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ストレージから見た ビッグデータの本質

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ストレージから見た ビッグデータの本質
大切な情報を保存し、必要に応じて取り出す。 それは蔵のごとし。
[特集]
ストレージから見た
ビッグデータの本質
[テクノロジーフォーカス]
大規模な容量スケーラビリティとデータ処理性能を提供
── Hitachi Unified Storage 100シリーズ
[先進事例]
・日本システムウエア株式会社
・シアトルこども病院(Seattle Children's)
[新連載]
小田原さんぽ
Vol.
8
特 集
ストレージから見た
ビッグデータの本質
Part1
構想から実践へ
ビッグデータ利活用へのアプローチ
今日ではあらゆるところにネットワークが張り巡らされている。このインフラをベースとしてオフィス文書やデジタル画像、クラウドに代表さ
れるオンデマンド型の IT活用モデルの普及、情報端末のモバイル化などが進み、世の中には大量の情報があふれるようになった。しかし、
情報量が爆発的に増えたとしても人間が認知し、処理できる情報量は一定以上には増えず、利用の範囲も限られている。こうした従来の情
報活用の壁を突破し、新しい価値を生み出していくITを見据えたチャレンジがビッグデータ利活用であり、その実践のための方向性が見え
てきた。
小山健治
「コト」
「ヒト」
「モノ」から発信される
多様なデータをどう扱うべきか
会にイノベーションをもたらしていく。これがビッグデータ
の目ざす姿だ。
もっとも、多様なデータというだけでは、あまりにも漠然
IT の利用範囲の拡大、そしてインターネットの普及は、ビ
としすぎている。
ジネスの在り方を変える一方、
“情報爆発時代”をもたらし
具体的にビッグデータとは、いかなるものなのか。今の
たと言われ、ある意味において多くの企業はあふれる情報
社会にあふれている有用なデータを、「コト」
「ヒト」
「モノ」
を持てあまし気味になっている。
という3 つの発信源から考えてみたい。
そうした中で、注目されるようになったのがビッグデータ
まず、「コト」が発信するデータとは、さまざまな企業活
というキーワードである。これまで見過ごされてきたデー
動に伴って発生する業務データを意味する。生産管理や受
タ、あるいは捨て去られてきた多様なデータを蓄積し、高
発注管理、在庫管理など、基幹系システムのデータベース
度な分析を行うことで、ビジネスや生活に役立てていく。さ
上で処理しやすいように形を整えた構造化データだ。
らには、新しい知見や洞察(気づき)を導き出し、企業や社
これに加えて今、注目されているのが「ヒト」の活動から
2
Hitachi Storage Magazine Vol.8
Part1
発生するデータである。社員が PC 上
構想から実践へ
ビッグデータ利活用へのアプローチ
●ビッグデータ利活用へのステップ
で作成したオフィス文書や各種ドキュ
メント、社 内 外 の 相 手とのコミュニ
ケーション手段となっているメール、
あるいは個人がソーシャル・メディア
を通じて 発 信 するツイート( つ ぶ や
き)やブログ(日記 )、日常 的に持ち
歩いているスマートフォンから得られ
る移動・位置データ、各種コンテンツ
のアクセス履歴などがこれに相当す
る。
集める・貯める
「データ蓄積」
探して使う
「容易な検索」
発見・予測する
「分析・予測」
新たな利活用
「サービス創出」
さらに「モノ」が発信するデータと
は、電力計や建造物の監視装置、気
象観測機器、カーナビなど、社会の
い た るところに 埋 め 込 まれ た セン
サーやメーターから、次 々と生み出
されてくるデータである。
これらのデータのうち、これまで主に活用されてきたのは
流通業界だ。
「コト」を発信源とするデータである。例えば、2000 年以前
例えば、インターネットの通 販サイトでは、顧 客のプロ
からも基幹系システムのデータを長期的に蓄積したデータ
ファイルや購入履歴を分析することで、興味を持ってもらえ
ウェアハウスや、その中身を分析してビジネスに活用する
そうな別の商品をリコメンド(推奨)
し、アップセルやクロス
ビジネスインテリジェンス( BI )など、大規模なアナリティク
セルにつなげていくといった施策が、すでに何年も前から
スのための基盤が構築されてきた。ビッグデータも、この取
展開されている。コンビニエンスストアにおいても、来店客
り組みの延長線上にある技術と見ることができる。
の属性や購入商品の他、その日の天候や地域の行事など
ただ、従来のデータウェアハウスやビジネスインテリジェ
多様なデータを組み合わせて売れ筋を分析することで、品
ンスは、市場トレンドの把握や現状のビジネスにおける問
揃えに役立てている。
題点の究明、経営の意思決定支援など、特定の課題に対す
さらなる競争力強化を目ざす企業は、見込み顧客の現在
るソリューションを導き出すことを狙いとしていた。
位置やこれから移動しようとする情報、ソーシャル・メディ
これに対してビッグデータは、これまでとは違った情報の
アで交わされているコメントなど、より多くの「ヒト」にまつ
価値そのもの、最終的には新しいビジネスや新しいサービ
わる情報を収集し、マーケティングに活用していこうとして
スを創出していくことを目的としている。
いる。商品やサービスを提供する企業が、一人ひとりの顧
従来からの「コト」に関するデータに加え、「ヒト」や「モ
客の行動や嗜好をとらえ、より大きな価値を提供しようとす
ノ」から生成されてくる構造化されていないデータもまとめ
る動きは、今後ますます加速していくと考えられる。
て扱えるようにすることで、それが可能になると考えられて
そのほか医 療分野においても、電子カルテやレントゲン
いる。その意味でもビッグデータは、かつてない大きなポ
写真など高精細な画像データや保険記録など、膨大なデー
テンシャルを秘めた革新へのチャレンジと言える。
タの蓄積がある。これらのデータを自由に検索できるように
することで、過去データと関連付けた診断や治療に対応で
ビッグデータ利活用によって
企業や社会に変革を起こす
きるほか、法律で定められている長期の保管やデータ提出
さまざまな業界業種でビッグデータ利活用への関心が高
わせたオーダーメイド医療への応用などにも期待が高まっ
まっているが、中でも先駆的な取り組みを見せているのが
ており、患者一人ひとりの効果的な投薬や副作用の防止、
義務についても対応が容易になる。
こうした取り組みの先では、遺伝子情報の分析を組み合
Hitachi Storage Magazine Vol.8
3
特 集
ストレージから見た
ビッグデータの本質
コストの低減など、医療のイノベーションが模索されてい
加えてビッグデータの領域では、これまでとはまったく次
る。
元の違ったデータマネジメントのスキルとノウハウが必要と
「モノ」から発信されるデータの利活用が進めば、さらに
なる。実際にビッグデータをどう利活用できるかは、それぞ
大きなイノベーションを世の中に呼び起こしていく可能性が
れの企業の“力量”に大きく左右されることになる。
ある。従来ほとんど使い捨てにされてきたこれらのデータ
ある目的に沿ったデータを集める従来のアナリティクスに
の有効活用により、世の中のさまざまな事象や状況をリア
対して、ビッグデータでは現時点では価値があるかどうか
ルタイムに感知することができるのだ。
分からないデータも、
“とりあえず”残しておくことが基本と
例えば、自動車に搭載された加速度センサーのデータを
なる。とはいえ、何の戦略も持たず、やみくもにデータを集
カーナビの GPS を通じて位置情報とともに収集しようという
めたのでは活用のしようがない。少なくとも、そのデータが
構想があるが、そこからどのようなことが読み取れるのだろ
いつ、どこから、何によって生み出されたのか。あるいは、
うか。
どんな頻度や精度で収集されたのかといった諸元や属性を
センサーのデータを道路地図情報と組み合わせて分析
きちんと把握していないことには、分析の基本シナリオで
し、仮に多くのドライバーが同じ場所で急ブレーキを踏んで
ある“仮説検証”や“仮説発見”のプロセスに乗せることはで
いることが明らかになったとすれば、見通しの悪さや障害
きない。
物の存在など、道路上のその場所に構造的な問題があるの
また、ビッグデータ利活用においては、目的そのものが
ではないか、信号が不適切なのではないかといったように
どんどん 変 化して いく可 能 性 がある。ある分 析 結 果 が 、
推測でき、インフラ改善に役立てることができる。
違った観点からの分析を促すという形で連鎖していき、そ
あるいは、一人ひとりのドライバーのドライブ状況を長期
れに伴って必要とされるデータの種類や量も増大していく
的に蓄積・分析することで、運転操作の“荒っぽさ”の度合
ことになるからだ。
いを判断し、自動車保険の料率に反映させるといったこと
そうした時、新たに必要となったデータは社内にあるの
も可能になるかもしれない。このようにビッグデータの利活
だろうか。ない場合にはどこから、どういう手段で調達でき
用の結果として生み出されるさまざまな知見やアイデアが、
るのかなど、自ら考えてアクションを起こしていく機動力と
社会の仕組みを変えていくのである。
柔軟性が要求される。
そして、こうした取り組みの集大成として行き着くのが、
ビッグデータ利活用は、ビジネスとデータ分析の関係付
スマートシティである。世の中からビッグデータを収集して
けを行う試行実験の繰り返しの中から、その方向性が見え
活用することで、次世代交通システムやスマートグリッド、
てくるのである。さまざまな数理解析モデルを支える的確
インテリジェントな水処理システム、エネルギー効率に優れ
な IT プラットフォーム技術の適用と、人間による有効性判断
た EV(電気自動車)の充電管理システムなど、高機能な社
の共同作業によって、ビジネスに適した分析シーケンスを
会インフラをスムースに制御・運用することが可能となる。
具現化していくことができるのだ。
また、その 仕 組みの 下 、ビジネス活 動や 人 々 の 生 活をス
しかしながら、多くの日本企業にとって心もとないのは、
マートに支援していくことで、安全・安心かつ快適な社会の
上記のようなビジネス現場でリーダーシップを発揮できる
実現を目ざすのである。
人材が、あまりにも少ないことではないだろうか。最初から
自力でビッグデータ利活用に乗り出そうとしても、なかなか
多様なデータの組み合わせから
価値を生み出していく
うまくいかない。
そこで各ベンダーが提供しているコンサルティングや支
援サービスを導入し、スモールスタートを切ることが現実的
では、実際にどういうアプローチによってビッグデータ利
なアプローチとなる。
活用が可能となるだろうか。
例えば日立では、数理解析モデルに関する知識、IT の知
そこでの核心となるのがデータ分析だが、実はこれには
識、さらに実務知識を兼ね備えたビッグデータの専門家を
決まったやり方があるわけではない。何らかの IT システムに
結集し、「データ・アナリティクス・マイスターサービス」と
データを入力すると、求めていた答えが出てくるといった
“打ち出の小槌”はどこにも存在しない。
4
Hitachi Storage Magazine Vol.8
呼ばれる支援サービスを提供している。ビッグデータ利活
用の「ビジョン構築」の段階から顧客との協創を開始し、目
Part1
