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ニュースレター vol.4 平成21年9月

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ニュースレター vol.4 平成21年9月
 Newsletter vol. 4
平成 21年
9月
目
次
ページ
【巻頭言】
「理想」の研究所
東北大学 電気通信研究所
教授
大野
1
英男
【研究室紹介】
東北大学 電気通信研究所
東北大学 大学院工学研究科
白井研究室
新田研究室
3
5
東北大学 金属材料研究所
東京農工大学 工学府電気電子工学専攻
齊藤研究室
清水研究室
7
9
【研究紹介】
「Co 系ホイスラー合金を用いたスピン注入源」
北海道大学
山本 眞史,植村 哲也
「二重強磁性トンネル接合における 1056%の巨大磁気抵抗効果」
東北大学 大学院工学研究科
安藤 康夫,Lixian Jiang,
永沼 博,大兼 幹彦
「ナノ磁性体のスピンと電気の相互作用」
物質・材料研究機構
林 将光,葛西 伸哉,
三谷 誠司,宝野
11
13
15
和博
IBM Almaden Research Center
Stuart Parkin
「非磁性半導体における電流誘起スピン偏極」
東京大学 工学系研究科
加藤 雄一郎
17
【会議報告】
特定領域「スピン流の創出と制御」
19
2009 年度研究会
【研究組織】
21
【お知らせ】
ホームページ、メーリングリスト等
25
巻頭言
「理想」の研究所
東北大学
電気通信研究所
教授
大野英男
昔、と言っても良いのだろうと思うが、米国の企業研究所のいくつかは世界
の研究の中心だった。その一つに一年半滞在したことがあるが、自分たちがカ
バーする分野に関しては、世界のトップである、あるいはやることをやれば自
然に世界の中心になる、と研究者達が思う環境があった。その環境とは、第一
に、世界から優れた人材を集めていた。今年どこそこ大学の博士を修了する誰々
さんに対し、複数の企業研究所が競ってオファーを出していると言う話を良く
聞いた。若い層だけではなく、所属する大多数の研究者が世界のトップで活躍
していたし、教科書に出てくる名前の人がそこら中歩いていた。そういう意味
で、クリティカルマスを超えた人材の集積がなされていた。第二に、集めた研
究者に好きなことをさせていた。企業の大きな方向性に沿っていて、世界でト
ップとなる研究であれば、相当自由に研究テーマを選ぶことができた。第三に、
それら一流研究者や著名な人に気軽に教えを請うことができた。ふらっと部屋
を訪ねていって話し込んでくることもできた。これは、企業研究所の特徴かも
しれない。大きな方向性がある環境では、助け合うことは良いことだとする文
化が必要とされるからなのだろう。誰にも聞かずに論文だけを読むより十倍早
く知識をビルドアップできるというのが実感だった。第四に、研究者やポスト
ドクなど、世界から集まってきた同世代の人たちがそこで「同じ釜の飯」を食
う場として機能していた。これは研究を考える上でかなり重要なことで、みん
な世界に散って行ってその後の人的ネットワークの基本ができる。共同研究な
どは相手を知っていないとなかなか始められないものだし、良い人材を紹介し
たりされたりするつながりもここから始まることが多い。第五に、大げさに言
うと研究費を申請しなくて良かった。極端な場合、上司と話してやってみろと
なれば、書類を一枚も書かずに装置が購入できた。第六に、それなりに高い給
与を得ることができたし、企業年金も、今はいざ知らず、充実していた。年功
序列ではないので、年をとっていくと大変なのかとも思ったが、意外とそうで
もないらしかった。聞いてみると評価スケールのごくごく端にいる人は、給料
が大きく違うが、それ以外の人たちの給料は緩やかにしか変わらない仕組みに
なっているとのことだった。
ここで書いたような研究所はもう存在しない。企業が市場を支配していたと
き、別な言い方をすると、大きな利益があるときにのみ組織可能な研究所だっ
たのだ。市場が企業を支配している今の世界では、民間企業がこのような研究
所組織を維持することはできないのである。それでもこのような組織は必要だ。
巻頭言
と言うよりは、あった方が良いと強く感じている。企業研究所としてはもう存
在できないのであって、その分、大学や独立行政法人の研究所の役割が重要に
なったのである。ただし、クリティカルマスを以上の人材を集めなければなら
ないし、長く維持するための安定的な資金も必要だ。分野や方向性も重要だし、
全体をマネージする力も不可欠だ。優れた研究をした人というのは、必要条件
かもしれないが、自分のしたい研究が先に来てしまうとだめで、「良い人材を
集めて、世界をリードする研究にチャレンジすることを奨励する」のが肝要だ。
実現も運営も難しいかもしれないが、このような組織環境が日本にあると実に
楽しいのではないだろうか。
研究室紹介
東北大学電気通信研究所
白井研究室
当研究室は 2002 年 4 月に白井が大阪大学か
この並列計算システムを稼働させるために必
ら異動して発足しました。以来、研究所の改
要な電力を供給するために、数年前に変圧器
組等により名称が二度にわたり変更になり、
を購入しなければなりませんでした。計算機
現在の正式名称は情報デバイス研究部門物性
本体だけでなく空調にも多大な電力が消費さ
機能設計研究分野といいます。名称は変更さ
れていますので、せめて有効に活用したいと
れても、一貫して第一原理計算に基づく物性
いつも感じています。とはいうものの研究室
の理論的研究に取り組んでいます。研究室は
で研究経過報告会を実施すると、学生からは
三浦良雄、阿部和多加の両名を加えた三名の
「只今計算中です」という発言が絶えません。
スタッフで構成されています。特定領域研究
まだまだ計算機の拡充が必要なのでしょう。
では、三浦が主としてスピン依存伝導の計算
最後に、特定領域研究と関連のある研究に
を、阿部が強磁性体/半導体(絶縁体)界面
取り組んだ学生諸君を紹介します。
の電子状態計算を担当しています。
研究の遂行に必要不可欠な実験装置の写真
大場義浩(現在、精密機器会社に勤務)
を下に掲載します。厚さ1インチの計算機を
MgO 障壁磁気トンネル接合のスピン依存伝
ラックマウントした並列計算システムです。
導に関する研究により 2008 年 3 月修士修了。
計算機1台の単価は数十万円ですので、少額
の研究費でも数台ずつ購入することが可能で、
塩澤保法(現在、電力会社に勤務)
それを写真のようにケーブルで接続して並列
ホイスラー合金/IV 族半導体接合界面の電子
計算システムとして利用しています。
状態に関する研究により 2008 年 3 月修士修了。
谷口裕次郎(現在、電気機器会社に勤務)
FePt/MgO/FePt トンネル接合のスピン依存伝
導に関する研究により 2008 年 3 月修士修了。
中島翔平(現在、青森県立高校教諭)
ホイスラー合金/非磁性金属積層構造の電子
状態に関する研究により 2008 年 3 月修士修了。
鈴木 暢(現在、精密機器会社に勤務)
研究室に設置された並列計算システムの一部で、年中
垂直磁化トンネル磁気抵抗素子のスピン依存
無休で稼働しています。猛烈な騒音(排気用ファンの
伝導に関する研究により 2009 年 3 月修士修了。
音)と排熱のために、この部屋は機器のメンテナンス
時を除いて通常は無人です。寒冷な仙台の冬季でも、
泉谷一磨(修士 2 年生)
空調(冷房)が 24 時間運転されており、地球温暖化
Fe3O4 表面および半導体との界面の電子状態
に貢献しています。
に関する研究に取り組んでいます。精密機器
会社に就職予定。
研究室紹介
二川晃一(修士 2 年生)
ホイスラー合金 CPP-GMR 素子のスピン依存
伝導に関して応用物理学会で発表予定です。
