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環境庁(1990)人間関係との共存を目指した野生鳥獣の保護管理

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環境庁(1990)人間関係との共存を目指した野生鳥獣の保護管理
【環境庁 自然保雄局委托胴査】
ノ(降 目輝章聾労 と:α )芽 毛 干干 をチ Eゴ す旨 じ 女二望予』L
鳥 獣
の 保 護 管 理
に 関 す
る 研 究
I.絶 減 の恐れのある大型野生鳥獣の地域個体群 の保護手法
(ツキノワグマ ・ヒグマに関す る研究)
平成 2年 (1990) 3月
護
局
ン
セ
タ ー
( 財
) 日 本 野 生 生 物 研 究
環
境
庁
自
然
保
「人 間活 動 との共 存 を 目指 した野 生 鳥 獣 の 保護 管理 に関 す る研究 」
一 ッキ ノ ワグ マ ・ヒグマ に関 す る研 究 検討 委 員 ・調 査 員等 の 構成 一
( 昭和 6 0 年度 〈1 9 8 5 ) 一平 成 元年 ( 1 9 8 9 ) )
1 . 環 境 庁主 務 担 当課
環境 庁 自然 保 護 局 野生 生 物 課
2 . 調 査受 託 者
ー
財団 法 人 日 本野 生 生 物 研 究 セ ンタ
3 . 調 査検討委員
朝日
稔
(兵
庫 医科 大学 )
阿部
永
(北
海 道 大学 )
加 藤 陸 奥雄
〈 東北 大学 名 誉教 授 )
佐藤 大 七郎
ー
( ( 財 ) 日本 野 生 生 物 研 究 セ ンタ )
4 . 調 査員
青井 俊 樹
〈 北海道大学)
柴田 叡 式
(奈
良 県 林 業試 験 場 )
米国 一 彦
(秋
田 ク マ研究 会 )
(北
海 道 大学 )
間野
勉
ー)
山瀬 一 裕
く ( 財) 日本野 生 生 物 研究 セ ンタ
米国 政 明
((財
鋤柄 直 純
((財
徳田 裕 之
谷 口 慎 一郎
ー
〈 ( 財) 日本 野生 生 物 研 究 セ ンタ )
ー
( ( 財 ) 日本野 生 生 物 研究 セ ンタ )
) 日本野 生 生 物 研究 セ ンター )
) 日本 野 生 生 物 研 究 セ ン ター )
5 . 調 査協力者
(秋
田県 林 業 セ ン ター )
花井 正 光
(文
化庁)
羽澄 俊 裕
(野
生 動 物 管理 事 務 所 )
平吹 喜 彦
(宮
城 教 育 大学 )
細田 徹 治
( 呑 B 歌山 県 立南 部 高校 )
藤岡
浩
小島 聡
(秋
鈴木 一 生
田中 幾 太 郎
(林
田 ク マ研究 会 )
業 試験 所 東 北 支場 )
( 島 根 県益 田中学 校 )
坪田 敏 男
(北
海 道 大学 ; 現 所 属 、岐 阜 大学 )
富田 靖 男
(二
重 県立 博物 館 )
山田 文 雄
r 山
本 聖 子
(森
林 総 合研究 所 関西 支場 )
(北
海道 大 学 ; 現 所 属 、北 海 道 釧路 家 畜保 健 衛 生 所 )
6 . 調 査協力機関
北 海 道 生 活 環 境 部 自然 保 護 課
函館 営 林 支 局
秋 田県 林 務 部 林 政 課
秋 田県林 業 セ ン ター
ニ 重 県緑 化 推 進 課
奈 良 県 自然 保 護 課
広島県林務部森林保全課
広 島県 可 部農 林 事 務 所 林 務 第 一 課
広 島 県 広 島農 林 事 務 所 林 務 第 一 課
島根 県 農 林 水 産 部林政 課
島根 県 川 本 農 林 事務 所 林 業 振 興課
島根 県 浜 田農 林 事 務 所 林 業振 興 課
島根 県 益 田農 林 事 務所 林 業 振 興 課
山 田 県 自然 保 護 課
山 田 県 岩 国林 業 事 務 所 自然 保 護係
徳 島 県 農 林水 産 部 林政 課
高 知 県 保健 環 境 部環 境 保 全 課
次
1
要 約
章 調 査 の概要 と既存資料 の整翠
'・
1 . 調 査 目的 項 目 と調査地域
2.ツ
キ ノ ワグ マ ・ヒグマの生息 状 況 の概 要
3.ツ
キ ノ ワグマ ・ヒグマ に関す る これ まで の調 査 研究
工章 捕 獲個体数 の動向 と被害状況
3
6
15
26
1 .
調査内容 と方法
26
2,
捕獲個体数 の動向
25
3.
人的被害状況
31
III吉 西 日本 の ツキ ノ ワグマ地 域 個体 群 の生 息 状 況 基 礎 調 査
1 . 地 域 個 体 群生息 状 況基 礎 調査 の方 法
36
36
2.
紀 伊 半 島地 域
41
3.
西 中 国地域
56
4.
四 国地域
82
5.
その他 の孤立分布域 と生 息状況 の比較
93
6.
頭 骨 形態 の地理 的変 異
99
r V 奪 北 海 道 にお け る ヒ グマの地 域個 体群 の状 況
V章
3
101
1 . 個 体 群 指 標 調査
101
2 . 個 体 群 の衰退 ・分布縮小域 の生息実態調査
107
ツ キ ノ ワグマ の生 態 ・テ レメ トリー 調 査
126
1 .
秋 田県 にお け る ツキ ノ ワグマ捕 獲 時 期 と捕 獲 と地 点 環 境
126
2,
秋 田県 の ッキ ノ ワグ マ栄 養状態 の 季節 的変 化 と年 齢 構 成 (1986年 の事 例 )
133
3.
秋 田県太 平 山山麓 の ッキ ノ ワグ マ生 息 域 の植 生 構造
137
4.
秋 田県 太平 山地 域 に おけ るツキ ノ ワグ マ の 生 態 ・テ レメ トリー調 査
159
W I 章 ヒ グ マの生 態 テ レメ トリー 調 査
1
.
野 生 エ ゾ ヒ グマ の麻 酔 法
207
207
2.
ドラ ム缶 ワナ を用 いた とグマ の捕 獲 方 法 の 確 立
212
3.
ヒ グ マ の ラ ジオ テ レ メ トリー 法
219
4.
北海道渡島半島南部 におけるエ ゾ ヒグマの行動 と行動 パ ター ン及び
環境構造 とその利用
Ⅶ章 社 会的調査
224
245
1.秋 田県民 の クマに対す る意識調査
245
2.
ヒグマ ・ツキノ ワグマに対す る意識調査 (郵送 ア ンケー ト)
251
3.
ヒグ マ ・ツキ ノ ワ グマ の 各 国 の生 息 状 況 と保 護 管 理 一 ― 十 一 十 一一 一
256
■ 章 今 後 の 保 護 管 理 と調 査 研 究 課題
1 . 検 討委員 か らの提言 … …………………………… …………………………
258
275
2 . 標 識放逐 した個体 の死亡 とそ の要因分析 か ら明 らか にな った ヒグマ
の保護管 理 のための方策 について 一 一一十一…………………………… 2 3 3
3 . 今 後 の保護管理 について くまとめ) … …………………………………… 2 8 7
英語要約 (Sunmary)十
一………………………………………………… …………… 293
要
約
本報 告書 は、環境保全研究 の一 つ として実施 された 「人間活動 との共存 を 目指 した野生
)の
鳥獣 の保護管理 に関す る研究」 ツキノワグマ ・ヒグマ調査班 ( 調査期間 : 1 9 8 5 - 1 9 8 9 年
調査研究成果 を とりまとめた もので あ る。
t 四国 の、 ヒグマ は北 海 で最大 の大型野生陸 哺乳類であ り、 白
ッキノワグマ は本州 ・
導
■
・
本 を代表す る動物であ ど。 ツキノワグマ ヒグマは古 くか らの狩猟対象動物 であ り、捕獲
個体 の胆襲 、毛皮、肉 な どは山村住民 にとって重 要 な生物資源 であ った。 しか し、1 9 6 0 年
代以降の 日本 の産業経済構造 と土地 利用 の急激 な変化 は、 ツキノワグマ と ヒグマの生息環
境 に大きな影響 を与 えた。一 方 、 ツキノ ワグマ ・ヒグマによ る人身事故 の危険 が あ り、ま
た生息域 の一 部 の山間農村部や山林では養蜂箱、果樹園 あるいは植栽木 の樹皮 は ぎ被害が
深刻 な問題 とな って い る。 昭和 5 4 年 ( 1 9 7 9 ) か ら昭和6 3 年 ( 1 9 8 8 ) の 1 0 年間 に ヒグマ によ
り2 人 、 ツキノ ワグマ によ り9 人 の死亡事故 が発生 している。 また、負傷者 は同 じ期 間 に
両種による ものを合 わせて 2 0 8 名 に達 して い る ( 死亡 ・負傷件数 には追跡 中 の ハ ンター
│ヒ
の事故を含む) 。 このため、 ツキノワグマ、 グマの駆除 を求 める意見 も強 い。 しか し、
安易 に捕殺駆除 によ ってのみ被害問題 を解決す ることは、生 物 資源 の損失 、地域生物相多
様性 の減少 を もた らす。 このため、生息地保全 を含 む捕殺駆除 によ らな い、人間活動 と共
存 した クマ類 の保護管理 が求 め られて い る。 本調査研究 は ツキノワグマ ・ヒグマ を取 り巻
くこのような背景 を受 けて調査を実施 した、分布 ・生息状況 に関す る基礎 調査、生態調査
および社会的調査結 果 な どを とりまとめた ものである。
ツキノワグマの全国捕獲数 は昭和4 0 年代 ( 1 9 6 5 - 1 9 7 4 ) か ら増加 し、昭和 5 0 年代 ( 1 9 7 5
- 1 9 8 4 ) に は狩猟 と有害駆除 を合わせた捕獲数 は2 , 0 0 0 頭前後 で推移 し、また捕獲 に しめる
有害駆除捕獲 が半数以上 を しめるようにな った。 ッキ/ ワ グマの基礎調査で は西 日本 の 3
地域で現地調査 を行 った。西 日本 の紀伊半島、西中国、四国 の 3 地 域で は ツキノワグマの
れた箱 ワナを
生息域 は孤立 化 して い る。 四国で は1 9 6 0 年代後半 か ら1 9 7 0 年代 にか けて行 わ・
使 っての捕 獲 と、 人工林 の増加 などによる生 息地環境変化 によ り個体群 絶滅 の危機 にあ
!よ
。紀伊半島 で│ も、二重 県、和歌山県域 で生 息域 の縮小 が起 きて い る。 西中国山地 では、
る―
捕複数 が1 9 6 0 年代後半か ら急激 に増加 した。現在 で も、西中国地 方 3 県 ( 島根県、広島県、
山口県) で は狩猟 と有害駆除 を合わせ るとッキノワグマの年間捕獲数 は5 0 頭近 くに達 し、
強 い捕獲圧 がかか ってい る。西中国地 方 における ツキノワグマ駆除 は、主 に養蜂被害防止
が理 由 とな って い る。
ツキノワグマの生態 調査 は秋 田県太平山地域 で行 った。生態調査 では、航空機 を利 用 し
たテレメ トリー調査方法 を開発 し、地上追跡 と合わせて多数 の調査個体 を連続的 に観察す
-1ヽ
ることがで きた。 その結果 ツキノワグマの行動圏 は メスょリオ スが広 いこと、 メスで平均
30km倉
程度、 オ スでは5 0 k m 2 以上 に達す ることが明 らかにされた。 また、隣 あ った個体 の行
動圏 の重 な りは極 めて大 きい。越冬穴 として、秋田県太平山地域では、標高 3 0 0 m から8 0 0 m
の ところで大木 の樹洞 や 「根 あが り」あるいは樹洞 のある倒木 を利用す る。 また、越冬 中
のメスの出産率 には、前年 の秋 の堅果類 の結実状況 と関連 し、結実 の悪 か った年 の翌春 の
出生率 は低下す る傾向 が 明かに された。
ヒグマでは北海道東部 と北海道北部 で分布域 や生息環境 の変化 に関す る基 礎調査 を行 っ
た。北海道北部 の宗谷岬付近 では1 9 7 0 年代 に入 って ビグマの分布域 が縮小 しているが 、そ
れには捕獲 と車地開発 に よる森林 の減少 が大きく係わ った ことが示 された。北 海道北部地
域で も、興部 一雄武町付近 では 目だ った分布域 の縮小 は起 きてな い。北海道東部の 釧路 ・
根室地方 では明治時代 か ら分布域 の縮小 ・地域的絶滅が見 られ るが、そ の理 由 として この
地域 では早 くか ら車地開発 が進 み森林 が減少 し森林植生 を もつ地域が少 な くな ったこ とな
どが上 げ られた。
ヒグマの生態調査 はテ レメ トリー法 によ り渡島半島地域 で実施 した。 ヒグマの生態調査
にお いては、ド ラム缶 ワナを開発 し、安定 した麻酔方法 の確立や航空機 を利用 したテ レメ
トリー追跡 な ど調査法 の開発 ・改良 を行 った。 ヒグマの生態調査 によ り、 ヒグマではメス
越 えると見 られたが、本調査 の
で4 0 k m 2 から5 0 k m 2 、ォスはょ り広 い行動圏 をもち1 0 0 k m 2 を
ー
中 ではオ ス個体 について は十分 な追跡 デ タを得 るに至 らず、 今後 の課題 と して残 された。
また、 とグマの生態調査では追跡個体 が捕獲 な ど人為要因 に よる死亡 が多 く起 こ り、人為
による ヒグマの死亡率 が高 い ことが示唆 された。
このよ うな現地調査結果 と資料分析 か ら、今後 の ツキノワグマの保護管 理では西 日本 の
孤立分布域 では生 息地保護 を含む保護 を基調 とした保護管理体制 と、養蜂被害対策 として
は電気棚 の利用 な ど捕獲 によ らな い被 害防除が必要であ る。 ヒグマ に関 しては、不法投棄
された水産廃棄物 などが ヒグマの行動 ・食性を攪乱 させ また同時 に捨 て られた釣 り針な ど
が死亡要因 ともな ってい るため、 エサとなる廃棄物 の不法投棄 の防止 が必要 である。 ッキ
ノワグ マ、 ヒグマに共 通 して地域住民 ・登山者 に対す るクマの生物学 的知識 と事故 を減 ら
す ための適切 な対処 に関す る教育普及活動が必要 である。 ハ ンター に対 しては、 ツキ/ ヮ
グマ、 ヒグマの適正 な狩猟管理 のため、捕 獲材料 その他 出猟 記録 などの 資料提供 に関す る
プ ロ グラムを行 う必要がある。 ツキノ ワグマ、 ヒグマに対 す るこれ らの活動 ・処置 の実ル
によ り、 この 2 種 の クマ を今後 も日本 の森林 の中 で存続 させてい くことが必要 である。
と 距多こ7宅戸髪筆 井む斗 α)電 望夢=重目
I母 幸垂 言 耀野毎奎垂 α)湘 巳を重晏吾 て
1 . 調 査 目的 ・項 目 と調 査地 域
(1)調
査 目的 と調 査 項 目
環 境 庁総 合研 究 プ ロ ジェク ト 「人 間活 動 との共存 を 目指 した野 生 鳥 獣 の 保 護 管 理 に関 す
る研 究 」 の ツキ ノ ワ グ マ ・ヒグ マ調 査 で は、 昭 和 6 0 年度 ( 1 9 8 5 ) か ら平 成 元年 度 ( 1 9 8 9 )
にか けて 5 カ 年 調 査 研 究 を 行 った 。 本 調 査 研究 で は、人 間活 動 と ク マ類 の 共 存 の あ り方 を
検 討 す るた め の 基 礎 資料 の 蓄積 とそ の 調 査 手 法 の確 立 を 目的 と して 、 ツキ ノ ワグ マ ・ヒグ
マの 地 域 個体 群 の 生 息 現 況 と生 息 地 利用 に注 目 した生 態 調 査 お よ び ク マ 類 の 保 護 管 理 の た
め の社 会 的課 題 を整 理 した 。 その具体 的調 査 項 目 と して 、次 の 6 項 目 につ いて 調 査研 究 を
行 った 。
( 1 ) 基礎 調 査
( 2 ) 生態 及 び テ レメ トリー 調 査
( 3 ) 個体 群 指 標 調 査
( 4 ) 住民 意 識 調 査
( 5 ) 社会 的調 査
( 6 ) 保護 管 理 手 法 の 検 討
これ らの調 査 研 究 項 目 の 相 互 関連 と調 査 の 流 れ を図 I - 1 に
示 した。 それ ぞれ の 調 査 項
目 の 調 査 目的 、課 題 の 背 景 な どを以 下述 べ る。
1)基 礎調査
生 息 域 が 分 断 ・孤 立 化 し生息 数 も減少 して い る と判断 され る西 日本 の ツキ ノ ワ グ マ生 息
地 域 、 お よ び北 海 道 北 部 と東 部地 域 の ヒグマ 生息 地 域 にお いて 、 ク マ類 の 今後 の 保 護 管 理
の 判 断 材 料 の 一 つ とす る こ とを 目的 と して現 在 の 分 布 域 、狩 猟 状 況 、生 息 地 環 境 選 択 性 と
生 息 環 境 の変 化 の 状 況 、 ク マ に よ る被 害 発 生 記録 な どの基 礎 調 査 を 行 った 。
2 ) 生 態 及 び テ レメ トリー 調 査
生 息 地 利 用 、個 体 間関 係 、 日周 活動 性 な ど ク マ類 の生 物 学 的 資料 の 収 集 ・分 析 を 目指 し、
主 要 な 調 査 手段 と して テ レメ トリー を用 いた生 態 調 査 を 行 った 。
3 ) 個 体 群指 標 調 査
地 域 個 体 群 の 動 向 を判断 す る一 う の 手段 と して 、捕 獲 個 体 の 総 合的 な 分 析 に よ る個 体群
動 向分 析 手 法 の 確 立 を 目指 した 。 ツキ ノ ワグ マ で は、 秋 田 県域 にお け る昭 和 5 5 - 6 1 年
度 の 捕 獲地 点 と捕 獲 個 体特 性 の関 連 分析 を、 ヒグ マ につ いて は昭 和 5 8 - 6 3 年
-3-
度 の北 海
道 内 の地 域別 捕獲 数 動 向 に 注 目 した調査研 究 を行 った 。
4 ) 住 民意 識 調 査
ク マ類 の保 護 管 理 、人間 活動 との共 存 を はか るた め に は ツキ ノ ワ グ マ 、 とグ マ生 息 域 周
辺 の地 域 住 民 の 意 向 を知 る こ とは欠 かせ な い 。 こあ た め 、 ク マ類 に対 す る地 域 住 民 の 意 識 、
あ り方 な どに対 す る考 えを知 り、今後 の 保護 管 理 の あ り方 を整 理 す る こ とを
狩 猟 、保 護 の、
目的 と した住 民意 識 調 査 を行 った。
5 ) 社 会 的調 査
クマ 類 の保 護 管理 の 現状 と問題 点 を分 析 し、 今後 の 保 護 管 理 の 方 向性 を検 討 す るた め 日
本 の 現 状 との比 較 の視 点 か ら、 ヒグマ と ツキ ノ ワグ マの生 息 す る各 国 の生 息 情報 ・保 護 管
理 に関 す る資料 調 査 を進 め た。
6 ) 保 護 管理 手 法 の 検 討
調 査 研 究成 果 の 全 体 を受 け、本 研 究 の 目的 で あ る人 間活 動 と ク マ類 との共 存 の あ り方 を
整 理 検 討 した 。
生 息 現 況 分 析
( 生息動向 , 生息軍境)
口 査 手 法 閉 亮
( 生8 ・t B 体瞬指娯)
生息 地 汗伍 区 分
( 保抵 宵 理 地 域 区 分 )
住 民 忠 ぬ 環 査
図 I一 l 調 査研究項 目の概要 とそ の関連
( 2 ) 調 査地 域
現 地 調 査 に 係 わ る基 礎 調 査 、生 態 及 び テ レメ トリー調査 、個 体 群指 標 調 査 に関 して は表
I-1に
示 す地 域 で 現 地 調 査 を行 った 。 また 、 それ ぞれ の調 査 地 域 と ツキ ノ ワグマ ・ヒグ
マ の分 布 域 を図 I - 2 に
示 した。
地 調 査地 域 と調 査 項 目
表 I-1 現
調
基 礎調 査
調 査地 域
項
目
…調査
生態 ・
テレメト
リ
個
体群指標調査
一〇 〇 十 一 一
〇 一 一〇 〇 〇
'マ
東部 と ク
北 海道 北 部 。
渡島半島 と , ' マ
'マ
キ′ワタ
ツ
秋 田県域
'マ
キ′ワク
紀 伊半島
'ツ
'マ
ブワク
西 中国
,キ
'マ
キ′ワク
四 国
リ
査
○
○
○ :調 査実施地域
△下北半島
●秋田県太平山
/
/
力的ノ /
:│
蜘い
●北海道浸島半津
G
や
◎西中国
P よ
ir諄
う
泰
◎紀伊半島
◎四田 (剣山地域 )
送
九
猟祖
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硼
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こ甘ゴ
ビ
う
図 I-2 現
◎本研究基礎調査実施地域
●本研究生懸調査実施地域
△その他生思状況検討地域
″
地 調 査 地 域 とツキ ノ ワグマ ・とグ マの 分 布 域 ( 分布 域 は第 2 回 自然 環 境 保 全
基 礎 調 査 ( 環境 庁 、 1 9 7 9 ) によ る)
2 . ツ キノ ワグマ ・ヒグマの生息状況 の概要
( 1 ) 潜 在分布域
1 ) 潜 在分布域 と調査方法
一
・
現在 の生息状況 と今後 の保護管 理 を検討す るため の資料 の つ と して、 ツキノ ワグマ
ヒグマの 日本国内 における潜在分布域 一人為影響 のない場合 の両種 の仮想分布域 ―につい
て まず検討す る。潜在分布域 を調査検討 す る方法 としては、歴史的分布域 を調 べ る方法 と、
気象 ・植生 そ の他生息地規定要因 の潜在 的広が りか ら検討す る2 つ の方法 が考 え られ る。
歴史 的な分布域 の広 が りとその変化 については次項 で述 べ るため、 ここでは生息 規定要因
( 生息地環境選択性) の 広が りか ら、 ツキノワグマ と とグマの潜在生息 域 について検討す
る。生息 規定要因 としては、気候、地形 な どきまざまな項 目が考 え られ るが、 ここでは生
息規定要因 として両種 にとって最 も重要 な要素 は植生 であ り、その植生 は温重 指数 によ っ
て規定 され るとの仮定 か ら、温重指数 マ ップ図を もって両種 の潜在分布域 を検討 した。 ツ
キノワグマ ・ヒグマが どのよ うな温量指数 の地域 に生息す るかは、現 在 の分布図 と温重 指
数 マ ップの l k E メッシュ単位 での重ねあわせか ら求 めた。両種 の現在 の分布情報 は第 2 回
自然環境保全基礎調査 ( 分布情報収集 : 1 9 7 7 年) に よる生息 情報 を利用 し、温重 指数 マ ッ
プは 日本野生生物研究 セ ンター作成資料 を用 いた ( 日本野生生物研究 セ ンター 、1 9 8 9 ) 。
2 ) 分 析結果
現在 の生息情報 と温重 指数図 の重 ねあわせか ら求 めた、 ツキノワグマ、 ヒグマの温重指
数階級 ( 指数 5 段 階区分) 別 の生息情報出現状況 を図 I - 3 に
示 した。 ツキノワグマは温
重指数 5 0 - 1 0 9 、 ヒグマ は3 5 - 6 9 の範囲 に生 息情報 のほぼ9 5 % が あ り、そ の中 で もツキノワ
グマで は温重 指数 6 0 - 8 9 に、 ヒグマでは5 0 - 6 9 に生息情報が集中 している。温重指数6 0 - 8 9 は
落葉広葉樹林帯 ( 本州 ; ブ ナ帯) の 上限に近 く、指数5 0 - 7 0 は北海道 の落葉広葉樹帯 に相当
す る。ただ し、 ツキノワグマの生息情報 が温 重指数8 5 以上で ヒグマ が温童 指数 4 5 以下 で も
見 られ ることは、 ツキノワグマ は照葉樹林帯 の一 部 に も、 ヒグマ は常緑針葉樹林帯 に も生
息す ることを示 して い る。 図 I - 4 は
、上記 の分析結果 を もとに、 ツキノワグマ について
は温量 指数 5 0 - 1 0 9 の範囲 を生息可能域、 6 0 - 8 9 の範囲 を生息 集中域 、 ヒグマについては3 5 6 9 の範囲を生息可能域 、5 0 - 6 9 の範囲 を生 息集中域 と して、それぞれの温量 指数 の広が りを
もつ地域 と してを1 0 m メ ッシュ レベ ルで地 図化 した もので ある。 また、表 I - 2 に
ぞれの メ ッシュ数 のカウン ト数 を示 した ( 図 I - 4 と
表 I-2で
はそれ
は、 ヒグマでは本州を、
ツキノワグマでは北海道 も含めて表記 した) 。 古林 〈1 9 8 8 ) は 、温重指数8 0 以下の区画数
とツキノワグマ生息区画率 とが比 例す ることを報告 して いる。 しか し、 ツキノワグマの場
合、温量指数5 0 あた りに生 息区画 の下限 があ り、それ以下 の温重指数 の区画 は、本州 では
少 ない こと もあ り生息確認率 は減少す る。
-6-
I
息情報全体に占める割合
J 生
く℃ ・月)
詢
( モ ・月 )
ユエ活敗
ノ キ ノ ワ グ マ ・ ヒ グ マ の 現 在 の 分 布 と温 量 指 数
図 I-3
表 I-2 ツ
ヰ ノ ワグ マ ・ヒグヤの 潜 在 生 息域 と見 な した温 量 指 数 を もつ 範 囲 の メ ッ シュ数
( l o k m メッシ ュ)
ツキ ノ ワ グr 7
ヒグ マ
生 息 可能 域 集 中域 生 息 可能 域
区 分\ ( 温量指 数 )
メ ッ シュ数
50-59
584
60-69
1.262
90-110
912
生 息 可能 域 集 中域 生 息 可能 域
35-49
304
50-69
1,002
70-89
844
付ヤP
十 生息 可能域
,寸
や 一・α .
”一 o ・
ヽ■ ■ホ
・
みt
.
,
れ
”
¨!
一
・
図 I-4(A)
十 生息集 中域
日本 列 島 に お け る ツキ ノ ワ グマ の 潜在 分 布 域
ッ シュ表 記 : 本 文 と表 I - 2 参
(lokmメ
-8-
照)
p!PI。
'P !・
1 生 息 可能 域
r 生 息 集 中域
図 I-4(B) 日
本 列 島 にお け る ヒ グ マ の 潜 在 分 布 域
ッ シュ表 記 i 本 文 と表 I - 2 参
(10knメ
-9-
照)
● ヒグマ生息情 報 ( 北海道 : 5 k コメ ッ シュ
)
●ツキノ ワグマ生息情報 ( 本州 ・四国
: 5 k E メッ シュ)
モ
図 I-5 日
本 列 島 にお け る ツキ ノ ワグ マ ・ヒグマの現 在 の 分 布 域
-10-
( 2 ) 歴 史 的分布
1 ) 時 代 範 囲 と調 査 資料
歴 史 的分布 と して こ こで は江戸 時 代 まで の ツキ ノ ワグ マ と ヒグマの生 息 分 布状 況 を扱 う。
歴 史 時 代 の分 布 情 報 を知 る手 段 と して は、 こ こで は遺 跡 か らの 発 掘 資料 と古 文 書 解 読 に よ
る分 布 復 元 の報 告 を資料 と した。
2 ) 歴 史 的分 布 域
ヒグ マ につ い て は、 最新 世 の 1 - 2 万年 前 に は、本 州 西 部 の 山 田県 か ら骨 格 、歯 牙 が 出現 し
て いて 当時 は津 軽海 峡 を越 えて本 州 まで 生息 して いた と され る。北 海 道 に関 す る者文 書 は
少 な いた め 、江戸 時 代 の ヒグ マの分 布 域 を古 文 書 な どか ら知 る材料 は乏 しい。 しか し、 人
口 5 万 人程 度 と人 口密度 が現 在 よ り格段 に低 く、農 耕地 もほ とん どなか った 江戸 時 代 に は、
釧 路 湿 原 や石 狩 川 河 田部 な ど広 大 な非 森 林帯 が広 が って いた と ころを除 き、北 海道 で は ヒ
グ マ は ほ ぼ全 域 に生 息 して い た とみ な され る。
ツキ ノ ワグ マ につ い て は い くつ か の遺 跡 か ら骨 格 、歯牙 の 出現 が 報 告 され て い るが そ の
中 で 特 に注 目 され るの は、現 在 生息 情 報 が な い九 州 南 部 の遺 跡 か らの 報 告 ( 西中川 、 1 9 8 7 )
で あ る。 しか し、古 代 人 が 他 地 域 で捕 獲 した ツキ ノ ワグ マ の 歯 牙 を交 流 の た め持 ち込 ん だ
と も考 え られ 、遺 跡 か らの歯 牙 の 発掘 記 録 を そ の ま ま当時 の 分 布 記 録 と見 な す こ とはで き
な い く花 井 、私 信 ) 。 ツキ ノ ワグ マの 江 戸時 代 、西 暦 1 8 0 0 年代 前 半 の の 分 布 に関 して は、
風 土 記 そ の 他 の 資料 か らそ の分 布状 況 が か な りの 地域 にわ た って 復 元 され て い る ( 図 I 一
6 ) 。 そ れ を 見 る と、九 州 で は現 在 の宮 崎 ・熊 本 県域 、中 国地 方 で は山 口 県 西部 域 、中 部
地 方 で は伊 豆 半 島 の 基 部 な ど、現 在 生 息 情 報 が ほ とん どな い地 域 で生 息情 報 が見 られ る こ
とが 注 目 され る。 た だ し、近 畿 地 方 や 関 東南 部地 方 で は生 息 情 報 が 見 られ な い ( た だ し、
生 息 情 報 が 古文 書 に よ る もので 、対 象 地 域 に関 す る古 文 書 が な い場 合 と、 ツキ ノ ワ グ マ が
当時 生 息 して も古 文 書等 に それが 記 載 されて な い場 合 は図 I - 6 で
は生 息 記 録 な しとな っ
て い る) 。 地 域 に よ って は生 息情 報 が な い こ とや生 息情 報 の 情 報 源 の精 度 の 問題 1 まあ るが 、
江戸 時 代 の ッキ ノ ワグ マ分 布域 は現 在 よ り全 体 的 に は広 か った と見 な され る。
( 3 ) 現 在 の 分布 ( 明治時 代 以降 )
1 ) 調 査 資料 と方 法
ツキ ノ ワグ マ ・ヒグマの現 在 ( 明治 時 代 ―西暦 1 8 0 0 年代 後半 ―以 降 ) の 分 布 状 況 は 自然
環 境 保 全 基 礎 調 査 、 そ の他 調 査 研 究 か ら得 れ れ た 分 布情 報 につ い て検 討 す る。 た だ し、地
域 個 体 群 の衰 退 地 域 に関 す る詳 細 な調 査分析 は第 I I l 章( ツ キ ノ ワ グ マ) 、 第 I V 章 ( ヒ グ マ )
で述 べ るた め 、 こ こで は全 国 の 分 布概 況 、特 に明治 時 代 か ら昭 和 4 4 年 ( 1 9 6 9 ) 以 前 の 絶 滅
情 報 に 注 目 して 、分 布域 の 変 化 の 概 要 を と りま とめ るに と どめ る。
︵
邸 翼 やミ なば終 群 翌 博 怠 ︼ 勾 終帥 X抱 ︶ 寧 理 博 怠 Qゼ 普 k 樹 G ︵ドヽ コ ・ドヽ い ヽ十 卜 ︶ ド ふ ol ︻図
2 ) 明 治 時代 以 降 の 分 布域 の 変 化
ベ
第 2 回 自然 環 境 保 全 基 礎 調 査 〈1 9 7 7 年調 査 ) か ら求 め られ た 、 5 k m メッ シュ レ ル に よ
る 日本 全 国 ・地 方 別 の ツキ ノ ワグ マ と ヒグ マの生 息 区 画数 と明治 以 降 の絶 滅 区 画数 を表 1
-3、 表 I-4に
示 した。 ツキ ノ ワ グ マ は、 5 k 冊メ ッ シュ レベ ルで は全 国 ( 北海 道 を 除 く)
の 区 回数 の2 9%、
で 生 息 情 報 が あ る一 方 、明治 時 代 以 降 の 絶 滅 区 画 も1 3 6 区画 あ る。 この絶 滅
区 画数 は、現 在 の生 息 区 画数 の 3 . 6 % に 相 当す る。 地 方 別 に 見 る と、生 息 区 画数 に対 す る絶
滅 区 画 数 は四 国 ( 5 5 . 8 % ) 、 近 畿 地 方 〈9 , 6 % ) な どで 高 い。 ヒグ マ につ いて 同様 に第 2 回
自然 環 境 保 全 基 礎調 査 か ら生 息 ・絶 滅 状 坪 を 見 る と、生 息 区 画数 は 全道 の約 半 分 の5 3 % 、
生 息 区 画 数 に対 す る絶 滅 区 画 数 は4 . 2 % と な って い る。 限 られ た 調 査 で あ り、生 息 情 報 、絶
滅 情 報 と も5 k 冊メ ッ シュ情 報 化 して の 分 析 結 果 で あ るが 、明治 時 代 以 降 もツキ ノ ワ グ マ 、
ヒグ マ の 分布 域 の縮 小 が 進 ん だ こ とを この 調 査 結 果 は示 して い る と言 え よ う。
キノ ワグマの生息区画 と絶滅区画数 (5 knメ ッシュ数)
表 I-3 ツ
地
全区画数
方
生息区画数
絶滅区画数
絶 滅 区 画率 (%)
東北地方
2746.5
1442.0
11.0
0 . 8
関 東地 方
1247.5
297.0
8 . 0
2 . 7
中部地 方
2770.5
1323.0
65.5
5 . 0
近 畿地 方
1387.5
270.5
26.0
9 8
中 国地 方
1420.0
227.0
四 国地 方
664,0
26.0
九州地方
2151.0
0.0
7 . 5
12365.0
3584.5
136.0
全
国
3 , 5
14.5
1 . 5
55,8
100.0
3 8
環境 庁 (1979)に よ る
表 I-4 ヒ
地
北 海道
方
グ マの 生 息 区 画 と絶 滅 区 画 数 (5 kmメ ッ シュ数 )
全区画数
3718.0
生息 区画数
1963 0
環 境 庁 (1979)に よ る
-13-
絶 滅 区 画 数 絶 滅 区 画率 (%)
156.0
( 4 ) 生 息状 況 ・分 布 域 の 変 化 に係 わ る要 因
ツキ ノ ワグ マ ・ヒグ マの生 息 状 況 の変 化 、地 域 的絶 滅 に係 わ る要 因 と して は、 さま ざま
な こ とが 指摘 され て い るが 、狩 猟圧 ( 有害 駆 除 を 含 む ) と 生 息 地 改 変 が 明治 以 降 、特 に第
二 次 世 界 大 戦 後 の 減 少 の主 要 因 とされ る。 ツキ ノ ワグ マ 、 ヒグ マの生 息 状 況 の変 化 、地 域
的絶 滅 に係 わ る要 因 と して 指 摘 され て い る事 項 の 相 互 関 連 は 図 I - 7 の
部分的
エサ増 加
よ うに整 理 され る。
生 息 地 改変 ( 人工
峰越道路
林 化 ・地 域 開 発 )
林道整備
分布影響
( 絶滅 的拡 散 )
食性変化
個体群 ・
図 1-7 ツ
キ ノ ワグ マ ・ヒグマの生 息 状 況 の 変 化 (地 域 的絶 滅 )に 係 わ る要 因
一 般 的 には上 記 の よ うに整理 され て も、生 息 状 況 の 変 化 、地 域 的絶 滅 な どに係 わ る要 因
を具 体 的 に特 定 して い くた め に は、 個 々 の 事項 につ いて 検 討 が 必 要 で あ る。 例 え ば 、生 息
地 の 改 変 、 自然 林 の 伐採 の進 行 が生 息 に 影響 した とされ るが 、 国有 林 の 伐採 量 は 1 9 6 0 年
代
以後 、1 9 7 0 年
代 、8 0 年代 は減 少 して い る ( 依光 、 1 9 8 4 ) 。狩 猟圧 につ いて も、狩 猟 者 登録
数 は、1 9 7 0 年
前 後 を ピー クに減 少 して きて い る。 これ らの 事項 を 含 め 、生 息 状 況 の 変 化 の
状 況 は捕 獲状 況 な どの 変 化 は個体 群 の衰 退 地 域 で地 域 別 に詳 しく検 討 す る。
-14-
3 . ソ キノワグマ ・L グ マ に関す るこれまで の調査研究
本研究 の背景 と位置 づ けの一 つ として、 ツキノワグマ、 ヒグマの生態 、保護管理 に関す
るこれ まで の 日本で の調査研究 を簡単 に レビュー してお きた い。
( 1 ) ヒ グマ
1 ) 研 究報告
[ 分類 ・形態]
地域個体群 と して多 くの亜種
旧北区 と新北区 に広 く分布す る ヒグマ ( U r S u s a r c t o s ) は
が 区分 され、あるいは ヒグマ グルー プと して い くつかの種区分 の可能性 を含 む8 7 の亜 種 に
ー
分 ける意見 もある ( I a l l 、1 9 8 1 ) 。 しか し、種区分でな く ヒグマ 種 とす ることが正 しい
8 0 ) 。亜 種 に分 け られ ているグルー プで も、頭骨形態
とみな され る ( O o r b e t a n d l i l1l9、
な どでは鑑別困難 な場合 も多 く、亜種区分 の見直 しも求 め られて いる ( ス ゥエー デ ン、 1 9
8 9 - C I T E S 第7 回締約国会議 資料 ―) 。 北海道 と南千島列島 ( クナ シ リ、 エ トロフ島) 産 の
ヒグマ は、 ヒグマの一 亜種 、U r u s u s a r c t o s y e s o e n s i s L 【
YBDRE,【1 9 8 7 ( エ ゾ とグマ) と
されている。今泉 ( 1 9 6 0 ) は 、体色 、頭骨形態 の多様性 か ら北海道 ・南千 島産 の ヒグマは
2 種 または 2 亜 種 に分 け られ る可能性があることを示唆 した。 しか し、 この見解 は米 日 ・
阿部 ( 1 9 7 6 ) に よ つて否定 されて いる。 したが って北海道産 の ヒグマは、種 としては ヒグ
マ (UrSus arctos)に
区分 され る。 北海道産 ヒグマの亜種区分 については、世界 の ヒグマ
の亜種区分 の見直 し、整理 の中 で再検討 が必 要 と考 え るが、当面 は環 境庁 の レッ ドデ ー タ
ブ ックあ るい は 自然環境保全 基礎調査 の中 で も採用 されて いるU . a . y e s o e n s i s ( エ
プヒ
グマ 、今後誤解 がない 限 り とグマ と記す ) を 踏襲 して お くべ きであろ う。
ヒグマ ( エ ゾ ヒグマ) の 形態的特徴 に関 しては末永 ( 1 9 6 8 、a 、b ) が 頭骨 の成長 は 8 歳
程度 まで続 くことを、米 田 ・阿部 ( 1 9 7 6 ) は 、北海道 内 。南千島 では、北海道東部 ・南千
島産 とグマが北海道西部 ・南部産 ヒグマよ り頭骨が大型 であることとその雌雄差 につ いて
報告 して いる。 ヒグマ形態 の地 域差 の要因 について 、 日浦 ( 1 9 8 9 ) は セ リ科植物 の分布差
一 ヒグマ にとつての利用可能量 の地域差 を反映 した もの との仮説 が提起 されて い る。
[ 生態調査概要]
ヒグマに関 しての一 般生態 は、犬飼 ( 1 9 3 2 、1 9 3 3 、1 9 3 5 ) な どを始 め猟 師 の観察報告 な
どを整理 したかたち の報告 は多 い ( 例えば木村 、1 9 8 3 : 犬飼 ・門崎 、 1 9 8 7 ) 。 しか し、夏
期 に亜高 山帯 や限 られた草原帯 く知床岬先端部 な ど) で 観察可能 な ことを除 き森林性 であ
る とグマの長期 にわた る直接観察 による生態 の調査研究 は困難 であ り、生態調査 の多 くは
痕跡調査事例 の積 み重ねによる もので ある ( 北海道大学 ヒグマ研究 グルー プ、 1 9 8 3 ) 。 そ
れ らの調査研究 によ って 、以下述 べ る食性 ・行動生態 に関す る調査成果 の他、 ヒグマ は1 2
月 ごろ冬眠 に入 り、早 い場合 は3 月末遅 い場 合 は5 月中旬 に冬眠穴 か ら出て来 ること、冬眠
-15-
穴 と して は土 穴 が 多 い ことな ど、 ヒグ マの生 活 史 に関 す る基 本 的事 項 が 明 か に され て き た。
[ 食性 ]
ヒグ マ の食 性 につ いて は、食跡 調 査法 、 フ ン分析 法 に よ る調 査 研 究 デ ー タは比 較 的 よ く
・
集 積 され て い る ( 例 え ば北 海道 大 学 ヒグマ研 究 グ ル ー プ、 1 9 8 3 : 北 海道 、 1 9 8 6 ; 大 泰 司
中川 編 、 1 9 8 8 ) 。 これ らの報 告 か ら、北 海道 の ヒグマ の食 性 の 季節 的変 化 の概 要 は次 の よ
うに ま とめ らえ る。
・春 期 : ザ ゼ ンソ ウ、 ミズバ シ ョウの地 下 部 、 オ オ ブキ、 イ ラクサ の 基 な ど沢 筋 に 多 い
`高
茎車 本 類 を 多 く採 食 す るが 、北 海 道 南 部 渡 島半 島 の プ ナ林 帯 で は本 州 の ソi キノ ワ
グ マ と同様 、 ブナの若 芽 を採 食 す る。 また、前年 秋 に落下 した堅 果類 の採 食 も多 い。
・夏 期 : セ リ科 草 本 の茎 、葉 あ る い は地 下 茎 ( 高山帯 の ハ クサ ンボ ウフ ウの根 の採 食 な
ど) の 採 食 が 多 い が 、昆 虫 類 、特 に ア リ類 の採 食 量 が夏 に は多 くな る こ とが知 られ
て い る。
・秋 期 : 衆 果類 ( ヨ ク ワ、 ウ ド、 ヤ マ グ ワ) と 堅 果類 ( ミ ズナ ラの実 : ド ング リ) の 採
食 が 多 くな り、 サ ケ科魚 類 の辺 上 す る 自然 河川 の あ る知 床 半 島 な どで は カ ラフ トマ
スな どを捕 食 す る こ とが報 告 され て い る ( 大泰 司 ・中川 編 、 1 9 8 8 ) 。
[ 行動 ・社会 構造 ]
ヒグ マ の行 動 ・社 会 構造 に関 して は調 査 が 続 け られ て きて い るが 、 ク マ牧 場 に お け る飼
育 下 の 観 察 ( 例 え ば前 日、 1 9 8 5 ) な どを 除 き、 本調 査 研 究 の生 態 調 査 と して ラ ジオ トラ ッ
キ ン グ法 に よ る調 査 が本 格 化 す るまで は調 査 報 告 は少 な い ( 第 7 章 、 ヒグマの 生 態 調 査 の
項 参照 ) 。
[ 個体 群 指 標 ・構成 ]
捕 獲個 体 の年 齢 分 析 ・年 齢 構成 に お い て 、犬 飼 ・門 崎 ( 1 9 7 2 ) は北 海道 の ヒグマで 歯 の
歯 根 部 セ メ ン ト層 に見 られ る年 輸 構造 が 年 齢 に対 応 す る こ とを報 告 し、米 国 ( 1 9 7 6 ) は 、
親 に よ る保護 期 間 の 低 死 亡率 を反 映 して 0 歳 個 体 よ り 1 - 2 歳
