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発展著しい上海浦東新区 - 常陽地域研究センター

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発展著しい上海浦東新区 - 常陽地域研究センター
第五十六回:
五十六回:
発展著しい上海浦東新区
常陽銀行上海駐在員事務所
近年、目まぐるしく発展する中国。なかでも上海浦東新区は、ここ20年で最も発展を遂げた地区
の一つであると言えます。今でこそ有名になった黄埔江の川岸から望む浦東新区の高層ビル群も、
20年前はただの水田地帯でした。今回は著しく発展を遂げた上海浦東新区の開発プロジェクトの背
景と、浦東新区の今について、業務トレーニーとして赴任している高田が紹介します。
1.浦東の農村が世界の中心に
上海市は市内中心地を流れる長江の支流、黄埔江を境に大きく浦西地区と浦東地区に分かれる。
既に古くから市街地として形成され、多くの市民が暮らす浦西地区と比べると、浦東地区は水田地
帯の農村であり、そこに住む人々は貧しい生活を強いられていた。その頃の浦西地区の市民からは
「浦東に嫁をやりたくない」との
レッテルを貼られた土地柄でも
あった。
その浦東地区に大きな変化をも
たらしたのが、1990年に動き始め
た「浦東地区開発国家プロジェク
ト」である。もともと上海は沿岸
部に位置し、長江を通じて内陸部
に至る水運が開かれていたため、
古くから中国最大の経済、商工業、
1996年時点の浦東陸家嘴金融貿易区
貿易の中心都市としての地位を確
立することができた。しかしながら、
1970年代末に始まった改革・開放
路線で経済特区に指定された深圳、
珠海、汕頭、廈門などの都市が台
頭したことで、上海では急激な地
盤沈下が起こり、工業生産量や貿
易取扱高で国内トップの座から滑
り落ち、商工業・貿易中心都市と
しての地位が弱まりつつあった。
このような状況下、上海の商業
貿易都市の復活を目指すべく、中
国政府が1990年に「上海の浦東を
現在の浦東陸家嘴金融貿易区
沿岸部と内陸部の架け橋にすべく
開発し、全国に改革・開放路線を
浸透させる」と宣言し、中国全体をあげて浦東地区の開発に着手することになった。
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2.世界のグローバル企業の誘致に成功した開発区
まず、開発の第一段階で中国政府と上海市は、陸の孤島であった浦東を結ぶ南浦大橋、延安東路
トンネルなどの交通インフラとともに、地下鉄、浦東国際空港、環状道路、埠頭など外資企業が投
資しやすい環境づくりを整備した。
次に活発な経済活動を支える4つの重点開発区を整備した。まず浦東新区の顔となっているのが、
金融・地域本部などが多
数入居する「陸家嘴金融
貿易区」である。ここは
金融・貿易・サービス業
などの商業機能を軸とす
る開発区で、上海証券交
易所など国内を代表する
組織・企業を集約させ、
国際都市としての地位を
向上させる目的を持つ。
第2に高付加価値製品
を生産・輸出する企業を
集約させた「金橋輸出加
工区」である。ここでは、
上海浦東地区と浦西地区
電子情報、自動車及び部
品、家電製品、生物医薬、
ソフト産業などの支柱産業を中心に、
世界へ向けて製品を輸出している。
第3に総合自由貿易区として輸出
加工、国際貿易、保税倉庫などの多
様な機能を持たせた中国最初の保税
区となる「外高橋保税区」である。
楊子江と黄浦江の交点に位置し、交
通の要所となる場所に深水港を有す
る。
最 後 に バ イ オ 医 薬、IT、 ソ フ ト
ウェアなどの分野においてグローバ
ル企業を誘致した「張江高度科学技
術園区」である。中国のハイテク・
自由貿易地区となる「上海外高橋保税区」
ニューテク技術の誘致に徹し、国家
級の研究施設を入居させるなど、多
くの研究開発型企業が立地する。
3.浦東新区摩天楼群
「浦東新区開発プロジェクト」が開始されて以降、陸家嘴金融貿易区には高層ビルの建設が相次
いだ。開発当初は8階建てのビルが毎日1棟建つスピードであったとも表現され、2004年末で市内
に16階建て以上の高層ビルが4,000を超え、ニューヨークを抜き世界トップとなった。
浦東新区においても、1994年に上海のシンボル「東方明珠塔」
(468m)
、1998年に「金茂大厦」
(420.5m)、2008年に「上海環境金融中心」(492m)など超高層ビルの建設を進めていった。一般的
