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シグネティックスのNE612を使った『HF用クリコンの製作』 - So-net

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シグネティックスのNE612を使った『HF用クリコンの製作』 - So-net
CQ ham radio 1989 年 5 月号 275~279 頁
NE612 という IC
NE612 という IC
先 々 月 の LC7365 、 先 月 の
LC7385 と CQ ham radio 編集部
から預かっていた IC を消化しま
したが、今月は、ミズホ通信㈱の
JA1AMH 高田 OM からお預かり
していたシグネティックスの
NE612 を使ってみることにしま
す。
この NE612 は、本誌 1988 年 7
月号で JA1ISN 西田 OM が紹介さ
れている“The Neophyte Receiver”に使われている NE602 の改
良型で、中には第 1 図のようにタ
ブルバランスド・ミキサーと局発
May 1989
が入っています。
このようなものには、今までた
び た び 使 っ て き た TA7310 や
TA7320 がありますが、これらは
おもに 27MHz 帯用の PLL 周波数
シンセサイザーの周辺回路に使う
ものでした。ですから、動作周波
数は 30MHz くらいが限度でした。
そのような目でこの NE612 の
電気的特性を眺めてみると、入力
周波数(fin)は 500MHz、局発周
波数(fOSC)は 200MHz となって
おり、V・UHF でも使えるもので
す。
なお、NE612 を使うときにちょ
っと注意しなければならないのは、
電源電圧くらいでしょうか…。最
大定格は 9V、動作電源電圧範囲
は 4.5~8.0V で、12V はいきなり
かけられません。
シグネティックスのデータブッ
クを見ると、NE612 の用途はコー
ドレス電話やポータブル・ラジオ、
VHF トランシーバーなどとなっ
ており、その応用回路には 46/49
MHz のコードレス電話の周波数
変換の例などが示されています。
NE612 でちょっと面白いのは、
局発の部分です。
局発用としてはトランジスタが
1 個用意されており、IC の内部は
第 2 図の右側のようになっていま
275
す。これで、外部に LC 共振回路
をつければ、ハートレー回路やコ
ルピッツ回路が作れます。また、
水晶発振の場合でも基本波発振な
らば無調整回路が簡単に構成でき
ます。
最初にちょっと面白いといった
のはオーバートーン発振回路とす
る場合で、これは第 2 図の右側の
ようになります。
L と C と X の 3 倍の周波数に共
振(これはピアース CB 回路です
から、実際には X より低い周波数
に共振)させることにより、3 倍
オーバートーン発振を実現できま
す。
276
HF 用クリコンの計画
HF 用クリコンの計画
さて、この NE612 はいろんな
用途に使えそうなのですが、今月
はとりあえず HF 用クリコンを作
ってみることにしました。
でも、ただの HF 用クリコンで
は面白くないので、
VHF 用の無線
機しか持っていない人にちょっと
HF をのぞいていただこうという
こともあって、出力周波数を VHF
とするクリコンにしてみようと思
います。
出力周波数を VHF にするとな
ると 50MHz 帯か 144MHz 帯とい
うことになりますが、もしかした
ら以前使っていた 50MHz 帯の無
線機が遊んでいるのではないかと
思い、また局発の周波数の都合な
どもあって、出力周波数を
50MHz 帯として第 3 図のような
計画をたててみました。
このクリコンを計画してみたら、
二つのポイントが出てきました。
CQ ham radio
まず、出力周波数を受信周波数
より高く選んだことによりイメー
ジ周波数が受信周波数より遠く離
れるので、第 3 図のように LPF
を入れることによって入力側の同
調回路が省略できるのではないか
ということです。
たとえば、3.5MHz 帯を例にと
ると局発周波数は 46.5MHz です
からイメージ周波数は 96.5MHz
です。
また 28MHz 帯を例にとると局
発周波数は 22MHz ですからイメ
ージ周波数は 72MHz となって、
いずれもカットオフ周波数(fc)
が 30MHz の LPF で十分に除去で
May 1989
きます。
この計画には実はちょっとした
落とし穴があってこううまくはい
かなかったのですが、考え方は間
違っていません。
つぎに、入力同調回路を省略で
きるのなら、局発さえうまく処理
できれば、オールバンドに対応し
たクリコンが簡単にできると考え
ました。これは、このあとの製作
例でお目にかけますが、うまくい
きました。
話は前に戻って落とし穴のこと
ですが、これは局発の高調波の問
題です。
NE612 の局発をオーバートー
ン発振とした場合の発振出力の周
波数スペクトルについては、
「The
FCZ」誌の No.164 に JH1FCZ 大
久保さんがスペアナで実測した例
が紹介されていますが、2 倍や 3
倍が意外に強そうなのです。そし
て、これを取り去る手だてがあり
ません。
これは 10MHz 帯以下のように
局発周波数が高い場合には問題に
ならないのですが、たとえば
14MHz 帯を例にとると、局発は
36MHz でその 2 倍は 72MHz、こ
れだと 22MHz が受信範囲に入り、
LPF では取りきれません。
そのようなわけで、14MHz 帯
以上ではやはり入力同調回路が必
要だということになってしまいま
した。でも、10MHz 帯以下では
入力同調回路なしのクリコンが可
能です。