電力会社に就職予定。
村本慎伍(修士 2 年生)
絶縁酸化物強磁性体のスピンフィルタ効果に
関する研究に取り組んでいます。電力会社に
就職予定。
桑原恭志(修士 1 年生)
後列左から、仲野、谷口、大場、白井、三浦、鈴木
前列左から、塩澤、村本、泉谷、阿部、中島
秩序合金および金属多層膜の垂直磁気異方性
に関する研究に取り組んでいます。
永田絵梨子(学部 4 年生)
半導体へのスピン注入に関する研究に着手し
ています。大学院に進学予定。
宮越弘樹(学部 4 年生)
ホイスラー合金 CPP-GMR 素子に関する研究
に着手しています。金融関連会社に就職予定。
森
大樹(学部 4 年生)
後列左から
阿部、二川、白井、村本、三浦
前列左から
仲野、泉谷、桑原、鈴木
上の写真は 2007 年 6 月に、下の写真は 2008 年 5 月に
いずれも電気通信研究所の中庭で撮影されました。
強磁性薄膜の磁気異方性の電界制御に関する
研究に着手しています。大学院に進学予定。
(文責 白井正文)
研究室紹介
東北大学大学院工学研究科
新田研究室
新田研究室は、仙台駅からバスで約 20 分の
現在、ポストドクは中国人 1 名、博士課程
東北大学青葉山キャンパス、マテリアル・開
前期学生 2 名はフランスからの学生ですが、
発系にあります。緑豊かな自然に囲まれたキ
日本学術振興会外国人特別研修生等を積極的
ャンパスは街の喧騒から尐し離れて研究に集
に引き受け、研究室の国際化と英語で議論で
中できる環境です。また、東北大大学片平キ
きる環境を目指しています。また、自分で研
ャンパスにある本特定領域のメンバーである
究計画を立ててから実験を行うことで企画力
金属材料研究所の高梨研究室、前川研究室や
を身につけ、研究内容に関しては、お互いに
電気通信研究所の大野研究室、白井研究室と
議論しあうことで刺激しあいながら研究を進
共同研究を行っています。現在の研究室のメ
めています。
ンバーは、教員 3 名、ポストドク 1 名、博士
本研究室では、半導体と磁性体が主たる研
課程後期学生 2 名、博士課程前期学生 6 名、4
究の舞台ですが、特にゲート電界によって制
年生 5 名です。本研究室は、マテリアル・開
御可能な Rashba スピン軌道相互作用に着目
発系の中で量子材料物性分野を担当し、新田
して研究を進めています。これまで、スピン
淳作(教授)と好田誠(助教)が中心となっ
の位相を電界により制御するアハロノフ・キ
てスピントロニクス、藤田麻哉(准教授)が
ャッシャー効果の観測など、新規なスピン伝
中心となってバルク磁気機能性材料の研究を
導現象の探求を行ってきましたが、さらにス
行っています。
ピン流の電気的な「生成」、「制御」
、「検出」
研究室の集合写真(平成 21 年 6 月撮影)
研究室紹介
を目指して本特定領域研究を進めて生きた
いと考えています。
ゲート電極つき半導体細線構造を作製し、
スピン緩和の様子を量子干渉効果により調べ
以下最近の成果をご紹介します。
ました。ゲート電圧により Rashba スピン軌
微小磁性体リングの磁化反転過程は、磁場
道相互作用を制御し Dresselhaus スピン軌道相
ゼロ近傍で漏れ磁場の小さい Vortex 状態を介
互作用に近づけるとスピン緩和時間が大幅に
して、漏れ磁場のある Onion 状態へと転移し
増大することを実験的に検証しました(Phys.
ます。一方、三層スピンバルブ構造 Fe/Au/Fe
Rev. Lett. 2009)。本研究は、博士課程後期学生
を用いたリングの磁化反転過程を調べた結果、
国橋君が中心となって行った成果です。彼は、
リングの内径に強く依存し内径が小さくなる
本研究の発表で、第 14 回狭ギャップ半導体国
と上下リングの静磁的な結合により単一のリ
際会議の Young Poster Award と応用物理学会
ングとは全く異なった磁化反転過程を示すこ
の講演奨励賞を受賞しました。
とを見出しました(Appl. Phys. Lett. 2008)。本
研究は、博士課程後期学生の宮脇君が中心と
なって行った成果です。
本研究室が発足して 4 年が経過しました。
研究設備はまだ充分とはいえませんが博士課
半導体細線中のスピン軌道相互作用とゼー
程後期の学生のアクティビティが、そのまま
マン効果を競合させることによりスピン緩和
研究室のアクティビティにつながると実感し
の異方性を調べることにより Rashba スピン
ています。
軌道相互作用と Dresselhaus スピン軌道相互作
研究室のミッションは、「世の中に貢献で
用の強さの比が一切フィッティングパラメー
きる人材を社会に送り出す、世界をリードす
タを用いることなく求めることが出来る実験
る研究成果を発信する」ことに尽きると思い
方法を提案しました(Phys. Rev. Lett. 2008)。こ
ます。今後とも本特定領域研究を通じてお互
の手法は、スピン永久旋回状態(Persistent Spin
い切磋琢磨しながら研究室を発展させていけ
Helix)を実現するための手段として有用です。
たらと考えていますので、どうぞ宜しくお願
本研究は、ドイツからの日本学術振興会外国
いいたします。
人特別研修生 M. Scheid 君と一緒に行った成
果です。
実験室の様子。ヘリウム3冷凍機(15T 超伝導マグネ
研究室打ち合わせの様子。学生の間では、週報と呼ばれ、
ットつき)を用いてスピン伝導物性の測定を行っていま
ほぼ 1 週間に 1 回は行うようにしています。
す。
研究室紹介
東北大学
金属材料研究所
量子表面界面科学研究部門(齊藤研究室)
齊藤研究室は、2006 年に慶應義塾大学理工
行うようにしており、研究対象に対して様々
学部物理情報工学科にて発足し、スピントロ
な角度からのアプローチを行うことで多岐に
ニクスの物理の研究を行って参りました。発
渡る知識を身に付けることを推奨しています。
足当時は教員と学生 3 名の小さなグループで
また、本特定領域内の研究グループを中心に、
したが、環境に恵まれ、毎年新たな学生・研
国内外の研究グループとの多数の共同研究を
究生を迎えて 2008 年には総勢 16 名のグルー
行っており、これと関連して研究協力を行っ
プになりました。2009 年 4 月に東北大学金属
ているグループとの合同合宿なども活発に行
材料研究所の量子表面界面科学研究部門へ異
っております。
動し、新たな研究環境での再スタートを切り
現有実験装置としては、スパッタ、電子ビ
ました。慶應大学での研究を踏まえ、これを
ーム蒸着装置、低温マイクロプローバー、マ
更に発展させることを目指し、スピントロニ
イクロ波共鳴分光装置、MOKE 測定装置など
クスやナノ磁性、表面科学、光物性の研究を
があります。
推進しております。
ここでは、これまでの当研究室における成
果の一部をご紹介致します。
1.金属系での各種スピンホール効果
スピン流物性を開拓するにあたって我々が
最初に行ったことは、スピン流の検出手法を
確立することでした。当時はスピン流の概念
やその存在の間接的証拠は知られていました
が、直接的な検出方法は見出されていません
でした。我々は、逆スピンホール効果、即ち
スピン軌道相互作用によりスピン流から起電
メンバー集合写真(本年 6 月)
力が生成される現象に注目し、これを利用す
ることによりスピン流の敏感な電気的検出が
研究室メンバーは齊藤英治(教授)、藤川安
可能になると考えました。東北大の宮崎先生
仁(准教授)、博士課程学生 3 名、修士課程 9
のグループなどで研究されていたスピンポン
名、秘書です(平成 21 年 7 月現在)
。現在の
プを応用して様々な物質の起電力生成効果や
ところ比較的少人数であるために、教員と学
その磁場依存性を系統的に調べ、Pt において
生間の距離が非常に近い環境で、頻繁にディ
逆スピンホール効果に起因すると確信を持て
スカッションを行っています。研究熱心でポ
