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研究開発投資の最適選択理論の検討

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研究開発投資の最適選択理論の検討
Ⅰ
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研究開発投資の 最適選択理論の 検討
0
1. 序
渡辺 千何
( 東工大社会理工学 )
それを無審査で 容認してきた。 米国が直接資本市場からの 収益性
に対する圧力を 背景に研究開発投資の 生産性や収益性の 評価を
論
かってカルドア (1962)は「成長こそ 最大の技術進歩要因であ
」と指摘した。 技術進歩が戦後の 我が国の成長 ff)原動力とな
り、 競争力の源泉をなしたことは 論を待たない。 これは 2@ 世
徹底的に行い、 それが選択と 集中の共存をもとに 今日 ff)ニュー エ
コノミ一の基盤となる 創造性と効率性が 両立した産業構造を 実
現した,のと 好 対照であ る。
本稿は、 以上 00 問題意識に立脚して、 最適化理論をべ ー ス とす
る 研究開発投資の 最適選択理論について 検討する。 第 2 章で分析
のフレームワークを 示し、 それを第 3 章で具体的に 実践する。 そ
の 結果に基づき、 第 4 章で考察を集約する。
る
紀 においてもしかりであ る。 今日、 低成長化に直面し、 また
高齢化やエネルギー・ 環境制約等各種成長制約の 強まる中、 低
成長・技術進歩の 停滞の悪循環の 輪を断ち切るためには 持続的
な 技術開発努力が 必要不可欠であ る。
政府は過去の 5 年間で 17 兆円を科学技術に 投資した。 1990
年代のロストディケード と 軌を一にして 低迷した産業の 研究開
発 投資も景気の 復調と共にようやく 回復軌道を示すに 至った。
研究開発投資規模で 見る限り我が 国は文字通り 技術大国であ
2, 分析フレームワーク
2.1 研究開発投資
く
に 来た。 それは、 第 1 に 力ル ドアの法則に 従った高成長 故 の 技
)
技術ストックは 次のように表される
術進歩により研究開発投資の 生産性も高いものとの 錯覚が横
(2)
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異なる生産投資とどのようなペースで、
をゆさぶる。 る。
確実にはね返り、
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その判断の結果は
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した。 その経験はいたずらな 重武装を促し、 株主や消費者も
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研究開発投資総額は、
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2.2 新技術商品化の 便益
以上の研究開発投資により、 垢 時点から新技術の 商品化が始ま
り
、 同商品の市場の 評価が行われる。
そ or 結果、 ヒット商品の 例
に 見られるよ
に、 当初の売り上げ 想定 S" な はるかに越えた
「成功売り上げ」塊が 期待される場合もあ る。 「成功売り上げ」
終焉時点をんとすると、 新技術商品化の 便益関数 (Benent
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本 予稿集 2Cl6( 田辺,渡辺 )参照。
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以上の最適軌道関数を 用いて、 1975- 1996 の期間の日本の
製造業代表業種の 研究開発強度 (GDP 当たり研究開発費 ) の
最適レベルと 実績の推移を 比較検証した 結果は図 3 に示す通
りである。
図 3 を見ると、 日本の製造業の 研究開発強度は、 1980年代 央
までは、 最適レベルをはるかに 下回っていたことがわかる。
こ
のインバランスは、 たゆまぬ研究開発強度上昇努力等の 結果 着
実に減少し続け、 1980 年代 央 にはほ ほ最適レベルに 等しいレベ
ルに改善するに 至った。 しかし、 バブル経済の 期間に再び逆転
し、最適レベルより 数 % 低いレベルに 転じた。 この傾向はバブ
ル崩壊後も続き、 インバランスは 更に拡大するに 至っている。
主要業種について 見ると、 化学及び電気機械のハイテク
業種
は、1980年代以降一貫して 最適レベルを 大きく上回る 研究開発
強度を維持しているが、 それと 好対照に食料品に 見られるロー
テク業種は、 最適レベルをはるかに 下回るレベルにとどまって
いることが伺われる。 画業種の好対照は、 ハイテク業種におい
ては、研究開発投資が 収益最大化に 決定的役割を 果たしている
のに対し、 ローテク業種においては、 生産投資の方が 重要な役
割を果たしていること 及びハイテク 業種からの技術スピル オ
一 バーへの依存を
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示唆するものであ る。
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一方、化学、電気機械の 2 大八イテク業種が 一頁して最適レベ
ルを上回る研究開発強度を 維持している 背景には、 イノベーショ
ン製品を持続的に 生み出すために 必要不可欠な 部分と同時に、 厳
しい企業間競争の 中で競争相手を 牽制したり、 顧客に対し、 ハイ
テクイメージを 植え付けたりする 上で必要な、 ハイテク業種に 固
有な「疑似研究開発強度」
