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巨大壁面電子黒板と携帯電話を連携する 大学講義

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巨大壁面電子黒板と携帯電話を連携する 大学講義
巨大壁面電子黒板と携帯電話を連携する
大学講義用インタラクティブソフトウェア開発
Development of Interactive Software for Lecture on University
Working with Huge Wall Electronic Blackboard and Mobile Phone
柳沢 昌義
Masayoshi Yanagisawa
東洋英和女学院大学 人間科学部
Faculty of Human Sciences, Toyo Eiwa University
<あらまし> 教室の壁全体を電子黒板化することによって,従来画面の小ささ故に実現
が困難だったインタラクティブな大学講義ができる.単に,サイズが大きくなっただけで
なく,今までには各種インタラクションがリアルにそして効果的に使用することが可能と
なった.学生は携帯端末によって意見・質問・各種レスポンスを送信し,それを巨大壁面
電子黒板に投影させる.講師はそれを電子黒板の機能を使って操作ができる.本研究では,
学生の意見や質問を文字だけではなく,等身大のアバターで表現したり,学生からのアイ
ディアを表示し,KJ 法風に操作したり,学生の反応をリアルタイムに様々な方法で画面に
投影しながら講義を進める各種ソフトウェアを作成した.本稿では,その仕組みおよびそ
の上で動作する各種アプリケーションを紹介し,巨大壁面電子黒板を使用した新しい授業
の方法について提案する.
<キーワード> 電子黒板 電子化教室 携帯電話 一斉授業支援 デジタルサイネージ
1. はじめに
1.1. 巨大壁面電子黒板について
教育現場では長い間,授業中に黒板を用い,
されることになった.その小ささ故に,教師
が投影された教育コンテンツの中に入り込め
ず,別途支持棒やレーザーポインタが必要と
教師と学生の視覚情報の共有を行ってきた.
なり、結果,コンテンツと教師の分離が行わ
黒板は大きく,教師はその広さを使用してチ
れてしまった.
ョークによる板書,張り紙,マグネットなど
近年,電子黒板の登場により,教師は直接
を用いて様々な表現をすることができ,さら
投影されたコンテンツを操作できるようにな
に教師が黒板に入り込み,直接チョークで書
り,上記の視線不一致問題は解決され,学生
き込むことで,教師の手が自然と指示棒の役
の情意面に与える良い影響についても分かっ
割を果たし,コンテンツと教師の両方が生
てきている(佐藤・赤堀 2006).また,現在
徒・学生の視野に入り,その視線は自然と教
ではプロジェクター性能の向上,プラズマデ
師と黒板両方に向けられた.このように長い
ィスプレイの巨大化やチューブディスプレイ
間,教師とコンテンツが一体となった授業を
等の各種デジタルサイネージ技術の登場より,
展開することができていた.
黒板なみの巨大なスクリーンに教育コンテン
しかしながら 1950 年代よりスライドや OHP
ツを投影することが可能となりつつある.
が普及し,さらに 1990 年代より主として
Video Wall, iWall,iBar, BandDesk などの
Microsoft PowerPoint などのプレゼンテーシ
システムが世界中で開発されつつあり,近い
ョンソフトを使用するように変化してきた結
うちに教育に応用されることは明らかである.
果,教育コンテンツは,黒板のような大きな
上記の,電子黒板による直接操作による視
領域に投影することができず,教室の片隅に
線集中効果および,巨大ディスプレイによる
配置された小さいスクリーンや,黒板よりも
教師のコンテンツ化の2つを同時に実現でき
はるかに小さいマグネットスクリーンに投影
れば,かつての黒板によって実現されていた
教師とコンテンツの融合が再び実現できると
な機能および,より気軽な発言「一言コメン
思われる.
ト」機能を実現した上で,学生の授業中の気
単に教育コンテンツを拡大表示し,直接操
持ちや態度を講師に送る機能を実装した.
「ガ
作するだけでも十分な教育効果が望めるが,
ッテン」ボタン,「難しい」ボタン,「眠い」
本研究では,さらに一歩進め,佐藤・柳沢・
ボタン,そして「アゲイン」ボタンである.
