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日消外会誌 27(4):876∼
883,1994年
実験的術後 Methicilline耐性黄色 ブ ドウ球菌腸炎 の検討
東邦大学医学部外科学第 3講 座
川 井
邦
彦
ラ ッ トを用 い, M e t h i c i l l i n e 耐
性黄色 ブ ドウ球菌 ( 以下, M R S A と
略記) 生 菌 を腸管 内 に接種 し,
炎発症誘 因 の解 明 と全身感染症 へ の移行経路 の解 明を 目的 に実験検 討 した, M R S A 腸
炎は
MRSA腸
胃切除後 に多 く, 抗 菌剤投与 で腸 内細菌叢 が変化 した状 態 に起 こ りやす い とされてい る。そ こで, 抗
菌剤投与群 と非投与群, 胃 切 除群 と非切 除群 に分 け比較検討 した。 胃切 除前 K a n a m y c i n , M e t r o n i d ・
a z o l e 投与 群 で は, M R S A 接
MRSA接
種 1 日 目よ り便 中 に M R S A が 1 0 6 c F U / g 検 出 され , 非 投 与 群 で は,
4
日
は1
0 2 c F U / g , 5 日 目か ら1 0 5 c F U / g 検 出 され , 前 者 が有意 に多 か った。術後
種
目まで
L a t a m o x e f 非 投与群 では接種 した M R S A は
除群 と非切 除群 の便 中 M R S A 菌
と, ま ず肝臓 か ら M R S A が
増殖 しなか った 。M R S A 接
種前後 の抗菌剤投与下 で 胃切
数 の比 較 で は前 者 が 有意 に 多 か った 。 M R S A の
検 出 され , 腸 管 内 の M R S A が
臓 器 内移 行 をみ る
腸管壁 か ら門脈 , 肝 臓 を経 由 し, 全 身感染
を引 き起 こす こ とが示唆 された。
Key words : MRSA, postoperativeenterocolitis,changeof intestinalflora, spreadof MRSA enterocolitis
身感染 へ の移 行経路 は基礎的 に検討 されてお らず ,症
は じめ に
消化器外科領域 では, 1 9 7 0 年 代 か ら1 9 8 0 年代前半 に
か けて グ ラム陰性浮菌 に よる術 後感染発症 の頻 度 が増
加 した 。 このため, グ ラ ム陰性梓菌 に強 い抗菌力 を示
す第 3 世 代 セ フ ェム剤 が 開発 され, 術 後感染予防 の 目
的 で投与 され る機会 が増加 した 1 ) . しか し, こ れ らの抗
菌剤 は グ ラム陽性球菌 に対す る抗菌力 が乏 しいため,
状 の進行 に応 じた適正 な治療法 も確立 していない。
そ こで 今回著者 は, ラ ッ トに KM,MTNの
と胃切 除を施行 し,MRSA生
前処置
菌 を腸管 内 に接種す る こ
とに よ り本症 モ デル を作製 し,腸 管 内 で の MRSA増
殖 に及 ぼす 胃切除や腸内細菌叢 の変化 の影響,お よび
腸管 内 での増殖過 程,さ らに MRSAの 他臓 器 へ の移
M e t h i c i l l i n e性黄
耐 色 ブ ドウ球菌 ( 以下, M R S A と
略
記) 感 染症 の急激 な増加 の一 因 とな った といわ れ てい
行経過 を生菌 数測定方法 を用 いて基礎 的 に検 討 したの
る分り。 ま た, 大 腸 外 科 の 術 前 p r e p a r a t i oしnて
と
K a n a m y c i n ( 以 下, K M と 略記) , M e t r o n i d a z o l e ( 以
材料 お よび方法
1)実 験動物 i Wistar系,雄 性,体 重約250gの con‐
ventionalラッ ト (三協 ラボサ ー ビス)を 使用 した。検
下, M T N と
略記) を経 口投与す る と, 腸 内細菌叢 が 変
化 し, 主 要細菌数 の著 しい減少 が認 め られた と臨床 的
に も実験的 に も報告 されてい る。.