(PseudoR&Dintensity)部分も含まれ
ているものと 思われる 4。 この割合はバブル 崩壊後低下を 示して
いるが、 これについては、 「投資の合理化」という 面と「リスク
不確実性に対するセキュリティ 係数の安易な 削減」という 面の両
面についてさらに 掘り下げた評価・ 検証が必要であ る。
3.3 スピルオーバー 技術の最適活用
グローバル経済化や 情報化の急速な 進展は技術の 国境を越え
た スピルオーバーを 加速的に進める。 他方、技術開発のコストや
リスクの高まりの 中で、 自前による開発の 限界が現れつっあ る。
このような中で、 スピルオーバー 技術の効果的活用が 競争力の決
め手になりつつあ る。スピルオーバー 技術の効果的活用はそれを
認識・峻別・ 吸収・ 体化する能力すなわち 同化能力 (Assim ation
capacity)に依存する。 同化能力は、 同化をねら ぅ 技術との接近
度 (Prox@@ty) に大きく関係し、 それは自らが 有する同関連分野
Ⅱ
の技術ストックに 依存し、 それは研究開発強度や 研究開発の多角
化に大きく関係する。 自前による開発の 限界の脱却を 効果的に進
めるためには 相応の自前の 研究開発強度が 必要であ り、それが実
行されれば、 同化能力の向上 づ スピルオーバー 技術の効果的活用
づ 成長 づ 研究開発強度の 向上の好循環が 期待される。 この因縁関
係も最適化のイシュ 一であ る。 また、同化能力の向上に 大きく関
係する多角化も 過度に過ぎるとコアコンピタンスを 喪失し、 競争
力をそぐことになりかれない。 これも同様に 最適化のイシュ 一で
あ る。
かくのごとくスピルオーバー 技術の最適活用は 図 4 に示すよ
うに、 3.2 で見た研究開発投資軌道の 上昇と失速の 岐路を擁する
研究開発投資の 最適選択の重要な 課題であ る,。
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を越えると逆に 減少することを 示している。 これは過度の 多角化
によるコアコンピタンスの
喪失によるものであ る。 また、適正 領
逆にニッチを 追求した特化が 同化能
力 を高めることになることを 示している 7。
以上はいずれも、 研究開発投資の 最適選択を検討する 上で、ス
ピルオーバー 技術活用の最適化黍道を 追求することが 決定的に
重要であ ることを示すものであ る。
域 より下の領域においては、
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低成長・技術進歩の 停滞の悪循環の 輪を断ち切るためには 持続
的な技術開発努力が 必要不可欠であ る。 これは研究開発投資の 増
大もさることながらその 生産性の向上を 前提に行う必、 要があ る。
しかし、 我が国においては 官民ともにこのような 問題に対するア
カウンタビリテ ィ が極めて希薄であ る。 これと 好対照に米国では
直接資本市場からの 収益性に対する 圧力を背景に 研究開発投資
の 生産性や収益性の 評価が徹底的に 行なわれ、 それが創造性と 効
率性が両立した 産業構造を実現し、 それは更なる 高生産性・収益
性の研究開発投資を 促す 好循環を形成している。 技術立国が我が
国の必然的選択であ ることを考えれば、 我が国にこのような 面の
好循環構造を 構築することはいわば 歴史の必然であ る。本稿はこ
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の ょう な問題意識に 基づき、 最適化理論をべ ー スとする研究開発
投資の最適選択理論の 検討を行い、 日本の製造業代表業種を 対象
に、最適研究開発投資軌道及びスピルオーバー 技術の最適活用に
ついて、 実践的な適用を 試みた。 その結果、 研究開発投資選択に
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技術ストックのスピルオーバープールから 巧技術を同化する
能力は、 図 5 のように示される 6。
この関係に立脚して、 際だってハイテク 性の高い医薬品製造
業について、 先に見た研究開発強度、 同化能力、 生産 (売上 )
の「因縁関係」について 理論・実証両面から 検証した結果は 図
6 、 7 に示すとおりであ る。 図 6 から伺われるよ う に、 同化能力
の向上は売り 上げの増大に 繋がる。 従って、 製薬各社は同化能
力の向上を目指して 自前の研究開発強度の 向上に勤しむこと
になり、 これが同業種の 研究開発強度を 際だって高いものとす
る要因ともなっている。 しかし、 図 7 は、 製薬大手と称される
トップ 9 社はその規模に 応じて高い同化能力を 有しているが
それは必ずしもそれ 以下の規模の 各社のように 自前の研究開
生産規模に至ると、 示している。 乗り、
ら同化能力がスパイラルに 高まる好循環のメカニズムが
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ことを示している。
図 8は同じ製薬業について
浮き彫りに
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っ かの重要な視点を
することが出来た。
今後、引き続き、 更なる広範かっ 実践的な適用を 視座に据えた
分析手法の発展、 その実際的適用の 拡大と適用結果のフィードバ
ック 等が課題となる。
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, No . 3@(2001)@in@print
7本予稿集 2B20(田上,渡辺)参照。
6本予稿集2Bl9( 永松,渡辺 )参照。
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