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CCS 指令の国内法化を経た EU 加盟国における CCS 実証プロジ ェクト

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CCS 指令の国内法化を経た EU 加盟国における CCS 実証プロジ ェクト
CCS 指令の国内法化を経た EU
加盟国における CCS 実証プロジ
ェクトの許認可の検証
The experience of CCS demonstration projects in the
European Union with the transposition of the CCS
Directive
Prepared by Dentons
October 2013
1
“The experience of CCS demonstration projects in the European Union with the transposition of
the CCS Directive” has been translated from English into Japanese for convenience. The
Global CCS Institute does not warrant the accuracy, authenticity or completeness of any
content translated in the Japanese version of the Report.
2
Executive Summary
本報告書の主な目的は、欧州連合(EU)加盟国から幾つかを選び、CO2回収貯留(CCS)実証プロジェクト
開発者が、CO2の地中貯留に関するEC指令2009/31/EC(CCS指令)の国内法化という状況下での彼らの
プロジェクトの許認可プロセスから得た教訓の概要を示すことである。本報告書では、以下を検証する。

CCS実証プロジェクトをもっている次の4つの選ばれたEU加盟国におけるCCS指令の国内法化プロセ
ス。すなわち、英国(UK)のDon Valleyプロジェクト、オランダのMaasvlakte CCS Project CV、
「Rotterdam Opslag en Afvang Demonstratieproject」(ROAD)プロジェクト、スペインのCompostilla
プロジェクト、およびノルウェーのMongstadプロジェクト。

これらのCCS実証プロジェクトの許認可プロセス。
分析対象として当初選定したEU加盟国およびCCS実証プロジェクトには、イタリアのPorto Tolleプロジェクト
およびポーランドのBelchatowプロジェクトが含まれていた。しかし、主にこれらの国の規制の枠組みの状況
とそれらのプロジェクトの許認可状況が理由で、最終報告書には含まれなかった。ポーランドの閣僚評議会
によるCCS指令の国内法化法案は、2013年4月30日に初めて採択された。この法案は、次に、ポーランド
の立法手続きを議会–上院–大統領という順に進む必要がある。加えて、2013年4月に、Belchatowプロジェ
クトは保留となった。一方、イタリアのPorto Tolleプロジェクトは、環境影響評価の承認を得ることと、石炭火
力発電所に対する環境面での認可を得ることが困難であるため、許認可が遅れている。
本報告書では、選定した加盟諸国の規制枠組みに関する情報も提供するが、主に選定したCCS実証プロジ
ェクトにおける実際の経験を統合し、許認可のプロセスにおいてプロジェクトの開発者が最も頻繁に直面す
る共通の課題を明らかにすることを目的とする。従って、規制枠組みに関する情報は、主にプロジェクト開発
者が直面する課題の背景を説明する目的で選定した。本報告書においては、規制枠組みに関する包括的
な情報を提供する意図はない。
さらに、本報告書では、許認可に関する課題について、2013年10月時点までにプロジェクト開発者および所
轄官庁により特定された解決策も示す。当方の調査では、プロジェクト開発者および所轄官庁の双方が、多
くの課題(例えば、財務的に保証されるべき金額、健康および安全要件)について、解決策を模索中である。
選定されたEU加盟国のプロジェクトが現在の開発フェーズから建設フェーズおよび操業フェーズへと移行す
るにつれて解決策を成熟させていくには、当然、さらに時間が必要であると考えられる。しかし、最初のプロ
ジェクトは、課題に対する明確な解決策が無いまま建設、操業段階へ進むという困難がある可能性があるた
め、悪循環に陥る可能性がある。
本報告書では、以下を検討する。

CCS実証プロジェクトを有する選定されたEU加盟国における国内法化プロセスの一覧表(国内法化の
方法も含む)

