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車軸用軸受
初級講座 鉄道車両用軸受について 1. はじめに (2) 電気機関車の主電動機には、駆動側に NU 鉄道車両の動力源である主電動機、動力伝 形円筒ころ軸受、反駆動側に NH 型円筒ころ 達装置である駆動装置、車両の重量を支える 軸受が使用され、回転子重量と歯車荷重を受 車軸に使用される軸受は鉄道車両用軸受の中 けます。軸方向荷重は反駆動側の NH 型円筒 で最も重要です。本稿ではこれらの軸受(図1) ころ軸受が受けます。 の概要についてご紹介します。 駆動側軸受は外径φ 280 ~φ 320mm、反駆動側軸受は外径φ 190 ~φ 215mm が主流で、歯 車荷重を主に受ける駆動側に大き な軸受が適用されるケースが一般 的です。 主電動機用軸受の潤滑方式はグ リース潤滑が一般的です。 軸受内部だけでなく、ハウジン グと蓋に設けたグリースポケット 図1 鉄道車両用軸受 にもグリースを封入することで長 期にわたり適正な潤滑を維持する 2. 主電動機用軸受 ( 図2) 工夫が施されています。 (1) 電車の主電動機には一般に駆動側に NU 形 誘導電動機が増加するにつれ、1990 年代 円筒ころ軸受、反駆動側に深溝玉軸受が使用 以降、電蝕防止のため絶縁軸受 ( 図3) の採用 され、これらの軸受が回転子を支持します。 が増加しました。絶縁軸受には、外輪にセラ 振動等による軸方向荷重は反駆動側の深溝玉 軸受が受けます。 駆 動 側 円 筒 こ ろ 軸 受 は 外 径 φ 125 ~ φ 170mm、反駆動側深溝玉軸受は外径φ 120 ~φ 170mm が主流です。 セラミック溶射タイプ 樹脂皮膜タイプ 図2 主電動機用軸受 37 鉄道車両工業 478 号 2016.4 図3 主電動機用絶縁軸受 初級講座 ミックをプラズマ溶射したセラミック溶射絶 4. 車軸軸受 ( 図6) 縁軸受と、外輪に樹脂を射出成形した樹脂皮 車軸軸受は、通常車輪の外側に取り付け 膜絶縁軸受があります。前者は新幹線をはじ られ、車両重量や振動等による径方向荷重 めとする高速車両用主電動機に、後者は在来 と軸方向荷重を受けます。外径φ 210 ~φ 線車両用主電動機に使用されています。 250mm の複列円すいころ軸受と複列円筒こ ろ軸受が主流です。 3. 駆動装置用軸受 ( 図4) 潤滑方式はグリース潤滑若しくは油浴潤滑 平行カルダン方式駆動装置では、小歯車と が採用されています。 大歯車を挟み単列円すいころ軸受 ( 図5) を正 近年は、低昇温オイルシール、強化樹脂製 面合わせで配置するのが一般的です。 保持器の適用や内輪と後ふた(油切り)との 小歯車軸受は小歯車軸重量と歯車荷重を支 フレッティング抑制対策を講じる等、鉄道車 持します。大歯車側軸受は歯車箱重量の一部 両専用の軸受として進化しています。 と歯車荷重を支持します。 小歯車側軸受は外径φ 150 ~φ 180mm、 大歯車側軸受は外径φ 280 ~φ 330mm が 主流です。 駆動装置用軸受は歯車の回転によるはね掛 け給油により潤滑されます。特に小歯車側軸 受は回転速度が高く、過酷な使用条件に晒さ れ、耐焼付き性能が重要です。保持器には疲 労強度向上を目的に鋼板に特殊な表面処理を 図6 車軸用密封複列円すいころ軸受 施す場合があります。 6. おわりに 本稿でご紹介した主電動機用、駆動装置用、 車軸用軸受はいずれも高い信頼性を求められ る製品です。また、車両の高速化、ライフサ イクルコスト低減のための製品開発要求があ ります。これらのニーズに応える鉄道車両用 軸受を開発し続けることで、鉄道事業の発展 に貢献していきます。 (NTN株式会社 図4 駆動装置用軸受 産業機械事業本部 鉄道技術部 上野 正典 ) 図5 駆動装置用円すいころ軸受 (左:大歯車側 右:小歯車側) 鉄道車両工業 478 号 2016.4 38