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雇用システム改革
資料3 第4回 日本の「稼ぐ力」創出研究会 雇用システム改革 事務局説明資料 2014年6月10日 経済産業省 経済産業政策局 (※)本分析における試算は、一定の仮定を置いて推計を行ったものであり、 種々の不確実性に鑑み、相当程度の幅を持って理解される必要がある。 <目次> 1. 柔軟で多様な働き方の推進 ・・・ P. 3 2. 労働市場の機能強化 ・・・・・・・・ P.19 3. 外国人材の活用 ・・・・・・・・・・・ P.27 2 1.柔軟で多様な働き方の推進(1/3) ①人口減少社会の到来や経済のグローバル化といった課題への対応という観点 からは、若者・女性・高齢者の活躍促進や教育制度改革など幅広い取組が必要。 特に、日本の「稼ぐ力」を創出するためには、行き過ぎた非正規化を是正し、労 働生産性の向上を図ることが必要ではないか。 ②雇用者に占める非正規雇用の比率は長期的に増加傾向にあり、業種別では サービス業が増加分の約4割、医療・福祉が4割弱、年代別では高齢者が約6割、 就職氷河期世代が約3.5割を占める。 ③非正規雇用が多い産業においては、生産性の低迷が見られる。非正規雇用は 雇用期間が限られるため、従業員の成長意欲を引き出せず、また企業側も長期 的な人材育成のインセンティブがなく、結果として生産性の低迷が生じている可 能性がある。 3 非正規労働者比率の推移 雇用者に占める非正規雇用の比率は、長期的に増加傾向にあり、2004年から2014年の10年間で 6.4%増加し、37.9%となった。 40.0% 雇用者に占める非正規従業員の比率 (2004年) 正規 3,380万人 非正規 1,555万人 非正規比率 31.5% 35.0% (2014年) 正規 3,223万人 非正規 1,970万人 非正規比率 37.9% 男女非正規 30.0% 女非正規 25.0% 20.0% 15.0% 10.0% 5.0% 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 0.0% (出典)労働力調査(総務省) 4 年齢階層別、産業別の非正規労働者の増加 非正規の増加を年代別にみると60歳以上の非正規雇用者の増加が最も大きく、6割弱を占める。また、 就職氷河期世代も約3.5割を占める。 産業別にみるとサービス業の非正規雇用者の増加が最も大きく、約4割を占める。次いで、医療・福祉が4 割弱を占める。 年齢階層別の非正規者数の増減 産業別の非正規者数の増減 2002年から2012年への増減 2002年から2012年への増減 (万人) (万人) 500 ① 60歳以上 が大半 60歳以上 200 100 0 -100 45~59歳 30~44歳 15~29歳 ② 就職氷河 期世代 サービス業 サービス業 医療,福祉 250 不動産業,物品賃貸業 200 卸売業,小売業 運輸業,郵便業 150 100 50 0 -50 (出典)労働力調査、就業構造基本調査(総務省) 公務(他に分類されるものを除く) 350 300 400 300 400 医療・福祉 電気・ガス・熱供給・水道業 製造業 建設業 情報通信業 金融業,保険業 ③ サービス業、医療・ 福祉が大半 ●サービス業には、「学術研究,専門・技術サービス,宿泊業,飲食サービス業、生活関連サービス業, 娯楽業、教育,学習支援業、複合サービス業、サービス業(他に分類されないもの)」を含む。 ●2002年からの増減には、「農業・林業・漁業、鉱業,採石業,砂利採取業」を含まず。 5 非正規比率と生産性の関係 非正規比率が低い産業ほど、全要素生産性の伸びが大きくなっている。 特に、飲食・宿泊、卸売・小売の非正規率が高く、全要素生産性の伸びが低くなっている。 