定まるか否かによって、事前と事後のメタデ
ータを考案し、流通システムを開発して、日本映画学校、日大芸術学部、東京大学安田研究室のコンテ
ンツを用いた実証実験を実施し、有効性を確認するという実験的手法を用いた。
(4)研究結果
1)デジタル映像(シネマ)流通のためのデジタルシネマメタデータ流通方式およびデジタルシネマメタ
データ標準を体系化し、メタデータID連携によるメタデータ・アライアンスを考案した。
2)デジタル映像(シネマ)流通のためのメタデータ流通ネットワークを考案し、P2Pコンテンツ流通の経
済学的分析と必要となるデジタル権利管理技術基盤を明らかにした。デジタル映像(シネマ)流通の
電子取引基盤の研究、Webによるデジタルシネマ販売のための開示度と料金の設定の研究を行い、
Web系のデジタル映像(シネマ)流通モデルを研究開発した。
3)デジタル映像(シネマ)視聴により形成される動的なコミュニティにおけるユーザ行動特性の分析、ネ
ットワークコミュニティ情報の空間属性など事後のメタデータ記述表現について研究し、コンテンツ流
通システムを開発した。日本映画学校、日大芸術学部、東京大学安田研究室のコンテンツの事前お
よび事後メタデータ設計原理、有効性検証を実施した。
(5)考察・今後の発展等
デジタル映像(シネマ)流通のためのデジタルシネマメタデータ流通方式およびデジタルシネマメタデ
ータ標準を体系化したので、メタデータID連携による産業界(プロダクション、映像機器メーカ、配信・配
給事業者、著作権管理事業など)との産学連携によるメタデータ・アライアンスのデファクト標準に発展さ
せる。
(6)関連特許
基本特許(当該課題の開始前に出願したもので、当該課題の基本となる技術を含む特許)について
該当なし
(7)研究成果の発表
(成果発表の概要)
1. 原著論文(査読付き)
9 報 (筆頭著者:0 報、共著者:9 報)
2. 上記論文以外による発表
国内誌:0 報、国外誌:0 報、書籍出版:6 冊
3. 口頭発表
招待講演:9 回、主催講演:9 回、応募講演:40 回
4. 特許出願
出願済み特許:8 件 (国内:8 件、国外:0 件)
5. 受賞件数
2件
1. 原著論文(査読付き)
【国内誌】
1) 釜江尚彦,沼田秀穂,曽根原登,「ディジタルコンテンツ販売のための開示度と料金の設定」,電子
情報通信学会誌,条件付採録 2007
2) 廣田啓一,曽根原登,招待論文「コンテンツ流通における不正利用防止技術」,電子情報通信学会
誌, 2005
3) 廣田啓一,曽根原登,招待論文「デジタル映像流通に関わる著作権保護の今後の展望」,映像情報
メディア学会誌,2005
【国外誌】
1) Kanokwan Atchariyachanvanich , Hitoshi Okada and Noboru Sonehara , 「 What Keeps Online
Customers Repurchasing through the Internet?」, ACM SIGecom Exchanges,Vol. 6,No. 2, Pages
47-57,(2006.12).
2) Nakaizumi, T. and N. Sonehara ,「Reward-based Peer-to-Peer Digital Contents Distribution Model」,
‘Current Research in Information science and technologies Volume II’ (I International Conference on
Multidisciplinay Information Sciences and Technologies InSciT2006 October,25-28th 2006, Mérida,
Spain),pp. 514-519,(2006)
3) Matsumoto, M,N. Sonehara and H. Yasuda,「Metadata Distribution platform for digital Moving
Image Content 」 , ( I International Conference on Multidisciplinay Information Sciences and
Technologies InSciT2006 October,25-28th 2006,Mérida,Spain),pp.315-319,(2006)
4) Nakaizumi, T. and N. Sonehara,「Reward-based Peer-to-Peer Digital Cinema Distribution Model」,
2006 IEEE International Conference on Service Operations and Logistics and Informatics, Shanghai
June 20-23, 2006, Conference Proceedings, pp. 942-947,(2006)
5) Takao Nakamura, Atsushi Katayama, Masashi Yamamuro, Noboru Sonehara, 「Fast Watermark
Detection Scheme for Camera-captured Images on mobile phone Phones」, INTERNATIONAL
JOURNAL of PATTERN RECOGNITION AND ARTIFICIAL INTELLIGENCE,(2005.11)
6) Nakaizumi, T. and N. Sonehara,「A Study of Reward-based Peer-to-Peer Content Distribution
Models」 Centre of Digital Enterprise e-Commerce Seminar,Auckland University,New Zealand,
(March.2005)
2. 上記論文以外による発表
国内誌(国内英文誌を含む)
該当なし
【国外誌】
該当なし
3. 口頭発表
招待講演
1) 曽根原登、「情報化社会を考える~ネット社会の未来を探そう~」、渋谷区立恵比寿社会教育館
(2007 年 1 月~2007 年 3 月)
2) 曽根原登、「デジタルコンテンツ流通の諸課題と解決策」新社会システム総合研究所 デジタル&ブ
ロードキャスティング戦略特別セミナー(2007 年 1 月)
3) 曽根原登、「第次世代デジタルコンテンツとは?次世代デジタルコンテンツを支える基盤」(2006 年
12 月)
4) 曽根原登、「最先端のネットワークコンピューティング
“サイバー社会に求められる認証基盤-UPKI
最新動向“」、第12回 Japan Education & Research Conference(2006 年 12 月)
5) 曽根原登、「ニューロインフォマティクスIT時代の脳科学展開」理化学研究所,INCF日本ノード設立
記念講演会(2006 年 2 月)
6) 曽根原登、「アジア学術交流フォーラム 分野の壁を超えて」総合研究大学院大学シンポジウム
(2006 年 1 月)
7) 曽根原登、「デジタル時代のコンテンツの安全安心デジタル商取引の展開について」ウェアラブル環
境情報ネット推進機構(2005 年 9 月)
8) 曽根原登、「ネットジャーナリズムの可能性,デジタルコマースの展開」毎日新聞社,国際シンポジウ
ム(2005 年 6 月)
9) 曽根原登、「東大規模知識資源の未来」東京工業大学,COE シンポジウム(2005 年 3 月)
主催・応募講演
1) 曽根原登、「第次世代デジタルコンテンツとは?次世代デジタルコンテンツを支える基盤」第 2 回次
世代デジタルコンテンツ研究会
2) 曽根原登、「ユビキタス社会のガバナンス ユビキタス社会における情報信頼メカニズム」情報処理学
会(2006 年 11 月)
3) 曽根原登、「大学における情報セキュリティと情報信頼メカニズム,WEBページの信頼性に関する研
究の動向」安全安心インターネット推進協議会,第9回ビジネス部会安心メカニズム研究会(2006 年 9
月)
4) 曽根原登、「複雑化する情報と社会そしてガバナンス-ユビキタス社会における情報信頼メカニズムの
研究」、第一回社会技術ワークショップ(2006 年 6 月)
5) 曽根原登、「全国大学共同電子認証基盤(UPKI)構築における NII からの提案」、CSIシンポジウム
(2006 年 6 月)
6) 曽根原登、「大学間連携のための全国共同電子認証基盤UPKIについて」情報処理学会 ITRC第
19回研究会(2006 年 5 月)
7) 曽根原登、「知的情報の流通と学術・文化の発展に向けて」NII 国際情報学シンポジウム(2006 年 3
月)
8) 曽根原登、「大学電子認証基盤(UPKI)について」NII 学術情報ネットワーク連携本部 大学電子認
証基盤(UPKI)シンポジウム(2006 年 2 月)
9) 曽根原登、「DRLMについて」東京大学,デジタルシネマフェスティバル(2005 年 12 月)
10) 曽根原登、「映像著作権の処理デジタル時代の著作権流通技術デジタル創作権と権利管理の現状
と今後の展望」人間文化研究 情報・システム研究機構知的財産セミナー(2005 年 11 月)
11) 曽根原登、「情報通信技術政策」NII-ANU, ICTP 国際会議(2005 年 10 月)
12) 曽根原登、「サイバー・サイエンス・インフラ実現に向けた uPKI 構想の提案」連合大会講演会,東北
大学 第 27 回 全国共同利用情報基盤センター研究開発連合発表講演会(2005 年 10 月)
13) 曽根原登、「映画×漫画コンテンツビジネス最前線」NII オープンハウス,千代田 IT フォーラム(2005
年 6 月)
14) 曽根原登、「デジタル商取引:Digital Commerce」NII 情報学オープンフォーラム(2005 年 6 月)
15) 曽根原登、「コンテンツ流通とデジタル著作権管理技術」新産業研究所,情報社会インフラ問題研究
会(2005 年 5 月)
16) 曽根原登、「A メディア・セキュリティ,デジタル時代の著作権流通技術」Advanced Image Seminar
2005(2005 年 4 月)
17) 曽根原登、「デジタルコンテンツ流通研究について」日本工学アカデミー,デジタルコンテンツ流通研
究委員会,談話サロン(2005 年 2 月)
18) 曽根原登、「デジタル放送について」NII 市民講座(2005 年 1 月)
19) 曽根原登、「デジタル著作権の技術・法・経済」NII シンポジウム(2004 年)
20) 河村春雄,徳永幸生,曽根原 登,“DNS を用いた大規模分散コンテンツデータベースの構築に関
する提案 ”IN 研究会 、(2007.3)
21) 河村春雄,徳永幸生,曽根原 登,“デジタル証券を用いた二次著作物の制作を容易にできるコンテ
ンツ管理方法に関する提案” 情報処理学会全国大会、(2007.3)
22) 金子利佳,沼田秀穂,池田佳代,釜江尚彦,曽根原登,“デジタル文章流通における伏せ字付き文
章の認知特性”,電子情報通信学会 2月パターン認識・メディア理解研究会/ヒューマン情報処理
研究会,東京工業大学、(2007.2)
23) 子利佳,釜江尚彦,曽根原登 “デジタル画像流通におけるスクランブル画像とその認知特性”,第2
回デジタルコンテンツシンポジウム―デジタルコンテンツ関連学協会連合大会―,科学技術館(千代
田区)、(2006.6)
24) 金子利佳,釜江尚彦,曽根原登 “デジタル画像の半開示とその認知特性”,2006 年度画像電子学
会第 34 回年次大会,東邦大学、(2006.6)
25) 沼田秀穂,池田佳代,金子利佳,釜江尚彦,曽根原登, “テキスト半開示方法の提案”,2006 年度画
像電子学会第 34 回年次大会,東邦大学,2006.6 沼田秀穂,釜江尚彦,曽根原登,“デジタル権利ラ
イフサイクル管理の提案” ,2006 年度画像電子学会第 34 回年次大会,東邦大学、(2006.6)
26) 沼田秀穂,池田佳代,釜江尚彦,曽根原登,“ テキストインデキシング方法の提案” ,2006 年度画
像電子学会第 34 回年次大会,東邦大学、(2006.6)
27) 池田佳代,沼田秀穂,釜江尚彦,曽根原登,“ テキストインデキシング方法の性能評価” ,2006 年
度画像電子学会第 34 回年次大会,東邦大学,(2006.6)