個 体 が 多 い こ とを、M a n o (
1 9 8 7 ) は 子 グ マ ( c u b S ) で は オ スの 比 率 が 有 意 に高 い もの の 、成 獣 で は メ ス比 率 が 高 くな
る こ とな どを報 告 して い る。 青 井 ( 未発表 ) に よれ ば 、野 外 で捕 獲 され た とグマ ( メ ス)
の 最 高 齢 記録 と して 2 8 歳 の 例 が あ る。
2 ) 行 政機関調査
ヒグ マ に対 す る行政 機 関 調 査 と して 、環 境 庁 調 査 、北 海 道 に よ る調 査 お よ び文 部 省 科 学
研 究 費 に よ る調 査事 例 を 年 表 のか た ちで整理 した。 また、北 海 道 によ る調 査 に っ いて は、
調 査 実 施 機関 、調 査 地 域 、調 査 期 間 、調 査 方 法 、調 査結 果 を ま とめ た ( 調査 年 は年 度 調 査
の場 合 は年度 の うち の 4 - 1 2 月 の 属 す る西暦 表 記 と した ) 。
[ 環境 庁 調 査 〕
, 第 2 回 自然 環 境 保 全 基礎 調 査 ( 1 9 7 7 年間 き取 り調 査 、 1 9 8 9 年 ・1 9 8 0 年調 査結 果分 析 )
,16-
・第 3 回 自然環境保全 基礎調査 ( 1 9 8 3 - 1 9 8 4 年: 専 門家 によ る分布記録調査)
・絶滅危倶種 ( 1 9 8 7 - 1 9 8 9 年: 日 本産 R e d D a t a B o o k ヒ
グマ を含 めるかを検討)
・人間活動 との共存 を 目指 した野生動物 の保護管理 に関す る研究 ( 1 9 8 5 - 1 9 8 9 年 ; 本 調
査研究)
[ 北海道]
実施機関 : 北 海道 自然保護協会 ( 北海道 自然保護課委託)
ー
・
報告書 : 野 生動物分布等実態調査報告書 ( 1 9 8 6 ) = ヒ グマ エ ゾ イカア ンケ ト調査報
―
告書 一、野生動物分布等実態調査報告書 ( 1 9 8 7 ) 一 ヒグマ生態等調査報告書
調査地域 : 全 道 ( ア ンケー ト) 、 全道 で 4 地 域 ( 生態等調査)
調査期 間 : 1 9 8 4 - 1 9 8 6 年
) メ ッシュ分布図分析) 、 痕
調査方法 : ア ンケー ト調査 ( 全道 ; 1 9 8 4 - 1 9 8 5 、2 次 ( 5 k 田
跡調査 ・直接観察 、 フ ン分析
調査結果 : 全 道 で1 9 7 8 年調査時 に比 べ 3 4 メッ シュ ( 2 次メ ッ シュ) で 分布情報減少 ; 減 少
は積丹 ・恵庭地区 な どで大 きい、痕跡調査か らは道北調査地域 な どで生息数 の減少
が見 られた。
( 2 ) ツ キノ ワグマ
1 ) 研 究報告
[ 分類 ・形態]
ツキノワグマの分類 ・形態研究報告 と しては、秋 田産 の頭骨 を材料 と した計 測、性的二
型 の検討 ( 秋田県、 1 9 8 3 ) 、石川県産犬歯 の成長測定報告 ( 野崎、 1 9 8 5 ) な どがみ られ る。
u sホ
がン
しか し、分類 に関す る検討 ・報告 は少 な く、S e l e n a r c t o s t h i b e t a n u s f a p o n i cニ
ツキ / ワ グマの学名 として用 い られて きて い る。 しか し、世界 の哺乳類 の学名 の再検討 を
代わ りに ヒグマ
は、 ア ジアク ロ クマの属名 として S e l e n a r l t o s の
行 った出o n a c k i e t a l . で
と同 じU r s u s を 使用 して いる ( C I T E S の付属書 では、 ア ジア ク ロクマの属名 はS e l e n a r c t o s
を採用 している) 。 性的二 型 は明瞭 で、オ スはメスよ り大型 である。形態 の地理的変異 (
で述 べ る。
東 日本産が西 日本産 に比 ぺ大型 であ る傾向) に ついては 、本報告書 のI I I 章
[ 一般 生態]
まとま った記 載、学術報告 は少 ないが ( 土肥 、1 9 8 9 ) 、 観察事例 ・報告 の整理 や猟師か
らの間 き取 り調査 か らツキノ ワグマの行動 ・一 般生態 を報告 した ものがみ られ る。渡辺 (
1 9 7 6 ) 、 宮尾 ( 1 9 8 9 ) を参考 に ツキノワグマの生態を整理す ると次 のよ うである。
中部以東 の東 日本では、 ツキ ノワグマ は1 2 月中 ・下旬 か ら 4 月上 。中旬 までは冬眠す る。
冬眠中 の 2 月 ごろに出産 があ り、子 づれ メスの冬眠 あけは遅 い。冬眠穴 には樹洞 が使 われ
るが 多 いが、土穴 ・岩穴 もまれ に利用 され る。 冬眠 あけの4 、5 月にはプナ の新芽 や前年落
-17-
下 した堅 果類 あ るい は北 陸 地方 な ど多雪 地 帝 で はナ ダ レ地 な どに多 い高 茎 草 本 類 を多 く採
食 す る ( 水野 ・野 崎 、 1 9 8 5 ) 。 交 尾 は初 夏 、 5 - 6 月
に行 うと推 定 され るが 、確 実 な観 察
一
報 告 は少 ない 。交 尾 期 以 外 は、 親 子 の ク マ を 除 き単 独 で生 活 を す る と され る。 親 子 は、
般 に は 出産 の翌 年 の春 まで 、 出産 後 約 1 年半 ほ ど行 動 を と もにす る と され るが 、 この 点 につ
いて も観 察 事 例 を統 計 的 に分析 した 報 告 は少 な い。行 動 面 積 は オ スが メ スよ り大 き く、 オ
スで は5 , 0 0 0 h a 以上 に達 す る ものが 多 いが 、 メ スの行 動 圏 は1 , 0 0 0 h a から3 , 0 0 0 h a 程度 で あ る
場 合 が 多 い く秋 田 県域 の例 : 本 報 告 書 、第 V 車 参 照 ) 。 秋 には ツキ ノ ワグ マ は次 項 、食 性
の項 で詳 しく述 べ るよ うに堅果類 ( ヨナ ラ、 ミズナ ラの実) を 多 く採食す るた め木 に上 り、
枝 を折 ぢて 「クマ槻」 ( 円座) を 作 ることが知 られて いる。堅果類 が不作 の年 には、 クマ
は特定地域 に集中 した り ( 羽澄 ・丸山、 1 9 8 5 ) 、 人里 に接近 し果樹 を食害 した りす ること
の多 い ことが報告 されてい る。冬眠開始 は上 記 のよ うに、一 般 には1 2 月中 ・下旬 ごろであ
るが、冬眠開始 には積雪 な どが作用す る。
以上 は東 日本 の ツキノワグマの一 般生態 の概要 であ り、西 日本 の紀伊半島 や四国地域 の
個体群 の場合 は、冬眠 を しな い個体 もあ るとされ、東 日本 とかな り異 な った生活史 を もつ
ことが示唆 されている。 しか し、西 日本 の ツキノワグマの調査研究 は少 な く、生活史 、一
般生態 の地域差 に関 しては今後 さらに調査資料を蓄積 してい く必要があ る。
[ 食性]
北陸 ・中部 日本 の ツキノワグマの食性 に関 しては、山本 ( 1 9 7 2 ) 、高 田 ( 1 9 7 9 ) 、水野
・野崎 ( 1 9 8 5 ) に報告 されている。 また、羽澄 ら ( 1 9 8 5 ) は栃木県 日光地域 の、秋 田県 (
1 9 8 3 ) は 秋田地域 の ツキノワグマの食性 について報告 して いる。 それ らの報告 によれば、
ツキノワグマ は雑食 であ るが植物質食 が 多 い。季節的 には、春 か ら初夏 には前記 のよ うに
セ リ科 の高茎草本 やブナ の新芽 の採食 が 多 い。夏 は昆 虫 ・動物質 の採食割合 が年間 で一 番
多 くなる。動物質 としては、 カモ シカ、 ノウサギの採食 が確認 されている ( 高日、 1 9 7 9 ) 。
夏 か ら秋 にか けては、キイチ ゴ類 ・アケ ピ類 な ど舞果類の採食が多 くな り、 9 月 中旬以降
は不作年 を除 き、 ミズナ ラな ど堅 果類 の採食割合 が増 える。
[ 行動 ・社会構造]
ツキノワグマの行動 ・生態 については、1 9 8 0 - 8 4 年の間 に実施 された 「森林環境 の変化
と大型 野生動物 の動態 に関す る研究 」 ( 環境庁総合研究 プ ロジェク ト) の 中で、石川県自
山地域、栃木県 日光地域 、静岡県大井川上流域 などで調査 された。 その結果、自山地域で
はツキノワグマ は集中利用域 である コア エ リアを演 り歩 く行動様式 を示す こと く水野 ・野
崎、1 9 8 5 ) 、 日光地域ではは っ きりした季節的移動 があ り、春 は山地広 葉樹林帯 を、夏 に
は利用域 が分散 しカラマ ツ林域 な ども利用す るものの、秋 には再 び山地広 葉樹林帯 を多 く
利用す ることが ラ ジオ トラッキ ング調査 か ら明かにされた ( 羽澄 ら、1 9 8 5 ) 。 しか し、社
会構造 に関 しては調査研究 は少 ない。
-18-
[ 個体 群 指 標 ・構 成 ]
花 井 ・桜 井 ( 1 9 7 4 ) は、 ツキ ノ ワ グ マ の大 歯 セ メ ン ト層 の 年 輪 カ ウ ン トに よ り捕 獲 個 体
の 年 齢 査定 が可 能 な こ とを報 告 した。 秋 田県 ( 1 9 8 3 ) で は、 1 9 8 0 - 8 1 年間 に秋 田県 下 で 有
害 獣 駆 除 に よ り捕 獲 され た ツキ ノ ワグ マ の 年 齢 構成 が 分 析 され ( N = 8 9 ) 、年 齢 構 成 は 「安
・
定 型 」 で あ る と され た 。石 川 県 白山 地域 で 春 期 に捕 獲 され た 個体 で は、 4 歳 以下 の幼 獣
亜 成 獣 が 全 体 ( n = 5 8 ) の5 3 % と 多 くを しめ た こ とが 野 崎 ( 1 9 8 5 ) によ って 報 告 され て い る。
両 角 ら ( 1 9 7 4 ) は長 野 県 内 で 、鳥 居 ( 1 9 7 5 ) は静 岡 県大 井 川 流域 で 捕 獲 され た ッキ ノ ワ グ
マ の 性 比 を検討 し、 オ スの 捕 獲 が 多 い こ とを述 べ て い る。
2 ) 行 政機関調査
ツキ ノ ヮグ マ に関 す る行 政 機 関 調 査 と して 、環 境 庁 、文 部 省科 学 研 究 費 、 お よ び都 府 県
以 降 を対 象 と した) ツ キ
に よ る調 査 事 例 を 整 理 した。 都府 県 に よ って 実 施 され た ( 1 9 7 7 年
ノ ワグ マの 生 息 状 況 な どに関 す る調 査 につ いて は、調 査実 施 機 関 、調 査 地 域 、調 査 方 法 、
調 査 結 果 な どを整 理 した。 今 回 は鳥 獣 保 護 事 業 計 画 にお け る鳥 獣 の 生 息 状 況 に関 す る調 査
と して行 わ れ た もの を主 に取 り上 げ たが 、鳥 獣保護 事 業 計 画 に よ らな い独 自 の調 査 も対 象
と した。 た だ し、生 息動 物 相 全般 に関 して行 わ れ た 調 査 や 、 自然 環 境 保 全 基 礎 調 査 の 一 環
と して行 わ れ た 調 査 報 告 は こ こで は除 い た。
[ 環境 庁 調 査 ]
・第 2 回 自然 環 境 保全 基 礎 調 査 ( 1 9 7 7 年間 き取 り調 査 、1 9 8 9 年・1 9 8 0 年調 査 結 果分 析 )
・森 林 環 境 の 変 化 と大 型 野 生 動 物 の 生 息 動 態 に関 す る研 究 ( 1 9 8 0 - 1 9 8 4 年: 環 境 庁 総 合
プ ロ ジェ ク ト)
。第 3 回 自然 環 境 保全 基礎 調査 ( 1 9 8 3 - 1 9 8 4 年; 専 門 家 に よ る分 布 記 録 調 査 )
。鳥 獣 害性 対 策 調 査 ( 1 9 8 2 - 1 9 8 4 年
: 秋 田県 に お け る ツキ ノ ワ グ マ に よ る被 害 状 況 な どが
調 査 され た )
・絶 滅 危倶 種 ( 1 9 8 7 - 1 9 8 9 年: 日 本 産 R e d D a t a B o o kツキ
に ノ ワ グ マ地 域 個 体 群 を 含 め る
か を検 討 )
・人 間活 動 との 共 存 を 目指 した野 生 動 物 の 保 護管 理 に関 す る研 究 ( 1 9 8 5 - 1 9 8 9 年i 本 調
査 研 究 、環 境 庁総 合 プ ロ ジ ェク ト)
・九 州 の ツキ ノ ワグ マ 緊急 調 査 ( 1 9 8 8 年)
これ ら環境 庁 に よ る全 国 的 な分 布 調 査 に 先 だ って 、哺 乳 類分 布 研 究 会 に よ って 関 東 地 方
の ツキ ノ ワ グマの 分 布状 況 とそ の 時 代 的 変 化 、分 布 域 の環 境 特 性 の 分 析 が 行 わ れ た 〈野 崎
ら、 1 9 7 9 ) 。
[ 文部 省科学 研 究 費 調査 ]
・日本 の 歴 史 的 自然 環 境 と して の 哺 乳 類 ( 文部省 「環境 科学 」特 別 研 究 : 1 9 7 7 年)
( 京都北 部 、栃 木 県北 部 、奥美 濃 地 方 で ツキ ノ ワグ マ と人間 の 関 わ りを調 査 )
-19-
―都 府 県 調 査 一
ツキ ノ ワグ マ に関 して は、 保 護 管理 の 観点 か ら関心 が 高 いた め 都府 県 にお け る調 査 事 例
は他 の鳥 獣 類 に比 べ 比 較 的多 い。 以 下 、 1 9 8 9 年まで に報 告 され た都 府 県別 調 査 事 例 につ い
て そ の概 要 を整 理 した。
[ 青森 県 ]
実 施 機 関 : 青 森 県 自然 保 護 課
報 告 書 : 青 森 県 にお け る ツキ ノ ワ グ マ生 息 数 等 調 査 報 告 書 ( 1 9 8 2 )
調査地域
全 県 ; 第 2 回 自然 環 境 保 全 基 礎 調 査 にお け る ツキ ノ ワグ マ生 息 区画 ( 5 k R メ
ッ シュ) の1 / 4 区画 ( 面積 6 2 0 h a ) の2 0 % 、 計 7 2 メッ シュで調 査
調査期 間
1 9 8 1 - 8 2 年( 昭和 5 6 年度 )
調査方法
追 い 出 し法 ( 1 区 画 あ た り 5 人 ) 、 捕 獲 個 体 分 析
調 査結 果
全県生 息 数 推定 254頭 (8.33km2/頭 =0.11頭 /km2,た だ し 「少 な 目」 の推 定 値 )
「月 の 輪 」 は捕 獲 個 体 の約 80%で 見 られ た
[ 秋田県 ]
実施機関
秋 田県 自然 保 護 課 、秋 田 県林 務部
報 告 書 : 秋 田 の ツキ ノ ワグ マ ( ツ キ ノ ワグ マ総 合調 査 報 告 書 ( 林務 部 ) , 1 9 8 3 ) 、
ツキ
ノ ワ グ マ生 息 調 査 報 告 書 ( 自然 保 護 課 ; 1 9 8 6 )
2 : 生 息調査)
調 査 地 域 : 全 県 ( 総合調 査 ) 、 秋 田市 仁 別 国有 林 ( 約 1 0 0 k 冊
調 査 期 間 : 1 9 8 1 - 8 2 年( 報告 書 は 出版 され て な いが 秋 田県 ツキ ノ ワグ マ生 息 調 査 と して
に も実 施 され て い る)
1985-86年
調 査 方 法 : 3 k 冊メ ッ シュのサ ンプ ル メ ッ シュで の追 い 出 し法 、 テ レメ トリー 調 査 、捕 獲 個
体分析
、年 齢 構成 は安 定 型 ( n = 8 9 ) 、繁 殖 は3 才以 上 か ら ( メ
調査結 果 : 推 定生息数6 2 5 - 8 6 5 頭
ス) 、 胃内容 分 析 で は ブナ ( 春) や ミズナ ラの 出現 頻度 が 高 い、 行動 圏面 積 は6 0 0 2 , 6 0 0 h a / 頭( テ レメ トリー 調 査 ( n = 4 ) )
[ 山形 県 ]
実 施 機 関 : 山 形 県 自然 保 護 課
1 9 8 7 : 年度 地
1980、
1981、
1982、
1979、
報 告 書 : ニ ホ ンツキ ノ ワ グ マ生 息 調査 報 告 書 ( 1 9 7 8 、
区別 、 1 9 8 2 年と1 9 8 7 年の 報 告 書 は全 県 の ま とめ )
調 査地 域 : 全 県 ( 5 プ ロ ックに区 分 )
-20-
一
調 査 期 間 : 1 9 7 7 - 8 8 年〈毎 年 1 プ ロ ックづ つ 調査 、 5 年 で 回 り)
調 査 方 法 : 各 プ ロ ックで さ らに地 区区分 ( 1 地 区面 積 1 4 - 5 0 k m 2 ) して 追 い 出 し法 調 査 、
捕 獲個 体 分 析
243頭 (1982年
報 告 ) 、 生 息 数 は多 少 と も増 加 傾 向 にあ る
調 査 結 果 : 全 県推 定 生 息 数 1 、
16)
(1987年
報 告 ) 、 1 1 才を越 え る高 齢 個 体 が 見 られ なか った ( n ・
[ 東京都 ]
ー く東 京都 自然 保護 課 委 託 )
実 施 機 関 : く 財 ) 日 本 野 生 生物 研 究 セ ン タ
―
一
( 原稿 )
報 告 書 : 野 生 動 物 保 護 指針 策 定 調 査報 告 書 ( 昭和 6 0 年度 ) 一 ツキ ノ ワグ マ編
調 査 地 域 : 秩 父 多摩 地 域 ( 広域 調 査地 域 i 東 京都 西 部 、埼 玉 県秩 父地 方 、 山梨 県北 東 部 )
調査期間 : 1 9 8 5 年
調 査方 法 : 現 地 調 査 ( 痕跡 調 査 ) 、 聞 き取 り調 査 ( 標準 メ ッ シュ分布 図 化 )
調 査 結 果 : 東 京都 下 で は櫓 原 村 、奥 多摩 町 で生 息 確 認 、広 域 調 査 で の推 定 生 息 数 1 2 0 ブ ナ ク ラス域 植生 の と ころな どで 多 い
2 7 0 頭、生 息 確 認 は 標 高 6 0 0 - 1 , 5 0 0 m 、
[ 新潟 県 ]
実 施 機 関 : 新 潟 県野 生 動 物 生 態 研 究 会 ( 新潟 県環 境 保全 課 委 託 )
報 告 書 : ク マ生 態 調 査 報 告 書 ( 1 9 8 7 )
2(追 い
2、
2、
調 査 地 域 : 全 県 ( 生息 地 域 4 , 9 4 4 k 冊 調 査 対象 地 域 3 , 7 3 8 k 冊 調 査 面 積 1 , 0 8 0 k 冊
出 し法 調 査 区 画 は6 0 1 区画 ( 3 年間 合計 ) )
調 査 期 間 : 1 9 8 4 - 8 6 年〈全 県 を 3 プ ロ ックに分 けて毎 年 1 プ ロ ックづ つ 調 査 )
調 査 方 法 : 地 形 区分 区 画 内追 い 出 し法 ( 1 区 画平均 面 積 1 8 0 h a ) 、捕 獲 個 体 分 析
2 ) 、 捕 獲 個 体 で は全 体 の
/k冊
調 査結 果 : 調 査 対 象 地 域 推 定 生 息 数 2 1 5 頭±9 3 頭 ( 0 , 1 3 頭
5 7 % を 2 - 5 才の 個 体 が 占 め た ( 平均 6 . 3 才 ( n = 2 3 6 ) )
[ 岐阜 県 ]
実 施 機 関 : 東 、他 ( 岐阜 県環 境 局 委託 )
報 告 書 : 岐 阜 県 にお け る ツキ ノ ワ グマ の 生 息 調 査 報 告
調 査地 域 : 根 尾 西 谷 川地 域 中心 の 調査
調査期間 : 1 9 7 3 - 7 5 年
調 査 方 法 : 痕 跡 分 布 調 査 、 テ レメ トリー 調 査
調 査結 果 : 食 性 の 季 節 的 変 化 ( 春 は ブ ナの 新 芽 、夏 は昆 虫 食 、秋 は ブナ 、 ミズナ ラ、 ヨ
ラナな ど堅 果類 を主 に採 食 し、堅 果類 採 食 で は円座 を作 る) 中 心 の 報 告
-21-
イ
[ 二重 県 ]
実 施 機 関 : 二 重 県 自然 科 学 研 究 会 ( 二重 県農 林 水 産 部 林 業 事 務 局 委 託 )
報 告 書 : 二 重 県 にお け る ツキ ノ ワ グマ の分 布 な らび に捕 獲 数 の推 移 につ いて
調査地域 :二 重県全域
調査期 間 11983-1985年
調 査 方 法 : 聞 き取 り資料 分 析 に よ る捕 獲 地 点 ・捕 獲 数 記 録 の 分 析 、捕 獲 個体 数 か らの生
息 数推 定
調 査 結 果 : 1 9 ■1 - 1 0 3 5 年 間 の捕 獲 地 点 を地 図化 、県 内 の生 息 数 は3 0 頭か ら5 8 頭 と推 定 さ
れ る もの の分 布 域 は縮小 して い る。
[ 京都府 ]
実 施 機 関 : 京 都 府 京北 地方 振 興 局 産 業 課
報 告 書 : ク マ ハ ギ害 の実 態 と防除 につ いて ( ア ンケ ー ト調 査 結 果 ) ( 1 9 8 5 )
調 査 地 域 : 京 都 府 京北 町 、美 山 町 ( ア ンケ ー ト対 象 )
調査期 間 :1983-84年
調 査 方 法 : ア ンケ ー ト調 査 ( 2 5 8 件、回 収 率 5 4 % )
調 査結 果 : ク マ ハ ギ被 害 は両 町 の スギ ・ヒノキ造 林 地 の面 積 で 5 . 6 % 、 蓄積 の2 . 1 % に 及
ぶ 、防除 に は テ ー プや ナ ワを巻 く
[ 島根県]
実施機関 : 島 根県林政課
報告書 : ツ キノワグマの生 息区域等調査 くとりまとめ地図、表 : 原 稿)
調査地域
全県
調査期 間
1983年
調査方法
ハ ンタ ー 、鳥 獣 保護 員 か らの 聞 き取 り調 査
調 査結 果
推 定生 息 数 は繁殖 地 域 1 3 4 頭、 出没 地域 1 2 4 頭
[ 広島県 ]
実施機関
広島県森林保全課
報 告 書 : ツ キ ノ ワグ マ生 息 調 査 記録 と りま とめ ( 原稿 )
調査地域 : 全 県
調査期間 : 1 9 8 5 年
調 査 方 法 : 聞 き取 り調 査 、生 息 情 報 を標 準 地 域 メ ッ シュで整 理
調 査 結 果 : 広 島 県下 で は佐 伯 郡 と山 県 部 の 計 7 7 メッシュ ( 標準 メ ッ シュ) で 生 息 情 報
-22-
[ 徳島 県 ]
実 施 機 関 : 徳 島 県野 鳥 の 会 ( 徳島 県林 政 課 委 託 )
1979:原 稿)
1978、
報 告 書 : 指 定 鳥 獣 等 保 護 調 査 、 ツキ ノ ワグ マの生息 状 況 の概 要 ( 1 9 7 7 、
一
調 査 地 域 徳 島 県剣 山 、三 嶺 山地 域 く木 沢 村 、木 頭 村 、 宇 村 、東 祖 谷 山村 、木 屋 平 村 )
調査期 間
1981-84年
調査方法
間 き取 り、造 林 木 被 害 調査
調査結 果
生 息 数 推 定 ( 徳島 県 内 ) 6 頭
( 昭和 5 7 年度 ) 、 5 頭 ( 昭和 5 9 年度 )
[ 大分 県 ]
実施機関
大 分 県緑 化推 進 課
ヽ
報 告 書 : 大 分 祖 母 ・傾 山 系 で 捕 獲 され た ツキ ノ ワグ マ につ いて の 緊急 調 査 報 告 書 ( 1 9 8 8 )
調 査 地 域 : 大 分 県祖 母 ・傾 山 系 ( 大分 県大 野 郡 )
調 査 期 間 : 1 9 8 7 年 ( 1 9 8 7 年1 1 月2 4 日捕 獲 )
調 査 方 法 : 出 自調 査 、痕 跡 調 査 、 胃内容 分 析 、形 態 調 査 、糞 便 の 薬 剤 耐 性 大 腸 菌 の 検 索 、
血 液 蛋 自 の遺 伝 変異 調 査 な ど
調 査 結 果 : 大 腸 菌薬 剤耐 性 、 胃内容 、血 液遺 伝 変異 調 査 な どか らは 「九 州産 野 生 ツキ ノ
ワ グマ 」 と判 断 され るが 、形 態 ( 歯牙 ) 。 年 齢 調 査 か らは 「野 生 ツキ ノ ワ グ マ 」 と
す るに は疑 わ しい点 もあ る。
この よ うに ツキ ノ ワ グマ 生息 情 報 の 多 い東 北 地 方 の 3 県 ( 青森 県 、秋 田県 、山 形 県 ) と
新潟 県 で は、 1 9 7 7 年 ( 昭和 5 2 年度 ) か ら調 査 が 開 始 され た山 形 県 を始 め と して 、地 域 区分
・追 い 出 し法 に よ る ツキ ノ ワ グ マ生 息 数 調 査 が定 期 的 に行 わ れ て い る こ とが 注 目 され る。
そ の 他 の 関 東 か ら西 日本 の 都 府 県 で は ア ンケ ー ト調 査 や痕 跡 調 査 に よ る生 息 状 況 の 把 握 が
主 とな って い る。 また 、調 査 中 で あ るた め こ こで は示 さなか ったが 都 府 県 に よ る調 査 と し
て 、岩 手 県 、富 山 県 、岐 阜 県 で 1 9 8 9 年 ( 平成 元年度 ) か ら ツキ ノ ワ グマ 調 査 が 実 施 され て
い る。
引 用 文 献 ・資 料
( 本文 中 に 報 告 書 名 を 示 した 行 政 機 関 調 査 報 告 書 は 除 い た )
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-23-
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一
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一
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-24-
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動 物 2 , 麦 之 構 太 田市 お よ びあ や み第 2 貝 塚 の 出土 骨 につ い て. 哺
乳 類 学 会 1 9 8 7 年大
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野 崎英 吉 ( 1 9 8 5 ) ツ キ / ワ グ マ の 令 査′
生 息動 態 に関 す る基 礎 的研 究 、環 境 庁 自然 保 護 局 : 4 4 - 4 7 .
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-25-
I E 窪義
捕
獲
個
体 こ数
の
動
向
と 被
況
状
害
米
田
政
明
・
1 . 調 査内容 と方法
日本 における ヒグマ とツキノワグマの県別 の捕獲数 と有害駆除 による捕獲 の割 合を鳥獣
関係統計 ( 昭和 3 5 年度 までは狩猟統計) の 整理集計 か ら調査 ・分析 した。鳥獣関係統計 は
大正 1 2 年 ( 1 9 2 3 ) か らの資料 があ るが、第 二 次大戦前 の捕獲数値 の信頼性 には多少 の疑問
があるため調査対象期間 は戦後 の昭和 2 1 年か ら昭和6 2 年度 までの4 2 年間 とした。捕獲数集
計 では狩猟 と有 害駆除 をあわせた ものを全捕獲数、全捕獲 に しめ る有害駆除捕獲 数 を有害
駆除捕獲率 と した。人的被害状況 は環境庁資料 に基 づいて整理 した。
2 . 捕 獲個体数 の動向
( 1 ) ヒ グマ捕獲数
都道府県別 の ヒグマ/ ツ キノワグマ捕獲数 を示 した表 H - 1 で
、北海道 におけ る捕 獲数
と して 、 ヒグマの昭和 2 1 年度 ( 1 9 4 6 ) か ら昭和6 2 年度 ( 1 9 8 7 ) 間 の捕獲数 を示 した。 また 、
表 Ⅱ- 2 に そ のl o 年間 ごとの捕獲数 を示 した。 とグマの捕獲数 は昭 和 3 0 年代後半 か ら増加
して い るが、 これには昭和 3 8 年の異常 出没 ( 十勝岳噴火) を 直接 の き っか けとす る、 ヒグ
マ捕獲奨励金制度 が作 用 した とされ る。 しか し、捕獲数 は昭和 5 0 年代 に入 って減少 し、捕
獲 と生 息地 の減少 による生息 数 の減少 ・地域的絶滅 の危険性 も指摘 され ( I V 車参照) 、 平
成 2 年 度 ( 1 9 9 0 年) か らは春 グマ駆除 が 中止 された。
( 2 ) ツ キノワグマ数
ツキノワグマの都道府県別捕獲数 を表 E - 1 に
獲数 の割合 を表 I - 2 に
、そ の1 0 年間 ごとの捕獲数 と有害駆除捕
示 した。 この時島獣関係統計 では捕獲 が記 録 されてい るが、当該
県 の生息状況や捕獲数 の推移 か らみて統計資料 の誤記載 あるいは誤植 と思 われた下記の捕
獲数 は表 H - 2 の
集計 か らは除 いた。
十 日 本 野 生 生物 研 究 セ ンタ ー
-26-
キ ノ ワグ マ ・ヒグマの 都道 府 県別 ・年 度 別 捕獲 数 ( 1 : 東
表 I-1 ツ
日本 ) )
( 昭和 4 0 年度 ( 1 9 6 5 ) 一 昭 和 6 2 年度 ( 1 9 8 7 ) : 単 位 は頭 )
昭和 北 海道 音森 岩 手 宮 城 秋 田 山 形 福 あ 茨 城 栃 木 群 馬 埼 玉 千 葉 東 京 神奈川 新済 富 山 翻 │1 福井 山 梨 長 野 岐 阜
21
〕 14
9
11
17
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'72
0
5,
2
10
9
23
711
2
19
8
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337
536
2
5122
280
510
68
597
414
378
7
5396
572
1302
290
1024
1186
1406
0
3900
778
1582
301
1655
1341
1827
0
213
471
93
13
32
5
228
351
77
5
86
41
453
340
134
509
329
835
606
364
257
937
482
968
352
840
110
0
95
21
1232
973
536
1345
511
2303
2912
336
1
141
390
539
0
69
211
47
91
139
3
519
1334
151
0
88
47
1473
548
549
1612
682
2299
3254
264
0
58
558
570
0
140
228
26
109
555
1
66
10
33
1
10
214
56
21
0
12
1162 1774
281
292
3
4
42
94
255
387
171
266
0
0
36
18
94
159
26
43
8
5
60
74
0
1
5
21
10
20
0
15
4
1
2
2
11677149142455426752
昭 和 年 度 1 0 年間 有 害 駆 除 捕 獲 率
21-29 30-39 40-49 50-59 60-623)
1017
242
610
136
714
459
506
7
125
422
18
0
20
15
440
180
143
393
212
726
700
71
0
15
133
184
0
44
65
0
40
124
0
55
17
0
0
1
0.502 0.486 0 . 7 0 5 0 . 6 9 8 0 . 5 9 7
0 . 4 7 0 0 . 8 05.78 6 1 0 . 6 7 9 0 , 7 3 5
0.302 0.368 0.430 0.472 0.377
0 . 5 3 3 0 , 3 502. 3 9 3 0 . 5 5 4 0 . 5
92
0 . 4 9 6 0 . 5 409. 6 6 7 0 . 7 8 2 0 . 々
0.804 0.777 0.767 0.761 0.764
688 0.598
0.496 0.552 0.741 0。
0
0
0
3 0 1 0 . 2 1 5 0 . 2 5 6
0.018 0.188 0 。
0.545 0.267 0.469 0.469 04390
0.086 0.051 0.054 0.046 0.166
0
0
0
0.093 0.058 0.073 0.022
0 0.021 0.066
0 0,024
783 0.858 0.905 0.893
0.629 0。
01508 0.598 0.818 0.635 0 6
0.619 0.571 0.884 0.635 0.699
0.479 0.267 0.367 0.335 0.511
0.191 0,161 0.134 0.259 0.349
0.428 0.342 0.551 0.648 0.502
0 . 3 2 3 0 . 3 01.32 9 2 0 . 5 0 7 0 . 4 9 7
0 . 1 3 5 0 . 3 01.86 1 6 0 . 7 5 3 0 . 6 3 3
エラー
1
エ
0.333
0
ラー
0.8
0.166 0.265 0.404 0.706
0.356 0.186 0.297 0.349 0.368
0.058 0.236 0 . 4 1 5 0 , 4 3 3 0 . 5 1 0
6817
0 . 4 3 5 0 . 4 2 3 0 5 6 7 0 . 5 8 2 0 . 5
0
0 0.055 0.012 0.185 0 340
0 1 0 0 . 2 06.42 4 6 0 . 4 1 6 0 . 4 4 6
0 0 1。 1 0.191
6
0.115 0
0 0.516 0.422 0.275
0 0 , 0 6 07 . 1 7 9 0 . 4 2 7 0 . 3 3 8
-0
1
0 0
00 . 2 2 7 0 . 3 5 0 0 . 2 1 8
0.2 0.339 0.411
0
0
- 0.266
0.4540.333 0
1
0
0
0
0 0 . 2
1
1 ) 各集 計 期 間 ご と ; 有 害 駆 除 捕 獲 数/ 狩 猟 捕 獲 数 十有 害駆 除 捕 獲 数
2 ) 狩猟 捕 獲 数 と有 害 駆 除 捕 獲 数 の 合計
3 ) 昭和 6 0 - 6 2 年度 3 年 間 合計
4 ) ツキ ノ ワ グ マ捕 獲 数計 ( 北海道 の ヒグマ捕 獲 数 を除 いた 集 計 ) 表 Ⅱ - 2
ノ ワ グ マの 1 0 年間 ご との 捕 獲 数 と有 害 駆 除 捕獲 率
-29-
-
一
ヒ グ マ ・ツ キ
( 表 Ⅱ- 2 の 集 計 か ら除 い た 捕 獲 数)
昭 示B 年度
鳥獣関係統計記載 施埜 埜
県
区
福岡県
狩
猟
狩
猟
4
222F
25年
大分 県
分
13
26年
岡山 県
狩
猟
85
26年
大分県
狩
猟
3
38年
滋賀県
有
害駆除
47年
福岡県
狩
猟
1
50年
熊本県
狩
猟
3
52年
鳥取 県
有
害駆除
522
4 7 ( 有 害駆除 そ の他内訳 ( 獣類)
一方、 その前後 の捕獲数 か らみて捕獲数が ないのは不 自然 と見 な し、鳥獣統計資料以外 の
資料 あ るいは該当県 への問 い合 わせによ って求 めた次 の年度 ` 県 についての捕獲数 を表 エ
ー 2 で は含 めた。
(表I-2で
集 計 に加 えた捕獲 数 )
昭呑口年 度
県
区
分
ヒ
玉
59年
新
潟県
狩
猟
0
132
59年
長
野県
狩
猟
0
120
昭和 2 1 年- 6 2 年 の4 2 年間 に、狩猟 と有害駆除をあわ せて ヒグマ は総計 1 9 , 9 5 8 頭( 年平均
5 6 0 頭) が 全国 で捕獲 された。昭和2 0 年
4 7 5 頭) 、 ツキノ ワグマ は総計 6 5 , 5 2 0 頭( 年平均 1 、
代か ら1 0 年ごとの捕獲数動向 をみると、 ヒグマ、 ツキノ ワグマ とも捕獲数 は増加傾 向 にあ
る。
5 0 0 頭近 く捕獲 されたが都府県別 で はどこで捕獲
ツキノワグマ は第 二 次大戦後、年平均 1 、
5
0
年
代 の1 0 年ごとの各年代 で全捕獲数 ( 狩猟 と有害
数 が 多 いかをみ るため、昭和 2 0 年代
駆除捕獲 の合計) の 多 か った県 を第 1 位 か ら第 5 位 までを表 I - 1 か
ら取 り出す と表 正一
3 の よ うになる。総捕獲数 の県別捕獲数順位 では峡阜県 が戦後第 1 位 を続 けて いる。続 い
て長野県、福島県 な どで多 い。
有害駆除捕獲率 ( 有害駆除捕獲数/ 全 捕獲数) は 昭和 2 0 年代 か ら5 0 年代 にかけて高 ま り、
昭和 5 0 年代 には6 0 % 近 くに達 している。 ツキ ノワグマ について有書駆除捕獲率 の高 い県を
捕獲数 と同様 、1 0 年ごとの順位 を とると表 E - 4 の
よ うにな る。有害駆除捕獲率 の順位 は
全捕獲数順位 と異 な り順位 の入 れ替 わ りが大 きいが、おおむね東 日本 日本海側 の県で高 い
傾向 がある。昭和5 0 年代 の上位 5 県 の有害駆除捕獲率 はいずれ も7 0 % を 越 えてい る。北海
道 で も ヒグマの有害駆除捕獲率 は昭和 3 0 年代 を除 き5 0 % 以 上 の高 い比率 を示 して い る。
-30-
表 Ⅱ-3 ツ
キ ノ ワグ マ総 捕 獲数 10年 間 ご との 県 llM位
10年間総 捕 獲 数 順 位
昭和年代
2 0 年代
3 0 年代
4 0 年代
5 0 年代
岐阜 県
岐阜 県
岐阜県
岐阜 県
福井 県
新潟 県
新潟 県
秋 田県
福島県
福 島県
福 島県
福島県
長野 県
長野県
福井県
長野 県
5位
4位
3位
2位
1位
キノワグマ捕獲 における10年間 ごとの有害駆除捕獲率 の県順位
表 E-4 ツ
lo年間有 害駆 除 捕 獲 率 順 位
E召
呑n 笙 代
1怜
2 0 年代
3 0 年代
4 0 年代
5 0 年代
(3)ツ
新潟県
秋 田県
山形 県
福井県
2位
山形県
青森県
石川 県
新潟 県
3位
5 位
4位
石川 県
福 島県
富山県
山形 県
新潟 県
新潟 県
新潟 県
秋 田県
__ _ __
群馬 県
富山県
山形 県
静岡県
宮城 県
石川県
福島県
三室 県
キ ノ ワグ マ ・ヒグ マ捕 獲 数 の変 動
ツキ ノ ワ グ マ ・ヒグマの 昭 和 2 1 年- 6 2 年 度 間 の捕 獲 数 の 変 化 を グ ラフ化 した もの を 図 H
- 1 に 示 した。 ツキ ノ ワ グ マ ・ヒグマの捕 獲 数 は年 ご とに大 き く変 化 して い る。 この 捕 獲
数 の 変 化 につ い て 、阿 部 ( 1 9 7 4 ) は 、 ヒグ マ の年 ご との 捕 獲 数変 化 は エ ゾ タ ヌキの 捕 獲 数
と同 期性 が あ る こ とを報 告 して い る。 図 正- 1 で 、 ヒ グ マ と ツキ ノ ワ グ マ の捕 獲 数 の 多 い
一
年 の 同 期 性 を み る と、 昭 和 2 8 年、4 9 年、 6 1 年な ど同期 性 の あ る年 もあ るが 致 しな い年 も
多 い。 ツキ ノ ワ グ マ ・ ヒグ マ の捕 獲 数 変 動 に は、 そ の 年 の秋 の 堅 果類 の 結 実状 況 が 影 響 し、
堅 果類 の 不 作 年 は里 山 へ の ク マ 類 の 異 常 出没 な どが起 きる こ とが 示 唆 されて い る ( 本報 告
書 、 V 章 参照 ) 。 捕 獲 数 の 変 動 は、 あ る年 に捕 獲 数 が 多 い とそ の 翌 年 か ら 2 、 3 年 間 は捕
獲 数 が 減 る こ とが要 因 とな る と も考 え られ る。 しか し、捕 獲 数 の 変 動 要 因 に は不 明 な点 も
多 く、毎 年 の 堅 果 類 の結 実 測 定 を 含 め 調 査 が 必 要 で あ る。
3 . 人 的被 害 状 況
環 境 庁 資料 ( 鳥獣 保護 各 種 ア ンケ ー ト調 査 結 果等 資料 ( 環境 庁 自然 保 護 局 野 生 生 物 課 、
1 9 8 9 ) ) に よ り、昭 和 5 4 年 ( 1 9 7 9 ) か ら昭 和 6 3 年 〈1 9 8 8 ) ま で の 1 0 年間 の 全 国都 道 府 県 別
の ヒグ マ と ツキ ノ ワ グマ に よ る人 的被 害 発生 状 況 を整理 した。 この 1 0 年 間 に 、 ヒグ マ で
は 2 件 2 名 、 ツキ ノ ワグ マ で は 9 件 9 名 の 死 亡 事 故 が 報 告 され て い る ( 表 Ⅱ- 5 、
-31-
これ に
ヒ グマ
…計
……
―一一―)守
JX
"……有害
捕獲数
頭
9
5
5
4
工,
日 ︺
禾
口 打ヨ
A B
氏︼
︶
ふャ
↓
0
3
5
つ﹂
55
〓 ツ うと 1■
颯
捕 獲 数 十
醐 醐 醐
1十
言
・
・
…・
…
…あ
…
・
…
寄4嵐
一 有喜
ツキ ノ ワ グ マ
25
争口
35
40
45
50
55
昭和年
図H-1 ヒ
グマ とツキノワグマの捕獲数 の推移 ( 昭和 2 1 - 6 2 年度)
-32-
ら 052
6062
は クマ を追 跡 中 の ハ ン タ ー が 負 傷 した ク マ に襲 われ た 死 亡 事 故 事 例 な どを含 む )。 また 同
じ期 間 の 、負 傷 者 数 は ヒグ マ に よ る もの が 8件 8名 、 ツキ ノ ワグ マ に よ る もの が 182件
ー
201名 報告 され て い る (表 E-6、 死 亡 事 故 と同様 負 傷 者 件 数 に もハ ン タ の 負 傷 例 が
含 まれ て い る)。 ツキ ノ ワ グ マ に よ る死 亡 事 故 は東北 地 方 に、負 傷 事 故 は東北 地 方 、 中部
地 方 と中 国地 方 の 広 島 県 な どか らの 報告 件 数 が 多 い が 、特 に岩 手 県 、秋 田県 に事 故 例 が集
中 して い る こ とが 注 目 され る。
引 用 文 献 ・資 料
阿部 永
29:4-18.