全要素生産性の伸び(米国を100とした場合) 0% 40 50 60 70 80 90 100 建設 輸送用機器 10% 非正規比率 電気機器 20% 30% 運輸・倉庫 金属 化学 110 120 金融・保険 40% 50% 60% 卸売・小売 70% 80% 飲食・宿泊 (出典)非正規比率:「就業構造基本調査」、全要素生産性:EU KLEMSデータベース 注)卸売・小売の労働生産性は、それぞれの労働生産性の値の単純平均値を使用。 運輸・倉庫については、運輸・倉庫の全要素生産性の値を運輸業,郵便業の非正規比率と比較。 6 1.柔軟で多様な働き方の推進(2/3) ①生産性向上を図るためには、正規と非正規を峻別し、処遇や人材育成投資、雇 用の安定に明確な差を設ける従来の雇用システムを変革し、柔軟で多様な働き 方を可能にする「多様な正社員」を普及・拡大させることなどにより、非正規の正 規化を促すべきではないか。 ②マクロで見ると、多くの産業において、景気や季節の変動に必要な以上の非正 規労働者をかかえており、この一部を正規化し、「多様な正社員」として活用す る余地があるのではないか。 ③「多様な正社員」の普及は、出産や子育て等を機に離職を余儀なくされた女性の 職場復帰や、近年人手不足が深刻になっている地域の一部産業での人材確保 にも資するのではないか。 7 多様な正社員の導入余地 (1)製造業 短期的な雇用者数の増減幅は約20万人、景気変動を要因とする増減幅は約100万人と想定される。 景気により雇用者数の変動が考えられる約100万人までは非正規雇用が必要だが、それを超える非正規 雇用約150万人は、「多様な正社員」に切り替える余地があると考えられる。 (万人) 1100 今後望まれる雇用形態の構成 2008年以降の雇用者数の推移 リーマンショック(景気変動) による雇用者数の変動 近年の短期間での雇 (▲100万人) 用者数の変動幅 (20.8万人) 短期的な変動 (季節変動等) への対応 (20万人) 1000 短期就労外国人の導入 ●万人程度必要 技能実習生の増加 ●万人程度必要 既存の技能実習(主として3年コース) 10万人 日系人定住者(主として製造派遣) 推定10万人 900 非正規雇用 約250万人 (日系人、技能実習、パート、派遣等) 800 700 景気変動 への備え (100万人) 有期雇用 (パート・派遣等) 80万人程度 多様な正社員 150万人程度 正規雇用 約750万人 正規雇用 750万人程度 2008.1 .5 .9 2009.1 .5 .9 2010.1 .5 .9 2011.1 .5 .9 2012.1 .5 .9 2013.1 .5 .9 600 (出典)労働力調査(総務省) ※ 短期間での雇用者数の変動幅は、各年毎に線形近似した値とのかい離の最大値の10年間の平均値を記載。 8 多様な正社員の導入余地 (2)サービス業 短期的な雇用者数の増減幅は約60万人、景気変動を要因とする増減幅は約100万人と想定される。 景気により雇用者数の変動が考えられる約100万人までは非正規雇用が必要だが、それを超える非正規 雇用約820万人は、「多様な正社員」に切り替える余地があると考えられる。 (万人) 2008年以降の雇用者数の推移 短期的な変動 (季節変動等) 近年の短期間での雇 への対応 用者数の変動幅 (60万人) (60万人) 2100 今後望まれる雇用形態の構成 留学生の増加 ●万人 (週28時間・休暇中就労可) 既存の留学生 ●万人 (週28時間・休暇中就労可) 景気変動 への備え (100万人) 2000 1900 リーマンショック(景気変動) による雇用者数の変動 (▲100万人) 有期雇用 (パート・派遣等) 90万人程度 多様な正社員 820万人程度 非正規雇用 約920万人 1200 1800 1700 1100 正規雇用 約1160万人 正規雇用 1160万人程度 2008.1 .5 .9 2009.1 .5 .9 2010.1 .5 .9 2011.1 .5 .9 2012.1 .5 .9 2013.1 .5 .9 1600 (出典)労働力調査(総務省) ※ 短期間での雇用者数の変動幅は、各年毎に線形近似した値とのかい離の最大値の10年間の平均値を記載。 ※ 雇用者数には、「学術研究,専門・技術サービス業、宿泊業,飲食サービス業、生活関連サービス業,娯楽業、 教育,学習支援業、医療,福祉、複合サービス事業、 サービス業 (他に分類されないもの)」の雇用者数を含む。 9 女性の年齢階級別労働力率の世代による特徴 女性の正規雇用の割合は、20代後半をピークに減少に転じており、いったん離職すると正社員として復職 することは難しい。 出産や子育て等を経ても、ライフスタイルに合わせて正社員として働き続けられる環境が必要ではないか。 10 近年の地方における求人数の増加状況 2010年と比較して、2012年は地方を含む広範な都道府県において、求人数が増加している。 【2010年度新規求人状況】 【2012年度新規求人状況】 (%) (%) 30 25 20 15 10 5 30 25 20 15 10 5 全産業の新規求人状況(2010年度) 全産業の新規求人状況(2012年度) ※ 新規求人状況は、都道府県別新規求人数/都道府県別就業者数。 (出典)都道府県別産業別新規求人数は、厚生労働省「職業安定業務統計」(2010年度、2012年 度)の実数。都道府県別産業別就業者数については、総務省「国勢調査」(2010年)、及び 総務省「就業構造基本調査」(2012年)の数値。 11 都市と地方における賃金水準の変化 日本の給与水準は失業率(人材の需給の逼迫状況)との相関が大きいことから、 必要とされている人材の賃金が結果として高くなる傾向にある。 都市と地方の給与水準の変化を比較してみると、都市部では、製造業や情報通信 業など、労働集約型の産業でより人材が求められているのに対し、地方では、卸売 業,小売業、医療,福祉などの産業で人材がより求められている。 賃金水準の変化 (平成15年と平成25年の所定内給与を比較) 労働力人口 上位7都府県 労働力人口 下位20県 運輸業, 郵便業 卸売業, 小売業 金融業, 保険業 (千円/月) 宿泊業, サービス業 飲食 医療,福祉 (他に分類され ないもの) サービス業 建設業 製造業 情報 通信業 -3.3 4.8 6.1 1.4 0.7 2.5 -4.0 -4.1 5.1 -7.7 0.8 0.1 2.2 1.5 -2.2 -5.0 0.3 -13.1 地方よりも都市部で労働者 を必要としている産業 都市部よりも地方で労働者を 必要としている産業 (出典)「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省、 2004年、2014年) 12 1.柔軟で多様な働き方の推進(3/3) <取り組むべき方向性> ①既に一部の企業において、地域限定正社員、職種限定正社員といった「多様な 正社員」の活用など、非正規雇用を正規化する取組がなされている。優秀な人材 の確保による生産性向上を図るため、これら先進的な事例を参考に他の企業で も積極的に取り組むべきではないか。 ②一方で、地域の中小零細企業は、独自に「多様な正社員」を雇用し、人材を育成 することが困難な場合がある。したがって、企業規模の拡大や、限られた人材を 共同で育成する仕組みの構築等が必要ではないか。 ③我が国における賃金制度は、原則、労働時間の長さに応じた報酬が得られる仕 組みとなっているが、柔軟で多様な働き方の推進という観点からは、労働時間よ りも成果を重視して評価されるような働き方を進めることが必要ではないか。この ことは、我が国の労働者が、他の先進国と比べて労働時間が長く、その結果、労 働生産性が低くなっていることを解決することにも資するのではないか。 13 「多様な正社員」の導入など非正規の正規化等の取り組み事例 ●ファーストリテイリング アルバイトとパート1万6千人を2~3年以内に地域限定の正社員 に登用する。新卒や中途採用でも地域限定社員を増やす。 ●日本郵政 2013年度までに1万5,000人以上の非正規社員を地域限定の正 社員に登用。2014年4月には新一般職を用意し、約4,700人を地 域限定の正社員に。 ●スターバックスコーヒー・ジャパン 全契約社員、約800人の正規化(時間、地域限定正社員)を実 施。 ―スタバ日本法人で人事・管理担当の荻野博夫執行役員は「人事制度 見直しの着手は3年前。人手不足がきっかけではない」と話す。 事実、スタバ社員の定着率は高い。厚生労働省によると、新卒の3年以 内の離職率は大卒で30%ほどだが、スタバは5%未満。新制度で意識し たのは契約社員の待遇改善だけでなく、平均年齢が35歳に上がった正 社員の働き方の改革だ。 ●パソナ 電機メーカーを辞めた人など約100人を正社員として雇用し、 無償で半導体検査技術者として養成、7月から企業に派遣する。 ●日本生命 今年7月、正社員だけでなく、事務の契約社員約7千人にも ボーナス(一時金)を支給する。株高などで業績が好調なため、 正社員だけでなく非正規の職員への還元も強めることにした。 ●イケア・ジャパン 9月をメドにパートの待遇を見直し、時間限定の正社員とする。 福利厚生を充実させるとともに、正社員と同じ職務なら時給換 算で正社員と同等にする。 ●全日本空輸 2014年入社から20年ぶりに客室乗務員(CA)を職種限定の正社 員として採用。2,014年4月1日には437人、2015年は500人(予 定)のCAが正社員として入社。 ●すかいらーく 2014年1月に契約社員86人を正社員に。パートやアルバイトか らも正社員に登用できるよう6ヶ月間の研修プログラムを導入し た。 ●損害保険ジャパン 日本興亜損害保険と合併する9月から、時給制で働く事務職約 2千人を働きぶりの評価に応じて昇給する月給制に転換し、 ボーナスも支給する。 仕事の内容も見直し、例えば営業部門は現在は保険申込書の 受け付けや仕分け、とじこみなどが仕事の中心だが、新制度で は代理店への販売支援など社外での仕事にも積極的に関わっ てもらう。 ●三菱東京UFJ銀行 1万2,000人の契約社員が正社員と同じ労働組合に加入できる よう制度を変更。今春は、7,000人が実際に組合に加入した。 ※ 非正規社員の処遇改善等に関する報道まとめ。 14 多様な正社員の制度の活用状況 企業の雇用区分を見ると、半数以上の企業が職種限定などの多様な正社員の制度を持って おり、従業員数でみても、約35%が多様な正社員として働いている。 多様な正社員の制度を導入していない企業の導入していない理由は、「正社員はそもそも多 様な働き方が可能」「労働管理が煩雑」「非正社員を積極的に活用」などが多い。 企業における雇用区分の設定状況と従業員数 全体 多様な正社員 職種限定あり 労働時間限定あり 勤務地限定あり いわゆる正社員 正社員に複数の雇用区分を設けていない理由 正社員はそもそも多様な働き方が可能 であるから 企業数 従業員数 1,987 1,576,996 100.0% 100.0% 1,031 549,452 非正社員を積極的に活用しているから 22.2% 51.9% 34.8% 全事業所が転居を伴わない範囲に立地 しているから 21.3% 878 442,020 44.2% 28.0% 146 53,148 7.3% 3.4% 382 140,191 19.2% 8.9% 1,379 1,011,952 69.4% 64.2% ※ 複数回答のため、各項目の企業数は合計と合致しない。 52.3% 31.1% 労働管理が煩雑になるから 仕事の範囲が一つしかないから 従業員や労働組合からの要望がないか ら 複数区分を設けたいが、その導入方法・ 運用方法に関するノウハウがないから その他 不明 9.8% 7.6% 4.3% 6.5% 10.2% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% ※ 正社員の雇用区分を一つしか設けていない企業が対象 (いわゆる正社員でない雇用区分のみの会社も含まれる。) 