28) 島岡政基,谷本茂明,片岡俊幸,峯尾真一,曽根原登,寺西裕一,飯田勝吉,岡部寿男,「大学間
連携のための全国共同電子認証基盤UPKI」,情報処理学会 ITRC第19回研究会@京都,「大学
間ネットワークの連携と今後の展開」,(2006.5)
29) 沼田秀穂,池田佳代,釜江尚彦,曽根原登,「文字列の出現頻度を利用した文書へのキーワード付
与と分類への応用」,電子情報通信学会,(2006.4)
30) 曽根原登,「新しいデジタル権利ライフサイクル管理の提案」,Cyber Security Management(2006.4)
31) 曽根原登,「デジタルコンテンツ保護技術と問題点」,Cyber Security Management、(2006.3)
32) 廣田啓一,曽根原登,「著作権保護の課題と不正コピー防止技術」,Cyber Security Management,
(2006.2)
33) スレスタ サンブ,小林亜樹,山岡克式,酒井善則,曽根原登,「NISHA: P2P 型 CDN 分散コンテンツ
検索グラフのトラフィック特性」、(2006.3)
34) 伊達拓紀,安川健太,馬場健一,山岡克式,曽根原登,「高機能エッジノードの連携によって受付制
御を実現する Edge-based TACCS の提案」,電子情報通信学会技術研究会、(2006.3)
35) 河村春雄,徳永幸生,曽根原登,「コモンズ・ドメインと商用ドメインを橋渡しするデジタル証券モデル
を用いたコンテンツの価格決定法の提案」,情処全国大会、(2006.3)
36) 伊達拓紀,安川健太,馬場健一,山岡克式,曽根原登,「高機能エッジノードの連携による網内ボト
ルネックに応じた TACCS の実現」,電子情報通信学会総合大会、(2006.3)
37) 高砂幸代,小林亜樹,山岡克式,酒井善則,曽根原登,「Web サーバー間での部分 Web グラフ同期
方式の提案」,DEWS2006、(2006.3)
38) Mika Matsumoto,Noboru Sonehara「Digital Cinema Gate: A Proposal for an Active Web-Based
Digital Archive」, 映像アーキヴィスト協会年次会議(AMIA Annual Conference 2005)ポスターセッ
ション、(2005.12)
39) 曽根原登,高橋寛幸,久保彰,峯尾真一,招待講演「メタデータ流通基盤」,電子情報通信学会 IN
研究会、(2005.11)
40) 若槻絵美,曽根原登,「クリエイティブ・コモンズ・パブリック・ライセンスを利用したシステムの法的諸
問題」,画像電子学会、(2005.6)
41) 杉山武史,木谷靖,藤井寛,釜江尚彦,曽根原登,「ディジタル映像の探索」画像電子学会、
(2005.6)
42) 中泉拓也,曽根原登,「デジタルシネマ流通のための Peer-to-Peer 利用モデル構築に向けて」,画像
電子学会、(2005.6)
43) 三神万里子,曽根原登,「情報信頼性評価の現状と諸問題」,画像電子学会、(2005.6)
44) 曽根原登,釜江尚彦,「コンテンツ流通のためのディジタルコンテンツ提示法」,画像電子学会,
(2005.6)
45) 杉山武史,藤井,木谷靖,曽根原登,「デジタルシネマ・メタデータ・ポータル Digital Cinema Gate の
検討」,画像電子学会、(2005.6)
46) 片山,曽根原,東倉,「カメラ付携帯電話機向け画像平面射影変換補正の検討」,画像電子学会,
(2005.6)
47) 河村,徳永,曽根原,「コモンズ時代におけるメタデータの記述方式の提案」,画像電子学会、
(2005.6)
48) 高橋寛幸,曽根原登,東倉洋一,「コンテンツ流通に適した評判システムの検討」,画像電子学会第
33 回年次大会、(2005.6)
49) 廣田啓一,谷口展郎,茂木一男,塩野入理,曽根原登,笠原正雄,「同時視聴型コンテンツの効率
的な配信方法に関する検討」,電子情報通信学会 OIS 研究会、(2005.3)
4. 特許出願
8 件(非公開)
5. 受賞件数
1) 東倉洋一、曽根原登:情報文化学会賞 「情報セキュリティと法制度の研究」,(2006)
2) 東京工業大学・NII:DWES 優秀論文賞「Web サーバー間での部分 Web グラフ同期方式の提案」
(2007)
2.5 サブテーマ5;デジタルシネマアーカイブ技術の研究開発・更新型 DRM の研究・国際標準化推進
(分担研究者名:安田 浩、所属機関名:東京大学)
(1)要旨
1)シナリオ入力デジタルシネマ制作技術
情報通信技術の急速な発展とともに情報発信が比較的容易となり、最近では、学校のクラスやクラブ活
動などの情報を Web ページで発信したり、ブログなどによって自分の日記などを発信している人も急激に
増加している。インターネットがない時代にはテレビ、ラジオ、新聞などで一部の人だけにしか行えなかっ
た「情報を発信できること」が誰でも行えるようになったことを考えると IT 技術の恩恵は大きいと言える。
しかしながら、これまでのところ発信できる情報は文字や写真に限られている。これは、一般にオリジナル
のムービーや音楽を制作するには特別な機材が必要で、また専門的な技能・知識も必要であるため、専
門家を除いては簡単に制作できないからである。
本プロジェクトでは誰もが簡単にムービーが制作できるシステムとして DMD と呼ぶ新しい技術を研究
開発した。DMD とは Digital Movie Director の略であり、本システムを用いると、難しい専門的な技能・知
識が一切なくても誰でも簡単にムービー制作を楽しむことができる。
完成作品はそのまま市場に流通するレベルではないにせよ、コミュニケーションレベル、すなわち、教育
現場や Web での公開などを行うことが可能な品質として出力される。このため、動画 Web の普及は勿論、
若年クリエータ育成を目的とした映像制作教育や映像系企業の入社試験への適用、また世代間交流(シ
ニアの作品を孫が見る、または、その逆もある)など、従来考えられなかった用途への波及も期待できる。
DMD は、シンク&スタビライズ型の制作工程で制作を進められる点が大きな特徴であり、1行ごとに主
語・述語・目的語・セリフから成る文章を入力してゆくと、自動的に映像が生成される。その後、必要に応
じてその基本映像をもとに演出などを付与してゆくことが可能であるため、映像制作の初級者にも簡単に
操作でき、また、上級者でも細かい設定が可能である。このため、映像制作の簡易化を目指した従来技
術と比較して、非常に高い表現力を有している。
DMD の基本構成を図 13 に示す。
図 13. DMD の基本構成
2)更新型 DRM に関する研究
暗号解読ツールや暗号鍵等、端末器の外部から DRM(Digital Rights Management)ツールを識別し、
自動ダウンロード取得する機能や、また、定期あるいは不定期に、セキュリティーのレベルの設定や外部
DRM ツールを更新する機能を持つ DRM システムを研究・開発する。具体的には、プロバイダが選択した
DRM ツ ー ル の 情 報 を 初 期 デ ー タ 記 述 子 で ヘ ッ ダ 部 の 所 定 の 場 所 に XML ( eXtensive Markup
Language)形式で記述し、ヘッダ部の IPMP(Intellectual Property Management & Protection)情報として
他の制御情報と共に記述し、必要なコンテンツ配信情報を組み合わせて、コンテンツに組み合わせて配
信する受信端末では、受信した管理情報付きコンテンツ情報のヘッダ部をパーサで構文解析し制御情
報とツールを得る。
受信端末では IPMP マネージャで得られた制御情報からコンテンツの暗号解読からフィルタリング制御
を行う。パーサによる送られてきた前記 IPMP 情報の解析結果で、受信端末に実装されていない IPMP ツ
ール情報を得た場合には IPMP マネージャは外部ネットワークから、受信端末へ DRM ツールのダウンロ
ードを指示する。開発した DRM システムの構成図を図 14 に示す。
図 14. DRM システムの構成
3)デジタルシネマの標準化推進に関わる技術・実証実験
(a)デジタルシネマの標準化に関わる研究
本プロジェクトは、これまでに例のない、デジタルシネマ映像(シネマ)の制作から上映に至る一貫した
規格の統一化を目指すものであり、これまでに、部分的要素に関する研究、規格化、制作ツール等が内
外の大学研究期間、映像関連企業等から発表、商品化が行われている。
プロジェクトの推進については、的確な情報を把握しながら進めることが重要である。これらの情報を網
羅して、技術マップを作成し、今回の事業における課題と対比しながら検討を進め、5 つのワーキンググ
ループ間で情報の交換を行うことにより、より高度な内容の研究が可能になることを期待した。
また、本事業の最終目的は、デジタル映像(シネマ)の制作から上映に至るプロセス全体の規格統一化
を行い、映像業界への定着をはかり、将来標準規格として運用を目指すものである。
このため、事業終了後の啓発活動も重要であるが、事業推進課程においても定着のための啓発活動
および利用者の課題を抽出し、研究内容に還元することも、各事業のレベルを向上に資することに努め
た。
(b)実証実験
本プロジェクトのコンセプトは「映像制作者が意図した映像を正しく画面上に再現する」ことであるが、な
かんずく、色空間の補正の重要性を訴求するために、簡易型カラーコレクターを開発し、公開の場で実
証実験を実施した。
実験は、人間の感性による、いわゆる官能検査実験で、この中の SD 法(Semantic Differential 法)を用
いて行った。
映像情報に含まれる「色」は、どのような色空間でどのような表現がされるか、表現される色の範囲はど
のようなものかを明確にすることが、映像における色を考える上で重要なことである。
デジタル映像(シネマ)において重要なことは、いったんデジタル信号に変換された情報を、以下に誤
り無く伝達し、上映するかである。カラー映像の場合、色も情報の一種であり、オリジナルの色を見ること
が出来ない条件下で、制作者が表現したいと望んだ色をいかに上映側で再現するかが課題となる。
従来のフィルムによるシネマは、いわゆるクローズドシステムのようなもので、異なった映像機器の間で
のデータ(情報)のやりとりを考慮する必要が無く、処理の内容も確立していた。
デジタル映像(シネマ)においては、使用されるデジタル機器が、多種多様であり、映像が処理・通過
する各工程でどのようなカラー画像処理がなされているかの情報を何らかの形で明らかにすることが重要
なものとなってきた。これらのデータ(情報)の受け渡しをカラーマネージメントと呼んでいる。
本研究においては、任意のデジタル機器を組み合わせて映像の上映を行った場合でも、原画像に可
能な限り近づけるために、新しく開発した簡易型のカラーコレクターを用いて補正を行い、この補正が視
聴者の感性にどの程度反応するかを実験によって実証を行うものである。
(2)目標と目標に対する結果
1)シナリオ入力デジタルシネマ制作技術
映像制作の初級者でも短時間で簡単に映像制作を行える技術の研究開発に関する試みは古くより
様々な研究者によって行われている。国内では TVML[1]、TV4U[2]、CTSL[3]、ジオラマエンジン[4]等
が、海外では Alice[5]等が広く知られているが、これらはプログラム言語型であり、はじめにその言語の習
得が必要となるため、残念ながら初級者向きとは言えない。また、ある程度システムに慣れないと、制作意
図を反映した映像を出力することは難しいのが現実である。一方、TV4U はワープロ感覚でテキストを入
力するだけで映像制作が楽しめる点で画期的ではあるが、演出や舞台設定を利用者自身が変更を加え
ることは困難であり、例えば、キャラクターの立ち位置、カメラの撮影位置等を自由に指定することはでき
ず、あらかじめ用意されたシーン内での映像しか制作できないという点において、映像表現の幅に著しく
制限がある。
このように、既存技術では、その習得が難しかったり、表現力が著しく不十分であるため、その解決は
不可欠である。
またそれと同時に、これらの既存技術は前述の TV4U を除きいずれも元来アナログ(実世界)で行って
いる制作工程をそのままデジタル化しているために映像制作に関して特別な専門知識を有しない初級者