選定されたEU加盟国の既存の法律とEU CCS指令の関係の一覧表

様々なプロジェクトの規制プロセスの一覧表 - プロジェクトの立場、適用される許認可、直面する規制ギ
ャップ、障壁の種類

最も重要な共通の障壁の選定

潜在的な解決策の概要
本報告書は、選定された加盟国におけるCCS指令の国内法化プロセスに関する公的に入手可能な情報の
調査、および選定プロジェクトの開発者へのインタビューに基づいて作成された。質問一式はプロジェクトご
とに作成され、全てのプロジェクト開発者を対象とした質問もあるが、特定のプロジェクトの開発者を対象とし
た質問もある。インタビューは所轄官庁に対しても行い、可能な場合は政策の専門家にも行った。
3
調査およびインタビューの結果、以下がCCSプロジェクト開発者にとっての主な規制上の課題であることが
明らかになった。

責任の移転(CCS指令第18条):責任の移転および20年ルールに関する明確な基準がない、すなわ
ち、20年を経過する前に貯留されたCO2が完全かつ恒久的に封じ込められたと所轄官庁が認める場合
を除いては、責任の移転は最低でも20年を経過しないと行えない。

財務的保証(CCS指令第19条): 財務的保証金額の計算方法が存在せず、また長期的に見て欧州連
合排出枠(EUA)の価格に不透明感がある。後者は依然として、財務的保証に関する最も重大なリスク
である。理由は、漏出が発生する可能性に対する長期的責任があるため、投資家を安心させるのに十
分な正確さでEUAの価格の将来の変動をモデル化することが困難であるためである。

