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レジュメ付属資料
∼著作権新時代∼ レジュメ付属資料 参考条文集 p.1∼ 6 著作権用語集 p.7∼19 南山大学法律学研究会 参考条文集 1.著作権法(抄) 第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及 びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作 者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。 第十二条 編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配 列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。 2 前項の規定は、同項の編集物の部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさ ない。 第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という 。)は、 個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下 「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する 者が複製することができる。 一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能 を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をい う。)を用いて複製する場合 二 技術的保護手段の回避 (技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記 録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く 。)を行 うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当 該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにするこ とをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり 、 又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う 場合 2 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業 務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及 び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機 能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタ ル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は 録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。 -1- 著作権法 第三十一条 図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設 で政令で定めるもの(以下この条において「図書館等」という 。 )においては、次に 掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他 の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製するこ とができる。 一 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された 著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個個の著作 物にあつては、その全部)の複製物を一人につき一部提供する場合 二 図書館資料の保存のため必要がある場合 三 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手する ことが困難な図書館資料の複製物を提供する場合 第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用 は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的 上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。 2 国若しくは地方公共団体の機関又は独立行政法人が一般に周知させることを目的とし て作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他こ れらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載するこ とができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。 第三十九条 新聞紙又は雑誌に掲載して発行された政治上、経済上又は社会上の時事問題に関する 論説(学術的な性質を有するものを除く。)は、他の新聞紙若しくは雑誌に転載し、 又は放送し、若しくは有線放送することができる。ただし、これらの利用を禁止する 旨の表示がある場合は、この限りでない。 2 前項の規定により放送され、又は有線放送される論説は、受信装置を用いて公に伝達 することができる。 第四十九条 次に掲げる者は、第二十一条の複製を行つたものとみなす。 一 第三十条第一項、第三十一条第一号、第三十五条、第三十七条第三項、第四十一 条から第四十二条の二まで又は第四十四条第一項若しくは第二項に定める目的以 外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を頒 布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示した者 二 第四十四条第三項の規定に違反して同項の録音物又は録画物を保存した放送事業 者又は有線放送事業者 三 第四十七条の二第一項の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物(次項第 二号の複製物に該当するものを除く。)を頒布し、又は当該複製物によつて当該 著作物を公衆に提示した者 -2- 著作権法 四 2 第四十七条の二第二項の規定に違反して同項の複製物(次項第二号の複製物に該 当するものを除く。)を保存した者 次に掲げる者は、当該二次的著作物の原著作物につき第二十七条の翻訳、編曲、変形 又は翻案を行つたものとみなす。 一 第三十条第一項、第三十一条第一号、第三十五条、第三十七条第三項、第四十一 条又は第四十二条に定める目的以外の目的のために、第四十三条の規定の適用を 受けて同条第一号若しくは第二号に掲げるこれらの規定に従い作成された二次的 著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該二次的著作物を公衆に提 示した者 二 第四十七条の二第一項の規定の適用を受けて作成された二次的著作物の複製物を 頒布し、又は当該複製物によつて当該二次的著作物を公衆に提示した者 三 第四十七条の二第二項の規定に違反して前号の複製物を保存した者 第百二条 第三十条第一項、第三十一条、第三十二条、第三十五条、第三十六条、第三十七条第 三項、第三十八条第二項及び第四項、第四十一条から第四十二条の二まで並びに第四 十四条(第二項を除く。)の規定は、著作隣接権の目的となつている実演、レコード、 放送又は有線放送の利用について準用し、第三十条第二項及び第四十七条の三の規定 は、著作隣接権の目的となつている実演又はレコードの利用について準用し、第四十 四条第二項の規定は、著作隣接権の目的となつている実演、レコード又は有線放送の 利用について準用する。この場合において、同条第一項中「第二十三条第一項」とあ るのは「第九十二条第一項、第九十九条第一項又は第百条の三」と、第四十四条第二 項中「第二十三条第一項」とあるのは「第九十二条第一項又は第百条の三」と読み替 えるものとする。 