が簡単に映像制作を行うことができない、という点にも注目すべきである。
一般に映像を制作するにあたっては、いわゆるウォーターフォール型設計、すなわち、まずシナリオを
作って、それを絵コンテにしながらカット割を考え、続いてカメラ配置などを含めた舞台設定を行い、その
後でようやく撮影に入る….と言った工程を取ることが一般的であるが、上述した既存システムでは、まさに
このやり方を踏襲していることになる。
一方、映像制作の専門知識を持たない初級者が容易に制作できるようにしたいならば、この制作工程
そのものから見直す必要があり、一般のユーザは、シナリオを書いたこともなければ絵コンテを描いたこと
もない。ましては舞台設計などを考えたこともない。特に頭の中だけでカット割を考えたり、カメラ配置、照
明配置などを考えることは一般のユーザにとって極めて難解であり、この部分を十分に支援することが必
要だからである。
本提案による DMD はまさにこれを実現するためのソフトウェアである。すなわち、シナリオを書きながら
即座にテストレンダリングを行い、この結果を見ることによって演出を考えたり、あるいは、次行以降のシナ
リオ制作のアイディアが想起されてゆく、といういわばシンク&スタビライズ的な工程によって映像制作を
進めてゆくことを大きな特徴としており、後述のように数十回にわたる実証実験において、講習会に参加
したメンバーの大半から、「満足した」という意見が得られ、その有効性を実証している。
2)更新型 DRM に関する研究
目標:デジタルシネマのファイルをセキュア配信する目的で、コンテンツデータファイルに直結して、機能
する更新型の DRM を開発する。セキュアレベルを高める目的で配信側で制御可能であり、自動的に
DRM ツールの更新が可能な方式を開発、検証実験を通じてその有用性を確認する。具体的な DRM シ
ステムの構成は、互換性や相互運用性を考慮して、ISO/IEC 21000-4 の規格である、IPMP(Intellectual
Property Management & Control)をプラットホームに採用し、その上に開発したシステムを実装する。最終
的には、複合システムの完成を目指し、システム構成を複合標準体系 MPEG-MAF(Multimeduia
Application Format)として、国際標準化を目指す。
結果:提案 DCI を含めた MPEG/DMP 標準仕様の検証用ソフトウェアを開発した。
開発した主な IPMP 機能は以下の通りである。
*ユースケースの策定:期間限定視聴と永久視聴等の複数条件の設定が可能となった。
*IPMP 実装:暗号化ツールの設定では AES と DES 等の複数種類に設定が可能となった。
*リモートの IPMP ツール:端末装置の外部からの自動取得が可能な受信システム端末を実現した。
*国際標準 DMP のコンテンツ記述仕様 DCI(DMP Content Identification) に IPMP DRM 標準を組み
込み、MPEG 標準ツールの複合化組み合わせ標準案(MAF)の策定を行い、標準化提案をした。
*IPMP 関連情報は、MPEG21 標準の記述形式に準拠し、国際コンテンツ流通互換の基礎技術を確立
した。構築したプラットホーム構成は、MPEG 新複合標準体系である MAF(Multimedia Application
Format)に提案し、2007 年 2 月現在、MPEG で審議中である。
3)デジタルシネマの標準化推進に関わる技術
(a)デジタルシネマの標準化に関わる研究
本研究は、デジタル映像(シネマ)関連の機関、関係者を訪問して、主として聞き取り調査を通じてその
実態を把握することが表向きの目的であるが、同時に、関係者と直接面談することにより、口頭で本プロ
ジェクトの趣旨の説明を行い、その反応をうかがうことも目的と考えられる。
実際には、面談を行うことにより、その後再度訪問し懇談できたり、メールで連絡を取り合ったりして、本プ
ロジェクトの理解者になってもらった例も少なくない。また、データベースの検索方法によって、内外にお
けるデジタルシネマの関係者の相関を把握したりすることも可能になった。
調査の件数は、本研究グループが行ったものに、他のサブテーマグループから得たデータも加えて
135 件に上ったが、細かなプレゼンテーションや、講義等を加えれば、この倍になるものと思われる。
(b)実証実験
本研究は、任意のデジタル映像機器の組み合わせによって生ずるカラーバランスの崩れを、新しく開
発した簡易型のカラーコレクターによって補正を行い、その効果を感性評価によって実証するものである。
カラーコレクターは、簡易型であるにもかかわらず、ほぼ満足すべき色補正機能を発揮し、これを実証実
験で確認できた。
本研究は、学術面よりも一般への実用化を主体に行ったが、興行館以外の映像上映会等に積極的に
持ち込み、その効果の確認と、デジタルシネマにおける色補正の重要性を訴求することができた。
映像の感性評価に関しても、所定の評価プログラム、評価用語、評価映像、解析方法等一定の手法を
完成し、活用できるようになった。
(3)研究方法
1)シナリオ入力デジタルシネマ制作技術
DMD の動作原理は、DMD の基本画面でシナリオならびにその関連情報を入力すると、シナリオファイ
ル、舞台設定ファイル、マクロ設定ファイル、リソース設定ファイル、読み方辞書編集ファイルの 5 つのファ
イルとして保存される。
本研究では、これらのファイルを読み込んで、DMD スクリプトを生成するモジュールである DMD メーカ
ーを開発し、実際に一般に供試して、コンテンツを制作することにより、効果の実証を行う。
具体的には、DMD の基本入力画面において、ここにシナリオを S(主語)、V(述語)、O(目的語)を選
択し、さらに台詞を記述すると、映像が自動的に生成される。また、台詞欄に書かれた台詞内容はキャプ
ションとして映像下段に表示されるとともに音声合成技術によって自動的に読み上げられる。またこの時
にキャラクターの立ち位置は自動設定され、カメラワーク、BGM 等に関してもあらかじめ設定されたメタデ
ータ情報を用いて自動設定される。
2)更新型 DRM に関する研究
MPEG-2 および MPEG-21IPMP の規格に従った更新型 DRM システムの構築を構築する。 プロバイダ
はビジネスモデルにより、多様な DRM ツールの中から任意のツールを選択し、その情報を IPMP 記述子に
より初期オブジェクト情報としてヘッダ部に記述し、コンテンツと共に多重化してストリーム或はファイル伝送
を行う。
コンテンツ複合情報として受信した受信端末は、受信部のパーサを開発し、内容を解析し、受信端末の
実装状態と比較する。受信した DRM ツールが存在すれば、そのまま復号化ステップに入り、制御ポイント
へ制御情報を伝達する。
ヘッダ部のパーサが解読した DRM ツール情報の検証で DRM ツールが端末実装されていない場合は、
IPMP マネージャが外部 DRM ツール取得機能をプロンプトして、実装されているインターフェースを通じて
Web の機能を活性化させ、ユーザ端末に DRM ツールをダウンロードする。ダウンロードが完了したら、
IPMP マネージャは、端末実装を実行して、IPMP マネージャは暗号化ツールの解読動作状態を確立す
る。
これによって、端末は複数の重たい暗号化ツールの実装をすることなしに、複数プロバイダからのコンテ
ンツ受信解読が可能になり、自動更新が可能となって、セキュリティ上の柔軟な提供が可能な高度コンテン
ツ受信システムを実現するシステムを構築する。
3)デジタルシネマの標準化推進に関わる技術
(a)デジタルシネマの標準化に関わる研究
調査は斯界の専門家を中心として、国内、米国、欧州、アジアの 4 カ所の拠点、開催催事等を訪問お
よび現地エージェント等と密接な連携を取りながら実施する。特に、普及の目的を効率よく達成するため
に、人対人の繋がりを重視し、調査完了後も引き続き接触できるよう心がける。
調査方法は、あらかじめデジタルシネマの制作から上映までの各技術項目に関して技術検討内容、レ
ベル、共通仕様化、標準化に対する考え方等質問事項を準備し、聞き取り調査を中心に行う。調査の要
点は以下のようなものである。
* 映像制作に関する技術の標準化状況と考え方
* 映像制作のための開発ツール(商品化も含む)とその特徴
* 映像機器関連の仕様の共通化、標準化と考え方
* 映像関連先進技術の動向
* デジタルシネマに関する知的所有権の調査
これらの調査結果を、1 件 1 シートとして、3 カテゴリーについてデータベースとして蓄積し、標準化マップ
としてまとめることとした。その概要は以下のとおりである。
*区分:活動の種類として次のいずれかの項目を記入。
訴求;催事開催、学会、講演会での発表
展博;各種展博等における調査
拠点;デジタル映像(シネマ)に関連した拠点の調査
*対象:調査を行った、学会・催事名、拠点名を記入
*地域:上記が開催された開催地(都市名)、調査した地域を記入
*相手:上記の主催者、代表者、組織を記入
*時期:上記の開催期間、調査時期を記入
*調査者:調査を行った担当者を記入
*主な内容:調査を行う目的と主な調査事項を記入
*全体の印象:調査を行った結果の印象を記入
*主な成果:調査結果で本プロジェクトに資する内容を記入
*面会した主要関係者:面会して、本プロジェクトの内容、趣旨等の説明を行った場合、相手の所属と姓
名を記入。
(b)実証実験
本研究は、映像上映の際、色の補正を行うカラーコレクターの開発とこれを用いた官能検査法による実
証実験よりなる。
カラーコレクタの概念は、映像媒体からの送り出し機器とプロジェクタ等の上映機器の間に挿入し、映像
を構成する RGB のルックアップテーブル(以下 LUT と称す)を任意にコントロールし、映像の全体の色の
補正を行うものである。今回開発の機器には、LUT の設定が 8 種類プリセットできるようにしてある。これは、
あらかじめ具体的な使用機器が決められている場合、そのポジションに切り替えることにより、デジタル機
器を用いた映像上映会の現場においても、専門の調整技術者を派遣しなくても、相当レベルの映像が上
映できることになる。もちろん、現場の状況や、上映コンテンツのカラーバランスが適当でない場合もある
から、その場合は、内蔵の USB コネクタを介して、PC で任意に LUT の調整ができるようにしてある。
実証実験は、官能検査法により、あらかじめ準備したテスト画像を 2 種類ずつ上映し、この差を被験者
(パネル)が自分の感性で判断を行う方式を採用した。
官能検査法とは人間の感覚器官(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)の全部または一部分を使って行う検査
方法のことである。
人間は感情の動物と言われるように、これらの評価には感覚生理や感覚心理の要素が入り込んでくる
ため、物理的な測定とは異なり、刺激に対する応答にいろいろな要素(雑音)が入る可能性が高い。また、
測定者による差や、同一人間でも緊張、倦怠、疲労、訓練習熟度、環境などの影響を受けることも多い。
しかしながら、多種多様の要素が数多く含まれる、映像(映画)の場合、単なる物理データでは判定でき
ない要素が多々あり、人間の感性による映像評価法の確立は、喫緊の問題であるといえる。
本研究においては、これらの中から、映像評価に適すると考えられる SD 法を選んだ。
本法式は、すべてのものの印象やイメージを評価することのできる手法である。
ある対象物に対して、人はどのような印象を受けるのか、その受けた印象を抽出することが可能となる。
SD法では、例えば物体のデザイン評価のような形のあるもののほか、「雰囲気」などの実態のないもの
についても評価することができる。また、視覚だけでなく、味覚、聴覚、触覚等から得られる感覚を評価す
ることもできる。
具体的な方法として、映像の評価を行う場合、「明るい-暗い」、「重い-軽い」といった形容詞の対語
を両端に置く評定尺度を多数準備する。次に評価対象画像受ける印象を、それらの評定尺度上で表す。
最後に各画像に対して得られる評点の相関を基にデータの収集を図り、心理的要因を得る。本実験で用
いられる評価語とは、「はっきりした」と「ぼやけた」のように、対極的な言葉を一組とした言葉の対である。
評価語の選択は、数回の予備実験及び岡久の論文等を参考にして 30 組を選んだ。
これらの評価語を用いたアンケート用紙をあらかじめ被験者に配布して、実験のために制作した短い
