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7月 −当面の投資環境と運用戦略−

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7月 −当面の投資環境と運用戦略−
朝食会
7月
経済講演
−当面の投資環境と運用戦略−
講
み う ら
せいいち
師:三浦
誠一
氏
三菱UFJ証券株式会社
リサーチグループ 投資情報部
投資ストラテジスト
昭和 57 年 4 月国際証券入社、平成 14 年 9 月三菱証
券投資情報部投資ストラテジスト、平成 17 年 10 月
三菱UFJ証券投資情報部投資ストラテジスト
本日は、今後の世界経済の見通しをベースに、日本経済の現状と方向性についてお話しし
たい。
1.2007-2008 年の世界経済見通し
IMF(国際通貨基金)では、毎年 4 月と 9 月に世界経済見通しを公表している。4 月に
公表されたIMFの見通しによれば、世界経済は、米経済の予想以上の鈍化見通しにもかか
わらず、4 年連続で 5%近い極めて高い成長を維持するとの見方を示しており、世界経済はこ
の 30 年間で最も力強い景気の拡大が続くとしている。
この要因は、エマージング諸国(新興国:中国やインド等)の高い経済成長力にある。04
年から年率 7%の経済成長となり、08 年までは年率 7%∼8%を維持していく見込みである。
一方、先進諸国の経済成長は、2∼3%を維持する見込みである。ユーロ圏経済では、07 年
2.3%、08 年 2.3%であり、堅調な見込である。次に日本経済の予測であるが、昨年 9 月の 07
年の見込みは 2.1%であったが、今回は 2.3%に上方修正されており、引き続き 08 年 1.9%見込
みとなっており、世界からの日本経済の見方も好転してきている。最後に米国経済であるが、
07 年 2.2%、08 年 2.8%である。07 年の予測値を前回より 0.7 ポイント引き下げたのは、サブ
プライム住宅ローン問題があるからだ。
2.サブプライム住宅ローン問題:米国景気の不透明感
サブプライム住宅ローンとは、信用力の低い個人を対象とした高リスク高金利の住宅貸付
である。貸付金利は返済開始から一定期間を経過すると高くなる設定になっており、さらに
市場金利と連動する変動金利となっているため、返済金額が市場金利の動向により大きく増
減する。米国では、01 年 9 月に発生したニューヨークのテロ事件による景気後退を防止する
ために、03 年の中頃から 04 年の中頃までの 1 年間は、貸出金利を 1%という史上最低金利と
したため、この期間にサブプライム住宅ローンを利用して住宅を購入する人達が急増した。
1
米国の低金利も 04 年の中頃が底で、以後急速に上昇して 06 年中頃までに 5.25%に上昇し
ている。サブプライム住宅ローン問題とは、低金利の期間に急増したサブプライム住宅ロー
ンの利用者が一定期間を経過した返済の時期を迎えて、所得水準があまり伸びない中で返済
金額が上昇し、さらに大幅に上昇した市場金利による支払額の増加があって、返済ができな
くなり破綻する人達が増加してきたということである。この問題が米国経済のマイナス要因
となり、今回(7 月初旬)の米国株式市場での株価の下落に繋がったが、住宅問題だけが米
国経済の判断基準になっているわけではなく、米国経済は強い右肩上がりとなっているため、
影響は限定的であると見ている。
%
25.0
%
25.0
米国の中古住宅価格(中心値)と中古住宅販売件数の前年同月比
21.6%
中古住宅 販売件数
前 年同月比、左軸
20.0
中 古住宅価格
( 中心 値)
最 も取引の多い価格帯
前年同月比、右軸
05/10
16.8%
20.0
15.0
15.0
10.0
10.0
価格
07/5
▲2.1%
5.0
5.0
0.0
0.0
-5.0
-5.0
-10.0
-10.0
06/9
▲13.8%
07/5
▲10.3%
-15.0
-15.0
00
01
02
03
04
05
06
07
08
(出所)Bloomberg、全米不動産業者協会(NAR)のデータをもとに三菱UFJ証券作成
3.減速から緩やかな回復に向かう米国
