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可決された上院 S. 23 とほぼ同一内容の特許法
Vol. 19 米 No. 7 国 通商関連知的財産権情報 2011 年 3 月 日本機械輸出組合 目 次 [ニュース] A. 米 国 特 許 法 改 革 下 院 H.R. 1249、 可 決 さ れ た 上 院 S. 23 と ほ ぼ 同 一 内 容 の 特 許 法 改 革 案 を 発 表 ( 速 報 ) ··························································· 2 B. Uniloc事 件 リ ー ゾ ナ ブ ル な ロ イ ヤ ル テ ィ ー を 計 算 す る 上 で 基 準 と な る 従 来 の 25% ル ー ル は 誤 り で あ り 、 ま た エ ン タ イ ア ・マ ー ケ ッ ト 価 値 が 適 用 で き な い ケ ー ス に も か か わ ら ず 、公 判 で そ の 証 拠 を 用 い て 陪 審 員 に 影 響 を 与 え た と 考 え ら れ る 場 合 、損 害 賠 償 3 億 8800 万 ド ル ( 約 322 億 円 ) の 評 決 は 棄 却 さ れ 、 損 害 賠 償 公 判 は や り 直 し に な る ····························································· 4 1 <速報> A. 米 国 特 許 法 改 革 下 院 H.R. 1249、 可 決 さ れ た 上 院 S. 23 と ほ ぼ 同 一 内 容 の 特 許 法 改 革 案 を 発 表 ------------------------------------------------------------------------ 先 願 主 義 を 基 幹 と す る 上 院 S. 23 は 、 95 対 5 と い う と い う 圧 倒 的 多 数 で 可 決 さ れたことは既報のとおりである。 た だ し 、こ れ は 、純 粋 な 先 願 主 義 で な く 、発 明 者 A が 発 表 し て 1 年 以 内 に 出 願 すれば、たとえ第三者 B が独自の発明として、A の発表後であるものの、A の出 願前に発表していようが、あるいは先に出願していようが、A に特許が与えられ るという絶対グレース期間を有する先願主義である。 つ ま り 、先 に 発 表 す る と 先 発 明 主 義 で あ る と も い え 、先 願 主 義 に な る の は 2 人 の発明者が発表せずに出願した場合である。 い ず れ に せ よ 、先 後 願 の 判 断 の 出 願 日 は 、最 先 の 有 効 出 願 日 で あ る の で 、優 先 権 主 張 の 日 本 出 願 日 が 先 願 権 の 基 準 日 に な る の で 、102 条 (e)の ヒ ル マ ー ・ド ク ト リ ンは解消され、内外平等の特許法になる。 た だ し 、も し こ の 特 許 法 が 成 立 す る と 、外 国 特 許 庁 が こ の 1 年 の グ レ ー ス 期 間 を 認 め な い と 、出 願 前 に 発 表 し た 米 国 発 明 者 は 、外 国 で 特 許 が 取 得 で き な く な る 。 よ っ て 、米 国 特 許 庁 は 、外 国 特 許 庁 に 対 し 、発 明 者 の 自 由 な 発 表 に 1 年 間 の グ レース期間を認める法改正を要求してくるであろう。 こ れ に 対 し 、外 国 特 許 庁 は 単 な る 1 年 の グ レ ー ス 期 間 な ら と も か く 、先 願 主 義 を壊すといえる絶対グレース期間までは認めないと考えられる。 い ず れ に せ よ 、 下 院 H.R. 1249 は 、 実 質 的 に 上 院 S. 23 法 案 と 同 じ で あ り 、 以 下の点で異なっている。 2 ① 先 使 用 権 の抗 弁 を現 行 のビジネスモデル特 許 のみに対 するものから、 全 技 術 の特 許 に対 して適 用 する ② ビジネスモデル特 許 訴 訟 の裁 判 地 、弁 護 士 費 用 に関 する規 定 ③ 米 国 特 許 庁 諸 料 金 の改 正 以 上 の よ う に 、 こ の 下 院 H.R. 1249 は 可 決 さ れ た S. 23 に 、 な お ま だ 不 満 が あ る者の意見を取り入れた案である。 