映像を供試して、その印象をアンケート項目の中から選んで記入してもらう。評価尺度は各項目 7 段階に
分け、「非常に」、「かなり」、「少し」、「中間」、「少し」、「かなり」、「非常に」とレベルを対照的に配してい
る。
(4)研究結果
1)シナリオ入力デジタルシネマ制作技術
若年クリエータの育成ならびに DMD システムの実証実験を目的として、2005 年 10 月より毎月 2 回程
度の頻度でのべ 800 名の受講生を対象にムービー塾を開催している(http://www.movie-school.org/)。
このムービー塾では、10~20 名程度の受講生(高校生を中心に、大学生、一般、シニアまで)に対し、
2 時間程度の講義と2時間程度の自由制作実習、さらには1時間程度の上映会と表彰式を行っている。
2 時間程度の講義の中身はそのほとんどが DMD の操作に慣れるための演習であり、映像制作に関する
専門知識は敢えて教えないようにしている。
2)更新型 DRM に関する研究
上記システムの構築の結果、更新型 DRM システムは、ユーザにセキュリティ上の柔軟性を提供できる
ことが検証でき、この実験結果に基づいて、デジタルシネマ MAF というコンテンツ流通のためのプロファ
イルを構築し、MPEG での標準化を推進することができた。
3)デジタルシネマの標準化推進に関わる技術
(a) デジタルシネマの標準化に関わる研究
調査結果を各サブテーマにも求め、まとめたものが下記のとおりである。
この結果を、データベースとしてまとめ、プロジェクトを取り巻く環境を理解しながら研究活動を進めるた
めの情報として、各研究グループに提供したり、調査の段階で接触した相手担当者と研究の進捗に従っ
て、連絡を取り、内容の訴求に努めた。
表 2. 標準化調査件数まとめ
区
分
平成 16 年度
平成 17 年度
平成 18 年度
計
訴
求
19
37
47
103
展
博
7
9
5
21
拠
点
6
2
3
11
32
48
55
135
計
国際標準化提案の準備
サブテーマ 1 から 5 までの研究成果を一つの提案としてまとめ、将来国際標準として提案を行うための
準備をおこなった。
本提案の趣旨は、パンフレット「DECSDP Criteria for Image Creators」としてまとめ、研究期間中に開催
された催事、学会、講演会等、あらゆる機会を捉えて配布し、訴求を行うよう努めた。以下にその概要を述
べる。
1) 提案に関する基本的考え方
*デジタル映像(シネマ)の「ものさし」づくり
デジタル映像(シネマ)の制作から上映までの工程には、各種各様の機器が開発され、市場に導入さ
れている。それらの性能も年を追う毎に最新の技術が駆使され、映像の品質向上に寄与している。しかし
ながら、これらの機器を任意に組み合わせて使用した場合、必ずしも最良の状態で映像が表現できるわ
けではない。つまり、「映像制作者の意図した映像が、正しく上映できない」ということになる。
これは、デジタル映像(シネマ)を含むデジタル映像において、映像関連機器および映像情報の伝達
方式に統一した規格が存在しないことに原因があると言える。
従来のフィルム映像の技術は、フィルムはコダック社の規格に統一され、使用機器も殆ど限定されるこ
とから、制作者にとっても制作時、その最終仕上がりをイメージしながら仕事が進められることと顕著な差
がある。フィルム映像とデジタル映像を比較して、いまだ前者に一日の長があるという話をよく聞くが、確
かにそうした面も若干残っているが、大半はこうした統一規格が無いことが、画質に及んでいると言って良
い。
本プロジェクトでは、デジタル映像の制作から上映までのプロセスに、各工程における情報、つまり「メタ
データ」を付与して、高い品質の映像に仕上げる為の規格作り、いわばデジタル映像(シネマ)の「ものさ
し」づくりを行う為の基礎研究を推進した。
デジタル映像(シネマ)の規格に関する研究は、内外の研究機関でいくつか進められているが、本プロ
ジェクトでは HD2K の映像を対象に研究を行ったが、今回の提案の考え方は、HD2K に限定したもので
はなく、たとえば 4K、8K といった超高精細映像から、2K以下の映像にまで適用できるものである。
本プロジェクトの研究成果は、前述のとおりであるが、この中で、とりわけ映像の品質を左右する要素と
して、メタデータ体系の整理と統一色空間の制御に重点を置いて進めた。
*デジタル映像(シネマ)のプロセスについて
デジタル映像(シネマ)の制作から上映までのプロセスは概ね、コンテンツ制作、編集・加工、伝送・蓄
積、上映・表示の 4 つに区分されるが、これらの各工程の映像に影響を与える要素の情報をデータとして
付与しておけば、制作時に意図された映像の情報が、最終の上映・表示工程まで伝達されて、正しい映
像が再現できるであろうというのが、本プロジェクトの目指すところである。
この映像情報データ、つまりメタデータの種類とその特性を把握し、規格体系化することによってあらゆ
るデジタル映像にとって、これまで任意の機器の組み合わせでは得られなかった、正しい映像が常に得
られることになる。
図 15 にこれらの概念と、各工程におけるメタデータを構成する要素を示す。本プロジェクトにおいては、
これらの共通仕様をデジタル映像(シネマ)の標準規格として提案するものである。
図 15 デジタル映像(シネマ)のプロセスと構成メタデータ
2)メタデータ体系
*はじめに
ブロードバンド・ネットワークとコンピュータ、デジタル家電からなるデジタルインフラが急速に整備され
ている。通信放送融合という言葉が示すように、デジタルインフラを活用したデジタルコンテンツ関連ビジ
ネスがいよいよ活発化しようとし、デジタルシネマもその例外ではない。
シネマのデジタル化によって、極めて低コストで、高品質映像が品質劣化なく制作できる。従って、これ
まで限られた業界においてのみ進められてきた映画ビジネスが、誰でも簡単にできるようになる。
デジタルシネマの制作から上映までの工程において、以下に示す新たな技術課題を明らかにした。
このため、制作者の意図した映像が正しくスクリーン上に上映できるために必要となる新たなデータの形
式、表現、制御、相互運用標準を定める必要が生じている。
そのようなデジタル世界でのサービス制御情報としてのデータをメタデータと呼び、これらのサービスを
実現するためのメタデータ要求条件を以下に示す。
・映像の制作時の情報を、途中いかなる操作が行われても上映まで正しく伝え、映像の品質を保つため
のデータが必要である(撮像・上映環境メタデータ)。
・物理媒体に固定したコンテンツはその存在が明らかである。デジタルコンテンツがどこにあるかを探す手
掛かりとなるデータが必要である(探索メタデータ)。
・物理媒体に記されている著者や発行者、発行年月日、定価、ISBN情報などのデータがデジタルコンテ
ンツにおいても必要である。誰がいつ制作し発行しているかなど、誰でも分かるデータが必要である(権
利メタデータ)。
・インターネット環境を用いるとデジタルコンテンツの分散協調制作が容易となる。デジタルコンテンツの
分散協調制作での工程管理を行うデータが必要である(工程メタデータ)。
・書籍の表紙やパッケージに印刷された概要のように、デジタルコンテンツには、どのような内容が表現さ
れているのか一目で分かる概要データが必要である(概要メタデータ)。
・テレビの受信料金や広告宣伝費とのバンドル販売、映画館であれば入館チケット購入のように、デジタ
ルコンテンツはどうすれば鑑賞や購入や再利用ができるかを示すデータが必要である(流通メタデー
タ)。
・テレビで放映、レンタルビデオやセルビデオのように店舗で購入、あるいは映画館で視聴というように、
どうのようにして消費者の手元にデジタルコンテンツが届けられるかを示すデータが必要である(配信メ
タデータ)。
・物理的媒体を保存するのと同じように、デジタルコンテンツの保管や保存では、データの記述方法、読
み出し方法を示すデータが必要である(保管メタデータ)。
・物流では、主として製造、広告宣伝、流通、再生産コストから価格付けが決まっていた。デジタルコンテ
ンツの価格決定要因である、評判、口コミ、格付け、人気度などの評価データが必要である(評価メタデ
ータ)。
*メタデータによる映像品質管理サービス
映像品質管理サービスにおいて、主として活用される、映像制作時の情報を途中いかなる操作が行わ
れても上映まで正しく伝えるための、撮像・上映環境メタデータや、データの記述方法、読み出し方法を
示すデータである保管メタデータに関して、デジタルシネマコンテンツが制作され、そのコンテンツが上映
されるまでの工程における各種問題について考えることにする。
現在、デジタルコンテンツの表示については、液晶ディスプレー、携帯電話、プラズマディスプレー、液
晶プロジェクタなど、様々な機器にて行われている。
しかしながら、表示されるコンテンツの色品質については、必ずしもコンテンツ制作者の意図に適った
ものにはなっていない。
照明、ディスプレーの表示特性、プロジェクタの投影面の状態など、様々な要因によって、本来のコン
テもンツの色とは違った画像、映像を見ざるを得ない状況になっている。
色管理ファイル等の研究は従来から行われており、一部のプロユーザには利用されているが、一般ユ
ーザにとってはまだまだ縁遠い。また、これらは照明などの環境要因に対応したものとはなっていない。
これは、このような問題点に鑑み、本プロジェクトではデジタルシネマコンテンツの制作から上映間での
メタデータについて系統的に検討することにした。
また、コンテンツの上映、つまり、デジタルコンテンツの再現に関するメタデータを利用して、上映される
映像コンテンツの品質を管理するサービスを提案する。
図 16 に示すように、本プロジェクトで提案する映像品質管理システムを用いることにより、コンテンツの
再現環境に応じて、制作されたコンテンツが、本来有する色品質で再現されることになる。
映像品質管理システム
ModelA
DLP
ModelB
PDP
ModelA
LCD
CONTENT
図 16. 映像品質管理システムによる補正後のイメージ
*DECSDPのメタデータ体系
デジタル映像(シネマ)の制作から上映までに付与されるメタデータは、その数と種類が多ければ多い
ほど精度が向上し、情報が確実に伝搬することができる反面、扱いが難しくなる。
メタデータの記述様式は、これまで数多くの提案がなされ、コンテンツの特性メタデータでは MPEG7、
権利管理等メタデータでは cIDF、J/META 等がよく知られている。
デジタル映像(シネマ)関連では、全工程に関してではないが、DCI(SMPTE)が提案、審議を行ってい
るので、これに準拠することとし、DECSDP が検討した新たな項目に関してのみ追加することとした。
記述様式は、DMS-1 が採用している MXF 方式を採った。
3)色管理ツールの開発とその効果
*色空間管理の概念
映像の制作から上映までのプロセスにおいて、制作者が意図した映像をスクリーン上に正しく再現する
上で、もっとも重要な要素となるのが、色再現の問題である。
図 17 にその概念を示す。
同一のコンテンツを各種上映機器で上映した場合、使用機器の種類・特性、各製造メーカーのカラー
マネージメントの相違、更に、機器の使用時間、特に上映用プロジェクタの光源ランプの光量の経時変化
も大きな影響を及ぼすことが知られている。
今回制作した標準映像 CoSME を含め、上映する映像に色再現情報としてのメタデータを付与し、これ
を色忠実再現のための変換アルゴリズムを格納した PC 等を用いて色変換機器(カラーコレクタ)を制御す
ることにより、原画とほぼ等しい上映を行うものである。
図 17. 色空間管理の概念
*標準映像を活用した色空間管理法
・測定・色補正システムの考え方
デジタルで映画を制作する場合、制作者が自分の意図した映像に仕上がったかを確認するのは、マス
ターモニターを用いて行う。
現行のHD用マスターモニターは、Rec.709規格に準拠した色再現を行っている。
Rec.709の色域は、現在の映像機器の性能向上からすれば若干狭いといわざるを得ないが、殆どの制
作スタジオが採用し、制作者もこれを利用している現状なので、本研究においてもこれに従って進めるこ
とにした。
今回制作した標準映像CoSMEをマスターモニター画面に再生して、指定されたポイントの色情報を分
光光度計で測定し、これをメタデータとして保存する。
上映における測定は、標準映像をスクリーン上に上映し、マスターモニターの画面で測定した同一の