対象企業数1055社 (出典)厚生労働省「「多様な形態による正社員」に関する企業アンケート調査」(2011) 1) 調査対象は、全国従業員300人以上の企業2000社 15 「多様な正社員」の普及・拡大 「多様な正社員の普及・拡大のための有識者懇談会」 (座長:今野浩一郎学習院大学 教授)をこれまで8回開催 ※ 制度導入企業8社や労使団体からヒアリング。制度導入のメリット、処遇、転換制度、労働条件明示等を議論 • • • • 「非正規雇用労働者のキャリア・アップ」、「正社員のワーク・ライフ・バランスの実現」のほか、企業 による「優秀な人材の確保」、「地域に密着した事業展開」、「ものづくり技能の安定的な継承」等 のメリット。 勤務地や職務の限定や、労働者による頻繁な転換は、企業にとって柔軟な人事配置とのバラン スに課題。 労働者にとって、企業からの拘束度は緩やかな反面、処遇等への不安について指摘。 少子高齢化やグローバル競争の激化の下、我が国にとって、「正規・非正規の働き方の二極化の 解消」、「女性や子育て・介護に直面する人の雇用継続や能力発揮」等のメリット。 本年年央を目途に、以下の項目を含む「雇用管理上の留意点」をとりまとめる。 ◇ 労働契約の締結・変更時の労働条件明示の在り方 ◇ 処遇の在り方、いわゆる正社員との均衡の在り方 ◇ 相互転換制度 ◇ その他の雇用管理に関する事項 26年度中に、専門性の高い高度人材を含む多様な正社員のモデルとなる好事例及び 就業規則の規定例を幅広く収集し、情報発信。 また、雇用管理上の留意点と併せて、セミナー等により事業主に対して徹底した周知。 さらに、27年度に向けて、雇用管理上の留意点を踏まえた新たな支援措置を検討 16 労働時間の推移 我が国労働者全体での一人当たりの年間総実労働時間は減少しているが、これは平成8年 頃からパートタイム労働者比率が高まったこと等によるもの。 パートタイム労働者を除く一般労働者の年間総実労働時間は、ほとんど減少していない。 就業形態別年間総実労働時間及びパートタイム労働者比率の推移 1999 2008 2010 1999 1999 1990 2000 1984 1990 2033 2016 2015 2012 2024 1996 1972 1992 1996 1997 24.4 23.4 23.5 23.6 一般労働者の総実労働時間 21.5 19.2 16.9 17.5 19.6 17.9 パートタイム労働者比率(単位%) 13.9 11.5 11.5 11.8 21.4 21.5 21.9 22.0 12.4 1195 1176 1183 1176 1164 1172 1170 1172 1184 1171 1176 1182 1166 1158 1163 1157 1150 1139 1153 パートタイム労働者の総実労働時間 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 (出典)「毎月勤労統計調査」厚生労働省 (注) 事業所規模30人以上 20 21 22 23 24 (年度) 17 我が国の長時間労働と労働生産性 日本は国際的にみて、長時間労働者の割合が高い一方で、労働生産性が低くなっている。 OECDか加盟国の労働生産性(2011/上位21カ国) 労働時間の国際比較 一人当たり平均年間総 長時間労働者の割合 実労働時間 (週49時間以上) (2011年) (2012年) 日本 1,728時間 フランス 1,476時間 イギリス 1,625時間 スウェーデン 1.644時間 ドイツ 1.413時間 アメリカ 1,787時間 計22.7% 男性31.6%/女性10.6% 計11.6% 男性16.1%/女性6.5% 計12.0% 男性17.3%/女性5.8% 計7.6% 男性10.7%/女性4.2% 計11.2% 単位:購買力平価換算USドル 男性16.4%/女性5.0% 計16.4% 男性21.8%/女性10.2% (出典)「OECD Detabase」、「ILOデータベース」 (出典)「日本の生産性の動向 2012年版」(日本生産性本部) 18 2.