海 道 にお け る哺乳 類 とそ の 保 護 . 哺 乳 類科 学 2 8 ・
生 生 物 課 ( 1 9 8 9 ) 鳥 獣 保 護 各 種 ア ンケ ー ト調 査 結 果 等 資料
(1972)北
環 境 庁 自然 保 護局 野
鳥 獣関 係 統 計 ( 狩猟 統 計 ) . 林
―
野 庁/ 環 境 庁 ( 昭和 2 1 年度 昭 和 6 2 年度 )
-33-
表 E-5 都
1)(1979-1988)
度 府 県別 ヒグ マ ・ツキ ノ ワグ マ によ る死 亡 事 故数
(発生件数/死 亡者数)
道森手城田 形島城木馬 玉葉京川潟 山川井梨野 阜岡 知重賀 都阪庫良山 取根山島 田 島川 媛知岡 賀崎本分崎 島縄
海 奈 歌 児
邑石福山長 岐静 愛 三滋 一
界天兵奈和 鳥島岡広山 一
寧 杏愛高福 佐長熊大宮 鹿沖
北青岩宮秋 山福茨 栃群 埼 千東神新 さ
都道府県
言十
3 1984脚
即9聞 O19811982脚
品樹h紺 あ樹為 計
(S54)(S55)(S56)(S57)(S58)(S59)(S6
一
1 / 1
1/1
-
- 1/1
- 1/1
+
1 / 1
1/1
- 1/1
-
1 / 1
2/2
-
-
一
-
1/1
1/1
3/3
1/1
-
1)北海 道 は ヒグ マ 、 そ の 他 都府 県 は ツキ ノ ワグ マ に よ る被害 状 況 を示 す
-34-
-
2 / 2
-
2 / 2
1 / 1
3 / 3
3/3
3/3
3/3
11/11
1)(1979-1988)
度 府 県別 ヒグ マ ・ツキ ノ ワグ マ に よ る負 傷 事 故 数
表 正-6 都
(発生件数/負 傷者数)
3脚
4齢
0脚
i1982醐
脚 9脚
(S54)(SS5)(S66)(S57)(S58)(S59)(S6
)総
h樹
あ 韻 :)計
二十
竺 │ケ
│
2/3
10/15
1/1
1/1
2/2
2/2
-
-
2/2
1/1
―
一
―
l 堪
1/1 ケ
サ2/2 1夕
―
―
1/1
-
1/1
一
十
一
一
一
-
1/1
1 / 1
- 1/1
1/2
1/1
一
一
一
一
一
十
一
十
一
一
17/19 25/25 20/26 30/34 22/23 29/29
1)北海 道 は ヒグマ 、 そ の 他 都 府 県 は ツキ ノ ワ グマ に よ る被 害状 況 を示 す
-35-
-
1/1
3/10
4/4
滋
-
1務 3
4/4
-
1/1
4 / 4
-
1 / 1
1/1
2/2
2/2
7/8
一
一
一
一
一
1/1
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
9/9
-
―
3/3
-
一
一
一
一
一
一
一
十
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
十
一
一
一
一
一
9/9
4/4
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
7/7
1/〕
-
1/1
一
一
一
一
一 一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
十
一
一
一
一
一
一
一
二 十
一
22/28
1/1
-
一
一
一
一
一
―
1/3
一
一
一
一
一
一
一
一
一
一
-
-
一
一
一
一
一
3/3
1/1
!t夕
1 !ク│,夕 1告
l+,10
i0 131ケ
1ケ
1 / 1
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1/1 2/2 14ケ
1を3/3 = 1!ケ
│
- - 2/1 空= t夕
1 / 1 2/2
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一れ 十一 一
2/2
2/2
一
一
十
一
一
- 1/1
3/3
-
1/1
一
一
一
十
一
道森手城 田 形島城木馬 玉葉京川潟 山川井梨野 阜岡知壼賀 都阪庫良山 取根山島 口 島川 媛知問 賀崎本分崎 島縄
海 奈 歌 児 計
北青岩宮秋 山福茨 栃群 埼千東神新 富石福山長 岐静 愛三滋 京大兵奈和 鳥島岡広山 徳香愛高福 佐 長熊大宮 鹿沖
都道府県
190/209
1 1 1 章 予覧 日 本
准
の
息
ツ キ
状
況
ノ
ワ
グ マ 地
基
礎
調
域
個
体
群
米
国
政
明
査
1.地 域田体群生息状況基礎調査 の方法
・
西 日本 の ッキノワグマの地域個体群 の状況 について述 べ る前 に、生息 状況 の調査 、特 に
生息域が孤立化 した り衰退 している地域 における、生息状況 の基本的な調査項 目 と調査 方
法 を、本調査研究で用 いた手法 を含め整理 してお く。
1.基 礎調査 の項 目
クマ類 (ツ キノワグマ ・ヒグマ)の 生息状況 の基礎調査 と してはさまざまな項 目を上 げ
ることがで きる。重要 な ことは、対象地域 における生息数 が どのよ うな動向を示 し、その
変化 に関 わる要因 として どのよ うな要因 が重 要 であるかを知 り、必要 な対策 のための 資料
を得 ることで あろ う。 しか し、一 般 にクマ類 の生 息数動向 を直接知 ることは難 しいため 、
分布域や捕獲動向 によ つて そ の変化 を推測す ることになる。 このため 、基礎調査 の項 目 と
しては次 の よ うな項 目が上 げ られ る。
1.分布域調査
2.生息環境 の変化 に関す る調査
3.捕獲動向調査
な.捕獲 に関 わ る要因調査 (狩猟者数 、箱 ワナ数)
5.被害状況調査
2.調 査方法
上 に示 した 5つ の調査項 目について、今回西 日本 の ツキノワグマ地域個体群 の生息状況
基礎調査で行 った方法 を中心 に、調査方法 について述 べ る。
中 日本 野生 生 物 研 究 セ ンタ ー
-36-
1)分 布域調査
野 生 生 物 の 分 布 域 の 調 査 記 録 方 法 と して は次 の 4 つ の 方 法 が上 げ られ る。 そ れ ぞ れ につ
い て 、記 録 方 法 と長 短 所 を ま とめ る と次 の よ うにな る。
1 . ポイ ン ト記 録
を 見 た、 捕 獲 した 、痕 跡 を見 た な ど確 実 な生 息 情 報 の地
(方 法)姿
点 を ポ イ ン トと して地 図上 に記 録 す る
( 長所 ) 確
実 な生息 情 報 のみ 記 録 され るの で正 確
く短 所 ) 情
報 が 採取 され な い と、実 際 に生 息 して も生息 記 録 な しと
なる
2 . く くり線 記 録 ( 方 法 ) 狩
猟 者 、林 業 作 業 者 な どの 聞 き取 りか ら生 息 域 を く くり線
で地 図化 す る。 この時 、 一 時 的 出没 域 、繁 殖 域 な ど情 報 内
容 を細 分 して もよ い
般 的 な地 図類 と同様 に地 図化 され るので 、分 布 域 を概 観
( 長所 ) 一
す るに は適 して い る
布 域 内 部 に分布 空 白域 が あ る場 合 で も分 布 域 と して く く
って しま うこ とが あ り、一 般 に 広 めの 分 布 域 が 表 現 され る。
( 短所 ) 分
生 息 密 度 の濃 淡 が 表 現 され に くい
3 . メ ッ シュ図化
布 情 報 を あ らか じめ用 意 した メ ッ シュ図 に記録 す るか 、
(方 法)分
2 の方 法 で 得 た 分 布 図 を二 次 処 理 して メ ッ シュ図化 す る。
1、
置 の特 定 が確 実 ( 精度 は メ ッ シュの大 きさに依 存 ) 。 電
( 長所 ) 位
算 機 処理 が 容 易 で 、生 息 環 境 情 報 な ど他 の メ ッ シュ図 との
重 ね あわ せ 分 析 も容 易 で あ る
( 短所 ) メ
ッ シュが 大 きい と精 度 は悪 くな る。処 理 に時 間 を要 し、
電 算 機処 理 のた め には 専門 知 識 も必 要 とな る。
4 . 行政 区 界 図化
(方 法)市
町 村 あ るい はそれ よ り下 の ( 集落域 な ど) 行 政 区界 単 位
で生 息 の有 無 な どを地 図化 す る
( 長所 ) 保
( 短所 ) 行
護 管理 の 行政 上 の対 策 を 検 討 す る上 で は便 利
一
政 区 界 が生 息 域 を規 定 す る生 息環 境 な どの 地 域 単 位 と
致 す る こ とは少 な いた め 、分 布 域 と行政 区 界 は一 致 しな い。
2 、3 を兼 用 す る こ とが望 ま しい。 く くり線 図 と して 作
実 際 に は この 4 つ の 方 法 の うち、 1 、
成 した 分 布 図 の 中 に 、 ポ イ ン ト図 で 捕 獲 地 点 な ど確 実 な生 息 情 報 地 点 を地 図 化す る こ とに
よ り、分 布域 の 中 で 捕 獲 が集 中す る ところ ( 生息 密 度 が 高 い と ころ ) を 把 握 す る こ とが で
き る。 さ らに メ ッ シュ図化 す る こ とによ り、位 置 の電 算 機 処 理 や生 息 環 境 との関連 分 析 が
可能 とな る。 本 調 査 の ッキ ノ ワグ マ と ヒグ マの 基礎 調 査 で も、 この 3 つ の方 法 を組 み 合 わ
せ て 分 布 域 を記 録 分 析 した 。
分 布 域 調 査 に は当然 現 地 調 査 も含 まれ ると だが 、 ク マ類 の よ うに大 型動 物 で生 息 密 度 が
-37∼
もともと低 い動物 で生 息数 が減少 した地域では、現地調査は労 が多 くしてなか なか報 われ
1 9 7 4 ) 。 しか し、次 に述 べ る生息環境 の調査 も含 め生息域 の現地
ない もので ある ( 東f t t 、
を調査す ることは、生息状況基礎調査 の基本 と して重要であ る。
2 ) 生 息環境 の変化 に関す る調査
生息環境、特 に森林環境 の変化 は森 林性 の ッ手ノワグマ と とグマの生息 に大 きな影響 を
一
与 え る。基 礎調査 における生息環境 に関 しては 般 に次 の項 目を記録整理 し、分布域 の変
化 な どとの関連 を検討す ることが重要 である。 それぞれの項 目 について方法 と、参照す べ
き資料 の例 を以下述 べ る。
1 . 土地利用変化 ( 方 法)
森林性 の クマ類 にとっては森林 カパ ー の有無 が生息地 の重
要 な規定要因 となる。 このため、宅地 、農地 、森林、 その
他 ( ゴルフ場 な ど) の 大区分で土地利用 、特 に森林面積 の
変化 に注 目 して整理 ・分析す る。
2.植生
( 資料)
土地利用動向調査資料、地域森林計画図 な ど
( 方法〉
1 の土地 利用変化 で森林域 の面積的変化 は分析 され る。 ここ
で は森林域 の質的変化 をみるた め植生 の変化 を調査す る
3.森林施業
( 資料)
環境庁 自然環境保全基礎調査 による植生 図、 あるいは ラ ン
ドサ ッ トのデー タ分析
法)
森林域 の環境変化 の もう一 つの分析 と して、伐採 、人工林
(方
へ の転換面積 、 その樹橿 な どを調査分析す る。
(資 料 )
各種林業統計資料、森林施業図
この他、 メ ッシュ図化 された各種地図資料 も生息環境 の現況 と変化 を知 る資料 となる。
以下、国主数値情報 と して 1 【n メ ッ シュ ( 3 次 メ ッシュ) レ ベ ルで整備 されて いるメ ッシ
ュ地図で、生息環境分析 に使用 で きるものを例示す ると次 のよ うになる。
メ ッ シ ュ関 フ ア イ ル
内
作成 機関
1 . 地形 フア イ ル
メ ッシェの平均標高、傾斜度
国土庁
2 . 土地 利 用 フア イ ル
森林 ・耕作 ・建物用地面積率
国土 庁
3 . 人口密 度 フア イ ル
メ ッシェ内人 口
国土 庁
4 . 道路 密 度 フア イ ル
メ ッシュ境界を横断す る道 路本数
国土庁
5 , 現存 植生
メ ッ シュ内代表植生 タイプ
環境庁
クマ類 の分布図 が標 準 メ ッ シュ図化 ( l k ロメ ッシュ) さ れて いれば、電算機 を利用 して
これ らの メ ッ シュ図 とのまね あわせか ら分布域 の環境特性 を容易 に分析す ることがで きる。
-38-
メ ッ シュ図 フアイルの具体的 な入手 ・利用方法 については、国上庁 ( 1 9 8 9 ) な どが参考 と
な る。
3 ) 捕 獲動向調査
クマ類 の生息域 が 限定 ・縮小 している地域では、捕獲地点 な どの情報 は具 体的 で確実 な
生息情報 と して重要であ り調査記録 してお く必要 がある。 また、捕獲数 の動向 か ら地域 の
生息数 の動向 をおお まかにつかむ ことがで きる。以下 、捕獲動向調査 として狩猟 ・有害獣
駆除 捕獲 に共通 して記録 が必 要 な項 目を述 べ る。
で きるだけ詳 しく (最低 1/50,000図レベ ルで位置 が特定 で きるよ う)記
1,捕 獲 地点
録す る。 また、捕獲者 の住所 でな く実際 に捕 獲 のあ った市町村名 を記録
する
ナ猟 (ワ ナの種類 :箱 ワナ/く くリワナ)の 区別
2 , 捕獲方法
銃猟 (銃 の種類)/ワ
3 , 捕獲 日 :
4 . 捕獲者名
実際 の捕獲 日を記録
グル ー プ猟 の場合 は代表者 (捕獲者)と グルー プ人数
5 . 捕獲個体
性別 、子 の有無、成獣/亜 成獣/幼 獣 の区別
さらに、毎年 の捕獲数 の変化 を市町村 あ るいは都道府県 の地方事務所単位で記録 。図化
し、地域 の捕獲数動向 を把握分析す ることが必 要 であ る。
4 ) 捕 獲 に関 わ る要因調査 ( 狩猟者数、 ワナ設置数、狩猟 ・駆除出動 日数)
捕獲 にかかわ る要因 と して、地域 の狩猟者 の数や有害駆除 の 申請 ・出動数、箱 ワナ所有
数 な どを市町村単位 あるいはそれよ り精度 の高 い単位 で調査記録す る。具体的な調査記録
項 目 としては次 の 3 項 目が上 げ られ る。
1 . 狩猟登録者数 : 全 狩猟登録者数 と、 クマ猟 によ うな大物猟 に携 わ るハ ンター数 を分
けて記録 分析す ることが望 ま しい
2 . 有害駆除 :
マ類 の有害獣駆除許可 の延 べ件数 、許可 の べ 日数、実際 の出動 日
ク
数 あ るいは ワナ数 とワナかけ期間
3 . 箱ワナ数 :
ワナ猟 を行 っている地 域では、役場 、森林組合、養蜂組合、個人
箱
で所有 して いるクマ用 の箱 ワナ数 について調査記録す る。
5 ) 被 害状況調査
クマ類 による被害発生状況 の実態 とその防除方法 について調査 してお くことは 、保護管
理 の検討 と有害獣駆除許可 の上で重要である。被害状況調査 の上で検討す べ き課題 と して
は次 の点 が上 げ られ る。
1 . 被害実態調査 :
被 害 が実際 にクマ類 によるものであ るかを確認す る必要 があ る
-39-
2 . 被害 の発 生 予 防 : 夏 期 に電 気 棚 な どに よ う被害 防止 対 策 な しに ク マの 分 布 域 に養 蜂
箱 を 置 くこ とな どは ク マ類 に よ る被 害 を誘 発 す るた め 、適 切 な 予
防 対 策 が 行 わ れ て い るか を調 査 す る必 要 が あ る。
2 . 防除 方 法 の検 討 : 捕 獲 以 外 の 方法 ( 電気棚 、思 避 剤 、植 林 木 に テ ー プを巻 くな どの
対 策 ) に よ る防除 な どが 可能 で な いか 、 あ る い は試 み られ た か を
ヤ
検
討す る
ツキ ノ ワグ マ の生 息 数 が 減 少 して い る、 あ る い は分 布 域 が 縮 小 ・孤 立 化 して い る西 日本
の 各 地 で は、 行 政 機 関 にお い て通 常 体 制 と して以 上述 べ た よ うな項 目 につ いて の 調 査 記 録
を 整 備 す る ( 一部 につ い て はす で に実 施 ) こ とが必 要 で あ ろ う。
引 用 文 献 ・資 料
東 滋 ・伊藤徹魯 ・前 田喜四雄 ・鳥居春 己 ・野崎英吉 ・青井俊樹 ( 1 9 7 4 ) 岐 阜県 におけ
るツキノワグマの生息調査報告. 岐
阜県環境局
ー
・
・
国土庁計画 調整局 建設省国土地理院 ( 1 9 8 7 ) 国 上数値情報, 国 土情報 シ リ ズ 2 .
…40-
【III章西 日本 の ツキ ノ ワグ マ地 域 個体 群 生 息 状 況 基 礎 調 査 】
2 . 紀伊 半 島 地 域
・米 国 政 明2 〕
花 井 正 光1 〕
1 . は じめに
一
紀伊半島 の ツキノワグマの分布域 は、二重県南西部、奈良県南部、和歌山県 の 部 に限
られ、東北地方か ら本州中央部 にかけてひろが る本種 の主要 な分布域 につなが る奥 美濃 ・
北陸地方 一京都府北部 一兵庫県北部 の分布域 とは、 中京地方 と京阪 神 を結ぶ交通網 の発達
した人 口密度 の高 い地域 によ って分断 されている ( 図 I - 2 参
照 : 環 境庁 、1 9 7 9 ) 。 紀伊
半島地域 における本調査研究 では、当該地域 におけるツキノ ワグマ個体群 の分布現況、分
布域 の特性 、捕獲数 の変化 な どを明 らか に し、今後 の保護管理 の基礎 資料 を得 ることを 目
的 と して調査 を進 めた。
2 . 調 査地域 と調査方法
( 1 ) 調 査地域
紀伊半島地域 の ツキノワグマの現在 の生息域 の環境特性 を明 かにす るため、過去 の分布
域 く
潜在分布域) と 現在 の分布域周辺 地域 を含 めた地域 として、紀伊半島 の中 で 図 E I - 1
に示す地域範囲 を調査地域 とした。紀 ノ川下流部北側 、大阪府南部地域 は低標高地 が多 く、
人田密度 も高 く分布域周辺地域 として異質 な こと、また過 去 の潜在分布域 ともな っていな
い と考 え られた ことか ら調査地域か らは除外 した。 同様 の理 由で志摩半島部 な ども調査地
域 か らは除 いた 。
( 2 ) 調 査方法
現在 の生息情報 ( 1 9 8 0 年代 の もの、た だ し捕獲地点情報 のみは1 9 7 0 年代 と1 9 8 0 年代 もの)
と してはつ ぎの情報源 に基づ き分布域を求 めた。情報内容 と しては、① 捕獲地点、②確実
生息 あるい は周年生息情報域 ( 地点) 、 ③推定生息域 あるいは季節的 ・一 時的出没域 ( 地
点) 、 ④生息情報 な し、の 4 つ を区分 した。
1)文化 庁 、 2)日本 野 生 生 物 研 究 セ ンタ ー
-41-
奈 良 県域 : 柴 田叡 ミ 氏 く昭 和 6 0 年度 本 研 究 調 査 員 ; 奈 良 県林 業 試 験 場 ) の 情 報 、小 舟
二 重 県域
武 司 氏 ( 奈良 県林 政 課 ) に よ る資料 お よび環 境 庁 ( 1 9 8 5 ) を 参 考 に した。
: 冨 田 ( 1 9 8 9 ) に 示 され た二 重 県 にお け る ツキ ノ ワグ マ分 布 ・捕 獲 情 報
和歌 山県域 : 細 回徹 治 氏 ( 昭和 6 2 年度 調 査 協 力者 ; 和 歌 山 県立 南 部 高校 ) の 情 報
現 在 の生息 情 報 は 、標 準 メ ッ シュ ( l k m メッ シュ) 情 報 化 し、分 布 域 は メ ッ シュ情 報 図
と して求 めた 。 1 9 8 0 年以 前 の分 布 域 に関 して は既 存 の報 告 書 を 参考 に した。
調 査 地 域 の環 境 分 析 の うち標 準 メ ッ シュで の地 形 ・土 地 利 用 分 析 で は、 国土 数 値 情 報 フ
ア イ ル か ら調 査地 域 の 情 報 を と りだ しヽ 環 境 区分 の 出現 頻 度 を分 析 す る と と 尊に メ ッ ィ ュ
図 を作成 しツキ ノ ワグ マ生 息 情 報 との関 連 分析 の 材 料 と した。 植生 につ いて は第 1 回 自然
環境 保 全 基 礎 調 査 ( 環境 庁 、 1 9 7 4 年実 施 ) に よ る標準 メ ッ シュ情 報 化 され た 植 生 図 を 用 い
た 。 また 、 自然 公園 の指 定 域 や鳥 獣 保護 区 は それ ぞれ の地 域 フア イ ル を用 いた 。林 業 指 標
につ いて は、 国 土 庁 ( 1 9 8 7 ) か ら当該 県 の デ ー タを取 り出 し県 別 の特 徴 と他 の 地 域 と比 較
検 討 を 行 った 。
捕 獲 数 の推 移 は 「鳥 獣 関 係 統 計 」 ( 環境 庁 ) か ら分 析 したが 、市 町村 別 あ る い は県地 方
事 務 所 別 捕獲 数 は関 係 機 関 の 資料 か ら求 め た。 捕 獲 ワナ お よび捕 獲 方 法 の 変 化 は森 林 組 合
か らの 間 き取 り調 査 に よ つて 求 め た。
3.調 査結果
(1)分
布 域 とそ の 変 化
紀 伊 半 島 全体 の ツキ ノ ワ グマ の分 布 域 に関 す る既 存 報 筈書 と して は、 第 2 回 自然 環 境 保
全 基 礎 調 査 によ る 5 k m メッ シュで の 分 布 図 ( 環境 庁 、 1 9 7 9 ) 、 柴 田 ・小 舟 ( 1 9 8 4 ) な どが
あ る。 柴 田 ・小 舟 ( 1 9 8 4 ) は 第 2 回 自然 環 境 保 全 基 礎 調 査 に よ る分 布 図 とほぼ 同 じな の で
-1に 第
既 存 資料 と して こ こで は第 2 回 自然 環 境 保 全 基 礎 調 査 の 報 告 を 参 考 にす る。 図 配
回 自然 環 境 保 全 基礎 調 査 に よ る二 重 、奈良 、和 歌 山 の 3 県 の 報 告 書 を ま とめて ( 哺乳 類 か
らッキ ノ ワグマ の分 布 情 報 を取 り出 した もの ) 作 成 した分 布 図 を示 した。 第 2 回 自然 環 境
保 全 基 礎 調 査 は1 9 7 8 年に調 査 が 実施 され た の で 、生 息 情 報 は 1 9 7 0 年代 とそれ以 前 の 分 布 域
を 示 す もの と見 なせ る。 図 田 - 1 は 、 1 9 7 0 年代 の分 布 域 ( 緊殖 域 ) は 三室 県南 部 ―奈良 県
一
東 南 部 県境 域 の 台高 山脈 と奈 良 県南 西 部 和 歌 山 県境 域 の大 峰 山 脈 を 中心 に広 が り、和 歌
山 県 の 東 部 域 で は昭 和 3 0 年代 まで に広 い 範 囲 です で に絶 滅 が 起 きて い た こ とを示 して い る。
図 I l l - 2 は 、本 調 査研 究 お いて 、前 記 の情 報 を もとに求 め た 1 9 8 0 年代 ( 捕獲 地 点 に関 して
は1 9 7 0 年代 の もの も含 む ) の 紀 伊 半 島 全体 の l k m メッ シュで の ッキ ノ ワグ マ分 布 と、 それ
を 5 k m メッ シュ情 報 と して 整理 した場 合 の 図 田 - 1 の 1 9 7 0 年代 の 分 布 域 と比 べ 変 化 して い
る区 画 を示 した もの で あ る。 図 田 - 2 の
1 9 8 0 年代 の分 布 域 は、 図 田 - 1 に 比 べ 全 体 と して
次 の特 徴 が 見 られ る。
-42-
的
地
改
=コ掌
優
投
雄
眠
EEEL出
tX
紅に
匠コ悔む・
卜
ロ
お
に
時
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圧コ8f3掛
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口
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ヤ1 立
tt と
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ゃ
図 Ill-1 紀
伊 半 島 に お け る1970年代 の ッキ ノ ワ グ マ分布 域 (5 knメ ッ シュ)
1 . 生息 情 報 が 奈 良 県南 部 一三 重 県域 に集 中 し、 奈良 県南 部 の 中 央部 で 減 少 して い る こ
とか ら奈良 県南 西 部 ―和 歌 山 県境 域 の 生息 情 報域 が 分 断 され て い る こ と
2 . 奈良 県 南 西 部 一和歌 山 県境 域 の生 息 域 は奈 良 県南 部 一二 重県域 よ り も狭 い こ と
3 . 和歌 山 県南 部 、大 塔 山 周辺 の 分 布 域 の 孤 立 化 が は っ き り して い る こ と
1 9 7 0 年代 ( 図 回 - 1 ) と
1 9 8 0 年代 ( 図 田 - 2 ) の
分 布 図 の 比 較 に よ り、奈 良 県 南 部 の 中
央 部 と和 歌 山 県 の 東 部 、 お よ び南 部 の広 い 範 囲 で 分 布 域 の 縮小 、地 域 的 絶滅 の生 した こ と
を知 る こ とが で き る。
( 2 ) 捕 獲 数 の 推 移 と箱 ワナの使 用
紀 伊 半 島 に お け る ツキ / ヮ グ マ の 捕 獲 数 を 、捕 獲 数 全 体 の 長期 的 変化 と有 害駆 除 に よ る
捕 獲 数 に分 けて 整理 し、 さ らに捕 獲 に係 わ る箱 ワナの 所 有 ・設 置状 況 につ い て 調 査 した。
1 ) 長 期 的推 移
台 高 山脈 を 含 む紀 伊 半 島 で の ツキ ノ ヮ グ マ の捕 獲 数 の 推 移 につ い て は、 昭 和 4 0 年度 以 降
を 対 象 と した 、柴 田 ・小 舟 ( 1 9 8 4 ) の 報 告 と、二 重 県域 の み を扱 った 富 田 ( 1 9 7 9 ) 、 富 田
・島地 ( 1 9 8 2 ) 及 び富 田 ( 1 9 8 9 ) の 報 告 が あ る。
環 境 庁 ( 昭和 4 5 年まで は 林野 庁 ) が 公表
して い る烏 獣 関 係 統 計 に よ って 、大 正年 間 以 降 の 二重 ・奈 良 ・和歌 山 の 3 県 の長 期 的 な ッ
キ ノ ワ グ マ捕 獲 数 の 推 移 を外 観 して み た 。 そ の 際 、便 宣 的 に戦 前 と戦 後 に分 けて扱 った 。
-43-
︵
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主理
ィ,、
兆
魂
< 戦 前 : 大 正 1 2 年 一昭 和 1 7 年>
この 期 間 にお け る、 3 県 の 捕 獲 数 は表 田 - 1 の
とお りで あ つた 。 この 表 か らは、捕 獲 数
の 推 移 につ いて 以 下 の よ うに概 観 で きる。
1 . 三重 県 で は、 昭 和 にな って 2 0 頭以 上 が 捕 獲 され た 4 年 間 を ピー クに、 そ の 後 は減 少 傾
向 を示 す。 昭 和 1 0 年以 降 は1 0 頭を超 えず 後 年 に な るにつ れ3 か ら4 頭 と減 じて い る。
2 . 奈良 県 で は、 この 期 間 中 の 捕 獲 数 に顕 著 な増 減 は な く、昭 和 1 5 年の3 3 頭を例 外 に1 0 頭
か ら2 0 頭の 間 で 推 移 して い る。 単純 平 均 で は、 1 3 . 8 頭/ 年 とな り、二 重 、和 歌 山 両 県
よ り多 い捕 獲 数 とな って い る。 ‐
3 . 和歌 山 県 で は昭 和 4 年か ら6 年に8 、1 0 、1 8 頭の 捕 獲 を ビー ク とす るデ 山型 を示 し、 昭 和
1 4 年以 降 は捕 獲 が な くな る。
4 . 3 県 の 合 計捕 獲 数 で は、 昭 和 5 年か ら6 年に5 0 頭前 後 に な るほか は、平 均 して 2 6 頭ほ ど
の 年 間捕 獲 数 で あ った 。
< 戦 後 i 昭 和 2 1 年以 降 >
戦 後 の 捕 獲 数 の推 移 を概 観 す るた め に 、 5 年 間 を単 位 に、 そ の間 の最 大 及 び最 小 捕 獲 数 、
平 均 捕 獲 数 を 3 県 につ いて 示 した ( 表 I E - 2 ) 。
これ よ り以下 の点 が お よ そ の傾 向 と して
概 観 で き る。
1 . 二重 県 と和 歌 山 県 で は、一 部 の 例外 を除 い て 最大 捕 獲 数 が 1 5 頭を超 え る こ とは稀 で 、
平 均 的 に も1 0 頭以 下 の 捕 獲 で あ る。
2 . これ に比 して 、奈 良 県 で は3 0 頭を上 回 る最 大 捕 獲 数 が み られ 、全 般 に捕 獲 数 が 多 い 。
平 均 値 で は2 1 - 2 5 年 を 除 い て 1 0 頭以 上 で 、2 0 頭を超 え る こ と も少 な くな い。
3 . した が って 、 3 県 の比 較 で は、 捕 獲 数 の 多 い順 は奈 良 県 、二 重 県 、和 歌 山 県 とな る。
そ して 、 この 順 位 は替 わ る こ とが な い。
4 . 3 県 と もに 、 この 期 間 中 ヽ捕 獲 数 に大 きな変 化 はみ られ な い もの の 、二 重 県 で は4 6 年
以 降 、奈 良 県 で は5 6 年以 降 、和 歌 山 県 で は4 1 年以 降 それ ぞ れ 漸 減 傾 向 が み られ る。
2 ) 有 害 獣駆 除 捕 獲 の 推 移
紀 伊 半 島 に お け る三 重 、奈 良 、和 歌 山 県域 で の ツキ ノ ヮグ マ捕 獲 数 の 長 期 的推 移 は上 に
み た とお りで あ った が 、猟 期 中 の 捕 獲 と有 害 獣駆 除 に よ る捕 獲 を 区分 して 、後 者 の 捕 獲 に
つ いて 推 移 を み て み る。 図 l l l - 3 は 、 3 県 の 捕 獲 数 を猟 期 中 の 捕 獲 と有 害 獣駆 除 に よ る捕
獲 に 区 分 し、 5 年 移動 平均 値 に替 え て示 した もの で あ る。 和 歌 山 県域 で は、 他 の 2 県 に
比 較 して 捕 獲 数 が 少 な い こ とは既 述 の とお りで あ るが 、有 害 獣駆 除 に よ る捕 獲 が み られ な
い 年 も多 く、移動 平 均 値 は極 め て 小 さな値 とな って い る。 これ に対 し、三 重 ・和 歌 山 県域
で は、昭 和 3 0 年代 以 降 有 害 獣駆 除 に よ る捕 獲 が 例年 み られ 、捕 獲 に 占 め る比 率 も低 くな い。
こ とに、二 重 県 で の 有 害 獣 駆 除 に よ る捕 獲 の 比 率 の 高 さは注 目 され 、昭 和 5 0 年以 降 に は 、
逆 転 して 有 害 獣駆 除 捕 獲 が 猟 期 捕 獲 よ り多 くを 占 め るに至 って い る。
-45-
表 田 -1 紀
伊 半 島 3県 に お け る大 正 12年か ら昭 和 17年度 間 の ッキ ノ ワ グマ 年 間 捕 獲 数
正
1
2
3
4
S
6
7
3
9 1o ll 12 13 11 !5 16 17
県
22
9
8 15
13(S)19
10(1)17
18
4
4
S
S3
。 年 間締 mの
“ 篤 岐をし
25
22
38
5 セ 3
抑
計
軸
軸
却
大
12 13 14
3 ( 1 ) ‐ 1 ( 1 )
13(3) iS(2) 33
1
ヽ
17
.‐
19
37
うち 有 青猷駆除による綿 受致を示す
2 紀 伊 半 島 3 県 にお け る昭 和 2 1 年度 以 降 の ッキ ノ ワグ マ年 間捕 獲数
表IIl二
〈5 年 間 の 最 大 ・最 小 ・平 均 )
R
最
卜25年
印
大 最小 平均
昭
和25-30年
最 大 最小 平均
8T331-35年
最 大 最小 平均
40年
昭
和 36‐
最 大 最 小 平均
gr341-45年
最 大 最小 平均
=重 県
S S 24 1S 3 83 11 2 '0 13 6 96
禁良県 14 3 80 24 2 156 19 1 124 24 5 150
稲m山 照 2 C OS iS C 46
S 2 36 15 1 52
53
30
1 0
3R合 :+ 19
80
7 110
62 1, 320
31
5 224
52 13 308
804S-50年
最 大 最小 平均
4 182
15 23 0
2 5 4
2'
4S S
14
29
8
44
20
昭
岡m― S韓
最 大 最小 平均
59年
80ss‐
最 大 '小 平均
1
7 16 0
2 8 4
7 22 039
13 25 2
2 4 2 3
1
35
3S S
1'
211
3S S
, 4
31
11
4
0
3S
14
0 5 3
18 5
13
25 5
・ 】 担け翻慢と手預部理尉膨)合 :│
o ―o 照 期l a l r
―一 百督漱附 拒Ⅲ
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︵︼
官 一
一
一 ︺一
卓一
昭
図 田- 3 紀
r
a
ネ〔
)
伊 半 島 3 県 の ツキ ノ ワグ マ捕 獲 数 の 5 年 間移動 平均 値 の 推 移 ( 昭和 2 1 - 5 9 年
-46-
3)箱
ワナ設 置状 況 と捕 獲
紀 伊 山地 にお け る ツキ ノ ワグ マの有 害 駆 除 捕 獲 は、近 年 で は箱 ワナ に よ る こ とが 多 い (
柴 田 ・小 船 、 1 9 8 4 : 富 田 ・島 地 、 1 9 8 2 ) 。 判 明 した二 重 県 と奈良 県 に お け る箱 ワナ の 保 有
及 び設 置状 況 は表 皿 - 3 の とお りで あ った 。 この ほか に も箱 ワナ を保 有 す る市 町村 が あ る
と考 え られ るが 、実 際 に機 能 させ て い る数 は表 田 - 3 で
ほぼ 全 数 で あ る と考 え られ る。 三
重 県 域 で の 箱 ワナ保 有 数 は、最 小 で も7 7 基、設 置数 は6 4 基に及 ん で い る。 奈 良 県 で は平 成
元 年 度 で み る と、天 川 村 、大 塔 村 、十 津 川 村 、下 北 山村 、上 北 山 村 及 び川 上 村 で 合計 5 4 基
が 保 有 され 、そ の 全 てが 設 置許 可 を受 けて いた 。 また奈 良 県 で は、公 的機 関 が 保 有 す る箱
ワナ は全 体 の約 3 割 で 、民 間 が 保 有 す るケ ー スが は るか に 多 い こ とが 注 目 され る。 これ ら
の 箱 ワナ は、 有 害 獣 駆 除 の 許 可 を受 け、夏 か ら秋 にか け、植 林地 に設 置 され て い る。 両 県
に お け る箱 ワナ に よ る最 近 の 捕 獲 結 果 を表 I l l - 4 に 示 した 。二 重 県 で は昭 和 5 4 年度 以 降 3 2
頭 が 捕 獲 され て い るか ら、年 平均 で4 頭 とな る。 奈 良 県 で は昭 和 5 8 年以 降 6 年間 に4 8 頭が 捕
獲 され て お り、年 平 均 で8 頭 に な って い る。 設 置数 に対 す る捕 獲 数 が奈良 県域 で 高 くな って
い る こ とは、二 重 県 域 よ り も生 息 頭 数 が 多 い こ とを 示唆 す る一 つ の現 象 で あ ろ う。
1 ) ・奈 良 県 2 ) )
表 配 … 3 ツ キ ノ ワ グ マ捕 獲 箱 ワナ の 保有 ・設 置状 況 ( 二重 県
管理者
署他
林の
営そ
奈良 県
置数 〈基 )
所所産
業務水
︿百
童
守ま
い
守と
組林区農
林山当鷲
森市担尾
二重県
保有 数 (基 )設
保有者
軸
こ
宮尾尾県 村猟
県
事務所
1 ) 昭和 6 1 年度、2 ) 平成元年度
表 ロ ー 4 紀 伊山地 における箱 ワナによる最近 の ツキ/ ワ グマ捕獲数 ( 頭)
県\ 年度
・
83
1979 '80
二重 県域
奈良 県域
5
1
'84
'85
'86
・
87
言
十
32
48
14
― :資 料 な し
4 ) 市 町村 別 捕 獲 数
捕 獲 数 の推 移 で述 べ た よ うに、紀 伊 半 島 3 県 の 中 で は奈 良 県 にお け る捕 獲 数 が 多 い。 奈
良 県 資 料 に よれ ば 、昭 和 5 8 年か ら 6 年 間 の 猟 期 中及 び有 害 駆 除 に よ る ツキ ノ ワ グ マの 捕 獲
は1 2 7 頭で 、年 平 均 2 1 頭に及 ん で い る。 この うち奈 良 県 南 西 部 の 十津 川 村 で の捕 獲 は 他 に比
-47-
して多 く、全体 の4 3 % を 占 めてい る。次 に多 いのは上北山村 の2 1 % で あ るが、川上村及 び
下北山村 が これ に次 ぎ、 これ ら4 村 で奈良県域捕獲数 の8 6 % に 及 んでい る。 この ことか ら、
奈良県 の中 で も、大峰山脈 と台高山脈 が位置す る奈良県南部で の捕獲 が多 い ことがわか る。
( 3 ) 現 在 の生息域 と生息環境
紀伊半島 における ツキノワグマの現在 ( 1 9 8 0 年代) の 生息域 とその環境 について生息域
の特徴 を明 らかにす るため l k n メッ シュ地図化 した分布図 を もとに分析 した。
1 ) 県 別 の生息情報
,
2 に 示 した生息情報 の県別 の出現状況 を表 5 に 示 した。紀伊半島全体 で は l k 冊メ
図Ill…
ッシュ数 と して1 2 5 9 メッシュで ツキノワグマの生息情報 を得たが、県別 では奈良 ( 5 6 0 メッ
シュ、全体 の4 5 , 6 % ) と二重県 ( 5 4 5 メッシュ、4 3 , 3 % ) でそ の9 0 % 近 くを しめ、和歌山県域
) と 少 ない。捕 獲情報 地点 メ ッ シュ
での生思 情報 メ ッシュ数 は 1 4 0 メッシュ ( 全体 の1 1 . 1 鉢
は全体で 1 0 5 メッシュで得 られ この うち8 3 メッシュが二 重県 に集中 して いるが 、 これは、
三重県で の捕獲 地点情報収集率 が高 か った ことを反映 した ものであ る。
表 I I I - 5 紀 伊半 島 調査 地 域 に お け る県別 ツキ ノ ワ グ マ生 息 情 報 出現 数
( l k ■メ ッ シュ数 )
生 息 情報 あ り
捕獲 生 息情報 小 計 (確認率拷)t'生息情報 な し
県
二重
奈良
和歌 山
計
2439
140(3.8)
1445
1865
3576
1259(15.4)
6917
8176
462
560
545(27.4)
14
8
132
1154
83
105
計
574(23.5)
1990
3716
1)生息 情報小計/計
2 ) 林 業指標 の比較
ツキノワグマの生息域 は森 林 が 中心 であるため、森林環境 の変化 は生息環境 の動 向 に大
きな影響 を与 えると考 え られ る。紀伊半島調査地域 に係わ る3 県 のい くつ か の林業指標 を
日本野生生物研究 セ ンター ( 1 9 8 7 ) か ら求 めて表 I I I - 6 に示 した。紀伊半島域 は、林業先
進地域 と して、古 くか ら人工林 へ の転換 が進 め られた地 域 であ る ( 林政総合調査研究所 、
1 9 8 6 ) 。 こうした この地域 の特色 は、以下 の点 か らもみて とれ る。二重、奈良、和歌山 の
3 県 とも人工林面積率 は6 0 % 近 く、全国平均 の4 0 % の 1 . 6 倍近 い高 い値 を示 して い る。平
-48-
均 林 齢 も高 い。
一 方 、 1 9 6 0 年か ら1 9 8 0 年まで の2 0 年間 の 人工 林 面 積 増 加 率 は1 . 2 1 倍 ( 奈良
県 ) か ら1 . 3 3 倍 ( 和歌 山 県 ) と 、全 国平 均 の 1 . 5 6 倍よ り低 い値 とな って い るな どで あ る。
表 IIl-6 紀 伊半島 3県 の林業指標 の比較
林軒薪
県
二重
奈良
和歌 山
全国平均
│)機
う霊庫 も話姿桐)
爵裏描)会議措 ぬ幕酷荘
66.2
6.2
63.2
23.4
4.7
1.28
78.3
4.5
59,0
25.7
3.0
1.21
76,8
5,2
6098
21.1
4.8
1.33
4.4
1.56
68.0
40,0
30.0
19.7
人工林増加率 は1960年を 1と した1980年の人工 林面積 比
3 ) 生 息情報 の得 られた地域 の環境特性 ( l k 田メ ッシュ分析)
紀伊半島調査 地域 においては次 の 7 項 目 について ツキノワグマの生 息域 とその周辺 の環
境 と して標準 メ ッ シュによる分析 と メ ッ シュ図 の作成 を行 った。
項
目
1 . 植生
2 . 地形
単
元 資料 (作成 年 度 )
位
植生 タイプ
地形区分
3 . 標高
回
4 . 森林面 積 率
舛
5 , 耕作地 面 積 率
%
自然環境 基礎調査 ( 1 9 7 5 )
国土数値情報 ( 1 9 8 3 )
国土数値情報 ( 1 9 8 3 )
国土数値情報 ( 1 9 7 6 )
国土数値情報 ( 1 9 7 6 )
S . 建物 用地 面 積 率
7 。自然 公園
公国 の有 無
