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アンカラ水供給事業化調査(PDF形式:671KB)
アンカラ水供給に係る F/S 調査 報告書要約 電源開発株式会社 1. プロジェクト経緯 Ankara 市はトルコ共和国の首都で、人口が急増し市街化区域が拡大しつつあるトルコで 第 2 位の大都市である。近年、伸びつづける水需要を満足させるため、水源池の計画的な 開発が重要になっている。 本計画プロジェクトは、DSI(The General Directorate of State Hydraulic Works:国 家水利庁)が 1969 年に実施した 2020 年までの Ankara 市の長期水需要に対応する基本計 画・可能性調査に端を発する。この調査結果、Kirmir と Gerede 両流域での開発が経済的 との結論を得、Kirmir 流域の Bayindir 川に年間 1.5 億 m3 の供給能力を持つ Camlidere ダ ムが主要水源池として 1985 年に築造された。今回、調査対象とした Gerede システムは Camlidere システムの一部と位置付けられ、将来の需要に合わせ開発することで温存され た。 1993 年に DSI は Gerede システムと 1992 年に調査報告書が作成された Kizilirmak シス テムにの両システム関しマスタープラン調査を実施し、2005 年以降の Ankara 市の水需要 に対し、どちらのシステムを先に開発するか検討し、先行開発することで選ばれたシステ ムについて F/S を実施することを決定した。1994 年 DSI は国際入札により電源開発株式会 社を選定し、マスタープラン調査を実施した。この調査の結果、Gerede システムが 2005 年以降の Ankara 市の水需要に対応するため最初に開発するプロジェクトとして選定され、 マスタープランに引続き Gerede システムに関する F/S が 1996 年に完成した。F/S 調査の 結果、 Gerede システムは年間 2.95 億 m3 の給水を可能とするシステムを3期に分け開発し、 2027 年までの Ankara 市の水需要を賄うよう設計された。 その後、トルコ国政府はマスタープランに基づき Gerede システムを実施に移すべく努め たが、いくつかの理由により実行できなかった。こうした状況下、本調査において環境面 および経済性の面から本システムがより実施しやすくなるようスキームの見直しを行うこ ととなった。 2. 調査の目的 Gerede システムの原計画(1996 年 F/S で策定された計画)では、ダムを 2 箇所に建設する 設計であり、このため移転を余儀なくされる住民は 1997 年の実態調査で 1,758 人居住して いることが判っている。近年、環境問題への関心の高まりもあり、移転住民数を極力減ら すべく今回設計を見直し、また,環境配慮ために生じる経済性の悪化を技術でカバーするべ く、併せて工事費の見直しを行った。 下記の事項が原計画から今回見直した主要項目である。 (1) 水文データ、水道需要データ、環境関連データ等特にプロジェクトのフィージビリ ティに直接影響を及ぼすデータののアップデート (2) 原計画の 2 箇所のダムを止め、取水するに必要最小限の堰への変更およびこれに伴 う水路設計の見直し (3) 最近のトルコ国内の水道工事における実績工事費を考慮に入れた工事費単価の見直 し (4) 開発効率の観点から原計画の 3 ステージ段階開発を 2 ステージに見直し (5) 原計画に含まれていた水力発電所計画をプロジェクトから除外 3. プロジェクト概要 見直し後の Gerede システムは、Ankara 市の北西約 100 km、Filyos 流域の上流域を流れ る Ulusu-Gerede 川を水源とし、Filyos 全流域の 9%に相当する約 1,170 km2 の流域面積を 持つ。主要取水設備である Isikli 堰地点における平均年間流入量は 2.71 億 m3 である。 Gerede システムの原理は、Gerede-Ulusu 川の水を転流し、Kirmir 流域の Bayindir 川に 位置する既設 Camilidere 貯水池に導水し、Ankara 市の 2010 年から 2027 年までの需要を 満たそうとするものである。転流された水は、Camilidere 貯水池で調整された後 Ivedik 水処理場に送水される。更に、Camlidere 貯水池と Ivedik 水処理場の間に、既存パイプラ インと並行してパイプラインが1条増設される。 プロジェクトエリアは北緯 39o50? から 40o50? 、東経 32o 08? から 33o 01? に位置し、 南北に 105 km、東西に 75 km の範囲に含まれる。プロジェクトエリアの北部は Bolu 県に 含まれ、南部は Ankara 県に含まれる。 4. フィージビリティ設計 本プロジェクトを最適化するために代替案を作成し、最適な設備位置、容量、規模、形 式、サイズを比較検討し決定した。この比較検討においては、水単価、総投資額、初期投 資額、建設中の問題に対する対応策、完成後の運転および保守の容易度、事故等リスク分 散、事故予防の確実度をパラメータとして判断した。 Isikli 堰および Korler 堰に生ずる池容量の最適化と水路の最適化は、水単価を最小に する最適組み合わせを求めることで実施した。水路については、水路の条数や単位水量当 り建設費は水路容量の大きさに逆比例し小さくなる。しかしながら、初期投資額が大きく なることや、過剰設備により運転経費が増嵩するため、水路は水需要に合わせ必要容量の 設置を、言いかえればステージ開発を行う方が経済的になる。 一方、堰に伴う池の水位は、周辺地域の環境影響を極力押さえ、また移転問題を最小限 にするため、低く設定する必要がある。Isikli および Korler 調整池の最適化は現地踏査 で選定した代替地点で容量の最適化を図った。