上 院 案 S. 23 が 圧 倒 的 多 数 で 可 決 さ れ て い る の で 、 下 院 H.R. 1249 も 早 急 に (1 ヶ月以内?)可決されることは間違いないと予想されている。 下 院 H.R. 1249 が 可 決 さ れ る と 、上 院 S. 23 も 下 院 案 も 同 じ よ う に 修 正 さ れ て 同 一の特許法改革案として 5 月頃(?)成立するとみられる。そして大統領がサイ ンすると正式改正案となり、1 年後に施行される。 (服部 3 健一) B. Uniloc事 件 リ ー ゾ ナ ブ ル な ロ イ ヤ ル テ ィ ー を 計 算 す る 上 で 基 準 と な る 従 来 の 25% ル ー ル は 誤 り で あ り 、 ま た エ ン タ イ ア ・マ ー ケ ッ ト 価 値 が 適 用 で き な い ケ ー ス に も か か わ ら ず 、 公判でその証拠を用いて陪審員に影響を与えたと考えられる場合、損害賠償 3 億 8800 万 ド ル ( 約 322 億 円 ) の 評 決 は 棄 却 さ れ 、 損 害 賠 償 公 判 は や り 直 し に な る ------------------------------------------------------------------------ Uniloc USA, Inc., et al. v. Microsoft Corporation Fed. Cir. No. 2010-1035, -1055 ( 2011 年 1 月 4 日 ) 現 在 の 米 国 特 許 制 度 で 最 も 問 題 に な る の は 、損 害 賠 償 の 計 算 の 仕 方 が 非 常 に 曖 昧で、陪審員は公判に提出された証拠に影響されて、とんでもない額の評決を出 すことである。 こ の た め 、 5 年 前 か ら 行 わ れ て き た 米 国 特 許 法 改 革 で も 、 損 害 賠 償 の 284 条 の 改正が最も大きな争点となり、問題があるので是正せよという大情報産業(パテ ン ト ・ト ロ ー ル に 悩 ま さ れ て い る )と 、高 額 賠 償 が 得 ら れ る 現 行 の 制 度 が よ い と す る バ イ オ ・薬 品 産 業 、学 界 、そ し て 一 部 の 中 小 情 報 産 業( い ず れ も 高 額 の 特 許 収 入 に依存する)の対立のため、成立してこなかった。 そ の 中 で こ の 1 月 4 日 に CAFC が リ ー ゾ ナ ブ ル な ロ イ ヤ ル テ ィ ー と エ ン タ イ ア ・ マ ー ケ ッ ト 価 値 の 適 用 を が ら り と 変 え る 抜 本 的 Uniloc 判 決 が 出 さ れ た た め 、損 害 賠 償 の 公 判 が 大 幅 に 改 善 さ れ る 期 待 が 生 じ 、 上 院 S. 23 は 284 条 を 改 正 す る 点 が 全 面 的 に 削 除 さ れ 、そ の 結 果 95 対 5 と い う 圧 倒 的 多 数 で 可 決 さ れ た 。そ し て 、ほ ぼ 同 じ 内 容 の 下 院 案 も 3 月 30 日 に 発 表 さ れ た 。 こ の よ う に Uniloc 事 件 は 、特 許 法 改 革 に も 多 大 な 影 響 を 与 え て お り 、そ の 概 要 は、以下のとおりである。 1. Uniloc 社 216 特 許 と Microsoft 社 製 品 Uniloc 社 は 、ソ フ ト ウ ェ ア が コ ピ ー さ れ る こ と を 防 ぐ た め の ソ フ ト ウ ェ ア の ア ク テ ィ ベ ー ト シ ス テ ム に 関 す る 米 国 特 許 第 5,490,216 号( 以 下 、216 特 許 )を 有 し て い る 。 一 方 、 Microsoft 社 は 、 MS Word XP、 Word 2003、 Windows XP 等 の ソ フ ト ウ ェ ア・プ ロ グ ラ ム を 販 売 し 、そ の 際 、購 入 者 に プ ロ ダ ク ト・キ ー( PK)を 与 え 、 購 入 者 が そ れ を Microsoft 社 に 通 知 す る と 同 社 は プ ロ ダ ク ト・ア ク テ ィ ベ ー シ ョ ン ( PA) を 用 い て ソ フ ト ウ ェ ア を ア ク テ ィ ベ ー ト し て い た 。 