る起電力信号の測定に成功しました。この研
ジティブな学生が多く、研究室の雰囲気は大
究においては、本特定領域の理論グループの
変明るいと思います。研究室の方針として、
先生方(前川先生、永長先生、多々良先生)、
試料作り、実験装置作り、測定・解析から簡
実験の大谷先生と頻繁に議論をさせて頂きま
単な理論計算まで各学生・研究者が一貫して
した。大谷先生は、このPtの強い逆スピン
研究室紹介
ホール効果を利用して、非局所法による定量
の発見により、熱からスピン流を簡便に取り
的な実験に成功されています。
出すことが可能になりました。興味深いこと
逆スピンホール効果は、高感度かつ電気的
に、スピンゼーベック効果によって生成され
なスピン流の検出手法として現在では広く利
るスピン圧は試料端からスピン拡散長を遥か
用されていますが、その微視的機構について
に超える距離にわたって分布することが観測
は定量的な理解がなされていません。是非こ
されています。系統的実験によりこの長距離
の特定領域のグループで機構解明の糸口が見
分布が外的要因による可能性はほぼ否定され
えることを期待致しております。
ていますが、その起源については未だ十分に
2.スピンホール効果による緩和変調
理解されていません。現在、実験、理論両面
上記スピンポンプ誘起逆スピンホール効果
からのアプローチを進めています。
を体系的に実験する過程で、その逆効果とし
て発見されたのがスピンホール効果による磁
さて、本特定領域研究における当研究室が
化緩和変調効果です。強磁性/Pt 複合膜では、
担当する研究課題は「ナノ磁性体におけるス
スピンポンプが駆動されている状態において、
ピン流-電磁場変換」であり、既に開拓に成
歳差運動する磁化のもつ角運動量が伝導電子
功した逆スピンホール効果を駆使して、電気
に移行することにより磁化の緩和(ギルバー
測定により各種スピン流生成効果を開拓する
ト漢和)が変調され、同時にスピン流が放出
ことが第一目標です。スピンゼーベック効果
され、これが逆スピンホール効果を経由して
はその一例であり、現在までに局所スピンポ
起電力を生成します。この逆効果として、磁
ンピング法や円偏光励起などにもこの手法を
化の歳差運動が励起されている磁性体/Pt の
適用してきました。これを更に発展させ、相
Pt 層に電流を注入すると、電流の大きさに比
反性に注目しつつこれらの現象の関連性を調
例して磁化の緩和が変調されることを見出し
べることで、スピン流と電磁場との相互作用
ました。これは、スピンホール効果とスピン
を体系化できると考えています。本研究より
トルク効果の相乗効果であり、我々はこの効
スピン流を基礎としたスピントロニクス基盤
果を利用することでパラメータの仮定なしに
技術の開拓に貢献してゆきたいと考えていま
スピンホール効果によって生成されるスピン
す。
流を定量できることを見出しました。この手
東北大学金属材料研究所は仙台市内の仙台
法によって各種スピンホール効果の効率を定
駅から近くにあります。仙台にお越しの際は
量化することで、スピン流を定量的に且つ高
是非お立ち寄りいただき御議論等いただけれ
感度に測定する手法を確立しました。
ば有難く存じます。
(文責:齊藤英治、中山裕
3.スピンゼーベック効果
康)研究室 HP:http://saitoh.imr.tohoku.ac.jp/
Pt の示す強い逆スピンホール効果を高感度
スピン流検出手法として利用することにより、
熱流とスピン流(スピン圧)が直接結合する
現象を探索しました。その結果、先ず発見さ
れた現象が「スピンゼーベック効果」です。ス
ピンゼーベック効果とは、強磁性金属に温度
勾配を与えると、温度勾配に沿った方向にス
ピン流とスピン圧が誘起される現象です。こ
研究室紹介
東京農工大学
工学府電気電子工学専攻
清水研究室
清水研究室では、世界に先駆けて実証に成
学会のシンポジウムなどを見渡すと最近は
功した半導体強磁性金属ハイブリッド光アイ
何事も『省エネルギー』がキーワードになっ
ソレータをベースに、「光スピントロニクス」、
ているようです。学生諸君も何はともあれ『省
もっと具体的に(実直に)言えば「強磁性・
エネルギー』という言葉にひきつけられてい
不揮発・非相反光エレクトロニクス」の研究
るのが垣間見えます。ただし『省エネ』と叫
を行っています。研究室は 2007 年 1 月に発足
ぶだけでは意味がないので、研究テーマのど
し、本稿執筆の時点で 2 年半が経過しました。
のあたりが『省エネ』に貢献できるかを自分
清水(准教授)は 2006 年 12 月までは東京大学
の頭でよく考えて欲しいところです。光エレ
先端科学技術研究センターの中野義昭教授の
クトロニクス分野、光通信分野においても「グ
研究室に在籍していました。東京農工大学に
リーン I(C)T」という言葉に代表されるように
着任することが決まった前後に慌しく特定領
あらゆる場面で消費電力を抑えようとする試
域研究の研究計画調書を作成していた記憶が
みが展開されています。インターネットに関
あります。農工大に着任後に特定領域「スピ
しては近年、各家庭に光ファイバに代表され
ン流」の計画研究として採択され、新しく立
るブロードバンド通信が普及してきています。
ち上げた研究設備と中野教授の研究設備を併
光ファイバは例えれば高速道路であり、高速
用しながら、現在はハイブリッド光アイソレ
道路自体は快調に走る(=高速のデータを送受
ータの作製と評価ができるようになっていま
信する)ことができます。しかし、複数の道路
す。
が集まるジャンクションやインターチェンジ、
研究室は下の写真に示すように教員 1 名、
あるいは高速道路の終点は渋滞をまねきやす
大学院生 4 名、学部生 3 名の総勢 8 名です。
いことはよく知られています。このことはイ
特定領域研究に関連して、いくつかの共同研
ンターネットにおいてもあてはまり、ジャン
究を行ったり、研究会で議論をすることがで
クションやインターチェンジに相当するルー
きたりしているのは、発足間もない研究室と
ターや高速道路の終点に相当するサーバーに
しては大変よい刺激になっています。
かかる負荷が年を追うごとに増しています。
平成 21 年度の清水研究室のメンバー。緑が濃い梅雨の合間の小金井キャンパスにて。
研究室紹介
ルーターでは光ファイバを通してやってくる
レータや非相反双安定レーザの評価を行うた
全ての光信号データに対して光-電気-光信号
めの電磁石-光ファイバ集光系とリングレー
変換を行っていることが負荷の増大につなが
ザのプロトタイプの顕微鏡写真です。現時点
っています。例えば 10Gbit/s でやってくるデ
では一方向レーザ発振は実現されていません
ータを電子回路で信号変換するには最低でも
が、研究会の場でよい研究成果を報告できる
約 10GHz の電子回路が必要になります。膨大
よう、研究を進めていきたいと思います。引
な並列処理が必要になり、それらに要する消
いては光スピントロニクスがグリーン I(C)T
費電力はちょっとした発電機が必要になるレ
に貢献できるところを示したいと考えていま
ベルと言われています。移動のためのエネル
す。
ギーを不要にしてくれる通信技術が逆に膨大
なエネルギーを必要とすることは、「インタ
ーネットで検索を行うとお湯がわくのではな
いか?」という論争で話題になりました
(Google 社は否定しました)。ここまでは一般
論です。
清水研究室では、問題となっている光-電気
-光信号変換を不要にする「光情報信号のメモ
リ」にハイブリッド光アイソレータを応用す
ることを目指しています。その中でも直線導
波路型非相反双安定レーザと一方向発振非相
ハイブリッド光アイソレータを応用した光情報信号
反リングレーザに重点を置いています。本稿
処理素子の評価系。ホールピースの中央に温度制御さ
では一方向発振非相反リングレーザを紹介し