HF 用クリコンの作り方
HF 用クリコンの作り方
以上の計画のもとにまとまった
のが、第 4 図の回路です。L1 と C
の入力同調回路は P-P'で切り分け
られるようにし、どちらにも対応
できるようになっています。
つぎは、fc が 30MHz の LPF の
設計です。これには、とてもよい
参考書があります。それは「実用
アナログ・フィルタ設計法」
(今田
悟/深谷武彦共著、CQ 出版社刊)
で、5 次チェビシェフ特性を選ん
で設計してみたのが第 5 図の LPF
です。これで、2 倍の 60MHz で
は 30dB 以上の減衰が得られるは
ずです。
なお、このクリコンではアンテ
ナ入力からの、50MHz 帯の素通
り電波を心配しました。
でも、この LPF の効果もあっ
てか、RS59 の局が近所で運用し
ていてもまったくといってよいほ
ど不感でした。
では、NE612 の局発の部分を見
てください。水晶発振子 X'tal は
ソケットを用意して第 3 図に示し
た各バンドのものを差し替えられ
るようにし、第 2 図の L と C につ
いては C を可変として、第 3 図の
22~46.5MHz を発振させること
にしました。
これは、第 4 図のようなやり方
でうまくいきました。
では、第 4 図に示した部分をそ
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っくリプリント板の上に作ること
にして部品を集めましょう。なお、
第 4 図では入力同調回路として
28MHz 帯用を用意するようにな
っており、第 1 表の部品もこれに
そって作ってあります。
まず、NE612 はミズホ通信で 1
個 300 円(送料 120 円)で購入す
ることができます。水晶発振子は
ソケットを使う関係で HC25/U
(ピン足形)とし、その大部分を
三器電子(☎03-866-9596)で調
達しました。
120pF のフィルム・トリマーは
フィリップス製のもので、斉藤電
気商会(☎03-251-5803)で売っ
ています。
第 6 図が、HF 用クリコンのプ
リント・パターンです。今回使用
した部品の中では、トランジスタ
の 2SC2498 の足の接続が標準の
ものと違っているので注意が必要
です。
プリント板の組み立て(写真 1)
が終わったら、局発がうまく発振
するかどうかを調べておきましょ
う。
TP(テスト・ポイント)に周波
数カウンターをつないだら、まず
22MHz の水晶発振子をソケット
に差し込みます。そして、TC の
フィルム・トリマーを 80~90%入
れたところで 22MHz を発振すれ
ば OK です。
なお、このテストの途中で、5
・
倍オーバートーンの 36.6MHz の
発振を体験しました。
22MHz がうまくいったら、今
度は 46.5MHz の水晶発振子を差
し込んでみます。フィルム・トリ
マーをかなり抜いたあたりで
46.5MHz を発振したでしょう。
このテストがうまくいけば、第
3 図に示した局発の水晶発振は 3
倍オーバートーンですべてうまく
発振するはずです。
うまくいったところで写真 2、3
(タイトルの写真も参考に)のよ
うにケース(リードの PS-1)に入
れ、手持ちの 50MHz 帯用の無線
機(IC-502 と IC-505)をつない
でみたら、みごとに働いてくれま
した。
まず P 端子に 2m ほどのビニー
ル線をアンテナとしてつなぎ、
7MHz 帯を受信してみましたが、
本当にバリバリと入感してきます。
つぎに P-P'をつないで 28MHz
帯を受信してみましたが、3 月 18
日午前中、小笠原に移動中の JA7
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CQ ham radio
OWD/JD1 やこれを呼ぶ局が受信
できました。
この HF 用クリコンは、VHF
の無線機しか持っていない人がち
ょっと HF の SWL を楽しもうと
いったような用途には、ぴったり
といえるでしょう。
なお、写真 1 に示したものはア
ンテナ入力に 1kΩのバリオーム
をアッテネーター用として入れ、
入力オーバーになるのを防いでい
ます。
おまけを一つ!
おまけを一つ!
皆さんも、もうすでにご承知の
ように、今年の 7 月からニュー・
バンドの 18MHz 帯(18.068~
18.168MHz ) と 24MHz 帯
(24.890~24.990MHz)が開放さ
れますが、その前にちょっとバン
ドの様子をのぞいておこうという
ことで、24MHz 帯用のクリコン
May 1989
を NE612 で作ってみました。
第 7 図が回路図で、出力周波数
はやはり 50MHz 帯を選んであり
ます。
これで、局発を 26.0MHz とす
る と 、 24.890 ~ 24.990MHz は
50MHz 用無線機のダイヤル上で
は、50.890~50.990MHz で受信
できることになります。
第 2 表が、24MHz 帯用クリコ
ンの組み立てに必要な部品の一覧
です。部品表を書いていて、この
クリコンでは抵抗器を 1 個も使わ
ないのに気がつきました。
第 8 図が、24MHz 帯用クリコ
ンのプリント・パターンです。加
工がすんだら、部品を取り付けて
組み立てます(写真 4)。
組み立てが終わったら、TP に
周波数カウンターをつないで、L2
を調整します。
局発がうまく発振すれば、これ
で完成です。
完成したところで早速 SWL を
試みたのですが、この原稿を編集
部に渡すまでの間には何も受信で
きませんでした。
何が聞こえてくるか楽しみなの
で、しばらく 24MHz 帯の SWL
を楽しんでみようと思っています。
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