米国の景気動向を判断するための重要な資料として、ISM(米国の製造業景況指数)が
ある。04 年をピークに製造業の景況感は下降線を辿ってきたが、今年の 1 月に底を打ち回復
の兆しが見えてきた。その後 4 カ月連続して上昇しており、来年の北京オリンピックや米国
の大統領選挙が要因となって経済状勢の高まりが表れてきている。
一方米国の株式市場は、03 年以降右肩上がりで推移しており、今年の 2 月にサブプライム
ローン問題で株価の調整局面があったが、一過性でありすぐに持ち直している。6 月に市場
最高値を記録した。
株価の水準を測定する指標としてPER(株価収益率=時価総額/純利益)というのがあ
る。米国市場の過去の企業利益の実績を振り返ると、88 年 11 月にPERが 12.1 倍、95 年 4
月に 16.0 倍という低水準になった時期があるが、企業利益は高いのに株価が低いという状態
であったためにその後の株価は上昇している。今回のS&P500 の企業利益と株価の関係(P
ER)は、歴史的に見ても低水準に位置している。07 年 6 月 30 日現在で 17.9 倍である。企
業業績が年末に向けて 2 桁成長の予想を重ねると、現在の米国の株式市場の水準は、企業利
益の高さに比べてまだ余裕があり、今がピークとは言えない。
2
5.利益見通しからは出遅れとなった日本市場
(円)
20,000
(兆円)
予想当期利益からみた日経平均
日経平均
1 8 , 2 4 0 円( 6 / 2 1 )
19,704円
(+1σ)
日 経平均
( 左メモ リ)
30.0
18,488円
18,000
17,272円
(-1σ)
25.0
日経平 均理論値
(左メ モリ)
16,000
19.68兆円
(6/15)
14,000
20.0
17.42兆円
(5/19)
12,000
15.0
10,000
8,000
04/6
日経 平均採用銘柄
予想当期 利益( 右メモ リ)
04/12
05/6
05/12
06/6
06/12
07/6
10.0
日本市場についても、米国と同様に企業利益と株価の関係に着目して分析してみる。
上図の棒グラフは、日経平均採用銘柄 225 銘柄の利益の予想水準である。04 年からの時系列
で見ると利益水準が上がってきており、今期(07 年 4 月∼08 年 3 月)の予想当期利益は約
20 兆円となっており過去最高の水準となっている。日本市場においても米国市場と同様に企
業業績と株価の連動性については、重要視して良いのではないか。
7 月現在の日経平均はどのくらいの水準となるかというと、この予想当期利益から見た日
経平均の理論値は、18,400 円台ということになる。
また、ISMと日本株式市場との連動性も高い。過去6年間のISMの拡大期には日経平
均は右肩上がりとなっており、07 年 1 月を底に改善傾向が続いており、日経平均も連動した
動きを見せている。
また、過去3年間における日本企業(東証1部:07/3 期決算・除く金融で直近3期の海外
売上高のデータ取得可能な 551 社を集計)の海外売上高比率は、05 年 3 月期が 44.4%、06 年
3 月期が 46.4%、07 年 3 月期が 48.6%と着実に増加している。ということは、5%成長を続ける
世界経済とリンクして利益を上げている日本企業が増加しているということであり、日本企
業は世界景気との連動性を高めている。
最後に、日本市場のリスク要因について考えると、金利の上昇が懸念される。
日銀の政策決定会議が 7 月に行われる予定であるが、今回の利上げはないと見ている。過
去 2 回の利上げ局面で大規模な円キャリー取引の解消が観測されており、この時海外との同
時株安が起こっていることを考えると、日本市場にとってのリスク要因は、金利の上昇であ
るが、一時的と考えている。
当社の基本認識は、5%成長の世界経済、リード役になっている振興諸国、米国経済の持ち
直し、それらに連動して活躍する海外展開日本企業の業績の向上を前提に、日本市場は今年
から来年の春にかけて拡大傾向が続くということである。
以上
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