れた素子を置き、両側からレンズファイバで検出しま
ます。エレクトロニクスにおけるスピンの自
す。
由度の活用がスピントロニクスを切り拓いた
のは周知の通りです。そのアナロジーとして
CW 光出力
CCW 光出力
半導体光アイソレータの一方向伝搬特性は光
エレクトロニクスにおけるフォトンの伝搬方
100µm
向の制御を可能にします。半導体リングレー
ザは光情報信号の一時記憶素子として着目さ
れており、光フリップフロップのプロトタイ
プも実現されています。しかし、円周状の共
振器をもつリングレーザはその構造の線対称
性によって時計回りに発振するか反時計周り
に発振するかを区別・予測・制御することが
原理的にできません。半導体光アイソレータ
によって時計回りか反時計回りの発振モード
の縮退を明確に解いて制御することができれ
ば光フリップフロップ素子へ応用することが
できます。右の写真はハイブリッド光アイソ
半導体光アイソレータ部
一方向発振(非相反)リングレーザのプロトタイプ
の写真。新しく入ってきた 4 年生であっても 3 ヶ月ほ
どのトレーニングをすれば作製、測定を行うことがで
きます。
研究室ホームページ:
http://www.tuat.ac.jp/~h-shmz/lab_index_j.htm
研究紹介
Co 系ホイスラー合金を用いたスピン注入源
北海道大学 山本眞史
植村哲也
私たちは、ハーフメタル系ホイスラー合金薄膜と MgO バリアを組み合わせた、
単結晶エピタキシャル構造を用いる高効率スピン源を創出するための研究を推
進しています。
1200
1000
TMR ratio [%]
Co 系ホイスラー合金 (Co2YZ) は、そのい
くつかがハーフメタルであることが理論的に
指摘され、さらに、室温よりも十分に高いキ
ュリー温度を有することから、スピントロニ
クスデバイスの電極材料として期待されてい
る。本稿では、Co2YZ 薄膜を用いた強磁性ト
ンネル接合 (MTJ) の研究、ならびに半導体ス
ピ ン 注 入 素 子 へ の 応 用 に 向 け た
GaAs/MgO/Co2YZ ヘテロ接合に関する研究に
おける、最近の進展について紹介する。
CMS/MgO/CMS
800
4.2 K
600
400
RT
200
0
0.6
0.8 1.0 1.2 1.4 1.6
Mn composition α
in Co2MnαSiβ (β = 1.0 ± 0.06)
Co2YZ/MgO エピタキシャル MTJ
図 1.
我々は、ハーフメタル系ホイスラー合金と
MgO バリア間の格子不整合が比較的小さい
ことに着目し、ホイスラー合金と MgO バリア
を組み合わせた単結晶エピタキシャル MTJ
を初めて提案・製作し、室温で良好なトンネ
ル磁気抵抗 (TMR) 特性を実証した[1]。ホイ
スラー合金と MgO バリアの組み合わせの特
徴は、ハーフメタル特性とコヒーレントトン
ネリングの両方をスピントンネル特性に活用
できる点にある。その後、Co2YZ 物質群を広
く探索し、Co2YZ 薄膜として、Co2Cr0.6Fe0.4Al
(CCFA)、Co2MnGe (CMG)、Co2MnSi (CMS) の
3 種類と、MgO バリアをそれぞれ組み合わせ
たエピタキシャル MTJ を製作し、いずれも室
温で 100%を超える TMR 比を得た[2-6]。この
中で、下部・上部の両電極に CMS を用いた
MTJ において、室温で 180% 程度 (4.2 K で
700% 程度) の比較的高い TMR 比を実証する
とともに、これらのハーフメタル系電極を用
いた MTJ のトンネル機構において、ハーフメ
タルギャップ中の界面状態の果たす役割の重
要性を、トンネルスペクトロスコピーを通し
に対する依存性。
Co2MnαSiβ (β = 1.0  0.06) 薄膜を用いた
CMS/MgO/CMS-MTJ における TMR 比の Mn 組成 α
140
RA [MΩ μm2]
120
100
80
360
2 .5340
tMgO = 2.7 nm
4.2 K
TMR 1135%
V = 1 mV
RT
TMR 236%
V = 1 mV
20
2 .5
2
0
1 .52-1000
-500
0
500
Magnetic field [Oe]
1000
1 .5
1
図 2. Mn リッチな Co2Mn1.29Si1.06 の組成の CMS を
0 .51
用いた CMS/MgO/CMS-MTJ
の TMR 特性。
0
0 .5
-1 0 0 0
-5 0 0
0
500
1000
て実験的に明らかにした[6]。
0
さらに最近では、ホイスラー合金薄膜の組
-1 0 0 0
-5 0 0
0
500
1000
成を適切に選ぶことによって、TMR 比のさら
なる向上が可能であることを実証した[7]。図
1に、CMS/MgO/CMS-MTJ の 4.2 K および室
温での TMR 比の CMS 薄膜組成依存性、具体
的には Co2MnαSi 電極における Mn 組成 α に対
する依存性を示す。TMR 比は、Mn 組成の増
研究紹介
GaAs/MgO/Co2YZ ヘテロ接合
前節で述べた MgO バリア上にホイスラー
合金薄膜を堆積した MgO/Co2YZ 型ヘテロ構
造は、半導体へのスピン注入のスピン源の基
本要素としても有望である。我々は、これま
で、GaAs 基板上にエピタキシャル成長した
MgO/Co2YZ 薄 膜 の 構 造 お よ び磁 気 特 性の
MgO バリア層挿入の効果を明らかにすると
ともに、GaAs 基板上に作製した n-GaAs/MgO/
CMS 接合において、MgO が良好なトンネル
障壁となることを実証した[9]。
ま た 、 n-GaAs/CoFe [10] あ る い は
n-GaAs/CMS [11] からなる半導体(S)/強磁性
体(F)ショットキー接合界面におけるスピン
依存伝導特性の評価から、S/F 界面において、
トンネル異方性磁気抵抗 (TMAR) 効果によ
る磁気抵抗 (MR) 変化が発現することを見
出した。図 3 に n-GaAs/CMS 接合に対する
MR 特性を示す。TAMR 効果により、CMS 電
極の磁化方向に応じて接合抵抗の大きさが変
わり、MR 変化として観測される。さらに、
CMS の磁化方向が[110]方向を向いていると
きの接合抵抗 R110 と[1-10]方向を向いている
ときの接合抵抗 R1-10 の大小関係がバイアス電
圧の極性に応じて逆転することがわかった。
このような MR 特性の特異なバイアス電圧依
存性は、CMS 電極自身の AMR 効果や漏れ
磁場による GaAs 中での局所ホール効果では
説明できず、n-GaAs/CMS 界面におけるスピ
ン軌道相互作用に起因した異方的な電子状態
MR ratio [%]
0.1
R1-10
4.2 K
0.08
V = +0.1 V
0.06
0.04
0.02
0
R110
-200 -100
MR ratio [%]
加と共に上昇し、Mn 組成 α が 1.3 付近で最大
の TMR 比(室温で 236%、4.2 K で 1135%)
を示した(図 2)。この依存性は、ハーフメタ
ルギャップ中に状態を生じさせることが理論
的に指摘されている Co アンチサイトの発生
[8]が、Mn リッチの領域で抑制されたためと
して説明できる。すなわち、薄膜組成により、
欠陥の発生を制御することができ、これによ
って、ハーフメタルギャップ中の状態密度を
低減できることを示した。また、図 1 に示す
結果は、高いスピン偏極率の得られるホイス
ラー合金薄膜の組成範囲が比較的広いことも
示している。
0
100 200
R110
0
V
-0.02
-0.04
CMS
n+-GaAs
V = -0.1 V
n--GaAs
R1-10
-0.06
-200 -100
0
100 200
Magnetic field [Oe]
図 3.