で報告す る.
収期 間 は 7日 間 とし,国 形飼料 にて飼 育 した 。
2)使 用菌株 :教 室 で経験 した 本症 の 患者 の 下痢 使
よ り分離 された コアグ ラーゼ II型,エ ンテ ロ トキシン
特 に消化器外科術後 の M R S A 腸 炎 ( 以下, 本 症) は,
胃切 除後 に発症す る こ とが多 く1 ) , 術後 3 日 日頃 よ り,
C型 ,TSST‐ 1産生 株,フ ァー ジ型別不能 の MRSA 4
1 日 数 ′に もお よが 急激 な下痢 と高熱で発症 し, 脱 水
株 のなかか ら,予 備検 討 の結果,腸 管 内 での増殖能 が
に対す る十 分 な輸液 や M R S A に
最 も良好 であ った328GTS株 を用 いた 。
3)菌 液 の調整 :実 験 に際 しては,あ らか じめ ス キ ム
抗 菌力 の 強 い薬剤 の
投与 な ど適切 な治療 の遅 れ は, 敗血 症 か ら d i s s e m i n a t ‐
e d i n t r a v a s c u l e r c o a g u l a t i臓器不全
o n , 多 を引 き起 こ
ミル クにて凍結保存 した菌 を,マ ン ニ ッ ト食塩培地 (栄
し重 篤 な経過 を と り, 消 化器外科 の重大問題 とな って
研)で 前培養 した後 ,Brain Heart lnfusion Agar
きたのり。。. し か し, 本 症 の実態, 特 に腸管感染 か ら全
(Difco)に て37℃24時間静置培養 した 。滅菌生理食塩
<1993年 12月 8日 受理>別 刷請求先 !川 井 邦 彦
〒153 目 黒区大橋 2-17-6 東
邦 大学 医学部付属
大橋病院第 3外 科
液 で希釈 し,分 光光度計 (日立,220A型 )を 用 いて,
1.0×105cFU/mlお よび10× 107cFU/mlの 菌液 を作
製 した.
43(877)
1994年4月
4)本 症 モ デ ル作製方法
以下 の 5群 を作製 した。 おのおの 5匹 の ラ ッ トを用
いた。
① ヲト胃切除群
I群 iKM(690μ g/m査 力価,明 治製菓)250mg/kg,
MTN(1,000μ g/mg力 価,塩 野義製薬)40mg/kgを
1日 1回 ,4日 間連続経 口投与 した後,開 腹 せ ず に 3)
の 項 で 記 述 した MRSA菌
液 1.Oml(10X105cFU/
ラ ッ ト)を ブ ン デ にて経 口的 に 胃内接 種 し,接 種 後
Latamoxef(以 下 LMOX,1,000″ g/mg力 価,塩 野義
製薬)を 400mg/kg連 日腹腔 内投与 した群 .