財政カニズム(CCS指令第20条):財政負担額、すなわち開発者に課せられた30年間にわたるモニタリ
ングの費用に加え、責任の移転後にCO2が確実に安全に貯留されるために所轄官庁が負担する費用
が開発事業者の負担とされかねず、事実上の責任の移転とならない可能性がある。
しかし、本報告書の第 8 章と 9 章で論じるように、これらの課題は、主にプロジェクト開発者と該当する当局
が緊密に連携することにより克服できる。ノルウェーの Sleipner プロジェクトおよび Snohvit プロジェクトなら
びにオランダの ROAD プロジェクトでは、関係当局とプロジェクト開発者が協力して CCS プロジェクトが許
可を受け操業可能とする方法が実証された。従って、許認可取得プロセスの成功は、CCS 指令の国内法化
に採用される手法にはあまり左右されない可能性がある。オランダの ROAD プロジェクトでは、CCS 指令を
逐語的に国内法化した場合でさえ貯留の許可が保証され得ることを実証しており、一方で、ノルウェーの
Sleipner CO2 プロジェクトおよび Snohvit CO2 プロジェクトは、すでに何年にもわたり CCS に特化した法律
なしに、石油・ガス規制に基づき操業を実施している。
4
1 イントロダクション
EUにおけるCCSの規制枠組みはCCS指令に基づいており、加盟国には2011年6月25日までに自国の法
律へCCS指令を置換えることが義務付けられている。
基本的にCCS指令は、全加盟国が準拠する必要がある原則(例えば、水柱へのCO2の貯留は許可されな
い、漏出の重大な危険、環境や健康への影響のない貯留サイトのみを選択しなければならない)とルール
(例えば、閉鎖および閉鎖後の責任を保証する財務規定設定の義務付け)を設定することにより、EC全体に
わたるCCSの規制枠組みの共通の基準を規定している。同時に、CCS指令には、EUに適用される補完性
原理1に基づいて、多くの課題を個々の加盟国がより詳細に規制するべきものとしている(例えば、責任の移
転を実現するための財政支援手段)。
2013年7月1日までで、完全な国内法化方策をECに通知した加盟国は9カ国のみであった(例えば、フラン
ス、イタリア、ルーマニア、オランダ)2。2013年3月に、ECはこの時点までにCCS指令のなんらかの国内法
化策をまだECに通知していない加盟国は1カ国のみであると述べていた3。
CCS指令を逐語的に国内法化することを選択する加盟国もある(例えば、オランダ)。この場合は、それぞれ
のプロジェクト毎に多くの側面を調整することになる。それぞれのCCSプロジェクトで特殊な要件があるた
め、このアプローチはプロジェクト開発者に支持された。CCS指令では各国の裁量に任された側面を、より
詳細に規制しつつ国内法化することを選択した国もあった(例えば、英国)。
加盟国が選択した転換方法に関係なく、インタビュー対象者は一般に責任の移譲(第18条)、財務的保証
(第19条)、財政メカニズム(第20条)についてのCCS指令規定が広義すぎるという点で意見が一致して
いる。従って、CCSプロジェクトは、対処に多額の費用がかかるかもしれない大きな不確実性にさらされて
いる。特に、プロジェクト開発者は、20年の期間を経過する前の責任の移転に明確な基準がないこと、漏
出が起こった場合のEUAの価格、および財政メカニズムに基づく財政負担額を懸念している。
さらに、CO2の地層貯留と炭化水素増進回収(EHR)を組み合わせると、CCSプロジェクトのビジネスケース
が改善される可能性があり、プロジェクト開発者の選択肢の1つとして推奨済みであるにも関わらず、CCSプ
ロジェクトにおいてEHRを使用する場合についてCCS指令では規制されていない。CCS指令では、EHRに
ついては序文で言及するのみであり、EHRはCCS指令の範囲には含まれないが、CO2の地中貯留と組み
