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V字回復を実現した 「現場を歩き回る経営」の 実態とは
ヘイからのお知らせ ヘイ・マネジメントセミナー 「オンライン報酬データサービスPayNet説明会のご案内」 ∼国内他社比較はもとより、海外関連会社の報酬管理にも威力を発揮します∼ 激しく変化する経済情勢に対処するため、人事施策の見直しに取り組む企業が増える中、人的資源管理のベースと して国内外における「人件費・報酬」マネジメントが重視されています。そのために、自社の人的資源管理を効率的に Vol.13 No. 1 オンライン 情 報 で マ ネジメントでき 、長年継 続 的 にご活 用 い た だ ける、ヘ イグ ル ープ の 報 酬 デ ー タ サ ービ ス 「PayNet」 ( ペイネット)が、お役に立つ場面が増えています。PayNetは、世界70カ国以上で使われているグロー バルな報酬データベースで、国別、職種別、職務レベル別データなど、さまざまな角度から確認し、貴社のグループ 2012 会社管理に活用していただくことができます。もちろん、日本国内の他社比較などにもお使いいただけます。 Contents このPayNetの仕組み、使い方、活用事例などをご紹介する説明会を、シリーズで開催いたします。ぜひご参加ください。 参加対象 給与担当、人事企画、海外関連会社担当など人事関連業務につかれている方、 および報酬調査サービスにご関心をお持ちの方々 p.2 V字回復を実現した 「現場を歩き回る経営」の 実態とは ・2012年 2月24日(金) 15 : 30 ∼18:00 開催日時 ・2012年 3月 9 日(金) 15:00 ∼17:30 ・2012年 4月13日(金) 15:00 ∼17:30 ・主 な 内 容:●基本活用編 ①PayNetの概要 ②ケーススタディ ③調査手法について ④質疑応答 ※5月以降は、応用編、業界別活用編も実施予定です。 新築市場の低迷などにより不振に陥ったパナソニック電工の住建部門を 短期間で再飛躍に導いた、強力なリーダーシップとモチベーション向上策 ・会 場:ヘイグループ虎の門オフィス会議室(東京 地下鉄虎の門駅 徒歩3分) ・参 加 費:いずれも無料 ● お申込み方法 : 井戸氏 ヘイグループ・ウエッブのセミナーご案内ページからお申込みください 「社員のモチベーションこそ 企業成長の原動力です」 http://www.haygroup.com/jp/ は、世界50ヵ国近くに86あまりのオフィスを構え、 2600人以上のコンサルタントを抱える世界最大の人事経営コンサルティング 高野 研一 (株)ヘイ コンサルティング グループ 代表取締役社長 先端企業ケーススタディ31 グループ売上約3000億円、社員約2万人のITホールディングスグループの中で、 TIS社は長年にわたりダイバーシティ推進に注力してきた 会社として広く認知されております。 小野田 祐子 執行役員 日本支社は1979年に東京に開設され、各産業界を代表する数多くの日本企業や在日外資系企業に対して、人事制度の改革、人材能 21世紀に入り、ますます複雑化する人事・組織の課題解決に真正面から取り組んでおられるマネジメントの皆様に対して、最も頼 パナソニック株式会社エコソリューションズ社副社長 (2011年末まで、パナソニック電工株式会社専務取締役) 独立系システム・インテグレーター TIS社のダイバーシティ推進策 てまいりました。ヘイシステムはフォーチュン1000社の過半数以上でも採用され、報酬制度の世界標準となっております。現在 れるビジネス・パートナーとして、今後とも満足度の高いサービスを提供していきたいと考えております。 井戸 正弘 p.8 ヘイグループは1943年に米国フィラデルフィアで創設され、過去60年以上にわたり人事・組織に関わるコンサルティングを展開し 力の開発、報酬制度の設計のみならず、企業変革のアーキテクトとして各種コンサルティング・サービスを提供してまいりました。 シリーズ/経営イノベーション対談 9 TIS株式会社 小野田氏 「制度づくりに加えて、それがい かに有効に運用されているかが 大事です」 p.12 HAYマネジメントセミナー 日本企業にとってのMust Win Battle ̶グローバル人材マネジメ ント 日本企業がグローバル人材マネジメントを確立するためには、どのような問題があるのか、 また、どうすれば確立できるのか。ヘイグループがおこなったアンケート調査をもとにご提案します。 〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-8-1 虎の門三井ビルディング10階 TEL 03-5157-7878 FAX 03-5157-7879 ヘイグループのニュースレターは、そのとき どきに求められる変化や進 歩について、さま Hayコンサルティンググループ プリンシパル、Business Solution / Client Relationship ヘイグループ Development /Building Effective Organizationsプラクティス North East Asia ヘッド 滝波 純一 ざまな企業とご一緒に学び、 分析し、提案し てまいります。 小さい媒体ですが、多くの企業の皆様とと ● Hay Group Newsletter Vol.13 No.1 2012 ● 2012年 1月発行 ●編集協力(有)MGI ●撮影 大澤 誠 ●印刷(株)ティー・プラス ●発行人 浅川 港 Hay Group 2012( 本誌記事・写真の無断複写・転載はご遠慮ください) もに、 ビジネスの革新を通じて社会に貢献す る一 助でありたいと考えております。 p.16 ヘイからのお知らせ 9 V字回復を実現した 「現場を歩き回る経営」の 実態とは パナソニック株式会社 エコソリューションズ社副社長 (2011年末まで、 パナソニック電工株式会社専務取締役) 井戸 正弘 (株)ヘイ コンサルティング グループ 代表取締役社長 高野 研一 井戸 私が実践してきたのは「現場力のある経営」 そして三つ目に、経営方針を徹底するための縦串 ということです。これをぶれずにやってきました。参考 が通っていないという問題がありました。私はこの問題 にしたのは、 「現場を歩き回る経営=management を認識したときに、全社の方針を現場の隅々、営業最 by walking around」 という、世界的に知られる経 前線にまで届かせなければだめだと思ったのです。 営手法です。 まさしく私自身が現場を歩き回り、社内 そこで、即座に全国で『タウンミーティング』を開くこ だけでなく、取引先にも足を運び、 「いま、現場で何 とを決めました。 ショールームの女性プランナーから営 が起きているのか」を生の声から拾い上げて、社内 業マンまで、営業部長を除いた現場のすべての社 外の実情、問題点を、 リアルタイムに把握することを 員を集めて、 「いま、何が問題なのか?」 