n-GaAs/Co2MnSi 接合における磁気抵抗特性。
測定温度は 4.2 K。
が関与していることが示唆される。S/F 接合
はスピン注入素子の構成要素であることから、
そこで発現する TAMR 効果はスピン依存伝導
特性に影響を与える可能性がある。今後は、
これまでに得られた知見を活かし、ホイスラ
ー合金を用いた半導体へのスピン注入素子の
実現を目指す。
[1] T. Marukame et al., JJAP 44, L521 (2005).
[2] T. Ishikawa et al., APL 89, 192505 (2006).
[3] T. Marukame et al., APL 90, 012508 (2007).
[4] T. Ishikawa et al., JAP 103, 07A919 (2008).
[5] T. Taira et al., APL 94, 072510 (2009).
[6] T. Ishikawa et al., APL 94, 092503 (2009); JAP 105,
07B110 (2009).
[7] T. Ishikawa et al., unpublished.
[8] S. Picozzi et al., PRB 69, 094423 (2004).
[9] S. Kawagishi et al., JAP 103, 07A703 (2008).
[10] T. Uemura et al., APL 94, 182502 (2009).
[11] T. Uemura et al., unpublished.
山本 眞史
北海道大学
植村 哲也
大学院情報科学研究科
研究紹介
二重強磁性トンネル接合における 1056%の巨大磁気抵抗効果
東北大学大学院工学研究科
安藤康夫,Lixian Jiang,永沼博,大兼幹彦
CoFeB と MgO による二重強磁性トンネル接合において,室温で 1056%の巨大磁気
抵抗効果を観測した.この接合は,厚い絶縁層を 2 枚有するにもかかわらず抵抗
値が低い,熱処理温度が低い,という応用に適した特徴を有する.
我々のグループの特定研での研究テーマは,
二重強磁性トンネル接合の構造は
光によるスピン流の検出ですが,この度,標
Si/SiO2/Ta(5)/Ru(10)/Ta(5)/PtMn(10)/Co90Fe10(2.
記の興味ある結果を得たことから,領域長と
5)/Ru(0.8)/Co40Fe40B20(3)/Mg(0.4)/MgO(2.5)/Co4
編集長の許可をいただき,その内容を話題提
0Fe40B20(t)/Mg(0.4)/MgO(2.5)/Co40Fe40B20(3)/Ru(
供させていただくことといたしました.皆様
0.8)/Co90Fe10(2.5)/PtMn(15)/Ta(5)/Ru(7) (単位は
からのご意見をいただければ幸いに存じます.
nm)であり,膜の作製には(株)アルバックの
協力を得た.中間層の膜厚 t は 0.8 nm から 2.5
強磁性トンネル接合における磁気抵抗
nm に変化させた.
高分解能 TEM の観察から,
(TMR)効果はスピン RAM,磁気センサー,
t = 0.8 nm の試料では粒子が孤立し,t の増大
スピントランジスタなどスピントロニクスデ
と共に徐々に連続膜になる様子が観察され,t
バイスへの応用が期待されている.TMR 比を
= 1.5 nm ではほぼ連続膜になった.これらの
得るために,電極としてハーフメタルを用い
結果は,t を増大させたときの磁化曲線の形状
る[1],MgO 障壁を用いたコヒーレントトンネ
の変化と一致した.これらの膜を微細加工に
ルによる[2]などの方法で,近年大きな TMR
より,20 x 10, 40 x 20, 80 x 40 m2 のサイズに
比が得られつつあるものの,室温における最
加工した.得られた素子は 10 kOe の磁場中で
大の TMR 比は 604%でそろそろ限界に達しつ
250°C から 350°C の範囲で熱処理を行った.
つある[3].しかも TMR 比を得るためには高
図 1 は t = 1.2 nm の試料において熱処理温度
温による熱処理が必要であるため,Mn 等を
を 350°C としたときの典型的な磁気抵抗曲線
用いたピン層が使えないなどの欠点がある.
を示す.このときの TMR 比は室温で 1056%
こ れ ら の 観 点 か ら , 実 用 的 な TMR 比 は
2~300%程度にとどまっている.一方,二重強
t=1.2 nm
磁性トンネル接合は,共鳴トンネル,クーロ
ンブロッケイドなど興味ある現象がいくつか
報告され,大きな TMR 比も条件によっては
RT
Ta=350C
Vbias=-0.07V
可能であるとの理論的提唱もあるが[4],これ
らに関する実験は充分とはいえない.
本 研 究 で は , CoFeB/MgO/CoFeB/MgO/
CoFeB を基本構造とする二重強磁性トンネル
接合を作製し,その構造と磁気特性を中間強
磁性膜厚を系統的に変化させて調べた[5].
図 1 t = 1.2 nm の試料において熱処理温度を
350°C としたときの典型的な磁気抵抗曲線.
研究紹介
210-4
(b) 1.0 nm
(a) 0.8 nm
(c) 1.2 nm
RT
(d) 1.5 nm
P
AP
P
AP
P
AP
RT
RT
P
AP
110-4
RT
0
-110-4
Ta=325C
Ta=325C
Ta=350C
Ta=275C
-210-4
(f) 1.0 nm
(e) 0.8 nm
(g)1.2nm
(h) 1.5 nm
図 2 種々の中間膜厚の試料におけ
る TMR 比の熱処理温度依存性.
図 3 それぞれの試料において TMR 比が最大を示した作製
条件のときの,電流-電圧(I – V)曲線(磁化が平行 P およ
び反平行 AP)と TMR 比のバイアス電圧依存性(TMR – V)
.
を示した.また,フリー層の磁化反転は非常
置が異なる傾向にある.この差により TMR
にシャープであり,PtMn によるピン層が有効
比の増大が現れる.TMR 比がバイアス電圧に
的に作用している事がわかる.これは今回の
対してピークを示す位置は,I – V 曲線から求
素子の熱処理温度が 350°C と Mn 等が拡散す
めたコンダクタンス– V 曲線のピーク位置と
る温度に対して充分低い温度であることによ
は一致しなかった.t = 1.5 nm の場合は I – V
る.更に興味あることとして,この素子は 2.5
曲線における特徴的な staircase は消失し,典
nm の MgO 障壁層を 2 枚有しているにもかか
型的なトンネル接合のそれと同様である.こ
6
2
わらず,抵抗面積値(RA)が 0.02 x 10 m
のときの RA 値は大きく上昇し,典型的な二
と,むしろ単層 MgO 接合の RA 値よりも低く
重トンネル接合の RA 値と同様となった.