ポイントを分光光度計で測定し、このデータとメタデータ(マスターモニター上の測定データ)を比較し補
正を行う。
・測定システム
図18において、(a)が原画のデータ計測で、HDDレコーダ等に格納された標準映像をマスターモニタ
ーの画面上に再生する。標準映像で、あらかじめ指定されたポイントの色情報を分光光度計で計測し、
記録する。
(b)は上映映像の計測で、再生機器からの標準映像を、プロジェクタを用いてスクリーン上に上映し、
同じくあらかじめ指定されたポイントの色情報の計測を行う。
(c)は色補正システムを保有する上映機器の例で、再生機器と上映用のプロジェクタの間に色補正機
能(カラーコレクタ)を持ったインターフェースが挿入されている。このインターフェースをあらかじめ制作の
色補正アルゴリズムを実装したPCによって制御を行う。
PCに(a)、(b)で測定した計測データを入力することにより、標準映像が正しく上映することが可能にな
る。その制御アルゴリズムの開発は、本研究においては、時間の都合で原理の研究と特定の機器のみし
か行えなかったが、将来、市販の機器のプロファイル及びその傾向値が把握できれば、自由に色補正を
行うことが可能になる。
(a)原画データ計測
マスターモニター
Rec.709計測データ
再生機器(標準映像)
分光光度計
(b)上映機器測定
プロジェ
再生機器(標準映像)
特定ポイントの計測データ
(c)色補正・上映
分光光度計
スクリーン
インターフェース
カラーコレクター
再生機器(標準映像)
Rec.709計測データ
特定ポイントの計測データ
PC(変換アルゴリズム実装)
図 18. 測定システムの構成
・標準映像による測定の例
図19.に測定用の標準映像の一例を示す。
図中、映像の各ポイントに数字が付与されているのは、撮影及び計測時に被写体のメタデータとして情
報を記録した部分である。
図
19. 計測用標準映像の例
・カラーコレクタについて
カラーコレクタの概念は、映像媒体からの送り出し機器とプロジェクタ等の上映機器の間に挿入し、映
像を構成するRGBのルックアップテーブル(以下LUTと称す)を任意にコントロールし、映像の全体の色
の補正を行うものである。
業務用等本格的なカラーコレクタは、各RGBに対応し黒レベル、白レベル、ガンマ等の補正をきめ細
かに行う仕様のものもあるが、本研究においては、RGBのLUTを単純に動かす簡易型を開発しその効果
を確認したが、別項に述べるように、一般の上映等においては十分な性能を発揮することが確認されてい
る。
4)本開発提案の活用方法
*現状のプロジェクタの特性分析
プロジェクタは、ビジネス、ホームシアタ、劇場・イベント、デジタル映像(シネマ)など多種多様の用途を
狙った研究開発が行われている。
本研究では、劇場・イベント用プロジェクタ(DLP・液晶)とデジタル映像(シネマ)用プロジェクタ(DLP)
の色再現特性を分析調査した。
プロジェクタの色再現は、ランプの発光スペクトル、色分離・合成光学系の各種ダイクロイックフィルタの
分光スペクトルの積算、投射レンズの分光透過率の三要素の選定・設計で決まる。特にランプはプロジェ
クタの色再現に対して重要な要素である。
プロジェクタの光源としては、超高圧水銀ランプ、キセノンランプが多く使用されている。超高圧水銀ラ
ンプは、発光効率は高いが赤の発光が低く、プロジェクタの白の色温度は高くなる傾向になる。
超高圧水銀ランプは低ワットの小型および汎用プロジェクタ用光源の主流をなしている。キセノンランプ
は、約 6000Kの色温度をもち連続スペクトル発光する高演色・高輝度光源である。分光分布の再現性が
良く、かつ分光分布が寿命中もほとんど変化しないことも長所である。プロジェクタの白の色温度は低くな
る傾向になる。
一方、キセノンランプの短所は、効率が低いこととランプ電圧が低くランプ電流が大きいため、ランプ・点
灯回路とも高価になることである。したがって、高画質の大出力プロジェクタの光源に適している。
図 20 に超高圧水銀ランプとキセノンランププロジェクタの色再現域を示す。キセノンランプはマスター
モニターの色再現域とほぼ一致しているが、超高圧水銀ランプは緑・黄色の辺りに大きなずれがあること
が分かる。
Y
超高圧水銀ランプ
G
Y
G
キセノンランプ
R
L
C
M
マスターモニタ
R
b
L
C
マスターモニタ
B
a
M
B
a
超高圧水銀ランププロジェク
キセノンランププロジェクタ
タとマスターモニタの色再現
とマスターモニタの色再現域
図 20. ランプによるプロジェクタの色再現域の違い
*デジタル映像(シネマ)用の色空間の提案
プロジェクタの色再現は、使用用途や設計指針により大きく異なる。過去のプロジェクタ開発の流れに
おいては、輝度性能およびコントラスト性能が主な差別化のポイントとされた。
しかし、色再現性を重視し彩度を高くすると輝度は相対的に低くなる傾向がある。そのため、プロジェク
タの輝度性能の確保が重要視される場合は、色再現域の拡大にプロジェクタの性能を割くことが困難で
ある。
一方、Rec.709 よりも広い色再現域を売りとしたプロジェクタも多く販売されており、見た目の鮮やかさを
強調したプロジェクタも存在する。この場合は、正確な色再現性や階調性に対する要求性能よりも、彩度
の高い赤や緑色を表現できることを重視している。
このようにプロジェクタ毎に色再現域が大きく異なるのが現状である。プロジェクタによって色再現域が
異なる問題を解決するために Rec.709 規格をデジタル映像(シネマ)用に変形した色空間を提案する。
Rec.709 はよく知られた色空間の規格であり、標準ディスプレーへ出力することを想定している。しか
し、標準ディスプレーとプロジェクタでは観察環境が異なる為、プロジェクタの観察環境に合わて輝度、
ガンマを変更した Rec.709 を提案する。
このデジタル映像(シネマ)用の色空間に色を合わせることで全てのプロジェクタで同じ色再現を行うこ
とが可能となる。
プロジェクタの色再現域
Rec.709 規格
白点
デジタルシネマ
用の Rec.709
x
y
Red
0.640
0.330
Green
0.300
0.600
Blue
0.150
0.060
White
0.3127
0.3290
デジタル映像(シネマ)用に
Rec.709 の輝度、ガンマを変更する。
(デジタル映像(シネマ)のガンマ=2.6)
黒点
XYZ 表色系
図 21. デジタル映像(シネマ)用の Rec.709 色空間の概念図
今回提案した色空間は Rec.709 規格をデジタル映像(シネマ)用に変形したものであり、デジタル映像
(シネマ)に最適な色空間というわけではない。
映画監督によってはフィルム上映を想定して制作する場合もあり、デジタル映像(シネマ)用の色空間
の更なる展開として従来のフィルム映像に合わせた色空間を規定し標準化することが望まれる。
*プロジェクタの色再現域の評価例
プロジェクタの色再現域を比較するためには xy 色度座標が多く使用されており、Rec.709 の色再現域
と比較することでプロジェクタを評価している。しかし、xy 色度座標では三次元の広がりを持つ色再現域
を二次元射影して見ているため詳細がわかり難い。色再現域を詳しく見るためには三次元の XYZ 表色
系または L*a*b*表色系を使用する。
色再現域は三次元的な立体で、機器により色を表現できる領域の大きさや形状が異なるため、カラー
マッチングするためには個々のプロジェクタの色再現特性を把握し、合わせる色空間への三次元投影を
行なう必要がある。
そこで、XYZ表色系におけるプロジェクタと Rec.709 との色再現域の体積を比較することでプロジェクタ
の色再現特性を評価する手法を提案する。Rec.709 との体積の合致度が低いプロジェクタはカラーマッチ
ングによる色変換を行ったとしても不十分な色再現しかできない。
つまり Rec.709 の色再現域との体積比較を行なうことで、カラーマッチングによってどの程度色が合致
するかを数値化することができる。
図 22 にプロジェクタの体積比較の評価例を示す。プロジェクタの色再現域は、スクリーンにカラーパッ
チを出力し分光測定器で測定することにより求められる。
プロジェクタの色再現領
A社
Rec.709 との体積比
各色相の体積バラン
Y
A社
R
Rec.709 の 体 積 :
G
100%
Rec.709
輝
B社
度
M
A 社の体積:172%
26
C
B
Y
B社
G
R
C
M
Rec.709 の 体 積 :
100%
Rec.709
輝
度
A 社の体積:164%
36
B
図 22. プロジェクタの評価例
*標準映像とプロジェクタのカラーマッチングの実例
プロジェクタをデジタル映像(シネマ)用の Rec.709 に合わせることを考える。Rec.709 よりも物理的に広
い色再現域を持つプロジェクタや、Rec.709 の色空間と異なる色再現域を持つプロジェクタの場合は、プ
ロジェクタの入出力間にて色変換を行う必要がある。
色変換を行う上では、次の二つの方法がある。一つはプロジェクタ本体の機能(内臓回路)による色変
換を行う方法であり、二つ目はプロジェクタの色再現特性の設計値または測定値を用いてカラープロファ
イルを作成し、映像データの色変換を行う方法である。
今回の実験ではプロジェクタ本体の機能による色変換を試みたが、各メーカーによって決められた映
像モード、明るさ、コントラストの調整しかできないため、プロジェクタによっては Rec.709 に色を合わせるこ
とが不可能であった。このため、カラープロファイルを使用したカラーマッチングを行った。
一般に異なる機器間で色再現を統一的に管理するためには、データ交換の際、機器に依存しない色
表現方式が必要となる。このため、機器に依存する色空間をいったん、機器に依存しない絶対色空間に
変換し、この絶対色空間で色補正アルゴリズムを用いて各種処理した後、出力時にそれぞれの出力機器
に対応した色空間に戻して映像出力を行う。絶対色空間としては、XYZ や L*a*b*といった色空間が使わ
れる。今回の実験では、色補正アルゴリズムとして明度保存を使用した。
このようにして行ったプロジェクタのカラーマッチングの実例を図 23 に示す。カラーマッチングによって
ターゲットである Rec.709 とほぼ同じ色に調整することができた。
カラーマッチング後の画像
原画像
プロジェクタで上映の画像
Rec.709 の理論値と測定値の誤差(332 ポイント測定)
X
Y
Z
最大誤差
0.339
0.339
0.788
平均誤差
0.071
0.065
0.130
図 23 プロジェクタのカラーマッチング結果
*自動色補正への考え方
本研究の色空間管理手法を用いてプロジェクタの色を Rec.709 に合わせられることを示した。
Rec.709 の色再現域(映像に付与した色再現情報のメタデータ)とプロジェクタの色再現特性を用いた
プロファイルメタデータを利用し、色補正アルゴリズムを実装したPCを制御することで原画とほぼ等しい上
映を行うことができる。
Rec.709 の色でプロジェクタの色再現域からはみ出した領域を再現する場合は、別の色に置き換える
必要がある。この処理は色補正アルゴリズムで行なわれるが、明度保存・色差最小・彩度保存など無数の
方法が発表されている。それぞれの方法には短所長所があり、各目的に合わせてこれらを組み合わせて
用いられる。
本研究では特定の条件の下でしか実験できなかったが、映像制作時に付与した色再現情報のメタデ
ータとプロジェクタの色再現特性のメタデータを利用することで最適な色再現域のマッピングを自動的に
行うことが将来的には可能である。その実現には、映像制作時の色再現情報メタデータの応用方法、各
プロジェクタのプロファイルメタデータのデータベース化、色補正アルゴリズムの更なる改良が必要不可欠
である。
また、プロジェクタの色再現には光源ランプの経時変化も大きく影響するため、プロジェクタのキャリブ
レーションは頻繁に行う必要がある。
今回使用した自動色補正システムを導入することで誰でも簡単にキャリブレーションを行うことが可能と
なる。
(b)実証実験
今回の実験を行うために開発した簡易型カラーコレクターは、感性評価実験においても、十分な効果
を発揮した。本格的なものは 3 次元方式の高額なもので、操作方法も複雑であるが、本機は手軽な方法
で十分な効果を発揮できることが実証された。
実際には、公会堂等本格的な映写設備を有しない場所に機材を持ち込んで映画上映を行う「デジタル