標とする価値を定量的に評価するための「活用シナリオ策
構想から実践へ
ビッグデータ利活用へのアプローチ
●ビッグデータ利活用を切り拓く技術
定」、実際にデータ分析手法を確立するとともにシステム化
した際の性能やシナリオの有効性を検証する「実用化検証」
を経て、最終的に「システム導入」へと移行していく、4 つ
のフェーズからなるトータルサービスを提供するものだ。
現場でしか知りえない“真実”を抽出し
ビジネスに反映させるITプラットフォーム
可視化
仮想化
データ利活用
抽象化
並列化
そして、上記のような支援サービスと両輪となって、ビッ
グデータ利活用における重要な役割を担うのが、ストレージ
を中心とした IT プラットフォームである。
ビジネスの現場、作業の現場、生活の現場など、さまざ
Field to Future Technology
まな現場から発信されるデータには、現場でしか知りえない
データ可視化
現場のデータを収集し、既存のデータと連携を図り、
業務とデータの関連を可視化する技術
“真実”が含まれている。ストレージに蓄積された多様かつ
データ仮想化
データの格納場所、構造、関連性、
内容など違いを隠蔽し
統一的なデータ管理を実現する技術
データ並列化
データの並列分割と実行を記憶デバイスの並列性に
自動的に整合し実行する技術
データ抽象化
データの全体像、相互関係、潜在構造などを分析&抽出する
ことでデータを情報へ昇華する技術
大量のデータからこの“真実”を正しく抽出し、それぞれの
企業のビジネスやプロセスにしっかり反映させることで、未
来の大きな価値を生み出すことができる。
そこで日立は、「Field to Future Technology 」~現場の事
実から未来の業務に不可欠な情報を生成する技術~に基づ
いて IT プラットフォームを体系化し、ビッグデータ利活用に
まつわる本質的な課題の解決へと導いている。
で、データの全体像や相互関係、潜在構造などからモデル
そこからは 大きく、「 デ ータ可 視 化 」
「 デ ータ仮 想 化 」
を生成して分析を行うことで、データを情報や知識へ昇華
「データ並列化」
「データ抽象化」という 4 つのソリューショ
させていく。
ンが提供される。
こうした 4 つの解決技術をベースとした IT プラットフォー
データ可視化は、「データをどのように集めたらよいのか
ム導入のライフサイクルによって、ビッグデータ利活用はよ
分からない」
「データ分析の結果を業務視点から見たい」と
り高度なレベルへと進化していくわけである。
いった課題に対応するもので、データの所在の特定ならび
また、IT プラットフォームそのものにも次々と新しい技術
に収集、既存データを含むデータ間の連携などを行い、業
が投入されており、イノベーションを促していく。リアルタ
務とデータを関連付ける。
イムのデータ可視化を実現するストリームデータ処理技術、
データ仮想化は、「さまざまな種類のデータを統一的に
さまざまな拠点からの自動的なデータ収集ならびにシームレ
管理したい」
「業務ごとに異なった場所に保管されている
ス な 利 用を 実 現 す る仮 想ファイルプラットフォー ム 技 術
データを、場所を意識しないで使用したい」という課題に対
( Cloud on-Ramp )、種類の異なる多様なデータの一元的な
応するもので、データの格納場所や構造、関連性、内容な
保管や利用を可能とするユニファイドストレージ、ボリュー
ど違いを隠蔽した統一的なデータ管理を実現する。
ム容量仮想化や自動階層化などのストレージ仮想化技術、
データ並列化は、「業務フローで許される時間内に分析
大量データを高効率に保管する重複排除技術、高速なデー
結果を得たい」
「大量データの処理時間を短縮したい」
「リ
タ分析や検索を可能とする超並列データベース技術やイン
アルタイムに分析結果がほしい」といった課題に対応する
メモリデータグリッドなどは、そうした中で実用化が進んで
もので、データの並列分割ならびに実行によって、データ
きた代表的な技術だ。
の格納から検索までのデータ取り扱いのスピードを上げる。
これまでどちらかといえば話題先行の感の強かったビッ
データ抽象化は、「何をすればビジネスに有益な分析結
グデータであるが、いよいよ本格的な利活用に向けた環境
果が得られるのかが分からない」という課題に対応するもの
が整い、実践の時期を迎えたと言えるようになった。
Hitachi Storage Magazine Vol.8
5
特 集
ストレージから見た
ビッグデータの本質
Part2
ビッグデータ時代のニーズに応える
日立のプラットフォーム技術
サーバ、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアの各事業を再編・統合し、一体となって付加価値を提供していくITプラットフォーム事業本
部を発足させた日立。
「One Platform for All Data」という事業ビジョンの下でビッグデータの利活用を推進し、社会や企業にイノベー
ションを起こしていくことが、同事業本部に課せられたミッションである。そうした中でいかなる戦略を展開し、ストレージを中心としたプ
ラットフォーム技術や製品の開発に取り組んでいるのか。同事業本部 企画本部の担当本部長を務める島田朗伸に聞いた。
ビッグデータの利活用を推進する
データ・アナリティクス・マイスターサービス
ビス」という新たなサービスを開始させました。
そのサービスは、2012 年 4 月に設立された専任組織の
「スマート・ビジネス・イノベーション・ラボ」が中心となって
──まず、日立としてビッグデータをどのようにとらえ、アプ
展開しているものです。お客さまやパートナー企業と協創
ローチしているのか。全社的に取り組んでいる事業の全
しつつ、日立が持つ豊富なデータ分析ノウハウを提供する
体戦略についてお聞かせください。
ことで、新たなビジネス価値を創出する「イノベイティブ・
アナリティクス」をサポートしています。
周知のとおり IT 化の進展とともに扱われるデータはどん
どん増加し、多様化しています。これらのデータを総称した
ものがビッグデータですが、それ自体は単なるデータのか
たまりにすぎ ず 、どう使 いこなして いくかが課 題となりま
ITプラットフォームが示唆する
ボトムアップ型の発展形態
す。
そこに向けた日立の強みは、さまざまな社会インフラや
──エンド・ツー・エンドのソリューションを提供していくとい
ビジネスに関する実業を手がけている、世界でも類を見な
う意味で、ITプラットフォーム事業本部が担っているミッ
い IT ベンダーであることです。電力、鉄道、交通、水処理
ションも大きいのでしょうね。
をはじめ、金融、公共、流通、医療などを支える広範な基
盤づくりに携わっており、データ分析によって、それらを効
業務視点に立ったコンサルティング中心のデータ・アナリ
率的に運用・制御していくためのシステムも構築してきまし
ティクス・マイスターサービスと、さまざまな構想を具現化
た。日立自身が実業を通じた経験とノウハウを有し、すで
していく IT プラットフォームが両輪となって、初めてビッグ
に多くのデータを蓄積しています。また、そうしたデータの
データの利活用が可能となります。
新たな利活用を実践していく
“場”を持っています。
これまで独立色の濃かった日立のサーバ、ストレージ、
この特長を活かし、個々の企業が抱えているさまざまな
ネットワーク、ソフトウェアの各事業を再編・統合し、一体と
課題と向き合い、改革をもたらすビッグデータ利活用を導
なって付加価値を提供していくために発足したのが IT プラッ
いていく
“つなぎ役”となり、エンド・ツー・エンドのソリュー
トフォーム事業本部です。ここではビッグデータを効率よく
ションを提供していくというのが日立の基本姿勢です。
蓄積し、知識化した情報をお客さまのビジネスで自在に利
活用できるようにすることを目ざす「 One Platform for All
──そうした日立のビッグデータ利活用事業をさらに強化し
ていくために、
「データ・アナリティクス・マイスターサー
6
Hitachi Storage Magazine Vol.8
Data 」という事業ビジョンを掲げ 、社会や企業のイノベー
ションを推進しています。
日立製作所 情報・通信システム社
ITプラットフォーム事業本部
事業統括本部
企画本部 担当本部長
島田朗伸
── ITプラットフォームに関する技術の側面から、ビッグデー
とらえ、より的確な診断や治療を行えるようになります。
タ利活用に向けた新たな手がかりやヒントを与えること
この延長線上でクラウドに蓄積された膨大な臨床コンテ
も多いのでしょうか。
ンツデータをより深く分析することによって、難病治療や未
病対策に関してこれまで知られていなかった知見を見いだ
ビッグデータは目的ありきで考えられがちですが、実際に
すなど、新たな医学の進歩に役立てていきたいという構想
はこれまで実現できていなかったデータの統合や複合的な
が持ち上がっています。
利用を推進することで、目の前の成果を 1 つ 1 つ積み上げ
ながら発展させていくというボトムアップ的な取り組みも多
いのです。
──この事例では具体的に、日立のどのようなプラットフォー
ム技術が採用されているのでしょうか。
例えば、多くの拠点にバラバラに分散していたデータを 1
カ所に集約し、誰でも、どこからでも、簡単に共有利用でき
仮 想ファイルプラットフォーム の「 Hitachi Virtual File
るようにすれば、業務効率を大幅に向上させることができ
本格的なビッグデータ利活用に到達していくといった展開も
(以下、VFP )ならびにバックアップ/アーカイブ
Platform 」
(以下、
専用プラットフォームの「 Hitachi Content Platform 」
(クラウドへの入り
HCP )をベースにした「 Cloud on-Ramp 」
ありえるのです。
口)という仕組みを活用しています。
ます。こうした改革を進めていく将来的なステップとして、
V F P は 各 病 院 や 診 療 所などに置かれる N A S( N e t w o r k
──具体的な事例はありますか。
Attached Storage )的なストレージとして働くとともに、そこ
に蓄積されたさまざまな臨床データが、自動的にクラウド側
「医学情報管理クラウド」という事例があります。地域の
の HCP に集められていきます。また、こうしてクラウドに集
中核病院や一般病院など、多くの病院が個別に管理してき
められたデータに対して、各病院や診療所などのエッジ側
た患者情報や医療画像(レントゲン、CT スキャン、MRI )な
の VFP からは、手元にあるデータとまったく同じように、い
どの臨床コンテンツデータをクラウドに集約して一元管理
つでも、シームレスにアクセスできるのです。
し、各病院はもとより系列の診療所まで含めた医師の間で
共有利用できるようにしたものです。
これによって、いわゆる病診連携が実現し、患者はどの
医療機関にかかっても格差のない高レベルの医療サービス
ビッグデータ運用の要件に応える
ミッドレンジユニファイドストレージ
を受けられるようになります。外来での待ち時間の短縮や
医療費の削減にもつながっていくと期待されます。一方で
医師は、患者に関する多様なデータを総合的かつ時系列に
──ビッグデータの利活用を支える ITプラットフォームには、
どのような要件が課せられるのでしょうか。また、そこに向
Hitachi Storage Magazine Vol.8
7
特 集
ストレージから見た
ビッグデータの本質