労働市場の機能強化(1/2) ①産業構造が変化し、事業環境変化のスピードがますます速くなる中で、社会全 体での最適な人員配置を実現するためには、従来の長期安定雇用偏重のシス テムを見直し、労働市場の機能強化を促すべきではないか。 ②労働市場の機能強化を促進するためには、企業だけではなく、労働者個人個 人・社会の意識の変革や、労働需給調整機能を果たす外部労働市場の役割も 非常に重要。同時に、企業の人材マネジメントも大きく変革する必要があるので はないか。 ③今後、少子高齢化により、ミドル層(40~55歳程度)人材の労働人口に占める 割合が高まる中で、社内外を問わず、当該ミドル層の能力を十分に活用できる かが、企業にとっての人材マネジメント上の大きな課題となっており、特にミドル 層の労働市場の機能強化が重要ではないか。 19 産業別就業者数の変化・予測 今後、「製造業・建設業」の就業者数が減少する一方で、「情報・サービス業」の就業者数が 増加することが予想されており、その中では特に「医療・福祉」の増加が予想されている。 (万人) 3,500 情報・サービス業3,098万人 3,000 2,500 2,099万人 2,000 1,962万人 製造業・建設業 1,149万人 1,500 1,000 500 0 1990 1995 2000 2005 製造業・建設業 情報・サービス業 金融・保険・不動産業 農林水産業 2010 2015 2020 流通業 資料:リクルート進学総研ホームページ (注)1.1990~2010年は、総務省統計局「労働力調査」(基本主計) 2.予測方法:産業全体の経済成長率予測の前提の下で、産業ごとに2002~2009年における就業者の動向を2020年まで延長することで予測 した。産業全体の経済成長率予測は、日本経済研究センターが2011年6月に発表した2011年から2015年は平均0.4%、2016年から2020年 は同0.6%を用いた。 (出典)リクルートワークス研究所「2020年の「働く」を展望する 成熟期のパラダイムシフト」 20 労働者の年齢構成比率と転職者市場の動向 ミドル層の労働人口が今後増加することが予想されるが、ミドル層の労働市場は硬直的なものとなってい る。 労働者の年齢構成比率の変化 (出典)リクルートワークス研究所『2020年の「働く」を展望する』 注)N=8000 (出典)人材紹介事業者(求人広告による転職サイト)による 転職で成功した8000人に聞いた転職事情(2010年) 21 ミドル層人材の労働意欲 上司からの期待は年齢と共に高まる傾向にあるが、挑戦意欲は年齢と共に徐々に低下し、 成長実感も得られなくなっている。 年代別の仕事に関する意識 22 2.労働市場の機能強化(2/2) <取り組むべき方向性> ①特にミドル層の労働市場の機能強化を促進するためには、企業内の人材マネ ジメントの変革も重要な要素。このため、各企業においても、外部労働市場から の優秀な人材の積極的な登用をはじめ、企業内の人材マネジメントの変革にも 取り組むべきではないか。 ②労働市場の機能強化を進めることは、企業が機動的に事業再編等を行うため に、積極的に外部人材を活用することの基盤となるもの。ただし、それと同時に、 雇用契約の終了時点におけるルールの明確化、特に予見可能性の高い労働 紛争解決システムの構築が必要になるのではないか。 23 労働市場の機能強化促進に向けた企業の人材マネジメントの必要性 企業が直面するミドル層人材活用の現状課題 事業構造や年齢構成の変化 事業構造の変化やバブル期大量入社層の高年齢化等により、場合によっては、スキルと経 験をもつミドル層人材を十分に活用することが困難となりつつある。 雇用慣行のパラダイムシフトの困難性 長期的には社員に社内外での将来にわたる自律的なキャリア形成を促す必要性があると 認識しつつも、これまでの長期雇用偏重の慣行からのパラダイムシフトが容易でなく、試行 錯誤している状況。 