de みんなのムービー」(経済産業省委託事業)において活用しその効果を確かめた。
感性評価に関しては、SD 法を用いたが、動画評価のための評価用語を約 1,000 語のうちから 15 語を
選定して実験に供した。
これらの一連の作業は、プログラム化され、多くのデジタル機器の評価に応用が可能である。
また、実験に使用した評価用映像に対する、評価者の反応を分析することにより、評価映像に必要な要
素の抽出を行い、今後の映像選定に役立つように心がけた。
(5)考察・今後の発展等
1)シナリオ入力デジタルシネマ制作技術
ソフトウェア開発の分野では、オブジェクト指向の出現とともにウォーターフォール型からシンク&スタビ
ライズ型に変革してゆき、現在はシンク&スタビライズ型が主流となっているように、映像制作においても
シンク&スタビライズ型制作を行うことにより、初級者、上級者問わず非常に多くの利点が生じる。
本プロジェクトの成果は、多くの場で実証され、高い評価を受けつつある。
今後は実証実験をさらに継続して行いながら、より使いやすいインターフェース開発と素材流通管理の
あり方について検討してゆく予定である。
また、シナリオが英語になることも考慮して、登場キャラクタとして外国人および関連背景を制作する等、
国際的な展開も徐々に開始している。
2)更新型 DRM に関する研究
本プロジェクトで構築した更新型 DRM システムは、コンテンツプロバイダ業界の採用を前提とした B2C
コンテンツ流通モデルであるため、本システムの普及を促進させる為には、プロバイダにとってのメリットを
より明確に示し、トータルメリットを訴求する必要がある。即ち、プロバイダは任意の DRM ツールを採用で
きること、或は、いつでも更新が可能な点をメリットとした、流通モデルを提案する必要がある。
一方、端末側においては、DRM ツール実装が軽いメリットがあり、特に、携帯端末には、メリットが大き
い。そのため、将来的には端末上のプロセッサの LSI 化において、この DRM 部(IPMP マネージャ)を実
装するのも容易にできることを訴求し、普及活動を展開する。
この DRM システムの国際標準化活動では、現在、デジタル映像(シネマ)MAF として提案審議中とな
っている提案を国際規格に段階を進める活動を継続する必要がある。
3)デジタルシネマの標準化推進に関わる技術
(a) デジタルシネマの標準化に関わる研究
調査を通じて、内外のデジタルシネマ関係者と数多く接触することができ、特に米国の DCI(Digital
Cinema Initiative)幹部、欧州における EDCF(European Digital Cinema Forum)幹部とは密接な連絡を
取ることができ、本プロジェクトの趣旨を浸透させることができた。
また、定例で開催されるMPEG会議(ISO/IEC,JTC-1/SC29/WG11)において、標準化のための寄書を
提出、審議を行った。
さらに、中国、韓国のデジタルシネマ関連団体と 3 ヶ国連合で日中韓デジタルシネマフォーラムを設立
し、共同で標準化の作業を進めるべく、活動を開始した。
(b)実証実験
比較的研究歴の浅い感性評価による実験は、何よりもまずデータの積み重ねを行うことが重要である。
本研究では、時間と費用の制約もあり、約 200 程度のデータしか採取できなかったが、これは本格的統計
処理を行う上では、まだ不十分である。
しかしながら、動画映像の感性評価を行うための、評価用語、評価映像の仕様、具体的シーンに対す
る評価者の反応傾向等、これから映像評価機関のようなものを立案するための貴重なデータを数多く得
ることができた。
今後は、これらの評価データと物理データとの結びつけ、さらに、人間の生理反応との相関性に関して
研究が進められれば、さらに有用になるであろう。
(6)関連特許
基本特許(当該課題の開始前に出願したもので、当該課題の基本となる技術を含む特許)について
該当なし
(7)研究成果の発表
(成果発表の概要)
1. 原著論文(査読付き)
3 報 (筆頭著者:1 報、共著者:2 報)
2. 上記論文以外による発表
国内誌:7 報、国外誌:0 報、書籍出版:0 冊
3. 口頭発表
招待講演:7 回、主催講演:46 回、応募講演:13 回
4. 特許出願
出願済み特許:0 件 (国内:0 件、国外:0 件)
5. 受賞件数
3件
1. 原著論文(査読付き)
【国内誌】
1) 青木輝勝、安田浩、「シナリオ入力映像制作システムとその制作工程」、情報処理学会論文誌、
2007.9 掲載予定(情報処理学会 GN 研究会推薦論文)
2) 江村恒一, 青木輝勝, 安田浩, 「隠れマルコフモデルに基づくインタラクティブな仮想カメラワーク遷
移制御」, 映像情報メディア学会誌投稿中
【国外誌】
1) Koichi Emura, Makoto Yasugi, Toshiyuki Tanaka, Seiya Miyazaki and Sachiko Motoike, “Personal
Media Producer: A System for Creating 3D CG Animation from Mobile Phone E-mail”, Academy
Publisher, Journal of Multimedia, Vol.1, Issue 2, pp.30-37,(May 2006)
2. 上記論文以外による発表
【国内誌】(国内英文誌を含む)
1) 江村恒一, 安木慎, 宮崎誠也, 久保山哲二, 青木輝勝, 安田浩, "SVM を用いたモブログテキスト
からの感情抽出", 電子情報通信学会技術研究報告知能ソフトウェア工学, Vol.106, No.473,
KBSE2006-65, pp.61–66, 2007.1
2) 江村恒一, 青木輝勝, 安田浩, “DMD システムを用いた 3 次元 CG アニメーション制作の評価”, 情
報処理学会 研究報告 グラフィクスと CAD, Vol.2006, No.18, 2006-CG-122, pp.99-104, 2006.2
3) 江村恒一, 青木輝勝, 安田浩, “キャラクタアニメーションにおけるシナリオ駆動型動作合成”, 電子
情報通信学会 技術研究報告 画像工学/通信方式, Vol.104, No.495/493, IE2004-105/CS2004-110,
pp.83-87, 2004.12
4) 江村恒一, 青木輝勝, 安田浩, “3 次元 CG アニメーション制作初心者のためのカメラワーク推薦方
式”, 2006 年映像情報メディア学会冬季大会予稿集, p6-13, 2006.12
5) 青木輝勝,安田浩、”新映像制作システム DMD とその制作工程”、情報処理学会、情報処理学会研
究報告,2006-GN-60,pp.43-46、2006.5. (情報処理学会 GN 研究会優秀発表賞受賞)
6) 江村恒一, 青木輝勝, 安田浩, “DMD システムを用いた 3 次元 CG アニメーション制作の評価”, 第
68 回情報処理学会全国大会講演論文集, No. 3, 7D-7, 2006.3
7) 大山義仁, 青木輝勝, 江村恒一, 沼田秀穂, 池田佳代, “Boid アルゴリズムにおけるクラスタ度評
価”, 情報処理学会 研究報告 知能と複雑系, Vol.2006, No.2, 2006-ICS-142, pp.63-69, 2006.1
【国外誌】
該当なし
3. 口頭発表
招待講演
1) Hiroshi Yasuda:「Toward the digital entertainment explosion over HD equipment」, ,NAB2005 Las
Vegas,2005.4.16
2) Hiroshi Yasuda:「What is most important for Digital Entertainment Explosion over HD Equipments in
Asia」、NAB2005、2005.4.17
3) Hiroshi Yasuda,
KOREAN DIGITAL CINEMA FORUM, 「 Toward the digital entertainment
explosion over HD equipment」,Busan, 2005.10.11
4) Hiroshi Yasuda, IEICE Korea Section Workshop「Toward Digital Entertainment Decade~Enhancing
Digital Cinema World~」, Soul, 2006.11.3
5) 中映協シンポジウム:「デジタルコンテンツによる新ビジネスの展開」、名古屋市、2004.10.15
6) 全映協フォーラム 2004in 金沢:「デジタルシネマと地域社会」、金沢市、2004.11.18
7) 沖縄デジタルアーカイブ協議会設立記念講演会:「地域コンテンツのビジネス化」、那覇市、
2005,3,15
8) 中四国デジタルアーカイブ協議会総会:「デジタルアーカイブとビジネス化の方策」、広島市、
2005.6.24
9) 中四国映像協議会総会:「地域におけるデジタルコンテンツビジネスの展望」、周南市、2006.5
主催・応募講演
1) 小池、小暮、妹尾、青木、安田 "ユースケースから見た DRM 標準 MPEG-2 IPMP 実装課題"、画像
電子学会、2005.6
2) 小暮、小池、青木、安田 "ディジタル映像配信に関する著作権管理保護と MPEG・DMP における標
準化動向"、情報処理学会第 2 回デジタルコンテンツシンポジウム、2006.6
3) 小暮 "MPEG を中心とした最近の著作権管理技術の国際標準化動向"、日本知財学会、2006.6
4) 小暮、小池、妹尾、青木、安田 "デジタルシネマコンテンツファイルフォーマットの構成"、FIT2006
5) Kogure, Koike, Yasuda, "MPEG-2 IPMP -Implementation Report and Issues of Feasibility" m11614,
71st MPEG HongKong, 2005.1
6) Kogure, Koike, Yasuda,"MPEG-21 IPMP Requirement from DCCSDP&DCCSDC in Japan" m11746,
71st MPEG Hong Kong,2005.1
7) Kogure, Koike, Yasuda, "Activity Report of DCCSDP&DCCSDC in Japan Part-5" m11878, 72nd
MPEG Busan, 2005.4
8) Kogure, Koike, Yasuda, "Proposal for Digital Video/Cinema MAF" m12838, 75th
MPEG Bangkok,
2006.1
9) Kogure, Koike, Yasuda ,"Digital Video/Cinema MAF" m13255, 76th MPEG Montreaux, 2006.3
10) Kogure, Koike, Yasuda, "Adaptation to MPEG MAF of Digital Video/Cinema file format"m13862,
76th MPEG Montreaux, 2006.3
11) Kogure, Koike, Yasuda, "Requirement of Color Management Information to MPEG-7 for Digital
Video/Cinema" m13863,78th MPEG Hang Zhou,(2006.10 )
12) Kogure, Koike, Yasuda, "Proposal of Extension on ISO/IEC 23000-5/AMD1:Media Streaming Player
MAF, AMENDMENT 1: Digital Video/Cinema Content Profile m14141, 79th MPEG Marrakech,
(2007.1)
13) Kogure, Koike, Yasuda, "Color Management Description to MPEG-7 for Digital Video/Cinema ,14145,
79th MPEG Marrakech(2007.1)
14) 第 1 回ムービー塾開催、東京大学、2005.10.8.
