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配送用樹脂ボックス等のラベルはく離・洗浄・乾燥・スタッカシステム
製 品 紹 介 配送用樹脂ボックス等のラベルはく離・洗浄・乾燥・スタッカシステム System of Removing Label, Washing, Drying and Stacking for Plastic Container Boxes スーパーマーケットなどの物流に使用されている配送用 とともに環境負荷軽減も図った.制御盤 3 面には大型 樹脂ボックスなどをより清潔・衛生的に保つため,容器洗 タッチパネルを採用し,客先の操作性向上を図った.第 浄・乾燥システムを導入する企業が増えつつある.また, 1 図に容器洗浄乾燥システムの全景を示す. 食の安全がさらに重要度を増すなかで,導入企業の取組み 2. 経 緯 姿勢からイメージアップにも寄与している状況である. 本稿では 2008 年 8 月新潟県の原信ナルスホールディン 従来,客先において洗浄作業の多くは社外業者に委託し グス株式会社( 以下,客先と呼ぶ )に納入した配送用樹 ており,客先では一部の容器のみの洗浄を実施していた. 脂ボックスなどのラベルはく離・洗浄・乾燥・スタッカシ 流通の情報を記録したラベルのはく離作業,洗浄後の段積 ステムを紹介する. み作業を始め多くの工程を人手に頼っていた.そのため, 大きな課題として委託費用の削減,作業環境の向上などが 1. 概 要 挙げられていた.そこで,以下の要望に基づいて開発に着 本システムは 1 ラインで 4 種類の配送用樹脂ボックス および買い物かごの合計 5 種類の洗浄・乾燥を行う.処 理数がもっとも多いトートボックスのために,前後装置と 手した. ( 1 ) 買い物かごも含め,5 種類の容器洗浄作業を客先 で行う. して ① 高圧水利用のラベルはく離機 ② 90° 転換コンベヤ ( 2 ) 複数種類の容器洗浄作業を 1 ラインで処理する. ③ 反転機 ④ スタッカ ⑤ ドーリ移載機 ⑥ 各機器間の駆 ( 3 ) 女性が操作するので操作性,メンテナンス性の良 い設備にする. 動ローラコンベヤ,を装備する. 各機器の性能向上,操作性向上,メンテナンス性向上 制御盤 1 ラベルはく離機 ( 4 ) ラベルはく離作業を機械化し,作業労力を軽減さ コンベヤ( はく離機後転換 ) 洗浄機 制御盤 2 乾燥機 ろ過装置 コンプレッサ コンベヤ( 乾燥機後 ) 高圧ポンプ スタッカ 下流側反転機 制御盤 3 コンベヤ( 下流側カーブ ) 第 1 図 容器洗浄乾燥システムの全景 90 IHI 技報 Vol.49 No.2 ( 2009-6 ) せる.かつ,ラベルはく離率を向上させる. ④ イフココンテナ ③ 折りたたみコンテナ ⑤ ナルスコンテナ ( 5 ) 乾燥後の残水量を極力,減らす. ( 6 ) 環境負荷を極力,小さくする. 3. 仕 様 要望に基づき検討した結果,以下の仕様とした. 3. 1 容器の種類,処理数 1 ラインで 5 種類の容器洗浄作業に対応する.第 1 表に 容器( 被洗浄物 )の仕様を,第 2 図に外観を示す.ラベ ルの貼付状態を第 3 図に示す. 3. 2 洗浄工程 ① トートボックス 容器洗浄乾燥システムの配置を第 4 図に示す.洗浄工 ② 買い物かご 第 2 図 容器( 被洗浄物 )の外観 程は容器( 被洗浄物 )の種類によって,次のようになる. 以下,符号 ① ∼ ⑤ は第 1 表,第 2 図と同符号を示す. ( 1 ) トートボックス( ① )の場合 コンベヤ( はく離機前 )→ ラベルはく離 → 90° 転 換 → コンベヤ( 洗浄機前 )→ 洗浄,すすぎ → 乾 燥 → コンベヤ → 反転 → コンベヤ → スタッカ → ア キュームコンベヤ → ドーリ移載 ( 2 ) 買い物かご( ② ) ,折りたたみコンテナ( ③ ) ,イフ ココンテナ( ④ ) ,ナルスコンテナ( ⑤ )の場合 コンベヤ( 洗浄機前 )→ 洗浄,すすぎ → 乾燥 → 下流側コンベヤ( 乾燥機後 ) 3. 