国土数値情報 ( 1 9 7 6 )
国立公園 フアイル
8 . 鳥獣保 護 区
保護区 の有無
保護区 フアイル
%
紀伊半島調査 地域全 体 ( 計8 1 4 5 メッ シュ) で の各環境区分 の県別 の賦存状況 の特徴 を表
田 - 7 に 示 した。生息 情報 メ ッ シュと生息環境 メ ッシュの標準 メ ッシュコー ドのマ ッチ ン
グか ら求 めた 、紀伊半島地域 におけるッキノ ワグマの現在 の分布域 〈計 1 2 5 9 メッ シュ) の
環境特性分析結果 は、生息 情報 の うち捕獲地点 ( 計 1 0 5 メッ シュ) に 限 った環境特性 とあ
わせて表 I l l - 7 の生息 情報 の項 に示 した。 それぞれの結果を以下、環境項 目別 に述 べ る。
( 元資料 が異 なるため調査地域総 メ ッシュ数 は項 目によ り差 がある)
-49-
①植生
林業指標 において 3 県 とも人工林面積率が 6 0 % 近くに達 して い ることを反映 して、 メ ッ
シュ内最大面積植生 タイプと して も紀伊半島で は人工 林 が 6 3 . 5 % と非常 に高 い割合 を しめ
る。次 いで耕作 地 ・果樹園 ( 8 5 1 メッシュ、8 . 5 % ) 、 萌芽林 〈6 6 7 メッシュ、8 . 2 % ) が 多 い。
生息情報 の絶対数 も人工林 で多 い ( 7 5 5 メッシュ、生息情報 の6 0 . 1 % ) が、生息情報確認率
( 各環境区分 ( 植生 タイプ) に おける、生息情報 を得 た メ ッ シュ数/ 調 査地域全体 メ ッ シ
ュ数) で , 、 ブナ林 ( 生息情報確認率 、6 8 . 7 % ) 次 いで モ ミツガ林 ( 3 5 . 6 % ) で高 い。生息
情報 の中 で捕獲地点 に限 れば人工林 ( 捕獲地点情報 メ ッシュ数 6 1 メッシュ、捕獲地点情報
計 の5 8 . 1 % ) と萌芽林 ( 1 8 メッシュ、1 7 . 1 % ) で多 い。
② 地形要素
ケ
紀伊半島調査 地域全体では、大起伏山地 ( 2 5 2 4 メッシュ、全体 の3 1 . 0 % ) 、 中起伏 山地 〈
2 5 5 8 メッシュ、3 1 . 4 % ) 、小起伏 山地 ( 1 9 5 8 メッ シュ、2 4 . 0 % ) と山地が地形要素 の大部分
( 8 6 . 4 % ) を しめ る。山地 についでは丘 陵地形が多 い。紀伊半島 の 3 県 別 に調査地域内 での
地形 要素 の賦存状況 をみると、和歌 山県 は丘 陵地 の比 率 がやや高 い。生息情報 の大部分 (
1 2 0 6 メッシュ、生息情報計 の9 5 . 8 % ) は山地 に集中 し、そ の中 で も大起伏山地で多 い。
③標高
以下 の メ ッシュが5 7 0 0 メッ シュ ( 全体 の6 9 . 7 % ) と多 くを しめ、
調査地域全体 では標高 5 9 9 冊
その中で も和歌山県が低標高地 の しめる割合 が高 い ( 3 1 5 3 メッシュ、調査地域内 の和歌山
県域 の8 4 . 8 % ) 。一 方、生息情報 は標高 6 0 0 m 以上で 9 2 4 メッシュ、7 3 . 4 % と多 く出現す る。
捕獲 地点 も標高6 0 0 m 以上で多 くな っている。
④ 森林面積率
前項 で述 べ た林業指標 の林野面積率 で も示 されたよ うに、 3 県 の森林面積率 は高 い。 し
か し、調査地域全体 でみると標準 メ ッシュでの森林面積率 が 8 9 % 以下 の メ ッ シュ も全体 の
3 3 . 7 % ( 2 7 5 4 メッシュ) あ る。生息 情報 は森林面積率 9 0 % 以上 の ところに全体 の9 3 . 2 % が集
中 して いる。捕獲地点 も同様 に、森林面積率 の高 いメ ッ シュで 多 い。
③ 耕作地面積率
森林面積率 と逆 の関係 にあ り、耕作面積率 1 0 % 以下 の低 い面積率 の メ ッシュが6 4 6 4 メッ
シュ、調査地全体 の7 9 . 1 % をしめる。耕作地面積率0 % のメッシュに限 って も4 5 3 3 メッシュ、
5 5 . 4 % と過半数 が耕作地 のないメッシュとな ってい る。 その中 で も和歌山県域 は耕作地面積
率 の高 い メッシュの割合 が高 い。生息情報、捕獲地点情報 は耕作面積率 0 % のメ ッ シ手に集
中 している ( 生息情報 の9 5 . 5 % 、捕獲地点情報 の9 7 . 1 % ) 。
-50-
表 回 -7 紀
伊半島調査 地域 3県 の環境構成 および ツキノ ヮグマ生息情報を えた メ ッ シュ
( l k 冊メ ッ シュ数 )
林林
力芽
林
>地地林 林メ 林r
.姉肝射
生宅作工原 ッリ ナナ も の計
植住耕人草 マボ ブメ ガそ
盟輩謹分
≫地地地
分山 山山
区伏伏伏 他
形起起起陵 の
地大中小丘 そ
く標 高 i m )
0- 199
200- 399
400- 599
600- 799
800- 999
1000-1199
1200-1399
43
130
1399
23
1
39
32
97
137 584
1744 1998
5
0
95
221
122
134,
102
2
208
21
1968
215
59
10
7
2421
8
54
449
138
36880
433
1332
1332
266
353
563
617
381
231
108
66
18
861
242
44
1
6
2 5 2 4 ( 3 1 .
2555(31.
1932(23.
3 8 1 ( 4 .
953( 9.
943(74.
263(20.
46(3.
1( 0.
6( 0.
35(2.8)
39(0.5)
248
131
239
847
525
( 耕作 地 面 積 率 : % )
0
1209 1626
1-4
233 308
5-9
173 143
375
362
10〈
1685
551
415
1065
( 建物 用 地 面 積 率 : % )
o
1516
1-4
254
5-9
120
100
10く
2628
656
184
248
言
+2〕
212
16
112
16
1152
94
324
538
602
529
241
78
1400く
〈森 林 面 積 率 i % )
く6 9
70-79
80-89
90-99
100
11
1
18
2
105
1990
1961
306
82
90
2439
3716
4 5 2 0 ( 5 5 .
1092(13.
7 3 1 ( 9 .
1802(22.
100
40
11
2
5)
3)
0)
2)
1154
1259(100)
104
1
0
0
8145(100)
105
1 ) 図I l l - 1 参照
2 ) 元の デ ー フアイ ルの 作 成 基 準 が 異 な るた め 、植生 の み 他 の 5 項 目 とは計 の値 が 異 な る
-51-
⑥ 建物用地面積率
紀伊半島調査 地域全体では建物用地面積率 0 % メッシュが7 5 . 0 % をしめ るが、生息情報 は
9 6 . 4 % がこの建物用地面積率 0 % の区分 に集 中 してい る。
① 自然公園
紀伊半島調査地域 の中 で メ ッシュ内 に 自然 公園 の ある メ ッシュと、生息情報 の得 られた
メ ッ シュの関連 を表 I l l - 8 に しめ した。生息情報 メ ッシュ数計 1 2 5 9 メッ シュの うち自然公
園域内 には 3 2 8 メッシュ ( 2 6 . 1 め が含 まれ るも その中で は捕獲地点情報 あ比率が高 く ( 全
捕獲地点情報数 の3 5 , 2 X ) 自然公国内 での ッキノワグマ捕獲 の多 いことが 注 目 され る。 ( た
だ し、表 I I l - 8 に おける自然公園 の メッシュは、 メ ッ シュ内 に 自然公園 があることを示す
もので 、捕獲 そ の ものが 自然公国内 でお こなわれた こと示す ものではない , 自 然公園 の あ
るメ ッシュで捕獲 があ って もそれ はメッシュ内 の区分 では 自然公園外 の地域で行わ れた も
のか も知 れない) 。
表 Ill-8 紀
伊 半 島調 査 地 域 にお け る ツキ ノ ワグ マ生 息 情 報 と自然 公園 の 関連
葬ば
自然公園区分
ツキ ノ ワ グ マ 生 息 情 報 ( 3 県 計 )
捕
獲地点
そ
の他生息情報
計
計
生生
1)( )の
( メ ッ シュ数 )
中 は生息 情報計 あるいは捕獲地点情報計 に対す る比率 は)
③鳥獣保護区
調査地域 で メ ッ シュ内 に鳥獣保護区 の ある メ ッ シュ とツキ ノワグマ生息情報 の関連 を表
鳥獣保護区 に含 まれ、捕獲地点 の2 6 . 7 % が
田- 9 に しめ した。生息情報全体 の うち1 5 . 6 % が
鳥獣保護区 の ある メ ッシュでお こなわれた ことを表 は示 して いる ( ただ し、表 I I I - 9 にお
ける鳥獣保護区 の メッシュは、 自然公園 の場合 と同様 メ ッシュ内 に鳥獣保護区 あ ることを
示す もので 、捕獲 その ものが鳥獣保護区内で お こなわれた こと示す ものではない : 鳥 獣保
護区 の あ るメ ッ シュで捕獲 があ って も鳥獣保護区外 の地 域で行わ れた ものか も知 れない) 。
-52-
表 田 -9 紀
伊 半 島 調 査 地 域 に お け る ツキ ノ ワグ マ生 息 情 報 と鳥 獣 保 護 区 の 関 連
( メ ッ シュ数 )
ツキ ノ ワ グ マ 生 息 情 報 ( 3 県 計 )
離
生生
計
し報
域区 な情
地地, 報獲
菩
鳥 獣保護区区分
1)( )の
捕獲地点
そ
の他生息情報
計
`
中 は生息 情報計 あるいは捕獲地点情報計 に対す る比 率 (%)
以 上 の 分 析 結 果 か ら、生 息 情 報 を 多 く得 た メ ッシェの 特 徴 を ま とめ る と次 の よ うに な る。
標 高 6 0 0 m で山地 地 形 区分 の と ころ。植 生 タ イプ と して は 、生 息情 報 の 絶 対 数 は人 工 林 で 多
いが 、生 息 情 報 確 認 率 と して は プ ナ林 や モ ミツガ林 で 高 い 。 森林 面 積 率 は 9 0 % 以上 と面 積
率 の高 い地 域 で 、耕 作地 面 積 率 と建 物 用 地 面 積 率 は 0 % と低 い面 積 率 の メ ッシ ュで 生 息 情 報
は 多 い 。 自然 公園 ・鳥 獣 保 護 区 と生 息 情 報 の 関連 を み る と、 自然 公園 の あ る メ ッ シュの う
で 、 メ ッ シュ内 に鳥 獣 保 護 区 の あ る メ ッ シュで は1 5 . 6 % で生 息 情 報 が あ る。
ち2 6 . 1 材
4 ) 標 高 区分 と植 生
前 項 で 分 析 した環 境 項 目 は それ ぞれ 相 互 に関 連 を持 って い る と考 え られ る。 例 え ば 、低
標 高 地 で は人為 的 な土 地 利 用 ( 住宅地 、耕 作 地 な ど) が 多 く、高 標高 地 ほ ど 自然 植 生 域 の
比 率 が 高 い こ とが考 え られ る。 このた め 、分 析 した 環境 項 目 の相 互 間 の うち、関 連 が 強 い
と考 え られ る標 高 区分 と植 生 タ イ プの 出現 状 況 につ いて それ ぞれ の メ ッ シュ コー ドの マ ッ
チ ン グを と って 分 析 した。 図 I l l - 4 は 、標 高 区分 別 の植 生 タイ プ 出現 メ ッ シュ数 の 絶 対 数
を じめ した もの で あ る。植 生 タイ プ と して は人工 林 が 多 く、 人工 林 は どの 標 高 区分 に も出
現 す るが 標高 0 - 1 9 9 m で
は耕 作 地 も多 い 。 標高 6 0 0 m 以上 で はモ ミツ ガ林 とブ ナ林 が 出現
して くる。
4.ま
とめ と今 後 の 課 題
紀 伊 半 島 の ツキ ノ ワ グマ 生 息 域 は奥 美 濃 一北 陸地 方 か ら京都 ・兵 庫 北 部 にか けて の 分 布
域 とは中 京 一京 阪 神 間 で分 断 され 、孤 立 した分 布 域 とな って い る。 紀 伊 半 島 の現 在 ( 1 9 8 0
年 代 ) の ッキ ノ ワ グ マ生 息 情 報 を標 準 メ ッ シュ ( l k 冊メ ッ シュ) 情 報 化 す る と、計 1 2 5 9 メ
ッ シュで 生 息 情 報 を 得 たが 、生 息 域 は1 9 7 0 年代 に比 べ縮 小 して い る。特 に 、奈良 県 南 部 の
中央 部 や和歌 山 県東 部 域 と南 部 で の 生 息 情 報 が 減 少 して い る。 残 され た生 息 域 は 、奈 良 県
∼53-
117)
E コ そり他 ( H ・
。
ン
イ
ル
明芽林 ( N = 6 6 7 )
匿ヨ
メ ツシ ユ数十
1郷)
Eコ ミズナラ(N二
N=325,
Zタ ブナ林て
霞郵 モミツガ`N宅轟)
,
厖物 マッ林(N=33■
ロヨ 草原(N=第,
5150)
麗盟 人工林(N二
Eコ 耕作地(N=革1)
屋ヨ 住宅地(N=17い
0-1
2-3
3-9
10-11
14く
12-19
標高 くX100m)
図 III-4 紀 伊半島調査地域 における標高 と植生タイプの関連
(植生凡例 の ( )の 中は各 タイプの出現 メ ッシュ数を示す)
一三重県境域 の台高山脈 と奈良 県 の大峰山脈 に集中 して い る。県別 の生息情報 メ ッ シュ数
の配分 をみると、三童 県 が 5 4 5 メッシュ く全生息情報 の4 3 . 3 め 、奈良県 5 6 0 メッ シュ ( 4
5,6路
) と この 2 県 で大半 を しめ る。
捕獲数 の推移 をみ ると、第 2 次 大戦前 は年平均 をとると奈良県 が もっと も多 くついで三
重県で多か った。戦後 も3 県 の うちでは奈良県で の捕獲 が多 いが 、捕獲数 の多 い ピー クは
昭和 3 0 年代前後 と昭和4 5 年前後 に 2 度 あ らわれて い る。近 年 は有害獣駆除 による捕獲 が増
加 して い るが、それは箱 ワナの導入 によって もた らされた もの と考 え られる。
紀伊半島調査地域全体 として は、標高 6 0 0 冊
以下 のほ標高地 が約 7 0 X 、メッシュ内森林面
積率 3 9 % 以下 のメ ッシュが 3 4 え
を しめ、植生 タイブと しては人工林 が約 6 4 拷
と多 くを しめ
る。 生 息情報 と生息環境 の椋準 メ ッ シュでの関連分析か らは、紀伊半島 ではツキノワグマ
の生息情報 は標高 6 0 0 m 以上、森林面積率 9 0 括
以上 、な どの環境区分 に多 い ことが明 らかに
な った。植生 タイブ としては、生 息情報 の絶対数 は人工林で多 い が生 息情報確認率 はプナ
林、 モ ミッガ林 などで高 い。
紀伊半島 にお けるツキノ ワグマ生息域 の減少 はこの地域 の地域個体群の生息 数減少 を反
映 した もの と見 な して よい。紀伊半島 の ツキノワグマ個体群 の持統 のためには、現在 もっ
ともまとま った分布域 を示 している奈良県南西部 と奈良 一三童県境 の生息域を核 に、生息
-54-
環境 の 保全 と捕 獲 ( 狩猟 と有 害 獣駆 除 ) の 適 切 な管理 を行 って い く必 要 が あ ろ う。 特 に 、
捕 獲 の うち多 くを しめ る有 害 獣 駆 除 につ い って はそ の駆 除 根 拠 と して の林 業 被 書 等 の 実 態
の正 確 な把 握 と、地 域 個 体 群 の 存 続 へ の悪 影響 を最 小 限 にお さえ る こ とを 目的 と した 林 業
被 害 の 有効 な 防除 方 策 の 導入 に努 め る必 要 が あ る。 また、狩 猟 ・有 害 獣駆 除 に よ つて 捕 獲
され た 個 体 の 分 析 お よび その 他 の 生 息 情 報 の解 析 に よ る個 体 群動 向 の 的確 な把 握 に努 め る
べ く行政 面 で の 体 系 的 な体 制 整 備 も急 が ね ば な らな い。
引 用
文
献
一
環 境 庁 ( 1 9 7 3 ) 自 然 環 境 保 全 基 礎 調 査 動物 分 布 調 査 報 告 書 ( 哺乳 類 ) 一 全 国 版 、環 境
庁 :1-91.
環 境 庁 ( 1 9 8 0 ) 自 然 環 境 保 全 基 礎 調 査動 物 分 布 調 査 報 告 書 ( 哺乳 類 ) ― 全 国版 ( その2 ) 一、
ー
く花 井 正光 、 「ツキ / ワ グ マ の 分 布 につ いて 」 ; 6 9 - 8 6 ) 、 日本 野 生 生 物 研 究 セ ン タ
物 分 布 調 査 報 告 書 ( 晴乳 類 ) . 二
重県 :1-39.
奈 良 県 ( 1 9 7 8 ) 動 物 分 布 調 査 報 告 書 ( 哺乳 類 ) . 奈
良 県 :1-30.
三重県 (1978)動
日本 野 生 生物 研究 セ ンタ ー ( 1 9 8 5 ) 特
定 自然 環 境 地 域 保 全管 理 計 画 策定 調 査 報 告書 .
昭 和 5 9 年度 環境 庁 請 負 調 査 : 1 - 1 5 0 .
日本 野 生 生物 研 究 セ ンタ ー ( 1 9 8 7 ) 森 林情 報 の整 備 に関 す る調 査 報 告 書 ( I ) . 国
土庁
委 託 調査 : 1 - 1 7 6 .
林 政 総 合調 査 研究 所 ( 1 9 8 6 ) 林 業 地 域 形成 追 跡 調 査 報 告 書 : 1 - 2 0 0 .
柴 田叡 式 ・小 船 武 司 ( 1 9 8 4 ) 紀 伊 半 島 に お け る ツキ ノ ワグ マ につ いて. 森
林 防疫 、
33(10):6-11.
富 田靖 男 ( 1 9 7 9 ) 二
重 県 の哺 乳 動 物 相 . 二
重 県立 博物 館 研 究 報 告 、 自然 科 学 第 一 号 :
5-68
富 田靖 男 ・島地 岩 根 ( 1 9 8 2 ) 尾 鷲 市 お よび 周辺 地 域 の 哺 乳動 物 相 . 尾
驚地域野生生物調
査 報 告 書 : 8 5 - 1 4 1 . 尾 熊 地 域 野 生 生 物 調 査 会 ・二 重 県 自然 科 学 研 究 会 、
冨 田靖 男 ( 1 9 8 9 ) 二 重 県 に お け る ツキ ノ ワグ マの 分 布 な らび に捕 獲 数 の 推 移 につ いて .
ツキ / ワ グ マ生 息状 況 調 査 報 告 書 : 1 - 2 4 、二 重 県 農林 水 産 部 林 業 事 務 局 .
和歌山県 ( 1 9 7 8 ) 動
物 分 布 調 査 報 告 書 ( 哺乳 類 ) . 和
…55-
歌山県 : 1 - 2 7 .
【llI草西 日本 の ツキノワグマ地域個体群生息状況基礎調査】
3 . 西中 国 地 域
米 国
政 明
・
1.調 査地域 と調 査方法 の概要
(1)西 中国山地 の ツキノワグマの生息概要 と調査 目的
一
西中国地域 の ツキノ ワグマ分布域 は、島根 広島県境 の中西部 か ら山 田県東部 地域 にか
けての西中 国山地域 に広が る。 島根 ―広島県境東部 、鳥取県西部 、岡山県北部 の地域 には
現在 ツキノ ワグマの生息 は見 られな い。西中国山地 の分布域 は、九州 の ツキノワグマ (環
境庁 、1989:自 然分布 を疑 問視す る見解 もあ る)を 除 き日本列島 の最西部 の個体群 となる
(図 I-2参
照)。 西中国山地分布域 の 3県 で は、1970年代 か らツキノ ワグマの捕獲数 が
それ まで の 3県 あわ せて20頭/年前後 が、多 い年 には100頭を越 えるまで増加 して きた。西
中国山地 の ツキ ノワグマ生息状況基礎調査 で は、 このよ うな分布 の特徴 と捕獲数 の推移 を
踏 まえて、分布域 の推移、現在 の分布域 の特徴、市町村別捕獲数、 および波害実態 な どを
明 か にす ることを目的 と して調査を進 めた。
(2)調 査地域
西中国地域 の調査地域 としては、島根県、広島県、山 田県の 3県 域 を広域調査対象地域
と して、生息 状況 と生息環境 の時代的変化 を分析 したが、現在 の生息域、捕獲地点 、被害
発生地点 な どとそれ らの情報 の ある地点 の環境 の特性分析 は、生息情報 の集中 してい る江
川以西 の 、島根 ―広島県境 を中心 とす る特定調査地域 に限 って行 った (図 III-6参 照)。
現地痕跡調査 は島根県西部 の安蔵寺山、島根 一広島県境 の天杉連峰、高岳で行 った。
(3)調 査方法
西中国地域 3県 全域 の生息状況 とその時代的変化 の分析 は、統計資料、古文書 による動
物分布情報 の分析資料 などのまとめを中心 に行 った。特定調査地域 の生息情報、捕獲地点
情報 な どは、本調査 を通 じて行 った聞 き取 り調査結果 に各県 の行政資料 な どを加 え、情報
を標準地域 メ ッシュ (lk回メ ッシュ)情 報化 して分布情報図 を作成す るとともに、環境 と
の関連分析 を行 った。特定調査地域 の生息環境情報 は、国土数値情報 と環境庁 の 自然環境
1日 本野生生物研究 セ ンター
-56-
保全基礎調査資料 を もとに分析 した。
捕獲数 は鳥獣関係統計 と各県 の地方事務所 の資料 によ つた。 ツキノ ワグマ による農作物
や養蜂 などへ の被害発生状況 は、行政機関 の被害報告資料 の整理 と養蜂組合員 を対象 に実
施 した アンケー ト調査 の とりまとめか ら行 った。狩猟 と保護管理 は猟友会 を対象 に実施 し
た クマ猟 の実態 ア ンケー ト調査結果 の まとめ と、狩猟管 理 の変化 の整理 か ら行 った。
2.西 中国山地 の ソ手ノワグマの一般生産 と狩猟
一
現地調査や資料調査分析結果 について述 べ る前 に、西中国山地 の ツキ ノワグマの 般生
態 と生息 環境 の変化 について その概要 をま とめてお く。。
(1)西 中国地域 の ツキノワグマの一般 生態
西中国地域 の ツキノ ワグマの一 般生態 について、聞 き取 り調査結果 と既存資料 (島根県 、
1980,田 中 、 1982)か らと りま とめ る と次 の よ うにな る。
審
ツキノワグマ はキプ シの花 が咲 くころ ( 3 月 下旬 か ら4 月 上旬) 冬 眠穴か ら出て く
る。子連 れの クマが 出て くるのはやや遅 い。早春 か ら初夏 まで は、比較的奥山 で行
動す る。 草本類 や前年 の秋 の堅果を主 に採食す る。 交尾 は初夏 に行 われ る。
夏
低標高 地 に も出没す るよ うになる。 ア リ類 や ハ チ類 な ど昆虫類 の採食 が 多 くなる。
養蜂被害 も起 こる。夕方 か ら夜間 の行動 が多 いが 日中 もかな り行動す ることがある。
秋
ミズナ ラ、 コナ ラ、 プナな どの堅果の採食が主 とな る。 クマ欄 がプナや ミズナ ラの
木 に形成 され るよ うにな る。 カ シ類 の堅果は ほ とん ど採 食 しな い。 ク リ園 に出没 し、
ク リに被害 を与 え ることがある。 カキ も被害 を受 ける ことがあ る。
初冬 : 1 2 月 上旬 ころ冬眠 に入 る。冬眠穴 には、 ミズナ ラ、 トテの木 な どの大木 の樹洞
や、岩穴が利用 され る。冬眠穴 の周辺 の本 にクマの ツメあ とが残 され ることが 多 い。
出産 は冬眠中 に行 われ る。
このような生 簿 は、冬眠明け時期 が少 し早 い ことを除 き東 日本 の ツキノワグマ との連 い
は少 ない。
( 2 ) 生 息環境 と狩猟 の変化 の概要
西中国地域 は広島市 を中心 とす る瀬戸内海沿岸域 を除 き、全国有数 の過疎地帯 とな って
い る。昭和 3 0 年代半 ばまで は炭焼 きと山間部で の農業 が さかんに行 われて い た。 その後 の
燃料革命 による炭焼 きの衰退 と農業 ・産業構造 の変化 によ り、山村部を中心 に人 日の流 出
・都会集中 がお こ り、山奥 の集落 の廃村 、耕作地 ・放牧地 の放棄 も進行 した。 一 方、薪炭
林 は昭和 3 0 年代半 ばか らパ ルプ原料 のための伐採 あるい は針葉樹植林地 へ の転換 が行 われ
林相 の変化 が進 んだ。高標高地部 のプナ 自然林 の伐採 、林力増強 のため と しての人工林転
換 も行なわれて きた。道路 、林道 の整備 ・改良 や治山 ・治水 のための河川改修 も昭和4 0 年
-57-
代 後 半 か ら広 く行 わ れ て い る。 中国縦 貫 道 が 昭 和 5 8 年 ( 1 9 8 3 ) に 開通 した。
西 中 国地 域 にお け る ツキ ノ ワグマ の捕 獲 数 の 変 化 につ いて は後 に詳 し く分 析 す る。 こ こ
で は ツキ ノ ワグ マ猟 に係 わ る昭 和 3 0 年代 以 降 の 狩 猟 の 時 代 的変 化 の概 要 を ま とめて お く。
昭和 3 0 年代 か ら昭和 4 0 年代 前 半 まで は、狩 猟 の 「大衆 化 」 が 進 み、 狩 猟 者 人 口 は増 加 した。
林 道 な どの整 備 、車 の増 加 に よ り、 それ まで の 専 門 猟 師 に よ る平 日の 奥 山猟 か ら、休 日の
日帰 り猟 化 が進 ん だ。 昭 和 4 0 年代 前 半 に は、 ツキ ノ ワグ マ猟 で 「箱 ワナ 」 が 導 入 され た。
昭和 5 0 年代 に入 る と、銃 砲 規 制 の 強化 もあ って 、狩 猟 者 人 口 は減 少 に転 した。 猟 は イ ノ シ
シ猟 を中心 に 商業 化 が 進 ん だ 。 ツキ ノ ワグ マ もイ ノ シ シ と同 様 に 、捕 獲 個 体 を その ま ま業
者 に売 却 す る 「丸 太 売 り」 が 増 え た。 売 却 され た ツキ ノ ワグ マ は、冷 凍 の ま ま イ ノ ン シ肉
の 流通 ル ー トに乗 って 取 引 され る こ とが 多 くな った 。 この よ うな生 息 環 境 と狩 猟 状 況 の 変
化 は、高 橋 ( 1 9 7 9 ) も 指 摘 して い るよ うに本 地 域 の ツキ ノ ワグ マ個 体 群 の 生 息状 況 に強 い
影 響 を 及 ば して きた と考 え られ る。
3 . 生 息 環境 と生息 状 況 の 時代 的変 化
(1)分
布域 の 時代 的変 化
風 土記 な どの古 文書 か ら求 め た く千葉 、 1 9 6 9 ; 島 根 県 、 1 9 8 0 ) 、 西 中 国地 域 3 県 に お け
る江戸 時代 後 期 ( 1 9 世紀 前 半 ) の ツキ ノ ワグ マ生 息 情 報 を 図 I l l - 5 に 示 した。 ま た 、 自然
環 境 保 全 基 礎調 査 ( 島根 県 、 1 9 7 8 : 広 島 県 、 1 9 7 8 ; 山 田県 、 1 9 7 8 : 環 境 庁 、 1 9 7 9 、1 9 8 0 )
に よ る 5 k 冊メ ッシュ レベ ル で の 明治 , 大 正時 代 以降 の生 息 情 報 を 図 配 - 6 に 示 した。 江戸
・
時 代後 期 の生 息 情 報 図 は、現 在 の 島根 県 東 都 域 ( 旧出雲 国 域 ) と 山 口県 域 ( 周防 長門 国
域 ) に つ いて は郡 単 位 で生 息 情 報 の 有無 が 求 め られ情 報 密度 が 高 い。 しか し、広 島 県域 は
旧安 芸 ・備 後 国 を合 わ せ て の生 息 情 報 で あ り、島根 県 西 部 の 旧石 見 国域 で は 後述 す る よ う
に現 在 ツキ ノ ワグ マの 生 息 中心 域 とな って い る邑知 郡 、那 賀 郡 、美濃 郡 域 の生 息 情 報 記 載
が無 い な ど と、江戸 時 代 の 生息情 報 に は地 域 的 に情報 密 度 の粗 密 が あ り、明治 ・大 正 期以
図
降 の生 息 情 報 ( 図 I l l - 6 ) と 全域 につ いて 対 比 す る こ とはで きな い。 だが 、図 I l l - 2 - 1 と
Ill-2-2の
比 較 か ら江戸 後期 か ら明治 ・大 正 期 にか けて の 西 中 国 地 域 に お け る ツキ ノ ワ グ マ
の 分 布 域 の変 化 と して 次 の 2 点 が 指 摘 で きよ う。
1 ) 山田県域 にお け る江戸 時 代 の分 布情 報 ( 現在 の錦 町北 東 域 と徳 地 町 か ら鹿 野 町域 に相
当) は 、現 在 の分 布 図 と大 きな差 はな く、 江戸 時 代 後 期 か ら山 口 県域 に お け る ツキ ノ
ワ グマの 分 布域 は 限定 され て い た と考 え られ る。現 在 の 山 田 県域 の生 息 情 報 の うち西
部 の 豊 浦郡 域 の生 息 情 報 は、T 時 的 な 放 浪 個 体 の生 息 情 報 と考 え られ る。
2 ) 江戸 時 代 後 期 の生 息情 報 と して 、島根 県域 で は現 在 の 出雲 市 か ら安 来市 域 にか けて生
息 報 告 が み られ る。 しか し、現 在 ( 1 9 7 0 年代 ) の 分 布情 報 はな く、 江戸 時 代 後 期 か ら
明治 ・大 正 期 に 入 る以 前 に本 地 域 で は ツキ ノ ワグ マ が 絶 滅 した と考 え られ る。
-58-
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図 I I I - 5 江 戸 時 代 後 期 の西 中 国地 域 にお け る ツキ ノ ワグ マ 分 布 情報
( 野生 生 物 研 究 セ ン タ ー 、 1 9 8 7 )
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図 I I I - 6 西 中 国地 域 の ツキ ノ ワ グマ の 現 在 の 分 布 域 ( 5 k n メッ シュ : 第 2 回 自然
環 境 保 全基 礎 調査 結 果 ( 環境 庁 、 1 9 7 9 ) よ り)
-59-
( 2 ) 捕 獲 数 の推 移
一
西 中 国地 域 の ツキ ノ ワ グマ 個 体群 の 置 か れ て い る状況 を知 る手段 の つ と し して 、捕 獲
・
数 の分 析 が重 要 で あ る。 こ こで は、 まず戦 前 と戦 後 に分 けて年 代 別 県 別 の 捕 獲 数 の 推 移
を分 析 す る。続 い て各 県 の地 方 事 務 所 別 の 捕 獲 数 を 検討 した い。
1 ) 戦 前 の捕 獲 状 況
西 中国 3 県 にお け る大正 1 2 年 か ら昭 和 1 5 年 まで の 2 0 年 間 の ツキ ノ ワグマ捕 獲 数 を 、
表 II-10に
示 した。 戦前 の 捕獲 状 況 の特 徴 と して つ ぎの 4 点 が指 摘 され る。
1 ) 猟期 中 の捕 獲 と有害 獣駆 除 捕 獲 が 区分 され て 記 載 され始 め た昭 和 4 年 以降 も有 害 獣
駆 除 に よ る捕 獲 は見 られ ない。
2 ) 単純 平 均 で は戦 前 の 2 0 年 間 の 捕獲 数 は 、広 島県 が 5 . 6 張/ 年 で 島根 県 の4 . 2 頭/ 年 よ
りや や多 い。 これ に対 して山 田県 で は1 - 2 頭 の捕 獲 が 2 0 年 間 の うち 6 年 分 につ い
て 見 られ るだ けで あ る。
3 ) 年当 りの捕 獲 数変 動 で は島根 県 で の2 2 頭 ( 大正 1 2 年) を 例 外 とす る と、広 島 県 で は
1 0 頭前 後 、島根 県 で は5 頭前 後 を 多 い年 と して 、捕 れ な い年 や 1 - 3 頭 / 年 に と どま る
年 も多 い 。
4 ) 以上 よ り、捕 獲 数 の 多 さで は広 島 、島根 、山 口の順 とな る。
表 lll-10 西
県
中 国地 域 3 県 にお け る第 二 次 大 戦 前 の ツキ ノ ワグ マ捕 獲 数 く狩猟 統 計 )
T12 T13 T14
Si
S2
S3
大
正
・昭
和
年
S4
S5
S6
S3
S9 S10 Sll S12 S13 _S14 S15
S7
度
9
1 一 〇
晨
圏
山口
計
キ 誤 記 載 と考 え るた め計 で は除 い た
2 ) 戦 後 の 捕 獲状 況
次 に昭 和 2 1 年 以 降 の戦 後 の 捕 獲状 況 につ いて 見 る。 図 I I I - 7 に、昭 和 2 1 年
-62年
間 の 県 別 の 捕獲 数 の推 移 を狩 猟 と有 害 獣駆 除 別 に そ の変 化 を示 した 。 図 I I I - 7 か ら、西 中
国地 域 にお け る ツキ ノ ワグマの 戦 後 の 約 4 0 年 間 の 捕獲 数 の 推 移 につ いて 以 下 の傾 向 を 見
る こ とが で きる。
1 ) 昭和 3 1 二 3 5 年 期 以降 か ら島根 、広 島両 県 で の捕 獲 数 は増 加 し続 け、昭 和 5 1 5 5 年 期 まで この増 加 は続 く。 山 田県 で の 捕 獲 数 は どの 期 間 に お いて も島根 、広 島
両 県 よ り少 な い もの の 、他 の 2 県 と同 様 、昭 和 4 5 年 以 降 増 加 傾 向 を 示 して い る。
-60-
で あ った。 この頭 数 は 、
2 ) 3 県 の 合計 捕 獲 数値 が 最 大 とな る の は昭 和 5 3 年 で 1 3 1 頭
増 加 が 始 ま る昭 和 3 1 - 3 5 年
期 で の 最 大 値 2 0 頭 の6 . 5 倍に も及 ぶ もので そ の増 加
ぶ りが 目 を ひ く。
3 ) 有害 獣駆 除 に よ る捕 獲 も昭 和 4 0 年代 に入 って 急 増 し、 そ の捕 獲 数 の 伸 び 率 は狩 猟 に
よ る もの よ り大 き い。
4 ) 3 県 が いず れ も昭 和 5 0 年 前 後 に 戦 後 の最 大捕 獲 数 を示 し、 その 後 捕 獲 数 は減 少 に転
じて い る。
猟 期 捕 獲 十 有 害 獣駆 除
猟期 捕察
隠
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刀ロ
図 田- 7 西
年
度
中 国 3 県 にお け る ツキ ノ ワ グ マ捕 獲 数 の推 移 〈昭 和 2 1 - 6 2 年 度 )
( 捕校 数 は 5 年 間 移 動 平 均 の 最 初 の 年 度 の 値 と して 表 記 )
-61-
昭 和 4 0 年 代 以 降 の捕 獲 数増 加 の 同 時 性 は、西 中 国地 域 が 小 規 模 で 隔 離 され た ッキ ノ ワ
グ マ の生 息 地 で あ る こ と と無 関 係 で な さそ うで あ る。 とは言 え、捕 獲 数 の一 連 の 推 移 を も
た ら した 要 因 の究 明 は容 易 で はな い 。 後 に述 べ る項 で もさ らに分 析 す る各種 の生 活 要求 を
供給 す るハ ビタ ッ トの変 化 や捕 獲 自体 の 個 体 群 へ の 影 響 、捕 獲庄 の増 減 な どにつ い て の 検
討 が 必 要 で あ る。
3 ) 近 年 の地 方 事 務 所 別 の捕 獲 数
ツキ ノ ワ グ マ の 捕 獲 は、対 象 と した 3 県 の い ず れ にお いて も全 県域 にわ た って 捕 獲 が 行
わ れ て い るわ けで な く、近 年 は、 島根 県 で は 県 西 部 、広 島 県 で は県西 北 部 、山 田 県 で は 県
東 部 地 域 で の捕 獲 に限 られて い る。 県 内 に お け る捕 獲 密 度 の 地域 差 を検 討 す る材 料 と して 、
表 回-11に
は 資料 が 求 め られ た近 年 の 7 年 間 ( 昭和 5 6 - 6 2 年 度 ) の 地 方事 務所 別 、年 度
別 捕 獲 数 の推 移 を示 した 。 ツキ ノ ワ グ マの 捕 獲 が あ る 3 県 の l o 地 方 事 務所 の うちで は、
島根 県 の益 日地 方 事務 所 管 内 にお け る捕 獲 が 毎 年 、西 中 国地 方 全体 の 捕 獲 数 の 1 / 3 から1 / 2
を 占 め て 最 も多 く、次 い で 島根 県浜 田地 方 事 務 所 あ る い は広 島県 可 部地 方 事務 所 管 内 で の
捕 獲数 が 多 い。 図 回 - 8 に 、地 方事 務 所 別 の 昭 和 5 6 - 6 2 年 間 の ッキ ノ ワグマのべ 捕 獲 数 を
地 図情 報化 して 示 した。
刀牛 ︱ ︱
/
,
ヽ
1
一ィ
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可 部
61(23)
i(3'16)
` 笹山'ぃ
だ
\'(1;瞥
i7o)/防府
i3(,)
図 田 ∼ 8 西 中国地域 3 県 の地方事 務所別 ツキ ノワグマ捕獲数 ( 昭和 5 7 - 6 2 年度間 の狩猟
と有害獣駆除捕獲 の合計、 ( ) の中 は有害獣駆除捕獲 の みを示す ( 内数) )
-62-
表 III-11 西
1〕(昭和 56-62年度)
中国地域 3県 の地 方事務所別 ツキノ ワグマ捕獲数 の推移
(頭 )
昭
地方
県
1 5 ( 8 )
3 ( 2 ) 1 ( 0 ) 2(2)6(1)
0
2(2)r(1)
川 本
0(4)
3 ( 0 ) 4 ( 2 ) 5 ( 0 ) 3 ( 2 ) 7(3)2(1)
浜田
10(3)
18(11)21(12)
1 4 ( 3 ) 3 ( 3 1)8 ( 6 )
15( 7)
104(50)
益田
23(3)
29(16)29(13)
22(6)27(9)
19( 5)
13( 3)
167(60)
島根 小 計
可部
0
3(0)0
44(15)
16(7)
55(20)55(28)
44(16)39(14)
3 ( 0 ) 4 ( 3 ) 7(0)13(1)
二次
0
0
岩国
0
0
16(7)
0
防府
0
0
徳山
0
( 県外 者 捕 獲 )
0
3 県 合計
0
0
0
6( 0)
0
36(12)
322(130)
14(5)2)4(3)61(28)
7 ( 2 ) 2 ' 3 ( 0 ) 3 7 ( 6 )
0
1 ( 0 ) 1 ( 0 )
0
3 ( 0 ) 3 ( 0 )
1 ( o ) 2 ( 0 ) 0
1(1) 7(1)
0
0
2(1) 8(2)
3(
4 ( 0 ) 2 ( 2 ) 4 ( 2 ) 0
0
0
0
0
2 ( 0 ) 1 ( 0 ) 0
1 ( 0 )
山 口小 計
0
30(12)
1 0 ( 4 ) 1 3 ( 18 0) ( 1 ) 2 1 ( 42 1)( 7 ) 1 1 ( 3 ) 1 0 2 ( 3 4 )
0
萩
43(16)
7 ( 4 ) 9 ( 5 ) 3(1)3(3)
0
広 島小 計
3( 0)
0
広 島
( 県外 者 捕 獲 ) 0
口
度
計
( 県外 者 捕 獲 ) 0
広島
年
事務所
木次
島根
和
0
1
2 ( 0 ) 33 (〕 0 ) 3(
62(22)68(33)71(39)
1 ( 1 ) 4 ( 0 )
1 ( 0 ) 0
0
0
13(7)
0
1( 0)
0
1( 0)
5 ( 0 ) 6 ( 3 ) 3 ( 2 )3( 2)
59(17)66(21)78(25)
3(2)454(174)
1 ) ( ) の中 は有害鳥獣駆除 による捕獲数 ( 内数)
2 ) 広島農林事務所管内居住者 による捕獲 ( 猟期 3 頭) を 含 め ると可部 は1 7 頭
( 猟期 1 2 頭) と な り、広島 が4 頭 く猟期 2 頭) と な る
3 ) 鳥獣関係統計 では有害駆除捕獲 1 頭が記録 されて いるが 県資料 では不明
-63-
30(10)
表 Ill-12 島
1)ツキノワグマ捕獲数 の推移 (昭和 59-62年 度)
根県 ・広島県 の市町村別
( 頭)
昭和 年度
計
地方 事務 所 _市 町村
益 田市
美都町
0
1 ( 0 )
1 ( 0 )
1 ( 1 )
14(3)
0
0
0
1 ( 0 )
0
3(0)
1(0)
8 ( 3 )
9 ( 2 )
8(0)
ユ( 1 )
1 ( 0 )
5 ( 0 )
6(1)
54(12)
益田農林
匹見町
事務所
日原町
2 ( 0 )
0
津和野町
1(0)
2 ( 1 )
1(0)
0
0
2 ( 1 )
3(2)
17( 8)
1 ( 0 )
3(2)
12( 4)
22(4)
103(27)
柿木村
2(2)
0 ( 3 )
4 ( 0 )
六 日市町
1 ( 0 )
3 ( 1 )
4 ( 1 )
小計
浜 田農林
事務所
可部農林
事務所
15(4)
22(6)
27(9)
19(5)
0
13(3)
? ( 0 )
0
9 ( 1 )
4 ( 1 )
5( 0)
浜 田市
4 ( 0 )
1(0)
金城町
2 ( 0 )
I ( 1 ) 10(3)
? ( 6 )
旭町
3 ( 0 )
6(2)
1(0)
? ( 1 )
4 ( 0 )
? ( 3 )
弥栄村
計
刀ヽ
5 ( 0 )
0
7(3)
? ( 0 )
3 ( 0 )
? ( 3 )
14(0)
3 ( 3 )
18(6)
15(7)
11(6)
18(6)
?(16)
73(22)
加計町
0
,
3 ( 0 )
0
3 ( 3 )
?
