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全文PDF - 知的財産教育協会

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全文PDF - 知的財産教育協会
東京コンテンツプロデューサーズ・ラボ プレゼンツ
知財の資格をビジネスに活かす!
〜音楽プロデューサーの現場から~
第6回「今まさにニューミドルマンが求められる理由」
第1回「音楽業界における主役の交替、CD からコンサートへ」(18 号)
第2回「コンテンツビジネスの環境変化とスタートアップの優位性」(19 号)
第3回「グローバルプラットフォームとどう向き合うか?」(20 号)
第4回「犬は吠えるがデジタルは進む」(21 号)
第5回「『デジタルコンテンツ白書 2016』のデータから視える音楽ビジネス近未来」(22 号)
*これまでの全記事をウェブでお読 みいただけます
知財ホルダー向けのエンタメビジネスコラムの第
6 回目になりました。今回は、僕の最近の活動を紹
http://ip-edu.org/ipmr_koukaikiji
トと自称する活動を行っています。さて、今日のテ
ーマは……」と始まります。
介することで、現状認識と問題意識をお伝えしたい
と思います。
本コラムでは、僕の近年の活動をまとめてご紹介
して、その意図や背景の解説をしたいと思います。
近年、人前でお話をする機会が増えました。自分
がオーガナイズするイベントやセミナー以外にも、
今秋だけでも、電機労連という組合の勉強会、大阪
2014 年に始めた「エンタメ系スタートアップの
アワード」が START ME UP AWARDS
< http://www.startmeupawards.com/> で す 。
電気通信大学デジタルゲーム学科や大阪工業大学知
いわゆるシード(初期)段階の起業家を対象にして
的財産学部での講座など、様々なシチュエーション
います。エンタメ系の定義は自由。自分がエンタメ
があります。その際に、最初にする自己紹介で僕は、
と思えば OK というものです。応募資格は設立 2 年
「東京に生まれ、大学にほとんど行かずに音楽業界
以内、資本金 5000 万円以下の法人、もしくは個人
にフェードインして、自分の会社をつくり、現在に
となっているので、ビジネスアイデアだけで意欲の
至るという経歴です。」と話し始めます。続けて、
「自
ある人が応募することも可能です。
分が育った音楽業界は、素晴らしいところだし、愛
書類審査を経て、二次審査に進むのが 20〜30 人
情もあるのですが、近年は景気の悪い話が多くなっ
位。二次審査では、審査員の前でプレゼンテーショ
ている気がします。その理由は一言でまとめること
ンをしてもらいます。審査員はメディアコンテンツ
ができて、
『デジタルに対して後ろ向きでブレーキを
業界の目利きのビジネスパーソン達で、キュレータ
踏んでいるから』なのです。音楽業界を良い方向に
ーと呼んでいます。Apple 情報に精通したジャーナ
変えていくために、異業種と連携し、新しい人材を
リスト林信行さんや、ギズモード編集長からサイバ
育成していくなどエンターテック・エバンジェリス
ーエージェントで新メディアを立ち上げた尾田和実
山口 哲一 (やまぐち・のりかず):1964 年東京生まれ。音楽プロデューサー、コンテンツビジネス・エバンジェリ
スト。株式会社バグ・コーポレーション代表取締役。
「デジタルコンテンツ白書(経済産業省監修)」編集委員。経済産
業省「コンテンツ産業長期ビジョン検討委員会」委員。音楽と IT に関する知見に定評があり、著書多数。
エンタメ系スタートアップを支援する「STAERT ME UP AWARDS」やプロ作曲家育成「山口ゼミ」、新時代型の音楽
エージェント「ニューミドルマン養成講座」などを主宰し、人材育成にも注力している。
IP マネジメントレビュー 23 号| 53
さん、MTV からユニバーサルミュージックとデジタ
いました。
ル部門で活躍を続け、今年独立、エンターテックア
今年のグランプリは、なんと著名なサウンドプロ
クセラレーターを名乗る鈴木貴歩さん、ミュージッ
デューサーの浅田祐介さんでした。彼は IT リテラシ
クコンシェルジュのふくりゅうさんや、アニメ会社
ーが高く、僕と二人で、音楽家がチームに必ずいる
GONZO の石川真一郎社長、グロービスのベンチャ
「ミュージシャンズハッカソン」という企画を始め
ーキャピタリスト東明宏さんという錚々たる顔ぶれ
ました。自らキャプテンと名乗って、ハッカソンに
で激論をして、最終審査に進む「ファイナリスト」
も参加しています。今回は、そのミュージシャンズ
を選びます。
ハッカソンで二人のプログラマーと一緒にプロトタ
ファイナリストは、2015 年は 9 組、2016 年は 7
イプを作った「Syncee」というサービスを、事業プ
組でした。その際にキュレーターが自分が興味を持
ランとともに応募してくれました。世界中で同じ時
った起業家のアドバイザーとなって、最終審査に向
間に同じ楽曲を聞いている人同士だけがチャットで
けてブラッシュアップをするのが SMUA の大きな特
きるというロマンティックなサービスです。今回の
徴です。
受賞を機会に会社を設立し、本格的に事業展開する