、 「何が起き ているのか?」 、 「何をどうしてほしいのか?」 ということ を、腹を割って話す機会をつくりました。 改革のゴールイメージは “経営する組織”への変貌 井戸 正弘(いど まさひろ) 1956年生まれ。1980年松下電工株式 会社 (後にパナソニック電工株式会社) 入社。営業部門を経て、 2006年執行役 員、2008年上席執行役員・住健マーケ ティング本部長、 2009年取締役、 2010 年常務取締役、 2011年4月に専務取締 役。2012年1月1日、パナソニック電工 株式会社とパナソニック株式会社の合 併に伴い、 パナソニック株式会社 エコソ リューションズ社副社長 (経営企画担当) に就任。 高野 「何をしたらいいのかわからない」 といった空 気が、現場に蔓延していたわけですね。また、皆の ベクトルも合っておらず、差し迫った課題として、組 織がバラバラな状態を一つにまとめなおす必要が あったということですね。 先にうかがっておきたいのですが、それらの課題 を解決していくに当たって、明確なゴールイメージは お持ちでしたか? ※2012 年 1月1日、パナソニック電工株式会社はパナソニック株式会社と合併し、現在は、パナソニック株式会社 エコソリューションズ社が、旧パナソニック 電工の本社組織を引き継いでいる。この対談は、2011 年 12月に行われました。 高野 研一 井戸 営業において最も重要なことは、決めた目標 をやりきるということです。我々は製品をつくって売る パナソニックグループにおいて、主に、電設資材や建材・住宅設備に強みを持ち、主要メンバー 徹底してきました。そのとき、実際に現場を歩き回っ メーカーですから、本来であれば、つくった分をすべ の一角を担ってきたパナソニック電工。厳しさを増す経済情勢や少子化傾向により、住宅着工 て知り得た大きな問題が三つありました。 て売れば在庫はゼロです。 ニーズが頭打ちとなる中、2008 年に同社の住建マーケティング本部長に就任した井戸正弘氏。 高野 それは、どのような問題ですか? しかし、販売する側が、自分たちの立てた販売計 井戸氏は住建部門の再飛躍に尽力し、3 年半という短期間で、約 200 億円に及ぶ営業利益改 井 戸 まず一つ目がブランド意識です。当時は『ナ 画に対して無頓着でいれば、在庫は膨らむだけで 善を成し遂げた。その鍵は、 「現場を歩き回る経営」の実践にあるという。 ショナル』 というブランドを引き継いで、強者の戦略か す。ですから、一つ大きなゴールイメージとして持っ ら入っていたわけです。しかし、市場シェアは上がら ていたのは、我々は“ 経営する組織 ”に変わらなけ 企業は決して発展できません。そのことを、私はこの ないし、社員のモチベーションは落ちていく。どうして ればいけないということです。ビジネスにおける信頼 4 年間でつくづく感じました。 いいのかわからないという状況がありました。 関係というのは、コミットメントが何回守られたかによっ 社員のモチベーションがなければ 企業は絶対に発展できない 高野 具体的にはどのような策を打ってこられた 我々は流通向けのルート営業であって、B to Cのビ て成立するわけで、今後は経営という視点を一人ひ 高野 井戸さんはパナソニック電工で、2008年に、そ のですか? ジネスではありません。B to B to Cのビジネスであり、 とりが持ち、計画は必ず実行し、達成する。そして れまでの電材部門から異動されて、住建マーケティン 井戸 主なところでは、全国の社員と対話するため 取引先のBのほうから見たときに、当社に対する期待 我々は“経営する組織” に変わらなければならない グ本部の本部長に就任されたわけですが、当時は住 の『タウンミーティング』 、成績優秀者を対象にした 感が薄れてしまっている。また、Cに対する取り組みも と、2008 年の方針発表で宣言しました。 不十分な中で、競争軸というものを見失っていました。 よくあるように「計画数字には届きませんでした、 付けた能力開発塾、女性躍進活動、さらに次世代 どう戦っていいかわからなかったのです。 しかし前年比はクリアしました」 という言い訳を求め とりわけ、 どのあたりに力点を置いてこられたのですか? 人材の育成を含めたサクセッション・プランにも注力 二つ目は勝ちパターンの欠如です。 ブランド強者の ているのではなく、問題解決に全力を注いでほしい、 井戸 企業というのは、何を置いても “人”だと思っ してきました。 戦略で、上からの目線で考えていると、実状とかけ離 あるいは、できない理由を並べるのではなくて、でき ています。いくら立派なリーダーがいて、立派な器が 高野 その結果、48 億の営業赤字から3 年間で約 れるばかりで、勝ちパターンは生まれません。いかに る方法を考えよう。 「こういうふうにすれば、約束し あったとしても、それだけではだめです。重要なのは、 150 億のプラスに転じられたわけですが、改革のビ 現場を回っていないか、見ていないかということになり た目標を達成できる」 ということを考える組織に変わ そこに働く社員のモチベーションであり、社員が会社 ジョンといいますか、多様な施策を貫く柱となるものは ますが、私はあえて「弱者の戦略」 ということで、原点 らなければいけないと訴えました。 に対する思いを前向きに遂げることができなければ、 あったのでしょうか。 に立ち返って学ぶ必要性を訴えました。 高 野 本部長に就任された2008年の方針発表が、 建部門の業績が上がらず、苦しい時期でした。そこで、 『セールスキャンプ』 、私の名にちなんで『井戸塾』 と名 就任直後から部門の改革に着手してこられましたが、 9 V字回復を実現した 「現場を歩き回る経営」の 実態とは パナソニック株式会社 エコソリューションズ社副社長 (2011年末まで、 パナソニック電工株式会社専務取締役) 井戸 正弘 (株)ヘイ コンサルティング グループ 代表取締役社長 高野 研一 井戸 私が実践してきたのは「現場力のある経営」 そして三つ目に、経営方針を徹底するための縦串 ということです。これをぶれずにやってきました。参考 が通っていないという問題がありました。私はこの問題 にしたのは、 「現場を歩き回る経営=management を認識したときに、全社の方針を現場の隅々、営業最 by walking around」 という、世界的に知られる経 前線にまで届かせなければだめだと思ったのです。 営手法です。 まさしく私自身が現場を歩き回り、社内 そこで、即座に全国で『タウンミーティング』を開くこ だけでなく、取引先にも足を運び、 「いま、現場で何 とを決めました。 ショールームの女性プランナーから営 が起きているのか」を生の声から拾い上げて、社内 業マンまで、営業部長を除いた現場のすべての社 外の実情、問題点を、 リアルタイムに把握することを 員を集めて、 「いま、何が問題なのか?」 、 「何が起き ているのか?」 、 「何をどうしてほしいのか?」 