取 した 。 これ らを ホ モジ ェナ イズ した後,滅 菌 生理食
塩液 にて10倍段階希釈 し,前述 の Methicillin 32/g/ml
地 で,そ れぞれ,
含有 マ ン ニ ッ ト食塩培 地,CLED培
37℃48時間,37℃ 24時間培養 し,生 菌数 を測定 した 。
6)便 水分量預」
定
前述 の方法 で採 取 した 便 を180℃で30分間乾燥 滅 菌
器 内 にて乾燥 し,wet weightと dry weightか ら便水
定 した ,菌 接種前 また は KM・ MTN投 与前
分量 を損」
に採取 した便 を コン トロール群 とし,比 較 した。
なお,統 計的有意差検定 は 九2乗検定法 を用 い,p<
0.01以下 を有意水準 とした。
結
投与 した
H群 tI群 と同様 に 4日 間 KM・ MTNを
後,麻 酔 下 に開腹 し,胃 切 除を施行 せ ず に MRSA菌 液
1.Oml(10× 105cFU/ラ ッ ト)を 27Gの 注射針 を用 い
1.便 中 MRSA菌
果
数 の変動
1)非 胃切除群
連 日腹腔 内
I群 では,KM・ MTN投
与 に よ リグ ラ ム陰性梓菌 は
ム
著 明 に減 少 したが, グ ラ 陽性球菌数 は変化 しなか っ
② 目切 除群 t手 術前 日よ り24時 間絶 食 とした ラ ッ
トを Ketalar(三共)100mg/kg,Celactal(バ イエ ル)
た (Fig.1).MRSA菌
数 は,接 種後 1日 目が最 も多 く
24× 105cFU/g彬 煮出 され, 2日 目11× 109CFU/gに
減 少 し,そ の後 7日 目まで 持続 的 に104cFU/g前 後 の
て十二 指腸 内 に接種 し,接 種後 LMOXを
投与 した群 .
5mg/kgの 腹腔 内投与 で麻酔後,腹 部正 中切開 に よ り
開腹 し2/3胃切 除 を施行 した 。そ の後,MRSA菌 液 を十
二 指腸 内 に接種 し,腹 腔 内 を生 理 食 塩液 10mlで 洗 浄
生菌 が検 出 された.
H群 で は グ ラム陰性梓菌数 は KM,MTN投
し,閉 腹 した。また ,手 術後 ラ ッ トは専用 の BS室 で 1
匹ず つ個別 に飼 育 した。
種
以後,一 過性 の再増加 がみ られた ものの,MRSA接
2日 日で は103cFU/gま で減少 した (Fig.2).グ ラム
III群:手 術前後抗菌剤非投与 群.
IV群 i術 前 に抗菌剤 は投与 せ ず,術 後 に LMOXを
連 日腹腔 内投与 した群.
V群 :術 前 に Iと 同様 の方法 で KM,MTNを
間連続経 口投与 し,術 後 LMOXを
4日
連 日腹腔 内投与 し
菌数 は接種 2日 目か ら検 出 され は じめ,経 日的 に増加
し,接 種 7日 目に は1.2×107cFU/gに 達 し, I群 に く
らべ有意 に増加 していた (p<0.01).開 腹時間 は約20
種前後 の生 菌数測定
投与 開始直前 よ り,毎 日
便 中生菌 数 :KM,MTNの
肛 門周囲を0.05%ヒ ビテ ン液 にて清拭 した後 ,肛 門刺
激 に よ り半 強制 的 に排 出 させ た 便 を無菌 的 に採 取 し
た 。 これ らを,滅 菌生 理食塩液 にて10倍段階希釈 し,
MRSA検
出 のた め に Methicillin 32″
g/ml含 有 マ ン
ニ ッ ト食塩培地,お よび腸内細菌検 出 のために CLED
培地 を用 い,そ れぞれ,37℃ 48時間,37℃ 24時間培養
生菌
し,グ ラ ム陰性浮菌,グ ラム陽性球菌,MRSAの
定 した。
数 を狽」
各臓 器 の MRSA生
トに MRSAを
陽性球菌数 は グ ラム陰性梓菌 よ り多 く検 出 されたが,
接種 3日 日で最低値 104cFU/gが 検 出 された。MRSA
分 で あ った。
た群 .