15) 第 2 回ムービー塾開催、東京大学、2005.11.27.
16) 第 3 回ムービー塾開催、東京大学、2005.12.10.
17) 第 4 回ムービー塾開催、東京大学、2006.2.4.
18) 第 5 回ムービー塾開催、山形県立米沢工業高等学校、2006.2.23
19) 第 6 回ムービー塾開催、東京大学、2006.3.11.
20) 第 7 回ムービー塾開催、東京大学、2006.4.29.
21) 第 8 回ムービー塾開催、日本大学法学部、2006.5.25.
22) 第 9 回ムービー塾開催、江戸川大学、2006.6.13
23) 第 10 回ムービー塾開催、片瀬公民館、2006.7.9.
24) 第 11 回ムービー塾開催、湘南白百合学園中高等部、2006.7.10.
25) 第 12 回ムービー塾開催、日本大学法学部、2006.7.20
26) 第 13 回ムービー塾開催、東京大学、2006.8.1.
27) 第 14 回ムービー塾開催、東京大学、2006.8.2
28) 第 15 回ムービー塾開催、藤沢辻堂青少年会館、2006.8.8
29) 第 16 回ムービー塾開催、片瀬公民館、2006.8.11
30) 第 17 回ムービー塾開催、東京大学、2006.9.7
31) 第 18 回ムービー塾開催、東京大学、2006.9.10
32) 第 19 回ムービー塾開催、東京大学、2006.10.3
33) 第 20 回ムービー塾開催、東京大学、2006.10.9.
34) 第 21 回ムービー塾開催、京都造形芸術大学、2006.10.13.
35) 第 22 回ムービー塾開催、京都造形芸術大学、2006.10.14.
36) 第 23 回ムービー塾開催、東京大学、2006.10.19.
37) 第 24 回ムービー塾開催、東京大学、2006.10.26.
38) 第 25 回ムービー塾開催、東京大学、2006.11.3
39) 第 26 回ムービー塾開催、日本工学院、2006.11.9.
40) 第 27 回ムービー塾開催、南葛西第二小学校、2006.11.11.
41) 第 28 回ムービー塾開催、愛媛視聴覚福祉センター、2006.11.24.
42) 第 29 回ムービー塾開催、東京大学、2006.11.29.
43) 第 30 回ムービー塾開催、東京大学、2006.12.2.
44) 第 31 回ムービー塾開催、神奈川県立大清水高等学校、2006.12.7.
45) 第 32 回ムービー塾開催、片瀬公民館、2006.12.8.
46) 第 33 回ムービー塾開催、片瀬公民館、2006.12.9.
47) 第 34 回ムービー塾開催、福岡クローバープラザ、2006.12.15.
48) 第 35 回ムービー塾開催、東京大学、2006.12.23.
49) 第 36 回ムービー塾開催、東京大学、2007.1.13.
50) 第 37 回ムービー塾開催、TBS、2007.1.27.
51) 第 38 回ムービー塾開催、名古屋国際センタービル、2007.2.2.
52) 第 39 回ムービー塾開催、ホテルモントレエーデルホフ札幌、2007.2.8.
53) 第 40 回ムービー塾開催、TBS、2007.2.10.
54) 第 41 回ムービー塾開催、TBS、2007.2.24.
55) 第 42 回ムービー塾開催、東京大学、2007.2.25.
56) 第 43 回ムービー塾開催、アピオ大阪、2007.3.7.
57) 第 44 回ムービー塾開催、クラシティ半田、2007.3.15.
58) 第 45 回ムービー塾開催、東京大学、2007.3.24.
59) 第 46 回ムービー塾開催、東京大学、2007.3.25.
4. 特許出願
0件
5. 受賞件数
1) 青木輝勝:文部科学大臣表彰若手科学者賞,(2007.4)
2) 青木輝勝:情報処理学会優秀教育賞,(2007.3).
3) 青木輝勝:情報処理学会 GN 研究会優秀発表賞、(2006.5).
Ⅳ.実施期間終了後における取組みの継続性・発展性
1.総論
本プロジェクトは、我が国の基幹産業としてデジタル映像・シネマの発展に係る基本的な技術開発と関
連するインフラの整備を目的として、3 年間に渡り様々な活動を精力的に展開してきた。即ち、デジタル映
像・シネマの映像品質に直接係る「色空間再現」の基本技術や、シネマ画像評価の為の「標準映像」、効
率的なシネマ製作に欠かせない映像制作工程の基盤整備、制作されたシネマコンテンツの伝送や蓄積
に必要な、符号化技術やセキュア伝送に必要な著作権管理保護技術、色空間再現に必要なパラメータ
をメタデータ化技術、それら開発技術の国際標準化活動、実証実験活動等、多岐に渡る研究開発を展
開し、訴求活動を行ってきた。
デジタル映像・シネマ関連事業の育成のためには、これらの開発した諸技術を継続発展させて、コンテ
ンツ創作、配信、上映、機器供給等の関連業界やプロジェクトの関係団体に、引き続き継続的に訴求を
続け浸透を図ることが、事業目的達成に必須の要諦である。
以下に、個別、各グループにごとに、具体的取り組みの計画を述べる。
2.サブテーマ別
(1)サブテーマ 1 デジタルシネマ標準映像技術に関する研究開発
標準映像 CoSME に関しては平成 19 年 2 月から 3 月までの 2 ヶ月間ですでに 39 社から利用許諾の
申請が寄せられている。今後も、デジタルコンテンツ協会を通して、配布を続行する予定である。また韓
国、中国から欧州においても配布啓蒙活動を続行する予定である。またそれに伴い CoSME の普及のみ
ならず、必要に応じてその利用方法などの講習を続行する予定である。
また日本工学院専門学校内に設置した「標準デジタルシネマ施設」の設置運用に関しては、今後も、
日本工学院との協力のもとに、プロジェクト本来の目的に沿った運営を続行し、日本で最初のデジタル映
像(シネマ)標準映像施設として積極的に活用を図る予定であり、今後もデジタル映像(シネマ)シアター
における色空間(再現)および画質再現に関わるシアター運営に関わる様々な技術要因の抽出を行うとと
もに、本プロジェクト全体の共通施設として運用し研究成果の広報拠点として活用を続行する予定であ
る。
(2)サブテーマ 2 コンテンツ制作に関する研究開発
マクロランゲージに関しては、現場の情報を元に抽象化と記述化を進めたものであり、コンテンツ制作
の標準的なフローを具体化したものといえる。また、シーンシミュレータに関しても、本プロジェクト進行中
にいくつかの製品が発表され、これまでの絵コンテに変わる技術と制作手段として注目を集め始めている。
こうした、標準化が難しいとされる映像制作工程において、有効な基盤技術としていち早くこうした技術開
発を行った。
今後は、情報技術による制作の効率化と質の向上に興味を持つ制作現場が増えることが予想されるた
め、こうした技術を広く広め、本研究の成果を公開し、周知と利用促進に努める。
(3)サブテーマ 3 デジタルシネマ情報の伝送蓄積に関する研究開発
電子透かしの技術に関しては、シアターでの盗撮映像に対する画像処理技術は年々進化しており、
再撮耐性電子透かし方式においてより耐性の強い手法の検討・開発を続けていく必要がある。盗撮映像
に対する画像処理技術と電子透かしによる埋め込み・検出技術はいたちごっこであり、常に進歩した方式
の開発が要求される。今後も現方式の改善、ならびに新方式の検討・開発を進める予定である。また、不
正コピーに対してはより多くの情報を埋め込むことにより、より広範に流通経路の特定や著作権情報の特
定が可能となる。今後も方式の改善を進める予定である。
符号化技術に関しては、色空間フォーマット 4:4:4 符号化の標準化作業の残件として、「コンフォーマ
ンスストリーム」と「参照ソフトウェア」の作成があり、これらはいずれも 2008 年夏ごろに作業完了を目標とし
て進められるものである。「コンフォーマンスストリーム」とは、復号器(ハードウェアやソフトウェアなど、何
でもよい)の正常動作を確認するために使用される、標準に正しく準拠した圧縮データであり、「参照ソフ
トウェア」は、標準の規格の全てを含んだソフトウェアの符号化器および復号器である。これらはいずれも
ISO/IEC および ITU-T の標準の一部となるものである。一方、この成立した色空間フォーマット 4:4:4 符号
化方式が広く利用されるためには、プロモーションならびに実機開発によるデモンストレーション等が必要
であり、今後も継続して検討・開発を進める予定である。
(4)サブテーマ 4 デジタルシネマ映像配信に係るDRMに関する研究開発
デジタル映像(シネマ)流通のためのデジタルシネマメタデータ流通方式およびデジタル映像(シネ
マ)メタデータ標準を体系化したので、メタデータID連携による産業界(プロダクション、映像機器メーカ、
配信・配給事業者、著作権管理事業など)との産学連携によるメタデータ・アライアンスのデファクト標準
に発展させる。
(5)サブテーマ 5 デジタルシネマアーカイブ技術の研究開発・国際標準化推進・検証実験
1)サブテーマ 5-1 シナリオ入力デジタルシネマ制作技術
プロジェクト期間中、数 10 回の開催を数えた DMD「ムービー塾」は極めて好評であり、プロジェクト終
了後の現在もなお、内容を一部、模様替えして現在も尚、継続開催中である。
今後は、より多彩で、現実感のある映像表現が容易にできるようにキャラクターの追加、背景の追加、ディ
テール描写の精度向上、等を進めてゆく。また、プロジェクト期間中に、海外への紹介も行ったが、これも
きわめて好評で、開催希望が多数寄せられている現状なので、米国向けの英文版の試作を開始した。引
き続き、韓国、中国等への展開も計画してゆく。
2)サブテーマ 5-2 更新型 DRM 技術の研究開発
本テーマで構築した DRM システムは、コンテンツプロバイダの採用を前提とした B2C コンテンツ流通
モデルであるため、プロバイダにとっては、システムの負担となる。しかしながら、暗号化なしの DRM シス
テムは存在しないので、DRM システムのメリットを明確に示し、その有効性を実証し、訴求する必要があ
る。また、端末実装が非常に軽く構成が可能になるので、将来的には端末信号処理部 LSI 化において、