4 2. 地 裁 訴 訟 そ こ で Uniloc 社 は 、Microsoft 社 の ソ フ ト ウ ェ ア・プ ロ グ ラ ム 中 の PA シ ス テ ム は 216 特 許 を 侵 害 し て い る と 提 訴 し た 。 公 判 で 特 許 侵 害 が 認 め ら れ 、 損 害 賠 償 の 額 が 問 題 と な っ た 。 Uniloc 社 の 損 害 賠 償 に 関 す る 専 門 家 証 人 Gemini 博 士 は 、「 損 害 賠 償 は 合 計 約 5 億 6495 万 ド ル( 約 469 億 円 )に な る 」と 証 言 し た が 、そ の 算 出 根拠は以下のとおりであった。 a. Gemini 博 士 の 立 証 ( 1) 仮想ライセンス交渉 ま ず 、 Gemini 博 士 は 、 損 害 賠 償 額 算 出 の 基 本 的 判 決 で あ る Georgia-Pacific 判 決 に 沿 っ て 、両 社 が 仮 に ラ イ セ ン ス 交 渉 を 行 っ た 場 合 、ロ イ ヤ ル テ ィ ー の 額 は い っ た い い く ら で 合 意 し た の か と い う 仮 定 から出発した。 Georgia-Pacific Corp. v. U.S. Plywood Corp. , 318 F. Supp. 1116 ( S.D.N.Y. 1970) ( 2) PA シ ス テ ム の 価 値 次 に 、 PA の 価 値 を 定 め る た め 、 Microsoft 社 の 以 下 の PK に 関 す る 社 内 資 料 に 「 10 万 ド ル か ら 1 万 ド ル の 価 値 が あ る 」 と い う よ う な 記 載 が あ る こ と か ら 、 PA の シ ス テ ム も 最 低 10 ド ル で あ る と 設 定 し た 。 ( 3) ロ イ ヤ ル テ ィ ー の 25% ル ー ル ロ イ ヤ ル テ ィ ー の 総 額 に つ い て は 、そ の 計 算 基 準 と し て 一 般 的 に 使 わ れ て い る 「 25% ル ー ル 」 の 原 則 を 適 用 し 、 PA の 利 益 の 25% が リ ー ズナブルなロイヤルティーに相当するとした。 そ う す る と 、 PA の 10 ド ル の う ち 、 2.5 ド ル が ベ ー ス ラ イ ン ・ ロ イ ヤルティーになる。 Microsoft 社の Office や Windows 製品の販売量の合計は 2 億 2597 万 8721 個であったので、2.5 ドルを掛けて、リーズナブルなロイヤルティー の 総額は 5 億 6494 万 6803 ドル(約 469 億円)と計算した。 Microsoft 社は、25%ルールを一律に適用することは不適切であると異 議申立を行ったが、裁判官は、正確性において若干問題がないではない ものの、他の多くの裁判でも普通に用いられていることから、異議申立 を却下した。 5 ( 4) リーゾナブルかどうかの「チェック」 最後に、この価値が本当にリーズナブルであるかどうか「チェック」 す る た め に 、計 算 す る と 、ソ フ ト ウ ェ ア・プ ロ グ ラ ム 1 個 の 平 均 価 格 が 85 ド ル で あ っ た の で 、総 売 上 高 は 192 億 8000 ド ル( 約 1 兆 6000 億 円 ) と な り 、 そ の 場 合 、 約 5 億 6495 万 ド ル は 、 総 売 上 高 の 約 2.9% と な る 。 通 常 、ソ フ ト ウ ェ ア の ラ イ セ ン ス は 10% 前 後 な の で 、約 2.9% で あ るならば、やはり問題はないと証言した。 Microsoft 社 は 、 Gemini 博 士 が リ ー ズ ナ ブ ル な ロ イ ヤ ル テ ィ ー の 額 が 妥 当 か ど う か「 チ ェ ッ ク 」す る た め に 製 品 全 体 の 販 売 額 と 比 較 し た こ と に 対 し て 、「 こ れ は た と え 単 な る 「 チ ェ ッ ク 」 と し て も 、 実 質 的 に エ ン タ イ ア ・ マ ー ケ ッ ト 価 値 を 適 用 し て い る こ と で あ り 、 PA は 同 社 の ソ フ ト ウ ェ ア・プ ロ グ ラ ム の マ イ ナ ー な 一 部 品 に す ぎ ず 、そ の 部 品 の た め に 消 費 者 が Office 等 を 購 入 し た 要 因 に は な っ て い な い の で 不 当 で あ る 」と 異 議 を 申 し 立 て た 。