3 構成機器の仕様・特長 構成機器の主な仕様と特長を以下に示す. 第 3 図 ラベルの貼付状態 3. 3. 1 ラベルはく離機 特殊高圧用ノズルでトートボックス( ① )長側面の所定の する.噴射量は合計約 80 l/min である.はく離したラベ 位置に貼られたラベルをはく離する.第 5 図にラベルはく離 ルと水はラベル受けバケットで分離し,回収する. 機の内部を示す.付帯の高圧ポンプで水圧を 8 ∼ 9 MPa に 特殊高圧用ノズルと高圧ポンプを連結する配管を 2 系 加圧し,トートボックスの長側面のラベルに噴射しはく離 統に分けて,トラブル時の機能全停止を避ける.また,高 第 1 表 容器( 被洗浄物 )の仕様 寸 法 *1 符 号 名 称 幅 W 長さ L 高さ H ( mm ) ( mm ) ( mm ) ① トートボックス 563 455 150 ② 買い物かご 340 485 263 ③ 折りたたみ コンテナ 362 530 ④ イフココンテナ ⑤ ナルスコンテナ 400 335 460 600 700 320 325 80 210 90 目標処理数 備 考 (個/h) ・底面メッシュ 1 300 ・ラベル貼付位置は長側面に 1 か所ずつ ( 設計値 : 1 500 ) ( 合計 2 か所 ) 1 000 300 1 000 メッシュ 高さの違う 2 種類 幅,高さの違う 2 種類 折りたたみ時の高さは 2 種類とも 30 mm 900 ( 注 )*1:寸法の許容差は,各々 1%以内とする( at 20℃ ). IHI 技報 Vol.49 No.2 ( 2009-6 ) 91 A コンプレッサ 2 500 2 500 2 500 高圧ポンプ 2 000 3 000 A-A 容器洗浄乾燥ライン立面図 5 500 スタッカ 7 450 制御盤 3 ( 90°R ) 乾燥機 コンベヤ( 乾燥機後 ) 2 700 ( 90°R ) 1 600 1 200 5 800 1 400 1 600 コンベヤ( 下流側カーブ ) 下流側反転機 コンベヤ( 下流側反転機前カーブ ) 第 4 図 容器洗浄乾燥システムの配置( 単位:mm ) 22 000 4 000 下流側アキュームコンベヤ( 3 山分 ) A 制御盤 2( 主) 下流側ドーリ移載機 制御盤 1 3 000 ろ過装置 850 コンベヤ( はく離機前 ) ラベルはく離機 コンベヤ( はく離機後転換 )コンベヤ( 洗浄機前 ) 洗浄機 3 005 23 650 6 800 92 IHI 技報 Vol.49 No.2 ( 2009-6 ) 850 洗浄水量は従来機の 2 倍に増やし洗浄力強化を図った. 洗浄水圧で容器( 被洗浄物 )が脱落しないように幅ガイ ド,高さガイドを装備し,5 種類の容器( 被洗浄物 )の 寸法に合わせて幅は 3 段階,高さは 4 段階に自動切り替 えを可能とした. 機内で発生する湯気を排気するため,排気ファン,排気 ダクトを備える.洗剤は客先の意向で環境負荷を考慮し, 特殊高圧用 ノズル 中性洗剤を使用する.容器( 被洗浄物 )の投入向きは開 ラベル( はく離前 ) 第 5 図 ラベルはく離機の内部 口部を下にして投入する.ただし,買い物かご( ② )の 場合は上向きとする. 3. 3. 4 乾 燥 機 圧ポンプを 2 台にすることによって小型標準機種の選定 本機は水切り工程,乾燥工程を備える.約 100℃に加熱 が可能になり,メンテナンス・予備部品のコスト軽減を図 した空気を上下左右のノズルで容器( 被洗浄物 )に吹き る.