赤堀(2001, 2002, 2004)が目指した教室の壁
これらの学生からのレスポンスを画面にゲー
全面のインタラクティブ電子化教室「i-Room」
ジやランプとして実装した.これらを使って,
構想を実現すべく,巨大提示メディアと教師
講師と学生が授業中に活発に会話をするよう
が融合する効果的なコンテンツ提示方法及び,
なインタラクティブな授業環境が実現された.
インタラクティブな講義方法を実現するため
近年,Twitter が利用されるようになると,
の大学講義支援システムを提案・開発する.
これを授業中に利用する実践や研究もおこな
すでに、壁面大巨大電子黒板システムのプ
われている(村上 2010).さらに,もっと気軽
ロトタイプは構築されており、従来、小さい
に自然な形で発言を促進する試みとして,テ
画面の中でしか表示できなかったインターネ
レビのアナウンサーとアシスタントのメタフ
ットを利用した学生との各種インタラクティ
ァーを利用し、学生の代わりを果たす「学生
ブツールを、等身大の大きさで実装できるこ
代 表 ア バ ター 」 が 開 発さ れ た (服部・ 柳 沢
とに成功している(柳沢・梶本 2011). 本稿で
2010).等身大に投影された学生のアニメー
は,このプロトタイプの問題点を克服した改
ションが、学生の代わりに吹き出しで質問や
良したシステムについて論ずる.
意見を発言するものである.これによって,
より親密度の高い,気軽な発言が大講義室で
1.2. 携帯電話との連携について
あっても実現することができるようになった.
一般的に日本の大学では,授業中に発言し
ない(祐宗ら 1996).そのため,古くはレ
1.3. 開発の目的
スポンス・アナライザが開発され,現在では,
本研究では,従来の小さいスクリーン上で
EduClick, Socratec Nano, INTERWRITE
はなく,巨大壁面電子黒板を使った等身大の
RESPONSE,Mimio Vote などの商品が販売
インタラクションを実装し,その教育効果を
されている.
調べることを目的とする.そのためには,巨
一方、専用機器を使用せず携帯電話でイン
大壁面電子黒板ならではの表示方法,インタ
タラクションを促進させる研究も行われてき
ラクション手法を考案・実装し,実際の講義
た(中山ら 2002,宮田 2002, Yamamoto et al.
で実証していく必要がある.
2005).近年では C-Learning などの商業ベ
前述の,学生代表アバターは,等身大でア
ースのシステムもあり,容易に導入できる.
バターを表現する必要性から,少なくとも高
上記研究の多くは,学生の意見等の自由記
さ 160cm 以上のスクリーンを必要としてい
述文をサーバで蓄え,それを講師が見て参考
る.また,発言内容によって自動的に振り分
にしたり,授業中に投影して議論をしたり,
けられる質問に対して,講師が返答する時に
学生同士が意見交換するといった使い方をし
は電子黒板機能によって操作して消去してい
ている.一方,このような文字ベースの発言
る.それゆえ,巨大壁面電子黒板が一番有効
だけでなく,学生の心理的レスポンスを授業
に使うことができる.
中にリアルタイムに送信し,講師が利用する
さらに,本研究では,学生代表アバターだ
という研究もおこなわれてきている.佐藤・
けでなく,i-Room 同様に,携帯電話や各種
柳沢・赤堀(2001)の i-Room システムは,ソ
通信端末を用いて,大学の講義の中で各種レ
フトウェアでレスポンス・アナライザと同様
スポンスや,チャット,Twitter による書き
込みをアニメーション、効果音、チャート等
また,講師側の意見としてはメインスクリー
を用いて可視化し、講師や学生同士が疑問や
ン部がタッチパネルになっていないため,操
意見を共有できるシステムを開発する.また、
作方法がやや複雑である点が最大の欠点であ
そのシステムを発展させ授業環境の改善を図
った.
り,その効果の検証およびさらなる発展を研
究していくことを目的としている。
2. プロタイプシステム開発と評価
まず,壁全面サイズのスクリーンを実現す
表 1 被験者学生からの自由記述例
良い評価
携帯文字入力が追い付かない
すごい!の一言
目が悪くなりそう
インパクトがある
視線をどこに向ければよい
か?