最終審査会は、経産省のデジタルコンテンツ
そうです。数々のヒット曲を輩出したサウンドプロ
EXPO の一環として日本科学未来館で行われます。
デューサーに、「起業家」という肩書が増えました。
300 人のホールで、観客と最終審査員、多くのベン
是非、成功してほしいと思いますし、僕も応援する
チャーキャピタリストやメディアの前で、プレゼン
つもりです。
テーションを行います。最終審査員は、ツイッター
ジャパン、スペースシャワーネットワーク、AOI Pro、
今まで日本ではなかった、クロスオーバーなネッ
トワークが作れていることを実感しています。
ワタナベエンターテインメントなどのトップや知財
戦略本部の世話人など、業界の重鎮の皆さんです。
今年の 10 月からは、ニューミドルマンラボ養成
優秀者の選考をし、表彰式を行った後に、展望ホー
講座の第 5 期<http://tcpl.jp/newmiddleman/>
ルでファイナリスト、審査員、観客が入り混じった
を行っています。全 8 回中 6 回は、コンテンツビジ
懇親会を行い、ネットワークを広めていきます。
ネスに携わる、その分野の第一人者をゲスト講師と
有志の実行委員会形式で行っているイベントで、
言い出しっぺの僕の意図は、既存のメディアコンテ
してお呼びしています。今期は偶然ですが、弁護士
の方が二人います。
ンツ業界と若い起業家の接点の場をつくることでし
一人は、Field-R 法律事務所代表の山崎卓也氏。エ
た。いわゆる IT 系、ベンチャー関連以外のフィール
ンタメとスポーツに特化した活動で、この分野では日
ドでの場作りがテーマでした。この 3 年でアクセラ
本一、いやアジア一の弁護士です。
レータープログラムを始める大企業も増えてきまし
テーマは、
「グローバル著作権ビジネス~今、世界
たが、もっと起業家と事業会社、権利者団体などは
で起きているバトルと、成功のための未来予測」で、
コミュニケーションの場を持つべきです。3 年続け
音楽流通がグローバルプラットフォームになった今、
たことで、少しずつですが成果も出てきています。
日本でどういう戦略を持てばよいのかという、最先
5 月に、都内のクラブ行き放題で 3900 円という
端の、というか時代を先取りした話を伺うことがで
サービス LIVE3S <http://live3.info/>を始めた株
きました。僕自身が興奮するくらい、旬の話題でし
式会社 3.0 は、2014 年の最優秀賞受賞者です。社
た。マーリンという世界の独立系レーベルと配信事
長の浅原くんが今年の懇親会にも顔を出してくれて
業会社の交渉を受け持つエージェント NPO の日本
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知財の資格をビジネスに活かす!
オフィス設立にも深く関わる、実業にもきちんとコ
マンが登場するのだ」という田坂さんの提唱された
ミットしている弁護士です。
考え方を 2000 年頃に知り、痺れました。
「俺はニュ
もう一人は、風営法改正に大活躍した功労者、齋
ーミドルマンだったんだ」と思い、自分がスタッフ
藤貴弘氏も実業にしっかりコミットしています。弁
向けのセミナーを立ち上げる時に、使わせていただ
護士の仕事の再定義を志しているという意味で、ま
きました。田坂さんのご許可もいただいています。
さにニューミドルマン的な存在だと言えるでしょう。
尊敬する田坂さんとの対談は、拙著『新時代ミュー
実は彼は、ニューミドルマン養成講座の第一期の受
ジックビジネス最終講義』
(リットーミュージック刊)
講生です。社会を変えることにきちんと関わる活動
の巻末に収録されていますので、是非、お読みくだ
に共感と尊敬を覚えます。知財ホルダーにも刺激に
さい。
なる存在ではないでしょうか?
第 5 期の講座は、PHP 研究所から、電子書籍と POD
ニューミドルマンラボのテーマは、
(パブリッシュオンデマンド)の形で書籍化するこ
時代の変化に合った(できれば先取りした)
とになっているので、興味のある方は、お読みくだ
次世代の音楽ビジネス(という領域自体を疑い
さい。他の講師も素晴らしい方ばかりで、楽しくて
つつ)を
ためになる内容になっていると思います。
再構築する方法を考え、実践していくこと。
です。ほぼ、僕自身のテーマといっても過言ではあ
ニューミドルマンラボは、年2〜3回の養成講座
だけではなく、通年型でインキュベーションプログ
りません。
音楽プロデューサーとして掲げるのが、
ラムもはじめました。これは本当に少数精鋭で、
テクノロジー活用によるエンタメの拡張、
2016 年は6名。大学院のゼミのようでもあり、グ
グローバル展開、
ループレッスンのようでもあり、僕がコンサルタン
異業種コラボレーション
トをしているとも言えるでしょう。個人で目標を明
の3つなのも、ニューミドルマンとして、死活的に
確に打ち出してもらい、実現のための戦略を一緒に
必要と思うからです。
考え、必要に応じて、キーパーソンへの紹介なども
しています。初めての試みでしたが、成果が出始め
日本のコンテンツビジネスの生態系は、傷つき、
ています。前述の SMUA のファイナリストにも2名
機能不全を起こしています。再構築が必要です。た
が選出されました。新たな事業を立ち上げた者もい
だ、IT 系の人たちは、「もう駄目でしょ?
