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ASICレベルの性能が求められる次世代 FPGAの合成
ASICレベルの性能が求められる次世代 FPGAの合成 Tom Hill / Product Manager - Precision Synthesis, Mentor Graphics. [email protected] FPGAをASICに匹敵するレベルまで引き上げた技術革新は、同時に設計・検証において新たな課題を 提起することになりました。これらの課題に対処するには、さらに優れた手法とデバッグ機能が必要です。 Mentor Graphics社のPrecision Synthesisツールは、これらの要求に対処します。 変化の激しいプログラマブル・ロジックの世界にあってEDAベ 3. 高度な解析 ンダは、シリコンの複雑化と高機能化に対応していくために、常に 新しい設計ツールと手法を生み出さなければならないという課題に 直面しています。 これまでASICは、エレクトロニクス産業において費用対効果の 直感的操作 EDAツールは対話形式で操作する場合、デザインの開発、解析、 デバッグにおいて高速性と信頼性を提供するものでなければなりま 高いソリューションを提供し、業界の著しい発展と技術革新に貢献 せん。また、この種のツールは、設計プロセスを推進すると同時に、 してきました。ASICの普及はEDA業界の原動力としての役割を果 各ユーザの設計スタイルに適合できることも求められます。 たし、ソフトウェア開発の方向性を示してきました。しかし、 Precision Synthesisプラットフォームは、これらの点を考慮に ASICによる開発は初期費用(NRE)がかさむ上にTime-to- 入れて開発されました。タスクやデータは設計プロセスの特定時点 Marketも長く、多くの主流設計者の手が出せない状態になってき に関係するものだけが表示され、 直接関係のないデータは必要の ています。FPGAはこの隙間を埋める役割を果たし、設計者にとっ ない限り表示されません。このように表示データを選択的に制限す て中心的な手法として採用されるとともに、EDA業界発展の新た ることにより、設計者を目前のタスクに集中させるとともに、合成 な原動力になりつつあります。 の方法を直観的に分かりやすくすることができます(図1) 。 Precision Synthesisプラットフォームには、結果や柔軟性の FPGAの発展 面で妥協することなく、ボタン1つで使用できる合成フローが用意 FPGAによる設計手法には多くの利点があります。まず、設計と されています。この使いやすい機能は、ユーザが設定する合成オプ レイアウトのプロセス全体を制御できる点が挙げられます。デザイ ションを、自動設定に置き換えることによって実現したものです。 ン・サイクル時間が短く、フォトマスクの費用がかからない上、最 制約条件に対し、最適化アルゴリズムがデザイン解析に基づいてオ 低数量に関する制約もありません。他方、性能が劣る、ゲート集積 プションを設定するので、努力レベルや最適化の「目標」を指定す 度が比較的低い、単位あたりコストが高いといった理由から、従来、 る必要がありません。 FPGAの用途は小規模で生産数の少ないデザインに限定され、その 他の用途にはASICが使用されてきました。 直感的操作については、業界の標準や知識を利用することにより、 可能な限り改善を加え、使いやすさを向上させることができます。 ザイリンクスは、リ・コンフィギャブルなシステムレベルの たとえば、Mentor Graphics社ではタイミング・制約を指定する FPGAを開発することにより、これらの市場障壁を乗り越えつつあ ためにSynopsys Design Constraint(SDC)フォーマットを使 ります。その一例が、エンベデット・マイクロプロセッサIPコア、 用しました。現在では多くのASICデザインがFPGAでデザインさ メモリ、ハード/ソフト・マクロを統合化したVirtex-II Pro TM れているので、SDCフォーマットを使用すれば、2つの設計環境の Platform FPGAです。これらの製品はシステムの開発時間を短縮 間でデザインを容易に移植することができます。 し、低消費電力化、量産化、ボード・スペースの拡大、市場の変化 に応じて生産の直前まで変更が可能な柔軟性といった利点をユーザ 優れた結果品質(QoR) に提供します。しかし、これらの劇的な技術革新は、同時に設計お Precision Synthesisツールには、ASE(Architecture よび検証に関する新たな課題を引き起こす結果となり、新しい設計 Signature Extraction)最適化と呼ばれる一連のユニークなアル 手法とデバッグ機能が必要とされるようになりました。 ゴリズムが搭載されています。