し か し 、地 裁 は こ の 異 議 も 却 下 し た 。 b. Microsoft 社 の 立 証 ( 1) Napper 氏 の 証 言 一 方 、 Microsoft 社 の 専 門 家 証 人 で あ る Napper 氏 は 、「 PA は 全 体 か ら み れ ば 、 価 値 の 低 い 小 さ な 部 品 に す ぎ ず 、 Microsoft 社 は こ の 種 の 技術のリーズナブルなロイヤルティーとしては、せいぜい一括金の 700 万 ド ル ( 約 5 億 8100 万 円 ) に す ぎ な い 」 と 証 言 し た ( 筆 者 注 : 当 然 、そ の 根 拠 と な る 証 拠 を 出 し て い る は ず で あ る が 、判 決 文 中 に そ の 記 載 は な い )。 ( 2) Uniloc 社 訴 訟 弁 護 士 の 反 対 尋 問 Uniloc 社 の 弁 護 士 は 、Napper 氏 に 対 し て 以 下 の よ う に 反 対 尋 問 し た 。 Q:特 許 侵 害 となる Microsoft 社 の製 品 の総 販 売 額 は、約 200 億 ドル(約 1兆 6600 億 円 )であることをご存 じですか? A:それが Gemini 博 士 の計 算 した額 であり、エンタイア・マーケット価 値 に基 づくものです。 Q:あなたの計 算 による一 括 金 の支 払 いでは、700 万 ドル(約 5億 8100 万 円 ) ですね? A:はい。 Q:そうすると、ロイヤルティーは、0.000035%ということになってしまいますね? 6 A:もし、誤 ってエンタイア・マーケット価 値 を考 慮 するとそうなります。 Q:Uniloc 社 が特 許 を有 していたのはご存 じですか? A:はい。 Q:Microsoft 社 は、市 場 に出 して侵 害 しましたね? A:そのことを前 提 とした計 算 です。 Q:仮 にあなたの一 括 金 の理 論 が正 しいとしても、Microsoft 社 は特 許 侵 害 を行 い、何 百 億 ドルの販 売 額 を得 ましたね? A:エンタイア・マーケット価 値 からいえばそうです。 Q:Microsoft 社 は特 許 を侵 害 して販 売 額 の 99.9999%を得 て、特 許 権 者 は 0.00003%しか得 られないということになりますね? A:エンタイア・マーケット価 値 からみればそうです。 Q:あなたはそれをリーズナブルだと思 いますか? 以 上 の よ う に 、Uniloc 社 の 訴 訟 弁 護 士 は 何 回 も 執 拗 に 製 品 全 体 の 販 売額(エンタイア・マーケット価値)に絡む質問を繰り返した。 c. 評 決 地 裁 判 事 は 陪 審 員 説 示 に 、「 Microsoft 社 の ソ フ ト ウ ェ ア・プ ロ グ ラ ム の 販 売 は 、 PA の 機 能 に よ っ て 促 進 さ れ た も の で は な い と い う 点 に 両 社 に 合 意 が あ る の で 、損 害 賠 償 の 額 を 計 算 す る と き は 、エ ン タ イ ア・マ ー ケ ッ ト 価 値 で あ る 総 額 約 193 億 ド ル ( 約 1 兆 6000 億 円 ) を 考 慮 し てはならない」と記載した。 そ の 後 、 陪 審 員 は 損 害 賠 償 を 3 億 8800 万 ド ル ( 約 322 億 円 ) と 評 決 し た 。こ の 額 は 、Gemini 博 士 の 5 億 6495 万 ド ル( 約 469 億 円 )の 約 70% 、 Kapper 氏 の 55 倍 に 相 当 し て い た こ と か ら 、明 ら か に Gemini 博 士 の 証 拠 と証言に賛同し、それを若干修正したものであると考えられる。 d. 