ということ を、腹を割って話す機会をつくりました。 改革のゴールイメージは “経営する組織”への変貌 井戸 正弘(いど まさひろ) 1956年生まれ。1980年松下電工株式 会社 (後にパナソニック電工株式会社) 入社。営業部門を経て、 2006年執行役 員、2008年上席執行役員・住健マーケ ティング本部長、 2009年取締役、 2010 年常務取締役、 2011年4月に専務取締 役。2012年1月1日、パナソニック電工 株式会社とパナソニック株式会社の合 併に伴い、 パナソニック株式会社 エコソ リューションズ社副社長 (経営企画担当) に就任。 高野 「何をしたらいいのかわからない」 といった空 気が、現場に蔓延していたわけですね。また、皆の ベクトルも合っておらず、差し迫った課題として、組 織がバラバラな状態を一つにまとめなおす必要が あったということですね。 先にうかがっておきたいのですが、それらの課題 を解決していくに当たって、明確なゴールイメージは お持ちでしたか? ※2012 年 1月1日、パナソニック電工株式会社はパナソニック株式会社と合併し、現在は、パナソニック株式会社 エコソリューションズ社が、旧パナソニック 電工の本社組織を引き継いでいる。この対談は、2011 年 12月に行われました。 高野 研一 井戸 営業において最も重要なことは、決めた目標 をやりきるということです。我々は製品をつくって売る パナソニックグループにおいて、主に、電設資材や建材・住宅設備に強みを持ち、主要メンバー 徹底してきました。そのとき、実際に現場を歩き回っ メーカーですから、本来であれば、つくった分をすべ の一角を担ってきたパナソニック電工。厳しさを増す経済情勢や少子化傾向により、住宅着工 て知り得た大きな問題が三つありました。 て売れば在庫はゼロです。 ニーズが頭打ちとなる中、2008 年に同社の住建マーケティング本部長に就任した井戸正弘氏。 高野 それは、どのような問題ですか? しかし、販売する側が、自分たちの立てた販売計 井戸氏は住建部門の再飛躍に尽力し、3 年半という短期間で、約 200 億円に及ぶ営業利益改 井 戸 まず一つ目がブランド意識です。当時は『ナ 画に対して無頓着でいれば、在庫は膨らむだけで 善を成し遂げた。その鍵は、 「現場を歩き回る経営」の実践にあるという。 ショナル』 というブランドを引き継いで、強者の戦略か す。ですから、一つ大きなゴールイメージとして持っ ら入っていたわけです。しかし、市場シェアは上がら ていたのは、我々は“ 経営する組織 ”に変わらなけ 企業は決して発展できません。そのことを、私はこの ないし、社員のモチベーションは落ちていく。どうして ればいけないということです。ビジネスにおける信頼 4 年間でつくづく感じました。 いいのかわからないという状況がありました。 関係というのは、コミットメントが何回守られたかによっ 社員のモチベーションがなければ 企業は絶対に発展できない 高野 具体的にはどのような策を打ってこられた 我々は流通向けのルート営業であって、B to Cのビ て成立するわけで、今後は経営という視点を一人ひ 高野 井戸さんはパナソニック電工で、2008年に、そ のですか? ジネスではありません。B to B to Cのビジネスであり、 とりが持ち、計画は必ず実行し、達成する。そして れまでの電材部門から異動されて、住建マーケティン 井戸 主なところでは、全国の社員と対話するため 取引先のBのほうから見たときに、当社に対する期待 我々は“経営する組織” に変わらなければならない グ本部の本部長に就任されたわけですが、当時は住 の『タウンミーティング』 、成績優秀者を対象にした 感が薄れてしまっている。また、Cに対する取り組みも と、2008 年の方針発表で宣言しました。 不十分な中で、競争軸というものを見失っていました。 よくあるように「計画数字には届きませんでした、 付けた能力開発塾、女性躍進活動、さらに次世代 どう戦っていいかわからなかったのです。 しかし前年比はクリアしました」 という言い訳を求め とりわけ、 どのあたりに力点を置いてこられたのですか? 人材の育成を含めたサクセッション・プランにも注力 二つ目は勝ちパターンの欠如です。 ブランド強者の ているのではなく、問題解決に全力を注いでほしい、 井戸 企業というのは、何を置いても “人”だと思っ してきました。 戦略で、上からの目線で考えていると、実状とかけ離 あるいは、できない理由を並べるのではなくて、でき ています。いくら立派なリーダーがいて、立派な器が 高野 その結果、48 億の営業赤字から3 年間で約 れるばかりで、勝ちパターンは生まれません。いかに る方法を考えよう。 「こういうふうにすれば、約束し あったとしても、それだけではだめです。重要なのは、 150 億のプラスに転じられたわけですが、改革のビ 現場を回っていないか、見ていないかということになり た目標を達成できる」 ということを考える組織に変わ そこに働く社員のモチベーションであり、社員が会社 ジョンといいますか、多様な施策を貫く柱となるものは ますが、私はあえて「弱者の戦略」 ということで、原点 らなければいけないと訴えました。 に対する思いを前向きに遂げることができなければ、 あったのでしょうか。 に立ち返って学ぶ必要性を訴えました。 高 野 本部長に就任された2008年の方針発表が、 建部門の業績が上がらず、苦しい時期でした。そこで、 『セールスキャンプ』 、私の名にちなんで『井戸塾』 と名 就任直後から部門の改革に着手してこられましたが、 にしたらお客さまに大変喜んでいただいたので、全 ンプ』 もそうですが、 トップの人間をさらに上げる。80 ンだったわけですね。 それを声を大にして発信されて、 国展開したらどうですか?」 と、極めてポジティブな意 点を100 点に、100 点を120 点に引き上げるための施 社員の皆さんには大きなインパクトがあったでしょうね。 見が入ってきました。私はそれに対して、すべて回 策です。そして、120 点に上がれば、60 点の人間が 答しています。その場で解決できるものは解決するし、 80点まで引っ張られるのです。それに加えて重要な できないものは後日に回答します。この仕組みも、 「現 ことは、全員が一つのベクトルで前進することです。 場を歩き回る経営」の一環として、現場の意見を拾 また一方で、数字に基づいた育成計画というの い上げるための非常に有効な手段になっています。 は理を得ているのですが、だれもが納得できる形に 「現場力のある経営」 を実行していくためのスタートライ 「現場を歩き回る経営」を 多様な手段を講じて実践 井戸 そうですね。ただ、 「現場を歩き回る経営」で すから、発信するだけではなく、 トップも積極的に動 高 野 そのようにして、現場と直接的にかかわりな するために、ヘイグループ、特に高野さんにサポート がら、意識変革につなげていくわけですね。例えば、 していただいたわけです。