これは、たとえば有限状態マシン 設計者がFPGA技術の利点をフルに生かそうとすると、支援用ソ (FSM)や階層間を交差するパス、あるいは過度の組み合わせロ フトウェア・ツールは、設計者にとって最も困難な課題を解消でき ジックを有するパスなど、全体的な性能低下に最も影響を与える部 る機能を備えたものでなければなりません。Mentor Graphics社 分をデザインの中から自動的に抽出し、これを最適化するものです。 は、この新たな問題に対処するためにPrecisionTM Synthesisプ ASE技術には自動化された学習的な手法が採用されており、ユー ラットフォームを開発しました。 ザが手作業で反復作業を行わなくても、よりコンパクトで高速なデ ザインを実現することができます。 Precision Synthesisの概念 Precision Synthesisプラットフォームのアーキテクチャを開 発する原点となったのは、次の3つの考え方です。 Precision SynthesisプラットフォームのASE技術により、 ユーザの目標周波数を実現する最も小型のデザインを提供すること により、ザイリンクス・デバイスの利点をフルに活用することがで 1. ユーザによる直感的な対話操作 きます。この結果、ユーザは設計の反復作業を減らすことで時間を 2. 優れた結果品質(QoR) 節約できるほか、より小型のデバイスを使用可能にしたり、より遅 11-1 いスピードグレーを採用してもフィットさせることができるのでコ ストを削減することができます。 PC基板での作業を1回で成功させるためには、合成の段階でデ ザインに対して完全かつ正確に制約が設定されている必要がありま す。PreciseTimeはまさにこれを行うために開発されたものです。 高度な解析 今日では幅広いアプリケーションにおいて、極めて複雑なデザイ ンをインプリメントするのにFPGAデバイスが使用されています。 次世代FPGAの合成 FPGA合成の範囲はRTLの領域を越えて急速に広がっており、 大規模システムが複雑になるのは、これらのデバイスに組み込まれ アーキテクチャ領域や物理的領域をも含むようになっています。こ るタイミングやクロッキングに精密さが求められるためです。タイ のような範囲の拡大は、設計者の生産性とチップ性能の両面に大き ミング要求が複雑になると、設計上、非常に多くの反復作業が発生 な利益を提供することになります。設計者には、抽象化のレベルご したり、タイミング上の問題が発見されないまま残り、PC基板の とに最適化のための強力なアルゴリズムを備えたツールが必要で デバッグに影響を与えるなどの問題を招く恐れが出てきます。 す。設計のいずれの段階間でも容易な移行を可能にするシームレス タイミングに関するこのような新しい問題を解消し信頼の高い設 計を保証するために、Precision Synthesisプラットフォームに な手法により、設計者は利点を得ることができます。 Precision Synthesisは、さまざまな抽象化レベルにおけるハ はタイミング・エンジンとデザイン解析機能が含まれています。 イエンドFPGAデザインの課題を解消するためにMentor PreciseTimeTMと呼ばれるこのタイミング・エンジンは、完全な Graphics社によって開発された、一連の合成ソリューション・ファ 対話操作によるスタンドアロンのタイミング解析環境を備え、最も ミリを包含する合成テクノロジ・プラットフォームと言えます。 複雑なクロッキング方式を高速かつ正確に扱うことができます。 常に進化を続けるプログラマブル・ロジック業界に対応できるよ PreciseTimeエンジンは、タイミング解析機能以外にも以下に示 うに開発されたPrecision Synthesisプラットフォームは、次世 すさまざまな機能を備えています。 代FPGAのインプリメンテーションを実現する上で十分検討に値す ●単純なゲート、分周器、DCMを経由するクロック伝播遅延情報 などの内部クロックのレポート ●制約が規定されていないことにより包括的なタイミング解析の障 害となることを示すレポート る選択肢です。直感的なユーザ・インターフェイスを採用し、優れ たQoRと高精度を実現することにより、非常に難しいFPGAデザ インに対処することができます。 Mentor Graphics社は、エレクトロニクス・デザインの技術革 ●非同期クロック・ドメインを横断するタイミング・パスに関する 新を可能にする最新のEDAツール・セットの提供に取り組んでい レポート(このレポートにより、クロックの分離や、メタステー ます。Precision Synthesisプラットフォームについての詳細な ブル動作の恐れのない同期ロジックの存在を確認できます) らびにMentor Graphics社の完全なFPGAデザイン製品ファミリ ●部分的なスケマティック生成機能と複数のクリティカルパス表示 に関する詳細は、www.mentorg.co.jpをご覧ください。 を有する強力なスケマティック表示(図2) 図1 Precision SynthesisのDesign Center 図2 クリティカル パスの図表示 11-2