新 公 判 要 求 こ れ に 対 し 、 Microsoft 社 は 、 陪 審 員 は Gemini 博 士 の 「 チ ェ ッ ク 」 方 法 や Napper 氏 へ の 反 対 尋 問 か ら 総 販 売 額 の 約 190 億 ド ル( 1 兆 5770 億 円 )を 参 酌 し て 、損 害 賠 償 額 を 計 算 し た か 、あ る い は 、大 き な 影 響 を 受 け た 可 能 性 が 高 い の で 、損 害 賠 償 額 に つ い て や り 直 し の 新 公 判 を 行うことを求めた。 地 裁 判 事 は 、そ の 可 能 性 に つ い て 同 意 し 、陪 審 員 の 損 害 賠 償 の 評 決 を棄却して新公判を認めた。 7 こ れ を 不 服 と し て Uniloc 社 は CAFC に 控 訴 し 、 Microsoft 社 は 特 許 侵害を不服として控訴した。 3. CAFC 控 訴 CAFC の 担 当 パ ネ ル は 、 損 害 賠 償 額 の 計 算 に お い て 、 特 許 侵 害 製 品 の 利 益 の 25 % が リ ー ズ ナ ブ ル な ロ イ ヤ ル テ ィ ー に な る と い う 25 % ル ー ル の 一 律 適 用 は 誤 っており、また、陪審員はエンタイア・マーケット価値を参酌した可能性があ ることから、損害賠償額について棄却し、地裁へ差し戻した。 a. 争 点 本訴訟で問題になるのは以下の 3 点である。 ① 25%ルールを用 いることは適 切 であるか ② 「チェック」としてエンタイア・マーケット価 値 を用 いることは適 切 であるか ③ 損 害 賠 償 額 は過 大 であるか b. 25% ル ー ル 25% ル ー ル は 、特 許 製 品 を 製 造 し て い な い 者 が 仮 想 ラ イ セ ン ス 交 渉 に お い て 、進 ん で 支 払 う リ ー ズ ナ ブ ル な ロ イ ヤ ル テ ィ ー を 概 算 す る た めに用いられている。 こ の ル ー ル は 、 ラ イ セ ン シ ー が 75% の 利 益 を 保 持 し 、 25% の ロ イ ヤルティーを特許権者に支払うということが前提である。 ラ イ セ ン シ ー が 75% を 保 持 す る 理 由 は 、 ラ イ セ ン シ ー に は 特 許 製 品 を 開 発・商 品 化 す る 際 の リ ス ク が あ り 、ま た 、そ れ に よ っ て さ ら に 知的財産権が開発されるので、その努力を考慮すると利益全体の 75% を 保 持 し て も い い だ ろ う と い う 考 え 方 で あ る 。 し か し 、 25% ル ー ル を 一 律 に 適 用 す る こ と に は 厳 し い 批 判 も あ り 、 それらは以下の 3 つのカテゴリーに分けることができる。 ① このルールは特 許 とイ号 に特 殊 な関 係 がある場 合 にはロイヤルティーの 率 は変 わるが、そのことを考 慮 していない。 ② このルールは両 当 事 者 に特 殊 な関 係 がある場 合 にもロイヤルティーの率 が変 わるが、そのことも考 慮 していない。 ③ このルールは、本 質 的 に恣 意 的 なものであり、対 象 となるライセンス交 渉 のモデルとして果 たして適 合 するものであるか否 かが明 らかでない。 8 こ れ ま で 、CAFC で は 25% ル ー ル の 証 拠 価 値 に つ い て 本 格 的 に 議 論 さ れ た こ と は な く 、 多 く の 判 例 で 25% ル ー ル の 使 用 が 単 純 に 認 め ら れてきた。 し か し 、 最 高 裁 は 、 Daubert 事 件 で 、 地 裁 は す べ て の 専 門 家 証 人 の 証 言 は 、連 邦 証 拠 規 則 の 範 囲 で「 科 学 的 で 、技 術 的 で 、ま た は そ の 他 の 特 別 な 知 識 」に 基 づ い て い る こ と を 確 認 し な け れ ば な ら な い と 判 示 した。 Daubert v. Merrell Dow Pharm. , 509 U.S. 579 (1993) た と え こ の 25% ル ー ル を Georgia-Pacific フ ァ ク タ ー で 調 整 す る に しても、最初に誤った値を用いることは根本的に誤りといえる。 よ っ て 、 Microsoft 社 は 損 害 賠 償 の 公 判 を や り 直 す 権 利 が あ る 。 