2 前項において準用する第三十二条、第三十七条第三項又は第四十二条の規定により実 演若しくはレコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像( 以下「実演等」 と総称する 。)を複製する場合において、その出所を明示する慣行があるときは、こ れらの複製の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、その出所を明示し なければならない。 3 第三十九条第一項又は第四十条第一項若しくは第二項の規定により著作物を放送し、 又は有線放送することができる場合には、その著作物の放送又は有線放送を受信して これを有線放送し、又は影像を拡大する特別の装置を用いて公に伝達することができ る。 4 次に掲げる者は、第九十一条第一項、第九十六条 、第九十八条又は第百条の二の録音、 録画又は複製を行つたものとみなす。 一 第一項において準用する第三十条第一項、第三十一条第一号、第三十五条、第三 十七条第三項、第四十一条から第四十二条の二まで又は第四十四条第一項若しく は第二項に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成さ れた実演等の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該実演、当該レコード に係る音若しくは当該放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を公衆に提示 した者 -3- 著作権法 二 第一項において準用する第四十四条第三項の規定に違反して同項の録音物又は録 画物を保存した放送事業者又は有線放送事業者 第百十二条 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作 権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者 に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。 2 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、前項の規定による請求を するに際し、侵害の行為を組成した物、侵害の行為によつて作成された物又は専ら侵 害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措 置を請求することができる。 第百十三条 次に掲げる行為は、当該著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接 権を侵害する行為とみなす。 一 国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたな らば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となる べき行為によつて作成された物を輸入する行為 二 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為に よつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を情を知つて頒布し、又は 2 頒布の目的をもつて所持する行為 プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物(当該複製物 の所有者によつて第四十七条の二第一項の規定により作成された複製物並びに前項第 一号の輸入に係るプログラムの著作物の複製物及び当該複製物の所有者によつて同条 第一項の規定により作成された複製物を含む。 )を業務上電子計算機において使用す る行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り、 当該著作権を侵害する行為とみなす。 3 次に掲げる行為は、当該権利管理情報に係る著作者人格権、著作権、実演家人格権又 は著作隣接権を侵害する行為とみなす。 一 権利管理情報として虚偽の情報を故意に付加する行為 二 権利管理情報を故意に除去し、又は改変する行為(記録又は送信の方式の変換に 伴う技術的な制約による場合その他の著作物又は実演等の利用の目的及び態様に 照らしやむを得ないと認められる場合を除く 。 ) 三 前二号の行為が行われた著作物若しくは実演等の複製物を 、情を知つて、頒布し、 若しくは頒布の目的をもつて輸入し、若しくは所持し、又は当該著作物若しくは 実演等を情を知つて公衆送信し、若しくは送信可能化する行為 4 第九十五条第一項若しくは第九十七条第一項に規定する二次使用料又は第九十五条の 三第三項若しくは第九十七条の三第三項に規定する報酬を受ける権利は、前項の規定 の適用については、著作隣接権とみなす。この場合において、前条中「著作隣接権者」 とあるのは「著作隣接権者(次条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を 有する者を含む。)」と、同条第一項中「著作隣接権」とあるのは「著作隣接権(同 -4- 著作権法∼民法 項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。)」とする。 5 著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者 人格権を侵害する行為とみなす。 第百十三条の二 著作物の原作品若しくは複製物(映画の著作物の複製物(映画の著作物において複製 されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を含む。 )を除く。以下こ の条において同じ。) 、実演の録音物若しくは録画物又はレコードの複製物の譲渡を 受けた時において、当該著作物の原作品若しくは複製物、実演の録音物若しくは録画 物又はレコードの複製物がそれぞれ第二十六条の二第二項各号、第九十五条の二第三 項各号又は第九十七条の二第二項各号のいずれにも該当しないものであることを知ら ず、かつ、知らないことにつき過失がない者が当該著作物の原作品若しくは複製物、 実演の録音物若しくは録画物又はレコードの複製物を公衆に譲渡する行為は、第二十 六条の二第一項、第九十五条の二第一項又は第九十七条の二第一項に規定する権利を 侵害する行為でないものとみなす。 第百十四条の二 裁判所は、著作権、出版権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申 立てにより、当事者に対し、当該侵害の行為について立証するため、又は当該侵害の 行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、 その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、こ の限りでない。 2 裁判所は、前項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要 があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合に おいては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。 3 前二項の規定は、著作権、出版権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟における当該侵害 の行為について立証するため必要な検証の目的の提示について準用する。 2.民法(抄) 第一条 私権ハ公共ノ福祉ニ遵フ 2 権利ノ行使及ヒ義務ノ履行ハ信義ニ従ヒ誠実ニ之ヲ為スコトヲ要ス 3 権利ノ濫用ハ之ヲ許サス 第九十条 公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル事項ヲ目的トスル法律行為ハ無効トス 第四百十五条 債務者カ其債務ノ本旨ニ従ヒタル履行ヲ為ササルトキハ債権者ハ其損害ノ賠償ヲ請求 -5- 民法∼独禁法∼消費者契約法∼米国著作権法 スルコトヲ得債務者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リテ履行ヲ為スコト能ハサルニ至リタル トキ亦同シ 第七百九条 故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償ス ル責ニ任ス 3.