はく離率を向上させる目的で事前シャワーノズルを設 付ける.送風ダクトの風向および断面積の急変を極力なく 置した. し,上ノズルは誘引方式を採用し,吹付け風量を従来機の 安全面への配慮で,機外の高圧ホースには網入りチュー 1.5 倍にした.また,上ノズルは高さガイドと連動して上 ブを被覆した.点検扉には解放検知センサを設け,解放時 下する構造とした. には運転しない制御とした. 本機の長さは従来機の約 1.2 倍とした.騒音を低減する 3. 3. 2 コンベヤ( はく離機後転換 ) (第6図) ため,本体外板および点検扉に防音材を入れ込んだ.また, 縦向きで流れるトートボックスを横向きの流れに転換す 点検扉の数を従来機の倍にし,メンテナンス性を向上させ る.ローラコンベヤに転換用カラーと支点ローラを設けて た.幅ガイド, 高さガイドについては洗浄機と同仕様にした. 転換する構造とした. 3. 3. 5 下流側反転機( 第 7 図 ) 3. 3. 3 洗 浄 機 機械で反転し,トートボックス( ① )の開口部を上向 本機は,① 洗浄工程( 通常水温約 60℃,洗剤投入 ) きにする装置である.4 分割風車を 90°ずつ回転させトー ② 循環すすぎ工程( 通常水温約 70℃ )③ 仕上げすすぎ トボックスを反転させる.風車回転にはサーボモータを採 工程( 通常水温約 80℃ ) ,を備える.水温は自動調節で 用し,低騒音で確実な動作を実現した. 管理する. 入側に切り出しストッパを設け,1 個ずつ風車に送り込 容器( 被洗浄物 )搬送のための 2 条チェーンコンベア, む.搬送コンベヤ 2 条フラットチェーンを採用した. 洗浄水噴射のための上下左右に圧力噴射する固定ノズルを 3. 3. 6 スタッカ 装備する.ノズルは容易に着脱できる構造を採用した. 1 個ずつのトートボックス( ① )を高さ 25 段 ¥ 3 山にし 反転中 反転後 切り出し ストッパ ラベルはく離後 第 6 図 コンベヤ( はく離機後転換 ) 反転前 第 7 図 下流側反転機 IHI 技報 Vol.49 No.2 ( 2009-6 ) 93 て払い出す.昇降テーブルリフタで 3 個を同時に上昇させ, ( 2 ) 箱選択画面 つめ トートボックスのリブに爪を掛け段積みする機構とし,25 被洗浄物のボタンを選択すると洗浄機・乾燥機の 段積んだらテーブルリフタでコンベヤに下ろし払い出す. 幅ガイド,高さガイドが所定の位置に変更される. テーブル上下用のリンク駆動装置には従来,歯付ベルト また,それぞれの処理数を表示する. を使っていた.しかし,今回はリンクをモータと直結した ( 3 ) 異常画面 ことによって,歯付ベルトを廃止し,メンテナンス個所を 異常発生時にスピーカから警報を発し,パトライ 減らした. ト作動と同時に画面を切り替え,異常個所,対処方 3. 3. 7 下流側アキュームコンベア( 3 山分 ) 案を表示する. トートボックス 25 段 ¥ 3 山を待機させ,下流側ドーリ 移載機へ 1 山ずつ送り込む.従来,クラッチ付ローラコ ( 4 ) 保守・設定画面 各種制御定数を設定する. ンベヤを使っていたが,今回はクラッチなしローラコンベ 3. 3. 10 ろ過装置 ヤにし,駆動時間を最小に設定することで対応した. ラベルはく離機で吐出された水をドラムスクリーン, 3. 3. 8 下流側ドーリ移載機 ペーパフィルタでラベル片を回収し,水を高圧ポンプに 25 段 ¥ 1 山ずつ,高さ 850 mm からフロアラインにあ 送り込み再利用する.これによって,排水量の軽減を るドーリと称する台車に降ろす.従来機の上下機構駆動はエ 図った. アシリンダだったが,今回はモータとし作動を確実にした. 3. 3. 11 コンプレッサ 操作盤の取出ボタンを押すと動作が始まる.