ます。ネットにおけるセルフブランディングを突き
でしょう?」とおっしゃいますが僕はそうは思いま
詰める作業を上手に進めているケースもあります。
せん。パーツとしては有効な部分がたくさんありま
来春には、成果を発表できると思うので、もう少々
す。それらはすくい上げて、モデュラーとして、最
お待ち下さい。実践で結果が出てくることが一番う
適化して使えばスムーズです。そもそも生態系とい
れしいです。
う表現ですから、全部を壊してよいわけが無いです
よね?
そもそもニューミドルマンという概念は、田坂広
志さんの著書から引用しています。
「デジタルの発達
壊れる
有効性を失った部分を、補完したり、置き
換えて順序を変えたりすることで、再生させること
ができるはずです。
で、供給者側に立つビジネスはなくなる、ミドル・
マンは死ぬけれど、ユーザー側に立つニューミドル
僕自身のビジョンは、2021 年の日本のコンテン
IP マネジメントレビュー 23 号| 55
ツビジネス状況を魅力的なものにするということで
正銘、使いものにならなくなるのは、おそらく 2021
す。トランプ大統領の出現は驚きましたが、これで
年です。そこで日本人の強みを活かして、何をする
安倍政権の長期化は確定的で、2020 年までは、概
のか、そのための準備には、4年間というのはちょ
ね経済的には現状の延長線上でまま上手く進むでし
うどよい長さなのかもしれません。
ょう。ただ残念ながら、それまでの間に日本が抱え
今回も知財ホルダー向けの無料セミナーを行いま
る構造的な問題が解決される可能性は低いように感
す。2021 年までに僕らがやっておくべきことのお
じます。だとすると、2020 年まで「誤魔化すこと
話をみなさんと意見交換できればと思いますので、
ができてしまった」反動も含めて、2021 年に大き
是非、足をお運びください。
な落ち込みが予想されます。従来の仕組みが、正真
(次号へつづく)
東京コンテンツプロデューサーズ・ラボ プレゼンツ
<本コラム連動>1/26 新春無料セミナー
本コラム執筆者の山口哲一氏が、知財技能士の皆さんをはじめとする知財ホルダーに向けた
"エンターテイメント業界の近未来と知的財産活用によるビジネス"をライブで語ります。
【セミナー講師山口氏より】
「日本が「先進国」として元気で要るためのキーワードは、エンタメ、観光、テクノロジーである
ことは異論はないと思います。今後あらゆる業種で進む、テクノロジー活用、グローバル市場展開、
異業種連携。コンテンツ系スタートアップを支援する START ME UP AWARDS オーガナイザーと
しての新市場への知見や音楽プロデューサーでの現場体験に基づき、これから
の知財ビジネスが音楽業界、エンターテイメント業界において、どのように展
開していくのかを紐解いていきます。
また、他業界での知財展開の可能性を、参加者の皆様とのディスカッションも
踏まえ議論を深めていく予定です。」
(講師プロフィール)1964 年東京生まれ。音楽プロデ ュ ー サー 、 コ ンテ ン ツ ビジ ネス ・ エ バン ジ ェ リス ト 。
株式会社バグ・コーポレーション代表取締役。「デジタルコ ン テ ンツ 白 書 (経 済 産 業省 監 修)」 編 集委 員 。
経済産業省「コンテンツ産業長期ビジョン検討委員会」委員 。音 楽 と IT に関 す る 知見 に 定 評が あ り、著 書 多数 。
エンタメ系スタートアップを支援する「START ME UP AWARDS」 やプ ロ 作 曲家 育 成「 山 口 ゼミ 」、新 時 代 型
の音楽エージェント「ニューミドルマン養成講座」などを 主宰 し 、 人材 育 成 にも 注力 し て いる 。
本コラムには書かれない貴重な話も聴ける機会ですので、お見逃しなく。
これからのビジネスの可能性と、知財の資格を活かすためのヒントをみつけてみませんか。
日時:2017 年 1 月 26 日(木)19:30~21:00
場所:東京コンテンツプロデューサーズ・ラボ(最寄り駅:JR 高田馬場駅から徒歩 5 分)
参加費:無料 定員:35 名
主催:東京コンテンツプロデューサーズ・ラボ
協力:知的財産教育協会
申込・詳細:東京コンテンツプロデューサーズ・ラボ ウェブサイト
以下よりお申込みください(1/20 申込締切)
http://tcpl.jp /archives /2631
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