c. エ ン タ イ ア ・マ ー ケ ッ ト 価 値 エ ン タ イ ア・マ ー ケ ッ ト 価 値 は 、部 品 特 許 の 特 徴 の た め に 製 品 に 対 す る 需 要 が あ り 、そ の 価 値 の た め に 製 品 価 値 が あ っ た 場 合 の み に 適 用 される価値である。 Lucent Techs., Inc. v. Gateway, Inc. , 580 F.3d 1301, 1324 (Fed. Cir. 2009) Microsoft 社 は 、特 許 侵 害 す る PA が 顧 客 の Office や Windows 製 品 の 需 要 を 生 み 出 し た も の で は な い こ と を 立 証 し て お り 、ま た そ の 点 は 争 い の な い 事 実 で あ る の で 、 Gemini 博 士 の 「 全 販 売 額 か ら す る と 、 2.9% に し か な ら い 」 と い う 証 言 や Napper 氏 へ の 一 連 の 反 対 尋 問 は 、 陪 審 員 の 思 考 に 悪 影 響 を 与 え た も の と 考 え ら れ 、評 決 は 棄 却 さ れ な け れ ば な ら な い 。 我 々 は 、仮 想 ラ イ セ ン ス 交 渉 で の ベ ー ス ラ イ ン・ロ イ ヤ ル テ ィ ー を 決 定 す る た め に 25% ル ー ル を 用 い る こ と は 、 連 邦 証 拠 規 則 に 基 づ く 限り、基本的に欠陥のあるルールであると判示する。 ま た 、Uniloc 社 も エ ン タ イ ア・マ ー ケ ッ ト 価 値 で 損 害 賠 償 を 求 め て い る の で は な い と い っ て い る も の の 、 Microsoft 社 の 専 門 家 証 人 Napper 氏 の 証 人 尋 問 で 何 度 も そ の 価 値 に 言 及 し て 陪 審 員 に 聞 か せ て お り 、こ の よ う な 尋 問 は 、明 ら か に エ ン タ イ ア・マ ー ケ ッ ト 価 値 を 利 用した追求であるといえる。 Uniloc 社 は 、「 190 億 ド ル ( 約 1 兆 6000 億 円 ) は 単 に 「 チ ェ ッ ク 」 で 用 い た だ け で あ り 、陪 審 員 説 示 に は こ れ を ベ ー ス に し て は な ら な い と 説 示 し て い る の で 、問 題 は な い 」と 争 っ て い る も の の 、陪 審 員 が こ の 総 販 売 額 の 値 に 影 響 さ れ る こ と は 大 い に 考 え ら れ る 。上 記 の 一 連 の 質 問 は 、明 ら か に 総 販 売 額 を 単 に「 チ ェ ッ ク 」と し て 用 い る こ と を 越 えているものである。 9 と に か く 、エ ン タ イ ア・マ ー ケ ッ ト 価 値 が 、特 許 部 品 か ら 得 ら れ た ということは立証されていない。 よって、地裁の損害賠償公判をやり直すことは正しいといえる。 以 上 の よ う な Uniloc 判 決 か ら 、損 害 賠 償 の 立 証 は 十 分 な 証 拠 を も っ て 立 証 し な け れ ば な ら ず 、か つ 、エ ン タ イ ア ・マ ー ケ ッ ト 価 値 が 関 係 な い 場 合 は 、陪 審 員 を 総 売上高で誘導するような尋問等行ってはいけないことが明らかになったので、特 許業界全体から非常に歓迎されている。また、リーゾナブルなロイヤルティーの 額 は 、 そ も そ も 事 件 の 状 況 、 性 質 に よ っ て 大 幅 に 変 わ る は ず な の で 、 特 許 法 284 条に一律に規定することには根強い反対があったので、特許法改革案から削除さ れたのである。 (服部 10 健一) 本レポートの全部または一部の無断転載を、 翻訳、原文の如何を問わず禁ず。 米国通商関連知的財産権情報 2011 年 3 (Vol. 19 No.7) 月 発 行 :日本機械輸出組合 通商・投資グループ Tel 03-3431-9348 Fax 03-3436-6455 E-mail:[email protected] 〒105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8 機械振興会館 401 号