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管内における消費関連企業の販売動向と 販売戦略・価格設定
2016 年 7 月 15 日 管内における消費関連企業の販売動向と 販売戦略・価格設定行動 日本銀行仙台支店 照会先:日本銀行仙台支店営業課(022-214-3120、E-mail:[email protected]) 本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行仙台支店まで ご相談ください。また、転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。 1.管内における消費関連企業の販売動向とその背景 (1)販売動向の現状と特徴 ○ 日本銀行仙台支店管内(岩手県、宮城県、山形県)における消費関連企業の販売動向を みると、汎用的な商品・サービスに対する消費者の節約志向が幾分強まっているほか、高 額品の売上にも陰りがみられるなど、このところ一部に弱めの動きがみられる。もっとも、 多様化する消費者ニーズを着実に捉えた商品・サービスに対する消費意欲は旺盛であるな ど、全体としては引き続き底堅く推移している。 ○ 商品についてみると、価格以外での差別化を図りにくい日用品や衣料品などは、節約志 向の強まりもあって、低価格戦略を採るディスカウントショップやドラッグストア、ホー ムセンター、ファストファッションへシフトする動きがみられる。年明け以降も好調さを 維持していた高額品(高級腕時計を含む美術・宝飾・貴金属)の売上が、足もと前年を下 回っている。 一方で、地域内初出店のテナントや新規出店・改装店舗などでは堅調な売れ行きとなっ ている。さらに、食料品のうち、中食ニーズの高まりを捉えた総菜や、地元産を押し出し た生鮮食品、自家消費をターゲットとした高級菓子類などは総じて好調な売れ行きを続け ている。 ○ サービスについてみると、飲食では、サラリーマン層における「家飲み」 ・ 「ちょい飲み」 へのシフトによる客足の鈍化を指摘する声が聞かれる一方、「ハレの日消費」等の消費者 ニーズを取り込んでいる先を中心に総じてみれば堅調な売り上げを確保している。また、 宿泊・レジャー施設等の入込みもしっかりしている。 (2)現状の販売動向の背景 ○ 消費者ニーズを着実に捉えた商品・サービスに対する旺盛な支出意欲の背景として、人 手不足や堅調な企業業績等を映じた雇用・所得環境の緩やかな改善と、高齢者や女性の労 働市場への参入に伴う家計所得の増加を指摘する声が多い。 一方、汎用的な商品・サービスに対する消費者の節約志向が幾分強まっていることにつ いては、先行きの景気情勢の不透明感や社会保障負担の増加懸念から、余分な支出を手控 える動きがみられるとの声が聞かれている。 また、高額品の売上が足もと前年を下回っていることに対しては、年初来の株価下落等 に伴う富裕層・高所得者層における支出姿勢の弱まりを指摘する声も聞かれた。 1 2.販売戦略・価格設定行動 (1)販売戦略面での対応状況とその特徴 ○ 以上の状況のもとでの消費関連企業の販売戦略をみると、①顧客ターゲットに応じた商 品・サービスの投入や顧客の利便性の向上、②既存顧客の囲い込み、③Eコマースの展開 を通じた販売チャネルの拡大、などの対応がみられている。 ○ ①について、高齢化が進む当地においては、高齢者層をターゲットとして、電話注文の 受付、駅からレジャー施設へのシャトルバスの運行や施設のバリアフリー化などの動きが みられている。また、単身世帯向け総菜・少量品食材の品揃え強化などに取り組む動きも みられている。 ②の戦略を採る先では、あらかじめ登録された顧客向けの割引・ポイントサービスによ る価格訴求やリピーターの獲得を狙ったメニュー数の増加のほか、蓄積された顧客データ に基づくきめ細やかなサービスの提案などに取り組む動きがみられる。 ③の戦略を採る先では、消費者の利便性向上や若年層の取り込み、商圏拡大を企図して、 インターネット通販の活用やスマートフォンアプリの導入を行っている。 (2)価格設定行動 ○ この間の企業における価格設定行動をみると、全体としてみれば価格引き上げの動きに は一服感が窺われる。 ○ 一部には、「設備リニューアルやサービスの充実化と併せた段階的な価格引き上げが顧 客に受け入れられている」(宿泊業)、「顧客訴求力の高い高単価商品の品揃えを強化して いる」(百貨店)といった先がみられている。 もっとも、これまで価格引き上げを行ったスーパーや飲食業の中には、来店客数の減少 を招いたことから、一段の価格引き上げには消極的な先がみられている。 こうした中、これまで低価格戦略を採ってきた先においては、こうした消費者の支出行 動の変化をチャンスと捉え、品揃えの強化や価格引き下げにより一段の顧客の取り込みを 図る動きがみられる。 