水路の最適化検討は、最適化された調整池 諸元をもとに実施した。 Isikli 堰地点の年平均自然流入量は、2.71 億 m3 である。堰での取水量は可能な限り多 くの水量を取水し、Ivedik 水処理場での仕上り水単価を安くする必要がある。この目的の ため、Isikli 調整池の容量を日間調整容量に押さえ、環境影響を最小化する配慮をした。 堰を高くし、調整容量を大きくすれば、水路の通水容量を小さくできるが、環境影響は大 きくなる。Korler 調整池についても同様に水路コストを小さくできるよう計画した。調整 池および水路容量は、Isikli および Korler 両調整池の最適運用検討を行い決定した。 Camlidere 貯水池から Ivedik 水処理場までの既設水路は、年間 1.5 億 m3 の送水を行って いる。 現在、アンカラ市水道局は内径 2.2 m のパイプライン 1 条を増設工事中であり、Gerede システムの完成時には運用を開始しているため、この増設水路を考慮に入れる必要がある。 再増設水路は、負荷変動対応として 1.2 という peak load ratio を考慮し、水路の必要通 水容量を算定し設計した。 上記のように比較設計を決定した最適計画を原計画と比較して Table 1 に示す。 5. 環境調査 プロジェクトの実施に当ってはトルコ国の環境法に基づき、審査手続きを踏んで環境ク リアランスを得ることが必須である。1996 年の F/S 時点で、原計画に対する環境影響評価 (EIA)報告書を作成したが、Gerede システムが当時将来のプロジェクトとして温存された ため、審査手続きに移行することなく放置された。本調査では、環境負荷を極力低減する ことを目的として設計見直ししたため、環境に配慮した設計が固まった段階でその設計を トルコ国側に提示し、本プロジェクトに必要な環境審査手続きについて調査した。この結 果、今回の設計見直しにより、取水設備に付随する調整池面積が EIA の実施対象となる面 積より小さくなったこと、水没等による住民移転がゼロになったことから、取水設備に係 る EIA の実施が必要ないことが判明した。 また、DSI からトルコ国環境省へ Gerede システムの EIA の取り扱いについて問い合わせ た結果、2001 年 11 月 12 日付の DSI 宛返書で、Gerede system はその投資計画が 1975 年に Gerede システムの開発に合わせ既に承認されており、EIA regulation の Temporary Code 1 (1997 年 6 月 23 日発布)に該当していることから、1993 年に制定された EIA の実施対象 プロジェクトに含まれないとし、EIA の実施は必要ないことが確定した。 一方、EIA レポートは必要なくなったが、本プロジェクトは、トルコ国の汚染防止に関 わる法律によって「水源保護計画」の作成が、また「土地取得および補償計画」の作成が 必要である。本調査では、見直し設計に基づき、水道水源の保護計画を作成し、土地取得 および補償について調査した。 6. 工事費積算および工事工程 最近のトルコ国内の水道工事における実績工事費を考慮に入れた工事費単価の見直しを 行い、プロジェクトに必要な土木工事費、水門機械費、電気機械費、予備費、工事監理費、 補償費、建中利子に分け総投資金額を算出した。また、それぞれ外貨、内貨に整理し計上 した。なお、補償費には、用地取得費と水質汚染防止費用を計上した。 調査結果は、 第 1 ステージ : 約 238 百万 USD 第 2 ステージ : 約 228 百万 USD 合計 : 約 466 百万 USD 設備の開発期間は、アンカラ市の水道需要によって決め、下記示す通りとした。 設備 建設期間 完成年 Isikli、Korler 堰 Gerede-Camlidere 水路(第 1 ステー ジ) 2006 - 2009 2010 Gerede-Camlidere 水路(第 2 ステージ) 2019 - 2022 2023 Camlidere-Ivedik 水路 2021 - 2024 2025 1st ユニット 2007 - 2009 2010 2nd ユニット 2013 - 2015 2016 3rd ユニット 2020 - 2022 2023 Ivedik 水処理場 7. 経済分析 当計画で見積もられた実行資金、運転費、収入を基にして経済収支を検討した。結果と して全計画の収益率は 11.92%で1次のみの内部収益率は 12.29%となった。 また、返済計画についても検討した。 8. 結論 Ankara 水供給プロジェクトは既存の設備と将来計画のもとで、2009 年までの当市の水需 要に対応するように計画されており、第1ステージは 2010 年に完了すべきである。 Gerede システムは技術的、経済的に可能であると判断されたので、最終設計は融資手続 に必要な期間、建設期日などを考えて工程期間内に完了すべきである。 Gerede システムの開発計画として、水路、水処理場は大きな初期投資を避けるため人口 増加と水需要を睨み2段階に開発される。詳細な実行計画は、将来の人口増加、水需要に 従って修正される必要がある。 