外から見て、 「住建部門 はこうあるべき」 ということを客観的に判断してもらう 『タウンミーティング』で何か印象に残った場面はあり かなければなりません。 ますか? ためです。 私自身、全国の代理店、販売店、その先の工務店、 井 戸 まず開口一番出てくるのは、 「どうせ、無理 中にいると、完全に客観的な判断というのは難し さらにその先まで歩き回りました。すると、取引先から でしょう」 といった否定的な言葉でした。それまでにも、 くなりますから、ヘイさんに入ってもらって、あらため いろいろな意見を聞けるし、不満も出てくるわけです。 「ここがおかしい」 、 「これは変えてほしい」 と言ってき てトータルに見てもらいました。結果として、住 建 ナショナル、パナソニック電工がいやだというのではな たけれど変わらなかったのだから、だれが来たって マーケティング本部という組織を大きくレベルアップさ く、現場における営業そのものが取引先とかけ離れ 同じでしょうと、実にネガティブな空気だったのです。 せることができました。 ている。だから、それを私自身の目で見て、私が指 あるいは「これはパフォーマンスでしょう」 といった反 示すれば、受け入れるしかなくなるわけです。 応が返ってきたことは、強く印象に残りました。 私が 電材部門から住建部門に来て、周りには これを変えなければいけないということで、以降、 「住建のことはわからないだろう」 という思惑も当然 あったと思います。しかし、営業部長なり所長なりが、 「社員を “認める” ことで、 自分た ちが経営を支えているのだ、 と いう意識が芽生えるのです」 ながら、解決してこられたわけですね。 私は、人事政策というのは、決して簡単なもので 冒頭に、 『セールスキャンプ』や『井戸塾』、さらに はないと思うのです。右肩上がりでも右肩下がりで サクセッション・プランの充実にも力を注いでおられる も、いかに優秀な人材を育成していくか。営業成 というお話がありました。つまり、ご自身で問題解決 績だけでなく、モチベーション的にも人間的にも、こ り組みました。 に当たられるだけでなく、次にそこを担う次世代リー れから会社を引っ張っていこうという120 点の人材、 「言っても無駄」 「どうせ無理」の一掃に徹底的に取 現場を回ってすべて把握しているかといえば、実は そして、 もう一つ重要なことは、社員を「認める」こ ダーの育成にも注力してこられたわけですが、一つ それをいかに見つけ出し、プールして育成していく そうでもありません。現場で何が起きているのか、な とです。例えば従来であれば、住建の現場は毎晩 の事業部門でそこに切り込むというのは極めて特徴 か。そこが重要だと思いますね。 ぜパナソニック電工、当時の松下電工の商品が売 10 時、11 時まで残業して、土日は展示会に立ち会う。 的だと思います。 高 野 私は4 年近く、研修や人材アセスメントの面 れないのか。家づくり、あるいは住宅設備がどういう 『タウンミーティング』で、現場の人間がこの話をする でサポートさせていただきましたが、井戸さんにとっ 方向に向かっているのか、また、当社の営業のやり わけです。それに対する業績のリターンはほとんどな て重要な人材が育ったというようなことがあれば教 方のどこが間違っているのか、現場を回っていなけ いんです。要するにパフォーマンスや慣習で、何とな れば明確な理由づけができないのです。 く形だけがそうなっていた。 「ああ、これではだめだ 同じ意味で、トップ自らが社員一人ひとり、ショー な」 と感じ、現場の目線で仕組みを変えていきました。 ルームの女性や派遣社員に至るまで、きちんと対話 そうこうして1 巡、2 巡したときに、現場は「何か 井戸 従来のやり方というのは、年次別、あるいは ンサルタントに入ってもらって、何年間か長期で見て できて、そこから現場の状況や意見が入ってくると 言ったら、聞いてくれるんじゃないか」 、 「実際に変 成績別、業績評価別に、次のトップを決めていくと もらうという例は、まずないでしょうね。 したら、ものすごくタイムリーに状況を把握できるわ わったんじゃないか」 となっていくわけです。変わった いうやり方だと思います。しかしそうではなく、優秀 私がこれを続けてきたのは、 「本当に何が問題 けです。これは大変だけれども、非常に大きな意味 内容は、細かいことから大きなことまであります。会 な人材を育成、プールしておく施策が絶対に必要だ か」を、高野さんに感じ取っていただくためです。例 があります。 社の根幹にかかわるような仕組みを変えたこともあり と私は思っています。 えば、断片的に1 回、2 回、研修会をやってもらった 高野 そこがまさに、 『タウンミーティング』の狙いだっ ました。大きな予算が必要なら、当社のトップに掛け 高野 おっしゃる通りですね。 としても、わからないと思います。そこをはっきり見極 たわけですね。現場の声を、社内からくまなく拾い 合うこともあります。だから、 皆がびっくりするわけです。 井 戸 例えばサムスンなどは、一人の上司に200 めてもらうことが必要なのです。研修であれば、そ 成績優秀者をさらに引き上げれば 組織のポテンシャルが底上げされる えていただけますか? 井戸 会社全体としては、人事部が人事政策を見 ています。その中で、ワンユニットが継続的に外部コ 上げるための仕組みとして機能させる。そして、現 言えばやってくれるんだ、 「どうせ無理」 じゃない 人の部下がいるとすれば、1 番から200 番まですべ れを受けた社員がどういうことを感じたか、そして、 場からのタイムリーな情報に沿って問題を解決し、 んだ、我々が経営を支えているんだと実感し、徐々 て順位を付けて、業績が悪化したときには下位の どういう成長を遂げたかということが重要です。 同時にスピーディで的確な経営判断につなげていく。 に意識が変わってくるのです。 50 人を切るような厳しい人事政策を敷いていると聞 実際、いままで4 年近く見ていただいて、 「営業部 井戸 そうです。加えて、いつでも私宛に電子メー 『タウンミーティング』 というのは、絶対に年齢や役職 きます。しかし単に成績だけではなく、交渉力なり知 長にふさわしい」 という人材が大勢出てきたわけです。 ルで意見を投稿できるようにしました。親しみを感じ で区切ることはしません。ショールームの接客係から派 識なりも評価軸に入ってくるわけで、彼らは切磋琢 本当の意味で見極めをしていただいて、 「この人材 てもらうために『井戸端会議』 とネーミングしました。 遣社員まで参加してもらいます。現場で仕事をしてい 磨して「自分は下位の 50 番に入らないようにしよう。 は大丈夫です」 と意見をもらって、それを参考に人事 ここには400 から500 通ほどの投稿実績があります るすべての人を受け入れ、 「いま、何が起きている、 そ できたらトップクラスに入ろう」と努力するのです。 を遂行できたというのが大きなポイントだと思います。 が、現場の女性なり担当者から、 「いま、現場でこん して、 こんなことになっている」 と声を出してもらいます。 