筒賀村
0
9
1 ( 0 )
0
3 ( 3 )
?
戸河内町
0
?
7 ( 2 )
0
2 ( 2 )
?
芸北町
1 ( 1 )
?
1 ( 1 )
1 ( 1 )
3 ( 1 )
?
0
?
2(2)
1(1)
0
?
千代 田町
0
9
0 ( 0 )
1 ( 1 )
0
?
豊平町
2 ( 0 )
,
0
1(0)
2 ( 0 )
小計
3 ( 1 )
3 ( 3 )
大朝町
計
39(7)
43(15)
14(5)
51(16)
4 ( 3 )
42(21)
32(13) 53(19)218(70)
1 ) 益田 ・浜田 ・可部 の 3 地 方事務所管内 の市町村 について 示 した
2 ) ( ) の中 は有害獣駆除 による捕獲数 ( 内数)
-64-
13(9)
?
4 ) 市 町村別 捕獲数
上記 の よ うに、西 中国 3 県 の 中 で も地方事 務所別 で は、 島根 県益 田農林 事務所 、同浜 田
農 林事務所 、広 島 県可部農林 事務所管 内 で の ツキ ノ ワグ マ捕 獲数 が 多 い。 昭和 5 6 - 6 2 年度
の 7 年 間 の 3 県 にお け る捕獲数 合計 4 5 4 頭の うち、 この 3 事 務 所管 内 の捕獲 数合計 は3 3 2 頭
と、約 3 / 4 を占 め る。 捕獲 地域 の特性 を明 らか にす るため、昭 和 5 9 - 6 1 年
度間の 3 年 間
分 につ いて この 3 地 方事 務所管 内 の市 町村別 の捕 獲状 況 を検討 した く表 I l l - 1 2 ) 。 市 町
村 別捕獲数 で は、島根 県匹見町 におけ る捕 獲 が極 めて 多 く、次 いで 島根 県 の金城 町 、柿 木
村、 旭 町 、広 島 県 の戸 河内 町 な どでの捕獲 が 多 い。
4 , 現 在 の 生息 域 と生息環 境
( 1 ) 生 息情 報 の分布
西 中国地方 にお け る現 在 の ツキ ノ ワグマの分 布域 を知 るた め昭和 5 0 年 ( 1 9 7 5 年) 以 降 の
生 息情 報 を収集 した。生 息情報 は次 の 4 つ の 区分 で記録 した。
1 ) 捕獲 地点
2 ) 被害 発生 地点 ( 養蜂被害 や果樹 園被害 な ど発生 地点 )
3 ) 確実 あ るい は周年生息 す る とされ る地域
4 ) 推定生 息域 あ るい は季節的 に生 息す る とされ る地域
捕 獲地点 は行政 資料 およ び ハ ンター か らの聞 き取 り調 査 か ら求 め た。 被害発生地点 は、
聞 き取 りと昭 和 6 1 年度 に養蜂組 合 を 対象 に実 施 した 「ツキ ノ ワグマ に よ る養蜂被害 ア ンケ
ー ト調 査」結 果 を と りま とめた。確 実 ( 周年) 生 息域 と推 定 ( 季節 的) 生 息 域 につ いて は、
聞 き取 り調 査 に加 え島根 県林政課 の ッキ ノ ワグマ生息 区域 等調 査 〈昭 和 5 8 年度 ) 、 広 島県
ツキ ノ ワグマ生息 調 査 ( 昭和 6 0 年) 資 料 を 引用 して求 めた。 い ず れ の生息情 報 も、標 準 メ
ッ シュ ( l k m メッ シュ) 情 報化 して地 図情 報 と し、 また環境 との関連分 析 を行 った。 図 l l l
- 9 に こ う して 求 め た西 中国地域 におけ る現在 ( 昭和 5 0 年以降 ) の ツキ ノ ワグマの生息 情
一
報 分布 を示 した。 島根 ―広 島 県境 の 中国山地 を中心 に分 布 して い るが 、島根 商西 部 山 口
県境 を西 端 と して分布域 は途 切 れて い る。調 査地域 にお け る標準 メ ッ シュによ る生息情 報
と して は計 1 0 6 5 メッ シュで生息 情 報 を得 た。 その生 息情 報 の 県別 出現 状 況 を表 I I l - 1 3 に
示 した。生 息情 報 の大 半 ( 7 8 2 メッ シュ、全体 の7 3 , 4 % ) は 島根 県域 で 得 られ た。
-65-
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-66-
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掌
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/
中 国 調 査 地 域 に お け る 県 別 ツキ ノ ワ グ マ 生 息 情 報 出 現 数
表 Ill-13 西
( l k n メッ シ ュ数 )
生息情報 あ り
小 計 (確認 率 %)生
捕獲 被 害 生 息情報
県
島根
広島
山回
39
17
628
4
92
計
110
881
161
息情報な し
計
7 8 2 ( 2 7 . 8 2)0 2 8
1801
186( 9,4)
9 7 ( 8 , 7 ) 1086
2810
1987
4915
5980
1065 (17.8)
1183
( 2 ) 生 息環境 の分析
生息情報 と同様 、標準 メ ッシュ レベルで西中国調査地域 の環境 を分析 した。分析 は、
ぎの 6 項 目について以下 の資料 か ら求 めた。
聴 目
内
容
元
資料 く 作成笙 壁と ___
1 . 植生
んンュ内最 大 面 積 植生 第
2 . 標高
んシュ内平 均 標 高
3 . 森林 面 積 率
4 . 耕作 地 面 積 率
ん
国
土 数 値 情 報 土地 利 用 フアイ ル ( 1 9 7 6 )
国 土 数 値 情 報 土 地 利 用 フ7 イ ル ( 1 9 7 6 )
ん ンュ内 耕作 地 面 積率
国
土 数値 情 報土 地 利 用 フアイ ル ( 1 9 7 6 )
国 土 数値 情 報 道 路 フアイ ル
道路 (本)/れ ンュ
6.道 路 密 度
表 田-14に
国土数値情報 地形 フアイル (1983)
シュ内森 林 面 積 率
5。
建 物 用 地 面 積 率 ん ン■内建 物 用地 率
1回 自然 環 境 保 全基 礎 調 査 (1976)
(1978)
、各環 境 項 目 の それ ぞれ の 環 境 区分 が 島根 、 広 島 、山 口の 3 県 全 域 に お い
て l k m メッ シュ数 と して 占 め る割 合 と、 ツキ ノ ワ グ マ生 息 情 報 を収 集 した特 定 調 査 地 域 が
占 め る割 合 を比 較 して示 した。 6 項 目 につ いて 3 県 全 体 か ら調 査 地 域 を 取 り出す と以 下 の
よ うな特 徴 が 見 られ た。
1 ) 植生 : 3 県 全 体 と して は マ ツ林 と糾 作 地 が 多 いが 、調 査 地 域 は コナ ラ林 が 多 い 。 ブナ
域 自然 植生 もわ ず か なが ら出現 す る。
2 ) 標高 : 調 査 地 域 は標 高 6 0 0 m 以上 の高 標高 地 が7 7 1 % と 、 3 県 の 全 体 の 中 で 高 標高 地 の
多 い ところ に 位 置 して い る。
3 ) 森林 面積 率 : 調 査地 域 に は高 い森林 面 積 率 を 持 つ メ ッ シュの 比 率 が 高 い 。
( 3 ) 標 高 と植生
現 存 植 生 は温 度 お よ び降 水 量 の 標 高 に 伴 う変化 と土 地 利 用 の 影 響 を受 けて標 高 に依 存 し
た 変 化 を示 す と考 え られ る。 図 l l l - 1 0 に 、標 準 メ ッシュ分 析 に よ る調 査 地 域 の 標高 別 の
-67-
中 国 3県 全域 と特 定 調 査 地 域 の環 境 構成 お よ び生 息 情 報 を え た メ ッ シュ
表 IIl-14 西
(l
(%) 峰霧.(%)
) 守鋳ェ
繋粉与就あ
堀螢ゅ晴覗
林
、
タ
林 ・
為 地酢 ‰ .ぴ
生宅作工原 ツデナ ナの計
植住耕人事 マプメ コそ
く
襲島と分
ッ シ ュ数 )
knメ
5 3 2 ( 2 . 7 4) 9 ( 0 .
696(11 6)
3706(19.0)
2468(12.6) 1081(18.1)
8 0 ( 0 4 ) 3 5 ( 0 .
9208(47.2) 2380(39.8)
4 8 ( 0 . 2 3) 0 ( 0 .
596(10,0)
803( 4.1)
2323(1149) 1025(17.1)
8 8 ( 1 .
408( 2.1)
19526 (100) 5980 (100)
(標高 im)
0-199
200-399
400-599
600-799
800-999
1000く
6 )
5 )
5 )
2(1.
28(25.
6 9 4 8 ( 3 5 .9 4 1 ( 1 5 .
2102(34.
6592(33.
1603(26.
4090(20.
1 5 5 8 ( 7 .9 4 0 ( 1 5 。
366( 6.
507( 2.
6 5 ( 1
9 2 ( 0 .
ゆ ⋮
( 森林 面 積 率 ;
く6 9
70-79
80-89
90-99
100
0 ( 0 . 0
18(24 3
1 1 ( 1 4 , 9
0 ( 0 . 0
9(12.2
0 ( Q . 0
1 7 ( 2 3 . 0
7
19(25。
0 ( 0 . 0
74 (100
8 )
路 機社
6(5.
2(1,
8 5 5 ( 1 4 . 42 0 ( 4 .
5 6 ( 5 ,
603(10.1
135(12.
1093(18.2
449(42.
2379(39.5
379(35.
1082(18.0
%
く耕 作 地 面 積 率
0
1-4
5-9
10-19
20く
2180(36.
1066(17.
857(14.
1005(16.
909(15,
0
(建 物 用地 面 積率
度
密
2 4
・ ¨ く 路
1 3 5
道
2 4
・ ・ く
0 1 3 5
計 1)
メ
本
ィ
ィ
,と
0 (36.
5'06(28.
6 5 6 ( 6 1 . 51(46.
4 0 ( 3 6 .
284(26,
15(13.
9 8 ( 9 ,
2 7 ( 2 .
4( 3.
3440(17.
3351(16.
19787(100)6017(100)
数︰
調 3
仲騨 ユ率 肋嫌 ︰麟 ヽ
鵬
フ地 シ積地 地 率 ︰く て
一査 ツ一
田作 い地 度高 し
デ調 メ地 耕低 用密 り と
の定 息作 ど の物 路 よ数
元特生 耕 な地 建道 % 内
め か O D め い
-68-
1065(100)
110(100)
74(100)
以下 、 ヨナ ラ林 は標高 0 - 6 0 0 冊、 ミズナ ラ
植生 タイプ 出現数 を示 した。 マ ツ林 は標高6 0 0 回
林 は標高 4 0 0 - 9 0 0 m で多 いことを図 l l I - 1 0 は 示 して い る。
メ ツヽ
ジ ユ狩 一
韓)
君調 その他 (n_―
コナラ(n・
1優る)
ロ
////4ミズナラいも弱 )
中
ブナ林 (Ⅲ30)
シ
マツ林 (2380)
歌
(卜35)
卜1081)`
田日 人工tホく
rle6)
騒調 耕作地 く
陣田 住宅地 く
いや)
2-3
4-5
6-7
標高 (X100m)
図 I - 2 - 6 西 中国調査 地域 における標高 と植生 タイ プの関連
( 3 ) 森 林環境 の変化 ( 林業指標)
生息環境 の時代的変化 と しては、土地 利用 、人口密度 、交通網 の変化 など様 々な項 目が
上げ られ るが、森林棲 のツキノワグマ に とって影響 の大 きい と考え られ る森林 ・林相 の変
化 につ いて林業指標 によ ってその時代的 な推移 をみて お きた い。表 I l l - 1 5 に 西中国 3 県
の代表的 な林業指標項 目を示 した。林野面積率 は 3 県 とも7 0 % 以 上 と高 いが 、人工林面積
率 は山 田県 のみ4 0 . 6 % と全国平均 レベ ルに あ るものの、広 島 , 島 根県 は3 0 % 前 後 と低 い。
しか し、1 9 6 0 年か ら1 9 8 0 年にかけての人工 林増加率 は 3 県 とも2 倍 前後 の値を示 し、全国
平均 よ り高 く近年 の人工林面積 の増加 が大 きか った ことを示 して いる。人工林率 の将来計
画 と しては、例 えば島根県邑智地域森林計画では昭和 7 5 年に4 5 % 程度 まで高めるが 目標 とさ
れてい る。
表 Ill-15 林
県
業指標 の比較 (西中国地域 、1980年)
軍請 軍墓強) 金岳r 合森鱗准)賓掃露序も話筆傷│)
島根
79.9
6.4
広島
74.2
7 . 8
山口
71.8
2.7
全国
68.0
30.0
15.0
2.9
1.94
18.2
3.7
2.05
40.6
18,3
3.3
2.01
40.0
19.7
4.4
1.56
32.8
2 6 . 2
1)人 工林増加率 は1960年を 1と した1980年の人工林 面積 比
-69-
く4 ) 生 息情 報 を 得 た地 域 の 環 境 特 性
西 中 国地域 に お け る ツキ ノ ワグ マ の生息 情 報 ( 捕獲 地点 メ ッ シュ、養 蜂 被害発 生 地点 メ
ッ シュ 、 その 他 の生 息 情 報 を あ わせ た もの ) が どの よ うな環境 区分 で 多 く出現 す るか を 調
査 地 域 全 体 の環 境 構 成 と生 息 情 報 を 得 た地 域 の み の それ とを l k m メッ シュで の 出現 数 か ら
比 較 した。 分 析 した以 下 の環 境 項 目 ご とに、生 息情 報 の 多 い あ るい は少 な い環境 区分 につ
いて 述 べ る ( 表 I l l - 1 4 ) 。
1 ) 植生 : 西 中 国 の 3 県 全 体 で は、 マ ツ林 が4 7 . 2 % 、 耕 作地 が 1 9 ` 0 % と 多 くを しめ る。 調
査 地 域 全 体 ( 5 9 8 0 メッ シュ) と して もマ ツ林 ( 3 9 . 8 % ) 、 次 い で人工 林 ( 1 8 1
%)が
多 いが 、 コ ナ ラ林 の 構成 比 ( 1 7 . 1 % ) も 高 い こ とが特 徴 と して上 げ られ
る。 ツキ ノ ワ グ マ の生 息 情 報 は ミズナ ラ林 、人工 林 な どで 多 くマ ツ林 で少 ない 。
2 ) 標高 : 標 高 3 9 9 冊
以 下 の 低 標 高 地 が調 査地 域 全 体 で は5 0 . 6 % ( 3 0 4 3 メ ッシュ) と 約 半 数
を しめ るが 、生 息情 報 は 標高 4 0 0 m 以上 の地 域 が 全 体 ( 1 0 6 5 メッ シュ) の
83.4%
( 8 8 8 メッ シュ) と 多 くを しめ る。
3 ) 森林 面 積率 : 標 準 メ ッ シュで の 森 林 面 積 率 が7 9 % 以 下 とい った 森林 面 積 の少 な い メ ッ
シュは調 査地 域 で は2 4 . 3 % を しめ るが 、 ツキ ノ ワグ マの生 息 情 報 は森 林 面 積 率
7 9 % 以 下 の 地域 ( メ ッ シュ) で は少 な い。森 林 面積 率 1 0 0 % の 地域 で は生 息情
報 出現 率 が 高 く、森 林 面 積率 の高 い方 が生 息 に適 して い る こ とを示 して い るが 、
面 積率 8 0 % か ら9 9 % の 地 域 で も調 査地域 全 体 の面 積 率 構 成 比 に比 例 して生 息 情
報 が 出現 して い る こ とか ら、面 積 率 8 0 - 9 9 % の 地域 に も出没 す る ことが わ か る。
4 ) 耕作 地 面 積 率 : 森 林 面 積 率 とは逆 の関 係 で 、 メ ッ シュ内 の 耕 作地 面 積 率 の低 い地 域 (
メ ッ シュ) ほ ど生 息 情報 出現 率 は高 い。 しか し、耕 作地 面 積 率 1 0 % 台 の メ ッ シ
ュで も生 息 情 報 出現 率 は 4 % 前 後 あ り、西 中 国地 方 で は耕 作地 面 積 率 の比 較 的
高 い地 域 まで ツキ ノ ワ グマ は出波 して い る こ とが わか る。 3 県 全 体 で は 耕 作地
面 積 率 1 0 % 以 上 の メ ッ シュは4 8 , 1 % と 約 半 数 を じめ るが 、調 査 地 域 で の それ は
3 1 . 8 % で あ る。
5 ) 建物 用地 面 積率 : 生 息 情 報 の3 1 . 2 % ( 8 6 5 メ ッ シュ) は 建物 用 地 面 積率 2 % 以 下 の 地 域
に 出現 し、 建物 用 地 率 の 高 ま りは ツキ ノ ワグ マの生 息 条 件 の障 害 とな る こ とを
示 唆 して い る。
6 ) 道路 ( 幅員 2 . 5 帆
以 上 ) 密 度 : 生 息情 報 出現 率 は道 路 密 度 の 低 い と ころで多 く、道 路 密
度 5 本/ ん ン■を越 え る と生 息 情 報 出現 率 は低 くな り生 息 阻 害 要 因 とな る こ とを示
唆 して い る。
以 上 6 項 目 の分 析 か ら、西 中 国調 査 地域 にお け る ツキ ノ ワグ マ生 息 地 域 の 環 境 特 性 を ま
とめ る と次 の よ うにな る。
-70∼
植生 : 生 息情報 の絶対数 と しては ミズナ ラ林、人工林、 コナ ラ林 で 多 く、生息情報出現
率 としては プナ林 で高 い。 マ ツ林 は地域の植生 構成 では大 きな比率 を しめ るが 、
ツキノワグマの生息情報 は少 な い。
以上で生息情報 が多 い。
標高 : 標 高 4 0 0 Π
森林 ・耕作地 ・建物用地面積率 : 森 林面積率 は8 0 % 以 上、耕作地面積率 は 9 % 以 下 、建
物用地面積率 は 2 % 以 下 の メ ッシュ。
以下 の ところ。
道路密度 : 道 路 ( 幅員2 . 5 m 以上) 密 度 は 4 本/ んンュ
( 5 ) 捕 獲地点 と養蜂被害 な ど発生地点 の環境特性
次 ぎに、西中国特定調査地域 にお いて生息情報を得た地域 ( メ ッシュ) の うち捕獲地点
と養蜂 被害発生地点 に限 った地点 のメ ッ シュ数 を表 I I I - 1 4 に 示 した。被害発生地点 メ ッ
シュ数構成 と生息情報全体 あるいは調査地域全体 との比較か ら、養蜂被害発生地点 の環境
特性 を環境項 目別 に以 下述 べ る。
1 ) 植生 : 植 生 タイ プ別 の生息情報全体 の 出現 比 と捕 獲 地点 ・被害発生地点 の 出現頻度 に
大 きな差 はみ られな いが、被害発生地点 はメ ッシュ内最大面積植 生 が 耕作 地 の
ところで、捕獲地点 は ヨ ラナ林 で 多 い傾向 がある。
標高区
2 ) 標高 : 生 息情報 は標高 4 0 0 m 以上で多 い が、そ の中 で捕獲地点 は標高 4 0 0 - 5 9 9 m の
標高区分 で 多 い。
以下、特 に標高 2 0 0 - 5 9 9 n の
分 で多 い。被害発生 地点 は標高 7 9 9 楓
3 ) 森林面積率 : 養 蜂被害 な ど発生地点 は、生息情報全体 の中 では森林面積率 の低 い メ
ッシュで 多 い。森林面積率 7 9 % 以 下 とい った低 い森林面積率 の メ ッシュでの生
一
息情報 の多 くは被害発生地点情報で しめ られて い る。捕獲地点 森林面積率 の
関係 は、生息情報全体 の 出現傾向 とほぼ対応 して いる。
4 ) 耕作地面積率 : 森 林面積率 と被害発生地点 の関係 に対応 して、被 害 地点 は耕作地面積
率 が 5 % 以 上 の ところに全被害地点 ( 7 4 メッシュ) の 6 4 . 9 % 、面積率 1 0 % 以 上
1 % が 出現 し、養蜂被害な どは生息情報 を得 た地域 のなかで は際
に限 って も3 5 。
だ うて 耕作地面積率 の高 い ところで発生 して い ることがわか る。 これ は、後 は
ど述 べ る移動養蜂 の実体 と関連す るもので、養蜂箱が山沿 いの耕作 地周辺 に配
置 され ることが多 い こととを反 映 した もの と考え られ る。 捕獲 地点 も、生息情
報全体 よ りは耕作地面積率 の高 いところで多 い傾向 がある。
5 ) 建物用地面積率 : 養 蜂被害 な ど発生地点 、捕獲地点 とも生息 情報全体 一建物用地面積
率 の関係 とほぼ同様 の傾向 を しめすが、被 害発生 地点 は建物用地率 の高 い とこ
ろで もやや多 く出現す る。
6 ) 道路密度 : 生 息情報全体 は、道路 密度 の少 ないところほど多 いが 、養蜂被害発生地点
は道 路密度 1 - 2 本/ んンュの ところに出現 の ピー クがあ り、捕獲地点 もこの 区分 で
多 く出現 して い る。 被害 が道路 密度 の やや高 い ところで多 い ことは、耕作地 の
-71-
項 で も述 べ た よ うに、移 動 養 蜂 が 山沿 いの 耕作 地 周辺 、道 路 が ま った くな い と
ころで な く道 路 が 多少 な りと もあ る と ころで 行 わ れ て い る こ と と関連 した もの
と考 え られ る。
以 上 述 べ た こ とを ま とめ る と、養 蜂 被 害 な ど発生 地点 は生 息 情報 全 体 の 中 で は、 低 標 高
地 で 耕作 面積 率 が 高 く道 路 密 度 も高 い地 域 ( メ ッ シュ) で 多 い な ど、人為 要 素 の 強 い と こ
ろで多 く出現 して い る。 これは移動養準 の形態 と関連 した現象 と考 え られ る。 捕獲地点 は、
養蜂被害 など発生地 点 ほど生息 情報全体 との明確 な違 いを示 さないが、やは りやや低 い標
高区分 、 ヨナ ラ林で多 いな どの特徴 がある。
( 6 ) 生 息情報 と生息地利用状況
l k 』メ ッシュレベ ル で得 られた生息情報 を、生息地 の さらに詳細 な地 形 、植生環境 とク
マの生息地利用状況 の対 応か ら検討す るため、樹上 の堅果採食痕跡 であ る 「クマ槻」 の分
布状況 と形成環境 の調査 を行 った。調査 は、 l k コメ ッシュ分布情報 が集中 して い る島根県
一
域 の安蔵寺山 と島根 ―広島県境 の天杉連峰地域 および島根 山 口県境 の高岳周辺域 におい
て行 った。調査 ルー トぞ いの両側 5 0 B 以 内 の クマ観 およびフ ンの存在 に注 目 して調査 ルー
トを踏査 し、 クマ欄 を発見位置 した場合 はそ の地形環境 、形成樹種 と胸高直径 、形成位置
の地上か らの高 さな どを、 フ ンを発見 した場合 は内容物 をそ の場 で記録 した。調査 は1 9 8 7
年 4 月の調査時 に得 られた クマ欄 は前年 の1 9 8 6 年秋 に形成 された もの 、1 9 8 7 年1 0 月の調査
時 に発見 した クマ槻、 フ ンはその年 の秋 に形成 。排 出 された もの と見 な した。
図 I I I - 1 1 に 3 つ の地域 の調査 ル ー トとクマ概発見位置 を示 した。表 I E - 1 6 に 発見 し
た クマ欄 の地形環境 とクマ槻形成樹覆 ・胸高直径、形成位置 の地上か らの高 さ、胸高直径
当 り1 . 4 3 個発見 されたのに対 して、
を示 した。 クマ欄 は安 蔵寺山 ルー トでは踏査距離 l k 配
2 7 個/ k 観の発見率 であ り安蔵寺山 ルー トで高 か った。 クマ槻 の形成
天杉連峰 ルー トでは, 0 。
と比較的高 標高 地で の発見が多 か った。 クマ欄形成
された標高 は、 1 1 ケ 所 の平均 が1 , 1 6 8 口
、続 いて1 0 - 1 4 R 台が おお くを占 めた。
樹種 は 1 2 中 1 0 が プナであ った。形成樹高 は1 5 - 2 0 ■
表 I I I - 1 7 に は安蔵 寺 ルー トにおけるフ ンの発見環境 とフ ン内容物 を示 した。
5 . ツ キノワグマによる被害発生状況
( 1 ) 被 害状況 と有害駆除 申請理 由
捕獲数 の推移 の項 で述 べ たよ うに、昭和 4 0 年 ごろか ら西中国 3 県 では有害獣駆除 によ
るツキノワグマ捕獲数 が急増 して い る。そ の背景 として の ツキ/ ワ グマ による被害状 況 と
有害駆除理 由を検討す るため、地 方事務所 。年度 ・作物別被害 金額 と有害獣駆除 申請 の理
-19
由 について 資料 を整理 した。表 I I I - 1 8 に有害鳥獣被害調査 による被害金額 を、表 田
-72-
図 I l l - 1 1 現 地調 査 ル ー トと ッキ ノ ワグ マ痕 跡 発 見 位 置 〈番 号 は 表 田
表 田- 1 7 に
対応)
表 III-16 ク
マ棚 形発 見 位 置 の地 形 と形 成 樹
地 形
ル ー ト 調 査 年 月 番号 1 ) 標 高 ( m ) 斜 面 方位
安蔵寺 '87 Apr
―ト
ル‐
8
9
1 0
1 1
1 2
1,080
1,120
1,160
1,200
1,220
1,230
NE
NW
N∬W
NNW
∬W
NW
1,240
1,240
1,240
980
NW
NE
∬E
N
N
E
1,140
1,030
ブナ
ブナ
ブナ
ブナ
ブナ
プナ
ブナ
ブナ
ブナ
ズナ
ズナ
ブナ
成
樹
直 径 (cm)樹
一
フ ラ
'87 Apr
天杉 連
峰 ルー ト
'87 0ct
高岳
ルー ト
1
2
3
4
5
6
7
形
樹種
高 (m)
60
60
60
50
50
45
45
15,20
15-20
15-20
15-20
15-20
10-15
15-20
45
45
15-20
10-15
40
56
10-15
10-15
40
5-10
1 ) 図 1 0 に 対 応 す る番号
表Ill-17 安
蔵 寺 山 ル ー トにお け る ツキ ノ ワグ マの フ ンの 発 見 位 置 の 地 形
と フ ン内容 物
地
地 図 番号 1)
) 斜
標高 ( 『
形
面方位
発 見場 所
フ ン内容 物
①
E
登 山道 上
ミズナ ラ堅 果
l,o10
E
登 山道 上
ミズナ ラ堅 果
②
1,020
1)図 10に 対 応 す る番号
に、 西 中 国 3 県 にお け る ツキ ノ ワ グ マの有 害 獣駆 除 申請 の 被 害 内容 別 申請 件 数 を 示 した。
被 害 金額 と して は 養蜂 と果樹 被 害 が 西 中国 地 方 で は大 きな割 合 を しめて い る。 有 害 駆 除 申
請 理 由 は、県 に よ りま た地 方 事 務 所 に よ り駆 除 申請 の形 態 が 異 な り、 また広 島 県 は発 生 予
察 表 に基 づ く被 告 内容 で あ るた め ク マ に よ る実 際 の 被害 内容 を地 方別 に比 較 す るの はむ つ
か しいが 、駆 除 申請 にお け る被 害 内容 と して は養蜂 、次 いで 果樹 被 告 が 多 い こ とが読 み取
れ る。
-74-
表 皿-18 島
根 県 と広 島 県 の地 方事 務 所 別 ツキ ノ ワグマ に よ る被 害 金 額 ( 昭和 6 2 , 6 3 年度 )
( 千円)
被
県 地 方 事 務 所 (年度 )
島根
広島
害
果樹
養蜂
内
放
容
牧 牛 植 栽 木 そ の他
言
十
川本
500
500
500
500
浜田
50
314
50
414
益田
450
1300
2400
3500
司部 (S62)
(S63)
購 1灘
紺
160
365
130
417
290
1012
800
400
500
332
1300
732
表 I I l - 1 9 西 中 国 3 県 で の ツキ ノ ワ グ マ有 害 獣駆 除 申請 にお け る被 害 内容 別 件 数
i〕
( 件数 )
粧
内
容
蜂 果 樹 植 栽 木 農 作 物 人 身 そ の他 計
駆 除 2)
許可 捕 獲
根 島
本 田 田
川 浜 益
県 地 方 事務 所 (年度 )養
害
.