けて日立はどのような技術を提供しているのでしょうか。
ビッグデータ利活用の達成レベルを改めて整理しておく
新たな知見の発見や予測を支援する
高速分析プラットフォームへの発展
と、データを「集める、貯める」
(収集・蓄積)、「探して使う」
(検索・可視化)、「発見や予測を行う」
(分析・知識創出)と
──ビッグデータの利活用をさらに「発見や予測を行う」とい
いう 3 つのステップで発展していくと、日立では考えていま
うステップまで進めていく上では、どんなプラットフォー
す。
ムが必要となるのでしょうか。
例えば、先程の医学情報管理クラウドで紹介した Cloud
on-Ramp の仕組みは、このうちの特に「集める、貯める」
「探して使う」のステップをサポートするものです。
ビッグデータ利活用のステップを進めていく上で、このよ
そこでは大きく2 つのアプローチが重要になると考えられ
ています。
1 つは、大量に蓄積したビッグデータをいかに高速に分析
うに非常に重要な鍵を握っているのがストレージであり、大
できるようにするのかを目的とした、いわば「大脳系」のア
量データへの高速アクセスが可能であること、省電力・省
プローチ。もう 1 つは、今起きている事象に対して、価値あ
スペースであること、多様なデータを効率的に保管できる
る情報をリアルタイムに生み出して対処する「反射神経系」
ことなどが求められます。日立は、これらの要件に応えてい
のアプローチです。
(以
く主力製品として、新たに「 Hitachi Unified Storage 」
下、HUS )というミッドレンジユニファイドストレージを発表
しました。
──それは非常に興味深いですね。それぞれのテーマについ
て、現在の日立の取り組みを教えてください。
──ユ ニファイドストレージとは、どん な 特 長を持ったスト
レージなのでしょうか。
まず 大 脳 系に関して、日立は東 京 大 学と共 同で超 高 速
データベースエンジンの研究開発にあたっています。さま
ざまなビッグデータ分析ニーズに対して、この成果を最大
ビッグデータとして扱われるデータは、データベースに蓄
限に発揮していくため、同データベースエンジンと日立の
積された業務データ、オフィス文書、メール、画像、動画、
アドバンストサーバ「 HA8000 シリーズ」と、データアクセス
ソーシャル・メディアで交わされるブログやつぶやき、各種
性能に優れた SSD を搭載したストレージを組み合わせた事
センサーや計測器から発信されるデータ、RFID など、まさ
前 検 証 済 み の ベ ストプ ラク ティス モ デ ル を 製 品 化し 、
に多種多様です。
「 Hitachi Advanced Data Binder プラットフォーム」として販
HUS は 1 台のストレージで、ブロック形式のデータ(構造
売を開始しました。
化データ)とファイル形式のデータ(非構造化データ)の両
一方の反射神経系に関しては、「日立インメモリー DB ア
*1
しており、これらの多様なデータを一元的に管
プライアンス for SAP HANA™ 」というプラットフォームを提
理するとともに、高パフォーマンスで利用できるのです。ま
供しています。これは、日立の統合サービスプラットフォー
た、1 システム当たり最大 2.8P バイト(ペタバイト)という容
ム「 B ladeSymphony 」に採用されているブレードサーバのハ
量スケーラビリティを備えており、指数関数的に増加してい
イエンドモデル である「 BS2000 」に、メモリー上で高速な
方に対応
くビッグデータに対して、スモールスタートによる柔軟な拡
張を図っていくことができます。
ブ レ ー ド シ ン フ ォ ニ ー
データ処理を実現する SAP AG のインメモリーソフトウェア
「 SAP HANA 」を実装したもので、大量データの効率的な検
さらに、エンタープライズストレージ の「 Hitachi Virtual
索やリアルタイム分析を可能にし、企業の迅速な意思決定
(以下、VSP )で提供してきた「ボリュー
Storage Platform 」
ム容量の仮想化」
( Hitachi Dynamic Provisioning )や「スト
レージ階層の仮想化」
( Hitachi Dynamic Tiering )* 2といっ
や適切な事業戦略の策定を支援します。
た最新のストレージ仮想化技術も搭載されています。
迅速に実現します。
*1 ファイル対応はファイルモジュールにて2012年度第2四半期にサポート予定
*2 ストレージ階層仮想化機能は2012年度第3四半期にサポート予定
──こうした新しいプラットフォームの活用を支えていくため、
8
Hitachi Storage Magazine Vol.8
例えば、小売業の製品発注における計画、予測立案や価
格設定の最適化、証券会社におけるトレーディングなどを
Part2
ビッグデータ時代のニーズに応える
日立のプラットフォーム技術
●クラウドを支える日立のプラットフォーム
One Platform for All Data
新たな利活用
発見
・予測する
「サービス創出」
「分析・予測」
発見・予測する
「分析・予測」
インフォメーションクラウド
Dashboard
探して使う
「検索・可視化」
「収集・蓄積」
Analytics
TOOLS
コンテンツクラウド
Content
Discovery
Content
Sharing
集める・貯める
HADOOP
インフラクラウド
Meta Data
Management
●サーバ仮想化層
Performance
Reliability
Power Saving
サーバプラットフォーム
●ファイル&コンテンツ仮想化層
File
Virtualization
De-dup
ファイルコントローラ
●ストレージ仮想化層
Dynamic
Tiering
Dynamic
Provisioning
Non-disruptive
Migration
ストレージプラットフォーム
ストレージのレイヤからはどのような技術を提供している
部としては今後どのような研究開発を進めていく必要が
のでしょうか。
あるとお考えですか。
最も重要な技術の 1 つとして位置づけられているのが、
何よりも求められているのが、メタデータの管理や活用
重複排除と呼ばれる機能です。多様なデータを大量に蓄積
に関する技術のブレークスルーです。ビッグデータ利活用
していく過程では、まったく同じ画像、まったく同じ文書と
においては、多様なデータを複合的に組み合わせて分析す
いったデータがどんどん集まってきます。これらのデータを
ることが必要ですが、これは口で言うほど簡単なことでは
そのままの状態で残していったのでは、どれだけストレージ
ありません。
の容量を追加してもキリがなく、検索や分析のパフォーマン
例えば、基幹系データベースで扱っている業務データと
スにも悪影響を及ぼしてしまいます。そこで VFP ではファイ
画像データ、センサーから発信されるパルスデータなど、
ル単位の高速な重複排除技術を提供し、データのシングル
性質も形態もまったく異なるデータをいきなり突き合わせて
インスタンス化を実現しています。
みても、そこからは何も得られません。それぞれのデータ
また、ビッグデータを長期間にわたって保管したり、多世
が持つ“意味”を目的に沿った形でメタデータとして定義す
代にわたるバックアップを取得したりするためには、それぞ
ることで、初めて複合的な分析が可能となり、そこから新
れのファイル の中身までさらに細かく分割して重複排除を
たな知見や洞察(気づき)を生み出すことができるのです。
行い、容量を削減する必要があります。こうしたブロック単
こうしたメタデータの定義は、現状ではほとんど人間の
位 の 重 複 排 除 技 術をあわせ て 提 供して いるのが、バック
手作業によって行われているのが実情です。今後はそれに
アップ 向 け ファイ ル ストレ ー ジ とし て 新 た に 発 表し た
加えて、例えばビッグデータの運用を通じてシステムが自
「 Hitachi Capacity Optimization 」です。
己学習し、自動的にメタデータを拡充していくといった仕組
みを提供していくことも必要と考えており、積極的な研究
──ビッグデータ利活用に向けて、ITプラットフォーム事業本
開発にチャレンジしています。
Hitachi Storage Magazine Vol.8
9
Technology Focus
スモールスタートから
ストレージ集約まで一貫して対応する
大規模な容量スケーラビリティとデータ処理性能を提供
── Hitachi Unified Storage 100 シリーズ
企業や社会に存在する多様なデータをまとめて格納し、同時にそのストレージ自体も規模や設置場所によらず
一元的に運用管理できることを重要なテーマとして、日立は「ユニファイドストレージ」のコンセプトを再定義し
た。その取り組みの結果、新たに登場したストレージ基盤プラットフォームが「Hitachi Unified Storage
100シリーズ」である。従来モデルと比べて圧倒的な容量スケーラビリティとデータ処理性能の向上を実現し
た同ストレージのコア技術に迫ってみよう。
ブロックアクセスとファイル
アクセスの複数プロトコルを
1システムでサポート
らユニファイドストレージのコンセプトを
シーケンシャルリード性能を発揮し、大
再定義し、開発されたのが HUS です」
量データの検索・分析ニーズに対応する
“ユニファイド”のキーワードが示すと
のである。
おり、HUS は統合されたストレージ基盤
そして、ここでのポイントについて山
企業が保有するデータ量は指数関数
プラットフォー ムとして 、F C 、i S C S I 、
本は次のように強調する。
的な勢いで増加しており、P バイトから E
バイト(エクサバイト)、Z バイト(ゼタバイ
NFS* 1 、CIFS* 1 といった複数のプロトコ
ルをサポートする。1 つのフレームワー
タ処 理 性 能 の 向 上 の 背 後にあるの が 、
ト)のオーダーに達しようとしている。し
ク上にブロックやファイルといったあら
HUS の心臓部を支えるダイナミックロー
かも、それらのデータの約 80%を占めて
ゆるタイプのデータを集約し、共通のス
ドバランスコントローラの進化です」
「こうした容量スケーラビリティやデー
いるのがテキストや画像、音声などの非
トレージプールで一元的に扱うことが可
一般的なミッドレンジストレージシステ
構造化データであり、オフィスの PC やモ
能となるのである。
ムは、非対称アクティブ・アクティブと呼
バイルデバイス、ソーシャル・メディア、
* 1 ファイル対応はファイルモジュールにて 2012 年度第 2
IC カード、センサーなど多様なソースか
四半期にサポート予定
ばれるアーキテクチャーに基づいたデュ
アルコントローラを採用している。双方
HUSの心臓部を支える技術
ダイナミックロードバランス
コントローラ
り当て済みの LUN(論理ユニット)に対し
ファ イド ストレ ー ジ 製 品 の「 H i t a c h i
加えて HUS は、ハードウェア面でも大
役 割を 果 た す 。こ の 構 成 のもとで は 、
(以下、
Unified Storage 100 シリーズ」
HUS )だ。日立製作所 IT プラットフォーム
幅な強化が図られている。
LUN とコントローラの割り当てやバラン
HUS は日立ストレージ製品群のポート
スの調整を、あらかじめ予測した負荷や
事業本部 事業統括本部 企画本部 スト
フォリオにおいて、「 Hitachi Adaptable