なっていることである.これらの特徴は次世
これらのいくつかの特徴的な振る舞いはこ
代のスピントロニクスデバイスへの応用に対
れまでの常識からは説明することができず,
して非常に有望であると期待できる.
いくつかの量子サイズ効果が複雑に影響し合
図 2 は種々の中間膜厚の試料における TMR
っているように見受けられる.この解析に関
比の熱処理温度依存性を示す.いずれの接合
しては現在進行中であり,機会を改めて報告
においても熱処理温度と共に TMR 比は上昇
させていただきたい.
する傾向を示すが,t = 1.2 nm の試料の TMR
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
比の上昇が特に顕著であることがわかる.
図 3 はそれぞれの試料において TMR 比が最
大を示した作製条件のときの,電流-電圧(I
Y. Sakuraba et al., APL, 88, 192508-1 (2006).
D. D. Djayaprawira et al., APL 86, 092502 (2005).
S. Ikeda et al., APL, 90, 082508 (2008).
Z.-M. Zeng et al., PRB 72, 054419 (2005).
L. Jiang et al., APEX, 2, 083002-1 (2009).
– V)曲線(磁化が平行 P および反平行 AP)
と TMR 比のバイアス電圧依存性(TMR – V)
を示す.t = 0.8 nm の試料においては,I – V
曲線は P と AP いずれもほぼ同じ電圧で
staircase が観測される.
一方,t = 1.0 nm,1.2 nm
の試料においては,P と AP の staircase の位
永沼博,安藤康夫,大兼幹彦,Lixian Jiang
所属 東北大学大学院工学研究科
研究紹介
ナノ磁性体のスピンと電気の相互作用
物質・材料研究機構
林
将光、葛西伸哉、三谷誠司、宝野和博
IBM Almaden Research Center, Stuart Parkin
本グループでは、ナノスケールの強磁性体における電気と磁気の相互作用に関す
る研究を行っている。特に、強磁性体中を流れるスピン分極電流を利用した磁化
制御と、磁化操作による電気の発生という、相反する二つの現象に着目し、デバ
イスへの応用を念頭に研究・開発を行っている。
強磁性金属中を流れる電流は、フェルミ面
体の磁化のダイナミクスには、興味深い様々
近傍の状態密度のスピン依存性と、伝導電子
な現象が存在する。結晶磁気異方性が小さい
のスピン依存散乱によって、スピン分極する
ソフト磁性材料を微細化すると、磁化構造は
ことで知られている。本グループは、強磁性
比較的簡易な形をとる。例えば、断面積対長
金属中のスピン分極電流を利用した磁化制御
さのアスペクト比が十分に大きい細線を形成
と、磁化の操作によって誘起される電気の検
すると、磁化は細線の長さ方向を向くことが
出・利用に関する研究を行っている。以下に
知られている。このような強磁性細線におけ
その研究の一部について紹介する。
る磁化反転は磁壁の移動が伴うことが多い。
ナノ磁性体の磁化ダイナミクス
(a)
40
0
40
0
40
0
0
(b)
H (Oe)
シミュレーションで計算した結果を示す。比
較的大きな磁場を印加した際、磁壁の移動は
単純な推移ではなく、内部の磁化構造の変化
67
0
1
122007-010111, 0053
76
20
40
Time (ns)
90
60
Resistance ()
Scope voltage (V)
ナノスケールサイズにまで加工した強磁性
Fig. 1 には強磁性体細線の磁化反転の様子を
区間1
2
3
677.2
677.0
676.8
676.6
区間1 1 0 0 1 1 0 0 1 1 1 1 1 1 0 0 1 1 0 0 1 1 1 1 1 1
2 1 1 0 0 1 1 0 0 1 1 1 1 1 1 0 0 1 1 0 0 1 11 1 1
3 1 1 1 1 0 0 1 1 0 0 1 1 1 1 1 1 0 0 1 1 0 01 1 1
1
2
0
Time (a. u.)
Field
Fig. 1 (a) 磁場によ っ て磁壁が伝播する 際の細線の
抵抗を 、 オシ ロ スコ ープ で観察し た結果。 電圧
( 細線抵抗) の振動は、 細線中の磁壁の体積が変
化し ている こ と を 表し ている 。 (b) シ ミ ュ レ ー
シ ョ ン を 用いて、 磁場で 駆動し た磁壁が細線を 伝
播する 様子を スナッ プ シ ョ ッ ト で表し た( 印加磁
場50 Oe) 。 移動の際、 磁壁の内部構造の変化に
伴っ て、 体積も 変わっ ている 様子がわかる 。 参考
Nature Phys. 3 (2007) 21。
Fig. 2 NiFe細線を 用いた3 ビ ッ ト シ フ ト レ ジ スタ 。
細線を 3つの仮想区間1-3に区分けし 、 各区間の磁
化状態を 情報のビ ッ ト と し た。 局所磁場を 用いて
左の電極( 灰色の縦線) から 磁壁を 細線に注入し 、
細線にスピ ン 分極電流を 流すこ と で各磁壁の位置
を 制御し た。 磁壁の位置は、 印加する 電流パルス
の長さ によ っ て決ま る 。 各区間の磁化状態は細線
内の磁壁の数から 推測でき る 。 細線抵抗が磁壁の
数に比例し て減少する ため、 抵抗測定から 磁化状
態を 推測でき る 。 シ フ ト レ ジ スタ の例と し て、 こ
こ では区間1から 区間3にビ ッ ト 「 010111」 を 転送
し た様子を 示す。 参考 Science 320 (2008) 209。
研究紹介
を伴う。この結果は細線の電気抵抗測定など
合に磁場と電流を同時に印加し、その際のフ
を通して実験的に確認されている。これらの
リー層の磁化の時間変化をオシロスコープで
結果から、磁壁は移動の際に内部の磁化が歳
観測したものを示す。磁場とスピン分極電流
差運動することがわかった。細線形成のよう
からの力の向きが逆のため、フリー層が 2 状
に、ナノスケールの境界条件を科すことによ
態を行き来するテレグラフノイズが見られた。
って、ソフト磁性材料の磁化のダイナミクス
印加磁場を大きくすると、このような 2 つの
は大きく変化し、また一方で素子の形状でそ
準安定状態間の遷移から、磁化が連続的に変
れを制御することも可能となる。
化する歳差運動を行うようになり、マイクロ
磁化の電気制御
強磁性細線に流れるスピン分極電流を利用
波発振機などへの応用などが期待されている。
磁化制御による電気の生成
強磁性体の磁化制御によって、電気を発生
なわち磁壁の移動を誘起することができる。
できることは、ファラデーの法則から導くこ