独占禁止法(抄) 第二十一条 この法律の規定は、著作権法 、特許法 、実用新案法 、意匠法 又は商標法 による 権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。 4.消費者契約法(抄) 第十条 民法 、商法 その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費 者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第 一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無 効とする。 5.米国著作権法(抄) 第107条 第106条および第106A条の規定にかかわらず、批評、解説、ニュース報道、教 授(教室における使用のために複数のコピーを作成する行為を含む) 、研究または調 査等を目的とする著作権のある著作物のフェア・ユース(コピーまたはレコードへの 複製その他第106条に定める手段による使用を含む)は 、著作権の侵害とならない。 著作物の使用がフェア・ユースとなるか否かを判断する場合に考慮すべき要素は、以 下のものを含む。 一 使用の目的および性質(使用が商業性を有するかまたは非営利的教育目的かを含 む)。 二 三 著作権のある著作物の性質。 著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性。 四 著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響。 上記の全ての要素を考慮してフェア・ユースが認定された場合、著作物が未発行であ るという事実自体は、かかる認定を妨げない。 -6- 著作権用語集 ACCS Association of Copyright for Computer Software 正式名称"コンピュータソフトウェア著作権協会"。1985年に設立された、日本国内の電子著作 物の権利保護などの活動を行なう業界団体。1985年に「ソフトウェア法的保護監視機構」として 設立され、その後1991年に現在の名称、組織に移行した。現在では、ソフトウエア関係、マルチ メディア関係など国内の企業200社以上が参加している。 対象としている電子著作物には、コンピュータソフトウエア、デジタルオーディオやデジタル ムービーといったマルチメディアタイトル、電子出版物、データベースなどが含まれる。著作権 者に対する相談窓口の設置、電子著作物に関する権利問題等の調査研究事業のほか、違法コピー 防止のための啓発活動、著作権侵害など違法行為の実態調査および必要な法的措置などの活動を 行なっている。 → JASRAC → 私的録音補償金管理協会 → 日本レコード協会 CD−R/CD−RW CD-Recordable/CD-ReWritable こ れ ま で の CD-DA( CD-DigitalAudio =オーディオ CD)や CD-ROM は作成するためにCDライタ ーという大きくて(ビルの一室や倉庫を借りないと置けない)高価な(何百万円もする)機械を買わ ないと出来なかった(しかも一度に大量に同じ物を作らないと一枚あたりの単価が非常に高くな る)。ところが、このCD−Rというものが登場すると、パソコンとライティングソフトウェアを 使うことで誰でも簡単に、しかも格安で、さらに一度に一枚だけでも作ることが出来るようにな った。このおかげでCDの複製は誰でもいともたやすく出来るようになったのである。またファ イル交換ソフトで手に入れたMP3のデータをデコードしてCD−Rに焼けば、まさしく無料で CDが作成できる。こういったことから日本レコード協会等の著作権管理に関わる団体はCD− Rのこういった特性につき問題視している。 → MP3 → ファイル交換ソフト GPL General Public License コピーライトの対義語としてコピーレフトと呼ばれたりもする。FSF が掲げる理念に基づいて 明文化されたソフトウェアライセンス規約。ソフトウェアの使用条件として,自由(ソースコード を含めた再配布など)を妨げないことを使用者に要求している。ここで言う自由とはソフトウェア の権利を著作権者が放棄することによる自由(いわゆるパブリックドメイン・ソフトウェアなど) ではなく,ソフトウェアの使用条件として自由であることを使用者に要求(再配布を妨げてはいけ ないなど)するもので,これは「GNU General Public License(GPL)」として明文化されている。 iTunes アイチューンズ アップルコンピュータの音楽サービス。一曲 99 セントで、膨大な楽曲のなかから好きなものを 選び、ネット経由でダウンロードできるもの。いまのところ利用できるのが Mac ユーザーに限ら れている。ダウンロードした曲は CD-R などに焼いたり、 iPod で MP3 形式で保存、再生したりで き る ほ か 、 3 台まで PC ならばディスクへのコピーが許される。競合する他社の音楽サービスより 制約が少なく、自由度の高い楽しみ方ができる。このサービスでは、ワンクリックで簡単に購入 可能な仕組みと、アップル製のソフトウェア iTunes music jukebox 、そして iPod プレイヤーの 3 つ を統合することで、従来の音楽配信サービスをしのぐと見られている。また、課金を容易にした ことで、アーティストや音楽会社からも大きな期待が寄せられている。 -7- アップル CEO のスティーブ・ジョブズは、既存のレコード会社や音楽サービスは違法コピーの 恐 れ が あ る た め 、 こ れ ま で し ば し ば 利 用 者 を 犯 罪 者 扱 い し て い た と 指 摘 。 し か し 、 Apple の今回 のサービスが実現した背景には、これまで他企業が音楽業界に規制緩和を懸命に働きかけてきた 成果ともいえる。一時は、ネット配信の与える影響の大きさを懸念して、音楽業界は強い規制で 臨んでいた。しかし、最近では双方の業界が少しずつだが、歩み寄りを見せ始めている。ある音 楽 会 社 で は 、 ア ッ プ ル の 市 場 シ ェ ア が 小 さ い こ と を 踏 ま え て 、「 新 し い 音 楽 サ ー ビ ス は 、 小 規 模 の顧客を相手にした実験的なものだ」と見ている。 アップルでは、音楽会社が得るメリットとして 2 つの点を訴求している。ひとつは、利用者が 音楽を簡単に購入できること、もうひとつが楽曲データにデジタル著作権管理ソフト用のデータ を組み込んでいる点だ。このデータは、 iTunes や QuickTime などで再生された回数などをカウント する。 ファイル交換ソフトによる違法コピーが横行する昨今、著作権を守りつつ利用者の利便性を確 保する音楽配信サービスであり、非常に期待される。 JASRAC ジャスラック 正式名称は“日本音楽著作権協会”。国内の作詞家、作曲家、音楽出版者などの権利者の著作権 の委託管理を行い、音楽著作物利用希望者者の著作権者へのアクセスを所定料金と決まった手続 きで行えるようにする機関。また海外の著作権管理団体とお互いのレパートリーを管理し合う契 約を結び海外の音楽についても利用許可の窓口となっている。なお音楽著作物利用者から徴収し た料金は、著作権者に定期的に分配している。 → ACCS → 私的録音補償金管理協会 → 日本レコード協会 MP3 エムピースリー MPEG-1 Audio Layer3 音声圧縮の規格のひとつ。 CD 品質のデジタルサウンドデータ(44.1KHz,16bit,ステレオ)は,無 圧縮だと1分あたり約 10 MBのサイズになるが, MP3 ではこれを一般的な用途ではほとんど問題な い レ ベ ル の 音 質 劣 化 の み で 約 10 分 の 1(約 1MB )に圧縮することができる。 CD の音楽が 1 曲 当 た り 4MB 前後とインターネット経由でのダウンロードが可能なサイズになるため,現在では We b サイトやファイル交換ソフトを使って不正に配布されていることが問題になっている。 → ファイル交換ソフト TRIPS協定 トリップスきょうてい 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定。貿易と関税に関する一般協定 (GATT) のウルグア イ・ラウンドの一環として 1994 年に調印され, 95 年 発 足 の 世 界 貿 易 機 関 (WTO) に引き継がれ た 。 