その後の変化に応じて管理者が手動で
レージ 企 画 部の部 長を務める山 本 康 友
(以下、AMS )を後継
Modular Storage 」
行う必要があった。
ら高 速か つ 連 続 的に生 成され 、頻 繁に
アップデートされていく。
こうしたビッグデータ時代に向けて日
立 が 新 たにリリー スした の が 、新 ユ ニ
のコントローラノードは、それぞれの割
て I/O を処 理し、もう一 方の未 割り当て
LUN に対してはスタンバイ機能としての
は、HUS に込めた狙いを次のように説明
するミッドレンジストレージに位置づけら
これに対して日立のダイナミックロー
する。
れるが、AMS との比較で約 2 倍の容量ス
ドバランスコントローラは、LUN に不 均
「ビッグデータの利活用を支える IT プ
ケーラビリティを備えており、最大 2.8P
等 に アクセ ス す るの で は なく、コント
ラットフォームには、大量データの効率
バイトのシステム容量を確保できる。
ローラと LUN の関係そのものを仮想化す
的な保管と一元管理、目的のコンテンツ
また、これに合わせて HUS は、I/O パ
るという独自の方法を採用している。ま
への高速アクセス、複合的なデータ分析
フォーマンスも大幅に向上している。
ず、複数のダイナミックロードバランスコ
や 予 測を行うための 高 速 デ ータ処 理と
例えば HUS150 は、従来モデルである
ントローラは同 時に動 作し、コントロー
いった要件が求められます。この観点か
AMS2500 との相対比において約 3 倍の
ラから LUN へのアクセスパスを自動的に
10
Hitachi Storage Magazine Vol.8
省スペース・省電力化を追求し
運用コスト削減にも貢献
割り当てる。その後、アクセス負荷が変
化した場合には、このパスをダイナミッ
クに再割り当てする。また仮想サーバ環
境の仮想マシン移動の際など、アクセス
HUS は容量スケーラビリティを高める
パスの物理ポートが変更しても、LUN ア
一方で高密度実装、すなわちラック当た
クセスが可能でありストレージの設定変
りの容量拡大を実現し、相対比としての
更がいらない。
省スペース化を追求している点にも注目
このようにダイナミックロードバランス
したい。
コントローラの最大のメリットは、手動で
「 HUS では、ラックスペースを減らす
LUNをマッピングすることなく大規模なス
た め のさまざまな工 夫 が 施され て いま
トレージプールを作成し、自在にプロビ
す。例えば、停電などによる電源遮断時
ジョニングできるようにする点にある。こ
にキャッシュメモリーのデータを内 蔵の
の共通ストレージプールによって、ブロッ
NAND 型フラッシュメモリーへ待避するフ
ク、ファイルといったマルチデータタイプ
ラッシュバックアップ機 能もその 1 つで
の一元的な管理が可能となるわけだ。
す 。キャッシュメモリー のデ ータバック
上記のような働きを司るダイナミック
アップ の 際に必 要とされ て い た大 容 量
ロードバランスコントローラそのものの
バッテリの搭載を不要にしたこともあり、
ハ ードウェア 処 理 能 力 の 強 化 に 加え 、
基本筐体サイズを従来モデル比* 3 で約
バックエンド の ポ ートの 高 速 化 、メモ
すことで、HUS はストレージシステム全
(山本)
50%削減しました」
その他、HUS は AMS の時代から活用さ
れてきた Power Saving 機能を継承し、
体としてのスケーラビリティとパフォーマ
非 稼 働ドライブ の 回 転を停 止 す ること
ンスの向上を実現している。また、レプ
で、省電力化を図っている。
リー 管 理 機 構の改 善などを総 合 的に施
日立製作所 情報・通信システム社
ITプラットフォーム事業本部 事業統括本部
企画本部 ストレージ企画部 部長
山本 康友
リケーション機能の拡張(例えば、最大
こうした特性を活かすことで HUS は、
有益なビッグデータの利活用を支えてい
1 0 2 4 世 代まで のスナップショット機 能
設備の初期投資の抑制はもちろん、デー
くのである。
の 取 得 )や ストレージ 階 層 仮 想 機 能 の
タセンターの賃貸料や電力使用量などの
* 2 ストレージ階層仮想化機能は 2012 年度第 3 四半期にサ
ポート予定
*2
提供
を可能とした。
運用コストの削減にも貢献し、迅速かつ
*3 AMS2100 モデルと HUS130 モデルとの比較
●ダイナミックロードバランスコントローラ
コントローラ間の負荷に大きな差が生じた場合
自動的にロードバランス処理を実行
一般的なコントローラ
ダイナミックロードバランスコントローラ
コントローラの負荷は軽減されず性能劣化が発生
コントローラの負荷が自動的に最適化され安定した性能を確保
サーバ2
サーバ1
C
ドライブ
日立独自
D
ドライブ
X
ドライブ
サーバ2
サーバ1
Y
ドライブ
C
ドライブ
D
ドライブ
X
ドライブ
Y
ドライブ
最適化
高負荷
コントローラ1
手 動
コントローラ2
バランス調整が必要
コントローラ1
自 動
コントローラ2
バランス調整は不要
Hitachi Storage Magazine Vol.8
11
日立ストレージソリューション 製品ラインアップ
ストレージシステム
バックアップ用途向け
ファイルストレージ
Hitachi Virtual File Platform
従来のNASを超えた仮想ファイルプラットフォーム
ファイル
ストレージ
ストレージセットモデル
ゲートウェイモデル
VFP200N
VFP600N
VFP110
Hitachi NAS Platform
エントリーモデル
VFP50
ストレージサービス
ストレージ管理ソフトウェア
Hitachi Capacity Optimization
Hitachi Content Platform
クラウド向けのバックアップ/アーカイブストレージ
高性能ファイルストレージ
Hitachi Virtual
Storage Service
VFP70
VFP:Hitachi Virtual File Platform
HUS110
HUS130
HUS150
Hitachi Unified Storage 100シリーズ
ユニファイド
ストレージ
多様な業務のデータ管理に1台で対応できる
ユニファイドストレージ
Hitachi Virtual
File Service
HUS:Hitachi Unified Storage
ブロック
ストレージ
Hitachi
Command
Suite 7
Hitachi Virtual Storage Platform
ストレージ階層の仮想化およびボリューム容量の
仮想化、
ストレージデバイスの仮想化など、3つの
先進の仮想化ソリューションを同時に提供する
ストレージ管理ソフトウェア Hitachi Command Suite 7
データセンターのストレージリソースを統合管理
運用効率向上により、増え続ける運用コストの削減を支援
ストレージ階層
ビジネス継続
情報の利用価値に合わせた
ストレージリソースの
有効活用を実現
業務データのバックアップと
ディザスタリカバリ運用の
一元化を実現
階層ストレージリソース管理
Hitachi Tiered Storage Manager
ストレージレプリケーション管理
Hitachi Replication Manager
ストレージ統合
データセンター全体のストレージの
構成・性能を統合管理
Hitachi Command Suite 7
とても使い易い
大規模環境でも安心
仮想化にも対応
12
Hitachi Storage Magazine Vol.8
ストレージシステム稼働管理
Hitachi Tuning Manager
ストレージハードウェア管理
Hitachi Device Manager
データ入出力パス管理
Hitachi Dynamic Link Manager Advanced
DATA D R I V E S O U R W O R L D A N D I N F O R M AT I O N I S T H E N E W C U R R E N C Y
新 機 能 紹 介
最適な入り口を選べる“蔵”──用途に応じて最適化できるユニファイドストレージ
■対象ストレージ
Hitachi Unified Storage 100 シリーズ
蔵には収納する品物に応じた最適な設計がある。荷物の運び
込みもそうだが、運び出すときも、品物に応じた設計が重要
になる。ただ、共通化できる部分も多くあるはず。特に格納部
分を共通化すれば、蔵を建てるときに入り口を選ぶだけでよく
なるのではなかろうか。
種類の異なるデータを1台のストレージに集約
4種類のコントローラで多様なニーズに対応
「 Hitachi Unified Storage 100 シリーズ」
(以下、HUS )は、
ユニファイドストレージ基盤プラットフォームである HUS では、
(以下、AMS )の後継機種
「 Hitachi Adaptable Modular Storage 」
さまざまなコントローラ(冒頭で紹介した蔵の入り口)を組み合
となる新ミッドレンジストレージである。
わせることで、用途に応じたソリューションを容易に構築するこ
HUS は、これまで AMS が提供してきた高信頼性や日立独自の
とができる。
コントローラ間自動負荷バランス機能などを継承するとともに、
A M S から提 供され てきた 、コンテンツ管 理コントローラ の
エンタープライズクラスで培われてきた最新のストレージ仮想
(以下、HCP )とクラウド対応ファイ
「 Hitachi Content Platform 」
化 機 能 を 搭 載 。さらに 、A M S との 比 較 で 容 量 を 2 倍( 最 大
(以下、VFP )の
ルコントローラの「 Hitachi Virtual File Platform 」
2.8PB )、データ転送性能を 3 倍に高めるなど、大幅なエンハン
両コントローラは継承して利用が可能で、HUS をベースとしたク
スが図られた。
ラウドセンターへのファイル統合( Cloud on-Ramp )をサポートす
HUS の最大の特長は、企業や社会などに存在する多様なデー
る。特に VFP には新たにファイル重複排除機能を搭載し、効率
タを一元的に管理運用できるユニファイドストレージのコンセプ
的なデータの収集・保管ならびに利用を実現する。
トに基づいて設計されているところにある。例えば、ブロック形
そして今回新たにラインアップに加わったのが、バックアップ
*1
に対応している
(以
ファイルコントローラの「 Hitachi Capacity Optimization 」
ため、扱うデータ種類の異なるアプリケーションからのアクセス
下 、H C O )と高 性 能 ファイルコントロ ー ラ の「 H i t a c h i N A S
を 1 台のストレージシステムに集約することができる。これによ
(以下、HNAS )の 2 製品である。
Platform 」
HCO は、ファイルを細かく分割することで、より高効率の重複
式とファイル形式の双方のアクセスプロトコル
り、基幹システムからファイルサーバまで、さまざまな業務シス
テムで発生するデータの横断的な検索や分析が容易となるわけ
排除を行うファイルプラットフォームであり、多世代バックアッ
だ。まさにビッグデータ時代に最適なストレージと言えよう。
プや長期間に及ぶデータ保管のニーズに対応する。
また 、ストレ ージ ハ ードウェア 管 理ソフトウェア「 H i t a c h i