にこれら超高層ビルは、その国や都市の経済力・技術力を示す指標にもなるが、特に世界最高峰の
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展望台を持つ「上海環境金融中心」が「金
茂大厦」と隣接し、その真隣に建設途中の「上
海中心大厦」
(2014年完成予定:127階建て、
高さ632m)の3棟の超高層ビルが平然と並
ぶその姿は、まさに上海が諸外国に向けて
国力誇示を示すには十分の役割を果たして
いるといえる。
また、当地の開発にあたり、超高層ビル
の中心部には「陸家嘴中央緑地」や「世紀
公園」などの自然公園を整備している。浦
東新区の開発段階から環境に配慮した都市
づくりを行なっており、近代都市を創造す
るゆとりの都市設計となっている。
しかしながら、ビルの重みによる
深刻な地盤沈下、火災による防災不
備、浦東新区などの高級オフィスの
賃料が前年比17.4%(2011年)高騰し、
需要を上回るオフィスビルの供給に
より不動産の空洞化を招くなど、急
速な発展の裏側には多くの課題が山
積みとなっている。
陸家嘴金融貿易区の超高層ビル群と「上海中心大厦」
の完成予想図
4.競争激化ながら巨大消費市場
として魅力的な浦東新区
中国の消費市場規模は2015年に日
本を、2020年に米国を抜き、世界最
400m超の世界に誇る超高層ビルと「上海中心大厦」
(632m)
の建設(中央)
大になることが予想されている。な
かでも上海・浦東新区は消費意欲旺
盛な地域として、中資・外資を問わ
ず多くの企業が進出している。2004
年に「外商投資商業領域管理弁法」
が施行されたことで、外資100%出
資やフランチャイズ経営、小売業参
入地域の制限の撤廃などが認められ、
外資系企業の進出が相次ぎ、競争が
激化している。
なかでも上海第一ヤオハンは、昼
夜を問わず多くの買い物客が行き交
い、今では浦東新区、上海に収まら
ず、中国全土の百貨店でもトップ水
準の売上を計上する。一方、陸家嘴
上海でもトップの売上の上海第一ヤオハン
金融貿易区の中心部にタイの正大集
団が2002年に開業した「正大広場」は、
地上10階、地下3階の当時アジア一の売り場面積(241,000m2)を有し、アメリカの斬新な店舗デ
ザインが消費意欲を掻き立てている。
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5.上海ディズニーランド開業に
伴う浦東新区のポテンシャル
2010年、黄浦江を挟んだ浦東新区、
浦西地区において、世界189 ヶ国と
57の 国 際 機 関 が 参 加 し、 入 場 者 数
7,300万人と過去最高を記録し上海万
博が閉幕した。これにより、浦東新
区は一躍世界の注目を集めたが、こ
のほど浦東新区では世界に誇る大型
アミューズメント施設の誘致に成功、
2015年に香港に次いで世界で6番目
の上海ディズニーランドが開業する。
2011年4月に上海市計画・国土資源
管理局が「上海国際リゾート地核心
区コントロール詳細計画(草案)」を
公開したが、これによると上海国際
リゾート地核心区の総面積は7km2、
うち第一期建設面積は3.9km2、建設
費用は245億元(約3,500億円)の計
画 と な っ て い る。 第 一 期 工 事 で は
テーマパーク、中心湖、会場を囲む
川、商業娯楽施設、ホテル、公共駐
車場・交通施設などの建設が開始さ
れ、着々と工事が進んでいる。
ディズニーランド開業に伴う上海
での経済効果は、年間の来場者数を
1千万人とすれば、チケット売上で
20億元(約260億円)、産業波及効果
で食事、宿泊、交通など最も基本的
な消費だけでも160億元(約2,000億
円)に達すると予想されている。
斬新なデザインの正大広場
従業員の宿泊施設や事務所を急ピッチで建設
6.終わりに
筆者は、業務トレーニーとして上
海に赴任し、8ヶ月が経ちました。
浦東新区で建設中の高層ビルを見て
いると上海の成長の速さを肌で感じ
ることができます。上海に住む日本
人駐在員はこの「上海の成長の速さ」
を「全力疾走」とよく表現しますが、
その言葉の通り、ここ20年の上海は
第1 期の工事がスタート
浦東新区に代表されるように、経済
大国に向かって日本の高度成長期を
上回るスピードで日々成長し続けてきました。
皆様も「全力疾走」で発展を遂げた上海浦東新区を肌で感じてみてはいかがでしょうか。
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