5)MRSA接
与 開始
菌 数 iV群 と同様 の条件 で ラ ッ
107cFU/ラ ッ ト, お よび105cFU/ラ ッ
目に ラ ッ トを麻酔下 で放
ト接種後, 1, 3, 5, 7日
血死 させ ,腸 管 内容物 (小腸上部,中 部,下 部,盲 腸,
結腸),血 液 (心血),肺 臓,肝 臓 ,腎 臓 を無菌的 に採
ア
vith admin‐
iable cells in feces from rats、
Fig. 1 ヽ
istration of drugs before and after inoculation of
MRSA
44(878)
実験的術後 MRSA腸
Fig. 2 Viable cells in fecesfrom rats with administration of drugs before and after inoculation of
MRSA
I
.,. .-
I n t o d u o d e n € t i n o c u t a t r o no t M F S A
Adminiatation of KM and MTN
Adninrst6tion ol LMOX
炎の検討
日消外会誌 27巻
4号
Fig. 4 Viable cells in feces from gastrectomized
rats with administrationof drugs after operation
Oars atter inoculation
Days sfter inoculation
T : Intraduodenalinoculationof MRSA
.....* : Administration of LMOX
Fig, 3 Viable cells in feces from gastrectomized
rats without administration of druss
Fig. 5 Viable cells in feces from gastrectomized
rats with administration of drugs before and
after operation
lq
Day6 6tter
inoculation
2 ) 胃 切除群
手術前後抗菌剤非投与群 ( I I I 群
) で の便 中 M R S A ,
グ ラ ム陽性球菌, グ ラム陰性梓菌 の菌数変動 をみ る と,
MRSAは
接種後 5 日 目に使 中 か ら平均3 5 × 1 0 2 c F U /
されたが経
出
日的 に減少 した。 一 方 グ ラム陽 性球
g検
ム
菌 お よび グ ラ 陰 性梓菌 は共 に M R S A 接 種後 3 日 目
なか ったが, 5 日 目4 5 × 1 0 4 c F U / g と急増 し, 6 日 目
2 . 3 ×1 0 5 c F U / g と最高 となった。V 群 で K M ・ M T N
投与によるラッ トの使中細菌叢 の変化をみると, グ ラ
ム陽性球菌 の菌数 は K M ・ M T N 投 与前 では1 0 9 C F U /
g で あったが, M R S A 接 種前 日までに1 0 8 c F U / g にま
で漸減 した。一方, グラム陰性梓菌 は 1 日 目3 . 0 ×1 0 6
1 0 S C F U / g レ ベ ル に減少 したが, そ の後 7 日 目まで1 0 5
∼1 0 6 c F U / g レ ベ ルの菌数 を維持 した
( F i g 。3 ) .
術後 L M O X 投 与群 ( I V 群) で は, グ ラム陽性球菌 は
目1.1×104cFU/
g , 4 日 目4 . 5 X 1 0 2 c F U / g と 経 日的 に減少 した ( F i g .
5 ) . 便 中 の M R S A 生 菌 数 は M R S A 接 種 翌 日平 均
徐 々に 減 少 し, 7 日 目に1 0 6 c F U / g ま で に 減 少 した
( F i g . 4 ) . グ ラム陰性浮菌 は M R S A 接 種前 1 0 8 c F U / g
3 . 5 ×1 0 4 c F U / g とな り, 以降 2 日 目よ り7 日 目まで持
続的 にほぼ1 0 6 c F U / g レベル検 出 され, I I I 群
, I V 群に比
で あ ったが, 4 日 目に1 . 8 ×1 0 2 c F U / g と 急激 に少 し,
以後漸 増 し 7 日 目5 2 × 1 0 4 c F U / g と な った。 M R S A
は M R S A 接 種 後 1 ∼ 4 日 目まで は便 中 か ら検 出 され
べ, 有 意 に多 かった ( p < 0 . 0 1 ) . 胃切除 に約3 0 分を要
し, 開 腹時間 は約5 0 分であった。
2 . 腸 管内お よび他臓器中の M R S A 菌 数 の変動
CFU/g,2日
目4.8×104cFU/g,3日
45(879)
1994+ 4 E
Fig. ? Comparison on viable cell counts in feces
between group II and III
o Group III (Gastrectomized rats with administration of drugs before and after operation), o
Group II (Gastrectomizedrats with administra"
tion of drugs after operation).