一方の HNAS は、VFP の上位ファイルプラットフォームに位置
Device Manager 」を標準搭載しているため、統合ダッシュボード
づけられる製品で、科学技術計算や医療・ライフサイエンス、エ
からのシンプルで一元的な操作が可能となり、管理者の日々の
ンターテインメントといった分野のニーズに応える高い性能を発
運用負担が軽減される。
揮する。
*1 ファイル対応はファイルモジュールにて 2012 年度第 2 四半期にサポート予定
●ユニファイドストレージのコンセプト
Hitachi NAS Platform
クラウド対応ファイルコントローラ
Hitachi Virtual File Platform
メール
画像
コンテンツ管理コントローラ
Hitachi Content Platform
映像
バックアップファイルコントローラ
Hitachi Capacity Optimization
ユニファイドストレージ基盤プラットフォーム
Hitachi Unified Storage
HUS 110
●8GB cache
●Max. 120drives
●FC、
iSCSI
HUS 130
●16GB cache
●Max. 264drives
●FC、
iSCSI
・・・
HUS 150
●32GB cache
●Max. 960drives
●FC、
iSCSI
管理ソフトウェア
高性能ファイルコントローラ
ファイル
Hitachi Command Suite
データベース
Hitachi Storage Magazine Vol.8
13
T
O
P
C
I
S
SAP アプリケーションの移行時の
データ移行作業を不要にするストレージソフトウェア
®
新製品
日立は、SAP ® アプリケーションの移行
発・検 証や保 守 時における SAP ® アプリ
ムの検証・構築を共同で行い、高い処理
時 の デ ータ移 行 作 業を不 要に するスト
ケーションの移行作業において、従来必
性能や容易な運用管理を実現する SAP ソ
要であった個別のストレージ側でのデー
リューションの開発を推進している。
レージソフトウェア「 H i t a c h i S t o r a g e
Adapter for SAP NetWeaver ® Landscape
Virtualization Management 」の販売を開
始した。本ソフトウェアにより、SAP AG
(以下、SAP 社)のアプリケーション統合
管 理ソフトウェア「 S A P N e t W e a v e r ®
Landscape Virtualization Management 」
タ移 行 作 業が不 要となるた
と日 立 の ストレ ージ 装 置 が 持 つレプリ
ルテクノロジーパートナー」
ケーション機能との連携を実現する。
契 約を締 結した 。S A P 社 の
例えば、S A P アプリケーション の 開
製品と組み合わせたシステ
®
サービス
め 、システム の 開 発・検 証
や保守の負担を低減できる
ようになる。
●システム概念図
SAP®アプリケーションの複製指示
SAP NetWeaver® Landscape
Virtualization Management管理サーバ
サーバ層
(SAP®アプリケーション)
なお、日立は 2011 年 4 月
に、SAP 社と「 SAP グローバ
SAP業務
アプリケーション
(移行先)
ストレージ層
(日立 ストレージ装置)
SAP業務
データA
SAP業務
データB
ストレージソフトウェア
Hitachi Storage Adapter for
SAP NetWeaver® Landscape
Virtualization Management
SAP®アプリケーション複製
SAP業務
アプリケーション
(複製)
複製処理連携
データ複製
SAP業務
データA'
SAP業務
データB'
日立システムズ、Cloud on-Rampを活用した
クラウドバックアップサービスを提供開始
日立システムズは、コンテンツデータ
Platform 」と「 Hitachi Content Platform 」
バックアップ運用の負荷低減と BCP(事
のクラウドへのバックアップを実現する
を適用したコンテンツデータのクラウド
業継続計画)対策を実現している。
「クラウドバックアップサービス」の提供
へ の バックアップソリューション C l o u d
これにより、ユーザーは業務に専念し
を開始した。
on-Ramp(クラウドへの入り口)を採用。
ながらデータの 保 全 性や 事 業 継 続 性を
本サービスでは、「 Hitachi Virtual File
そ れ を サ ービ ス 化 す ることによって 、
高めることができる。
アワード
シアトルこども病院が米国Computerworld主催の
The Computerworld Honors Program 2012受賞
19 8 8 年に米 IDG によって 設 立された
では、教育や公共、医療、ビジネスといっ
確保するため、
「 Hitachi Virtual Storage
Computerworld Honors Program は、ITを
た分野を対象としており、シアトルこども
Platform 」と「 Hitachi NAS Platform 」を中
通じて社会、経済、教育の進歩に貢献し
病院が医療分野で選出された。
心とする日立のストレージソリューション
た個人および組織を毎年表彰する最も名
同院は、24 時間 365 日稼働が求められ
を導入している。こうした最先端の取り組
誉ある賞の 1 つとして知られている。同賞
る仮想デスクトップ( VDI )環境の信頼性を
みが評価され、今回の受賞に至った。
調査レポート
IDC Japan、ストレージ市場実績を発表
日立が16年連続で売上シェアNo.1に
( Storage Area Network )
と
としては、SAN
で構成
NAS( Network Attached Storage )
されたオープンネットワークストレージに対
IDC Japan は 2012 年 3 月 22 日、2011 年
ディスクストレージシステム市場は、前年
する国内企業の支出が増加したことが挙
の国内外付型ディスクストレージシステム
比 0.5%増の 1,683 億 500 万円。2008 年以
げられる。なお、今回の発表は IDC が発行
市場の実績を発表。日立が 16 年連続で
来、3 年振りのプラス成長となった。厳し
した「国内ディスクストレージシステム市場
シェア No.1となった。
い環境の中で、外付型ディスクストレージ
( J12441301)
2011 年第 4 四半期の分析」
同調査によると、2011 年の国内外付型
システム市場がプラス成長になった要因
にその詳細が報告されている。
14
Hitachi Storage Magazine Vol.8
新拠点
ソフトウェア事業と防衛・社会インフラ安全保障事業の
拠点集約となる横浜事業所新社屋を建設
日立の情報・通信システム社における
ループでは、コスト構造改革プロジェクト
ソフトウェア開発拠点および防衛・社会
「 Hitachi Smart Transformation Project 」
インフラ安 全 保 障 事 業を担 当 するディ
を推 進しており、本プロジェクトもその
フェンスシステム社の開発・製造拠点を
一環として実施したものである。
集約した新社屋を、それぞれ竣工した。
両施設は環境配慮型になっており、ソ
複 数カ所に分 散していた拠 点を横 浜 事
フトウェア開発拠点では、LED 照明や雨
●新しいソフトウェア開発拠点(事務所棟)、ディフェ
ンスシステム社の新しい製造・開発拠点(設計棟)
減 。ディフェンスシステム社では、LED
業所内に集約することにより、事業運営
水の循環利用設備、太陽光発電などによ
照明や高効率の変圧器などにより、年間
効率の向上を図っていく。なお、日立グ
り、年間電力消費量を従来比で 20 %削
電力消費量を従来比で 8%削減する。
イベントレポート
データ爆発時代の情報システムを支える
ストレージソリューション
か」
「プラットフォームの
リソースを効 率よく使う
必要があり、そこでは仮
「 日 立 イノ ベ ー シ ョン フ ォ ー ラ ム
た。その 1 つが「データ爆発時代の情報
想化がポイントとなる」と
2 0 1 2 」が 7 月 1 9 日と 2 0 日に 東 京 国 際
システムを支えるストレージソリューショ
し、そこで求められるス
フォーラムで開催。日立グループの取り
ン」と題した日立製作所 IT プラットフォー
トレージプラットフォー ムとして 、ユ ニ
組みを講演、セミナー、展示を通して幅
ム事業本部 事業統括本部 企画本部 ス
ファイドストレージ を 紹 介した 。また 、
広く紹介した。
トレージ企画部 部長の山本 康友のセミ
「データ活用の幅を広げるには、データ
ストレ ー ジ 関 連 を テ ー マとし た セミ
ナーである。山本は、増加し続ける多様
を貯める必要がある」ことから、ストレー
ナーも数多く、特にビッグデータという
なデータ処理に対応するために、「いか
ジプラットフォームに求められる機 能な
キーワードは多くの来場者の関心を集め
にプラットフォームの基本性能を高める
どを説明した。
イベントレポート
ビッグデータの活用が
社会をより良いものにしていく
た 。また 、鉄 道 や 発 電 所 、建 設 機 材と
いったところでの具体的なビッグデータ
活用シーンを示すことで、より身近なソ
ビッグデータとは何か。そこでの日立
ベーション「ナレッジ」に
リューションであることを説明した。
の役割はどこにあるのか。このテーマを
よるビッグデータ利活用 』
また、人体のさまざまなデータを収集
正面から取り上げて説明したのが、日立
をテーマにセミナーを行った。
できるロボットを紹介し、
「生死を分ける
データシステムズのプロダクトプランニン
同セミナーにおいてヘイは「社会に貢
ようなところで活用できる。こうしたテク
グに所属するマイケル・ヘイである。ヘイ
献してこそ日立である」と、企業理念を説
ノロジーが社会をよりよいものにする」と
は、7 月 19 日と 20 日に東京国際フォーラ
明。ビッグデータの活用をサポートするこ
ヘイ。
「日立もテクノロジーで社会に貢献
ム で 開 催 され た「 日 立 イノベ ー ション
とが、次の社会イノベーションにつながる
していく」と力強く語り、セミナーを締めく
『 社会イノ
フォーラム 2012 」において、
として、そのためのテクノロジーを紹介し
くった。
ソリューション
業務を自動的に再開できる
ディザスタリカバリソリューション
日立とシマンテック、伊藤忠テクノソ
リューションズ( CTC )は、ユーザーの追
によるサ ー バ 仮 想 化 環 境 下にお い て 、
リューションの検証を行った。
この環境においては通常、リモートサ
「VMware vCenter Site Recovery
イトの仮想マシン上にアプリケーション
加作業の必要なくシステムを復旧し、業
Mana ger 5 」と日立 のユニファイドスト
を復旧するために、管理者によるアプリ
務を自動的に再開できるディザスタリカ
レージ「 Hitachi Unified Storage100 シ
ケーション の 稼 働 確 認 や 再 立ち上げと
バリソリューションの提供を開始した。
リーズ 」、並 びにシマンテックのソフト
いった 追 加 作 業 が 必 要となるが 、本ソ
今回 3 社は、VMware 社のサーバ仮想