そこが、いま日本企業とすごく差がついている理由 やるなら計画的に継続的にやる。だれそれがい なことが起きて困っています」 、あるいは「こういうふう 高 野 リーダーが現場を直接見て、問題を共有し で、我々の後継者育成計画というのは、 『セールスキャ なくなっても、 ちゃんと次の人材がいるというのが人 にしたらお客さまに大変喜んでいただいたので、全 ンプ』 もそうですが、 トップの人間をさらに上げる。80 ンだったわけですね。 それを声を大にして発信されて、 国展開したらどうですか?」 と、極めてポジティブな意 点を100 点に、100 点を120 点に引き上げるための施 社員の皆さんには大きなインパクトがあったでしょうね。 見が入ってきました。私はそれに対して、すべて回 策です。そして、120 点に上がれば、60 点の人間が 答しています。その場で解決できるものは解決するし、 80点まで引っ張られるのです。それに加えて重要な できないものは後日に回答します。この仕組みも、 「現 ことは、全員が一つのベクトルで前進することです。 場を歩き回る経営」の一環として、現場の意見を拾 また一方で、数字に基づいた育成計画というの い上げるための非常に有効な手段になっています。 は理を得ているのですが、だれもが納得できる形に 「現場力のある経営」 を実行していくためのスタートライ 「現場を歩き回る経営」を 多様な手段を講じて実践 井戸 そうですね。ただ、 「現場を歩き回る経営」で すから、発信するだけではなく、 トップも積極的に動 高 野 そのようにして、現場と直接的にかかわりな するために、ヘイグループ、特に高野さんにサポート がら、意識変革につなげていくわけですね。例えば、 していただいたわけです。外から見て、 「住建部門 はこうあるべき」 ということを客観的に判断してもらう 『タウンミーティング』で何か印象に残った場面はあり かなければなりません。 ますか? ためです。 私自身、全国の代理店、販売店、その先の工務店、 井 戸 まず開口一番出てくるのは、 「どうせ、無理 中にいると、完全に客観的な判断というのは難し さらにその先まで歩き回りました。すると、取引先から でしょう」 といった否定的な言葉でした。それまでにも、 くなりますから、ヘイさんに入ってもらって、あらため いろいろな意見を聞けるし、不満も出てくるわけです。 「ここがおかしい」 、 「これは変えてほしい」 と言ってき てトータルに見てもらいました。結果として、住 建 ナショナル、パナソニック電工がいやだというのではな たけれど変わらなかったのだから、だれが来たって マーケティング本部という組織を大きくレベルアップさ く、現場における営業そのものが取引先とかけ離れ 同じでしょうと、実にネガティブな空気だったのです。 せることができました。 ている。だから、それを私自身の目で見て、私が指 あるいは「これはパフォーマンスでしょう」 といった反 示すれば、受け入れるしかなくなるわけです。 応が返ってきたことは、強く印象に残りました。 私が 電材部門から住建部門に来て、周りには これを変えなければいけないということで、以降、 「住建のことはわからないだろう」 という思惑も当然 あったと思います。しかし、営業部長なり所長なりが、 「社員を “認める” ことで、 自分た ちが経営を支えているのだ、 と いう意識が芽生えるのです」 ながら、解決してこられたわけですね。 私は、人事政策というのは、決して簡単なもので 冒頭に、 『セールスキャンプ』や『井戸塾』、さらに はないと思うのです。右肩上がりでも右肩下がりで サクセッション・プランの充実にも力を注いでおられる も、いかに優秀な人材を育成していくか。営業成 というお話がありました。つまり、ご自身で問題解決 績だけでなく、モチベーション的にも人間的にも、こ り組みました。 に当たられるだけでなく、次にそこを担う次世代リー れから会社を引っ張っていこうという120 点の人材、 「言っても無駄」 「どうせ無理」の一掃に徹底的に取 現場を回ってすべて把握しているかといえば、実は そして、 もう一つ重要なことは、社員を「認める」こ ダーの育成にも注力してこられたわけですが、一つ それをいかに見つけ出し、プールして育成していく そうでもありません。現場で何が起きているのか、な とです。例えば従来であれば、住建の現場は毎晩 の事業部門でそこに切り込むというのは極めて特徴 か。そこが重要だと思いますね。 ぜパナソニック電工、当時の松下電工の商品が売 10 時、11 時まで残業して、土日は展示会に立ち会う。 的だと思います。 高 野 私は4 年近く、研修や人材アセスメントの面 れないのか。家づくり、あるいは住宅設備がどういう 『タウンミーティング』で、現場の人間がこの話をする でサポートさせていただきましたが、井戸さんにとっ 方向に向かっているのか、また、当社の営業のやり わけです。それに対する業績のリターンはほとんどな て重要な人材が育ったというようなことがあれば教 方のどこが間違っているのか、現場を回っていなけ いんです。要するにパフォーマンスや慣習で、何とな れば明確な理由づけができないのです。 く形だけがそうなっていた。 「ああ、これではだめだ 同じ意味で、トップ自らが社員一人ひとり、ショー な」 と感じ、現場の目線で仕組みを変えていきました。 ルームの女性や派遣社員に至るまで、きちんと対話 そうこうして1 巡、2 巡したときに、現場は「何か 井戸 従来のやり方というのは、年次別、あるいは ンサルタントに入ってもらって、何年間か長期で見て できて、そこから現場の状況や意見が入ってくると 言ったら、聞いてくれるんじゃないか」 、 「実際に変 成績別、業績評価別に、次のトップを決めていくと もらうという例は、まずないでしょうね。 したら、ものすごくタイムリーに状況を把握できるわ わったんじゃないか」 となっていくわけです。変わった いうやり方だと思います。しかしそうではなく、優秀 私がこれを続けてきたのは、 「本当に何が問題 けです。これは大変だけれども、非常に大きな意味 内容は、細かいことから大きなことまであります。会 な人材を育成、プールしておく施策が絶対に必要だ か」を、高野さんに感じ取っていただくためです。例 があります。 社の根幹にかかわるような仕組みを変えたこともあり と私は思っています。 えば、断片的に1 回、2 回、研修会をやってもらった 高野 そこがまさに、 『タウンミーティング』の狙いだっ ました。大きな予算が必要なら、当社のトップに掛け 高野 おっしゃる通りですね。 としても、わからないと思います。そこをはっきり見極 たわけですね。現場の声を、社内からくまなく拾い 合うこともあります。だから、 皆がびっくりするわけです。 井 戸 例えばサムスンなどは、一人の上司に200 めてもらうことが必要なのです。研修であれば、そ 成績優秀者をさらに引き上げれば 組織のポテンシャルが底上げされる えていただけますか? 