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マーケティングの基本戦略「4P」
マーケティングの基本戦略「4P」 これまで、「マーケティングの基礎知識」「マーケティングにおける差別化のやり方」につい て連載してきましたが、今回は、具体的にマーケティング戦略を策定するにあたって、必要とな る基礎知識についてご紹介します。 1 4Pとは 4Pとは、マーケティングの基本戦略であり、ターゲット(顧客・市場)に働きかける具体 的施策を考えるツールです。 「どのような製品を(製品:Product)」、 「いくらで(価格:Price)」、 「どこに(売場・流通:Place)」、「どのように(販売促進:Promotion)」、販売していくか、タ ーゲットとする顧客・市場に受け入れられるように、これら4つの組み合わせを検討し戦略的 に販売強化を図ろうとする考え方です(それぞれの頭文字の「P」をとって、「4P」といい ます)。また、この4つのPを組み合わせて戦略化することをマーケティングミックスといい ます。 (1)商品戦略(Product) 商品戦略は、お客様に買っていただけるにはどんなものを作るか、競合品との違いは何か、 自分の商品の特徴は何かなどを企画することです。ターゲットに提供する商品そのものの戦 略であるため、マーケティングミックスの中でも重要な位置づけにあります。 図1は、プロダクト3層モデルと呼ばれるものです。商品の価値を「中核」、 「実体」 、「付 随機能」の3層に分けて捉える考え方で、商品を企画する際に有用な手段です。 「中核部分」は、お客様が商品から得られるメリットのことで、例えば「安心して食べる ことができる」などです。 「実体」は製品の中核部分を具現 化したもので、「有機栽培米、特別 ○商品の核となるもの 栽培米」などになります。商品の特 ○お客様のニーズに応える便 付随機能 徴ですので、自社商品の「強み」は 利で有益なもの 実体部分 何か、競合品との「違い」は何か、 【例】 ・簡単に食べることができる 商品の「売り」は何かということに ・安心して食べることができる 中核 なります。商品に対するこだわりや 部分 など 栽培方法、気候風土、歴史的な謂れ など、商品ストーリーを明確にして ○商品の特徴、品質、デザイ おくことが重要です。また、商品の ン、パッケージ、量目など 【例】 特徴をパッケージ等に記載すること ・無洗米、パックご飯 も大切です。 ・有機栽培米、特別栽培米 ○保証、アフターサービスなど 「付随機能」はアフターサービス ・真空パック、3合パック など の付随的なサービス やオプション的なサービスなどで、 【例】 ・指定日配達 「指定日配達」や「年間予約割引」 ・年間予約割引 「不良品に対する交換」、「丁寧なク ・不良品に対する対応 など レーム対応」などが挙げられます。 図1 プロダクト3層モデル (2)価格戦略(Price) 価格の決め方にはいくつかあります。市場価格を参考にすることも大事ですが、類似商品 でも製造費用は同じとは限りません。製造にかかる費用を下回る価格では、経営は成り立た なくなってしまいます。また、商談場面での価格交渉の判断材料にもなりますので、市場価 格の他に自社商品の「製造原価」や「販売管理費」等を踏まえて、価格を設定することが重 要です。 -1 - また、価格戦略においては、販売価格の設定の他に、現金決済、代引き決裁、クレジット カード決済などの決済方法や値引き条件等についても検討しておくと良いでしょう。 (3)流通戦略(Place) 流通戦略は、自社商品をどこで売るか(販売方法)を考えるものです。一般消費者への販 売方法は直接販売、卸販売、委託販売などの形態があります(表1参照)。また、一般消費 者への販売だけでなく、旅館やレストランなどの飲食業や食品製造業、菓子製造業などへの 業務用販売も販路の選択肢として考えられます。 ここで留意することは、「誰に」「どんな価値(商品の強み)を」提供するかが、予め明 確になっているかどうかということです。例えば、「清流棚田で特殊農法により栽培した有 機栽培米を」「高価格で販売する」とした場合、「市内の低価格志向のスーパーで」「幅広い 層をターゲットに」販売するといった戦略は、良いものでしょうか。低価格志向のスーパー に来るお客様は、なるべく安いものが欲しいと思っているでしょうから、この例においては、 「年齢層の高い都市部に住む食に対するこだわりを持っている人」に「高級百貨店や自社サ イトで」販売するといった戦略の方が整合性がとれていると考えられます。