Fig. 6 Comparison on viable cell counts in feces
between group III and IV
o Group III (Gastrectomized rats), o Group IV
(Non-gastrectomized
rats). *p(0.01, **p{0.05
T 市 ﹁
上
︱ ︱ 上
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︵ゅ ヽD﹂0︶ り︼こうoO ↓
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︵。 ヽD﹂0 ︾ り一tぅoO 〓 0 一
2
そ1
(lndividual days
l
f r o m
7
Days after inoculation
I 群 ( 非胃切除群) と V 群
( 胃切 除群) に おいて使
結 腸 か ら7 . 4 ×1 0 3 c F U / g の M R S A 菌 数 が 認 め られ
たが, 上 部, 中 部小腸, 肝 臓, 腎 臓, 肺 臓, 血 液 では
ほ とん ど認め られなかった ( F i g . 8 ) 。3 日 目で は, 腸
管 全 体 か ら1 0 6 c F U / g , 肝 臓, 腎 臓, 陣 臓 か らは1 0 4
数を比較す る と, V 群 では, 2 ・ 4 ・5 ・
6 日 目に おいて I 群 に比 べ 右意 に増 加 していた ( p <
o , 0 1 ) ( F i g , 6 ) 。 また, 同 様 にI V 群( 非前処置群) と V
中の M R S A 菌
群 ( 前処置群) で使 中 M R S A 生
菌 数 を比較す る と, V
C F U / g , 肺 臓 か らは1 0 3 c F U / g の M R S A 菌 数 が認め
られた。小腸では 5 日 目に最高菌数 とな り7 日 日では
やや減少 したが, 結 腸では経 日的増加が認 め られた。
群 で は 3 日 目以 降, I 群 に比 べ 有 意 に増 加 して い た
(p<0.01)(Fig.7).
以上 の こ とか ら, V 群 ラ ッ トを用 い, M R S A の 腸管
内 で の増殖過程, お よび他臓器 へ の移行性 を検討 した。
MRSAを
肝臓, 腎 臓, 解 臓, 肺臓 では, 3 日 目以降 も約1 0 4 c F U /
g の M R S A 菌 数 が引 き続 き検出 された. 血液 の培養 で
は, 3 日 日, 7 日 目の各 1 匹 , 計 2 匹 か らのみ M R S A
1 0 7 c F U / ラ ッ ト接種群 では, 1 日 目で盲腸
か ら1.4× 106cFU/g,下
部Jヽ腸 か ら9`0× 103cFU/g,
Fig. 8 Changeson viable cells of MRSA in organs
4
ー
3
品恥 i
ド
5
ゴ甜=
記!
ゴ靴1
6
撤明
7
o 。一
>
〇0一
︵ゅヽD Lnじ りやこぅoo 〓。
抽騨
8
O : small intestine(upper)
O : small intestine(middle)
O : small intestine(lower)
a : ceacum
A: colon
A: blood
O : lung
I : liver
O : kidney
X : apleen
2
∃
3
5
7
Days after inocultion of MRSA
Cha‖enge doset10'CFU′rat
t o
7 )
46(880)
実験的術後 M R S A 腸 炎 の検討
日消 外 会 誌 2 7 巻
4号
Fig.9 Changes on viable cells of A/1RSA inorgans
性騨 r
11
市牌 棚 ︱
︵めヽD L O ︶ の中Eヨ00 〓00 〇一
〇0一
>
3
O i smaH intestine(upper)
● :sma‖ intestine(middle)
O:sma‖ intestine(lower)
△ i ceacum
▲ :colon
ム :b10。
d
□ モlung
■ :liver
□ :kidney