るために,予備研究として様々な方法を模索
し,プロトタイプシステムを実装した(柳沢・
梶本 2011).プロトタイプシステムは図1に
示す,横 8m×高さ 2.8m の壁全面のスクリー
ンに 3 台のプロジェクターと2台の電子黒板
を使って実装した.
悪い評価
興味がわき、頭に入る
面白く、楽しい
集中しすぎて疲れる
恥ずかしがり屋に良い
部屋が暗く眠くなる
興味がわき眠くならない
無関係発言が不快
3. 本システムの電子黒板としての実装
プロトタイプシステムの最大の問題点で
ある全面電子黒板化を実現するために,プロ
トタイプで使用した電子黒板ユニットを選定
しなおし,プロジェクター数も2台としてシ
ンプルな構造とした.図2に本システムの配
置図を示す.
図1
プロトタイプシステム構成
中央の縦横比 16:9 のメインスクリーン(図
1.①)と左右2つの余白となるサブスクリ
ーン(図1.②③)の3つからなり,メイン
スクリーンは投影されるのみで直接操作する
ことはできず,スクリーン②及び③だけが電
子黒板化され,その上に表示されるツールバ
ーによってメインスクリーンの操作を行った.
このプロトタイプでは,インターネットの
文字及び画像検索,授業専用チャットシステ
ム,ソフトスポットライト,巨大ビデオ映像
の表示が実現できた.
受講者 18 名の少人数授業において実際に
システムを利用して 90 分の授業を行い,シス
テム評価を行った結果,おおむね良好な評価
を得た(柳沢・梶本 2011).また,自由記述
からは表1にあるような問題点も指摘された.
図 2 本システムの基本配置図
プロジェクター数の減少によって投影サ
イズが横 664cm と狭まったが,これは XGA
タイプのプロジェクターを使用しているため
であり,縦横比 16:9 のプロジェクターや将来
ハイビジョン対応のプロジェクターに交換で
きれば広く投影することができる.
電子黒板ユニットは,専用ペンおよび指示
棒の先端から赤外線を出し,それをカメラが
とらえる商品を採用した.赤外線を利用する
するために,別途市販のソフトウェアを組み
ため,太陽光が入り込む部屋では利用するこ
込んだ.
とが困難である.電子黒板ユニットの基本機
図 4 に,基本的な操作ができるように実装
能として図3にあるように,専用ペンや指示
されたツールバーの例を載せる.場面ごとに
棒によって各種色,太さによって自由に描画
ツールバーの内容は異なり,また,各ツール
ができ,また,基本図形描画等も可能である.
ボタンはコンテンツ画面上にも自由に配置す
ることができるため,目的に応じてカスタマ
イズできるようにしてある.
図 3 電子黒板としての基本機能
せっかく壁面大に投影でき,教育コンテン
ツの中に講師が入り込めるという当初の目的
が達成できても,部屋が暗いために講師の顔
や体がよく見ることができないのは本末転倒
である.そこで,本システムでは,2種類の
スポットライト機能を実装した.スポットラ
イトには2種類あり表2のような違いがある.
講師は目的に応じて使い分けることで,部屋
が暗いことによって生じる問題の1つを解消
することができる.
図 4 基本的ツールバーの例
これ以外にも,Google 検索,YouTube 表示, 埋め込
みレスポンス・アナライザ表示など,状況に応じてツー
ルボタンのカスタマイズが可能
4. インタラクティブソフトウェア
前述したように,学生代表アバターを実装
表2
2 種類のスポットライト機能
種類
ソフトウェア・
スポットライト
ハードウェア・
スポットライト
特徴
コンテンツ内に白または黄色
い楕円として表示させること
でスポットライトと同様の効
果を出す
LED ライトを複数ポールに設
置し,講師のリモコン操作によ
って ON/OFF できる.基本立
ち位置のみを照明できる.
する際に,等身大に投影できる巨大電子黒板
を必要とし,それを逆に利用することによっ
てより自然で効果的な学生とのインタラクシ
ョンが可能になることがわかってきている.
そのため,巨大電子黒板と携帯端末の連携
による新しい一斉授業コミュニケーションを
実装した.一つ一つの機能は,従来より様々
以上により巨大壁面電子黒板としての基
な研究や実践で利用されてきたものである.