井戸 会社全体としては、人事部が人事政策を見 ています。その中で、ワンユニットが継続的に外部コ 上げるための仕組みとして機能させる。そして、現 言えばやってくれるんだ、 「どうせ無理」 じゃない 人の部下がいるとすれば、1 番から200 番まですべ れを受けた社員がどういうことを感じたか、そして、 場からのタイムリーな情報に沿って問題を解決し、 んだ、我々が経営を支えているんだと実感し、徐々 て順位を付けて、業績が悪化したときには下位の どういう成長を遂げたかということが重要です。 同時にスピーディで的確な経営判断につなげていく。 に意識が変わってくるのです。 50 人を切るような厳しい人事政策を敷いていると聞 実際、いままで4 年近く見ていただいて、 「営業部 井戸 そうです。加えて、いつでも私宛に電子メー 『タウンミーティング』 というのは、絶対に年齢や役職 きます。しかし単に成績だけではなく、交渉力なり知 長にふさわしい」 という人材が大勢出てきたわけです。 ルで意見を投稿できるようにしました。親しみを感じ で区切ることはしません。ショールームの接客係から派 識なりも評価軸に入ってくるわけで、彼らは切磋琢 本当の意味で見極めをしていただいて、 「この人材 てもらうために『井戸端会議』 とネーミングしました。 遣社員まで参加してもらいます。現場で仕事をしてい 磨して「自分は下位の 50 番に入らないようにしよう。 は大丈夫です」 と意見をもらって、それを参考に人事 ここには400 から500 通ほどの投稿実績があります るすべての人を受け入れ、 「いま、何が起きている、 そ できたらトップクラスに入ろう」と努力するのです。 を遂行できたというのが大きなポイントだと思います。 が、現場の女性なり担当者から、 「いま、現場でこん して、 こんなことになっている」 と声を出してもらいます。 そこが、いま日本企業とすごく差がついている理由 やるなら計画的に継続的にやる。だれそれがい なことが起きて困っています」 、あるいは「こういうふう 高 野 リーダーが現場を直接見て、問題を共有し で、我々の後継者育成計画というのは、 『セールスキャ なくなっても、 ちゃんと次の人材がいるというのが人 事政策であって、この人がいなくなったら、どうしよ したことになりません。私は、どんなに小さなプロジェク あわせて、全国の女性社員がそ パソコンの操作法をレクチャーするんです。ですから、 うなんていうのはおかしい。企業はずっと成長してい トでもいいから、どんな小さな実験室でも、成功体験 れぞれ何を考えているのか、何をし IT が現場に浸透したのは、間違いなく業務社員と くものですから。 を積み重ねていくことが、自信につながるのだと言い ているのか、意見や情報の交換を 呼ばれる女性たちの功績なのです。女性も外に出 つづけてきました。 してもらう 『ウーマンリンクプログラム』 て、そういうことをやってきたわけで、私は女性躍進 高 野 大きな成功のためには、 じつは小さな成功 という仕組みもつくりました。彼女達 の取り組みは、大成功だと思っています。 体験の積み重ねが不可欠ということですね。 には、それまで絶対に出てこなかっ 高 野 いま、ダイバーシティという言葉で、多くの企 井 戸 小さな成功を認めてあげると、彼らは「やれ た営業部長会議にも出席してもらい、 業が女性活用に力を入れていますが、うまくいかな 一番になるまでやりつづければ 必ずもっと大きな仕事ができる 「こういう取り組みをやっている」 とい ばできるんだ」 という思いに変わっていきます。 「思い いケースも多いと思います。成功の要因はどこにあ 高 野 リーダー層を対象にした『井戸塾』 、そして、 はかなう」 というのは、そこだと思うんですね。 うことを、テーマを設けて発表しても るとお考えですか? 営業マンのトップクラスを対象にした『セールスキャン 何か大きな目標を掲げて、そこに向かってひたす らうようにもしました。 井戸 私はスポンサーシップと呼んでいますが、まず プ』 と、それぞれ立ち上げてやってこられて、どのよ ら走る、一斉にそれに向かって走るというのは、ある 高 野 女性にもどんどん前に出て 女性を応援しなければいけません。社内の重要な うな成果がありましたか? 意味では無謀ですよ。一斉に行って討ち死にするよ もらって、戦力になってもらうための 会議、外部の講演会、あるいは代理店会議に出席 井戸 自信をなくしていた人間が化けるというか、非 うな話じゃなくて、 もっと戦略を立てて、一つひとつ落 取り組みを始められたわけですね。 させるといった具合に、どんどん後方支援をする。 常に素晴らしい人材に跳ね上がった場面もあります。 としていく。細かく落としていく。私は、こういう戦略 井戸 それまでは、全社の方針発 例えば女性のトップクラスを集めた 『ウーマンキャンプ』 『セールスキャンプ』には、 営業部長推薦を含めてトップ が非常に重要だと思ってやってきました。 表会にも女性社員が出ることはな に20人が参加したら、20人全員を役職者にする。部 クラスの人材を30名集めていますが、参加した人たち 高野 「一番でなければだめだ、二番じゃだめなん かったのですが、そこにも出席して 長職、あるいは役員にするために、後方支援をどうす が自分の組織に戻って 「本当に行ってよかった」 という だ」 という意識を根づかせる。そこから成功体験を もらって、私が何をしゃべっている るか。形ではなく、 会社として本気で取り組むべきです。 思いを伝え、 それを見て次の参加者が出てくるのです。 持った人がどんどん出てくる。それが組織の活性化 かを直接聞いてもらいました。 大切なのは、 その女性をいかに上げるかということと、 片や、 『本部長コンテスト』 というのはいわゆるセール につながるわけですね。 スコンテストで、提案型の売りにくい商品で、自分たち それと、もう一つうかがいたいのは、 『Jファクティ が現場に出て提案しなければ売れない商材を、コン ブ』 という取り組みで、 女性躍進活動にもエネルギー テストの対象アイテムに設定して競います。 そうしてセー を割いてこられたと思うのですが。 「形だけの女性躍進活動は成 功しないと思います。大切なこと は、本気で彼女たちの後方支 援をすることです」 これも 「現場を歩き回る経営」の根幹となる部分 上がったということを、ほかの女性にも “見える化” する で、 「現場で何が起きているのか」 と同時に、 「会社 ことではないかと思います。それでも、 女性躍進には、 では何が起きているのか」 ということを、分け隔てな 目に見えないガラスシーリングがあるんです。結婚、出産、 く現場に伝えることが重要になります。 産休、 いろいろな要因があるでしょう。女性が上司に就 ルスのトップを狙うわけですが、全員のデータが公開 その結果、 『Jファクティブ』が定着し、女性社員が いた場合、 下の男性社員が面白くないということもあり されていますから、ある営業マンが1 位になっていれ 自信を持ちはじめ、現在は女性の管理職も何人か ます。 