著作権に関するベルヌ条約や工業所有権に関するパリ条約では,先進国と開発途上国との利 害対立もあり,ソフトウェア等の保護は明確に規定していなかったのに対し, TRIPS ではこれを明 確 化 し た 。 TRIPS の定めた義務を履行しない国に対しては, WTO の規則に基づく紛争手続きを経 て経済的な制裁措置をとる可能性もあるという意味で,知的所有権保護を強化した。 WAREZ ウェアーズ 違法コピーソフトウェアのこと。ただし海賊版として店頭で売られるものは除く。ファイル交 換ソフトやWEBサイトへのアップロードやCD−Rに焼いたものをオフ会で交換したりなどし て出回る。十万円以上するソフトウェアも無料で手に入るため、ウェアーズの交換は今日もどこ かで行われている。 -8- → CD−R/CD−RW → ファイル交換ソフト WIPO ワイポ → 世界知的所有権機関 WIPO著作権条約 ワイポちょさくけんじょうやく 略称WCT。著作権の国際的保護の基本となるベルヌ条約は,1971年に最終の改正が行われまし た(パリ改正条約)が,その後の情報技術の発展や社会状況の変化に対応するために必要な改正は, 加盟国の全会一致を経なければならないため困難となっていました。これを打開するため,同条約 第20条の「特別の取極」として,ベルヌ条約が許与する権利よりも広い権利を著作者に与える「付属 条約」を設け,各国がこれを批准することにより,情報技術等の発展に対応したより高いレベルの著 作権保護を目指す方策がとられました。 この「付属条約」が,1996年に採択された「著作権に関する世界知的所有権機関条約」(WIPO著 作権条約)です。同条約では,締約国に対し,ベルヌ条約上の基本原則(無方式主義,内国民待遇等) 及び保護のレベルを遵守した上で,さらに次のような新たな保護を与えることを求めています。 ① コンピュータ・プログラムの保護(第4条) ② データその他の素材の編集物・データベースの保護(第5条) ③ 著作物の譲渡権の保護(第6条) ④ コンピュータ・プログラム,映画の著作物及びレコードに収録された著作物に関する商業的貸 与権の保護(第7条) ⑤ 著作物の,有線又は無線の方法による公衆への伝達権の保護(第8条) ⑥ 写真の著作物の保護期間の,通常の著作物との同等化(第9条)(ベルヌ条約上は製作後25年以上 の期間で各国が適宜定め得るとされていた。) ⑦ 著作物の技術的保護手段回避に関する規制(第11条) ⑧ 著作物の電子的権利管理情報の除去・改変等の規制(第12条) → 世界知的所有権機関 海賊版 かいぞくばん 国際条約によって保護されている著作物を,条約関係にある他国において,著作権者の許諾なし に無断で複製,頒布したもの。このような無断複製は,条約関係にある国では著作権の侵害となる が,条約関係にない国では法的な拘束がないため差し止めることができない。日本では条約関係に ない国で無断複製された複製物でも,国内に輸入し頒布することについて侵害行為を規定してい る。一般に著作権思想の普及によって海賊版は減ると考えられるが,最近経済的困難や複製技術の 進 歩 か ら 海 賊 版 は か え っ て 増 え て い る 実 態 も あ り , 国 際 的 な 問 題 と な っ て い る 。 開発途上国にお ける経済的困難の打開,出版技術の開発などが海賊版対策の課題とされている。なお,マスコミな どでは一国内の無断複製をも海賊版と呼んでいる。 逆アセンブル disassemble ディスアセンブルともいい、リバースエンジニアリングに使われる。機械語で書かれたオブジ ェクトコードを、アセンブリ言語で記述されたソースコードに変換すること。そのために用いら れるソフトウェアは逆アセンブラと呼ばれる。変数名などはアセンブルの際に消えてしまってい るため、完全に元のソースコードと同一のものが再現できるわけではない。 また、著作権保護などの理由から、利用規定などで逆アセンブルを禁じているソフトウェアも 少なくない。 → リバースエンジニアリング -9- 逆コンパイル decompile ディコンパイルともいい、リバースエンジニアリングに使われる。機械語で書かれたオブジェ クトコードを、コンパイラ型言語によるソースコードに変換すること。そのためのソフトウェア は逆コンパイラと呼ばれる。通常、機械語への変換時に元のソースコードにあった変数名などが 失われていることが多く、また、コンパイラ型言語はアセンブリ言語と違って機械語と一対一に 対応しないため、完全に元のソースコードが再現されるわけではない。 著作権保護などの理由から、利用規定などで逆コンパイルを禁じているソフトウェアも少なく ない。Javaで開発されたプログラムは逆コンパイルされやすい構造であることが知られており、 逆コンパイル対策ソフトも開発されている。 → リバースエンジニアリング キャラクター Character 物語の登場人物や,漫画の主人公のこと。それらの人気や性格を利用して,商品名や容器のデザ インに使った商品を,キャラクター商品という。キャラクター商品化にあたっては,キャラクター の作者,映画製作者など権利者が一定額の使用料金を徴収し収益をあげる (これを商品化権とい う)。キャラクターは,作者,権利者により意匠登録,商標登録されることもあるが,著作権法の著作 物として保護されたり (1976 年 5 月 26 日東京地裁判決〈サザエさん事件〉, 77 年 11 月 14 日東京地裁判決〈ライダーマン事件〉),不正競争防止法により保護される (1978 年 7 月 18 日 大阪地裁判決〈アメリカン・プロフットボールのシンボルマークに関する事件〉) ことが多い。 著作権法では,美術の著作物とされる (簡単なマーク,図形は不正競争防止法による)。キャラクタ ー一般を保護する実定法はないため,既存の小説の登場人物の名称,しぐさ,役割をそっくり私用し 他人がこれを登場させて別の小説を著作することについては,自由であり,既存の小説の作家,また はその遺族は, 著作権侵害には問えず,問題があるとされている。 クリックラップ方式 Click Wrap Method コンピュータソフトウェアの使用許諾契約に使われる方式。ソフトウェアハウスが作成した使 用許諾契約約款の同意ボタンをクリックしないとソフトウェアがインストールできない仕組みの ことである。ただこれはユーザーにとって非常に不利益な契約方式であり,今後,消費者契約法改 正などでその効力を制限すべきだという主張もある。 → 使用許諾契約 公衆送信権 不特定又は特定多数の人々(公衆)が直接受信することを目的として著作物を無線通信又は有 線電気通信により送信することをいいます。放送や有線放送のように同一内容の送信が同時に受 信されることを目的とする場合だけでなく、公衆が個別に選択した場所及び時において受信する 場合も含まれます。オンライン・データベース・サービスやホームページ・サービスのような双 方向性の送信(インタラクティブ送信)も公衆送信にあたります。これに対応する権利を公衆送 信権といいます。 コピー&ペースト Copy & Paste コンピューターのマルチウィンドウシステムにおいて,複数のアプリケーション間でデータ交換 を 行 な う 方 法 の 1 つ 。 まず,転送元アプリケーションから転送したい部分を選択し,メニューな どから「コピー」を実行する。すると選択された部分は転送元アプリケーションの表示から消え,ク リップボードに転送される。次に転送先のアプリケーションをアクティブにし,メニューなどから - 10- 「ペースト」を実行する。すると,クリップボードに転送されたデータが,転送先のアプリケーショ ンにコピーされる。コピー&ペーストは,この一連の操作を示す用語である。日本では,ペースト のことを「貼り付け」などと呼ぶこともある。 この技術は簡単に他人の文章を簡単に引用することを可能にし,学生たちはこの機能を駆使して レポートでの引用のための書き写しの時間を大幅に削減することが出来るようになった。しかし ながら,引用が簡単に出来るということはフェアユースに属さない引用等の著作権侵害もより多く 行われるようになることを意味しているのである。 コピーコントロールCD Copy control CD イスラエルのミドバル社が開発したCDSというコピープロテクトを施した12cm大の光デ ィスク。これをエイベックストラックスが音楽再生用メディアとして使用する際、コピーコント ロールCDと名付けた。このディスクはCDという名前がついてはいるが、ソニー社、フィリッ プス社等が策定したCDの規格に適合しないため本来の意味でCDではない。