磁場を印加した場合、隣り合う磁壁はそれぞ
とができる。本研究では、誘起された電気を
れ反対方向に動く。そのため、細線内に多数
利用して強磁性体の磁化の動的過程の観察
の磁壁が存在した場合、磁場の印加ですべて
(Fig. 4 参照)を行うと共に、磁化制御によ
の磁壁は消滅する。一方、スピン分極電流を
っていかに大きな電気を発生できるかを研究
用いると、細線内のすべての磁壁はスピン分
している。また、強磁性体中に誘起された電
極した電子の流れと同じ方向に動く。ナノス
気がどの程度スピン分極しているかを様々な
ケールの強磁性細線のみで起こるこの現象を
角度から検証している。
利用して、メモリやレジスタなどを作製する
検出器
試みが最近行われており、Fig. 2 にその一例
を示した。
強磁性金属/絶縁体/強磁性金属のトンネル
HB
Induced Current
すれば、磁場を用いずに細線の磁化反転、す
0.02
5
6
0.01
7 GHz
0.00
接合をドット状に加工した場合、一方の強磁
導波路
マイ ク ロ 波源
性体から他方の強磁性体にスピン分極電流を
Fig. 4 歳差運動し ている 強磁性薄膜から 漏れる 磁場
注入することで後者の磁化制御が可能となる。
例として、Fig. 3 にはドット状のトンネル接
0
200 400 600
Field HB (Oe)
を 利用し て、 薄膜近傍に配置さ れた導波路に流れ
る 誘導電流を 測定し た結果。 強磁性共鳴が起こ る
環境で誘導電流は最大と なる 。
林 将光
葛西伸哉
三谷誠司
物質・ 材料研究機構
Stuart Parkin
宝野和博
物質・ 材料研究機構 IBM Research
研究紹介
非磁性半導体における電流誘起スピン偏極
東京大学工学系研究科 総合研究機構 加藤雄一郎
スピン軌道相互作用を利用すれば、零磁場中でも非磁性材料内で電子スピンの偏
極や操作が可能になります。ここでは歪みにより対称性が低下した化合物半導体
において、電流を流すことによってスピン偏極が誘起される現象を紹介します。
電子スピンの自由度を利用するスピントロ
ニクスの研究では様々な磁性材料が登場しま
す。特に、電子スピンの向きがあらかじめ揃
っている強磁性材料を、スピン源・スピン制
御・スピン検出に利用するのは自然なことで
理にかなっています。
では、非磁性材料はスピントロニクスに全
く役に立たないのでしょうか?ものすごく大
きな磁場を加えるか、とても低い温度にすれ
図1:スピン軌道相互作用
ば、スピンの向きは揃いそうですが、零磁場
中では電子スピンの向きはてんでバラバラで
回転させたりできます。つまり、実験室の慣
す。スピン源には到底なりそうにもありませ
性系では零磁場であっても、スピン制御が可
ん。
能なのです[1-3]。
しかし、スピン軌道相互作用が存在する系
さて、ではどのような材料でスピン軌道相
では、電流を流すだけで電子スピンの向きが
互作用に由来する有効磁場を利用することが
揃う、という不思議な現象が起きます[1]。磁
できるのでしょうか?詳しい説明は参考文献
場を加えたりしなくても、非磁性の材料中の
に譲りますが、反転対称性の無い GaAs や
電子スピンが揃ってしまうのです。
ZnO[4]、GaN[5]などでこのような有効磁場は
スピン軌道相互作用
存在し、逆に Si や Ge では基本的には存在し
電場中を運動する電子について考えてみま
ません。閃亜鉛結晶構造を持つ GaAs の場合
は電子の波数の3次の効果となっていますが、
しょう。図1の左側のように、電場の向きと
歪ませることにより対称性を低下させ、1次
電子の運動する方向が垂直な場合、この電子
の効果にすることにより観測できます[6]。
にとってみると、相対論的効果で電場の一部
が磁場として感じられることになります。電
電流誘起スピン偏極
子の慣性系では、当然この磁場がスピンに作
歪みを加えるのは簡単なことで、ここでは
用します。この相互作用がスピン軌道相互作
GaAs 基板上に成長した InGaAs を用います。
用です。
基板に対して格子定数の大きい InGaAs は自
電子の慣性系に存在する磁場を使えば、普
然と歪み、対称性が低下します。このように
通の磁場と同じように電子スピンを揃えたり、
して歪んだ InGaAs の膜に電流を流すと、電子
研究紹介
図2:L 字構造の模式図
スピンが揃うというわけです。揃う向きは有
効磁場の向きで、これは電子の進む方向と垂
直です(図1)
。ただ揃えるだけではつまらな
いので、ここでは揃えた後、回転させるため
に L 字型の構造を使います(図2)
。
まず、上部の通路を左に流れてきた電子は
上向きの有効磁場によりスピン偏極します。
図3中央の図で上の部分が赤くなっているの
がそれです。電子の進む方向を変えることに
よって有効磁場の向きが変わるので、コーナ
ーを曲がって下向きに流れていく電子スピン
は右向きの磁場を感じて歳差運動を起こしま
す。図3中央の図では、角を曲がった後、青
くなっているのが見えます。これはスピンが
ちょうど180度回転していることを示しま
図3:Kerr 回転で測定した電流誘起スピン。左からス
ピンの z 成分、y 成分、反射率の像。
[1] Y. K. Kato, R. C. Myers, A. C. Gossard, D. D.
Awschalom, Phys. Rev. Lett. 93, 176601
(2004).
[2] Y. Kato, R. C. Myers, A. C. Gossard, D. D.
Awschalom, Nature 427, 50 (2004).
[3] Y. K. Kato, R. C. Myers, A. C. Gossard, D. D.
Awschalom, Appl. Phys. Lett. 86, 162107
(2005).
[4] S. Ghosh, D. W. Steuerman, B. Maertz, K.
Ohtani, Huaizhe Xu, H. Ohno, and D. D.
Awschalom, Appl. Phys. Lett. 92, 162109
(2008).
[5] W. F. Koehl, M. H. Wong, C. Poblenz, B.
Swenson, U. K. Mishra, J. S. Speck, D. D.
Awschalom, arXiv:0906.0785.
[6] Y. K. Kato, D. D. Awschalom, J. Phys.
Soc. Jpn. 77, 031006 (2008).
[7] N. P. Stern, S. Ghosh, G. Xiang, M. Zhu, N.
Samarth, and D. D. Awschalom, Phys. Rev.
Lett. 97, 126603 (2006).