1 1 1 )
114〕 9
可部 ( S 6 2 )
くS 6 3 )
広島
広 島 くS 6 2 )
(S63)
岩国
3
3)
容
内
室口数す
被 件示
くを
ヽ
、
ヽ
りつ蜂
以
か基 頭
て に>
つ
表
獲
あ察 捕
く
が予
生 生 除十
島 を有昭捕
山 口
44'
-
“
-75-
加 害 獣 (捕 獲 対 象 )
3
0
( 2 ) 西 中国地域 における養蜂業 の現況 と被害
1 ) 養 蜂業 の現況
一
西 中国地域 3 県 におけるツキノワグマの有害獣駆除 申請理 由 の第 位 として養蜂被害が
あげ られて いるため、 この地域 の養蜂 の現況 とそ の時代的変化 を聞 き取 りと行政関係資料
か ら検討 した。島根県では第 二 次世界大戦前 までは、丸太 を くり抜 いた ハ チ洞 によるニ ホ
ン ミツパ チの小規模 な 自家消費飼育 が中心であ った。戦後 、移動養蜂箱 によるセイ ヨウ ミ
ッパ チの飼育技術 が導入 され、 しだいにその飼育数 が増加 して きた。 また、昭和3 0 年代 か
らは、県外 の養蜂家 による大規模 な転飼 も始 まった。表 I l l - 2 0 に 、 ツキノワグヤ生息域 ″
との重 な りが大 き く捕獲数分析 の対象 ともした島根 ・広島両県 の うちの 5 地 方事務所管内
の現在 の ミツパ チ ( セ イ ヨウ ミツパ チ) 飼 育状況 を示 した。 この 5 地 方事務所管内 で1 3 6 名
0 0 0 群の ミツパ チが飼育 されて い る。 この飼育者、飼育数 には県外か
の飼育者 によ つて約 6 、
らの転飼者 の分 も含 まれて いる。飼育者 の県内、県外構成 を見 ると、昭和6 2 年度 の島根県
の場合、表 I I I - 2 0 に 示 した1 0 9 名中、8 9 人が県 内、 2 0 人が 県外 である。 一 方、飼育数 は、
0 9 7 群 ( 1 人当 り平均 1 0 . 0 群) 、 県外者 によるものが2
7 8 7 群の うち県内者 による飼育 が1 、
3、
, 6 9 0 群 ( 1 人当 り平均 1 3 4 . 5 群) と 事業養蜂家 して い る県外者 の比率が高 くな っている。表
I l l - 2 1 に は、近年 の ミツパ チ飼育数 の動向 と して、島根県 につ いてその県全体 の傾向 と、
ここで分析 して いる 3 地 方事務所管内 の飼育数 の変化 を示 した。昭和 5 7 - 6 2 年度 の期間 に
ついては、島根県全体、また 3 地 方事務所管内 について も顕著 な変化 は見 られな い。聞 き
取 り調査 か ら、 この傾向 はこの期間 については広島県 で も同様 に飼育数 の変化 は少 な い も
の と考 え られ る。
1)
表 I I I - 2 0 島 根 ・広島両県 の調査地域地方事務所別 の ミツパ チ飼育状況
地
島根
広島
方事務所
本田田計 部島計 計
川浜益小 可広小 合
県
飼 育者 (人 )
群 れ数
31
50
28
( 1 0 9 )
1,696
853
1,238
(3,787)
695
1,305
(2,000)
10
17
(27)
136
1)醤
閣 採管 房技
5,787
飼 育 地点 数
133
81
113
( 3 2 7 )
25
54
(79)
406
広島 は61年度 の ミツパ チ飼育届 けおよび転飼許可
-76-
表 Ill-21 島
地
域 \ 昭和年
昂本犠辞益雷管内
根 県 にお け る ミツパ チ飼 育 群 れ 数 の 推 移 1)
57
58
59
2,144
1,061
2,260
1.165
2.085
938
2,073
919
1)昭和 62年 度 島根 県 ミッパ チ飼育 届 けか ら作 成
2 ) 養 蜂 被 害 の実 態
西 中 国地 域 の 養 蜂 被害 の実 態 につ いて は、養 蜂 組 合 へ の ア ンケ
ー ト調 査 の 集 計 分 析 と し
て 昭 和 6 1 年度 本 調 査 報 告 書 で 検 討 した。 前項 で 分 析 した 被 害 発生 地 点 の特 性 分 析 結 果 を あ
わ せ 、養蜂 被 害 の 実 態 につ いて 再度 こ こで ま とめて お きた い 。
ツキ ノ ワグ マ に よ る養 蜂 被 害 は、 移動 養 蜂 中 の養 蜂 箱 が 蜂 蜜採 食 目的 の ツキ ノ ワ グマ に
襲 わ れ て破壊 され る こ と、 それ に と もな うハ チ群 と収 穫 され るべ き蜂 蜜 の損 失 にあ る。 被
害 は 6 月か ら1 0 月ごろ にか けてが 多 い。 被 害 を受 け る養 蜂 家 は県 外 か らの 移動 養 蜂 家 、県
内 の 業 者 と も 4 0 群以 上 特 に1 0 0 群以 上 の 飼 育 数 を もつ よ うな専 業 養 蜂 家 に 多 く、数 群 の 飼
育 の 自家 消費 的 な 養 蜂 家 の被 害 は少 な い。西 中 国地 域 に お け る ツキ ノ ワ グ マ に よ る養蜂 波
害 ―防除 ・クマ 捕 獲 の 問題 は、 これ ら数 1 0 の事 業 養 蜂 家 に お け る問 題 だ とい え る。
( 3 ) 果 樹被 害
果樹 被 害 は有 害 獣 駆 除 申請 の第 2 位 に上 げ られ て い る。 被 害 を受 け る果 樹 と して は ク リ
次 い で カキが 多 い と され る。 カキ は 自家 消費 用 が主 の た め、 経 済 的 被 害 と して は この地 域
の 主 要 な生 産 果樹 で あ る ク リの 被 書 が重 要 で あ る。 被 害 は ク リそ の もの が 採 食 され る こ と
よ り、採 食 の た め ク リの木 を折 り枯 死 させ て しま うこ との 方 が重 大 で あ る と され る。
( 4 ) 被 害 防除 の 方 法
以 上述 べ た ツキ ノ ワ グ マ に よ る養 蜂 被 害 や ク リ被害 の 防 除 の た め 西 中 国 で 行 わ れ て い る
い くつ か の方 法 とそ の 問題 点 を 整 理 して お く。
1)捕 獲
被 害 発生 が あ った 場 合 、加 害 獣駆 除 の ため と して 多 くの 場 合捕 獲 、 あ るい はそ の 努 力 が
な され る。 また 、 発生 予察 表 に基 づ く駆 除 と して も捕 獲 が 行 わ れ い る。捕 獲方 法 と して は
ワナ猟 と銃 猟 が あ るが 、養蜂 箱 や 果樹園 の被 告 対 策 で は ワナ 猟 が 多 い。 ワナ猟 は箱 ワナ猟
と く くリ ワナ猟 に分 け られ るが 、 く くリ ワナ 猟 は昭 和 3 0 年代 か らイ ノ ン シの ワナ猟 の 応 用
と して 、箱 ワナ猟 は昭 和 4 0 年代 に導 入 され て現 在 行 わ れ て い る。 箱 ワナ は養 蜂 業 者 が製 作
・所 有 し、捕 獲 の み を 有 害 獣駆 除 免許 を も った 狩 猟 者 に 委 託 して い る例 も多 い。 ワナ猟 は
加 害 個 体 以 外 も無 制 限 に捕 獲 す る こ と、 ク マ を ヮナ に さ らす 期 間 が長 く捕 獲 効 率 が 高 す ぎ
-77-
る こ とな どの問題 点 が 指 摘 され て い る。 銃 猟 も行 わ れ るが 、夏 か ら秋 の 有 害 獣駆 除 にお け
る捕 獲 方 法 と して は あ ま り多 くは な され な い 。
2)電 気棚
養 蜂 箱 被 害 の 防 止 の た め 、石 見 西 部 養蜂 組 合 で は養 蜂 箱 を設 置 した地 域 の 周 囲 を イ ノ シ
ン防除 用 の電 気棚 で 囲 み被 害 防止 を 図 る こ とが試 み られ て い る。 被 害 防 止 に効 果 は あ るが 、
維 持 管 理 に手 間 を 要 す る こ と、 設 置費 用 な どの問題 点 が あ る と され る。 しか し、石 川 県 そ
の 他 の 地 域 で は、 ク マ に よ る養 蜂 被 害 防止 の た め電 気棚 を利 用 し効 果 を上 げ て い る と され
て い る ( 花井 、私 信 ) 。
3 ) そ の 他 防除 方 法
被 害 発生 の 予 想 され る ク リ園 な どで はた き火 をす る、 音 を断 続 的 に発 生 させ る、 な どの
方 法 が試 み られて い る。 しか し、 ク リ園 で も完 全 な 防除対 策 は確 立 して お らず 、上 述 の よ
うに捕 獲 駆 除 が 中心 とな って い る。
6 . 狩 猟 と保 護 管 理
(1)ク
マ猟 の 方 法 と時 代 的変 化
・
前述 の よ うに、西 中 国地 域 で は、 昭 和 4 0 年代 なか ば よ リ ツキ ノ ワ グ マ の捕 獲 数 は狩 猟
一
・
有 害 獣 駆 除 に捕 獲 と も急 増 した。 この捕 獲 数 増 加 の つ の 要 因 と して の 狩猟 方 法 狩 猟 圧
変 化 を検 討 す るた め 昭 和 6 1 年度 の 本 研 究 に おいて 行 った 、西 中 国地 域 3 県 の 猟友 会 へ の ア
ンケ ー ト調 査 の 結 果 を 、西 中 国地 域 にお け る ツキ ノ ワ グマ猟 の時 代 的 変 化 と して再整 理 し
て お く。
ク マ猟 の 出猟 日数 や ク マ 猟 へ の 人 数 に関 す る項 目で は その 時 代 的変 化 が 少 な い。 だ が 、
・
銃 器 に よ る ツキ ノ ワ グ マの 捕 獲 効 率 の 向上 に結 び つ くと考 え られ る村 田銃 散 弾銃 利 用 か
らライ フル銃 導 入 へ の 転換 は、 島 根 、広 島 ・山 田県 と も昭 和 5 0 年代 を中心 に始 ま って い る。
また 、銃 猟 に比 べ 捕 獲 効 率 を 著 し く高 め る と考 え られ る 「箱 ワナ」猟 は 島根 県 で は昭 和 4 0
・
年 代 前 半 よ り導 入 され 、5 0 年代 に 入 って 導 入 す る猟 友 会 数 は さ らに増 加 して い る。 広 島
山 口で も 「箱 ワナ 」 は4 0 年代 前 半 よ り導 入 されて い るが使 用 して い る猟友 会 数 は少 な い 。
ク マ猟 に お け る猟 場 まで の 到 達 速 度 とそ の効 率 を高 めた と思 わ れ る自動 車 の 使用 は、広 島
・山 口で は昭 和 4 0 年代 前 半 よ り、島 根 で は少 し遅 れて4 0 年代 後 半 あ るい は5 0 年代 前 半 か ら
多 く使 用 され だ した。 自動 車 利用 の 普 及 には ヽ道路 の改 良 、林 道 の新 設 、整 備 が この 間 に
進 ん だ こ とが背 景 に あ った と考 え られ る。 また、 グ ル ー プ を組 ん で の ク マ猟 の 効 率 を高 め
る と考 え られ る トラ ン シー パ の 利 用 は、広 島 ・山 口で は 自動 車 普 及 と同 じ昭 和 4 0 年代 前 半
よ り、島根 で は少 し遅 れ4 0 年代後 半 か ら5 0 年代 前半 に普 及 し始 め た。
捕 獲 数増加 の 要因 と して は 、狩 猟 方法 の 変 化 だけで な く、 ク マ個 体 群 の 変化 ( 生息 数 の
増 減 ) や 高 橋 ( 1 9 7 9 ) も 指 摘 す るよ うに生 息 ・利 用域 の 変化 な ど も考 慮 す る必 要 が あ るが 、
-78-
「箱 ワナ」導入を中心 とす る捕獲効率 の向上 と自動車利用 の普及 な どによる捕獲 の橘助手
段 の変化 、改善 が昭和 4 0 年代後半 か らの西中国地域で のクマ捕獲数 の増加 、特 に島根県域
で の増加 に結 び付 く一 つの要因 とな った と考 え られ る。
( 2 ) 保 護管理 の時代的変化
ツキノワグマに係 わ る保護管 理制度 における西中国地域独 自の時代的変化 ・あゆみ とい
った ものは少 な く、ほとん どが全国 レベ ルで の沿革 と平行 した ものであ り、 ツキノ ワグマ
を中心 に鳥獣行政 の あゆみを示す ことになるが、保護管 理 の時代的変化 としてひ ととお り
の事項 を整理 してお きた い。
・昭和 2 4 年 : 狩 猟獣 を規定 した狩猟法 の改正 、 ツキノワグマ は狩猟獣 とされ る
・昭和 3 8 年 : 狩 猟法改正 ( 「鳥獣保護及狩猟 二関 スル法律」 に) 、 鳥獣保護事業計画制
度発足 ( 同時 に被害防除 ( 有害獣駆除) 制 度発足) 、 休猟区制度設置
・昭和 4 4 年 : 西 中国山地国定公園設置
・昭和 5 8 年 : 猟 期期間中 の箱 ワナによるクマ捕桂禁止
・昭和 6 3 年 : 広 島県 ツキノワグマ対策協議会 、保護 と管 理 に関す る提言 とりまとめ
・
西中国地域 におけるツキノ ワグマ猟 に対 しては、分布域 の縮小 個体群 の減少 か らその
規制 ・禁止 を望 む ところ もあるが ( 例えば 「ツキノワグマの保護 に関す る要望書」、 クマ
研究会 、朝 日稔 ら研究者 1 9 名) 、 他 の狩猟獣 と同 じワク内でまた全国 と同 じあゆみのなか
での保護管理 の流れで推移 して きた といえよ う。ただ し、西中国地域 の野生生物 の保護管
理 に係 わ る関係機関 では、当地域 の ツキノワグマの保護管理 に注 目 し、生息域 と して のプ
ナ 自然林 の保全 とあわせそ の保護 ・保全 のため、生息状況調査 の実施 、他 の狩猟獣 とは区
別 した注意 を払 う方向 も出て きて い る。
7 。 まとめ
西中国 地方 では、江戸時代後期 ( 1 8 0 0 年代前半) ま では現 在 の山 田県東部 か ら島根県 の
東北部、出雲市 一安来市周辺 で もツキ ノワグマの生息情報が見 られた。 その後分布域 は西
南方向 に後退 し、現 在 は江川以西 の島根
一広島県境 か ら、島根 一山 田県境 にかけて の地域
に分布域 は限 られて きて いる。江川以東 の島根県邑智郡 、飯石郡 で もわずか に生息情報 や
捕獲情報 が見 られ るが、そ の情報密度 の少 な さか ら生息数 は ご く限 られた ものにな って き
て いると考 え られ る。
西 中国地域 での ツキノワグマ捕獲数 の時代的推移 をみ ると、第二次大戦前 は平均 して広
島 一島根 一山 回 の順 で捕獲数 が多 か った。 戦後 は島根県 の捕獲数 が広 島県 を上 回 り、平均
捕獲数 は島根 一広島 一山日の順 にな った こと、昭和 4 0 年代 か ら、島根、広島両県 での捕獲
数 が急増 した こと、同時 に有害獣駆除捕獲数 も増大 した ことが特徴 として上 げ られ る。近
年 の 捕獲 地域 を さ らに詳 し くみ るた め各 県 の 地 方 事 務 所 別 の捕 獲 数 を み る と、島根 県 の 益
田農林 事 務 所管 内 と浜 田農林 事 務 所 管 内 、次 い で広 島可部 農林 事 務 所管 内 で 多 い 。分 布 域 、
捕 獲 数 の 時代 的 な変 化 に対 応 す る生 息環 境 の 変化 を み る と、西 中 国 3 県 の 人工林 面 積 率 は
全 国平 均 か そ れ以 下 で 低 いが 、 1 9 6 0 年か ら1 9 8 0 年にか けて の 人 工林 面 積 は 、 3 県 と も 2 倍
近 くの 高 い増 加 率 を示 した。
現 在 の 生息 域 を 標 準 メ ッ シュ ( l k m メッ シェ) 情 報 化す る と、江 川 以 西 を 中心 と した西
中 国調 査地 域 全 体 で は1 0 o 5 メッ シュで 生 息 情 報 を得 た。 そ の うち の 大 部 分 〈7 8 2 メッ シュ、
全 体 の7 3 % ) は 島根 県 域 に集 中 して い る。生 息 情 報 を 得 た地 域 の環 境 特 性 を み る と、 植 生
タ イブ と して は ミズナ ラ林 や ヨナ ラ林 あ る い は人工 林 、標 高 4 0 0 m 以上 、森 林 面 積 率 8 0 % 以
上 な どの環 境 条 件 を もつ 地 域 ( メ ッ シュ) に 多 い。生 息 情 報 の うち奏 蜂 被害 な ど発生 地点
に限 れ ば、標 高 5 9 9 n 以下 で森 林 面 積 率 7 9 % 以 下 で多 いな どの特 徴 が 見 られ る。
西 中 国地 域 で は 、近 年有 害 獣駆 除 によ る捕 獲 数 が 多 くな って い るが 、 そ の駆 除 申請 にお
け る被害 内容 と して は養蜂 被 害 、次 いで 果樹 被 害 が 多 くを しめ る。 調 査 地 域 にお け る島根
・広 島両 県 の 養 蜂 は、 移動 養蜂 を 含 め近 年 は 6 , 0 0 0 群近 くが飼 育 され 飼 育 地 点 は4 0 0 ケ
所近
一
くに達 して い る。 果樹 被 害 で は ク リの被 害 が 多 くを しめ る。 これ らの 被 害 へ の 対 処 の つ
の方 法 と して の 捕 獲 は、主 に く く リ ワナ と箱 ワナで 行 わ れ て い るが 、箱 ワナ は昭 和 4 0 年代
に導 入 され捕 獲 効 率 を 高 め た ことが 近 年 の有 害 獣駆 除捕 獲 数 の増 加 に寄 与 した こ とが考 え
られ る。
一
―
分 布 域 が 縮 小 し、 江 川 以西 の 島根 広 島 県境 か ら島根 山 田 県境 地 域 に生 息 域 が 限 られ
て きて い る現 在 、西 中 国地 域 お いて は捕 獲 ( 狩猟 と有 害 獣 駆 除 ) が 残 され た ツキ ノ ワ グ マ
個 体群 に大 きな影 響 を与 えて い る こ とが 考 え られ る。 このた め 、有 害 獣 駆 除 捕 獲 を含 めた
狩 猟 の あ り方 、捕 殺 に よ らな い有 効 な被 害 防 上方 法 の確 立 、個 体群 動 向 の 診 断 の た め の 生
息情 報 と捕 獲 個 体 の 体 系的 収集 ・分 析体制 の確 立 が 必 要 で あ る。
8.謝 辞
本 調 査 に関 して は、 島根 県 、広 島 県 、山 口県 の関 係機 関 と と もに 、 回 中幾 太 郎 氏 ( 島根
県益 田中学 校 ) 、 日 公和 男 氏 ( 広島 県 落 合東小 学 校 ) 、 花 井 正光 氏 ( 文化 庁 ) の 皆 様 の ご
協 力 を いた だ いた 。 調 査 に ご協 力 い ただ いた 皆 様 、 関 係 機関 の 方 々 に深 く感 謝 申 し上 げ ま
す。
-80-
引 用 文 献 ・資 料
千葉徳爾
(1969)狩
猟 伝承 研 究 . 風
間 書房 : 1 - 8 2 8 .
2 回 自然 環 境 保 全 基礎 調 査 : 1 - 3 1
広島県
(1978) 動
物 分布 調 査 報 告書 ( 哺乳類 ) . 第
環境庁
( 1 9 『9 ) 動
物 分 布 調 査 報 告 書 ( 哺乳 類 ) 、 全 国版 ( そ の 1 ) 、
第 2 回 自然 環 境
保 全基 礎 調 査 :
環境庁
(1980)動
物 分 布 調 査 報 告 書 ( 哺乳 類 ) 、 全 国版 ( そ の 2 ) . 第
2 回 自然環 境
保 全 基 礎 調 査f : 1 - 1 7 6 .
島根 県
(1978) 動
物 分 布 調 査 報 告 書 ( 哺乳 類 ) . 第
島根 県
(1980) 島
根 県 に分 布 す る獣 類 . 島
高橋春成
3 a p o n i c u s ) の分 布 動 向 と植 生 変 化 . 地
山 田県
(1982) 消
(1978)動
根 県農 林 水 産 部 林 政 課 : 1 - 1 0 5 .
中 国 山地 にお け る ツキ ノ ワ グマ ( S e l e n a r c t o s t h i b e t a n u s
(1979)西
田中 幾 太 郎
2 回 自然 環 境 保全 基 礎 調 査 1 1 - 5 1
理学評論 5 2 : 6 3 5 - 6 4 2 .
え ゆ く六 日市 の野 生動 物 . : 1 - 1 6 5 。
物 分 布 調 査 報 告書 ( 哺乳 類 ) . 第
.
2 回 自然環 境 保 全 基 礎 調 査 , 1 - 2 1
【Ill草 西 日本 の ツキ ノ ワグ マ地 域 個 体 群生 息 状 況基 礎 調 査 】
4 . 四国 地 域
米 国 政 明
1.四 国 の ツ手ノウグマの分布 と生活史 の概要
・
・・
奈 良 信 夫
,
四国 にツキノワグマが生息す ることは江戸時代後期 の資料 に も見 られ る (野生生物研究
セ ンター 、1987)。 四国 の ツキノワグマ は、第 2回 自然環境保全調査 (環境庁、 1979)に
よ り、四国 4県 の うち香川県、愛城県では絶滅 し現在 は徳 島県 と高 知県 にのみ生息 す るこ
とが示 された。 しか し、その四国 の ツキノワグマの生息域 は、四 国山地 の東端 と西端 の 2
つの地域 のみ分布 し、 2つ の地域間 の ツキノ ワグマの交流 は不可能 で独立 した分布域 とな
っていて っていて 、個体群 が将 来 も存続す るか危 ぶまれている (古屋 ・森川 、1984)。 四
国 の ッキノワグマ は、後 に述 べ る (頭骨形態 の地理的変異,pp99-100)よ うに東 日本産 の ツ
キノワグマに比 べ小型 であ り、地理的隔離 によ り特徴 の ある地域個体群 を形成 していると
一
考 え られ る。四国産 の ツキノワグマの 般生態、生活史 については、十分 な調査観察が行
われ る前 に個体数 が減少 したため不明な点が多 い。 しか し、四 国山地東端 の剣山周辺 では
冬眠す ること、秋 には堅 果類 を多 く採食す ることなどが狩猟者か らの聞 き取 りで報告 され、
基本的な生活史、食性 については本州産 の ツキノワグマ との共通点 が 多 い と考 え られ る。
2.分 布調査
(1)調 査内容
四国 におけるツキノワグマの分布状況 を地図化 し、生息環境 との関連 を分析す るため、
既存資料 および聞 き取 り調査 か ら求 めた1975年以降 の ツキノワグマの分布情報 を lkコメ ッ
シュレベ ルで整理 ・地 図化 した。 また同時 に生 息環境 の 11■メ ッシュ図 を作成 し、生息 情
報 を得た メ ッシュとの重ね合わせ か ら生息地域 の環境特性 を分析 した。
(2)調 査方法 ・資料
聞 き取 り調査 による生息 情報、 および高知県環境保全課 (ツ キノ ワグマ捕獲禁止 のため
の公聴会資料 :1987年)と 徳島県林政課 (昭和 60年度指定鳥獣保護調査 (ツ キノ ワグマの
1日 本 野 生 生 物研 究 セ ンタ ー
-32-
生 息状 況 概 要 ) ) の
ツキ ノ ワグ マ分 布 に関 す る資料 よ り標 準 地 域 メ ッ シュ ( l k 冊メ ッ シュ)
で の 生 息 情 報 図 を作 成 した。 情 報 で は、昭 和 5 0 年代 ( 1 9 7 5 年) 以 降 の 確 実 生 息 情 報 ( 捕獲 、
直接 観 察 な ど) 、 昭 和 4 0 年代 とそれ以 前 ( 1 9 7 4 年以 前 ) の 確 実 生 息 情 報 捕 獲 、皮 は ぎ被 害
地 点 な ど) 、 昭 和 5 0 年代 以 降 の 推 定 生 息 域 情 報 、昭 和 4 0 年代 とそれ以 前 の 推 定 生 息 域 情 報 、
の 4 つ を区分 した。 聞 き取 り調査 対 象 者 は後 に述 べ る捕 獲 地 点 ・捕 獲 状 況 聞 き取 り調 査 者
とあ わ せ て 表 皿 - 2 9 に
示 した。
(3)結 果
四 国 地 方 に お け る ツキ ノ ワ グマ生 息 域 は、東 側 の剣 山 を中心 とす る剣 山
一三 嶺 一鳥 帽 子
ケ森 山 系 と西 側 の高 知 県 一愛 媛 県境 の幡 多 地 方 の 2 地 域 に大 き く分 け られ る ( 幡多地 方 の ッ
キ ノ ワ グ マ生 息 に関 して は疑 問 も残 るが 、聞 き取 り調 査 に よ る高 知 県 資料 に基 づ き こ こで
は それ を標 準 メ ッ シュ情 報 化 した もの を示 した) 。 この よ うに して 作成 した生 息 情 報 図 を
・
図 ロ ー 1 2 に 、生 息 メ ッ シュ情 報 数 ( l k m メッ シュ) を 上 記 の 4 つ の 情 報 区分 別 市 町 村
別 に表 l l I - 2 2 、 表 l l l - 2 3 に 示 した ( 1 9 7 4 年以前 の生 息 情 報 メ ッ シュは1 9 7 5 年以 降 の 情
報 と重 な らな い メ ッ シュの みを 示 す もので 、 1 9 7 4 以前 と1 9 7 5 年以 降 に 共通 して生 息情 報 の
あ る メ ッ シュ は1 9 7 5 年以 降 の メ ッ シュ表 記 に 含 まれ る) 。
四 国 東部 の 剣 山 地 域 で は、 l k m メッ シュで 4 0 6 メッ シュで 生 息 情 報 が あ るが 1 9 7 5 年以 降
の情 報 に 限 れ ば確 実 情報 が 1 9 メッ シュ 、推 定 情 報 が 3 0 0 メッ シュ 、計 3 1 9 メッ シュで あ る。
1 9 7 5 年以 降 の 推 定 生息 情 報 で は、後 に述 べ る これ まで の 捕 獲 地点 記 録 との 対 応 か ら剣 山 南
部 、国道 1 9 5 号線 の 南 側 の烏 帽 子 ケ森 、甚 吉 山 地域 で の生 息 情 報 は疑 わ しい、 あ るい は生
- 2 2 、 図 I l l - 1 2 は 元 資料 に基 づ
息 して もご く一 時 的 な もの で は な いか と考 え るが表 田
いて これ らの地 域 も分布 域 に含 め たか た ちで示 した。剣 山 周 辺 地 域 で の 生 息 情 報 は 行政 界
別 で は、 徳 島県 木 頭村 、東 祖 谷 山 村 、木 沢 村 、高 知 県物 部 村 に多 い 。 1 9 7 5 年以 降 の 確 実 生
息 情 報 に限 る と木 頭 村 、本 沢村 で 多 く、 1 9 7 4 年以 前 で は物 部 村 、東 祖谷 山村 で 多 い。
四 国 西 部 の 幡 多 地 方 で は l k 冊メ ッ シュで 2 0 1 メッ シュで 生 息 情 報 が あ るが 、 1 9 7 5 年以 降
の 情 報 に限 る と 1 6 9 メッ シュで 、 そ の うち確 実 情 報 は 9 メ ッ シュに す ぎな い。 この 確 実 情
報 は、 十和 村 の 四 万 十川近 くに お け る1 9 8 6 年の 足跡 発 見 情 報 で あ る。 幡 多 地 方 の 1 9 7 5 年以
降 の 生 息 情 報 メ ッ シュ数 は、高 知 県西 土 佐 村 、十 和 村 、愛 媛 県松 野 町 な どで 多 い。
3 . 分 布 域 の 標高 ・箱 生 と市 町 村域
(1)調
査 内容 ・方 法
・
四 国 の ツキ ノ ワ グ マ生息 域 の環 境 特 性 を み るた め 、前 項 で 作 成 した生息 図 と標 高 植 生
区 分 図 の 標準 地 域 メ ッ シュ レベ ル ( l k m メッ シュ) で の 関 連 分 析 を 行 った。 また市 町 村 域
別 の 生 息 情 報 数 につ いて も標 準地 域 メ ッ シュ数 と して集 計 した。 生 息 地 域 と して は剣 山 地
葺ョ ︵
甲電ヨ哀︶濫承ロヨ
革書 ︵
黙壕︶旨超□国
︵図 1ヽ 、 六達 ︻︶ ば ば や ミ G けヽ い ヽ十 卜 Q 回 国 べ ︻︱ヨ図
︵答 華 金 ヽ ︼ 慰 調 黙 蛭 G 要 恵 畦 ぷ も ヽ 母 細 需 s吾 判題 ↓感 革 将 念 G ゼ 貯 露 露 ︶
群 理 車 対般 翠 標 本 貯 F ■ >
酵 型 嘔 対 世 選避 ヽ せ r 留 十
群 型 車 対駅 母 橿 尽 = 臣 費 辛
癖空 亜 瑠 郎 選 豊 本 せ 輝 ヨ a
/
ふ
L才
、
・ヽ ‘
-84-
表 Ill-22 四
国東 部 地 域 (剣 山周辺 地 域 )の 市 町 村 別 ツキ ノ ワ グ マ生 息 情 報
( l k 冊メ ッ シュ数 )
県
市 町村
徳島 上 那 賀町
木 沢村
木頭村
海南町
一宇村
推定分布情報
確 実 情 報 ( 捕獲 ・度 は ぎ)
1 9 7 5 年以 降 1 9 7 4 年 以 前 1 9 7 5 年以 降 1 9 7 4 年 以 前
0
0
6
計
0
6
6
8
39
11
64
7
6
73
0
86
0
0
3
0
3
1
0
22
0
23
木屋平村
東 祖 谷 山村
0
0
3
1
4
3
8
72
22
105
西 祖 谷 山村
高知 安 芸市
大豊 町
0
0
1
0
1
0
0
16
0
16
0
1
0
1
2
物部村
2
10
40
19
71
馬路 村
0
0
25
0
25
言
十
19
33
300
54
406
表 配 -23 四
国西 部 地 域 (幡 多 地 域 )の 市 町村 別 ツキ ノ ワグ マ 生 息情 報
(l
県
市 町村
k mッ
メシュ数 )
推定分布情報
確 実 情 報 ( 捕獲 ・反 は ぎ)
1 9 7 5 年以 降 1 9 7 4 年以 前 1975年以 降 1974年 以 前
言十
高知 中 村 市
宿毛市
0
9
0
9
0
2
0
2
樟原村
大正町
0
3
0
3
0
14
10
24
9
29
52
90
0
37
0
37
0
2
0
2
0
32
0
32
0
18
0
18
津島町
0
14
0
14
三
十
9
160
62
231
日本
十本
寸
西土 佐 村
愛 媛 字 和 島市
松野町
日吉 村
域 (四国東部)と 幡多地域 (四国西部)に わけた。 標高区分 は国土数値情報 フアイルか ら
読 み だ した ( 国土 庁 、 1 9 7 6 ) 。 植 生 区分 は第
一 回 自然環 境 保 全基礎 調 査 に よ る植 生 図 を 中
心小 円法 で 標 準 地 域 メ ッ シュ情 報 化 した もの を 用 いた く環 境 庁 、 1 9 7 6 ) 。 市 町村 域 区分 の
- 1 2 に 示 した
標 準 地 域 メ ッ シュ域 区分 化 は最 大面 積 法 に よ つた 。生 息 情 報 と して は 図 田
区分 と同 様 、確 実 生 息 情 報 ( 捕獲 、植 林 木 の度 は ぎな ど発 生 地 点 ) と して 、 1 9 7 5 年以 降 と
1 9 7 4 年以 前 の 2 つ の 区分 を 、推 定 生 息域 情 報 と して 同 じく1 9 7 5 年以 降 と1 9 7 4 年以 前 ( 1 9 7 5
年以 降 と共通 の地 域 を除 い た 1 9 7 4 年以前 の み に情 報 が あ る地 域 ) の 2 つ の 区分 、計 4 つ の
区分 を行 った く生 息情 報 そ の もの に疑 間 が あ り ご くまれ に しか 利 用 しな い 、 あ る い は生 息
い地 域 もあ るが 、 こ こで は図 回 - 1 2 の 生 息 情 報 を そ の ま ま採 用 し
情 報 そ の もの が疑 わ し、
た) 古
(2)結 果
標 高 、植生 、市 町村 域 別 の生 息 情 報 出現 の特 徴 につ いて 以下 述 べ る。
1)標 高
4 0 0 m に集 中 して い る ( 表 I I I - 2 4 ) 。
剣 山 地 域 で は確 実 情 報 、推 定 情 報 と も標高 6 0 0 m から1 、
推 定 分 布 情 報 で は、 1 9 7 4 年以 前 の み の生 息 情 報 域 は1 9 7 5 年以 降 に くらべ 標高 の低 い区分 で
に生 息 情 報 は集 中 し、剣 山地 域 に比 べ 標高
情 報 が 多 い 。 幡 多 地 域 で は標 高 2 0 0 m から 8 0 0 冊
の 低 い と ころで生 息 情 報 が 多 い ( 表 I I I - 2 5 ) 。
幡 多地 域 で も剣 山地 域 と同様 、 1 9 7 4 年以
前 の み の 生息 情 報 は1 9 7 5 年以 降 は よ り低 標高 に多 い。
2)植 生
植 生 タ イプ別生 息 情 報 の 出現 頻度 で は剣 山地 域 、幡 多 地 域 と も針 葉 樹 植 林地 で最 も多 く
の生 息 情 報 が あ る ( 表 I l l - 2 6 、 表 I l l - 2 7 ) 。
これ は、本 地 域 の 人正面 積 率 の高 い こ と
を反 映 た もの と い え る。 針 葉 樹 人工 林 に次 いで 剣 山地 域 で は プ ナ林 で 幡 多地 域 で は 7 カ マ
ツ林 で生 息情 報 が 多 い 。 この結 果 は、 今 回 は ミズナ ラ林 で の生 息 情 報 が少 な い こ とを 除 き、
古屋 ら ( 1 9 8 1 ) の 報 告 とほ ぼ対 応 す る もので あ る。
4 . 輌 獲 地点 の 分布
( 1 ) 調 査 内容 ・調 査 方法
四 国 で は1 9 8 6 年 2 月 の 高 知 県物 部 村 で の 捕 獲 が 最 後 の ツキ ノ ワグ マ捕 獲 で あ る。 昭 和 5 0
年 代 も昭 和 4 0 年代 に比 べ 四 国 地 域 で は捕 獲数 は大 き く減少 して い た ( 昭和 6 2 年度 本 研 究 四
国 地 域 報告 参 照 ) 。 昭 和 3 0 年代 後 半 か ら昭 和 5 0 年代 にか けて の 四 国地 域 に お け る ツキ ノ ワ
グマ の確 実 な生 息 情 報 の 分 布 を 標準 地域 メ ッ シュ情 報 とは別 に地 点 情 報 と して整理 す るた
め、 また この 時 期 の 狩 猟 実 態 、捕 獲 方 法 な どを知 るた め 、聞 き取 り調 査 に よ り捕 獲 地 点 ・
捕 獲 方法 ・捕 獲 個 体 の 特 徴 な どを調 査記 録 した。 聞 き取 り調 査 対 象 者 は表 I l l - 2 9 に示 した。
-86-
表 回 -24 四
国東 部 地 域 (剣 山 周辺 地 域 )の ツキ ノ ヮグ マ生 息 域 と標 高
( l k 冊 メ ッ シ ュ数 )
確 実 情 報 ( 捕獲 ・皮 は ぎ)
標 高 (x100m)
1 9 7 5 年以 降 1 9 7 4 年以 前
推定分布情報
1 9 7 5 年以 降 1 9 7 4 年 以 前
計
0 -
1
0
0
0
0
0
2 -
3
1
0
0
0
1
4 -
5
0
1
0
0
1
19
3
1
11
4
2
5
66
9
82
10 - 11
4
13
88
28
133
12 - 13
8
8
69
10
95
1 4 - 1 5
1
4
58
1
62
1 6 (
0
1
10
0
11
言
十
19
33
300
54
406
6 -
7
8 -
9
表 lll-25 四
国西部地域 (幡多地域)の ッキノワグマ生息域 と標高
( l k n メッシュ数 )
確 実 情 報 ( 捕獲 ・皮 は ぎ)
標 高 (x100m)
1 9 7 5 年以 降 1 9 7 4 年以 前
推 定 分 布情 報
1 9 7 5 年以 降 1 9 7 4 年 以 前
言
十
0 -
1
0
7
6
13
2 -
3
0
43
35
83
4 -
5
0
53
17
74
6 -
7
0
38
4
42
8 -
9
0
16
0
16
0
3
0
3
62
231
10 〈
言
十
160
表 田 -27 四
1)
国東 部 地 域 (剣 山周辺 地 域 )の ツキ ノ ヮグ マ生 息 域 と植生
( l k m メッ シュ数 )
植生 タイプ
サ サ 草原
推定分布情報
確実情報 ( 捕獲 ・皮 は ま)
1975年
以降 1 9 7 4 年以前 1 9 7 5 年以 降 1 9 7 4 年 以 前
0
言
十
1
9
0
10
0
5
28
低木 林
モ ミ ・ツガ林
ダケ カ ンバ林
0
0
5
1
0
27
0
0
0
6
0
6
ブナ林
6
10
91
12
119
サ ヮグ ル ミ
′
'ナ
フ ナーミス ラ
'
ナ
クリーミス ラ
0
1
1
0
2
1
1
1
6
9
0
0
10
2
12
コナ ラ林
'・
イヌンテ アオンデ 林
0
2
0
5
7
0
0
1
0
0
針 葉 樹 植 林地
伐跡地
そ の他
7
15
125
25
172
34
言
十
表 皿 -28 四
4
3
24
3
0
0
0
1
1
19
33
300
54
406
1)
国東 部 地 域 (剣 山周辺 地 域 )の ツキ ノ ワグ マ生 息 域 と植生
( l k 研メ ッ シュ数 )
植生 タイプ
推定 分布 情報
確 実 情報 ( 捕獲 ・皮 は ぎ)
1 9 7 5 年以 降 1 9 7 4 年以前 1975年以 降 1974年 以 前
計
モ ミ ・ツガ林
ヨナ ラ林
10
1
10
0
10
ア カマ ツ林
・
ウラン B カ
ウ林
34
32
72
2
0
2
ンイル 萌芽 林
12
3
15
針 葉 樹植 林 地
畑 ・水 囲
その 他
90
19
111
2
5
7
0
1
1
160
61
229
言
十
11
1)水面部 などでの欠 測 メッシュが あ るため標高頻度分布 の表 とは メ ッ シュ数 が異 なる
-88-
(2)結 果
1 ) 捕 獲地点分布
昭和 3 6 年 ( 1 9 6 1 ) 以降 の ツキノ ワグマ捕獲 は剣山周辺域 に限 られ る。 その うち地点 が 判
明 した2 2 地点 ( ただ し、1 9 6 8 - 6 9 年、東祖谷山村 での3 個体捕獲分 はまとめて示 してあ る)
の分布 を図 I l l - 1 3 に 示 した。 また、 図 田 - 1 3 に 対応す る、捕獲地点 ごとの捕獲方法、
捕獲個体 の特徴、 な どを表 田 - 2 8 に
示 した ( 表l l I - 2 8 の 捕獲数 は鳥獣関係統計 とは一
致 しな ところ もある ( 例えば1 9 7 0 年、鳥獣統計では徳島県 の捕獲 がないが表 田- 3 - 7 では 1
頭捕獲記録 あ り) 力 S t t l l I - 2 8 で は聞 き取 り調査 その他資料 の結果 に従 った) 。 捕獲方法
として は、1 9 6 8 年に初 めて オ リを使 った捕獲 が 出て きて い る。捕獲地点 としては、図 I l l ―
2 2 の 分布 図 とも対応す るが、剣山周辺 の国道 4 3 9 号線 と国道1 9 5 号線 にはさまれた地域 、
村域 では木沢村、木頭村 、東祖谷山村 および物部村 に集中 してい る。 この うち、剣山西 側
の東祖谷山村域 での捕獲 は、1 9 6 8 - 6 9 年
に集中 してあ った ものの 、 その後 は1 9 7 5 年の捕獲記
録 I 件 を除 いて捕獲 は見 られな い。捕獲者 は、営林署関係を除 いて比較的特定 の猟師 に集
中 して い る。
分布域外縁
図 田 -13 四
国 東 部 剣 山 周辺 地 域 に お け る ツキ ノ ヮ グマ捕獲地点 分 布 (1961-1978年 )
表 Ill-28 四
地
・
捕 獲
…
月, 日 村 域
点 年
国 におけるツキノワグマ捕獲記録 (1961-1987年)
捕獲者名
捕獲 捕 獲個
方法 体 特徴
①② ③ ④ ⑤
メ ス1
谷 安行、他 1 銃
田俊治
銃
オ ス1
植
他 1 ナ タ オ ス1
植 田俊治、
ヽ オス 1
関 口唯由、他 1 銃
メ ス1
北 井
銃
一
夫
銃
メ スl
上 元
オ ス1
竹 岡金太郎 銃
銃 オ ス1
⑥ 6 8 1 1 . 2 2 木 頭村 谷 昇
6 8 不 明 東 祖谷山 船本
銃 不 明1
ワナ 不 明 2
6 8 不 明 東 祖谷山 朝比奈
6 8 不 明 東 祖谷山 高橋邦津男 ワ ナ 不 明 2
①
6 9 不 明 東 祖谷山 高橋邦津男 ワ ナ 不 明 4
7 0 1 2 , 2 9 木沢 村 藤 川府治
オ リ メ ス1
リ不 明
7 0 不 明 物 部村 宗 石功
オ
7 1 8 . 1 3 木 沢村 東 山義定
オ リ メ ス1
7 1 9 , 0 8 木 沢村 東 山義定
オ リ メ ス1
61
62
63
14
64
64
66
冬 木 頭村
1 1 . 2 8 木沢 村
1 2 , 0 4 木沢村
1 2 . 1 9 木沢村
冬 木 頭村
1 2 , 2 9 木 頭村
1 . 2 1 木 頭村
情報源
備 考
北
体
体
体
子
⑤
捕
犬
③③ ①
地
営
営
営
捕
川地区
名
産2 0 貫
植
1
8
買、犬使用
重
植
ヨ1 0 貫、犬使用 植
グマ 1 頭 づれ 名
情報 と同一 か ? 木
蔵謙次郎
田俊治
田俊治
田俊治
蔵謙次郎
沢村史
獲地点不明 ( 蜂谷) 木沢村史
名蔵謙次郎
使用
点不明 ( 本人死亡) 尾形 、中野
林署名頃担 当区 尾 形、中野
林署名頃担 当区 尾 形、中野
林署名頃担 当区 尾 形 、中野
東 山、植 田
獲地点不明
石功
木沢村史
木沢村史
アラ
オ リ 不 明 1 地 点不明 (イ
イ山)宗 石功
ワ
71 不 明 物 部村 宗 石功
木沢村史
リ オ ス1
オ
① 7 2 6 , 0 7 木 沢村 東 山義定
ス
1
、
1
2
頭
メ
木沢村史
リ
オス
捕獲
オ
② 7 2 1 1 . 1 5 木 沢村 東 山義定
ス
1
木沢村史
リオ
オ
① 7 3 1 1 . 2 4 木 沢村 東 山義定
ス
1
木沢村史
リオ
オ
① ' 4 8 . 1 2 木 沢村 東 山義定
銃 不 明 1(東 祖谷山最後 の捕獲)尾 形、中野
⑮ 75 不 明 東 祖谷山 不明
東山、植田
オ リ メ ス1
① 75 6月
木 沢村 東 山義定
ス
1
東山、植田
リ
オ
山義定
オ
沢村
木
東
0 76 11月
ス
オ
1
リ オ
名蔵謙次郎
① 776月 下旬 木頭村 不 明
(1977年 (昭和 52年)木頭村 の10頭捕獲記録 (62年度四国地域表 3参 照)は まちが いか :東 山)
東 山 、植 田
銃
不 明1
① 77 不 明 木 沢村 湯 浅兄弟
ス
2
銃
ス
2
メ
8
0
1
8
親
ナ
ラ
田
1
、
樹洞
徳 島新聞
由、
メ
子、
子
唯
他
④ 7 8 2 . 1 4 木 沢村 関
?