しかし、そういうことは上司が解決していかなけ ば、別の営業マンがそれを追いかける。結果、 どちら ビジョン共有のために必要なのは 目標達成や問題解決の積み重ね います。さらに、女性のトップクラスを集めて、 『ウーマ ればいけません。そこが大きな課題だと思いますね。 ンキャンプ』 というものをつくりました。ここに参加する 高野 お話しいただいたように、現場の社員をバッ ために、女性が相互に連携を図りながら頑張っても クアップするさまざまな取り組みがあり、その結果と ているのです。 「どんなに売上が小さな商品でもい 井戸 タウンミーティングを回ったときに、発言の半分は らっていますので、住建、家づくりにかかわる者とし して、4 年前と比べて大きな組織風土の改善が意 いから、それを全国で一番たくさん売ろう」 と。その 女性なんですね。私どもは、住設建材や家づくりに携 ては、強力な戦力になると期待しています。 識調査にも表れていますね。 結果、一番になった人間が来てくれて、表彰には私 わっているにもかかわらず、営業の前線は男性社員 高 野 『ウーマンリンクプログラム』 というのは、現場 井戸 先の調査で、すべての項目において全社平 も立ち会って、本当に喜んで帰っていきますよ。 「何 です。総合職の男性が、 それなりの目標を持って現場 での問題を解決するようなプログラムなのですか? 均を上回ったということは、 「どうせ無理」の一掃が でもいいから一番」 というのは簡単なようだけれども、 を走り回っている。それだけでいいのかなと思ったわ 井 戸 問題も解決しますし、要は取り組み方です ある程度浸透して、営業現場の一人ひとりが主役 非常に重要なことです。 けです。 ね。例えば、太陽光発電などの販売において、お になりつつあるということだと認識しています。 100 万円の商品を100 個売るのと、1 億円の商品 女性躍進には見えない壁があると思いますが、事 客さま、あるいは流通にどのように伝えるのか。とり 高野 「ビジョン、目標の共有」 という項目も大きく改 を1 個売るのとは意味合いが違います。現場を回っ 実として、全国の当社のショールームでは、 「こういう わけ、施主にどう伝えるのかということを、情報共有 善されていますが、実は日本の企業にとって、ビジョ て、細かく営業活動をしながら、どんなに売上が小 キッチンにしたい」 、 「こういうお風呂にしたい」 という していくような仕組みです。女性は地域での採用が ンの共有は大きな課題です。それを成し得た、大変 も一歩も譲らず、同率1位が複数出たことがあります。 私はいつも、 「何でもいいから一番になろう」 と言っ さな商品でも、一番になるまでやりつづけた人間とい のを、奥さまが決めています。ショールームのアテンド 多いですから、地域を越えた情報のつながり、人の 貴重な事例だと思います。 うのは、必ず次の段階でもっと大きな仕事ができるの も女性社員が担当していますが、そこから先はすべ つながりが大切なのです。 やはり現場に飛び込んで皆のやる気を喚起したり、 です。だから、 「一番になって自信を持とう」 と。 て男性が営業して、男性が売り上げたと言っている。 冒頭にお話しした、住建部門が抱えていた問題 問題を明らかにして皆で解決したりしていくことで、 私は比喩として「小さな実験室での小さな成功体 これを変えたかったのです。 の中に、実は IT 活用の遅れというのもありました。 結果的にベクトルが合って一体感のある組織になり、 験」 と言い続けてきました。要は、何かやろうとすると、 そこで生まれたのが『Jファクティブ』です。Jは住 4 年前は活用率が 20 数%、それがいまでは90%を ビジョンも共有化されていったのだと感じます。 大きなプロジェクトを組んで大きな目標を立てるけれど 建 の“J” 、ファクティブ の“F”は Female、そ れ に 超えています。 ビジョンの共有というのは、おっしゃるように何か も、 「達成率は70%、80%いきました」 と。これは優良 Activeを組み合わせた造語です。女性がしなやか かつては、代理店がパソコンでご発注いただくこ 大きな目標や絵を見せるというよりは、一つひとつの の形ですね。 に、生き生きと活動するという意味を込めて、住建 とがなかった業界ですけれど、女性社員が夜 6 時 目標達成や問題解決の積み重ねで、現場の意識 しかし、100%以上にならなかったら、本当に達成 マーケティング本部からこの活動をスタートさせました。 に仕事が終わると、代理店に行って8 時くらいまで のつながりをつくっていくことなのでしょうね。 H 事政策であって、この人がいなくなったら、どうしよ したことになりません。私は、どんなに小さなプロジェク あわせて、全国の女性社員がそ パソコンの操作法をレクチャーするんです。ですから、 うなんていうのはおかしい。企業はずっと成長してい トでもいいから、どんな小さな実験室でも、成功体験 れぞれ何を考えているのか、何をし IT が現場に浸透したのは、間違いなく業務社員と くものですから。 を積み重ねていくことが、自信につながるのだと言い ているのか、意見や情報の交換を 呼ばれる女性たちの功績なのです。女性も外に出 つづけてきました。 してもらう 『ウーマンリンクプログラム』 て、そういうことをやってきたわけで、私は女性躍進 高 野 大きな成功のためには、 じつは小さな成功 という仕組みもつくりました。彼女達 の取り組みは、大成功だと思っています。 体験の積み重ねが不可欠ということですね。 には、それまで絶対に出てこなかっ 高 野 いま、ダイバーシティという言葉で、多くの企 井 戸 小さな成功を認めてあげると、彼らは「やれ た営業部長会議にも出席してもらい、 業が女性活用に力を入れていますが、うまくいかな 一番になるまでやりつづければ 必ずもっと大きな仕事ができる 「こういう取り組みをやっている」 とい ばできるんだ」 という思いに変わっていきます。 「思い いケースも多いと思います。成功の要因はどこにあ 高 野 リーダー層を対象にした『井戸塾』 、そして、 はかなう」 というのは、そこだと思うんですね。 うことを、テーマを設けて発表しても るとお考えですか? 営業マンのトップクラスを対象にした『セールスキャン 何か大きな目標を掲げて、そこに向かってひたす らうようにもしました。 井戸 私はスポンサーシップと呼んでいますが、まず プ』 と、それぞれ立ち上げてやってこられて、どのよ ら走る、一斉にそれに向かって走るというのは、ある 高 野 女性にもどんどん前に出て 女性を応援しなければいけません。社内の重要な うな成果がありましたか? 意味では無謀ですよ。一斉に行って討ち死にするよ もらって、戦力になってもらうための 会議、外部の講演会、あるいは代理店会議に出席 井戸 自信をなくしていた人間が化けるというか、非 うな話じゃなくて、 もっと戦略を立てて、一つひとつ落 取り組みを始められたわけですね。 させるといった具合に、どんどん後方支援をする。 