したがって再生で きないCDプレーヤーも多く存在し、ケンウッド社などはこれを無理に再生しようとして機器が 故障しても責任を負わないと明言している。 コピーマート Copy Mart コピーマートとは,北川善太郎(京都大学名誉教授)による構想である。大量複製問題の解決とし て,著作権取引市場を構築するというのがその主眼である。 複写機器の発展と普及にともなって著作物をコピーすることはきわめて容易かつ低コストにな り,大量のコピーによって著作権者の被害は深刻な問題となった。これが大量複製問題である。ま た,デジタル技術は劣化のないデジタル複製を可能にした。このように,大量コピー問題はデジタ ル技術の登場により質的な変貌を遂げつつあるというのである。 ところで大量複製問題は,そもそも著作物の大量無断利用により生じている。これを別の角度か らみると,著作権者の許諾さえあれば大量複製も可能であるということを意味する。したがって, 発想を転換してそのような許諾契約の「場」をつくれば,大量コピー問題も権利侵害から権利実現に 見事に生まれかわることができる。コピーマートはその「場」として考えられたものである。 コピーマートは二種のデータベースから構成される。一つは著作権マーケット(コピーライトマ ーケット)であり,もう一つは著作物マーケット(コピーマーケット)である。ここで,権利者はコピ ーマートに自己の著作権を登録し希望する取引条件を提示しておく。そうすると,利用者が登録さ れた著作物の複製をコピーマートから入手すれば自己にライセンス料が振り込まれるというもの である。 このように,コピーマートでは権利者によって個別許諾がなされており,私権としての著作権の 権利実現が保証されているのである。したがって,強制許諾制度を設けることなく,大量複製問題 を解決することができるのである。また,利用する側からみても,利用者はコピー・マートで各種 の著作権情報を検索したうえで,希望する著作物を即時に入手できる。また,マルチメディア作品 の制作を企画する過程で,これにかかる著作権コストの見積もりをすることもできる。 私的録音補償金管理協会 してきろくおんほしょうきんかんりきょうかい 略 称 SARAH 。日本音楽著作権協会(JASRAC),日本芸能実演家団体協議会(芸団協),日本レコード 協会(RIAJ)を会員とし,ラジカセやオーディオコンポのような音楽録音機器やCDやMDなどの音 楽記録媒体の価格の一部分に補償金(録音機器はカタログに表示された標準価格の65%相当額の2 %[上限1,000円],記録媒体はカタログに表示された標準価格の50%相当額の3%)を課し、それを 著作権者等に分配(著作権者36%,実演家32%,レコード製作者32%)する機関。 → ACCS → JASRAC → 日本レコード協会 - 11- シュリンクラップ方式 Shrink Wrap Method パッケージソフトの使用許諾契約に使われる方式の一つ。ソフトウェアハウスが作成した使用 許諾契約約款の書かれた封を開封することで自動的に約款に同意したと見なす方式。封を開けな いとパッケージソフトの入ったメディアを梱包から取り出せないため,ソフト購入者は約款を読む 読まないを別に開封することになる。ただこれはユーザーにとって非常に不利益な契約方式であ り,今後,消費者契約法改正などでその効力を制限すべきだという主張もある。 → 使用許諾契約 使用許諾契約 しようきょだくけいやく コンピュータープログラム等のソフトウェアの使用権の売買にあたり,ソフト作成者とユーザー の権利義務の内容について取り決めるものである。当然にソフト作成者が一方的にユーザーに認 めさせる内容となる。その際,クリックラップ方式やシュリンクラップ方式など明らかにユーザー に不利益な契約方式がとられることが多い。 → クリックラップ方式 → シュリンクラップ方式 肖像権 しょうぞうけん 人の肖像は,その人と密接に結びついていて,その人の人格価値そのものであるから,人の肖 像 を 正 当 な 理 由 や 権 限 な く み だ り に 他 人 が 写 真 , 絵 画 , 彫 刻 そ の 他 の 手 段 で 作 成 (複製) するこ と,これを公表することについては,肖像本人に,作成についての拒絶権,公表についての拒絶 権があると考えられ,これが肖像権である。 肖像権については,日本の法律には規定がないが,デモ行進中の者を警察官が写真撮影し,こ れに抗議した参加者が警官を竿で傷つけた刑事事件で ,最高裁 1969 年 12 月 24 日判決が憲法 13 条 を 根 拠 に 〈 何 人 も , そ の 承 諾 な し に , み だ り に そ の 容 貌 ・ 姿 態 (〈容貌等〉という) を撮影さ れない自由を有するものというべきである。これを肖像権と称するかどうか別として,少なくと も,警察官が正当な理由もないのに個人の容貌等を撮影することは憲法 13 条の趣旨に反し,許 されないものといわねばならない〉と判決し,以後民事事件でも,判例が認め,現に形成されつ つある権利である。 肖像には,人格的な利益と経済的な利益があり,通常肖像権といわれる場合,前者の利益を侵 害する者に対する,(経済的な利益の方はパブリシティ権と言う) 撮影拒絶権としての肖像権およ び公表拒絶権としての肖像権を指している。 人格権としての肖像権である。いずれも侵害された 場合 ,損害賠償の対象になる 。またこの人格権としての肖像権により ,差止めも可能と解される 。 ただし,肖像の作成・公表が,公益の利害に関し,もっぱら公益目的でなされ,その公表内容が 相当と考えられる場合や,報道の自由の見地から,記事とともに肖像写真が掲載され,この記事 と一体と判断されて記事が名誉毀損に該当しない場合,肖像写真は,肖像権侵害にならないとの 下級審判例がある。 → パブリシティ権 シリアルナンバー Serial Number 商用ソフトウェアに付属している、各パッケージごとに固有の番号。メーカー側での登録ユー ザの管理に用いられるほか、不正コピー防止のために、ソフトのインストール時にユーザにシリ アルナンバーの入力を要求し、適切な番号が入力できなければインストールできないようになっ ている。 - 12- 1つのパッケージで複数ライセンスを受ける場合には、ライセンスごとに異なるシリアルナンバ ーがメーカーより提供される。実運用上は1つのシリアルナンバーごとに1ライセンスが付属する 形となっているため、同一のシリアルナンバーで複数のマシンにアプリケーションソフトをイン ストールする行為は、使用許諾契約に別段の規定がなければ契約違反となる。 シリアルナンバーで不正コピーを監視するシステムを取っているソフトは、一定のルールに従 うシリアルナンバーが入力された時にインストールを許可するシステムを採っているため、正規 に発行されたシリアルナンバーがインターネット上で公開されてしまうと不正コピーが可能にな ってしまう。このことから、最近ではオンライン登録の義務化による不正コピーの防止など、シ リアルナンバー照合と他の方式を併用した不正コピー防止策が導入されつつある。 世界知的所有権機関 せかいちてきしょゆうけんきかん 国際連合の専門機関の一つ。略称WIPO(ワイポ)。 1967 年 7 月にストックホルムで署名された 〈世界知的所有権機関を設立する条約〉 (1970 年 4 月発効) に基づいて設立され, 74 年に国連 の専門機関となった。日本は 75 年に加盟。 WIPO 加盟国は 1997 年 7 月現在で 164 ヵ国。 [沿革] WIPO は,〈工業所有権の保護に関するパリ条約〉 (パリ条約ともいう。ともに略称) に基づく 同盟 (パリ同盟) およびこの同盟に関連して設立された特別の同盟および協定と,〈文学的及び美 術 的 著 作 物 の 保 護 に 関 す る ベ ル ヌ 条 約 〉 (略称ベルヌ条約) に基づく同盟 (ベルヌ同盟) の合同 事務局であった知的所有権保護国際合同事務局 (略称BIRPI) の後継機関である。本部はスイスの ジュネーブ。 [目的] 全世界にわたって知的所有権の保護を促進すること (新しい国際条約の締結の奨励,発展途上国 へ の 援 助 等 ) および知的所有権関係の諸同盟の管理を近代化し能率化するため同盟間の行政的協 力 を 確 保 す る こ と (WIPO 設立条約第 3 条 ) を目的とする。なお,WIPO 設立条約でいう知的所有 権 と は , 工 業 所 有 権 (特許,実用新案,意匠,商標,サービス・マーク,商号,原産地表示または原産 地名称および不正競争の防止に関する権利) と著作権を併せたものをいう。 [TRIPS 協定との関わり] 工業所有権や著作権の国際的保護については, 1995 年に発効し,世界貿易機関 (WTO)により管 理されている〈知的所有権の貿易関連の側面に関する協定〉 (TRIPS 協定。 Trade Related Aspe cts of Intellectual Property Rights) においても規定されている。 TRIPS 協 定 第 2 条の規定 により,WTO 加盟国は,パリ条約,ベルヌ条約に加盟していない国であってもパリ条約の実体的な法 規定に従わなければならない。 TRIPS 協定は〈開示されていない情報〉 (一般に営業秘密 (トレ ード・シークレット) という。 〈ノウハウ〉の項参照) および〈集積回路の回路配置 (トポグラ フ ィ ー ) 〉もその対象とする等,知的所有権の保護を,パリ条約,ベルヌ条約より厚くしている。ま た WIPO は 96 年 1 月より WTO と協定を結んでいる。この協定は,TRIPS 協定の施行に関する発 展途上国への法的技術的援助,知的所有権法令の通報・収集,国家と政府間国際機関の紋章の通報 に関して,両機関の協力関係を規定している。 著作隣接権 ちょさくりんせつけん 実演,レコード,放送,有線放送は,著作物の伝達手段であるが,これらは無断の複製等から 守られるべき価値があるとして,著作物に準じて,著作権法によって,保護されている。この実 演 家 , レ コ ー ド 製 作 者 , 放 送 事 業 者 , 有 線 放 送 事 業 者 に 与 え ら れ た 権 利 が 著 作 隣 接 権 で あ る (著 作権法 89 条∼ 104 条)。 著作権に隣りあったという意味で著作隣接権 neighbouringrights と い い , 日 本 で は 1970 年著作権法改正で創設された (実演とレコードについては,旧法下でもある程度 保護されていた)。これは, 1961 年ローマで作成された〈実演家,レコード製作者及び放送機関 の保護に関する国際条約〉 (実演家等保護条約, 隣接権条約,ローマ条約とも呼ばれる) を取り - 13- 入れたもので,この条約はユネスコ,国際労働機関 (ILO ),ベルヌ同盟の 3 者が作成した。日本 は , 著 作 権 法 に は こ の 著 作 隣 接 権 を 取 り 入 れ て い た が , 実 演 家 等 保 護 条 約 へ 加 入 し た の は 1989 年 で , 同 年 10 月 26 日発効した。 著作権法の定める著作隣接権の内容は次の通り。 著 作 権 同 様 , 無 方 式 主 義 で あ る 。 人格権は 規定されていない。保護期間は,いずれも行為時から 50 年間。これらの権利は,著作者の権利 に影響を及ぼさない。 実演家は,実演の録音,録画,放送,有線放送について許諾権をもつ。また送信可能化権をも つ。商業用レコードについて 2 次使用料を受ける権利をもつ。商業用レコードの公衆への貸与に ついて 1 年間貸与権をもち,期間経過後は,報酬請求権をもつ。 レコード製作者は,そのレコードの複製について許諾権をもつ。送信可能化権をもつ。商業用 レコードについて 2 次使用料を受ける権利をもつ。商業用レコードの公衆への貸与について 1 年間貸与権をもち,期間経過後は,報酬請求権をもつ。 放送事業者は,その放送またはこれを受信して行う有線放送を受信して,その放送に係る音ま たは影像を録音し,録画し,または写真的複製について許諾権をもつ。テレビジョン放送を影像 拡大装置を用いて公に伝達するについて許諾権をもつ。 有線放送事業者は,その有線放送を受信して,その有線放送に係る音または影像を録音し,録 画し,または写真的複製について許諾権をもつ。 デジタル万引き デジタルまんびき 日本雑誌協会と電気通信事業者協会が 2003 年(平成 15) 7 月に行なった防止キャンペーンで 用いられた語。書店の店頭で,カメラ付き携帯電話を用いて,未購入の雑誌や書籍の内容を撮影 する行為。携帯電話端末の機能向上に伴い急増しており,著作権の侵害に繋(つな)がる行為とし て問題視されている。しかしながら、ものを窃取したわけでないのに万引きという用語を使うこ とについて、違和感を感じる人も少なくない。 デジタルミレニアム著作権法 Digital Millemium CopyRight Act 1998年に制定されたアメリカの著作権法改正法。アメリカでは著作権法制定以来第三回目の 大規模な改正となった。 デジタル化された情報の著作権保護やその取り扱いを規定し,作権保護対策を破るのに使われ る可能性のあるプログラムの提供を禁じている。著作権で保護された作品へのアクセスを制限す る保護技術を回避することは,違法行為とみなされている。同様に,回避する際に使用するツー ルや技術をすべて禁止している。作者を守るためのものではなく,莫大な著作権を所有する者の 利益を代弁するものと言われ ,エンターテインメントおよびソフトウェア業界( 特にハリウッド ) に絶賛される一方で,プログラマーたちからの強い批判にさらされている連邦法。ワシントンの 政治家から強く支持されているため,議会での法改正も望み薄である。最近,インターネットを 通 じ た 海 賊 版 作 成 に 関 係 な い 業 界 で , 製 品 の 設 計 に DMCA をうまく取り入れ,競合各社を蹴落と すために利用している企業があるらしい。また、ベルヌ条約にのっとた著作権保護機関は著作者 の死後50年であるが、これを70年に引き伸ばすなどしているが、やはりディズニーなどのキ ャラクタービジネスを営む大企業のに有利な内容である。 電子的権利管理システム でんしてきけんりかんしシステム コンピュータープログラム,ウェブコンテンツ, DVD 等の電子情報については,不正な複製を防 止したり検出するするために暗号や電子透かしを応用したプロテクト技術が開発され適用されて いる。また,ネットワーク上で取引するための著作権許諾システムとして超流通, コピーマート, トランスコピーライト等の方式が開発されている。 → コピーマート → トランスコピーライト - 14- 同人市場 どうじんしじょう どこの国にもあるが、日本で活発な存在。出版社を通さずに自費出版本や自家製作ゲームソフ ト等を売ったり買ったりするための市場、もしくはそれらの需要供給の広がりを指す。毎年東京 ビッグサイトで年に二回開かれる“コミックマーケット”を代表に全国にたくさんの同人誌即売 会が存在する。そこでは完全オリジナルな自費出版誌も並ぶが、大半は“版権もの”と呼ばれる 人気の漫画やゲームのキャラクターを使ったパロディである。出版、ゲーム製作の各社はこの“ 版権もの”を作る意欲※を掻き立たせるような作品を出すと良く売れるため、わざとそのような 作品を世に出し、同人マニアたちの二次創作については著作権法上の権利主張をしない傾向があ るが、したとすると権利主張は裁判で認められるケースも多い。 ※“版権もの”を製作することをを同人マニアたちは“二次創作”と呼ぶ トランスコピーライト Trance Copy Right コピーされることを前提として,その利用にも相応の料金を設定しようというのが「トランスコ ピーライト」の考え方である.例えば100ページで1,000円の本の10ページ分だけ読みたいのである ならば,100円で読めるようにするというような考え方である.これはソフトウェアの場合にも利 用できる.多くの機能を持ったソフトウェアを機能毎にばらし,個別機能の部分のみを少ない金額 で購入できるようにするのである.あるいは政治面から家庭面まである新聞をバラバラにして,経 済面だけを買えるようにするのである.トランスコピーライトのような考え方はインターネット が普及するに従って,また情報のディジタル化が進展するに従って重要かつ必要になっていくこと であろう.またこれを実現するためには小口決済の問題を解決する必要がある。アップル社のiTu nes等はこの考え方を一部実践した面がある。 → iTunes ドングル 【dongle】 ソフトウェアの不正コピーを防止するために使われるハードウェアキーの一種。周辺機器接続 ポートに接続するコネクタになっており、これらのポートに周辺機器を接続する場合は、ドング ルに数珠繋ぎに接続する。ドングルが同梱されたソフトウェアは、これをパソコンに接続しない と使うことができず、他のコンピュータにコピーしてもドングルを接続しない限り起動しない。 マッキントッシュ用のDTPソフト"QuarkXPress"等の何十万円もする業務用の高額アプリケーシ ョンパッケージに使用されることが多い。 