× i spleen
,‖
5
7
Days after inocultionof MRSA
C h a ‖e n g e d o s e : 1 0 °
C F U ′r a t
が それぞれ5.0×10CFU/ml,1.1× 106cFU/ml認 め ら
Table l Viable cells Of MRSA in Organs after
れた。
inOculation Of MRSA (10g CFU/g)(challenge
105cFU/ラ ッ ト接種群 では, 1日 目では小腸上部 か
ら8.O X 104cFU/g, Jヽ
腸 下 部 か ら1.5×102cFU/gの
dosel 10S CFU/rat)
MRSA生
菌数 が認 め られたが,他 の腸管,肝 臓,腎 臓,
inoculation
1
3
5
7
5
肝 臓, 腎 臓, 陣 臓, 肺 臓 の 臓 器 中 M R S A 生 菌 は1 0 7
C F U / ラ ッ ト接種群 に くらべ有意 に少 な く ( p < 0 . 0 1 ) ,
3
増加傾 向 は認め られ なか った 。 なお, 腸 管 以外 の臓 器
か ら M R S A が 検 出 され た ラ ッ トに お け る M R S A の
3
検 出臓 器 と生 菌数 をみ る と, 肝 臓 か ら M R S A が 検 出
され ない ラ ッ トで は, 肝 臓 以 外 の臓 器 か らも M R S A
が検 出 され る こ とはなか った ( T a b l e l ) 。
便 水分量 は,
コ ン ト ロール 群6 6 . 2 % に 対 し, M R S A 接
種群では
7 8 . 8 % と 有意 に多 か った ( p < 0 . 0 1 ) .
考
MRSA感
察
1
5
3
7
7
嵯嵯陸一
睦睦陸睦嵯睦嵯畦礎
肺臓 ,血 液 では認 め られ なか った (Fig.9).小 腸で は
各部位 で 3日 日, 5日 目と経 日的 に増加 し,106cFU/
ー
gと ピ クに達 し,7日 目に減 少 した。大腸 で は経 日的
に増カロし,5日 目で106cFU/gと ピー クに達 し,7日 目
で もほぼ同程度 の M R S A 生 菌数 が検 出 された 。一 方,
rgans
Blood
繁群 °
Liver
Kidney
Spleen
Lung
1.95
100≧
100≧
1_00≧
1 60
1.00≧ 1 0 0 ≧
100≧
2 30
100≧
100≧
1 00≧
3 78
2 66
100≧
100≧
2 08
100≧
1 70
100≧
2 78
2 85
2 78
100≧
2 63
1 48
1 78
1 00≧
3 78
1 85
2 20
1.00≧
3 48
2 94
4 08
1 60
6 1 1
4 40
6 58
3 30
3 1 1
3 85
100≧
3 48
2 53
1 60
2 30
1 78
フ ェム剤,ア ミノ配糖体剤 に も耐性 を示す多 剤耐性菌
で あ った こ とか ら問 題 とな った働∼1の
。 わ が 国 で は,
1970年代 か ら1980年代前半 は,消 化器外科領域 の術後
染症 の歴 史 は古 く, M e c h i c l l i n e が開発 さ
には,第 1,第 2世 代 セ フェム剤 が 使用 され る ことが
れ た翌 年 の1 9 6 1 年に, 欧 米で はす で に M R S A 出 現 の
報 告 が な され て い るの。 しか し1 9 7 0 年代 に米 国 を 中心
に猛威 を振 るった M R S A 感 染症 は, ペ ニ シ リン剤, セ
多 く, これ ら薬剤 は抗黄色 ブ ドウ球菌作用 が強 か った
ため,術 後感染巣 か ら分離 され る菌 は グ ラ ム陰性存菌
が多 か った 111そこで,それ らに対 して第 3世 代 セ フ ェ
47(881)
1994年4月
ム剤 が 開発 され術後感染予防 目的 に,広 く用 い られ る
よ うにな って きた。 しか し, これ ら第 3世 代 セ フ ェム
一
剤 は黄色 ブ ドウ球菌 に対す る急増 の 因 とな った と考
。
え られ て い る .本 邦 で も1980年代 にな る と,MRSA