本機能を実装することができた.コンテンツ
しかし,今まで ICT を使用したコミュニケー
は制作の容易さおよび,既存コンテンツ再利
ションツールは,狭く小さい画面の中だけに
用のために Microsoft PowerPoint として,
収められてしまっていた.それが等身大でか
Visual Basic for Application によって各種イ
つ,直接操作されることで自由度も広がり,
ンタフェースを実装した.また,2画面両方
使い勝手も良くなり,かつ教育的にもより効
に動画を表示させるために,動画再生専用の
果的であると思われる.本システムは表3に
外部アプリケーションを制御するプログラム
ある機能を実装した.
を実装した.さらに,手書き文字認識を実現
表 3 現システムに実装された
インタラクティブソフトウェア一覧
名称
流動字幕
埋め込みレスポン
ス・アナライザ
アイディアボード
巨大 KJ 法
授業インジケータ
学生代表アバター
授業インジケータ
機能内容
学生のつぶやき・意見・
感想の字幕状表示
学生の投票結果を
チャートで表示
投稿された学生のアイデ
ィアを表示.現段階では
上から降るように実装.
上記アイディアをグルー
ピング化する.
学生の各種反応をグラフ
表示する
学生の発言・質問を本人
に代わって発言したり,
学生の各種精神状態を代
わりに演技し,講師に学
生の状態を伝える.
授業の進捗,学生の状態
を可視化して表示させる
各種ソフトからなる.
図 5 流動字幕と
埋め込みレスポンス・アナライザ
画面は通常の教室の壁を実物大で投影してい
る.その左上から学生の発言が右に向かって流れ
ていく.また,レスポンス・アナライザの集計結
果を画面上に表示している.手前の PC やプロジ
ェクター等もすべて写真である.
4.2. 埋め込みレスポンス・アナライザ
映し出された黒板に,選択肢を提示し,授
業専用の携帯サイトにある選択肢を学生がク
リックすることで,集計を行い,チャート表
示する.現システムでは3D 円グラフと棒グ
各ソフトウェアは,システムとは独立した
ラフのみを実装している.
Microsoft Windows Application として実装
講師大の大きさのチャートが,あたかも講
されており,それを PowerPoint からツール
師の横に浮いているように,あるいは,黒板
バー等で呼びだして制御する方式をとってい
上に浮かび上がったように表現される.
る.このため,開発スピードの向上と,従来
の小さい画面での独立動作が可能である.
これらは学生が携帯端末によって送信し
たデータをもとに動作するため,外部からア
クセス可能な公開サーバを設置した.サーバ
は,Microsoft Windows Server 2008 上に
SQL Server Express,Internet Information
Server 7.0 で実装した.
以下,これらのソフトウェアの詳細につい
て説明する.
図 6 埋め込みレスポンス・アナライザ
4.1. 流動字幕
図 5 に流動字幕が写っている実際の授業の
様子を示す.学生が携帯で発言すると,それ
4.3 アイディアボード
学生が授業専用サイトを携帯電話で開き,
が巨大壁面スクリーンに投影される.いろい
そこから,アイディアを単語で書き込むと,
ろな表示方法がありうるが,今回は,ニコニ
それが画面上から降ってくる.各種アイディ
コ動画などで採用されている流動字幕方式と
アを大量に集める時に使用する.図 7 は,降
した.授業内で学生のつぶやきが画面上の左
ってきたアイディアを講師が黒板に張ってい
から右へ数秒かけて移動していく.講師は,
る様子を示す.
それを無視しても取り上げながら授業を展開
してもよい.
また,黒板ではなく,任意の図表の名称等
を学生に回答させて,それを適切な位置に配
置させることもできる.学生をあてて配置さ
せてもよい.図 8 は,最後の晩餐の壁画を実
物大に
に表示し,そ
そこに学生が書き込んだ,
,描
プリケーション化し,さ らに背景を透
透過さ
アプ
かれた
た人物名を配
配置している様子である.