常に素晴らしい人材に跳ね上がった場面もあります。 としていく。細かく落としていく。私は、こういう戦略 井戸 それまでは、全社の方針発 例えば女性のトップクラスを集めた 『ウーマンキャンプ』 『セールスキャンプ』には、 営業部長推薦を含めてトップ が非常に重要だと思ってやってきました。 表会にも女性社員が出ることはな に20人が参加したら、20人全員を役職者にする。部 クラスの人材を30名集めていますが、参加した人たち 高野 「一番でなければだめだ、二番じゃだめなん かったのですが、そこにも出席して 長職、あるいは役員にするために、後方支援をどうす が自分の組織に戻って 「本当に行ってよかった」 という だ」 という意識を根づかせる。そこから成功体験を もらって、私が何をしゃべっている るか。形ではなく、 会社として本気で取り組むべきです。 思いを伝え、 それを見て次の参加者が出てくるのです。 持った人がどんどん出てくる。それが組織の活性化 かを直接聞いてもらいました。 大切なのは、 その女性をいかに上げるかということと、 片や、 『本部長コンテスト』 というのはいわゆるセール につながるわけですね。 スコンテストで、提案型の売りにくい商品で、自分たち それと、もう一つうかがいたいのは、 『Jファクティ が現場に出て提案しなければ売れない商材を、コン ブ』 という取り組みで、 女性躍進活動にもエネルギー テストの対象アイテムに設定して競います。 そうしてセー を割いてこられたと思うのですが。 「形だけの女性躍進活動は成 功しないと思います。大切なこと は、本気で彼女たちの後方支 援をすることです」 これも 「現場を歩き回る経営」の根幹となる部分 上がったということを、ほかの女性にも “見える化” する で、 「現場で何が起きているのか」 と同時に、 「会社 ことではないかと思います。それでも、 女性躍進には、 では何が起きているのか」 ということを、分け隔てな 目に見えないガラスシーリングがあるんです。結婚、出産、 く現場に伝えることが重要になります。 産休、 いろいろな要因があるでしょう。女性が上司に就 ルスのトップを狙うわけですが、全員のデータが公開 その結果、 『Jファクティブ』が定着し、女性社員が いた場合、 下の男性社員が面白くないということもあり されていますから、ある営業マンが1 位になっていれ 自信を持ちはじめ、現在は女性の管理職も何人か ます。 しかし、そういうことは上司が解決していかなけ ば、別の営業マンがそれを追いかける。結果、 どちら ビジョン共有のために必要なのは 目標達成や問題解決の積み重ね います。さらに、女性のトップクラスを集めて、 『ウーマ ればいけません。そこが大きな課題だと思いますね。 ンキャンプ』 というものをつくりました。ここに参加する 高野 お話しいただいたように、現場の社員をバッ ために、女性が相互に連携を図りながら頑張っても クアップするさまざまな取り組みがあり、その結果と ているのです。 「どんなに売上が小さな商品でもい 井戸 タウンミーティングを回ったときに、発言の半分は らっていますので、住建、家づくりにかかわる者とし して、4 年前と比べて大きな組織風土の改善が意 いから、それを全国で一番たくさん売ろう」 と。その 女性なんですね。私どもは、住設建材や家づくりに携 ては、強力な戦力になると期待しています。 識調査にも表れていますね。 結果、一番になった人間が来てくれて、表彰には私 わっているにもかかわらず、営業の前線は男性社員 高 野 『ウーマンリンクプログラム』 というのは、現場 井戸 先の調査で、すべての項目において全社平 も立ち会って、本当に喜んで帰っていきますよ。 「何 です。総合職の男性が、 それなりの目標を持って現場 での問題を解決するようなプログラムなのですか? 均を上回ったということは、 「どうせ無理」の一掃が でもいいから一番」 というのは簡単なようだけれども、 を走り回っている。それだけでいいのかなと思ったわ 井 戸 問題も解決しますし、要は取り組み方です ある程度浸透して、営業現場の一人ひとりが主役 非常に重要なことです。 けです。 ね。例えば、太陽光発電などの販売において、お になりつつあるということだと認識しています。 100 万円の商品を100 個売るのと、1 億円の商品 女性躍進には見えない壁があると思いますが、事 客さま、あるいは流通にどのように伝えるのか。とり 高野 「ビジョン、目標の共有」 という項目も大きく改 を1 個売るのとは意味合いが違います。現場を回っ 実として、全国の当社のショールームでは、 「こういう わけ、施主にどう伝えるのかということを、情報共有 善されていますが、実は日本の企業にとって、ビジョ て、細かく営業活動をしながら、どんなに売上が小 キッチンにしたい」 、 「こういうお風呂にしたい」 という していくような仕組みです。女性は地域での採用が ンの共有は大きな課題です。それを成し得た、大変 も一歩も譲らず、同率1位が複数出たことがあります。 私はいつも、 「何でもいいから一番になろう」 と言っ さな商品でも、一番になるまでやりつづけた人間とい のを、奥さまが決めています。ショールームのアテンド 多いですから、地域を越えた情報のつながり、人の 貴重な事例だと思います。 うのは、必ず次の段階でもっと大きな仕事ができるの も女性社員が担当していますが、そこから先はすべ つながりが大切なのです。 やはり現場に飛び込んで皆のやる気を喚起したり、 です。だから、 「一番になって自信を持とう」 と。 て男性が営業して、男性が売り上げたと言っている。 冒頭にお話しした、住建部門が抱えていた問題 問題を明らかにして皆で解決したりしていくことで、 私は比喩として「小さな実験室での小さな成功体 これを変えたかったのです。 の中に、実は IT 活用の遅れというのもありました。 結果的にベクトルが合って一体感のある組織になり、 験」 と言い続けてきました。要は、何かやろうとすると、 そこで生まれたのが『Jファクティブ』です。Jは住 4 年前は活用率が 20 数%、それがいまでは90%を ビジョンも共有化されていったのだと感じます。 大きなプロジェクトを組んで大きな目標を立てるけれど 建 の“J” 、ファクティブ の“F”は Female、そ れ に 超えています。 ビジョンの共有というのは、おっしゃるように何か も、 「達成率は70%、80%いきました」 と。これは優良 Activeを組み合わせた造語です。女性がしなやか かつては、代理店がパソコンでご発注いただくこ 大きな目標や絵を見せるというよりは、一つひとつの の形ですね。 に、生き生きと活動するという意味を込めて、住建 とがなかった業界ですけれど、女性社員が夜 6 時 目標達成や問題解決の積み重ねで、現場の意識 しかし、100%以上にならなかったら、本当に達成 マーケティング本部からこの活動をスタートさせました。 に仕事が終わると、代理店に行って8 時くらいまで のつながりをつくっていくことなのでしょうね。 H