ウェア「 Symantec ™ ApplicationHA 」を
リューションではこの復旧プロセスの自
化ソフトウェア「 VMware vSphere™ 5 」
組 み 合 わ せ た デ ィザ ス タリカ バ リソ
動化を実現している。
Hitachi Storage Magazine Vol.8
15
先
進
事
例
日本システムウエア株式会社
http://www.nsw.co.jp/
「Cloud on-Ramp」を活用した
クラウドストレージサービス
使いたいときに使いたい分だけ利用できるクラウドストレージサービス。ユーザー企業にとっては、初期投資を抑えられるだけでなく、スト
レージの運用管理からも解放されるというメリットがある。日本システムウエアの「irukabox(イルカボックス)」も、そうしたクラウドスト
レージサービスとして提供されている。同サービスでは 1Gバイトの料金が月額 45円という低価格を実現。それを支えているのが、日立の
「Cloud on-Ramp」
(クラウドへの入り口)を始めとするストレージサービスである。
データ急増が顕在化させた
バックアップ運用の課題
社内に蓄積されるデジタルデータ量が
●NSWが提供する「irukabox」の構成
顧客拠点に
irukaboxクラウド
ゲートウェイを設置
設定したポリシーに
従って自動バックアップ
NSW
データセンター
顧客拠点
急増している企業では、バックアップ運
用はもちろん、バックアップしたデータの
自動バックアップ
安全性を、どのように確保するのかも重
ネットワーク
要な課題となる。また、災害対策の観点
自動アーカイブ
から、遠隔地へのバックアップに対する
要求も高まっている。
irukaboxクラウド
ゲートウェイ
ただし、このようなシステムをゼロから
構築するには、大きな初期投資が必要に
利用頻度の低いファイルは
自動的にアーカイブ
クラウドストレージ
顧客拠点
なってしまう。多くの 企 業 にとって は 、
バックアップのために大きな予算を組む
ことは簡単ではない。そこでクラウドスト
「新しい専用ファイルサーバを設置し
う。
レージである。
てネットワーク接続と設定を行い、最小
irukabox のサービスのメリットは、これ
その中でも、1G バイトで月額 45 円を実
限のシステム情報と管理情報をリストア
だけにとどまらない。専用ファイルサーバ
現したサービスとして市場の注目を集め
するだけで、業務の再開が可能になりま
の容量管理が必要ない点も同サービスの
ているのが、日本システムウエア(以下、
す」と日本システムウエア IT ソリューショ
大きな特長だ。ファイルサーバに格納さ
NSW )の「 irukabox(イルカボックス)」だ。
irukabox は企業向けに特化したクラウ
ン事業本部 クラウドソリューション部 部
れたファイル容量がストレージの限界に
長の竹村 大助氏は、災害復旧の容易さ
近づくと、利用頻度の低いファイルが自
ドストレージサービスであり、利用企業の
を語る。
動的にアーカイブされ、クラウドへと移
拠点に設置する専用ファイルサーバと、
この間に要する時間は、30 分程度*1。
動する。そのため、ストレージ の容量不
NSW のデータセンター側にあるクラウドス
ファイルもアクセスが発生したタイミング
トレージ の 組 み 合 わ せ で 構 成され て い
で、クラウド側から
“自動的に”転送され、
る。特に評価が高いのは、運用負担を劇
勝手にリストアされていくという。
的に低減できる点。利用者が専用ファイ
価格も注目されている理由の 1 つだ。
ル サー バ に格 納したファイル が、ネット
基本月額費用は 22,500 円*2。クラウドス
ワーク経由で“自動的に”
クラウドストレー
トレージ 1G バイトの料金は月額 45 円。な
ジにコピーされ、バックアップされる仕組
お基本月額費用には、500G バイトのクラ
みになっている。
ウドストレージが含まれている。この価格
災害などでファイルサーバが使えなく
帯であれば、中堅・中小規模の企業や、
irukabox の仕組みは図に示したとおり。
なった場合の復旧も早い。
大 企 業の 拠 点ごとでの 導 入も可 能だろ
ファイルのバックアップは、クラウド側で
16
Hitachi Storage Magazine Vol.8
足を心配する必要がない。
*1 リストアのコマンドを発行してから業務の再開までにかかる時間。
*2 ハードウェア買い取りの場合。ハードウェアレンタルの場合は
75,000円。
クラウドストレージで
2レイヤの階層化を実現
務を停止せずにデータ移行が行える。
既存ファイルサーバから irukabox へ移
行するにはまず、アクセス先のホスト名
の設定変更など、最小限の移行設定を行
う必要がある。この間は業務停止が必要
だが 、その 後 は すぐに業 務を再 開 でき
る。データ移行が完了していないファイ
ルは、irukabox 経由で既存ファイルサー
バにアクセスし、読み出すことができる
日本システムウエア株式会社
ITソリューション事業本部
クラウドソリューション部 部長
竹村 大助氏
からだ 。デ ータ移 行 が 途 中 でも、ユ ー
株式会社 日立製作所 情報・通信システム社
ITプラットフォーム事業本部 開発統括本部
ストレージ開発本部
システム第4設計部 部長
ザーからはすべてのファイルが irukabox
側にあるように見える。
里山 元章
既 存ファイル サ ー バ のファイル 容 量
が、irukabox の専用ファイルサーバ容量
をオーバーしている場合でも、データ移
取 得され て い る。ファイル サ ー バ 側 で
ファイル が削除される時には、ファイル
属 性やクラウドへの参 照 情 報が、
「スタ
ブ」と呼ばれるコンパクトなデータセットと
業務を停止せずに
既存サーバのデータを移行
サーバに格納しきれないデータは、VFP
すでにファイルサーバを運用している
クラウドストレージに移されるからだ。
行は問題なく進んでいく。専用ファイル
の階層ストレージ機能によって、自動的に
して残される。ユーザーからのアクセス
企業にとっては、移行が容易か否かも重
企業内のデータの増大やビッグデータ
要求があった場合には、スタブの情報に
要 な ポ イントと な る 。一 般 的 な N A S
の活用に伴って、irukabox のようなクラウ
基づいてクラウド側からファイルを呼び
( Network Attached Storage )にファイル
ドストレージ の効 果 的な活 用は、データ
出す。つまり 2レイヤで構成された「階層
サーバを移行する場合は、データをすべ
の安全性だけではなく、IT 活用の戦略性
ストレージ」が実現されているのである。
て移行し終わるまで業務を停止しなけれ
を 高 めるうえでも重 要 なアプ ロー チと
災害時の復旧が早いのも、実は階層スト
ばならない。これに対し、irukabox では業
なっていくだろう。
レージの効果なのだ。
こうしたメカニズムを可能にしている
(以
のが、
「 Hitachi Virtual File Platform 」
下、VFP )である。利用企業サイトに設置
する専用ファイルサーバとは、この VFP
●irukaboxが実現している「階層ストレージ」の仕組み
❶書き込まれたファイルをポリシーに従いHitachi Content Platformに複製
なのである。
Hitachi Virtual File Platform
Hitachi Content Platform
ファイル
ファイル
A B
A B
「 V F P をクラウドストレージ( H i t a c h i
Content Platform )と組み合わせれば、も
う大容量のファイルサーバは必要ありま
せん」と日立でストレージ開発を担当する
里山 元章は語る。ファイルサーバが小さ
くなれば、設置スペースも節約でき、消
❷一定条件でHitachi Virtual File Platformからファイルの実体を削除
ただしファイルの属性情報と参照情報はHitachi Virtual File Platformに保持。
また頻繁にアクセスされるファイルは削除せず高速なアクセスを確保。
Hitachi Virtual File Platform
費電力も削減されると指摘する。
「米国
ファイル
でデモを行った時には、まるで魔法のよ
うだと言われました」
(里山)
その一方で竹村氏は、信頼性が高く、
きめ 細 か い 設 定 が 簡 単 に 行えるのも、
ファイル
A B
B
●Hitachi
Virtual File Platformの
ディスク容量を節約
VFP のメリットだと指摘する。設定は Web
ブラウザ でアクセスするウィザード形式
スタブ
A
A
Hitachi Content Platform
ファイルの属性情報・参照情報
❸実体が削除されてもアクセス要求があれば必要部分のみを再度読み出し
で簡単に進めることができ、専門スキル
Hitachi Virtual File Platform
Hitachi Content Platform
がなくても容易に行えるため、システム
ファイル
ファイル
エンジニアや専任担当者を呼ぶ必要がな
い。これも低コスト化に貢献しているとい
B
A
B
B
A B
う。
Hitachi Storage Magazine Vol.8
17
先
進
事
例
シアトルこども病院( Seattle Children's )
http://www.seattlechildrens.org/
最先端医療を担うシアトルこども病院が
仮想デスクトップ(VDI)環境に
日立のストレージ導入で信頼性を確保
子供の救命とヘルスケア向上の役割を担う、高度に専門化した病院、研究機関、財団で構成されるシアトルこども病院。同院は、24時間
365日稼働が求められる仮想デスクトップ(VDI)環境の信頼性を確保するため、
「Hitachi Virtual Storage Platform」と「Hitachi
NAS Platform」を中心とする日立のストレージソリューションを導入した。
クラス最高の製品選択
に利用される小規模なセ
復旧(以下、DR )
すなわち VDI 構想のみならず将来のデータ
ンターも保有している。
増加に対して、堅牢で信頼性が高く、シン
シアトルこども病院は、100 年以上に
そうした中で同院の IT 部門が取り組ん
プルに運用できることを求めました」
渡って、幼少期から青年期の子供の身体
だのが、仮想デスクトップ(以下、VDI )環
面 、感 情 面 、発 育 面を支えてきた。U S
境の構 築である。そこで目指したのは、
ニューズ&ワールド・レポート紙において
クラス最高のハードウェア、ソフトウェア、
は、米国の子供病院の中でトップにラン
ネットワーク機器を導入して、最高の環境
シアトルこども病院の IT 部門は、最適
クされている。また、小児科の約 60 にお
を構築すること。例えば、仮想化環境で
な製品やベンダーを選定するために、調
よぶ専門分野で最先端の臨床治療を提
は、シスコの SAN スイッチファブリック、
査会社ガートナーのシニアアナリストから
供しており、小児医療研究のパイオニア
ハイパーバイザから仮想イメージまで対
アドバイスを受けたり、SI ベンダーに製品
として世界的にも認められている。
応するシトリックスの VDI コンポーネント
選定への参加を求めたりした。
その同院では、患 者の記 録や最 先 端
を採用し、高性能な仮想化環境の基盤を
こうした中で 選ばれ たストレージ が、
の調査データといった重要な情報を多く