.目
せ,厳密に学生
生と同一身長に
になるように
に調整
どの
的に応
応じて背景の
の図表を薄く表示するなど
する
ることで巨大
大壁面電子黒板
板に自然な形
形で入
機能を
を実装してい
いる.
れ込
込むことがで
できた.図 100 では,アバ
バター
が等
等身大で,コンテンツの中
中に溶け込む
む形で
表示
示されているのがわかる.
.なお,画面
面右に
縁が
があるように
に見えるのは左
左右のプロジ
ジェク
ター
ーの発色の違
違いによるもの
のである.
図 7 アイデ
ディアボードの
の使用例 1
図 10 新学生代表ア
アバター
アバターは服
ア
服部・柳沢(20010)では,立
立って
いる
る状態,質問
問状態,座って
ている状態,座っ
てい
いて質問して
ている状態の 4状態しかな
なかっ
図 8 アイデ
ディアボードの
の使用例2
た.調査によると大学生はマ
マンガやアニ
ニメー
ショ
ョンを大学講
講義で用いる ことにはさほ
ほど違
4.4. 巨大 KJ 法
和感
感がなく,そ
それらには癒 し効果も指摘
摘され
投稿
稿されたアイ
イディアを KJ
K 法風に移動
動・
てい
いる.そこで
で,本システム
ムではさらに
にバリ
グルー
ーピングする
ることができる.この際,
,背
エー
ーションを加
加え,たとえば
ば図 11 のよ
ように
景に図
図表があって
てもよいし,図 9 のように
にア
「わ
わかった!」と「よく見え
えません」の
の反応
イディ
ィアがで終わ
わった後は,グルーピング
グに
時な
などに数コマ
マのアニメーシ
ションで学生
生の反
集中で
できるように
に単色にして
てもよい.
応を
を表現した.表4に,今回
回実装した,アバ
ター
ーの反応をまとめた.
図 9 巨大 KJ 法
4.5. 学
学生代表アバ
バター
服部
部・柳沢(2010)で開発された学生代表
表ア
バター
ーは,単独の
のウェブアプ
プリケーション
ンで
あり((図 10).独立
立ウィンドウを持っていた
たた
め,コ
コンテンツと
との融合とい
いう点では問題
題が
あった
た.
そこ
こで,これを
を Microsoft Windows
W
の標
標準
図 11 アバ
バターのアニ
ニメーション例
例
表 4 学生代表アバターの反応
反応
分かった!
ガッテン
難しいです
よく見えません
へぇ~
よく聞こえません
もう一度(アゲイン) 眠い
教室が寒いです
教室が暑いです
4.6. 授業インジケータ
巨大壁面電子黒板内だけですべて授業が
図 13 学生状態インジケータの例
左は各種反応を時間ごとにカテゴリー化した
もの,右は過去 10 分間の反応集計.これによって
学生の現在の状態が把握でき,それに応じた授業
ができる.
行えるようになると,授業中に知りたい各種
情報もまた,スクリーンに投影して可視化す
ると授業がやりやすい.本システムでは以下,
大きく3つのインジケータを実装した.
4.6.1. 授業概要と授業ウォッチ
授業概要とは,授業のタイトルを常に表示
させておく単純なものであるが,授業ウォッ
チと連動して現在がどの段階であるかを表示
する.図 12 に授業概要と授業ウォッチを掲
載する.授業ウォッチは 90 分の授業の大ま
図 14 学生状態インジケータ例
かな構造を円グラフで表現しておき,現在が
アバター右の各種チャート群. 上から授業概要、
授業ウォッチ,理解度メータ,反応メータ,累積
メータ.90 分の授業中の学生の状態変化が刻々と
変化する.
どの段階かをビジュアルで表現する.講師は,
この授業ウォッチを見ることによって,授業
進捗の遅れなどを素早く認識して,授業スピ
ードの調整が可能となる.
5. スペシャルボード
巨大壁面電子黒板ならではの使い方とし
て,単に1枚1枚のコンテンツを表示させる
のではなく,それらをテレビのバラエティー
番組等で使われている1枚のボードとして利
用することを実装した.これによって,従来
PowerPoint 等ではスライドのページがめく
られると前のスライドが観られないといった
図 12 授業概要と授業ウォッチ
4.6.2. 学生状態インジケータ
学生代表アバターに送られた各種反応は,
アバターのアニメーションによって講師に通
知されるが,それで終わりである.それをサ
ーバに保持しておき,グラフによって表現し
たものが学生状態インジケータである.現在
プロタイプ的に実装したのは、学生からの反
応をいくつかのカテゴリーに分けて、その時
間変化を可視化したものである(図 13, 14).