社内外労働市場での人材活用に向けた人材マネジメントの必要性 「雇用責任」の概念の切り替え 事業環境の変化のスピードが速く、イノベーションなどの非連続的な事業戦略が求められ る時代には、これまでの一企業内で「社員の雇用を守る」という考え方のみならず、「本人 が自ら雇用を守ることを可能にするように継続的な能力開発等を行う」という考え方に雇用 責任の概念を切り替える必要があるのではないか。 社内外労働市場での人材活用 トップの経営方針に基づく中長期的な組織・人事計画を適切に構築しつつ、社員の社内外 での活躍機会等の情報提供を含めた自律的キャリア形成を支援し、計画的な社内外労働 市場での人材活用に取り組むことが重要。 24 雇用契約の終了時点におけるルールの明確化 (特に、予見可能性の高い労働紛争解決システムの構築) 我が国雇用ルールの明確化・予見可能性の確保を目的として、労働関係の裁判例の分析・ 類型化による「雇用指針」が策定・公表されており、国家戦略特別区域内での相談にも活用さ れる予定。 これに加え、より予見可能性を高めるためには、実際に労働紛争に発展した際に活用できる 労働紛争解決システムの拡充、特に、雇用契約終了時点における金銭解決のルール化が必 要ではないか。 金銭救済制度があることにより、企業側における予見可能性が高まるだけではなく、労働者 にとっても選択の幅が拡大するメリットがある。 (参考①):主要国の解雇紛争における金銭救済制度 復職に代わる 金銭給付命令 の可否 米国 英国 ドイツ フランス イタリア スペイン デン マーク シンガ ポール 香港 韓国 オースト ラリア 日本 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○ × (出典):産業競争力会議第9回雇用・人材分科会 フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所資料から抜粋 (参考②):解決金額に格差が生じている日本の紛争解決システム 「あっせん」(都道府県労働局) 約17.5万円 「「労働審判」(裁判所) 約100万円 「訴訟(和解)」(裁判所) 約300万円 (出典)「労働審判制度の利用者調査」(2013,菅野ほか) 25 3.外国人材の活用 <取り組むべき方向性> ①我が国産業の国際競争力強化のためには、より多くの優秀な外国人材が、日 本国内で働くことのできる環境を整備することが重要。既に、高度外国人材ポ イント制の拡充や、技能実習制度の見直しが進められているが、更に、留学生 や「専門的・技術的分野」の外国人材の受入れ拡大を図っていくことが必要で はないか。また、企業においても、ダイバーシティ経営を進め、国内でも優秀な 外国人材の積極的な活用を図っていくべきではないか。 ②特に、日本に留学し、国家資格等を取得するなど、日本国内で活躍が期待され ている外国人についても、在留資格の制限から、国内での就労が認められな い場合があるところ、元留学生に対する在留資格の優遇などの制度の見直し が必要ではないか。 27 外国人材受入れによる起業の増加 米国では、ベンチャー企業上位50社※1のうち、23社※2が移民(外国人)による起業。 ドイツでは、2009年に設立されたベンチャー企業40万社のうち、13万社が移民(外国人)による起業。 ※1:調査会社ベンチャーソース」が企業価値1億ドル以上の企業を対象に、企業の成長率、売上高等を勘案して上位50社を算出。 ※2:創立者の少なくとも一人が移民である企業。 28 国際的な人材獲得競争に後れる日本 日本における外国人材は労働者総数の1.1%と、欧米諸国に比べ極めて低い。 こうした中、企業活動のグローバル化等により各国の人材獲得競争は激化。しかし、日本の「専門的・技術 的分野」の外国人材は、リーマンショック等により減少し、リーマンショック前の水準には戻っていない。 日本 (千人) 1.1% 専門的・技術的分野における在留外国人数の推移 (ストック) 250 213 207 200 69 68 200 200 68 70 205 72 人文知識・ 国際業務 150 技術 50 47 100 50 17 10 10 2 8 16 11 10 2 8 43 42 43 15 12 10 2 8 15 15 13 10 2 8 13 10 2 8 46 45 43 41 41 H21 H22 H23 H24 H25 - 企業内 転勤 投資・経営 教育 研究 教授 その他 米国 16% 移民資格(グリーンカード)を取 得すれば無期限滞在が可能で就 労制限がない。