合わせる場合のみ範囲に含まれるとしている。この序文にはいかなる規制上の強制力もなく、単に規制法
の規定の解釈の支援として機能するので、CCS指令は次の2通りに解釈される可能性がある:(i)CCS指令
は、EHR操業を通じて圧入された再利用されないCO2に適用される、または(ii)CCS指令は、EHR操業の
終了後のCO2貯留のみに適用される。後者の解釈は、CCS指令の全体的な目的により適っているように見
える。CCS指令の全体的な目的とは、「地下地層へのCO2ストリームの貯留を伴う圧入」(CCS指令第3(1)
項)4と定義されるように、環境に安全で恒久的なCO2の地層貯留である。
1補完性原理は、EU
およびその加盟国で共有されている権限分野において最適な介入レベルを決定すること目的としている。これ
は、欧州レベル、国家レベル、地域レベルでの措置に関わる可能性がある。全てのケースにおいて、EU は、加盟国よりも効果的に
役割を果たせる場合のみ介入することができる。
2 9 件のケースが 2013 年 7 月 1 日までに完全な国内法化策を通知され、完了している(デンマーク、フランス、イタリア、リトアニア、
マルタ、オランダ、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア)。17 のケースが、まったく通知されていないか一部通知されておらず、未了
である(欧州総局気候政策調整官との電子メール通信から入手した情報– ユニット C.1、欧州委員会)。
3欧州委員会、27.3.2013, COM(2013) 180 最終、欧州における CO2 回収貯留の将来に関する委員会から欧州議会、評議会、欧
州社会経済評議会および地域委員会とのコミュニケーション内容は、
http://ec.europa.eu/energy/coal/doc/com_2013_0180_ccs_en.pdf により閲覧可。最新のアクセスは 2013 年 8 月 22 日。
4 Macrory、Richard & all、2013 年、「CO2 – 石油増進回収の法的ステータス」は、
http://carbcap.geos.ed.ac.uk/website/publications/SCCS-CO2-EOR-JIP-WP6-Legal.pdf、で閲覧可能。最新アクセス 2013 年 8
月 22 日
5
EUにおけるCCSプロジェクトの実績数が限られているため、プロジェクト開発者と所轄官庁の双方が感じる
不確実性と相まって、EU全体にわたってCCSプロジェクトの導入を100%民間投資とすることが非常に難しく
なっている。
従って、EUはNER300プログラムを通じた資金提供を試みた。しかし、2012年にこのプログラムの第一回公
募で資金提供を受けたCCS実証プロジェクトは1件もなかった。第二回目の公募は2013年10月現在、実施
中であり、英国のみがNER300の資金提供先としてWhite Rose CCSプロジェクトを提示している。他のEU
加盟国からは、NER300の第二回公募へのCCSプロジェクトの提案はない5。
さらに、英国などの加盟国は、CCSプロジェクト向けの資金提供のコンペ制度を自国で設立済みである。英
国ではまた、電力市場改革を通じたCCSプロジェクト支援を想定しているが、現在は保留中となっている。こ
こでは発電所が発電した電気に高めの価格を設定し、対象となる低炭素技術への投資家にとって卸売価格
リスクを緩和する差金決済取引の一部とすることを目指している。
これらの不確定性とそれに伴うリスクがあるにもかかわらず、許認可取得に向けた進展が見られるEU内の
CCS実証プロジェクトもある。オランダで進行中のROADプロジェクトは、2012年に貯留の許可を受けたEU
初のCCS実証プロジェクトである。
インタビューにより、資金調達の際およびプロジェクトの許認可を受ける際にプロジェクト開発者にとって以下
の多くの教訓があったことが分かった。
重要な教訓:







許認可プロセスはプロジェクト開発者および所轄官庁の双方にとって一種の習熟曲線となる。従っ
て、許可申請前に所轄官庁と建設的な対話をするべきである。
現在の財政状況の下では、リスクに対処しやすく、より低コストで様々な経験を積めるという理由か
ら、より小規模な実証プロジェクトの方が所轄官庁から財政支援を得るうえで有利である。
CCS指令の国内法化プロセスが保留中となっているため、また相関性の高い規制を開発するため
に、最初のCCS実証プロジェクトの許認可にはより長く時間がかかる。
加盟国が開発した貯留サイトマップがないため、プロジェクト開発者が大きな負担を負うことになる。
プロジェクト開発者は、特定の貯留サイトが貯留に適しているとわかる前であっても、ほとんどの場
合、許認可を得るために貯留サイトを特定するのに多額の資金を先行投資しなければならない。
輸送パイプラインの健康と安全要件に関する明確な規制がないため、どこまで安全を高めれば、安
全と認めてくれるのかを判断し、その判断に対して所轄官庁を納得させなければならないというプレ
ッシャーがプロジェクト開発者にかかる。
所轄官庁は、採掘および石油・ガスプロジェクトに対する許認可に関する知識に依存している。
財務的な意思決定はプロジェクトがすべての許認可を得られるかどうかにかかっているため、プロジ
ェクトが悪循環に陥る可能性がある。一方、許認可を得るためには、開発者は許認可が得られる保
証のないまま、多額の資金を投じて膨大な詳細資料の準備をしなくてはならない可能性がある。
この情報は以下の URL で入手可能。http://ec.europa.eu/clima/funding/ner300/index_en.htm、最新ア
クセスは 2013 年 8 月 22 日
5
6
6 共通の障壁と可能性のある解決策の概要
選定されたCCS実証プロジェクトに共通し最も頻繁に引き合いに出される障壁に、次のようなものが含まれ
るのは当然である。すなわち財務的保証、財政メカニズムに基づく財政負担、責任の移転、ならびに輸送パ
イプラインの健康および安全要件である。本項では、これらの障壁の潜在的な解決策を提案する。
容易に参照できるように、これらの障壁を提案された解決策と共に以下の表にまとめ、次いでより詳細に検
討した。
障 壁
財務的保証
主要な問題
EUAの将来の価格の不確実性
財政メカニズム
財政負担の金額
責任の移転
20年ルールと明確な基準の欠如
輸送パイプラインの健康&
安全要件
CO2を危険物として取り扱うよう
にとの勧告にも関わらず特定の
要件がない
提案された解決策
加盟国がEUA価格の「上限と下限」に
ついて合意する
恒久的に貯留サイトに封じ込めるCO2
の責任の移転後に加盟国が負担する
可能性がある費用の上限
20年ルールについては、このルールに
より設定された文脈内で解決策に合意
するよりも、むしろこのルールを撤廃す
ることに関して議論がなされている。
作業は進展しているように思われる。
財務的保証
財務的保証についての主な不確定要素は、長期的に見たEUA価格に関するものである。ECは、EUA価格
が不確実であること、およびその不確実性がCCSプロジェクトに及ぼし得るマイナスの影響を認識している。
EUA価格に関する不確実要素に対処するための潜在的な解決策は、加盟国がEUA価格の上限と下限につ
いて合意することが考えられる。加盟国は、合意した限度価格を超えるEUAの価格に伴うリスクを引き受け
ることになり、従って、EUAの価格に関する不確定要素により損害が発生するリスクをプロジェクト開発者と
共有する。EUA価格の上限と下限が決まれば、プロジェクト開発者は損害が発生する可能性を定量化でき
るようになり、結果的に妥当なコストで資金調達ができる可能性が高くなるという恩恵を受ける。資金調達の
コストは一般にプロジェクトのリスクのレベルにより異なる。すなわち、リスクが高いほどコストも高くなり、逆
もまた同様である。
法的責任を共有する戦略は、