構築している。
抱えていることから、それらに対して常に
ストレージ環境に関しても、クラス最高
将来構想にも対応できる機能
(以
「 Hitachi Virtual Storage Platform 」
下、VSP )である。
快適にアクセスできる環境が必要とされ
の環境を求めた。検討にあたっては、従
「日立のソリューションは、VDI プロジェ
ていた。そして、情報は常に増加し続け
来のストレージシステムを一新し、管理
クトに関するすべてのニーズのみならず、
ているため、それらを格納するストレージ
が容易で高速な I/O 性能を備えた装置に
ストレージ環境の一元化と DR という、さ
の拡張性も重要な要件となっていた。
置き換えることを目指した。これらの方針
らに大きな構想にも対応できます。そし
シアトルこども病院の IT 部門は 800 を
について、シアトルこども病院の副院長
て、データセンター統合への潜在能力、
超える物 理 および 仮 想 サー バシステム
でチーフテクノロジーオフィサー( CTO )で
管理ツールを削減する機能、ストレージ
と、医療分野向けのアプリケーションを
もあるウェス・ライト氏は、次のように語っ
環境を本格的にシンプルにする機能も備
運用している。総数 5,500 台分のクライ
ている。
えていました」
(ライト氏)
アント P C 環 境 があるほ か 、プライマリ
「特にストレージに関しては、従来の考
システムを構築するにあたって、日立
データセンターと、テスト環境および災害
え方にとらわれない視点から調査しました。
データシステムズはストレージを納品す
“
18
”
従来の考え方にとらわれない視点から調査する必要があるだろうと。すなわちVDI
構想のみならず将来のデータ増加に対して、堅牢で信頼性が高く、シンプルに運
用できることを求めました
シアトルこども病院 副院長兼CTO
ウェス・ライト氏
Hitachi Storage Magazine Vol.8
るだけでなく、ストレージソリューション
の計画と設計、および VDI の展開も支援
した。
「日立のスタッフは、ディスクレイアウ
ト、利 用 率 、動 的プ ー ルと階 層 化 の 設
計、構成といったストレージ仮想化の設
定に加え、すべてのソフトウェア機 能に
関する最高のノウハウを伝授してくれま
した 」とシ アトルこども病 院 の 主 任 スト
レージエンジニアのリチャード・カーター
氏は評価している。
ストレージ環境の一元化
シアトルこども病 院では、一 元 化スト
レージソリューションとして機能するプラ
イマリデータセンターに VSP を設置した。
この一元化ストレージの一部は、デュアル
(以
ノードの「Hitachi NAS Platform 3080 」
クラスタを活用している。
下、HNAS 3080 )
シアトルこども病院の Citrix VDI サーバ
環 境をシンプ ル に す るに は 、ブ ロック
「 Hitachi Adaptable Modular Storage
とファイル( NAS )の両方をベース
( SAN )
(以下、AMS 2100 )の前に VSP を
2100 」
とするストレージを必要とするが、HNAS
設置。AMS 2100 は VSPを介して接続され
3080 のデュアルエンタープライズサポー
ることから、DR 向けの共通レプリケーショ
ト機能により、1 つのプラットフォームで対
ンソリューションを一本化でき、運用を容
応できる。
「 Citrix は独自のプロビジョニングサー
易にしている。また、
「 Hitachi Universal
Replicator 」ソフトウェアを導入することに
でき、将来のニーズを満たすこともでき
ます」
(ライト氏)
高い費用対効果
日立のソリューションを導入してから、
IT 部門では多くの目標を実 現してきた。
ビスを使用して読み込みイメージを処理
より、データセンターの内外に接続され
特に費用対効果の面では、検討した他の
します。そこではサーバプールを作成し
たストレージ間の非同期によるレプリケー
ソリューションより総所有コストが少ない
ますが、サーバはクラスタ構成ではあり
ションを実 現し、冗 長なサーバ やレプリ
とカーター氏は次のように評価している。
ませんでした。そのため個別にサーバを
ケーションアプライアンスを必要とせず
「ストレージの費用を VDI プロジェクトの
運用していたのです。この状態を解消す
に事業継続性を確保している。
全体コストに組み込みました。VSP の投資
るために、共通のイメージを個々のサー
ほかにも VSP は、スケールアップ、ス
利益率( ROI )は非常に良い値を示してい
バから読み込むのではなく、ファイルサー
ケールアウト、スケールディープの 3D ス
ます。最も大きな効果は、運用コスト
(例
ビスを提供するストレージを適所に配置
ケーリングを提供する。例えば「 Hitachi
えばメンテナンスと費用抑制)、50%少な
し、そこから読 み 込もうと考えました 。
Dynamic Tiering 」を使用して、外部のスト
い設置面積、そして AMS 2100 では冷却
HNAS 3080 には読み込みイメージを提供
レージ資源をまとめて管理し、ブロック、
と電力消費コストが合計 65%の削減にな
する非 常に高 い 性 能と信 頼 性 がありま
ファイル、コンテンツデータの仮想階層ス
りました。今や VSP を介してストレージの
す。そのため、共有イメージの管理がと
トレージ全体のデータを動的に移動させ
運用を一元化しているため、ストレージ
ても簡単になりました」
ることができる。
の担当者を増員する必要もありません。
シアトルこども病院の VDI は、最終的に
5,000 ユーザーに達する予定である。こ
れまでに、2,000 シンクライアントとゼロ
クライアント VDI 装置が導入された。VDI
装置は、起動時にプライマリデータセン
「これで大規模な環境を構築できるば
多くの作業を少ない人員で担えるように
かりか、簡単に拡張することもできます。
なっています」
(カーター氏)
外部ストレージによりスケールディープを
日立のストレージソリューションにより、
実現し、ドライブの増設で規模を拡大し
多くの効果を得たシアトルこども病院だ
たり、プロセッサの能力で性能をスケー
が、
「 VSP の潜在能力を、われわれはまだ
ターの VSP に接続し、仮想イメージを取
ルアップ することが可能です。また VSP
完全には活用できていない」とカーター
得する。
は、必要に応じて非常に細かいレベルま
氏は結論付けている。これを念頭に置い
セ カンダリデ ー タセンター に は 、
で設定できるため、計画に応じた対応が
て、今後の計画を検討していく考えだ。
Hitachi Storage Magazine Vol.8
19
読者の疑
問に答え
る!
A
Q&
ストレージ
Q1
A1
Hitachi Storage Magazine編集部では、本誌 Vol.7に関す
る読者アンケートを実施しました。今回も数百の回答が集まり、スト
レージの最新技術や活用方法、市場動向などに関する疑問・質問
が数多く寄せられました。本企画では、そこからピックアップした疑
問・質問に対し、日立の技術者が明快に答えます。
ファイルデータの重複排除機能を備えたさまざまなストレージ製品が提供されていますが、機能的にどれも同じも
ののように感じます。実際のところ、用途や期待される効果などに違いがあるのでしょうか?
日立 はファイル デ ータの
●図1 ファイルレベルの重複排除
重 複 排 除 機 能を持 つスト
レージ 製 品として 、仮 想
ファイルプラットフォーム「 Hitachi Virtual
ファイルA
ファイルB
ファイルC
ファイルA
実体データ
実体データ
実体データ
実体データ
(以下、VFP )および、バック
File Platform」
(a)
重複排除前
ア ップ 用 途 向 け ファ イ ル ストレ ー ジ
(以下、
「 Hitachi Capacity Optimization 」
HCO)を提供しています。
ファイルデータの重複排除は、大きく2
つの方法に分けられます。ファイル単位
に重複を確認・排除するファイルレベルの
重複排除、およびファイルをさらに細か
い単位(サブファイル)に分割し、その単
ファイルB
ファイルC
(b)
重複排除後
●図2 サブファイルレベルの重複排除
ファイルA
ファイルB
ファイルC
ファイルA
ファイルB
ファイルC
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
4
5
6
4
5
6
4
5
6
4
5
6
4
5
6
4
5
6
実体データ
7
8
9
7
8
9
7
8
9
7
8
9
実体データ
10 11 12
10 11 12
実体データ
(a)
重複排除前
位で重複を確認・排除するサブファイルレ
(b)
重複排除後
:実体データ :重複排除されたデータ
ベルの重複排除です。それぞれに特長が
あり、適した用途、効果が異なります。
■プライマリファイルストレージ用途に適
したファイルレベルの重複排除
し、アクセス頻度の高いファイルを格納・
特に大きな容量削減効果が得られます。
共有するなどファイルサービス性能が要
バックアップ 向けファイルストレージ
求されるプライマリのファイルストレージ
HCO では、このサブファイルレベルの重
用途での重複排除導入に適しています。
複排除方式に加え、さらにバックアップの
対象となるデータの形式や内容にあわせ
ファイルレベルの重複排除では、ファ
イル単位でデータを比較し、実体データ
が同一であれば一方の実体データを削除
■バックアップ用途に適したサブファイル
レベルの重複排除
て複数の重複排除方法から最適な方法を
自動で選択・実行する日立独自の重複排
(参
しもう一方の実体データへのポインタ
サブファイルレベル の重複排除では、
除技術も採用しており、より高い重複排
照情報)
に置き換えることで重複するデー
ファイルを細かな単位に分割・比較して重
除率を実現しています。これらにより HCO
タを排除し、容量を削減します(図1)。
複 部 分を 検 出します 。細 かな、多 数 の
ではバックアップデータ量を約 20 分の 1*1
ファイル単位で比較をするため、デー
データ同士を比較するため、ファイルレ
と大幅に削減することが可能となってい
タの大部分が同じでもほんの少しの差異
ベルの重複排除に比べると処理が重くな
ます。
(修正や追加)があると重複排除が行われ
りますが、一部分が異なるファイル同士
このように同じ重複排除でも、その方
ませんが、一方で、重複排除にかかる処
であっても共通している要素を重複排除
式により特長があり適している用途が異
理が軽く性能へのインパクトが小さいとい
し、より大きな容量削減を実現することが
なります。この点を考慮いただくことで、
うメリットがあります。
できます(図2)。
目的にあったより効 果 的・効 率 的なスト
仮想ファイルプラットフォーム VFP では、
例えば、毎週末にフルバックアップを取
レージシステムを導入いただけます。
このファイルレベルの重複排除方式を採
るような運 用の場 合、先 週 以 前のバック
用しています。多数のクライアントを接続
アップデータとの重複部分が多くなるため、
*1 多世代バックアップ運用時での重複排除の効果。対象データ
の種類および内在比率、およびバックアップ運用方法により変
動します。
20
Hitachi Storage Magazine Vol.8
Q2
A2