以 2 上 (図表) (図表1)管内の雇用者所得の推移と賃上げ率 ▽雇用者所得前年比の推移 ▽賃上げ率 (%) (%) 4 2015年 管内 3 2016年 連合宮城 1.73 1.89 連合岩手 2.13 1.98 連合山形 1.63 1.37 連合(全国) 2.20 2.00 全国 2 1 0 ▲1 ▲2 13/1Q 3Q 14/1Q 3Q 15/1Q 3Q 16/1Q (注)雇用者所得の 16/2Q の東北は 16/4 月、全国は 16/4~5 月の前年比 (資料)毎月勤労統計、各県連合(宮城県は 5/31 日時点、岩手県は 5/30 日時点、山形県は 4/27 日時 点、全国は 7/1 日時点) (図表2)管内の百貨店売上高前年比の推移と品目別寄与度 6 (%、%P) 4 2 その他 0 食料品 ▲2 家庭用品 ▲4 雑貨 ▲6 身回品 ▲8 衣料品 合計 ▲ 10 ▲ 12 ▲ 14 15/1Q 2Q 3Q 4Q 16/1Q 15/12 16/1 (資料)東北百貨店協会 3 2 3 4 5月 (参考) 管内消費関連企業から聞かれたコメント 1.管内における消費関連企業の販売動向とその背景 汎用的な商品・サービス、高額品に対する消費動向 衣料品は、定番商品の動きが一貫して鈍く、ファストファッションやアウトレット等 の低価格商品への顧客の流出がみられる(百貨店) ファミリー層や高齢者層を中心に、少しでも価格の安いものを求めて、近隣他社店舗 を買い回る行動がみられている(スーパー) 年度明け以降好調さを維持していた高額品(高級腕時計を含む美術・宝飾・貴金属) の販売が足もと前年を下回っている(百貨店) サラリーマン層の中で、消費増税をきっかけに「家飲み」や、低価格レストランでの 「ちょい飲み」へシフトする動きがみられる(飲食) 多様化する消費者ニーズを着実に捉えた商品・サービスに対する消費動向 地域内初出店のテナントや新規出店・改装店舗の売上は総じて好調(小売各社) 中食ニーズを捉えた総菜や自家消費目的の高級菓子類などに対する顧客の支出意欲 は引き続き旺盛(百貨店) 各種イベントなどに関連付けた「ハレの日」需要は底堅い(小売、飲食、宿泊) 客室の改装や食事の充実化を図ったことで、高齢層を中心に「友人同士の小グループ」 や「親子孫の 3 世代」などでのリピーターが目立つ(宿泊) 来場客数が計画を上回って推移しておりレジャー需要の強まりを感じる(レジャー施設) 2.(1)販売戦略面での対応状況とその特徴 ① 顧客ターゲットに応じた商品・サービスの投入や顧客の利便性の向上 外出頻度が低くなりがちでインターネットの利用経験の乏しい高齢者向けに、電話注 文による販売サービスを拡充(家電量販店) 高齢者層を取り込むために、当施設へのシャトルバスの増便やバリアフリーなど設備 を充実させている(レジャー施設) 高齢層における「孫消費」に着目し、子供向けの“くじ”や誕生日の写真撮影などの サービスを充実させている(飲食) 増加している単身世帯の取り込み企図し、少量品を拡充している(スーパー) ② 既存顧客の囲い込み リピーターを確保するため、会員向けの割引やポイントサービスを拡充している(ス ーパー) 利用頻度の引き上げを図るため、メニューやボリュームの増加、メインメニューの値 下げを実施している(飲食) 顧客満足度の向上を企図して、蓄積された顧客データに基づき、常連客一人ひとりに あった施術や商品のきめ細やかな提案を行っている(理美容店) 4 ③ Eコマース等の展開を通じた販売チャネルの拡大 若年層の取り込みを企図してネット販売を拡充(旅行会社) インターネットオークションへの出品(衣料品販売) 配車依頼用のスマートフォン向けアプリケーションを導入(タクシー会社) 2.(2)価格設定行動 価格引き上げに踏み切っている先 客室改装等の高付加価値化と併せて価格を引き上げ(宿泊) 顧客訴求力の高い高単価商品の品揃えを強化している(百貨店) 価格引き上げに消極的な先、価格引き下げを図る先 価格引き上げが来店客数の減少を招いたことから、一段の価格引き上げには消極的(ス ーパー) 昨年度はコスト増への対応として価格引き上げを実施したが、これ以上の値上げは顧 客離れに繋がりかねないため、現状では一段の値上げは予定していない(飲食) 低価格が売りの当社においては、大量仕入によるコストカットなど、更なる企業努力 を続けることで価格引き上げは行わない(飲食) 低価格日用品の品揃えの良さから、スーパー等からの顧客流入がみられている。仕入 価格は上昇傾向にあるが、販売価格引き上げは行わず、顧客増加や買い入れ点数の増 加を追求する(ドラッグストア) 来店頻度の引き上げや「ついで買い」の促進を企図して、価格を引き下げた目玉商品 数を増やすとともに、チラシ掲載品以外の値打ち品を店頭に配置(スーパー) 5