「汚染者負担の原則」からの逸脱であると解釈される可能性がある。なぜなら汚染者(すなわちCCSプ
ロジェクト開発者)の代わりに加盟国が、合意された上限価格を超えるEUAに伴うリスクを最終的に公
的資金から埋め合わせる可能性があるからである。このような逸脱は社会的受容の面で重大な問題を
引き起こす可能性がある。特に、本報告書の発行日現在、CCSプロジェクトについてはっきりとした実績
のないEUにおいてはその可能性が高い。

ECの承認も必要となる可能性がある。なぜなら加盟国が最終的に利用できる公的資金は、結局のとこ
ろ国家からの補助金であるからである。しかし、またこのような戦略により潜在的な融資者が現れるとい
う安心感が増す。EUの審査を要する国家からの補助金交付手続きには、長い期間がかかる可能性が
あり、また、国に専用の補助金制度がない場合、特にこのようなケースでEUの承認を受ける加盟国
は、手続のために非常に重い負担を負う可能性がある。
7
原則の問題として、ECが将来のEUA価格の長期的推定を推奨しないことは注目に値する。関連の財務的
保証を確立するために、加盟国は、時価(高値と安値)または短期のEUA価格(今後3~5年の間、高値と安
値)の推定値を使用し、次に財務的保証の定期的な更新の一環として、財務的保証額を定期的に(例:3年
~5年ごと)更新する必要がある6。
財政メカニズム
財政メカニズム(CCS指令の第20条)の下での課題は、責任を移転する前に、プロジェクト開発者に必要な
財政負担額の上限を加盟諸国の所轄官庁も入手できるようにしておくことである。財政負担の上限が設定
できない場合、CO2を確実に恒久的に封じ込めるために所轄官庁が随時負担するすべての費用(30年間で
見込まれるモニタリング費用を含む)は、責任の移転後、プロジェクト開発者が継続して負担する責任がある
という議論が起こる可能性がある。このアプローチでは、プロジェクト開発者は損害が発生する可能性を定
量化できなくなり、代替の解決策を探さなければならないため、投資決定のプロセスが遅れることになる。
オランダとノルウェーの当局は、CCS指令規定よりも大胆なアプローチを行ったが、財政支援に上限を定め
ることには合意した。この結果、ROADは貯留ライセンスを確保することとなり、また、Sleipnerプロジェクトお
よびSnohvitプロジェクトはノルウェーで操業可能となっている。
例としては、ROADとオランダの所轄官庁の代表者は、財政支援は専らモニタリング費用に充てられ、移譲
後にCO2が確実に恒久的に貯留サイトに封じ込められるために所轄官庁が負担する費用は含まないことに
合意した。
一方、ノルウェーは現在、財政支援は以下の2つの要素により決まるとしている。すなわち、貯留設備ごとの
特定の条件およびCO2貯留量である。これらの2つの要素に基づき、漏出の可能性やそれに伴う費用を決
定できる。
責任の移転
責任の移譲に関する基準が明確でないので、決定の特権が所轄官庁(プロジェクト開発者が作成した文書
に基づき責任の移転が機能できるかどうかを評価する立場である)に帰属し、特に政治的な圧力にさらされ
た場合、責任の移転の承認また拒否における所轄官庁による決定の客観性が保証されないことになる。こ
のリスクは、モニタリング、保険等の高い費用を伴う20年ルールにより増大する。
調査からも、この障壁の対処についてプロジェクト開発者と所轄官庁の間で合意された解決策は特定できな
かった。(プロジェクト開発者レベルでの)責任の移転に関する論議の大部分は、CCS指令からの20年ルー
ルの撤廃が中心となっている。理論的には、責任の移転は20年を経過する前に実行可能であるが、プロジ
ェクト開発者は、20年経過より前に責任の移転の条件を満たしているか否かを評価する際に所轄官庁があ
まりに大きな権限を持ち過ぎていることを懸念している。さらに、恒常的な技術開発との関連から、責任の移
転のために満たすべき条件としての要件が、20年の間に変わる可能性がある。
一方、EC は以下を強調している。すなわち、(a)CCS 指令の 20 年ルールはあるものの、基準に基づいた
責任の移転の重要性、および(b)責任の移転において EC が果たす役割。決定草案およびその根拠となる
報告書は、EC に提出されるものとする。責任の移転の承認決定草案を受領後 4 カ月以内に、EC は法的
拘束力のない見解を表明することがある(EC との電子メール通信より)。
輸送パイプラインの健康&安全要件
CO2輸送パイプラインにより健康および安全に関する問題が生じる可能性があることは一般的に認識されて
いるが、調査対象のCCS指令または国内規制の枠組みのいずれにおいても、結局、特定の要件は規定さ
れていなかった。このような特定の要件がない状況では、主な問題点は、石油・ガスのような部門で適用さ
6
欧州総局気候政策調整官との電子メール通信から入手した情報– ユニット C.1、欧州委員会。
8
れる要件がそのままCO2輸送パイプラインにも適用できるかどうかという疑問である。CO2は、大規模災害
管理規則(COMAH)に基づく危険物質には分類されていない。
EUにおいてCCSプロジェクトのはっきりとした実績がなく、CCSプロジェクトが社会的に受容されていないこ
とが、CO2輸送パイプラインについて具体的な健康および安全の要件が必要かどうかについての所轄官庁
の意思決定のプロセスにも影響を及ぼす可能性がある。
他にも、以下のような障壁がある。