プライベートクラウドを実現する場合、ストレージはどのような役割を担うのでしょうか。ストレージの仮想化は必須で
しょうか。それとも、サーバ仮想化だけで対応できるものでしょうか。
サ ー バ 仮 想 化 に より 、
理されますので、仮想ボリュームの追加
レージ階層に最適に自動配置することが
サーバの導入コスト、運用
が実装を意識することなく簡素化して行
できます。これにより、従来まで行ってい
コストの削減が実現できま
え、作業工数の削減が可能となります。
たストレージ階層を意識した性能設計や
また、性能最適化のための物理構成を
データ管理を大幅に低減します。
すが、さらなる効率化を図るためには、以
下のようなストレージの仮想化が重要とな
意識したボリューム配置設計が不要とな
ります。
り、ストレージ性能設計の負担を大幅に
低減できます。
■ボリューム容量の仮想化
ストレージシステム構築あたって、将来
■外部ストレージの仮想化
日立のハイエンドストレージでは、外部
ストレージ の仮 想 化もサポートしていま
■ストレージ階層の仮想化
す。この機能では、他社製を含むさまざま
の予測を含めた従来どおりの最大容量の
近年、多種多様なメディアが混在して
な外部ストレージを仮想的に同一のスト
割り当てでは膨大なストレージが必要とな
いる中、データをそれぞれ特性に応じた
レージであるかのように統合し、一元的
ります。ボリューム容量の仮想化を利用
メディアに保 存 することが重 要ですが、
に管理することが可能となります。また、
すれば、初期導入時の容量を抑え、デー
管理者が手動でデータを割り振ることは
ボリューム容量の仮想化とストレージ階層
タ量の増加にあわせ容易かつ最適なコス
困難です。ストレージ階層の仮想化では、
の仮想化と組み合わせることにより、さら
トで 、容 量を増やして いくことができま
データをボリュームよりも細かい単位で、
なる容量効率化とコスト削減を実現する
す。仮想化された容量はプールで一元管
アクセス頻度に応じて特性の異なるスト
ことができます。
Q3
A3
ストレージにおいて節電に役立つ機能としては、どのようなものがあるのでしょうか。費用対効果は、どれくらい期
待できるものなのでしょうか。
ストレージ の 節 電に 役 立
も言われ、半導体を記憶媒体として使っ
■ストレージ装置内稼働範囲の最適化
つ機能としては、大きく 3
て います 。超 高 速な処 理を要 求される
3 番目に、人の居ない部屋の電気を消
つのグループに分けられ
データの格納先には SSD のような高性能ド
すように、装置の使っていない部分を止
ます 。それは「ストレージ 装 置のエネル
ライブを、データのバックアップやあまり
める、ということが挙げられます 。それ
ギー効率向上」
「ストレージ利用効率の向
使わないデータの格納先にはニアライン
と
は、MAID(Massive Array of Idle Disks )
上」
「ストレージ 装 置内 稼 働 範囲の最 適
SAS や大容量 SATA を、というように使い
いう、非稼働な HDD のディスク回転を止
化」です。費用の効果についてはそれぞ
分けることにより、効率的に省電力が図れ
めるという技術になります。ディスクを回
れの条件によりますが、運用の無駄や効
ます。
転させるためのモータが一番 HDD の電力
を消費していますので、その回転を止め
率化を図り消費電力を抑えることで、継
■ストレージ利用効率の向上
ることで消費電力を大きく削減します。
次にストレージの空き容量を減らして効
例えば、日立ストレージ製品のある構
■ストレージ装置のエネルギー効率向上
率よく使うことが挙げられます。利用効率
成で半数の HDDを MAID により回転停止し
続的な節電が実現されます。
まず、ストレージ装置そのものの消費
の向上は仮想化技術によって実現します。
た場合の試算では、約 40%の電力削減が
電力を小さくすることが挙げられます。ス
「 ボリューム 容 量 の 仮 想 化 」は 、ユー
図れています。
トレージ 装 置には 性 能 や 信 頼 性 が 高 い
ザーに物理的なリソースを意識させずに無
以上、ストレージ装置自体の節電に焦
HDD(ハードディスクドライブ)を搭載しま
駄な空き容量を減らして電力を抑えます。
点を当ててご説明しましたが、装置レベ
すが、データの用途に応じて、少し性能
また、
「ストレージの階層仮想化」技術
ルだけでなく、設備(空調を含む、いわゆ
が落ちても消費電力が小さい、つまりエ
も有効です。管理者には 1 つのストレージ
るデータセンター全体)の電力利用効率
ネルギー効率の良い HDDを搭載すること
論理ボリュームに見えていても、裏側で
ができます。例えば、ニアライン SAS*1ド
は複数種類の物理メディアで構成できま
を高めることも重要となっています。
説明しましたストレージ省電力技術につ
ライブや、大容量 SATA*2ドライブがそれ
す。データ毎にアクセス頻度に従って自
いては下記の URL でもご紹介しています。
に当たります。
動配置するので、あまり使わないデータ
また、高性能でありながら消費電力が
の格納先として大容量、低回転のニアラ
http://www.hitachi.co.jp/products/it/
storage-solutions/solution/03/index02.html
(ソリッドステイト
小さいメディアとして SSD
イン SAS や SATA HDDを活用し、節電の運
ドライブ)
があります。フラッシュドライブと
用を容易にします。
*1 SAS:Serial Attached SCSI
*2 SATA:Serial Advanced Technology Attachment
Hitachi Storage Magazine Vol.8
21
日立ストレージ国内拠点の街を歩く①
小 田 原 さ ん ぽ
【
写真 1 小田原宿なりわい交流館の
小 田 原 城
前を流れる水路。この水が小田原
城の堀へと流れていきます。
写真 2 国道 1号線の脇で見られる
マンホール。この下を流れる水が
堀へと向かいます。
の
水
堀
】
写真 3 芦ノ湖から早川、そして水
路とつながれた水が堀に注がれて
います。
戦国最大規模と言われた小田原城。現在の市街地
全域という巨大な城郭であったと伝わっています。上杉
謙信や武田信玄が攻めきれなかった難攻不落の名城
ですが、守りの要となる水堀は、意外にも江戸時代に
写真 4 学橋から見た正面入口とな
る馬出門土橋(めがね橋)方向の水
作られたとのこと。現存する水堀は、二の丸周辺の東
堀です。
側から南側の部分のみですが、本来であれば、本丸、
二の丸、三の丸の周囲に水堀があったそうです。今回
はその小田原城を取り巻く
「水堀」
をテーマに歩いてみ
ました。まず、小田原城の水堀は、箱根町の芦ノ湖か
ら流れ出る早川から取水しています。その流れは、国道
1 号線沿いの小田原宿なりわい交流館の前を流れる
水路で確認できます
( 写真 1)
。この流れに沿って国道
1 号線を歩くと、
「小田原用水」
と書かれたマンホール
写真 5 堀から出ていく水。役割を
終え、人知れず地下水路へと流れ
ていきます。
が見えてきます
( 写真 2 )
。この下に水路があります。そ
して、その水が小田原城の水堀へ
( 写真 3)
。ということ
は、小田原城の水堀は、芦ノ湖の水だったのですね
( 写真 4 )
。芦ノ湖の水がアーカイブされて水堀に、なん
て考えすぎでしょうか
(笑)
。そして、不要になったデータ
を削除するかのごとく、水堀の水は海に向かって流れて
いきます
(写真5)
。
22
Hitachi Storage Magazine Vol.8
小田原城
住所:神奈川県小田原市城内6-1 小田原城址公園内
電車:JR・小田急電鉄小田原駅から徒歩10分
車 :西湘バイパス「小田原IC」から約5分
V o l . 8
DATA DRIVES OUR WORLD
AND INFORMATION IS THE NEW CURRENCY
〜データは世界を動かす
そして、情報は新しい価値を生み出す〜
データは世界を動かす力を持っています。データに息吹を吹き込むことで、情
報に生まれ変わります。そして、情報は通貨のように世界中で交換され、格納
され、使われることで新しい価値を生み出します。
データと情報は、企業にとって最も重要な資産といえるのです。
DATA DRIVES OUR WORLD
AND INFORMATION IS THE NEW CURRENCY
このビジョンの下、日立ストレージソリューションは、企業が膨大なデータから
価値ある情報を生み出すことを支援していきます。
編集後記
あたまを雲の上に出す
出張帰りの羽田空港に向かう飛行機で
のことです。関東一円が低い雲に覆われて
いました。窓から見る景色は雲ばかりで退
屈だと思っていたら、遠くに富士山が。あた
イメージ写真
(東京スカイツリーと富士山)
まを雲の上に出すと言えば富士山ですから、 こ数年で生み出されたとも言われます。それ
[発 行]
株式会社 日立製作所
情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部
〒140-8573 東京都品川区南大井六丁目26番2号
大森ベルポートB館
SAP、SAP HANA、SAP NetWeaver は、SAP AGのドイツおよびその他世界各国
における登録商標または商標です。
Symantec、ApplicationHAは、Symantec Corporation または関連会社の米国およ
びその他の国における商標または登録商標およびサービスマークです。
VMware、VMware vSphere、VMware vCenterは、米国およびその他の国におけ
るVMware, Inc.の登録商標または商標です。
本誌に記載している会社名・製品などは、それぞれの会社の商標または登録商標です。
本誌記載の内容について社外からの寄稿や発言は、必ずしも当社の見解を示している
わけではありません。画面表示をはじめ、製品仕様は改良のため変更することがあります。
日本人としては釘付けとならざるをえないわ
ほど急激にデータが増えているとのことです
けです。
が、ビジネスの役に立つデータかどうかは活
なんて思っていたら、雲からあたまを出し
用する人次第です。ただ、
さまざまな知見を
ているものが、
もう1つ。それは東京スカイツ
得るには、データは多ければ多いほどよいは
リー。思わぬところで見えた、東京スカイツ
ず。無駄かと思えるようなデータも、実は宝
リーと富士山の共演でした。写真に収めよ
の山かもしれませんから。
うとしましたが、飛行機は着陸態勢に入って
東京スカイツリーのように、あたまを雲の
いて電子機器類が使えず、残念ですが目
上に出してくれれば、その存在に気づきや
に焼き付けるだけでした。完全なアナログカ
すいのかもしれませんが、大抵のデータは
メラだったら撮れたのですが。
雲の下に存在するわけです。それゆえ、スト
東京スカイツリーと富士山のみが見える
レージの役割は、データを効率的に格納す
その様には、景色としてのすばらしさもさるこ
るだけではなく、そのデータを使いやすくする
とながら、雲の上にあたまを出す建造物に
環境を提供することにもあるのです。雲の
思いを馳せることになります。
ない見通しの良い景色。今回の表紙は、
人類が生み出したデータのほとんどは、こ
そのような気持ちも少し込められています。
Hitachi Storage Magazine Vol.8
23
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