名
ス
1
、
2
犬
を使
う、親子
蔵謙次郎
78 冬
銃
オ
子
木 頭村 伊 浦 進
、ラ
7 8 2 . 0 6 木 沢村 湯 浅邦照、
樹洞 徳 島新聞
オ ス ユ 体 重1 0 0 k g ナ
他 3銃
名
蔵謙次郎
8 0 不 明 木 頭村 仁 井寅雄、
他 1 手 づかみ 子 1
いたので
がす
1
頭
したが
ぎて
放逐
頭村役場)
でオ
:
木
リで
捕獲許可期間
〔
捕獲
( 1 9 8 5 年 木頭村
8 7 2 . 0 9 物 部村 中 平忠男、他 2 銃
メ ス I 樹 洞で、5 7 k = . 8 才 山 崎義行
中 : 図 2 の 地 点 番号 に対 応
ホ中: 西 暦 年 の下 2 け た年 ( 1 9 0 0 年
代) を 示す
-90-
営
林署
宗
一
・
表 I I I - 2 9 四 国地 域 の ツキ ノ ワグ マ捕 獲 情 報 分 布 情 報聞 き取 り対 象 者 覧
度)
( 昭和 6 2 . 6 3 年
県
町
高知県 物
‐
村
氏
部村
萩
宗
名
石
野
山崎
高瀬
(所
(営
功
(鳥
雄 三
(地
義 行
サ トル ( 物
高橋 邦 津男
三宮 一 精
東
林署員)
獣保護員)
区猟 友 会 長 )
部 村 役場 )
〈 須 崎 営 林 署 、元 東祖 谷 山 名頃 担 当 区 )
高 知 県庁 )
(元
獣 保護 員 )
田 久 信
(鳥
祖 谷 山村 喜 田 稔
尾形 充 久
中野 寛 一
祖 谷 山村 役場 )
師)
俵 裕
日浦 美 時
(東
(猟
(猟
(東
(東
山 滝 一
東山 義 定
(地
(猟
区猟 友 会 会 長 )
師)
植田 俊 治
(猟
師)
井 寅 雄
名蔵 謙 次郎
(猟
(猟
友 会 会長 )
師)
十和 村
徳 島県
属 区分 )
本沢 村
木頭村
太
中
仁
師)
祖 谷 山村 文 化 財保 護 審 議 会 長 )
祖 谷 山 村民 族 資料 館 )
順不同
2)捕 獲オ リ
上 記 の よ うに オ リを 使 った ツキ ワグ マの 捕 獲 は1 9 6 8 年以 降 に 出 て くる。 捕 獲 オ リは長 さ
2 m 、幅 l m 、高 さ1 冊
程 度 の 大 き さで 側 面 が 3 枚 、上下 面 2 枚 、扉 部 か らな る鉄 ワ クに よ る組
立 オ リで 、日 中式 オ リの 原 型 タ イ プを 示 して い る。 オ リの 構 造 の発 案 は 名 頃担 当 区 の 朝 比
奈 氏 に よ る。捕 獲 の ため の エ サ に は ミツバ チの 「カ ス」 に ミッを つ けた もの を用 い た 。 東
祖 谷 山 村 の 名頃 で捕 獲 され た ク マ は行 き先 が きま るまで は 名 頃 で 飼 育 した ( 捕獲 オ リに関
して は高 知営 林 局 、中脇 氏 か らの 聞 き取 り調 査結 果 と して ま とめ た ) 。
5.謝 辞
四 国地 域 の 本 調 査 に 当 た って は、徳 島 県林政 課 、徳 島 県猟 友 会 、高 知 県環 境 保 全 課 、古
屋義 男 氏 ( 高知女 子 大学 ) の 皆様 に 、 また本 文 中 で 聞 き取 り対 象者 と して 示 した 皆様 の ご
協 力 を い ただ いた 。 ご協 力 を いた だ いた 皆 様 に深 く感 謝 いた します 。
引 用 文 献 ・資 料
古屋 義 男 ・森 川 囲康 ( 1 9 8 4 ) 四 国 の 哺乳 類 . 動 物 と自然 1 4 ( 4 ) : 4 - 9 .
古屋 義 男 ・金尾 彰 子 ・竹 内美希 子 ( 1 9 8 1 ) 高
知 県 にお け る哺乳 類 の分 布 と植生 . 哺 乳
動 物 学 雑 誌 、8 ( 6 ) : 2 1 5 - 2 2 5 ,
日本 野 生 生 物 研 究 セ ンタ ー ( 1 9 8 7 ) 過
徳 島 県 ( 1 9 8 3 、1 9 8 4 、1 9 8 5 ) 指
去 にお け る鳥 獣分 布 情 報 調 査報 告 書 . ( 未
定 鳥 獣 等保 護 調 査 一 ツキ ノ ワ グマ の生 息 状 況 の概 要
( 昭和 5 7 年度 、 5 8 年度 、5 9 年度 調 査 ) . ( 未
-92-
発表 )
発表 )
【III章西 日本 の ッ辛ノワグマ地域個体群生息状況基礎調査】
5.そ の他 の孤立分布域 と生息状況 の比較
米 田
政 明
・
1.ソ 手ノ ワグマ孤立分布域 (下北半島 ・東中国 。九 州)
西 日本 の ッキノワグマ地域個体群 のま退地域 と して これまで述 べ た 3地 域 、紀伊半島、
西中国 、四国地域 の他 に、下北半島、東中国、九州 もツキノ ワグマの孤立分布 域 と して上
げ られ る。 ここで は、そ の他 の地域 として下北半島、東中国、九州 の ツキノワグマ生息状
況 について 資料検討 か らそ の概要 を述 べ 、 さらにこれ ら孤立分布域 の生息状況、捕獲状況、
生息環境 についてその概要 を比 較 して検討す る。
(1)下 北半島
下北半島 の ツキノワグマ分布域 は、東北地方脊梁山脈 の北端 にあ り東 日本 の連続 した ツ
キノワグマ分布域 の北端 で もあ る八 甲田山地域 とは、野辺 地 一小原湖 のほ地 で分断 されて
いる。 また、下北半島 の中 で も分布域 は半島先端 の恐山山地分布域 と半島基部 の吹越 山地
分布域 とはむ つ低地 によ って分断 されている (野生生物研究 セ ンター 、 1984)。 半 島基部
の吹越山地部 では、 ヒバ林 の伐採 などによる生息地環 境 の改変 が進 んでいる。 このよ うに
分布域 が孤立 化 して い る状況 で、1986年の場 合 で 3月か ら10月の約 3カ 月間 に半 島先端部
の佐井村 で 7頭 、大間村で 13頭 、計 20頭 の ツキノワグマが有害獣駆除 と して捕獲 され
た記録 がある。1986年は、東北 ・北海道地方全体 に堅 果類 が不作 で クマ類 が望山 に出没す
る 「異常 出没」現象 が見 られた年 で ある こと もこの大量捕雄 に作用 した と推定 され る。 こ
の時 の捕獲方法 と しては、す べ て ドラム缶 ワナが使用 された とされ る。半島部 とい う地形
的要素か ら分布域が孤立化 し、その中 で も陸奥低地 の存在 で分布域 が さらに細分化 されて
いる状況 の中 で このよ うな強 い捕獲圧 がかけ られて いることは、地域個体群 に強 い影響 を
及 ぼ しているもの と考 え られ る。
(2)東
中国地域
東中国地域 の ツキノワグマ個体群 とは ここでは、兵庫県北西部、鳥取県東部、岡山県北
東部 の 3県 の県境 の水 ノ山、須賀 ノ山、三宝 出地域 に分布す る個体群 を示す。ただ し、岡
Ⅲ 日本野生生物研究 セ ンター
山 県 で の分 布 域 は東 粟 倉村 、西 粟 倉 村 な ど ご く一 部 に 限 られ 、捕 獲 数 も少 な い。 兵庫 県 と
鳥 取 県 の生 息 状 況 につ いて は不 明 な点 が 多 い。 第 2 回 自然 環 境 保全 基 礎 調 査 時 の 資料 に よ
れ ば 、東 中 国 3 県 の ツキ ノ ワグ マ分 布域 は 5 k 冊メ ッ シュで 7 5 メ ッ シュ、 l k m メッ シュで 3
3 1 メッ シュで あ る ( 環境庁 、1 9 7 9 : 野 生 生 物 研 究 セ ン ター 、 1 9 8 0 ) 。 これ は、他 の孤 立分
布 域 、例 えば前項 で示 した 四国 の 剣 山周 辺 の 分布 域 な どに比 べ て も同 じ くらいか それ よ り
狭 い分 布状 況 で あ る こ とを示 して い る。
東 中 国地 域 にお け る近 年 の狩 猟 捕 獲 数 は 3 県 の 中 で は鳥 取 県 が2 0 頭か ら3 0 頭台/ 年 、兵
庫 県 が 1 0 頭台 / 年 で 、岡山 県 で は1 9 1 5 年の 1 頭 捕 獲 以 降 の 狩 猟 によ る捕 獲記 録 は な い く兵
庫 県 にお け る ツキ ノ ワグ マ捕 獲 は、 県北 東 部 の 京 都府 県境 で の 捕獲 も考 え られ るが 、近 年
は県北 西 部 で の 捕獲 が 大 部 分 を しめ る と され る) 。 近 年 ( 1 9 8 0 年代 ) の 有 害 駆 除 捕 獲 は年
ご との パ ラつ きが 多 い が 、鳥 取 県 と兵庫 県 を 合 わ せ て平 均 7 . 5 頭/ 年 で あ る。 岡 山県 にお
け る ツキ ノ ワ グマ の有 害 獣駆 除 捕 獲 は昭和 4 3 年度 以 降 記 録 され て な い。 分 布域 が 狭 い こ と
を 考 え る と、東 中 国地 域 にお け る単 位面 積 当 りの ッキ ノ ワ グ マ に対 す る狩 猟圧 は極 めて 高
い と判 断 され 、 この高 い狩猟 圧 が東 中国 山地 地 域 個 体 群 を よ り衰退 させ る こ とが心 配 され
る。
( 3 ) 九 州地 域
九 州 で は、昭 和 1 6 年 ( 1 9 4 1 ) 年以 降 ツキ ノ ヮグ マ の 捕 獲 が な く、第 2 回 自然 環 境 保 全 基
礎調 査 において も確 実 な生 息 情 報 が 得 られ なか った た め絶 滅 した もの と見 な され て きた (
野 生 生 物 研究 セ ンタ ー 、1 9 8 0 ) 。 しか し、 1 9 8 7 年1 1 月に大 分 県 祖 母 ・傾 山 系 で 1 頭 の オ ス
の ツキ ノ ワグ マ が 捕 獲 され た 。 そ の 捕獲 個 体 の 出 自 につ いて は、 歯 の摩 耗 状 況 や 形 態 的特
徴 か ら九 州産 で は な い との意 見 も出 され て い るが 、大 分 県緑 化 推進 課 ( 1 9 8 8 ) 、環 境 庁 (
1 9 8 9 ) で は野 生 の 九 州産 の野 生 の ツキ ノ ワグ マ で あ る可 能 性 は否 定 で きな い と され た。 九
州 の ツキ ノ ワグ マ を地 域 個 体 群 と扱 うに は まだ 資料 が 少 な く問題 は残 るが 、以 下 、孤 立分
布 域 の 比 較 で は一 地 域 と して取 り上 げ る。
2 . 分 布 域 の概 要 とそ の比 較
( 1 ) 分 布域 メ ッ シュ数 の比 較
西 日本 孤 立 分 布域 と して本 調 査 研 究 で取 り上 げ た 3 地 域 の 他 に 、下北 半 島 、東 中国 、九
州 の 資料 を加 えて ツキ ノ ワグ マ の 孤 立分 布 域 を比 較 ・整理 した ( 表 皿 - 3 0 : 分
いて は I 章 図 1 - 2 参
布 域 につ
照 ) 。 分 布 域 メ ッ シュ数 は 5 k n メッ シュ レベ ル で は西 中国地 域 が 多
いが 、 l k n メッ シュ レベ ル で は紀 伊半 島 で 多 い。 東 中 国地 域 は、 l k 冊メ ッ シュ レベ ル で は
四 国 よ り少 な いが 、 これ は四 国地 域 につ い て は本 調 査対 象 地 と して 詳 しい調 査 研 究 を行 い 、
l k m メッ シュ レベ ル で の分 布 図 を作 成 した の に対 して 、東 中 国 地 域 は 5 k 恥メ ッシュ レベ ル
-94-
で の分 布 図作成 を 目的 と して進 め られ た第 2 回 自然 環 境 保全 基礎 調 査 資料 を l k ロメ ッ シュ
レベ ル の分 布 情 報 と して作成 した もので 情 報 精 度 は荒 い。 この た め 、東 中 国地 域 につ いて
き らに精 度 の高 い調 査 を行 え ば 、 l k m メッ シュ数 と して の分 布 域 メ ッ シュ数 は も う少 しふ
え る もの と考 え られ る。
表 III-30 ツ
関 係
地域
ヰノワグマ孤立分布域 の分布状況 の比較
布 メ ッ シュ数
分布域主要
分
3)
地形区分 l k m F サン■1 ) 5 k E ん ンュ2 ) 5 k n ん ンュ
県
紀伊半島 三 重 県、奈良県、和歌山県 紀
西中国 島 根県、広島県、山田県 中
四 国
高知県
四
徳 島県、
下北半島5 , 青 森県 '
鳥取県、岡山県 氷
東中国 兵 庫県、
九 州
大 分県、宮崎県
九
伊山地
国山地 ・
国山地
ノ山周辺
1,259
1,065
635
1,000G〕
331
116
160
28
62
75
92
146
124〕
州山地
1 ) 本研究 その他資料 による1 9 8 0 年代生息情報 メッシュ数
2 ) 第2 回 自然環境保全 基礎調査 ( 1 9 7 7 )
メ ッシュ表記
3 ) 本研究 その他資料 による1 9 8 0 年代生息情報 を5 k 田
4 ) 確実生息情報 の み
5 ) 野辺地、小川原湖以北
6 ) 野生生 物研究 セ ンター ( 1 9 8 4 )
( 2 ) 捕 獲数状況 と捕雄方法
本調査 で現地調査 を行 った西 日本 3 地 域 と、その他 の孤立分布域 として ここで取 り上 げ
ている3 地 域 の うち東中国地域 におけるツキノワグマの狩猟 と有害獣駆除 による捕獲数 の
5 年 間平均 ( 昭和 6 0 - 6 2 年は 3 年 間) の 変化 を表 2 に 示 した。全国平均 と しては、狩猟捕獲
数 は昭和 4 0 年代後半 、有害駆除捕獲数 は昭和 5 0 年代前半 に捕獲数 の ビー クが きてい る。 こ
こで取 り上 げた 4 地 域 については、西中国 と東中国地域 の捕獲数 が全国 の捕獲数推移 と同
様 の傾向 を示 してい るが、紀伊半島では狩猟捕獲数 は漸減傾向を示 し、四 国 における捕獲
数 は低 い水準 で推移 し、昭和 5 0 年代後半 ( 1 9 8 0 年代) に は狩猟 と有害獣駆除を合わ せて も
1 頭 以下/ 年 と捕 獲数 はご く少 な くな った。下北半島 における捕獲数 の推移 は調査 してな
いが 、 ドラム缶 ワナの導入 によ り、近年有害獣駆除捕獲 が増加 して いるこ とが示唆 されて
い る。九 州 においては、上記 のよ うに昭和 1 6 年以降、昭和 6 2 年の大 分県 における捕 獲 まで
捕獲記録 はない。
日本 4地 域おけるツキノワグマ捕獲数 の推移
表 Ill-31 西
(5年 間平 均 ;頭 )
S30-59
昭 和 年 度
地域 区 分 30-34
西中国
四 国
東中国
響
猟 書
響
響
狩有 狩有 狩有 狩 有
紀伊半島
35-39
40-44
50-54
45-49
55-59 60-621) 平
均
24.8
7.2
20.0
7.2
27.0
11.8
29.2
1i.8
18.4
17.6
16.2
10.2
13.0
13.7
22.6
11.0
9.2
0.0
12.8
1.0
12.0
1.8
22.6
6.6
50.8
38.6
48.0
27.6
12.3
2 0 。3
25.9
12.6
0,0
0.2
2.6
0,2
1.0
1.6
4,2
2.0
2.2
2.4
9,0
12.6
0,0
0.2
1.2
0.4
4.4
1.4
2 0 。2
0,8
0.0
0.3
0.0
15,4
11.6
1 . 6
6,8
5 . 2
2 . 2
0 . 9
11.1
3 . 2
全 国 箸響 85 88 86 .. 26 開i : 1 盟
監: 蹴 社; 1 拙│ ! 鋼生' 鰐 社1
1 ) 3 年 間平均
( 3 ) 狩 猟 と捕獲方法 の地域比較
ツキノワグマ孤立分布域 における狩猟状況 の変化 について、聞 き取 り調査 その他 資料 か
ら簡単 にまとめてお く。西 日本 の 3 地 域 では、 いずれ もイノ シシ猟 が中心 に行 われて いて 、
狩猟期 の ツキノワグマ捕獲 はイノ シシ猟中 にクマ に出会 った場合 の捕獲 が主 にな っている
と考 え られ る。四国で は一 部 シカ猟 もある。下北半島 は中型獣 くアナグマ 、 キツネ、 タ ヌ
キ) と キ ジ、 ヤ マ ドリ猟中心 とな っている。地域 によ って少 しづつ事情が異 なる有害獣駆
除 の背景 と駆除 ( 捕獲) 手 段 につ いては次のよ うに整理 され る。
1 . 紀伊半島 イ ノ ンシ用 くくリワナと箱 ワナによる捕獲 が中心 、有害獣駆除 は植栽木 の
皮 は ぎ被害対応 とされ る
2 . 西中国
有 害駆除 が箱 ワナ と銃 猟 に加 え、一 部 で は くくリワナ も行われ てい る。有
害獣駆除 の主 な理 由は移動養蜂被害対処 と果樹園 ( ク リ園) 被 害防除。
3.四 国
現 在 は捕獲 は少 な い。1 9 6 5 - 8 0 年ごろまで の有害獣駆除捕獲 は箱 ワナ中心。
有害獣駆除 は植栽木皮 はぎ被 害対応
4.下 北
ド ラム缶 ワナによる捕 獲中心 ( 1 9 8 5 - 8 7 ) 。有害獣駆除 は果樹被害 と養蜂
被害対応
-96-
( 4 ) 生 息 環 境 の比 較
1 ) 林 業指標
生 息 環 境 の比 較 と して 、本 調 査 で ツキ ノ ワ グ マの 基 礎 調 査 対象 地 域 と した 西 日本 3 地 域
の森 林 指 標 を 、関 係 す る県 の 平 均 値 と して 表 I I l - 3 2 に 示 した。 基 礎 調 査 で 取 り上 げ た 3
地域 の 国有 林 面 積 率 は、四 国 で 高 く、人 工 林 率 は紀 伊 半 島 が 6 1 % と 最 も高 い値 に な って い
る。 人工 林 増 加 率 ( 1 9 6 0 年- 1 9 8 0 年間 ) は 西 中 国地 域 で 最 も高 い 。
日本 の ツキ ノ ワグマ分 布域 の林 業 指 標 の 比 較
表 Ill-32 西
( 1 9 8 0 年)
軍裏織)会議F
奇 結月釘度 ハ義輸掲)
ぬ慕欝形
地 域 1)
林野率
(%)
紀伊半島
73,8
5 . 3
61.0
23.4
4 . 0
1.27
西 中国
75,3
5 . 6
33。
2
17.2
3 . 3
2.00
四国
79.2
15.4
43.7
19.3
4 . 4
1 65
1 ) 紀伊 半 島 : 二 重 ・奈 良 ・和 歌 山 3 県 平 均 、西 中国 : 島 根 ・広 島 ・山 口 3 県 平 均 、
四 国 i 徳 島 ・高 知 2 県 平 均
2)1960-1980年
増加率
2 ) 標 高 と植 生 と分 布 域
前項 まで に 報 告 した西 日本 3 地 域 の基 礎 調 査 に よ る l k m メッ シュ レベ ル で の 生 息 情 報 と
標 高 お よ び植 生 との関 連 分 析 か ら、西 日本 の ツキ ノ ワグ マ分 布域 の 標 高 と植 生 の地 域 ご と
の 特 徴 を 検 討 した 。 分 析 対 象 と した 各 地 域 の分 布 メ ッ シュ数 は、紀 伊 半 島 1 1 5 4 メッ シュ 、
西 中 国 1 0 6 5 メッ シュ 、四 国 6 3 7 メッ シュで あ る。
階 ご との 紀 伊 半 島 、西 中 国 、四 国 の 3 地 域 の生 息 情 報 の 出現 メ ッ シュ を
① 標高 : 標 高2 0 0 冊
図 I l l - 1 4 に 示 した。 四 国 地 域 で は標 高 8 0 0 m 以上 の 、紀 伊半 島 地 域 で は標 高 6 0 0 m 以上 の
越 え る高
高 標 高 地 に生 息 情 報 が 多 い 。 これ に対 して 西 中 国山地 は もと もと標 高 1 , 0 0 0 n を
い 山地 は な い た め 、標 高 6 0 0 m 以下 に生 息 情 報 の大 半 が集 中 して い る。
② 植 生 : 標 高 と同 様 、西 日本 の 3 地 域 につ いて 、 l k 冊メ ッ シュ レベ ル で の生 息 情 報 と植 生
区分 の 対 応 か ら地 域 別 の ツキ ノ ワ グ マ分 布 域 の 植生 の特 徴 を見 た のが 図 I l l - 1 5 で あ る。
標高 分 布 の 差 を も反映 して 、四 国 、紀 伊 半 島 は モ ミツガ林 ( 天然 樹 針 葉 樹 ) 、 ブ ナ 林 で
も生 息 情 報 が 見 られ る。 た だ し生 息 情 報 の絶 対数 と して は、四 国 、紀 伊 半 島 と も人工 林
で 多 い。 これ に 対 して 、西 中 国 で は ミズナ ラ ・ヨ ナ ラ林 とマ ツ林 で生 息 情 報 が 多 い こ と
が特 徴 と して見 られ た 。
西日せゝキノワヴマ分布3岬
の地較
メッシュ数
臣ヨ 紀伊半島
囲 西中国
醸轟 四国
14く
12t13
lB-11
標 8r9
高 6-7
`
行 4キ
8
2-3
ジ
0-1
- 1
図 回
4 西 日本 の ツキ ノ ワグ マ分 布 域 3 地 域 の 標 高 構 成 の比 較 ( l k 冊メ ッ シュ数 )
西日本ツキノワゲマ分布3蜘
O
0比較
メリシユ数
500 680 780 80B
t00 200 30B 40日
聾 紀伊半島側封笛扮
71
田 西中国lN=1崎
踏)
麗露 四国(N車
モミツガ林
タ
マツ林
イ
プ
シ
謝作地・
住宅地
図 Ill-15 西
日本 の ッキ ノ ワグマ分 布 域 3地 域 の植 生 タ イ プ構 成 の比 較 〈l kmメッ シュ数 )
-98-
【lll章 西 日本 の ツキ ノ ワグ マ地 域 個 体 群 生 息状 況 基礎 調 査 】
6.頭 骨形態 の地理的変異
米 国
1.調 査 目的
政 明
・
‐
クマ類 の地域個体群 の保護管理 を検討す るうえでは、地域個体群 の生物学的特徴 を明 か
に してお く必要 があ る。地域個 体群 の特性 をみ るためには、遺伝的変異 や社会 ・行動面 で
の地域個体群 の特徴 な どきまざまな検討課題 があるが 、本調査研究 では ツキノワグマの形
態 の地理的変異 を検討す ることを 目的 として、頭骨形態 の変異 について調査 した。
2.方 法 と材料
一
頭骨形態 の変異 は、今回 は頭骨長 (切歯骨前端 後頭類後端)を 指標 と して調査 した。
年齢変異 を さけるため、材料 は成獣 の頭骨 を用 いた。成獣個体 め判断 は、歯根部利用 によ
る年齢査定 によ り、頭骨成長 がほぼ停止す ると考 え られ る7歳 以上 と判断 された個体 あ る
いは、蝶形骨 一基底後頭骨縫合が閉 じて いる個体 とした。材料 は、紀伊半島 の ツキノワグ
マ分布域 では、二重県立博物館 、、奈良県林業 試験場 および本調査研究 の中 で独 自 に収集
頭骨 6個 体 を用 いた。西中国地域 につ いては、島根県、広島県、山 田県 の担 当課 および地
方事務所 の協力 をえて収集 した捕獲 ツキノワグマの頭骨、 および兵庫県 の獣肉販売会社 に
収集 された頭骨 をゆず り受 け分析材料 とした。四国 については、1986年 1月に高知県物部
町 で捕獲 された メス成獣個体 を採取 し計測 した。
3.結 果
頭骨破損 がな く成獣 で、頭骨長 の計測 が可能 であ った個体 は紀伊半島地域 が 6頭 (メ ス
3頭 、 オス3頭 )、 西中国地域 が 11頭
(メ ス5頭 、 オス6頭 )だ けであ った。西 中国地
域 については、歯根部 セメン ト層 の観察 か ら捕獲 ツキノワグマの年齢構成 を求 めた。 各地
域個体群分布域 の中央部 のおよその緯度順 に、四 国地域 の 1個 体 を含 め本調査 で求 めた 3
つの地 域 のオス ・メス別 の頭骨長 を、石川県自山地域 (野崎 ・水野 、1986)と 秋 田県 (秋
田県、1983)の それ と比 較 して 図 III-16に 示 した。紀伊半島、西中国、四国地域 につい
中 日本 野 生 生 物 研 究 セ ンタ ー
て は 計 測 数 が 十分 で な く、地理 的変 異 を述 べ るに は材 料 不 足で あ るが 、図 I l l - 1 6 は 、紀
・
伊 半 島 と四 国 の ツキ ノ ワグ マの頭骨 長 は、相 対 的 に高 緯 度 地 域 にあ る石 川 県 秋 田 県産 の
もの に比 べ小 型 で あ る こ とを 示唆 して い る。 西 中 国産 の もの は、石 川 県 産 と紀 伊 半 島産 の
中 間 にあ るが 個 体 変 異 が大 き くは っ きり した 傾 向 を この 標 本 数 か らは述 べ る ことはで きな
い 。 各 地 域 と も性 的 2 型 は 明瞭 で、 メスは オ スよ り小 型 で あ る こ とを 示 して い る。 ツキ ノ
ワ グ マ の 各地 域 個 体 群 の特 徴 を 明 か にす るた め 、外 部 形 態 ・頭 骨 形 態 変 異 の 測定 に加 え遺
伝 、生 態 的 な地 理 的変 異 に関 す る調 査研 究 を 今後 さ らに進 め て い く必 要 が あ る。
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図 I l l - 1 6 日 本産 ツキ ノ ワ グ マ の 頭 骨 長 の 地 理 的 変 異
4.謝 辞
本 調 査 を進 め るに当 た って は、 次 の機 関 の 皆 様 の ご協 力 を い ただ いた 。 二 重 県緑 化 推 進
課 、二 重 県尾 庶 農 林 水 産 事 務所 、二 重 県熊野 農 林水 産 事 務 所 、三 重 県 博物 館 、奈 良 県 自然
保 護 課 、奈良 県 林業 試験 場 、島根 県 自然 保護 課 、島 根 県川 本 農 林 事 務所 、島根 県 浜 田 農 林
事 務 所 、島根 県 益 田農林 事 務所 、広 島県 森林 保全 課 、広 島 県 司部 農 林 事 務 所 、広 島 県 広 島
農 林 事 務 所 、山 田県 自然 保 護課 、山 田 県岩 国農 林 事 務 所 、 ( 株) 大 見 屋 。 材 料 の 収 集 調 査
に ご協 力 いた だ いた 皆 様 に 深 く感 謝 申 し上 げ ます。
引 用
秋 田県
(1983) 秋
文
田県 の ツキ ノ ワグ マ. 秋
献
田県 林 政 課 .
野 崎 英 吉 ・水 野 昭 憲 ( 1 9 8 6 ) 石 川 県産 ツキ ノ ワグ マ の 大 歯 と頭骨 の 計 測 値 . ‐ 石 川 県 白
山 自然 保 護 セ ンタ ー 研 報 、 1 3 : 4 9 - 6 3 .