EUにおいてCCSプロジェクトのはっきりとした実績がないため、許認可のプロセスが時間のかかる先行
きの見えないものとなり、遅延や予算超過につながる可能性がある。

加盟国が作成した貯留サイトの公式マップがないため、貯留サイトを特定する負担がすべてプロジェク
ト開発者にかかる。プロジェクト開発者は、候補サイトが貯留活動に適合しているという確証は一切なし
に、この先行投資にかなりのリソースを投入することになる。
9
7 結論
EU全域にわたるCCS規制の枠組みは大きく進歩したが、それでも国民や潜在的な融資者の両方の信頼を
得るために実地での経験を積むべきである。実際の経験がこれら規制の枠組みの改善にも貢献する。しか
し、さらに調整を必要とする(例えば、石油増進回収プロジェクトとの組み合わせには規制がないこと)、また
は単により明確な規制の枠組みを必要とする(例えば、財務メカニズムの下で財政負担を決定するための
詳細な基準、責任の移転を成功裏に行うために20年の期間を短縮する条件)極めて重要なポイントがある。
このような極めて重要なポイントついての明確な規制がない場合には、規制枠組みを作成するための十分
な速さで、或いは十分な件数でCCSプロジェクトが開発されることはないであろう。この種の最初のプロジェ
クトでは、このプロセスにおいて許認可の遅延と予算超過が生じる可能性がある。
さらに、上記のように極めて重要なポイントについて(明確な)規制がないことから、CCSプロジェクトへの資
金提供のコストが増大する。他の新しい技術同様、現時点では、CCSプロジェクトの開発を加盟国が財政的
に支援しない限り(直接または間接的に、例えば、EUA価格が不確実であることに伴うリスクを共有する、ま
たはCCSプロジェクトの一部である発電所が発電した電気に割増料金を支払うことにより)、および/または
関連する責任の共有やCCSプロジェクトの資金調達を促進するメカニズムを確立しない限り、CCSプロジェ
クトは商業的操業へは移行しない可能性がある。
許認可のプロセスが成功するかどうかは、CCS指令の国内法化のために選択した手法にかかわらず、その
プロセス中における、所轄官庁の配慮に大きくかかっている。基本的に、規制上のギャップは、プロジェクト
特有の要件を考慮し、プロジェクト開発者と管轄官庁が緊密に連携することによって克服できる。
従って、1つの国内法化手法が他の手法より優れていると主張することはできない。ROADプロジェクトは、
追加の調整は一切なしにCCS指令を逐語的に国内法化する場合でも、貯留の許認可を得られることを実証
済みである。さらに、専用の法律がない場合であってもノルウェーのSleipner CO2圧入プロジェクトおよび
Snohvit CO2圧入プロジェクトは、石油・ガス規制に基づき、すでに長年、操業が行われている。
CCSプロジェクト開発の主な障壁を巡るあらゆる議論は行われているが、残る大きな問題は、これらの議論
の結論が出るのが2015年に予定されているCCS指令の最初の改訂の前か後かということである。基本的
に、財政メカニズムに基づく財政支援などの極めて重要なポイントへの対処や、CCSと組み合わせた石油
増進回収操業に関する規制の枠組みを作成するために個別に措置を講じるか否か、またはまずCCS指令
の改訂を待つかどうかは、オランダやノルウェーの例のように加盟国が決めることになる。
もちろん、2015 年に予定されている CCS 指令の見直しが実行されるか否か、または見直しが必要か否か
といった問題もある。EU 全域において CCS 実証プロジェクトに関する十分な情報が存在しないため、EC
が 2015 年に CCS 指令の見直しをするべきではないと主張することもあり得る。産業界もまた、CCS 指令
の見直しに CCS プロジェクトの進展を妨げる主な障壁を解決するほどのメリットがあるか否かについて論議
中である。特に、オランダとノルウェーの例では、所轄官庁を代表したコミットメントの問題というよりは、プロ
ジェクト開発者との緊密な連携の問題であることが証明されている7。
7
2013 年 5 月の CCS ネットワーク会議における議論より得た情報
10
Contents of the Original document
Executive Summary ...................................................................................................................... 3
Terms and abbreviations .............................................................................................................. 5
1 INTRODUCTION ....................................................................................................................... 6
2 THE UNITED KINGDOM ........................................................................................................... 8
2.1 Implementation of CCS Directive: transposition process and inventory of existing related
legislation ............................................................................................................................ 8
2.2 Don Valley Project Overview ............................................................................................. 10
2.3 Development status of Don Valley Project ......................................................................... 10
2.4 Main barriers to development and solutions proposed ....................................................... 11
3 THE NETHERLANDS ..............................................................................................................
3.1 Implementation of CCS Directive: transposition process and inventory of existing related
legislation ..........................................................................................................................
3.2 ROAD Project Overview ....................................................................................................
3.3 Development status of ROAD ............................................................................................
3.4 Main barriers to development and solutions proposed .......................................................
13
4 SPAIN ......................................................................................................................................
4.1 Implementation of CCS Directive: transposition process and inventory of existing related
legislation ..........................................................................................................................
4.2 Compostilla Oxy CFB 300 (“Compostilla”) Project Overview ..............................................
4.3 Development status of Compostilla Project ........................................................................
4.4 Main barriers to development and solutions proposed .......................................................
16
5 THE KINGDOM OF NORWAY .................................................................................................
5.1 Implementation of CCS Directive: transposition process and inventory of existing related
legislation ..........................................................................................................................
5.2 Mongstad and Sleipner Projects Overviews .......................................................................
5.3 Development status of Mongstad and Sleipner Projects ....................................................
5.4 Main barriers to development and solutions proposed .......................................................
21
13
13
13
14
16
18
18
19
21
23
23
24
6 SELECTION OF COMMON BARRIERS AND OVERVIEW OF POTENTIAL SOLUTIONS ...... 28
7 CONCLUSIONS ...................................................................................................................... 31
REFERENCES .................................................................................................................. .......... 32
11
12
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