流通戦略は自社 商品が売れる場所、売れる方法を考えることが重要です。 表1 一般消費者向けの主な販売方法 販売方法 特 徴 直接販売 自社直売所、宅配便、インターネット販売など。 顧客の反応がわかり、商品やサービスの改善につながりやすい。 インターネットモール(楽天市場、アマゾンなど)を利用した販売は、販売手 数料がかかる。 卸 販 売 スーパーマーケット、百貨店、小売業者モールなどに販売する。 小売業者等の利益を織り込む必要があり、その分売値が安くなる。 委託販売 近隣の直売所など、商品を預けて販売してもらう。商品が売れたら販売額に一 定率を掛けた販売手数料が必要。また、売れ残りがあった場合の引き取り条件 などの確認が必要。 (4)販売促進戦略(Promotion) 販売促進戦略は、一般消費者やバイヤーに商品の存在を知らせ、需要を喚起させる方法を 考えるものです。どんなにすばらしい商品であっても、お客様に知ってもらわなければ販売 には結びつきません。積極的に販売促進活動を行い、お客様に情報を伝達することが重要で す。 販売促進活動は、大きく4つに分かれます(表2参照)。これらは、単独で展開するので はなく、相互に組み合わせることで相乗効果の発揮が期待できます。 表2 広 販売促進活動の種類 告 テレビやラジオ、新聞などによる広告(企業主体) 消費者の需要を 喚起する戦略 パブ リシ テ ィ テレビや雑誌記事などで紹介(メディア主体) 人 的 販 売 販売員が顧客に直接情報を伝達し、購入を促進 セールス・プロモーション POP広告、展示会、実演、サンプル提供、景品付き販売 -2 - 消費者の購入に 結びつける戦略 「広告」は、企業側が広告主となり企業側の負担で、メッセージを伝達する活動です。知 名度向上に期待できますが、広告費用が高いことや、一過性のためメッセージ効果が短命に なるデメリットもありますので、費用対効果を十分留意して行う必要があります。 「パブリシティ」は、テレビや新聞、雑誌などのメディアが記事として取り上げてくれる もので、広告のような費用を必要とせず、原則無料であり、また消費者に与えるインパクト が強く、信頼されやすいというメリットがあります。ただし、報道されるか否かは報道機関 の判断となります。報道機関にとっていかに有益で良質な情報であるかが大きなポイントに なります。プレスリリース(報道関係者への発表)においては、インパクトのある標題やイ メージしやすい内容にするなど、自社商品の情報を取り上げてもらうような工夫が必要です が、何よりも、特徴(強み、売り) ・ストーリーのある商品であることが大前提です。 「人的販売」は、顧客のニーズに合った対応が可能であり、また複雑な商品情報も伝達し やすいというメリットがありますが、販売員の能力や人柄に依存されるため、販売員教育が 重要になります。 「セールス・プロモーション」は、POPやパンフレット、試食、展示会などを通じ商品 を理解してもらい、購入に至ってもらう活動です。購入後もダイレクトメールなどにより、 リピーターにするような活動も含まれます。POPやパンフレットは、商品の特徴などを簡 潔にわかりやすく記載することが重要です。 2 マーケティングミックス(4P)の留意点 1の(3)流通戦略で一例を紹介しましたが、4つの戦略間で整合性がとれていない場合は、 マーケティングそのものが失敗に終わってしまうことがあります。4Pの決定順位は、一般的 に(1)商品、(2)価格、(3)流通(売場)、(4)販売促進活動となりますが、各戦略を 検討している段階や販売開始後の売れ行き状況、お客様の反応などから、商品企画などの見直 しも必要になります(表3参照)。 表3 商品企画の見直し例 商品企画 価格設定 見直し内容 地 域 特産 の果 物 を 使用 した 果汁100%ジュ ース 規格: 1リットル/本 1,000円 (1本) ○まずは知ってもらうこ とが重要ではないか ○お求めやすい1本200ミリリ ットル、250円の小ボトル もラインナップ ○ジュースの良さを認知 してもらい。1リットル商 品への購入につなげる 図2 4Pの相関 4Pの各戦略は独立したものではなく、戦略間で密接に関わっています(図2参照)。良い商 品を作っても、販路がなければ売れませんし、すばらしいプロモーション戦略を考えても、価格 とマッチしていなければ売れません。4Pの各戦略間で整合性のとれていないところがないかを 確認しながら、随時見直し、上手に組み合わせていくことが、良い戦略づくりにつながります。 【経営普及課 農業革新支援担当 原田 惇】 -3 -