日本レコード協会 略称"RIAJ"。音楽著作権についての啓蒙活動や著作権違反行為の監視、警告等を行ったりして いる。放送業者に対し著作権法上の二次使用料の徴収を行っているのはこの団体である。また、 日本ゴールドディスク大賞の主催や音楽ギフトカードの発行等を行うなどの活動がある。 → ACCS → 私的録音補償金管理協会 → JASRAC ファイル交換ソフト ファイルこうかんソフト インターネットを利用して,ユーザー同士がMP3の音楽ファイルを交換できることを可能にした ソフトウェア。ユーザー同士が互いにファイルを交換できる仕組みは「P to P:Peer to Peer」と 呼ばれ,これまでLANにおいてはマシンの手軽な接続方法として使われていたが,ファイル交換ソフ - 15- トの出現によりインターネット規模の新しいネットワークモデルとして注目されている。ファイ ル交換ソフトはアメリカのNapster社が出したNapsterが最初で,その後クローンソフトや新タイプ の フ ァ イ ル 交 換 ソ フ ト が 世 界 中 で 誕 生 し た。日本では現在 WinMX と Winny※ がよく使われてい る。しかしMP3ファイルの違法コピーの温床となり,問題視されている。 ※Winnyでは厳密な意味でのファイル交換は出来ない。 パブリシティ権 Publicity Right ここで,その芸能人の肖像が著作物であれば,それは著作権で保護される。しかし,芸能人の肖像 は人間によって創作されたものではないので,著作権によっては保護されないのである。そこで登 場するのが「パブリシティ権」である。パブリシティ権とは,人の氏名や肖像などといった顧客吸引 力ある財産的情報を保護する権利である。これは,いわゆる商品化権の中核をなすものであり,近 時のエンターテイメントビジネスの拡大にともなっていっそう重要度を増している。しかし,パブ リシティ権は著作権法のような明文の制定法をもたない権利である。あくまで判例によって認め られてきたにすぎないのである。そのため,パブリシティ権の性質,内容,限界などといった諸問題 については,いまなお不明確な状態にある。 [パブリシティ権の生成] 芸能人の氏名・肖像に関する財産的利益の保護がはじめて認められたのは,「マーク・レスター」 事件判決である(東京地判昭和51年6月29日)。事案は,マーク・レスター主演の映画「小さな目撃者」 のシーンを使ったコマーシャルをテレビで放映したというもの。これに対して判決は,「俳優等は, 自らかち得た名声の故に,自己の氏名や肖像を対価を得て第三者に専属的に利用させうる利益を有 しているのである。ここでは,氏名や肖像が,……人格的利益とは異質の,独立した経済的利益を有 することになり……,俳優等は,その氏名や肖像の権限なき使用によって精神的苦痛を被らない場 合でも,右経済的利益の侵害を理由として法的救済を受けられる場合が多いといわなければならな い」と判示したのである。この判決の後,人格権としての氏名権・肖像権とは別に,氏名・肖像の財 産的利益を不法行為法上の保護利益として保護する判決がつづくことになる。ただし,これらの判 例では「パブリシティ権」という言葉はまだ用いられていない。 判例において,はじめて「パブリシティ権」という言葉があらわれるのは,光GENJI事件(東京地判 平成元年9月27日)である。この判決は,「氏名・肖像の有する独立した財産的価値」を把握する権利 として「パブリシティ権」を明示した。そして,このパブリシティ権にもとづく差止めを認めたので ある。この判決の後,氏名・肖像に関する排他的財産権として「パブリシティ権」を明示的に承認す る判決がつづくことになる。 [パブリシティ権の拡大] こうして,パブリシティ権は排他的財産権として判例上確立してきた。その後も,パブリシティ 権はさらに拡大の一途をたどっている。これは,主としてパブリシティ権の保護客体における拡大 である。「キング・クリムゾン」事件・第一審(東京地判平成10年1月21日)は,パブリシティ権の対 象について,氏名・肖像に限定せず,「著名人が獲得した名声,社会的評価,知名度等から生ずる経済 的な価値で,顧客吸引力があると認められる場合には,それをもパブリシティ権の内容に含まれる と」判示した 。さらに,馬名パブリシティ事件(名古屋地判平成12年1月19日)は,「物についての名称, 肖像等」に対する広義のパブリシティ権をその所有者に認めるにいたったのである。 → 肖像権 パブリックドメイン Public Domain 法律の規定により著作権の対象とならない領域について表す。その領域に属する絵画や本や映 画等は,誰でも複写し放題,その複写を人に売ったり,譲渡したりし放題である。作者の死後 50 年 を経過して著作権が消滅すると,その著作物は“パブリックドメイン入りする”ことになる。アメ リカでは政府名義で作成されたコンピュータソフトウェアには著作権がつかないのでこれは“パ ブリックドメインのソフトウェア”であると言える。 - 16- 版権 はんけん 著作権の旧称で,1899 年日本ではじめて法律に定められるまで,明治初期には版権という用語が 用 い ら れ た 。 1 8 7 5 年に改正された出版条例において〈図書ヲ著作シ,又ハ外国ノ図書ヲ翻訳シテ 出版スルトキハ三十年間専売ノ権ヲ与フヘシ,此専売ノ権ヲ版権ト云フ〉 (2 条) と版権が規定さ れた。この条例による版権は図書の出版にあたって,版権願書を内務省に差し出した著作者ないし 出版者に与えられる権利で,願出がなければ版権の保護は受けられなかった。 87 年に出版条例か ら版権条例が分離され,そのとき〈版権ハ著作者ニ属シ〉 (7 条) と著作者に帰属することが規定 さ れ た 。 そ の 後 99 年に著作権法が制定され,はじめて著作権の用語が定着し,権利の内容も充実 し た 。 今 日 で も 版 権 と い う 用 語 が 使 わ れ る こ と が あ る が , 著作権とは別の権利のように意識する のは誤りである。 万国著作権条約 ばんこくちょさくけんじょうやく アメリカが中心となり,1952 年に成立した著作権保護に関する国際条約。所管はユネスコ。こ の 条 約 は , 著 作 権 の 発 生 に つ い て 登 録 や 著 作 権 表 示 ( 堽 表 示 ) など,その保護に一定の方式を要求 す る 国 (これらの方式を要求するため標準的な著作権条約であるベルヌ条約に入れない。当時の ア メ リ カ や 米 州 諸 国 な ど ) と著作権を無方式で保護するベルヌ条約加盟国とを結ぶ架橋的条約で あ る 。 1899 年にベルヌ条約に加入していた日本は, 1956 年この万国著作権条約に加入した。 9 5 年 3 月末現在,95 ヵ国が本条約に加入している。万国著作権条約とベルヌ条約の双方に加入し て い る 国 の 国 民 の 著 作 物 は , ベ ル ヌ 条 約 の み で 保 護 す る こ と に な っ て い る ( 万 国 著 作 権 条 約 17 条)。したがって,イギリス,ドイツ,フランスなどベルヌ条約加盟国 76 ヵ国を差し引くと,日本は 19 ヵ国と,万国著作権条約によって著作物を相互に保護しあっている。 同条約では,締約国の国民の著作物には自国民のそれと同一の保護を与えるという内国民待遇の 原則,著作物の複製物にマルC(copyright の頭文字) の記号と著作権者名と最初の発行年の 3 者 を一体として表示すれば無方式主義をとる締約国の国民の著作物でも方式主義の国で保護を受け ること,翻訳権に関する特例などを規定している。さらに保護期間は著作者の生存間と死後 25 年 (ベルヌ条約より短い) としている。新規にある国がこの条約に加入した場合,その発効時から創 作された締約国の国民の著作物について保護義務を負い,発効前に創作され,保護義務を負う国に おいて期間満了になった著作物や保護を受けたことのない著作物については適用しないという不 統 及 の 原 則 (ベルヌ条約は統及原則) をとっている。 万国著作権条約は 1971 年パリで改正された。これはベルヌ条約改正と同時に改正され,ともに 発展途上国に対して著作権保護を緩和する条項を設け,より多くの国を加入させようとした措置で あった。 フリーウェア freeware 著作権者が誰にでも無料で許諾することを宣言したソフトウェア。 とりわけ著作権のあらゆる 権利を放棄したものを PDS (パブリックドメインソフトウェア)と呼ぶ。PDS でなければフリーウ ェアであっても著作権や著作者人格権は存在することに注意する必要がある。