-100-
IV章
J ヒ カ事 黄葦 ` こ お ` す る
地 域 イ団 体 群
ヒ グ マ の
α) 状 況
青
井
俊
樹
・
■.日 体群指標調査
(1)捕 獲数 の時代的変化 の地 域別比較
1)調 査方法
北海道各地域 の ヒグマ個体群 の指標調査 と してまず北海道 自然保護課 による ヒグマ捕獲
統計 (1968∼1988)を 用 いて各支庁別 の有害駆除及 び狩猟 による とグマの捕獲数 を明 らか
に した。つ いで北海道生活環境部 自然保護課 (1986)の ア ンケー ト調査 による とグマの分
布報告 を参考 に して、北海道内で平野部 の開発行為 な どで分断 されて い ると思 われ るい く
つかの地 域個体群 ごとの、捕獲数 の推移及 び1983∼1988年の 6年 間 の各地域 ごとの捕獲密
x10knメ ッシュに区切 り、総 メ ッ シュ当 り
度 を示 した。ただ し捕獲密度 とは各地域 を10k■
の捕獲数 を示 して い る。 そのため総 メ ッシュの中 には農耕 地や市 街 地 な ど明 らか に ヒグマ
の生息地 とな って いない部分 もある。 この うち、捕獲数 については、1982年以前 につ いて
の資料 は支庁 ごとの もの しか手 に入 らなか ったために各地域 に該当す ると考 え られ る支庁
を便 宣的 に統合 して示 した。
2)結 果及 び考察
① 全道 の傾向
各地域 ごとの捕獲数 の推移 を図 IV-1、 -2、 -3、 -4、 -5、 -6に 示 し、また地
域 ごとの捕獲密度 を図 Ⅳ -7に 示 した。 これによれば、捕獲数 の推移 で は、道 南地 区 と日
高 ・夕張地区 では特 に著 しい変化 は見 られな いが 、天塩 ・増毛地区 と道東 ・宗谷地区 では
1975年ごろを境 として、捕獲数 に著 しい減少 がみ られ る。ただ し道東 ・宗谷 地区 と日高 ・
夕張 地 区 の複数 地区にまたが る十勝支庁管内 の捕獲数全体 をみ ると年次 変動 はあ る ものの 、
一
捕獲数 に著 しい増減 の傾向 はな い (図IV-6)。 さらに積丹 ・恵庭地区 で も捕獲数 は 貫
して漸減 して いる。次 に地 域 ごとの捕獲密度 では、道 南地区 が最 も高 く、 それに 日高 ・夕
張 地区が続 き、最 も捕獲密度 が低 いのが積丹 ・恵庭地区であ った。
これ らの捕獲数 の増減及 び捕獲密度 の違 いは、直ちに生息密度 の違 い を反映 して い ると
は言 えない。地域 ごと、また経年 の生息密度 の比較を行 うためには、地域 ごとの捕獲努力
キ 北 海 道 大学
148
t卸
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110
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1解
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4 t e7e tS70 1ee0 1o3e tee4 13Se teSe
10T8 107 1070 1001 leee loaG Jo97
年度
図IV-1
道南 地 区 ( 渡島 ・櫓 山 支 庁 ) に お け る ヒグ マ 捕 獲 数 の 推 移
B
一
t
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禍
短鎮
碑
親
担
範
100e t 97B t07e 1674 1 07e t87S tee0 19ge tao4 19ee teee
196e 1971 1軒
3 10T5 ]- 1 379 1991 1003 1035 te37
年度
図Ⅳ -2
日高 ・夕 張 地 区 (日 高 ・空 知 支 庁 )に お け る ヒ グ マ 捕 獲 数 の 推 移
的
70
制
題額
調
とB
調
御
tB
1背基予携1考品ヤt桑読?弟競,れ畠?。
を
1☆生さ
宅出益?出品
年度
図 Ⅳ -3 積
丹 ・恵 庭地 区 ( 石狩 ・後志 ・胆 振支 庁 ) ! こ お け る ヒグ マ 捕 獲 数 の 推 移
-102-
∽
口
姫
範
額
卸
洵
B
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図IV-4 天
te71
1 673
10■
5
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1070
1001
1303
100G
:ag7
塩 ・増 毛 地 区 ( 留萌支 庁 ) に お け る ヒグ マ捕 獲 数 の 推 移
廻 獅 狗
駒補 獲 取
日
慟
0
1968 19秘 1972 1974 1976 1(ア
3 1980 1982 1984 1986 1988
1969 1971 1973 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987
犠
図n7-5
道東 ・
宗 谷 地 区 ( 網走 ・
上川 ・
根室 ・
釧路 ・
宗 谷 支 庁 ) に お け る ヒグ マ捕 獲 数 の 推 移
銘
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7B
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40
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10
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t97B te7e te74 197e
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〕 37 1070 1001 1 993 1005
数 の地 区 に また が る地 区 (十勝 支 庁 )に お け る ヒ グ マ捕 獲 数 の 推 移
図 IV-6 複
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天塩 ・明毛す
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106
98
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宗谷地区
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地南 地 区
図I V - 7 北
1ee7
462
ヽ、、
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日高 ・夕 5長│は区 1
海 道 にお け る地 域 ご との ヒグマ 捕 獲 密度 。 1 9 8 3 ∼1 9 8 8 年の 合計 を示 す 。 各 地
域 の 分 数 は、分 母 が 1 0 x 1 0 k m の
区 画 の 個 数 を、 また 、分 子 は この 期 間 の 捕 獲 頭 数
を 表 す 。地 域 分 け と捕獲 密度 の 資 料 は北 海道 自然 保 護 課 ( 1 9 8 6 ) に よ る。
-104-
に関 す る指 標 を調 べ 、捕 獲 努 力 量 当 りの 捕 獲 成功 数 で比 較 す る必 要 が あ る と考 え られ る。
そ のた め に も、今後 狩 猟 者 の 出猟 日数 の調 査 な どを行 って 、地 域 的 、時 間 的 に生 息 密 度 の
変 動 を モ ニ タ ー す る必 要 が あ る と考 え られ る。 また道 南 地 区 の よ うに捕 獲 密 度 が 高 く、 ま
た捕 獲 数 も高 い レベ ル で 維 持 され て い る地 域 で は他 地 域 で は見 られ な い よ うな個 体 群 の特
質 、生 態 や土 地 利 用 形 態 の違 い さ らに は餌 の 種 類 や 供給 量 な どの環 境 の特 異 性 が 存 在 す る
可能 性 が あ る。 した が って この よ うな地 域 で の ヒグ マの 生 活 様 式 を精 査 す る こ とは人 間 と
の 共 存 を探 る とい う点 で重 要 で あ る。
② 道 東 ・道 北 地 域
前節 の結 果 か ら天 塩 ・増 毛 地 区 と道 東 ・宗 谷地 区 に1 9 7 0 年代 の 中期 以 降急 激 に捕 獲 数 が
減 少 して きて い る こ とが わ か った 。 そ こで この地 域 の 個 体 群 指 標 に つ いて き らに詳 し く分
析 した 。 た だ しこの 2 地 区 の 分 け方 は阿 部 ( 1 9 8 0 ) を参 考 に した もの で あ るが 、 こ こで は
両 地 区 を 連 続 した 個 体群 と考 えて 、地 理 的 に よ り実 態 に即 した地 域 に分 けな お して 考 察 し
た。 す なわ ち道 北 地 域 の よ り北 部 地 域 と して 、宗 谷 、留 萌支 庁 管 内 を 、 また道 東 地 域 と し
て 釧 路 、根 室 支 庁 管 内 で 代 表 させ両 地 域 管 内 の捕 獲 資料 で比 較 検 討 した。
図 1-8に
道 北 地 域 、道 東 地 域 の 捕獲 数 の 年 次 変動 を示 した。 ま た道 東 地 域 の 捕 獲 数 が
最 も多 い知床 半 島 に 位 置 す る羅 日 町 の捕 獲 数 変動 を あわ せ て 示 した。 な お この 資料 は羅 臼
町役 場 の捕 獲 資料 を用 い た。 た だ し羅 臼 町 の 1 9 6 9 年以前 お よび 1 9 8 7 年以 降 の 資料 は入 手 で
きなか った 。 道 北 地 域 の 捕 獲 数 は顕 著 な 減 少 を示 して い るの に対 し、道 東 地 域 の 捕 獲 数 は
低 い値 で ほぼ安 定 して い る。 これ は、道 東 地 域 の 個 体群 がす で に1 9 6 0 年代 か ら衰 退 して い
た の に対 して 、道 北 地 域 の 個 体 群 が 近 年 に な って 衰退 して きた こ とを示 して い る と考 え ら
れ る。 北 海道 自然 保 護 課 ( 1 9 8 6 ) に よ る報 告 にお い て , 道 内 で も道 北 地 域 の 個 体 群 が も っ
と も顕 著 な 衰 退 傾 向 を示 して い る。 この 衰退 過 程 にお け る ヒグマの生 息 環 境 の変 遷 を モ ニ
タ ー す る こ とが で きて いな い の で結 論 づ け る こ とはで きな いが 、近 年 に な って道 北 地 域 に
お け る生 息 環 境 が 急 激 に悪 化 して きた と推 測 され る。森 林 の 農 耕地 化 お よ び人工 林 化 に よ
って ヒグ マの 食物 が 減 少 した り、 あ る い は林 道 網 の 発達 によ り狩 猟 が よ り容 易 に な って き
た とい え る。 また この地 域 で は、捕 獲 の ほ とん どが 4 月 か ら 5 月 にか け て の 残 雪 期 に お け
る有 害 鳥 獣駆 除 に よ る もので あ り、 この時 期 は林 床 のサ サ が積 雪下 に隠 れ 、 ヒグ マ の 足跡
の 発 見 お よび追 跡 が 容 易 に な る こ とか ら、捕 獲 し易 い と きに徹 底 して捕 獲 す る と い う捕 獲
形 態 が 続 い て い る。 特 に近 年 スノ ー モ ビル や無 線 機 が普 及 して きた ことは よ り狩 猟圧 の 高
ま りにつ なが って きて い る。 これ らの理 由 に よ り近 年 に道 北 地 方 の 個 体 群 が 衰 退 して い っ
た ので は な いか と考 え られ る。 この生 息 環 境 要因 に関 して は道 東 地 域 も含 めて 次 章 で 検 討
す る。
道 東 地 域 につ い て は、最 近 2 0 年
値 は 10∼ 40頭
くらい は捕 獲数 に顕 著 な変 化 は な い とは いえ 、 そ の 数
と低 い もので あ り、個 体 群 が安 定 して い る とい うよ り もむ しろ衰退 しき
った状 態 だ と考 え られ る。 特 に この地 域 の 変 動 は知 床半 島 部 の 変 動 を 反 映 して お り、半 島
部以 外 の地 域 で は よ り衰退 の度 合 が 顕 著 で あ る と考 え られ る。 お そ ら く この地 域 にお いて
もか つ て 、道 北 地 方 と同 じよ うな理 由で個 体 群 が 衰 退 して い った と推 測 され る。
1に
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翅
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1968 107□ 197倉 19T4 1976 1978 1980 1982 1904 1986 1988
1969 1971 1973 1975 1977 1979 19観1980 1985 1987
駐
一 勧 、諮 支 …
…
庁 訓l18、
廟
図I V - 8 道
… 羅臼町
東 ・道 北 地 域 にお け る捕 獲 数 の変動 ( 羅臼 町 の み 1 9 7 1 - 1 9 8 6 年)
( 2 ) 捕 獲個体群構成
捕獲数 の他 に個体群 の変動 をモ ニ ターす る指標 と して、捕獲個体群構成 の変化 について
調 べ た。 狩猟統計 に記載 された推定年齢 か らの齢区分 は梶 ( 1 9 8 2 ) に従 い、狩猟者 が 0 歳 、
1 歳 または 2 歳 と報告 した個体 および親個体 と共 に捕獲 された個体 を幼獣、狩猟者 が 3 歳
以上 を推定 した個体 または幼獣 と共 に捕獲 された個体 をその他 と した。
道北地域 および道東地域 における、1 9 7 2 年か ら1 9 7 5 年まで と、1 9 8 3 年か ら1 9 8 5 年までの
2 つ の期間 の捕獲個体群構成 の比較 を したのが、表 1 - 1 お
よび表 1 - 2 で
ある。両地域
とも2 つ の期間 に性比 、幼獣 とその他 の個体 の比率で有意 な差 はみ られなか った。 ( 性比
道北 X 2 = 0 , 7 7 , 道東 X 2 = 0 . 5 2 幼獣 とその他 の個体 の比率道北 X 2 = 0 . 8 5 , 道 東 X 2 =
0.37, と
0.05)
も1 こP 〉
-106-
と
道 北 地 域 ( 留萌 ・宗 谷 支 庁 ) に お け る1 9 7 2 - 1 9 7 5 年
表Ⅳ-1
1983-1986年
, 5 月の 2 期 間 の捕 獲 個 体群 構 成
1983-1986.5月
1972-75
メス
合計
オス
メス
幼獣
33
そ の他 7 5
29
62
12
11
56
131
31
30
61
合計
85
193
43
41
34
オス
108
合
計
23
年
表 I V - 2 道 東地域 〈根室 ・釧路支庁) に おける1 9 7 2 - 1 9 7 5 と
月の 2 期 間 の捕獲個体群構成
1 9 8 3 - 1 9 8 65年
1983,1986,5月
1972-1975
オス
幼獣
そ の他
合計
5
28
33
メス
合計
オス
メス
合
計
5
10
7
7
14
31
59
36
33
69
36
69
43
40
83
2 個 体群 の衰 退 ・分布 縮 小地 域 の生息 実 態調 査
(1)北
海道東部
1)生 息状況
あ る種 の動 物 の 保 護 管 理 を 考 え る と き、 そ の 生息 分 布 の 実 態 を お さえ る こ とは も っ と も
基 本 的 な 事 項 の 一 つ で あ る。 ヒグ マ につ いて は ア ンケ ー ト調 査 に よ る1 9 7 7 年にお け る生 息
ー
分 布 の 報 告 が あ る ( 哺乳 類 分 布 調 査科 研 グ ル ー プ 1 9 7 9 ) 。 今 回 は以 前 の ア ンケ ト調 査
の 結 果 お よ び本 報 告 書 前 章 の個 体 群 指 標調 査 か ら分 布域 の 縮 小 が 報 告 され た 根 釧 地 域 ( 釧
路 、根 室 支庁 管 内 ) で の 1 9 8 0 年代 にお け る ヒグマ の生息 分 布 につ いて 調 査 した。
① 調査方法
北 海道 狩猟 統 計 及 び羅 臼 町役場 資料 に よ り、 1 9 8 3 年か ら1 9 8 6 年まで に 捕 獲 され た とグマ
m シュ
の
の捕 獲 地 点 か ら生 息 分 布 の ア ウ トライ ンを把 握 した。 狩 猟 統 計 の 資料 は5 k t t x 5メkッ
冊メ ッ シュで 地 図 上 に変換 して 1 9 ' 7 時
で 報 告 され て い るので 精 度 を統 一 す るた め l o k m x 1 0 kの
点 で の 生 息 分 布 報 告 と比 較 した。
② 結 果及 び考 察
図 I V - 9 は 1 9 8 3 年か ら1 9 8 6 まで に根 釧 地 方 にお け る捕 獲 地点 と1 9 7 7 年時点 で の 同地 域 の
生 息 分 布 を示 した もの で あ る。 低 平 野 部 で の 捕 獲 が きわ めて 少 な く、知 床 半 島部 に集 中 し
て い るのが わ か る。 1 9 7 7 年時点 の分 布 と比 較 して も、北 部 の 山 系 か ら東 部 の 白糠 丘 陵 地 帯
で の捕 獲 が ほ とん どな 卜ヽこ とか ら知 床 半 島 部 が現 在 の分 布 の 中 心 とな って 来 て い る と考 え
られ る。 一 例 で あ るが 低 平 野 地帯 の 海 岸 部 で 捕 獲 が 見 られ るが 、 これ は沢 沿 いの 河畔 林 を
伝 わ って 海 岸 まで 出 て きた もので あ る。現 地 に お け る聞込 みで は、 近 年 夏 期 に しば しば牧
草 地 に 隣接 す る河畔 林 に ヒグ マ の痕 跡 が 見 られ るよ うにな った との こ とで あ る。 これ は こ
の地 域 で大規 模 に造 成 を試 みて い る パ イ ロ ッ トフ ォ レス トが 次 第 に成 林 して きた こ とに よ
り、 この 林 と さ らに それ につ な が る河 畔 林 を伝 って 内陸 部 か ら行 動 圏 を広 げ る個 体 が 出 て
きた た め と思 わ れ る。 しか し痕 跡 が お もに初 夏 か ら夏 にか けて しか発 見 され な い こ とか ら、
この こ とを持 って通 年 の生 息 が 見 られ る生 息 分布 域 の拡 大 と見 る こ とは まだで きな い 。
2 ) 生 息 環境 の分 析
① 土 地 利 用 の変 化
図 Ⅳ - 1 0 は 根 釧 地 方 にお け る1 9 6 0 年か ら1 9 8 0 年まで の 耕 地 面 積 及 び車 地 面 積 〈合 わ せ
て経 営 耕地 面 積 ) の 変 化 と、 1 9 7 0 年か ら1 9 8 5 年まで の天 然 林 面 積 と人工 林 面 積 の変 化 を5 年
毎 に あ らわ した もので あ る。 1 9 5 5 年以 前 と1 9 8 1 年以 降 の 農 地 の統 計 は入 手 で きなか った 。
また 、 1 9 6 0 年以 前 の林 業 統 計 に は天然 林 と人工 林 を 区別 した 記 載 が なか った 。
天 然 林 の 大 幅 な減 少 とそれ に対 す る農 地 面 積 の 急 増 が 顕 著 で あ る ことが 判 明 した。 農 地
の 急 増 は、 1 9 6 0 年前 後 を契 機 と して顕 著 に な って きたわ が 国 の高 度 経 済成 長 に対 応 した農
業 経 営 の 近代 化 、農 業 構造 の 改 善 を 目指 す 方 向 で 歩 み だ した こ とに関 連 して い る。 す なわ
ち北 海 道 で は畜 産 部 門 を最 大 の拡 大 部 門 と して 、 国営 、道 営 の 草 地 開 発 事 業 が 開 始 され 、
と りわ け根 釧地 方 は一 大 酪 農 基 地 と して の 地 位 が 高 ま って きた く北 海 道 1 9 6 3 ) 。この こ とが
この地 域 の森 林 開 発 、農地 拡 大 に大 きな影 響 を与 えて い る。 また一 方 で は人工 林 の 増 加 も
著 し く2 5 年間 に約 8 0 % の増加 を見 て い る。 これ は国 有 林 の 林 種 転 換政 策 及 び パ イ ロ ッ トフ ォ
レス トの造 成 によ る と ころが大 き い と思 わ れ る。 この 一 大 人五 林 で あ るパ イ ロ ッ トフ ォ レ
ス トは大 面 積 にわ た つて単 純 な植 生 地 を生 み 出す 一 方 で 、か つ て 原野 で あ った と ころ に森
林 が で きる こ とに よ り、前 述 した よ うに ヒグ マ の移動 経 路 と して 利 用 され る側 面 も否 定 で
き な い。
-108-
お ま 区百
生 と 区西
図 rv-9(1) 根
釧 地 方 に おけ る1977年時点 の ヒグ マ生 息 分 布 図 (原 図 、梶 (1982))
図 IV-9(2)根
釧地方 における1980∼1986年の とグマ生息分布図
】
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2
5
天 然 林
△一 △
天然 林 面 積
ロー ロ
人工林面 積
◎― ◎
経営耕地面積
4
お
経
よ
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面
積
工 林 面 積
耕 地
人
3
2
196019651970197519801985
図IV-10 根
釧地方 における天然林、人工林および経営耕地面積 の変化
②生息環境現 況 デー タベ ー ス
とグマの生息域 の環境評価 のデ ー タベー ス と して植生図 と土地分類図 を用 いて 、植生及
び標高 に関す る情報 をまとめた。生息分布域 の調査 か ら近年分布域 が後退 して きて い る根
のッシュに区切
釧地域 の低平野部 のケー ススタデイ地区 として、別海町管内 を2 k t t x 2 k Rメ
り、各 メ ッシュに 2 0 万 分 の 1 の 現存植生図 ( 環境庁) を 重ねて、最 も優 占す る植生 で 代
表 させた。表 I V - 3 に 各植生 タイ プ別 の メ ッ シュ数 とその割合 を、図I V - 1 1 に
ごとの代表植生 をあ らわ した。 まず 自然植生 の 占める割合 が 6 8 . 1 % と
メ ッ シュ
高 く、残 りの地
区 も牧草地、針葉樹人工林 と自然度 が きわめて高 いことがわか った。 しか しその うちわ け
-110-
国 囲 園田 図 図 田 田 回 □ 田 回
エ ゾ イ タ ヤ ー シ ナ ノ キ ー1 浮
落
下郎針広混交林
エ ゾ マ ツ ー ダ ケ カ パ ーサ サ 群 落
ト ドマ ツ ー エ ゾ マ ツ 1 ' 落、 ア カェ プ マ ツ 群 集
広葉樹二次林
高 山 低 木 林、 風 衝 地 草 原
針葉田道林j 山
ハ ンノキ群落
ヨン、 ヌマガヤ クラス ・
・
牧 草 地 ・畑 地 ・本 田
サ サ 群 落 ・伐 採 跡 地 群 落 ・砂 丘 植 生
市 街 地 ・解 放 水 域
図 IV-11 別
海町 における植生 タイプ別 メ ッシュ図 (2× 2 kmメッ シュ)
占め
を 見 る と、 サ サ 群 落 や ヨ シク ラ ス さ らに は牧 草 地 な どの解 放 的 な環 境 が 6 4 . 3 % を
低 くそ の ほ とん どが エ ゾイ タヤ ー シナ / キ
て い た 。逆 に森 林 の 占 め る割 合 が 3 5 , 8 % と
群 落 や ハ ンノキ 群 落 で あ った。 ハ ン ノキ 群 落 は ヒグ マの 食物 と して の生 産 性 が 高 い森 林 と
は い え な い。 また エ ゾイ タヤ ー シナ ノキ 群 落 は単 に上 層 木 だ けで 見 る と必 ず しも ヒグ マの
食 物 種 が 多 い とは いえ な いが 、 そ の 他 の 濯 木 類 あ る い は蔓 茎 類 な どが多 数 混生 して い る林
分 に お いて は 食物 供給 の点 で 価 値 が 高 ま って くる。
示す 。 標 高 1 0
ッ シュ単 位 で 示 され た 最 低 標高 頻 度分 布 を 図 I V - 1 2 に
nの
次 に l k t t x l kメ
0 m 以 下 の メ ッ シュが 7 0 % 以
上 を 占 め て い た。 この地域 が 出地 が 少 な く平 地 が 多 い こ とが
この 図 か らは っ き り読 み取 れ 、牧 草地 や草 原 の 多 い 、植生 メ ッシュに よ る分 析結 果 とよ く
符 合 す る。
表 IV-3 別
海 町 に お け る 2kmx2kmメ
ッ シュに よ る植 生 内訳
メ ッ シュ数
植 生 タ イプ
ェ ブ イ タ ヤ ー シナ ノキ群 落
ハ ンノキ 群 落
比 率 (%)
2 7
3 1 . 7
1 1
2. 8
1.
0
針 葉 樹造 林地
サ サ群 落
8 0
2 0。 7
ヨ シク ラス
4 4
1 1 .
4
0
自然 草 原
7
1,
砂 丘植 生
牧草地
2
0。 5
1 2 4
31.
合計
4 0 1
9 9 .
ttH3
鈍
輌
頻 度 %
78
,3
碑
4D
範
御
10
8
0 -99 100-199 200 299 300-390 400 499 500総 メッ シ ュ 欺 1 製リ
係 商 ( l k はl k n メッ シュ ・
図 IV-12
根 釧 地 方 に お け る最 低標 高階別 頻度 分 布
-112-
8
0
8
( 2 ) 北 海道北部
北海道東部 に引続 き、前章 の調査 で近 年 の捕獲数 の減少 が顕著であ った北海道北部 にお
ける生息状況 および生 息環境 に関 して分析 したも
1 ) 生 息状況
くに
北海道北部 ( 主 と して留萌 ・宗谷 ・上川 ・網走管内) と い って も面積 が1 7 , 0 0 0 k m 2 近
な り、 これ は四 国会域 の約 9 割 に もおよぶ。 したが って 一 日に北海道北部地域 とい って も
生息条件、環境 な ども地域 によ って大 きく異 な って い る可能性 があ り、一 括 して考 えがた
い面 がある。 そ こで北海道北部地域 において も、また全道的 にみて も ヒグマの分布 の最周
辺部 に位置す る留萌 ・宗谷支庁管内 とよ り中央部 に位置す る網走 ・上川支庁管内 とに分 け
て考 えてみた。 また両地域 のなかか らより周辺部 にある稚内市 、豊富町 ( 以上宗谷支庁管
内) 、 幌延町、天塩 町 ( 以上留萌支庁管内) と 北海道北部地域 で もも っと も南部 にあ り北
海道 の中央山系 との個体群 の交流 が考 え られ る興部町、雄武町 ( 以上網走吏庁管内) 、 下
川町、朝 日町 ( 以上上川支庁管内) を 重点調査地区 と して両者 を比較 しなが ら北海道北部
地域 の生息状況調査 を行 った 。本報告では、便宣的 に前者 を周辺 部 、後者 を基部 と呼 び前
述 の市町 を持 って代表 させた。
①調査方法
最初 に両地域 の捕獲数 の変化 の概要 を知 るため北海道狩猟統計資料 を用 いて、周辺部 に
以降 の数値
関 しては宗谷 ・留萌支庁、基部 に関 しては網 走 ・上川文庁 について 1 9 7 8 年
で比較 した。 つ いで各重点地域 の捕獲数変化 の詳細 を知 るため、周辺部 では稚内市 、豊富
町、天塩町 および幌延町 の 、基部 では雄武町、下川町 および朝 日町 について各町 に保管 さ
れていた統計資料 か ら、 1 9 6 7 年
以降 の数値 で比 較 した。 なお興部町 については 1 9 7
2 年 以前 の資料 が残 って いなか ったため比 較対象 か ら除 いた。 また生息分布 の時代的変化
を知 るために、前述 の両調査区 において 1 9 8 3 年
か ら1986年
マの捕獲地点 をl o k t t X 1 0 k mッ
メシュで地図上 に落 と し1 9 7 7 年
く哺乳類分布調査科研 グルー プ 1 9 7 9 ) と 比較 した。
までに捕獲 された ヒグ
時点 での生息 分布調査報告
②結果 および考 察
表 Ⅳ - 4 は 両地域 の捕獲数 の変化 を示 した ものである。宗 谷 。留萌支庁管内 では変動 は
あ るものの一 貫 して捕 獲数 が減少 して いる。前半 と後半 に分 けてみ ると後半 6 年 間 の捕獲
数 は前半 と較 べて約 4 0 % ま で減少 して お り、一桁台 の捕獲数 の年 が後半 には見 られ るよ
うにな った。 ついで 表 Ⅳ - 5 に 、稚内市 ・豊富 ・天塩 ・幌延町 と雄武 ・下川 ・朝 日両地区
における最近 2 0 年 間 の捕獲数 を 5 年 毎 の合計値 で示 した。周辺 部 での捕獲数 の一 貫 した
代 の初
減少傾向 は支庁管内 での捕獲数 の減少 よ リー 層顕著 で、 また この傾向 は 1 9 7 0 年
頭 にはすでに始 ま つていた ことが 明 らかにな った 。特 に最近 の 5 年 間 は最 初 の 5 年 間 の約
9 分 の 1 に まで減少 している。 しか しこの捕獲数 の減少 を、その間 の捕獲努力量 を考 慮 せ
ず た だ ちに生 息 数 の減 少 に結 び付 け る こ とはで きな い。 この地 域 の捕 獲 努 力量 を示 す 詳 細
な 資料 は残 って い な い が 、豊 富 町 の過 去 1 0 年 間 の捕 獲 努 力重 ( 表 I V - 6 ) を
見 る限 り大
きな変 化 は起 きて い な い。 また全 道 の狩 猟 免状 交 付 者 数 お よ び有害 鳥 獣 駆 除 許 可 証 交 付 数
の変 化 で は 1 9 6 0 年
代 前 半 に急 増 した後 若 手 の減 少 は見 た ものの 依然 高 い水 準 で 推 移 し
て い る ( 青井 投 稿 中) 。 したが つて 本 地 区 の 捕 獲努 力重 も近 年 大 きな変 化 が なか った と
仮定 す る と、捕 獲 数 の 大 幅 な減 少 は生 息 数 そ の もの の減 少 を示唆 して い る と考 え られ る。
一 方網 走 ・上 川 支 庁 管 内 で はや は り変 動 は見 られ る もの の顕 著 な減 少 傾 向 は認 め られ な
い 。前 半 お よ び後 半 各 o 年 間 の捕 獲 数 の 合計 値 で は後半 の方 が減 少 して い るが 、 これ は前
8 0 頭 前後
と飛 び抜 けて高 い捕 獲 数 を示 した年 が あ るた めで 、 この年 を除 けば ほ ば 毎 年
で安 定 して い るよ うに見 え る。 しか し基 部 の雄 武 ・下 川 ・朝 日町 の捕 獲 数 で は
1970年
代 末 まで は比 較 的安 定 した 推 移 を示 して い る もの の 、 1 9 8 0 年
半 に 120頭
代 に入 って か
らの最 後 の 5 年 間 はそれ まで の 各 5 年 間 に較 べ て約 半 数 に減 少 して い る。 す なわ ち北 海 道
一
北 部 周辺 地 域 の 捕 獲 数 は急 激 な 減 少 の 途 を た ど って 来 た の に対 し、基 部 で は近 年 まで比
較 的安 定 した状 態 を 保 って きた もの の 、最 近 減少 傾 向 が この地 域 で も起 きて きた と考 え ら
れ る。
表 IV-4 留
萌 ・宗谷支庁 および網走 ・上川支庁管内 における ヒグマの捕獲数 の変化
(1977∼
支庁
1988)
計
jヽ
計 198319841985198619871988′
197719781979198019811982小
留 萌 ・宗 谷 4 7 2 0 3 1
32 22 17 169 13
27
10
25 100
網 走 ・上 川 8 6 7 0 1 2 0
96 91 79 542 78
91
36
58 402
表 Ⅳ -5 北
海道 北 部 地域 の 周 辺 部 お よ び基部 にお け る ヒグマの捕 獲 数 の変 化
以 降 の 5年 毎 の 平均 )
(1967年
市町名
1967-1971
1972-1976
1977-1981
1982-1986
周辺部 : 稚 内 ・豊富 。天塩 ・幌延
56
17
11
6
基部 : 雄 武 ・下川 ・朝 日
90
87
81
43
-114-
富 町 にお け る春 期 ヒグマ駆 除 の 出動 数 と出動 延 べ 日数
表 IV-6 豊
年度
出動者数
延 ぺ 出動 日数
8
7
9
9
7
9
0
8
9
2 2 人
9 4 人 日
2 7
0 6
1
8
9
9
8
2
9
8
3
4
8
9
1 9
8 6
2 5
9 8
2 7
3 6
2 0
9 4
5
8
9
6
8
9
2 3
8 1
1 6
5 9
8
7
9
1 6
9 4
1 3
8 0
( 青井 投 稿中 よ り)
図I V - 1 3 、
I V - 1 4 は 両地区 におけ る生息 分布 の経年変化 を示 した ものであ る。周辺
時点 の分布 と比較す ると海岸 に近 い低地 で の分布 が見 られな くな り山岳
が 限 られて きた ことが判明 した。 一 方基部 では 1 9 7 7 年 時点 の分布域 と比較
部 では 1 9 7 7 年
地帯 に分布
して大 きな変化 は見 られなか った 。 これ らの ことか ら北海道北部 の特 に北側 の周辺部 で は
著 しい個体群 の衰退 が進 行 してお り、また近年南側 の中央山系 よ りの地域 にお いて も衰退
が始 ま ってい ることが考 え られた。
2 ) 生 息環境調査
①土 地利用 の変化
土地利用 の時代的変化 を知 るために、稚内市 、豊富町、幌延町、天塩町 および雄武 町 、
興部町、下川町 、朝 日町における 1 9 6 5 年
積 の変化 と、 1 9 6 0 年
以降 の経営耕地面積 および牧草地 、採草地面
以降 の天然林、人工林 の面積変化 を比 較 した。 ただ し市町村別 の
森林面積 に関す る資料 は入手 で きなか ったので 、両地区 の森林面積 の大半を占 め る国有 林
の資料 を用 いて比 較 した。資料 は経営 耕 地面積 に関 しては世界農林業 セ ンサ ス北海道統計
に関 しては旭川 営林 ( 支) 局 事業統計書 〈
)を
書 ( 1 9 6 6 , 1 9 7 1 , 1 9 7 6 . 1 9 8 1 , 1 9 8 6、森林面積
1961-1983)を
用 いた 。
図 Ⅳ - 1 5 に 両地区 の経営耕地面積 の変化 を示 した。基部 に較 べ周辺部 で農地開発 の進
一
捗 が顕著 であ ることがわか った。 この地区 は根釧地域 と共 に北海道 の 大畜産 、酪農生産
基地 と して指定 され、特 に 1 9 6 3 年
に国営革地開発事業 が 、 さらに翌 1 9 6 4 年
に道営
草地開発事業 が開始 された ことによ り急速 に農地、特 に草 地面 積 が拡大 して行 った。近年
圏 !fif
図r v - 1 3 ( 1 ) 1 9 7 7 年
時点 にお ける道北 周辺部 における ヒグマの生息分布図
( 原図、梶 、1 9 8 2 )
図 IV-13(2)
1 9 7 7 年時点 にお け る道 北 基 部 にお け る ヒグマの生 息 分 布 図
( 原図 、梶 、 1 9 8 2 )
-116-
図 IV-14(1) 1980∼
1986年 に お け る道 北 周辺 部 にお け る とグマ の生 息 分 布 図
図 rv-14(2) 1980∼
1986年 に お け る道 北 周 辺 部 に お け る ヒグマの 生 息 分 布 図
-117-
にな って 大 規 模 な農 地 開 発 はお さま った とは い え、過 去 2 0 年 間 に そ の 面 積 は約 3 倍 に拡
大 した。 一 方 基 部 は農 業 の 形 態 が 稲 作 お よ び畑 作 が主 な もの で あ り、農 地 利 用 に関 して は
きわ だ った 変 化 は示 して い なか った 。 しか し森 林 開 発 は 周辺 部 以 上 に進 展 して お り、天 然
林 の伐 採 、人 工造 林 化 が現 在 で も大 規 模 に行 わ れて い る ( 図 I V - 1 6 ) 。
② 生 息 環 境 現 況 デー タベー ス
とグ マの生 息 域 の 環境 評 価 の デ ー タ ベ ー ス と して植 生 図 と土 地 分 類 図 を用 いて 、植 生 及
び標 高 に関 す る情 報 を ま とめた。 稚 内市 ・豊 富 町 ・天 塩 ・幌延 町及 び雄 武 町 ・興 部 町 , 下
川 ・朝 日町管 内 を 2 k m x 2 k m の
メう シュに 区切 り、各 メ ウ シュに 2 0 万 分 の 1 の 現 存
植 生 図 ( 環境 庁 ) を 重 ね て 最 も優 占す る植 生 で 代表 させ た。 表 2 - 5 に 両 地 域 に お け る各
- 1 7 、 I V - 1 8 に 両 地 域 の メ ッ シュ毎 の 植
植 生 タ イ プの メ ッ シュ数 とそ の割 合 を、 図 Ⅳ
後 を 占 めて お り非 常 に 自然 度 が 高 い こ と
生 を あ らわ した。 両 地 域 と も自然 植生 が 7 0 % 前
が わ か った 。 いず れ の地 域 も自然 植生 の構 成 内訳 ので は森 林 が そ の ほ とん どで あ った が 、
占 めて いた 。 それ に対 し基 部
ー
述 す るよ うに高 海 抜 地 域 が広 い た め亜 高 山 的様 相 を呈 す る エ ゾ マ ツ ダ ケ カ ンバ
周 辺 部 で は山 火事跡 地 のサ サ 地 及 び再生 二 次 林 が約 3 0 % を
で は、 後
ーサ サ 群 落 が広 範 に分 布 して いた 。 また カ ラマ ツ、 ト ドマ ツを主 要 樹 種 とす る針 葉 樹 造 林
地 の 占 め る割 合 が 高 い の もこの地 域 の特 徴 で あ る。 しか し下 部 針 広混 交 林 も広 く分 布 して
お り野 生 動 物 に と って 良 好 な生 息 地 が保 た れ て い る と考 え られ る。 次 に両 地 域 の 最 低 標
-19に
高 頻 度 分 布 を 階級 別 に比 較 した もの を図 Ⅳ
陵地 帯 が 9 9 % 近
示 した。周 辺 部 で は 2 0 0 m 以
くを 占 めて い るの に対 し、逆 に基 部 で は 2 0 0 m 以
上 を 占 めて お り、特 に 4 0 0 m 以
上 の高 標 高 部 が 3 6 % を
下 の丘
上 の地 域 が 7 0 % 以
占 めて いた 。 周 辺 部 の は とん ど
が 低 標 高 の丘 陵地帯 で あ る こ とは、 スノー モ ビルの利 用 が 容 易 で あ る こ とを含 め て 、 とグ
マ の発 見 、捕 獲 を よ り容 易 に して い る と考 え られ る。
3 ) 捕 獲 地点 と生 息 環 境 の ク ロ ス分 析
ヒグ マ の生 息 域 の環 境 評 価 を 行 うた め に、 捕獲 地点 の環 境 要 因 の分 析 を 行 った 。 図 2 5 、 2 二 6 で 示 した 両 地 区 の1 9 8 0 年以 降 の ヒグマの 捕 獲 地点 の 分 布 図 と植 生 図 、土 地 分 類
図 を重 ね て 、各 捕 獲 メ ッ シュの環 境 要因 を 調 べ た。 な お これ らの地 域 は 、捕 獲 の 特 性 と し
て その大 半 が 残 雪 期 に有 害鳥 獣駆 除 によ つて 捕 獲 されて い る。 した が って 捕 獲 地 点 の 季 節
に よ る変 化 につ いて は検 討 で きなか った 。
道北 基 部 で は天然 林 と りわ け標 高 4 0 0 m 以
上 の比 較 的高 標 高地 でか つ エ ゾマ ツ ー ダ ケ
カ バ の 優 占す る森林 で の 捕 獲 が 最 も多 く ( 6 8 % ) 、
これ らの地 域 で は あ ま り開 発 が 行 わ
れ て い な い森 林 が広 範 に残 され て い る こ とが その原 因 の 一 つ と考 え られ る。 それ に対 し道
北 周辺 部 で は捕獲 地 点 が狭 い範 囲 に 限 られ て きて お り、 その ほ とん どが 標高 2 0 0 m 以
で か つ 下 部針 広 混交 林 お よ び広 葉 樹 林 で あ った ( 9 2 % ) 。
1977年
下
時点 で生 息 が 報 告
されて いた 低平 野 部 は牧 車 地 やサ サ 群 落 も しくは広 葉 樹 二 次 林 とな って お り これ らの 地 域
-118-
され て いた 低 平 野 部 は牧 草 地 や ササ 群 落 も し くは広 葉 樹 二 次 林 とな って お り これ らの 地 域
表Ⅳ-7 道
北 周辺 部 お よび基 部 にお け る植 生 タイ プ別 内訳 .
(2kmx2km)
植 生 タイ プ
周辺部
メ ッ シュ数 比 率 ( % )
ェ ゾ イ タャ ー シナ ノキ群 落
基部
メ ッ シュ数 比 率 ( % )
1 0 1
6. 5
1 2 3
1 9. 5
6 7
0, 9
1 1 6
1 8. 4
4 3
7. 0
1 6 3
2 5 .
2 7
4. 4
7
広葉樹二次林
2 0
3. 3
0
針菓構造林地
ハ ン ノキ群 落
3 1
5. 0
7 4
2 7
4. 4
0
0.
4
0. 6
1
0. 2
0, 7
1 0 8
1 7. 2
1 2 7
1 5 6
5
高 山 低 木 林 ・高 山 風 衝 地 草 原
合計
2
ヨ ンク ラ ス
牧 車 地 ・畑 地 ・水 田
自然 裸 地 ・伐採 跡 地 群 落 ・サ サ 群 落
市 街 地 ・解 放 水 域
2
下 部 針 広混 交 林
エ ゾマ ツ ー ダケ カ バ ーサ サ 群 落
ト ドマ ツ ー エ ゾ マ ツ群 落 、 ア カ エ ゾマ ツ群 集
6
6 1
4
5。 4
0. 8
1
3 7
0
1, 0
0
0. 0
6 2 9
1
.
9
1
0. 0
1 1 .
5.
8
0
9
0. 0
0. 0
1 0 0 .
0
で は近 年 ほ とん ど捕 獲 され な くな った こ とが 明 らか に な った。 す なわ ち道 北 基 部 で は、地
形 が 急 峻 な地 域 が 多 くか つ 高 標 高 地 に良 好 な天 然 林 が広 範 に残 され て い る こ と、 さ らに は
北 海 道 中央 山岳 部 の 大 雪 山 系 と隣接 して い る こ とに よ る個体 群 の 連続 性 な どか ら、捕 獲 数
の 減 少 傾 向 が 起 きて きた とは い え まだ極 端 な 個 体群 の 衰退 は起 きて い な い と考 え られ る。
そ れ に 対 し周辺 部 で は、地 形 が 緩 慢 で ハ ンテ ィ ン グが 行 い易 い こ と、低 平 野 部 に お け る農
地 開 発 が 著 しく進 捗 した 結 果生 息 地 の 分 断 、縮 小 化 が 進 ん で い る こ と、 さ らに それ に加 え
地 形 的 に も北 海道 の 周辺 部 に位 置 し個 体 の 補 充 が 行 い に くい とい った こ とな どか ら、捕 獲
数 の 急 減 は この地 域 の個 体 群 が 現 在 危 機 的 な状 況 に陥 って い る ことを あ らわ して い る と考
え られ る。
4)結 言
北 海 道 とい う一 つ の 島 で あ りな が ら ヒグマの 生息 状 況 は地 域 に よ って 大 き く異 な って い
る こ とが あ き らか に な った 。 しか し全 体 的 に 見 れ ば 、道 南 地 域 な どの 一 部 を除 いて 捕 獲 数
の 減 少 が 継 続 的 な 捕 獲 努 力下 で起 きて い る地 域 が 多 い。 しか も今 回調 査 した北 海道 北 部 の
周辺 域 や北 海道 東 部 の よ うに 回復 が 困 難 と思 わ れ る くらい個 体 群 が 衰退 して きた地 域 も見
られ る。 と りわ け、 北 海道 北 部 の 衰退 傾 向 は きわ め て 急 激 か つ 大 幅 で あ る。 しか しそ の よ
-119-
千h∝
単位・
砲
缶
卸
層
簿
勧
15
10
19砲
5
1研
1 館5
1980
犠
…基部
部 ‐
-馳
道 北 地 方 にお け る経 営 耕地 面 積 の 変 化
図 IV-15
単位・千h氏
1働
卸
C0
輌
磁
駒
旬
初
勧
10
0
19C0
1範
5
t軒
0
1975
1980
1985
牧
-基 舌
…
…
…
F A I 林 …周速 阪然淋 一 ナ
阪然林
基告
朝1 番
巡 林
図I V - 1 6 道
北地方 における天然林 および人工 林面積 の変化
因 翅目■ 日 図 剛 田口 □□ 回
図 IV-17 道
エ ゾ イ タ ヤ ー シ ナ タ キ ー肝 落
下 郎 a l 広滉 支 林
エ ゾ マ ツ ーダ ケ カパ →ササ 群 落
ト ドマ ツ ー エ ア マ ツ ロ
ト商、 ア カエ プ マ ツ ロ
‖楽
広棄田二 次林
高 山 ほ 木 林、 風 腐 地 革 原
│ 1 票田 道 林 地
ハ ン ノキ 8 1 落
ョ ン、 ヌ マ ガ ヤ ク ラ ス
牧H 地 ・畑 地 ・本 田
サ サ 研商 ・伐採跡 地 畔 落 ・砂丘 r d 生
「
打街 地 ・, 7 放水 械
北周辺部 におけ る植生 タイ プ別 メ ッシュ図
-121-
ー
ー
昼菫 エアイタヤ シナノキ 鮮落
レタ 下郁針広滉支林
ー
ー
岸増 エゾマツ ダケカパ ササ群落
田
ー
1案
ト ドマ ツ エ プ マ ツ 】辛落、 ア カ エ プ マ ツ ほ
日
広 翼問二次林
図
高 山 低 木 林、 風 衝 地 卓 原
眼
ハ ンノキ1 予
穂
回
ョ シ、 ヌ マ ガ ヤ ク ラ ス
ロ
車 地 ・畑 地 ・水 回
1文
i‖
「針菜田道林地
田J サ
サ 群 落 ・慨 探 跡 地 1 干
落 ・砂 丘 栖 生
7放
断旭, お
水域
lol市
図rv-18(1)道
北 基 部 にお け る植生 タ イ ブ別 メ ッ シュ図
( 雄武 ・興 部 町管 内)
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図 IV-18
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頻 度 %
何 卸 御 範 御 抑 短 範
道北基部 における植生 タイ ブ別 メ ッ シュ図 (朝 日 ・下川町管内)
0∼ 99100∼
図Ⅳ- 1 9 道
199200=299300-399400-499500‐
599600∼
2 輸 メッ シ ュ )
像商
(2は
2田
閲 辺部 国 測 隆 部
北地域 における最低標高階別頻度分布図
-123-
うな地 域 に お いて も、 多少 の見 直 しは され始 めた にせ よ い まだ に有 害 駆 除 に よ る捕 獲 が 押
し進 め られ て い る。 この こ とに加 え、産 業 構 造 の変化 に と もな う、土 地 利 用形 態 の 変 遷 が
ヒグマの生 息 環 境 に与 え る負 の影 響 も大 きな ものが あ る。特 に北 海 道 東 部 お よ び北 部 周 辺
域 に共 通 した 傾 向 と して 、厳 しい気象 条 件 に よ り換 金 作物 の生 産 が 困難 なた め 、広 大 な土
地 を必 要 とす る酪 農 ・畜 産 業 を唯 一 の営 農 形 態 とせ ぎるを得 ない こ と、 さ らに土 地 条 件 と
して低 平野 部 が広 範 に分 布 す る こ とに よ り、森林 、原野 の農 地 化 が大 規 模 に行 い易 い こ と
が あ げ られ る。 これ らの こ とが 、 この両 地 域 の ヒグマの生 息 環 境 条 件 を大 き く改 悪 す る こ
とに う なが った と考 え られ る。
しか しこ うい った 継 続 的 な高 い狩 猟圧 や生 息環境 の 改変 が 、 ヒグ マ の 個 体 群 に如 何 な る
影 響 を 与 え そ して どの よ うな経 過 を経 て 衰退 につ なが って 行 くのか につ いて は まだ不 明 な
点 が 多 い。 そ れ らの点 を 明 らか に す るた め に は例 え ば、 捕 獲 個 体 の 回収 お よ び年 齢 査 定 に
よ り年 齢 構 成 の変 化 を継 続 的 にモ ニ ター す る、 また ヒグマ の生 息 地 の 利 用 の実 態 を明 らか
に して 、土 地 改 変 が そ の利 用 形 態 や ヒグマ の食物 の 供給 量 に どの よ うな影 響 を お よぼす か 、
さ らに はそ れ が 繁 殖 の成 功 度 に与 え る影 響 調 査 な どなす べ き ことは 多 い。 こ うい った こ と
を常 に モ ニ タ ー しなが ら、 一 方 で は地 域 毎 の狩 猟 、有 害駆 除 の 妥 当性 の 検 討 、地 域 住民 と
ヒグ マ との無 用 な車し傑 を避 け るた め の住 民 や入林者 の教 育 、啓 蒙 、 さ らに は 問題 を起 こ し
た 個 体 へ の単 な る捕 殺 に替 わ る対処 の方 法 の検討 な どを平 行 して 行 うこ とが ヒグ マ と人 間
活 動 との共 存 の道 を 探 るた め の必 須 の条 件 で あ ろ う。 さ らに は森 林 管理 者 が 森 林 施 業 の 実
行 に際 し、 そ の 森 林 が 野 生 生 物 の生 息地 で もあ る とい う観 点 を常 に持 つ とい うこ と もきわ
め て重 要 な 条 件 で あ る。
参 考 文 献
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