毎年百万人前後 の移民が受け入れられている。 これに加え、現在、移民法改正 の議論の中で、米国内認定大学 の科学・技術・工学・数学(STE M)の学位を取得した者等は受入 数量割り当ての適用外となる案が 議論されている。 シンガポール 36% 90年代に高度外国人の 誘致政策を加速させている。 永住権取得者の家族にも永住 権を付与している他、グローバル 投資家スキームやアーティストス キームで永住権を与え、外国人を 引きつけている。 労働者の1/3が外国人であり、 出生率は低下の一途ながら人口 自体はこの10年で20%の伸び。 英国 8% 2001年に高度技術移民プログ ラムを導入。08年からポイント制 を段階的に導入。 優遇措置が付与される日本と 異なり、英国のポイント制合格 者は在留資格が付与される。 韓国 2.4% 2000年に特定技術分野で就 労する高度外国人材に優遇措 置を与えるゴールドカード、01 年に韓国の教育機関・研究機 関の教授・研究者に優遇措置 を与えるサイエンスカードを導 入。 2010年に高度外国人材向け のポイント制による居住・永住 資格付与制度を導入。 (注)○内の数字は諸外国の労働力人口総数に占める外国人労働力人口の比率(%) (出典)(独)労働政策研究・研修機構(JILPT)等 (出典)法務省 29 留学生の就職に係る制度面の課題 外国人留学生が専門学校等の日本の教育機関を卒業し、又は国家資格を取得しても、就労可能な在留資 格がないため就労できないケースがある。 留学が認められるのに就労が認められない分野 「専門学校」の留学生(24年度卒業生22万人のうち留学生は2.5万人) 以下の4つのパターンに分類される。 ① 国家資格を取得すれば、「医療」で就労可能・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 歯科衛生士、臨床工学士、看護師 ② 国家資格を取得しても、就労不可能・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 歯科技工士、柔道整復・鍼灸、調理師、理美容師、保育士 ③ 国家資格取得を前提にEPAスキームでのみ就労可能・・・・・・・・・・・・ 介護福祉士 ④ 国家資格なし、就労不可能・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ドッグトリマー、アパレル商品企画、エステティシャン 専門士(24年度専門学校卒業生のうち約20万人と推定) 大卒でなくても、専門学校のうち、修業年限が2年以上等の要件を満たしたもので、文部科学大臣が 指定した課程の修了者は、「専門士」の称号が付与され、「技術」「人文知識・国際業務」等の在留資格 への変更が認められるが、就職後の業務が制限されるという課題が指摘されている。 「各種学校」の留学生(約2千人(推定)) 各種学校卒業生(20万人)の9割は自動車教習所や予備校。就職のための専門知識の習得・就労を目的と する卒業生は1割(2万人)。希望職種は専門学校と同等のものが想定されるが、「技術」や「人文知識・国際 業務」等の学歴要件*を満たさないため就労できない。 「無認可校」の留学生 無認可校で留学生を受入れることのできる機関には、法務省告示*2を受けたファッション・デザイン教育機 関等があるが、 「技術」や「人文知識・国際業務」等の学歴要件を満たさないため就労できない。 *2 平成26年4月現在、法務省告示により各種学校認可を受けていないファッション教育機関5校が「各種学校に準ずる教育機関」として認められて おり、在留資格「留学」により受入れ可能。 (出典)経済産業省委託 「外国人労働者の受入れ政策等に関する調査」等 30