一覧性の問題が解決し,常に,一つのテーマ
の内容が表示されていることから,大きな流
れを把握しやすいという利点がある.
時系列的な説明,家系図などの関係図・構
造図などを説明する時に分かりやすく授業を
進めることができる.
また,司会者のみのもんたが使う手法とし
て有名な,ボード中の一つ一つのコンテンツ
上の付箋紙を,説明に応じて剥がしていくと
いった,いわゆる「もんたメソッド」をソフ
トウェア的に実装して,よりリアルなボード
表現を実現することができた.
図 15 スペシャルボードともんたメソッド
6. 課題
本システムは,いまだ数名の学生相手に模
擬授業を行ったのみであり,実践的評価はし
ていない.今後は動作を安定させ,90 分の本
当の講義で利用して,評価する必要がある.
現在わかっている大きな問題点は,文字の
表示に関する問題である.大講義室の後方か
らでも判読可能にするためのデザイン研究を
行う必要がある.
る大学生の無質問行動に関する教育心理
学的諸問題, 日本教育心理学会総会発表
論文集,38: S74-S75.
村上正行(2010)授業中におけるTwitter活用
の有効性に関する評価,日本教育工学会
第26回全国大会講演論文集,913-914.
中山実,森本容介,赤堀侃司,清水康敬(2002)
携帯電話を用いた支援システムの開発,
電子情報通信学会技術報告, ET101
(706), 81-86.
三尾綾子, シャイサティャンプラッチャ, 椿
本弥生, 御園真史, 柳沢昌義, 赤堀侃司
(2007) 癒しを目的としたアバタの開発
とその効果の検討, 日本教育工学会研究
報告集(JSET07-1), 41-47.
宮田仁 (2002) 携帯電話対応コメントカ-ド
システムを活用した他人数講義における
授業コミュニケーションの改善, 日本教
育情報学会学会誌, 18(3): 11-19.
Yamamoto,M.,Akahori,K.(2005)Development of
an e-learning system for higher education
using the mobile phone, Proceeding of
World Conference on Educational
Multimedia, Hypermedia and
Telecommunications
(ED-MEDIA), .4169-4172.
柳沢昌義 ・梶本奈都未 (2011) 巨大壁面スク
参考文献
服部友美, 柳沢昌義 (2010) 多人数授業時に
おける携帯チャット画面の共有効果に関
する研究, 日本教育工学会研究報告集
(JSET10-4), pp.21-28.
佐藤弘毅,柳沢昌義,赤堀侃司(2001)授業時
において学生のフィードバックを表示す
る電子化黒板ソフトウェアの開発と評価,
日本教育工学会第17回全国大会講演論
文集, 529-530
佐藤弘毅,柳沢昌義,赤堀侃司(2002)学生の
フィードバックを視覚化する電子化黒板
を用いた授業の実践およびその有効性の
検証,日本教育工学会第18回全国大会講
演論文集,203-204.
リーンを利用した一斉授業支援システ
佐藤弘毅,柳沢昌義,赤堀侃司 (2004) 受講者
ムの開発, 日本教育工学会第 27 回大会
のフィードバックを黒板に表示するソフ
講演論文集.
トウェアの開発と評価, 科学教育研
究, .28(5): 295-305.
佐藤弘毅,赤堀侃司 (2006) 電子化黒板に共
謝辞
有された情報への視線集中が受講者の存
本 研 究 は , 科 学 研 究 費 基 盤 B (No.
在感および学習の情意面に与える影響,
20300277) お よ び 挑 戦 的 萌 芽 研 究
日本教育工学会論文誌, 29(4): 501-513.
(No.23650552)の助成を受けている.
祐宗省三, 河本肇, 浜崎隆司, 川崎健二, 西
川勝美, 高野清純(1996)授業中におけ
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