感染 の報告 が散見 され るよ うにな り,1986年 頃 よ り,
消化器外科領域 の術後感染,特 に激症 な腸炎 の起炎菌
1".本
として MRSAが 注 目され る よ うに な った。12)∼
したIV群 ラ ッ トで は,便 中 か らグ ラム陰性梓菌 が急減
与4
す るまでは MRSAは 検 出 され な いが,LMOX投
日目よ り,グ ラ ム陰性梓菌 の減少 に反 して,MRSAが
104cFU/g検 出 され るよ うにな った。この こ とは,臨床
で本症 が術後 3・ 4日 目に発症す る こ とときわめて近
似 して い る。 一 方,V群 ラ ッ トにみ られ る よ うに,
前処置 を行 い,グ ラム陰性梓菌 が減少 し
KM・ MTNで
腸 管 内 に 接 種 す る と,便 中
症 は,本 邦報告例 をみ る と胃切除後 に発症す る こ とが
て い る状 態 で MRSAを
多 く,わ れわれの教室 で も,経 験 した10例の MRSA腸
炎 の うち 7例 が 胃切 除後 に発症 して い る。。 これ ら症
MRSAは
例 に お い て MRSAが 経 目的 に侵 入 した と仮 定 す る
と,目 液 に よるパ リヤ ーの消失 が本症発症 の 1つ の 因
は,術 前 また は術後 に投与 された抗菌剤 に よって腸内
細菌叢 が乱 れ,グ ラム陰性標菌 が減 少 した状 態 で発症
子 とな ってい る と考 え られ る。す なわ ち,一 般 に,健
常 者 空 腹 時 の 胃液 pHは 3以 下 で あ り,こ の 場 合
しなす い こ とが明 らかにな り,臨 床 で指摘 された,第
MRSAの
腸管 へ の侵 入は阻止 され るが,食物摂取 に よ
接種後直 ちに増加持続 し,細菌学的 には腸管
感染 が直 ちに成立 していた 。 これ らの こ とか ら,本 症
3世 代 セ フェム剤 が 本症 の発症 に深 く関わ った こ とが
示唆 された。
る p H の 上 昇 に よって こ の パ リ ヤ ーは 失 わ れ る
1 つ その
M R S A の 腸 内侵入 が生 ず る といわれて い る1 。
。
意味 で, こ の M R S A の 目か ら腸管 へ の侵入 は, 低 酸患
Hirakataら 24)は, Pseudomonas aeruginosa(以 下,
P.aeruginosaと 略記)の 経腸管感染 モ デ ルにおいて
者, 胃 切 除 息者 で は よ り顕 著 で あ る と考 え られ て い
る1 ケ1 " 。そ こで 胃液 の影響 につ いて, 胃 切除群, 非 胃
くことを報告 して い る。本研究 にお いて も MRSAが
腸管 内で異常増殖す る と早期 か ら肝臓 ・腎臓 ・心血 か
切 除群 を用 い, M R S A を
胃内 と十 二 指腸 内 に接種 し,
比較検討 した。非 胃切除 ラ ッ トお よび 胃切 除 ラ ッ ト十
二 指 腸 内へ M R S A を
接 種 した群 の 便 中 M R S A 菌 数
は, 非 胃切 除 ラ ッ トの 胃内 へ M R S A を 接 種 した群 に
比 べ有意 に多 か った。 したが って, 胃切除 に よる低 酸
一
状態 が M R S A 腸 炎発症 に関わ る因子 の つ で あ る可
能性 が実験 的 に示 唆 された。
て
従 来 よ り大 腸 外 科 の 術 前 の p r e p a r a t i o し
nと
Bの 経 口投与 が施行
た は Polymyxin‐
11実
に
とされて
され,術後感染予防 有効
きた20レ
験的 に
KM・ MTN, ま
も,KM・
MTN経
日投与 に よ り腸内細菌叢 は変化 し,
主要 細菌 の 著 明 な減 少 が 認 め られ る と報 告 され て い
る。.ま た,LMOXを
人 に 1日 4g7日 間連続静脈 内投
与す る と嫌気性菌群 と大腸 菌群 が直 ちに消失す る との
2の
報告 が あ る 。これ らの ことか ら,抗菌剤投与 に よ り腸
内細菌叢 が 変化 し,菌 変代症 が起 こ り,MRSAが
増殖
し,本症発症 の 1つ の誘 因 で あ る とした報告 もあ る20.