動作中に危 スタッカ,出側ドーリ移載機などのエア機器駆動用に装 険エリアに作業員が入った時には,安全検知センサで検知 備する. 環境負荷に配慮し,ドレン油分離器付とした. し動作が停止する. 3. 3. 12 蒸気ボイラ設備 3. 3. 9 制御盤( 第 8 図 ) 洗浄機,乾燥機の熱源として蒸気を使うので,蒸気発生 3 面で連動運転を行うほか,単独運転,手動運転も行う. 源として,① 軟水器 ② 軟水タンク ③ 薬注装置 ④ 蒸気配 タッチパネルの大きさは従来機では 1 面が 10.4 in,ほか 管 ⑤ 排気煙突,を付帯する貫流ボイラ( LPG 焚き:換算 の 2 面は 5.7 in を装備したが,視認性,操作性に難があっ 蒸発量 500 kg/h )を設備した. た.今回は 3 面とも 12.1 in を採用し,操作ボタンの大き 3. 3. 13 コンベヤ全般 さを可能な限り大きくし視認性,操作性を向上させた.そ 各機器間のコンベヤに共通した特長は,① チェーン駆 のほか,タッチパネルは次の機能を備えている. 動方式を採用し確実な搬送を実現したこと ② 消耗部品の ( 1 ) 基本画面 交換をしやすくするため駆動部などの構造を簡素化したこ 連動運転,単独運転,手動運転の選択のほか,消 と,である. 費電力量表示,温度調節切替えボタン,箱選択ボタ 従来の駆動方式には丸ベルトとドライブシャフト方式を ンを備えている. 採用していたが,必要以上に滑って搬送が不安定であり, かつ丸ベルトの交換作業が専門業者しかできないためメン テナンス費用がかさんでいた. 3. 3. 14 全般的共通事項 ( 1 ) 機械材質 容器( 被洗浄物 )接触部およびコンベヤ架台には ステンレス鋼を採用した.洗浄水のほか,容器( 被 洗浄物 )に付着する塩分,雪などで機械が腐食する のを防ぐ. ( 2 ) 安全配慮 ラベルはく離機の点検扉のほか,下流側反転機, スタッカ,下流側アキュームコンベヤ,下流側ドー 第 8 図 制御盤 94 リ移載機には安全カバーを設置した. IHI 技報 Vol.49 No.2 ( 2009-6 ) 設置できた.特に清潔な買い物かごは買い物客から ( 3 ) センサ 好評を得ている. 可能な限り近接センサを採用した.光センサを使 う場合には従来よりも高感度のものを採用した.取 ( 2 ) ラベルはく離機でのはく離率は 95%を超えてい 付けブラケットも剛性を増やした.これによって, る. 湯気やほこりの影響を受けにくくし,検知の安定化 ( 3 ) 容器( 被洗浄物 )の残水量はトートボックスで 5 g を図った. 以下となった. 3. 3. 15 設備容量( 合計 ) ( 4 ) 操作性,メンテナンス性については作業者が短時 本設備のユーティリティーを以下に示す. 間で日常作業に習熟できた. 電 気 83.0 kW,333 A ( 5 ) 環境負荷はラベルはく離用水の再利用,中性洗剤 給 水 1 620 l/h( 0.1∼0.2 MPa,10℃以上 ) 排 水 1 620 l/h( 50 ∼ 60℃ ) の使用などの対策を講じた. 今後, この経験と技術を生かし拡販していく所存である. 蒸 気 420 kg/h ― 謝 辞 ― 空 気 1 m3N /min ガス ( LPG ) 13.9 m3N /h 3 排 気 100 m /min( RH 100% ) 4. 結 言 本設備の施工に当たり,原信ナルスホールディングス株 式会社および客先のグループ会社には多くのご支援をいた だきました.ここに記し,深く感謝の意を表します. 本設備が稼働し始めてから,ほぼ 1 年が過ぎた.導入 株式会社 IHI 回転機械 の効果を以下に示す. サービス営業・技術本部汎用機器事業部 ( 1 ) 1 ラインで 5 種類の容器洗浄作業を行える装置を 洗浄システム部 土門 裕之 IHI 技報 Vol.49 No.2 ( 2009-6 ) 95