この DRM(IPMP Parser Manager)を実装することも可能となる。その面でも、本システムの有効性は大きい。
実際のビジネス適用を進めるためにも開発ソフトウェアのパッケージ化とソフトウェア著作権の権利処理が
であり、現在、開発関係者との協議に入っている。
標準化活動においては、現在審議中となっている ISO/MPEG における、デジタルシネマ MAF の標準
化活動を更に進め、委員会文書に格上げを計る必要がある。
3)サブテーマ 5-3 デジタルシネマの標準化推進に関わる技術・実証実験
一連の主観評価実験や、関連する項目の調査活動を通じて、面識を得、データベースに登録を行っ
た内外の関係者は予想を遥かに超えた多数に上っている。これら関係者の方々は、いわゆる貴重な人脈
となるものであり、これらの方々のプロフィールをまとめた「人脈帳」を作成、且つ、整理活用して、連絡を
継続し、、本研究の継続状況の伝達を続け、新しい情報の取得をはかり、次への発展に繫げてゆく計画
である。
デジタル映像コンテンツの感性評価の手法は、実証実験によってその有用性が確認できた、そこで得
られた成果は、実際に実証実験に協力して戴いた、(財)デジタルコンテンツ協会での関連委員会として
本プロジェクトの意思を継続し、さらに精度を高める努力を持続する予定である。
Ⅴ.自己評価
1.目標達成度
「デジタル映像(シネマ)」の共通仕様を開発し、標準化しようと言う新機軸でスタートした本プロジェクト
は、プロジェクトの進捗に伴い、当初の目標とミッションステートメントに掲げた達成目標を全てクリヤーし、
所定の「成果」を上げた。
具体的な成果としては以下である。
* 標準劇場の設計施工、現場確認----------主要パラメータの実測と業界関係者の現場確認
* 標準評価映像シーケンス CoSME の製作----- 色空間測定と主要データのメタデータ化
* デジタル映像(シネマ)の共通仕様書の完成-------日本語版、英語版の作成と業界への配布
* XML マクロランゲージ「IPML」を開発------- アプリの例として、工程・素材管理ソフトを開発
* ダイナミックシーンシミュレータの開発-----実写と CG を含む映像制作のためのアプリ
* デジタルシネマ情報のセキュア伝送技術-------再撮対応電子透かし方式開発 32bit 対応達成
* デジタルシネマ情報の階層符号化技術 ------ 色空間フォーマット4:4:4、及び階層符号化方式
* デジタルシネマ映像配信に係る DRM に関する研究-------デジタル映像(シネマ)・メタデータ体系化
* シナリオ入力デジタルシネマ制作技術------DMD システム開発、数 10 回のムービー塾開催
* 更新型 DRM システムに関する研究------MPEG-2 型 1IPMP システム開発 検証実験確認
* デジタルシネマの標準化推進に関わる技術・実証実験------カラーコレクタ開発 主観評価実験
上記、10 の開発項目と 1 項目の実証実験に関しては、前述の詳細報告書に詳細の記載の通り、当初の
目標を概ねクリヤーした。
* 以上の成果の積み上げの結果として、デジタル映像映像(シネマ)色空間の提案、すなわち、色空間
の標準測定方法から評価手法、そして自動色補正に至る一連の制御手法が確立し、カラーマッチングア
ルゴリズム開発の道筋をつけることに成功した。
尚、一部の項目例えば、国際標準化活動は、現在においても継続中であり、目標達成までには未だ多
少の審議に時間を要する。メタデータ体系は、コンテンツ流通現場での適応性確認に時間を要すので、
これからの発展に期待が出来よう。
2.情報発信
3 年間のプロジェクト期間中に情報発信に関連する主なイベントは以下の通りである
*研究運営委員会(全関係者を含めた報告会)-----5 回
*研究成果報告会(外部講師招聘も含めた公開型報告会)---- 3 回
*公開講座(プロジェクトのメンバーが講師を担当)------1 回
*デジタルシネマ上映会-----3 回
*学会等での一般研究発表------29 回
*招待講演・提案発表------4 回
*原著論文------5 件
*一般論文発表(国内)-----43 件
*一般論文発表(国外)----7 件
*特許出願件数------8 件
上記の件数は、プロジェクトの性格にもよるが、一般的には、かなりの高水準といえよう。
個別の情報発信に関する軽重は、比較の対象外であろう。
3.研究計画・実施体制
本プロジェクトの、目標別のプロジェクトチームの体制を図 24 に示した。
デジタルシネマ プロジェクトの目標別体制図
制作者が意図した映像品質
制作
標準映像メタデータ
CG素材メタデータ
上映・表示装置でスクリーンに反映
編集・加工
工程管理メタデータ
伝送・蓄積
上映・表示
伝送・蓄積メタデータ
流通管理DRM
メタデータ
上映表示メタデータ
機器制御メタデータ
プロジェクトマネージャ
目標:メタデータによる色空間制御アルゴリズムの開発と+DRMシステム標準化
プロジェクト課題 : 映像制御・流通システムの開発と実証実験
図 24. プロジェクトの目標別体制図
実際には、各工程別の課題別担当組織であり、プロジェクト契約も担当別になっているので、管理面で
は、ブロック別のグループ担当になりプロジェクトはグループ連合組織体になる。その為、上図のブロック
で示すようなブロックで完結しない課題へのプロジェクトとしての取り組みには、担当グループ間の密度の
濃い意思疎通、インターフェース調整が必要になる。本プロジェクトは、委員長の強い指導力による意識
あわせがあり、上記課題を解決できた。
次回のプロジェクトの構成時には、より横断的な組織体にするべきか、検討課題である。
4.実施期間終了後における取り組みの継続性・発展性
(1)国際規格への提案
プロジェクト運用期間内でも、ISO/IEC,ITU-T,SMPTE等, 国際標準化団体に本プロジェクトの成果に基
づく提案活動を行い、開発技術を訴求してきた。実際には、MPEGを例に取れば、国際標準化会議での
審議には数年単位の審議時間経過が必要であり、ITU等でも同様の傾向を持つ、その上、国際審議では、
各国事情や利害得失も絡んで、提案しただけではなかなかコンセプトの定着までには至らないのが現実
である。本開発技術の規格化定着まで、今後とも、我々の地道な活動の継続が必須である。
また、提案元として、本プロジェクトによる単独提案の説明と審議だけでは、なかなかその意図が浸透し
ない側面もあり、賛同者を得る為、利害を共有できる、中国、韓国と連携した日中韓デジタルシネマフォー
ラムを結成し、共同で国際提案を行い、共同でプロモート活動を展開することを本プロジェクト担当者から、
両国の関係者に提案、基本合意を得ている。この方面からのアプローチも今後注力すべき大きな課題で
ある。
(2)色空間制御システムの開発
本プロジェクトの主要テーマのひとつである、デジタル映像(シネマ)コンテンツの上映や表示環境に於
ける色空間制御方式の研究開発では、評価基準となる標準映像や評価システムの基準視聴環境である
標準劇場の開発を通じて、制御基準点、制御すべきパラメータ、制御の範囲等は、実証実験を完了して
いる。即ち、色空間のマニュアル調整手順ともいうべき方法論は確認できた。
この制御システムを現場レベルにて実際に動かし、有用性を確認するには、実際の上映・表示環境に
適応可能な、3次元パラメータの自動調整アルゴリズムが必要である。この自動調整アルゴリズムの概念と
モデルの原型の確認は既に実施されて、それなりの制御精度も計算されているが、市場にあるデジタル
機器の主要スペックを全てカバーした自動制御のためのアルゴリズムの開発と実証実験が必要である。
具体的な開発に当たっては、次のステップの課題として、デジタル機器の開発、製品化を行っているメー
カーとの共同開発を行うことが必須である。
更に、本システムの具体的な製品化を前提とした製品開発ににも適応可能なアルゴリズム開発にレベ
ルアップを図らなければならない。
(3)標準映像による映像評価システムの構築
本プロジェクトの成果物として完成した、ハイビジョン品質の標準映像シーケンスCoSMEは、デジタル映
像(シネマ)の標準評価画像として位置づけられるものであるが、世界的にも貴重な本映像シーケンスを生
かす意味でも、将来、我が国初の映像シーケンスの公的な評価機関が必要である。
シアターはもとより、パブリックスペースや家庭でも、デジタル大型表示装置の普及が著しい今日、日本
がこの分野で指導的役割を果たす意味でも、常設の公的な映像評価機関と自動システムの構築は、是非
とも実現したい重要検討課題である。
また、映像業界においては、標準映像“CoSME”は、デジタル映像(シネマ)分野に限らず、幅広い一般
の映像機器の評価でも活用が可能であるとの関係者の評価を受けているので、この方面への応用展開も
検討してゆきたい。
(4)人材育成
本プロジェクトから生まれたDSS(Dynamic Scene Simulator)およびDMD(Digital Movie Director)等の
デジタル技術を駆使した簡便で高品質なコンテンツ制作プログラムを基に,チュートリアル・カリキュラムを
作成し、映像クリエータ及び編集技術者を目指す高校生、大学生を対象に人材育成セミナー等の事業を
実施し、我が国における映像制作人口の底辺拡大を目指すことで、コンテンツ立国の実現に寄与したい。
(5)内外における制作から上映までのモデル事業の展開
本プロジェクトの成果として、大きくまとめ上げた「デジタル映像(シネマ)共通仕様」に準拠した一連の
プロセスに基き、コンテンツ映像の制作から上映までの一連のValue Chain に準拠したビジネスモデルは、
高画質デジタルコンテンツ流通を軸とする流通モデルの世界的なさきがけとなりうる事業モデルである。
今後、関係各方面に働きかけて、このビジネスモデルの事業化展開を是非とも実現したい。
また、対策主義のハリウッド的手法から脱却し、我が国の映像産業を揺ぎ無い軸に固める意味でも、日
中韓フォーラムによる共同コンテンツ制作の実現も有力な目標達成の手法であろう。
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