また,著作権法上に 乗っかりつつも著作権とは全く別の制限を課す GPL と呼ばれるフリーウェアのためのライセンス が存在する。 → GPL フリーソフトウェアファウンデーション Free Software Foundation 略称FSF,アメリカ,マサチューセッツ工科大学のリチャード・ストールマンRichard Stallman教 授が設立した非営利団体。 GNU (Gnu is Not Unix) プロジェクトで知られる。OS,エディターを 始めとするソフトウェアを開発し,自らが策定した GPL をつけて公開している。 - 17- プロダクトアクティベーション Product Activation マイクロソフト社が違法コピー防止のために自社製ソフトウェアに適用しているユーザー認証 システム。ソフトウェア購入後、インストールの際、インターネット経由でマイクロソフト社か ら、そのソフトウェアのシリアルナンバーとパソコンのハードウェア構成のデータから作られた 解除キーを受信、これにより、その後は、パソコン起動のたびにソフトウェアの構成と先のキー を照合し一定の合致性が認められないとOSの機能制限がついてしまうのである。このような認 証システムが広まると、自分が購入したソフトでもまったく自由に使えない世の中になろう。 文化庁 ぶんかちょう 文化の振興および普及,文化財の保存および活用を図るとともに,宗教に関する国の行政事務を 行うことを任務とする文部科学省の外局。 著作権審議会を所管している。著作権に関する登録は こちらに対してすることになる。 ベルヌ条約 ベルヌじょうやく 1886 年スイスのベルンで調印された著作権を国際的に保護する条約。正称は〈文学的及び美術 的 著 作 物 の 保 護 に 関 す る ベ ル ヌ 条 約 〉。 世 界 で の 著 作 権 に 関 す る 標 準 的 条 約 で , 1997 年 1 月現 在,ベルヌ条約加盟国は 121 ヵ国で,日本は 120 ヵ国と,この条約に基づいて著作物を保護しあっ ている。 ベルヌ条約は,1908 年 以 来 , 著 作 権 の 享 有 お よ び 行 使 に 登 録 , 納 本 , 留 保 の 表 示 な ど の 手 続 (方 式 ) を必要としない無方式主義を条約上の原則としている。このほか,条約加盟国は,自国民に与 えている保護と同様の保護を同盟国の国民に与えるという内国民待遇,条約の同盟国としてこれだ け は 守 る と い う 最 低 限 の 事 項 の 定 め , 著作権の保護の範囲および救済方法は条約のほか保護が要 求される国の法令,すなわち法廷地法によるという法廷地原則,条約に加盟した場合,その国は条約 発効前に創作された著作物についても,発効時にその本国または保護義務を負う国において保護期 間満了により公有となっているものを除いて,すべての著作物に統及して適用されるという統及の 原則 (万国著作権条約はこれと異なり不統及原則をとる) などの基本的事項を定め,各国のモデル 的性格を有している 。 1886 年スイスのベルヌで調印に参加したのは,フランス,イギリス,スイス, ドイツ,イタリア,ベルギー,スペイン,ハイチ,リベリア,チュニジアの 10 ヵ国で,1887 年 12 月 5 日条約は発効した (日本はこの条約作成会議にはオブザーバーを参加させるにとどまった)。 日本がこの条約に加入したのは 1899 年であるが,積極的な気持から加盟したわけではなく, 工 業 所 有 権 の パ リ 条 約 と と も に こ の ベ ル ヌ 条 約 へ の 加 盟 が い わ ゆ る 不 平 等 条 約 改 正 (領事裁判権撤 去 。 い わ ゆ る 条 約 改 正 ) の一条件とされていたからである。すなわち,1894 年イギリスとの改正 条約に〈日本国政府ハ日本国ニオケル大ブリテン国領事裁判権ノ廃止ニ先立チ,工業ノ所有権及ビ 版権ノ保護ニ関スル列国同盟条約ニ加入スベキ事ヲ約ス〉とあり,日本とドイツなどとの国に対す るものにも同様の規定があった。 日本は,外国人の著作物を保護することなどを定めた著作権法 (旧著作権法) を 1899 年 3 月 制 定 , 同 年 7 月 15 日施行し,ベルヌ条約に同年 4 月 18 日加入し,同年 7 月 15 日発効した。 な お , ア メ リ カ は 1989 年 , 中 国 は 92 年 , ロ シ ア が 95 年,韓国は 96 年ベルヌ条約に加入した。 マルC表示 マルシーひょうじ 図書やウェブページ等に表示される記号copyright mark。 1952 年に創設された万国著作権条 約による。当時ベルヌ条約に加盟していなかったアメリカ等において,無方式主義国で創作された 著 作 物 を 保 護 す る た め の 条 件 と し て , 堽と創作の年と著作権者名を表示することが定められた。 そ の 後 89 年にアメリカがベルヌ条約に加盟し,この表示の法的意義はほぼ消滅したが,アメリカ 著作権法ではこの表示に裁判上の意義が認められていることもあり,国際的に慣例として定着して - 18- いる。 → 万国著作権条約 無体財産権 むたいざいさんけん 新規な創作に関する権利と営業上の信用に関する権利の総称。その具体的内容は次のとおりで あ る 。 (1 ) 新 規 な 創 作 に 関 す る 権 利 (a ) 著 作 権 , (b )工業所有権 (特許権,実用新案権, 意 匠権 ,種苗法上の権利 ,その他 (例えば営業秘密) ) 。 ( 2 ) 営業上の信用に関する権利 (商標権 , 商号権,その他 (不正競争防止法上の権利) )。 古くは不動産が財産の中心であったが,近代に至り債権が重要な地位を占めるようになった。 そして大量生産時代に入り,第 3 の財産として無体財産も重要な地位を占めるに至った。無体財 産 権 は 知 的 財 産 権 (知的所有権) とも呼ばれるように,その対象は人間の知的創作物あるいは営 業上の信用といったきわめて観念的なものであるため,権利の範囲等につき必ずしも明確ではな く,その点をめぐる争いも多い。無体財産権は,一応上のように分類できるが,この分類は必ず しも絶対的なものではない。例えば,コンピューター・ソフトウェアについては, 1985 年の著 作 権 法 改 正 ( 1986 年施行) により,著作物として保護されることが明らかにされたが,特許法に よる保護も可能である。また,応用美術については,意匠法で保護されるのか著作権法で保護さ れるのかは,必ずしも明らかではない。また,フォントデータのように,その保護の態様が明確 でないものもある。民法に規定されている財産権の対象は,変化が少ないため,民法改正のなさ れることはまれであるのに対し,無体財産権の対象は,社会や技術の発展とともに増加してゆく ため,つねに法改正あるいは新規立法の必要がある。 1978 年に制定された種苗法( 98 年全面改 正)はその好例であり,それまで保護の薄かった植物新品種の育成者にも,特許権類似の保護が 与えられることになった (〈品種〉の項参照)。今後も新たな分野についての立法がなされるであ ろう。またこの財産権についての紛争も国内・国際を問わず,増加することが予想される。 リバースエンジニアリング Reverse Engineering 本来の意味は,製品を解析してそこで利用されている技術を解明すること 。特許権の侵害の検出, 技術の習得等,さまざまな目的で行われる。ハードウェアに対して実施することを禁止する法規定 はなく,当事者同士の契約によって企業秘密とされたものを検出して利用する場合のみが問題にな る。ソフトウェアの場合には,特許権に加えて著作権の侵害の有無を調査することを目的としてリ バースエンジニアリングを行う場合があるが,皮肉なことに,そのために必要な逆アセンブル等の 解析行為が相手の複製権を侵害する恐れがある 。これについてはフェアユースだとも主張される 。 また,広義には,その結果を応用して元の製品と互換性のある模倣製品や,元の製品と相互接続する 製品を開発することを指すこともある。この意味のリバースエンジニアリングを合法とするか否 かは,競争政策との関係が深く,日米欧の間で政策的課題として議論されてきたが決着していない 。 → 逆アセンブル → 逆コンパイル 用語集参考文献 http://ds.hbi.ne.jp/netencyhome/ http://yougo.ascii24.com/gh/ http://ew.hitachi-system.co.jp/ ネットで百科 アスキーデジタル用語辞典 日立システム&サービスIT用語辞典 - 19-