す。目を凝らせば、その下方向に再度、赤、
青、と繰り返し回転している様子が見えます。
このように、非磁性半導体であっても零磁
場でスピン偏極を作り出すことができます。
室温でも起きる現象なので[7]、応用が見つか
加藤雄一郎
るかもしれません。
東京大学 工学系研究科
特定領域研究「スピン流の創出と制御」 2009年度研究会(於 札幌)
2009年8月9日(日)から11日(火)の 3 日間、北海道大学 学術交流会館および百年記念会館にて、本特
定領域研究会2009年度研究会が開催されました。3日間で128名の参加がありました。今回は夏季の研究会
ということで、若手研究者による報告も数多くなされました。
初日はまず領域代表の高梨先生から開会宣言があり、その中で、本特定領域研究の成果がいくつかの賞を
受賞している件について紹介がありました(写真1)。その後、計画研究の各グループより最新の研究に関する
報告がなされました。最後に、G. E. W. Bauer 先生(Delft 工科大学)による招待講演”Spin Caloritronics”がありま
した(写真2)。初日のプログラム終了後、場所をサッポロビール園に移して懇親会が開かれました。とてもリラッ
クスした雰囲気の中、多くの交流と懇親が世代を超えてなされると共に、しばし夏の暑さを忘れることができまし
た(写真3)。2日目と3日目には、引き続き、計画研究および公募研究の各グループから研究報告がありました。
また、2日目の午後の前半には百年記念会館にてポスター発表(53件)が行われ(写真4)、非常に活発で熱心
な議論が交わされました。
全体を通じて、数多くのすぐれた報告がなさるとともに、今後の方向を含めて、実りの多い活発な議論がなさ
れました。また、若手研究者のアクティビティーの高さが示されました。
写真1:高梨先生(領域代表)による開会宣言
写真3:懇親会の1コマ
写真2:G.E.W. Bauer 先生による招待講演
写真4:ポスターセッション風景
研究組織
領域代表者
高梨弘毅 (東北大学
金属材料研究所
教授)
1.総括班
高梨弘毅
大谷義近
大野裕三
小野輝男
田中雅明
前川禎通
研究協力者
安藤功兒
家泰弘
大野英男
高尾正敏
宮﨑照宣
東北大学
東京大学
東北大学
京都大学
東京大学
東北大学
金属材料研究所
物性研究所
電気通信研究所
化学研究所
大学院工学系研究科
金属材料研究所
産業技術総合研究所
東京大学 物性研究所
東北大学 電気通信研究所
大阪大学 大学院基礎工学研究科
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構
教授
教授
准教授
教授
教授
教授
副部門長
所長
教授
特任教授
教授
2.計画研究代表者
A01 班 スピン源の探索・創製
高梨弘毅(班長) 東北大学 金属材料研究所
教授
「ナノ構造制御による高効率スピン源の探索と創製」
黒田眞司
筑波大学 数理物質科学研究科
教授
「強磁性半導体の特性制御とスピン源への応用」
山本眞史
北海道大学 情報科学研究科
教授
「ハーフメタル系材料を用いた高効率スピン源の探索と創出」
高橋有紀子
物質・材料研究機構
研究員
「高スピン偏極材料のナノ構造解析とスピン偏極率測定」
藤森淳
東京大学 理学系研究科
教授
「軟 X 線磁気円二色性および軟 X 線散乱による
高スピン偏極材料のキャラクタリゼーション」
白井正文
東北大学 電気通信研究所
教授
「高効率スピン源の理論設計」
A02 班 スピン流とナノヘテロ構造
大谷義近(班長) 東京大学 物性研究所
「新しいスピン流生成・操作手法の探索」
教授
秋永広幸
産業技術総合研究所
副センター長
「シリコンベース素子を用いたスピン注入効率の最適化」
新田淳作
東北大学 大学院工学研究科
教授
「スピン軌道相互作用を用いたスピン流の電気的な検出と制御」
井上順一郎
名古屋大学 工学研究科
教授
「ナノヘテロ構造におけるスピン注入とスピン蓄積の理論」
A03 班 スピン流と光物性
大野裕三(班長) 東北大学 電気通信研究所
准教授
「半導体量子構造における核スピンの光制御・検出」
宗片比呂夫
東京工業大学 理工学研究科
教授
「強磁性半導体における光磁化の解明と制御」
安藤康夫
東北大学 工学研究科
教授
「金属系多層膜におけるスピン流と時期緩和の光学的検出」
永長直人
東京大学 工学系研究科
教授
「光・電子スピン結合の理論」
A04 班 スピン流と電子物性
小野輝男(班長) 京都大学 化学研究所
「スピン流における磁気構造のナノスケール制御」
勝本信吾
東京大学 物性研究所
「単電子スピン制御」
齋藤英治
東北大学 金属材料研究所
「ナノ磁性体におけるスピン流−電磁場変換」
多々良源
首都大学東京 都市教養学部
「逆スピンホール効果の微視的理論と応用」
前川禎通
東北大学 金属材料研究所
「磁壁運動によるスピン流と起電力」
A05 班 スピン流と機能・制御
田中雅明(班長) 東京大学 工学系研究科
「スピン偏極電流制御デバイス」
鈴木義茂
大阪大学 基礎工学研究科
「スピン流高周波・熱デバイスの研究」
清水大雅
東京農工大学 工学府
「光スピントロニクス機能デバイスの研究」
仲谷栄伸
電気通信大学 電気通信学部
「スピン偏極電流磁化反転の解明とデバイス設計」
教授
教授
教授
准教授
教授
教授
教授
特任准教授
教授
3.公募研究代表者
A01 班 スピン源の探索・創製
角田匡清
東北大学 工学研究科
「窒化物薄膜を用いた高効率スピン源の開発」
柳原英夫
筑波大学 数理物質科学研究科
「スピンフィルタ効果を示す強磁性絶縁障壁材料の探索」
松下未知雄 名古屋大学 理学研究科
「有機局在スピン−伝導電子共存系におけるスピン流の解明
壬生攻
名古屋工業大学 工学研究科
「原子層制御蒸着法および局所磁性測定法を用いた高スピン分極
合金の探索と最適化」
川越毅
大阪教育大学 教育学部
「スピン偏極 STM で探る高スピン偏極磁性合金薄膜の表面状態と
スピン依存伝導」
林将光
物質・材料研究機構
「強磁性細線集合群を用いた新たなスピン流生成手法の確立」
准教授
准教授
准教授
教授
准教授
主任研究員
A02 班 スピン流とナノヘテロ構造
斎藤秀和
産業技術総合研究所
研究員
「酸化ガリウム障壁層を用いた半導体へのスピン注入」
加藤雄一郎 東京大学 工学系研究科
准教授
「ナノチューブ・Ⅲ−Ⅴ族半導体ヘテロ構造による電流誘起スピン」
A03 班 スピン流と光物性
今田真
立命館大学 理工学部
「強磁性−非磁性接合の非磁性層電子状態と伝導電子スピン状態
ダイナミクスの実験的解明」
教授
A04 班 スピン流と電子物性
土井正晶
東北大学 工学研究科
准教授
「ナノ狭窄構造薄膜のコヒーレントマイクロ波発振に関する研究」
A05 班 スピン流と機能・制御
陽完治
北海道大学 量子集積エレクトロニクス研究センター
「InAs 系スピントランジスタの非弾性領域での動作実証」
福村知昭
東北大学 金属材料研究所
「強磁性酸化物半導体の高温強磁性の微視的機構」
教授
講師
お 知 ら せ
○本特定領域研究のホームページ
http://ssc1.kuicr.kyoto-u.ac.jp/~tokutei/
に関連情報を掲載していますので、是非ご覧ください。
研究成果のページを充実させたいと思います。
積極的に下記までご連絡下さい。
小野輝男 [email protected]
○本特定領域研究のメーリングリスト
[email protected]
有効にご利用ください。
○2009 年度成果報告会
2010 年 1 月 13 日(水)-1 月 14 日(木)に東京大学にて開催予定です。
○ 出版される論文等には次のような謝辞を入れてください。
[欧文例]
This work was supported by a Grant-in-Aid for Scientific Research in Priority Area “Creation
and control of spin current” from the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and
Technology, Japan.
[和文例]
本研究の一部は文部科学省科学研究費補助金特定領域「スピン流の創出と制御」を受
けてなされた。
編 集 後 記
特定領域「スピン流の創出と制御」の 2009 年度研究会は盛夏の札幌にて、8
月 9 日(日)~11 日(火)の三日間にわたり開催されました。開始からほぼ二年とな
り、成熟期を迎えた本特定領域の様々な研究成果について活発な議論が交わさ
れました。懇親会ではビール園でのジンギスカンという新たな試みがなされ、
和やかな雰囲気の中、相互親睦が深められました。皆様の今後の研究推進への
良い足掛かりとなる研究会になったのではないかと期待しております。
本号では、計画研究メンバーの研究室紹介・研究紹介に加え、今年度新たに
採択されました 2 人の公募研究代表者の方にも研究内容も紹介いただいていま
す。今後も、研究室紹介・研究紹介を中心に共同研究の種になるようなニュー
スレターを目指したいと思います。研究成果に関するトピックス、報道発表の
紹介、国際会議報告などを下記ニュースレター編集担当宛にご投稿下さい。
末筆となりましたが、多忙なところ本ニュースレターの原稿を短期間で執筆
(文責:水口 将輝)
してくださった方々に、心より感謝いたします。
平成21年9月
ニュースレター編集担当
小野 輝男
京都大学化学研究所
〒611-0011 宇治市五ヶ庄
℡: 0774-38-3103
E-mail: [email protected]
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