以上 Table 1 Comparison of Project between F/S Report in 1996 and Revised F/S Report in 2002 unit 106m3 Annual Water Supply Completion Year Stage 1 188 F/S Report in 1996 Stage 2 Stage 3 265 295 2003 Characteristics of Structure 1. Isikli Dam or Weir Purpose Type Catchment Area Annual Inflow Normal W.L. – Min. W.L. Gross Storage Capacity Effective Storage Capacity Height Crest Length Dam Volume km2 106m3 m 106m3 106m3 m m 103m3 2019 Dam Intake Rockfill 1,278 325 1,155 -1,151 47.0 28.0 29.0 223.0 143.55 Dam Intake and regulation Rockfill 201 63 1,284 – 1,268 19.0 16.3 51.0 257.0 602.4 Purpose km2 106m3 Normal W.L. m Gross Storage Capacity Effective Storage Capacity Height Crest Length Dam Volume 3. Water Transmission Line 1) Pipe Line-1 Capacity (P-1 – P-2) 2) Pipe Line-2 (P-2 – Tunnel) 3) Pipe Line-2’ (Korler Dam) 4) Pump Station-1 (Isikli) 5) Pump Station-2 (Korler) 6) Penstock-1 (Isikli) 7) Penstock-2 (Korler) 8) Tunnel Capacity (P-2 – Camlidere) 9) Pipe Line-3 106m3 106m3 m m 103m3 m3/s 10.0 6.67 10.0 DxLxU mxmxNo 2.2x8,585x1 1.9x8,585x1 2.2x8,585x 1 Capacity DxLxU Capacity DxLxU Capacity 10.0 2.2x5,860x1 10.0 2.2x5,860x1 DxLxU m3/s mxmxNo m3/s mxmxNo MW MWxNo MW MWxNo mxmxNo 17.6 5.9x(3+1) 19.1 6.4x(3+1) 2.2x1,450x1 11.7 5.9x2 19.1 6.4x3 1.9x1,450x1 10.0 2.2x5,860x1 3.33 1.6x1,000x1 17.6 5.9x3 19.1 6.4x3 2.2x1,450x1 DxLxU mxmxNo 2.0x400x1 2.0x400x1 2.0x400x1 Capacity m3/s mxmxNo m3/s 30 4.0x6,680x1 4.14 2.9x37,288x 1 Capacity (Camlidere - Ivedik) D x L x U mxmxNo 2009 2022 Weir Intake Concrete 1,170 271 1,1441,140 0.447 0.275 13.0 89.0 12.8 2. Korler Dam or Weir Type Catchment Area Annual Inflow 2025 F/S Report in 2002 Stage 1 Stage 2 173 230 Weir Intake Concrete 206 64 1,213.51,209.5 0.287 0.224 14.0 86.0 12.0 15.0 2.7x12,450x 1 15.0 2.7x8,610x1 15.0 2.7x12,450x 1 15.0 2.7x8,610x1 24.6 8.2x(3+1) 35.6 8.9x(4+1) 2.7x3,150x1 24.6 8.2x3 35.6 8.9x4 2.7x3,150x1 2.7x890x1 2.7x890x1 30 4.0x6,680x1 1.15 0.95x37,288 x1 2024 (Completion year) 4. Water Treatment Plant Capacity (Completion year) 103m3/d 282 282x2 282 282 2009 282x2 2015, 2022 5. Investment Cost 106USD 586 56 66 238 227 *: excluding cost of hydropower plant Figure 1 Water Demand Projection & Development Sequence 1500 Source 375 0 2000 433 2005 57 GEREDE 2 Stage 173 GEREDE 1 Stage 500 58 KAVSAKKAYA DAM S-8 WATER DEMAND (hm3) 1000 606 2010 2015 2020 167 KIZILIRMAK 2 Stage 167 KIZILIRMAK 1 Stage Demand 830 997 663 2025 YEARS 2030 2035 2040 2045 2050 Table 2 Comparison of Environmental Condition unit Isikli Site Surface Area Gross Storage Capacity Land Acquisition Resettlement Relocation km 2 106m 3 ha persons F/S Report in 1996 (Dam) 8.8 47.0 1,940 1,758 (as of 1997) - D750 Highway 1.5km - Korler Site Surface Area Gross Storage Capacity Land Acquisition Resettlement Relocation km 2 106m 3 ha persons Histrical Ottoman Bridge F/S Report in 2002 (Weir) 0.2 0.4 95 0 - Short Village Road - Short Electricity Line Village Road 10km Electricity Line Telephone Line 1.5 19.0 270.2 0 none 0.1 0.3 13.0 0 none