Comments
Description
Transcript
URBAN KUBOTA NO.00|2
URBAN KUBOTA NO.00|2 アーバンクボタ NO.21 APRIL 1983 株式会社クボタ ●目次 特集=最終氷期以降の関東平野 ●最終氷期以降の関東平野 1テフラからみた関東平野 __________________________________ 上杉 陽・米澤 宏・千葉達朗・宮地直道・森 2 愼一 2山地と扇状地 ____________________________________________ 18 斉藤享治・磯 望・米澤 宏・ほか8名 3関東平野の≪沖積層≫ ____________________________________ 26 遠藤邦彦・関本勝久・高野 司・鈴木正章・平井幸弘 4下末吉期以降の植生変遷と気候変化 ________________________ 44 辻 誠一郎 補章─1 関東・東海地方の地史からみた関東堆積盆地 __________________ 48 木村敏雄 補章─2 関東地方周辺のプレートシステム ____________________________ 52 伊藤谷生・千葉達朗 発行所=株式会社クボタ 大阪市浪速区敷津東1丁目2番47号 発行日=1983年4月 第4刷=1995年7月 編集製作=(有)アーバンクボタ編集室 表紙デザイン=国東照幸 印刷=大日本印刷株式会社大阪工場 図版作製=巧凡社+スタジオ・ツノ URBAN KUBOTA NO.21|1 ≪沖積層≫の体積(表紙の図参照) 関東平野の2大流域が≪沖積層≫体積の70%を占めるの ●扉写真 古鬼怒湾や古奥東京湾では多くの地質横断面図が得ら は当然といえよう.そこで各流域が一定面積当りどれ ①千葉県夷隅川沿いの国吉層の泥層(②の露頭写真)お 3 れている(第3章図5および図11).またこのほかの低地 だけの体積を有するか,および,体積1km につきどれ よび砂層から産出した底生有孔虫.(写真・関本) でも,多くの地質断面図が作成されている.これら多 だけの後背流域面積(流域面積より低地面積をさしひ ①Ammonia beccarii (LINNE)(×300) 数の断面図をもとに,関東平野の≪沖積層≫の総体積を いた面積)をもつかについて比較してみよう(表参照). ②Valvulineria osakaensis (CHIJl)(×400) 見積った.見積り方法は次の通りである. 涜域当り体積(km3/1km2)では,中川・荒川,鬼怒川・ ③Cribrononion cf. subgranulosum (ASANO)(×400) 関東の主要流域を上図のように9流域にわけ(流域境界 小見川・桜川,千葉湾岸,九十九里,相模川で大きく, ④Cribrononion advenum (CUSHMAN)(×300) は表紙にも示されている),それらをさらに,地質断面 酒匂川,那珂川,久慈川で小さい.体積当り後背流域 ⑤Cribrononion incertum (WILLIAMSON)(×300) 図を1あるいは2含むブロックにわけた.ブロックの総 面積(km3/1km2)についてみるとちようど逆の関係で, ⑥Cribrononion somaense (TAKAYANAGl)(×400) 数は40である.各ブロックの≪沖積層≫体積は,『各 酒匂川,那珂川,久慈川の三流域は, 1km3の≪沖積層≫ ⑦Elphidium crispum (LINNE)(×250) ブロックの断面図により断面積を計測し,さらにこれよ を集積させるために非常に多くの後背流域を必要とし ⑧Cibicides Iobatulus (WALKER and JACOB)(×200) り各ブロックの≪沖積層』平均層厚を求める.この平均 ていることを示している. ⑨Quinqueloculina seminulum (LINNE)(×200) 層厚にブロック面積をかけ,ブロック別の体積を求め 以上のことを総合して考えると,次のようなとらえ方 ①∼③湾奥部の砂泥底に特徴的にみられる種 る』という手順をとった.これらを流域別にまとめた ができるであろう. 中川・荒川,鬼怒川・小見川・桜 ④∼⑥湾中央部の泥底に特徴的にみられる種 のが上表の体積である. 川両流域をはじめとする,関東平野の中心部に位置す ⑦∼⑨湾口部∼沿岸部の砂底に特徴的にみられる種 関東平野の≪沖積層≫の総体積は約90km である.この る流域は,供給土砂量を-定と考えたとき,≪沖積層≫ ②千葉県夷隅川にそう繩文海進期の海成層(国吉層). 数字は,それがたかだか最近3万年間に蓄積されたもの を極めて効率よく蓄積させているといえる.逆に,酒 下部に著しいカキ床がみられ,サンドパイプの発達す であることを考えると,決して小さいものではない. 匂川,那珂川,久慈川等はその効率が悪い.いいかえ る泥層中より底生有孔虫が多く発見される. 例えば,同一の速さで蓄積が進めば,200万年間で6000 れば,外洋へ流出する割合が高いことになる.一方, ③桜川にそう下大島層(④の露頭写真)から産した花 3 3 ' ' ' km となる.いいかえれば,70km四方の範囲に1200m 同様に外洋に直接流出する相模川の場合,内陸側に沈 粉 化 石 (写 真 ・ 辻 ) の厚さの地層が形成されることになる.この量は恐ら 降部をもち,海岸の隆起部がバリアーとなって,外洋 ①モミ属 く上総層群中・上部の体積に匹敵するであろう.また, への流出を妨げ,効率を高めているといえよう.また, カラマツ属 成田層の体積も100km3前後と推定される. 莫大な量のテフラが降下しつづけてきたこの流域は, ナラ属 90km3の総体積の大部分は,中川・荒川低地(40km3) 土砂供給量の上でも関東平野では最大級に位置づけら ①∼⑥下大島Ⅱ帯の寒冷期に優占する要素 と鬼怒川・小貝川・桜川低地(23km 3)によって占めら れると思われ,≪沖積層≫の絶対量に寄与したであろう. ⑦∼⑪下大島Ⅰ帯およびⅢ帯の温暖期あるいは小温暖 れる(約70%).なお,桜川低地の場合霞ヶ浦湖底の≪沖 九十九里平野は他の流域とは成因的に異り,同列の比 期に優占する要素 積層≫を含んでいるが,中川・荒川低地の場合,東京 較はむずかしい. ④桜川の下大島における最終氷期最寒冷期の泥炭層(下 湾を埋めている≪沖積層≫のうち埋立地の沖合の部分 以上のような,供給土砂量を効率的に蓄積し,厚い≪沖 大島層)とそこに挟在する厚さ4cmのAT火山灰.AT火 は含まれていない.これは断面図が得られないためで 積層≫を形成する"器"の生成には,関東平野特有の地 山灰の上位より寒冷期の花粉,その下位より小温暖期 あるが,仮にこの部分が加われば,総体積は更に増し, 殻変動様式が深くかかわっている.これについては本 の花粉を産出する(写真・遠藤). また,この2流域の占める割合も高くなる. 文(第3章42∼43頁)を参照されたい. (遠藤) ②トウヒ属 ③ツガ属 ④力バノキ属 ⑥マツ属(ゴヨウマツ類) ⑦ブナ ⑨シナノキ属 ⑩ニレ属 ⑤ ⑧コ ⑪ハンノキ属