本研究 において接 種菌量 は多 い ものの MRSAの 生
菌 を十 二 指腸内 に接種 した II群の成績 は,臨 床 におい
て,LMOXな
ど第 3世 代 セ フ ェム剤投与 に よ り菌交代
現象 がお こ り,常 在 MRSAが
異常増殖 す る可能 性 を
不 してい る。
さ らに KM・ MTNに
除 ラ ッ トに MRSA生
よる前処 置 を施行 しない 胃切
菌 を接種 し,術後 LMOXを
投与
P.aeruginOsaが門脈 ・
肝臓 を介 して全 身 へ広 が ってゆ
ら MRSAが
検 出 された。しか し肝臓 か ら MRSAが
検
出 され な いか ぎ り,他 の陣群,腎 臓,肺 臓 か ら MRSA
が検 出 され て い な い.こ の こ とは MRSA腸 炎 か ら全
身感染 へ の広 が りは P aeruginosa同 様,門 脈 ・肝臓
を介 して起 こって い る と推測 され る。
一
本 モ デ ルは本症 の臨床的病状 と 致 してお り,適 切
な予防 お よび治療 法 を検討す る うえで極 めて有用 で あ
る と考 え られ る。
稿を終えるにあた り,御校閲を賜 った炭山嘉仲教授,五島
瑳智子名誉教授,山 口恵三教授 に深 く感謝致 します。また,
本研究 において直接御指導 いただいた草地信也講師,宮 崎
修一講師 に深 く感謝致 します。御協力いただいた外科学第
3講座,微 生物学教室の皆様に深 く御礼申 し上げます.
文 献
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49(883)
Experimental
Studies on Postoperative Enterocolitis
Staphylococcus aureus
with Methicilline-resistant
Kunihiko Kawai
Third Department of Surgery, Toho University Schoolof Medicine
Viable cells of methicillin-resistant Staphylococcusaureus (MRSA) were inoculated into the intestinal tract of
rats to clarify the mechanism of MRSA-inducedenterocolitis and the processof progressionto generalizedinfection.
MRSA-induced enterocolitis frequently occurs after gastrectomy, and alteration of intestinal bacterial flora by
treatment with an antibiotic is thought to create a condition of high susceptibility to this disease.Therefore were
compared MRSA-inoculated rats by dividing them into antibiotic-treated and non-treated groups and gastrectomized and non-gastrectomizedgroups. Before gastrectomy, MRSA in a kanamycin-metronidazole-treatedgroup,
and was detectedat 102CFU/g up to post-inoculation day 4 and at lff CFU/g from day 5 in the non-treatedgroup,
disclosing the presenceof significantly more MRSA in the former group. After gastrectomy, there was no growth of
the inoculated MRSA in the latamoxef-non-treatedgroup. When fecal MRSA counts of the gastrectomized and
non-gastrectomizedgroups treated with an antibiotic before and after inoculation of MRSA were compared, the
gastrectomizedgroup was found to have a significantly higher MRSA count. As for the route of transmission of
MRSA to the organs, it was suggestedthat MRSA in the intestinal tract penetratesthrough the intestinal wall into
the portal vein, reaches the liver, and then spreads over the entire body, resulting in systemic infection, because
MRSA was detectedin the liver first.
Reprint requests:
Kunihiko Kawai Third Department of Surgery, Ohashi Hospital
1-17-6Ohashi, Meguroku, Tokyo, 153JAPAN
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