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のGoogle Apps採用事例
日本大学 まで学部ごとにメールの提供形態に差 Google Appsを全学部で採用へ Gmailは学内データベースと連携 があった。メールの運用は学部ごとに 独立しており,運用ルールもばらばら だった。例えば,ある学部では全員に メール・アカウントを配布していたの に対し,ほかの学部では申請した学生 にだけアカウントを発行していた。 日本最大の学生数を誇る日本大学 レッドシート」 ,簡易Webページ公開 14学部がそれぞれメール・サーバー (以下,日大)が2007年4月,米グーグ サービス「Google Page Creator」 ,ユ を運用している形態は,1カ所で提供 ルが提供するSaaSサービス「Google ーザーごとのポータル・ページを作る する方法よりコストがかかる。しかも Apps Education Edition」を採用した。 「My Start Page」が利用できる。日大 学部ごとに運用ルールが違うので,セ Google Appsはグーグルが提供する ではGoogle Page CreatorとMy Start キュリティ・レベルもばらばらだった。 各種サービスを独自ドメインで運用で Page以外を利用する。 これらを解消するべく,2006年9月 きるようにするもの。Webメール・サ 4月時点で利用可能になったのは,7 に共通基盤開発のためのワーキング・ ービス「Gmail」やチャット・サービ 学部,約3万人の学生。順次対応学部 グループを結成した。 「この時点では ス「Googleトーク」 ,スケジュール帳 を増やし,最終的には全14学部,約10 独自にメール・サーバーを構築するこ サービス「Googleカレンダー」 ,文書・ 万人の学生に提供する予定である。 とを考えており,Google Appsの話は 表の作成/保存サービス「文書とスプ 写真1 日本大学総合学術情報センター情報 企画課の吉田誠課長(右)とシステム管理課の 小野浩樹課長補佐(左) なかった」 (吉田課長) 。ただし, 「学 14学部ばらばらの運用を是正 生の利用の容易さを考えてWebメール 日大がGoogle Appsを導入したのは であることと,携帯電話からも利用で 「全学部で共通のメール基盤を構築し きるようにすることは考えていた」 (総 たかったから」 (総合学術情報センタ 合学術情報センターシステム管理課の ー情報企画課の吉田誠課長)である 小野浩樹課長補佐)という。 (写真1) 。共通のメール基盤にするこ とで,学生へのサービスを均一化し, 年間2億円を削減 コストの削減とセキュリティの強化を そんな折,グーグルが大学向けの 実現するのが狙いだった。 Google Apps Education Editionサービ まず,学生サービスの面では,これ スを開始したのをWebニュースで知 図1 日本大学のメール・システム「NU-MailG」を運用するためのDNSの設定 日本大学のDNSサーバーにGoogleをあて先とするMXレコードを登 録することで,日本大学の独自ドメインのメール・システムをGmail上に実現した。 インターネット MXレコードの返信 メール送信者 ASPMX.L.GOOGLE.COM にメールを送信 日本大学がg.nihon-u.co.jp用に追加したMXレコード 日本大学のDNSサーバー メール・サーバー (g.nihon-u.ac.jp) の問い合わせ g.nihon-u.ac.jp g.nihon-u.ac.jp g.nihon-u.ac.jp g.nihon-u.ac.jp g.nihon-u.ac.jp g.nihon-u.ac.jp g.nihon-u.ac.jp MX MX MX MX MX MX MX preference preference preference preference preference preference preference = = = = = = = 1, mail exchanger = ASPMX.L.GOOGLE.COM 5, mail exchanger = ALT1.ASPMX.L.GOOGLE.COM 5, mail exchanger = ALT2.ASPMX.L.GOOGLE.COM 10, mail exchanger = ASPMX2.GOOGLEMAIL.COM 10, mail exchanger = ASPMX3.GOOGLEMAIL.COM 10, mail exchanger = ASPMX4.GOOGLEMAIL.COM 10, mail exchanger = ASPMX5.GOOGLEMAIL.COM Gmailを使うことで日本大学側でセキュリティの 確保, 運用人員, 設備の購入などが不要になる Googleのメール・サーバー (ASPMX.L.GOOGLE.COMなど) 76 NIKKEI COMMUNICATIONS 2007.6.1 図2 NU-MailGシステムの全体像 Gmailを連携させる「メール・アカウント管理システム」を新規構築した。 学部の メール管理者 日本大学のシステム 新規システム アカウントの作成, 削除, 利用停止など メール・アカウント 管理システム メール・アカウント, 氏名, 初期パスワードの登録 ユーザーによる パスワード変更時に通知 GoogleのGmail インターネット Google API メール, チャット, カレンダー, 文書・表計算機能 既存システム 名前, 学生番号, 生年月日な どからランダムなメール・ アドレスを作成して登録 学生基本情報 データベース 毎月1回収集 日本大学の学生 学部ごとに 管理する学生情報 る。2006年10月にグーグルの日本法人 Gmailと学内のメール・アカウント情 ルのシングル・サインオン・サービス にコンタクト。とんとん拍子に話が進 報を同期させる「メール・アカウント を流用した。 み,2006年11月にGoogle Appsでメー 管理システム」の開発である。 ル・システムを構築することに最終決 前者のDNSレコードの追加では,今 導入決断から2カ月半で稼動へ 定した。 「セキュリティの確保,保守 回採用するメール・アドレス用のドメ メール・アカウント管理システムの 料金の削減,Webメール,携帯電話で イン名である「g.nihon-u.ac.jp」あての 開発に費やした時間が2カ月半。これ の利用という,こちらの思っていた条 メールはすべて「aspmx.l.google.com」 は選定から稼動までの期間でもある。 件がすべて満たされていた」 (小野課 というコンピュータに送るようにMXレ 開発・導入時に特別な混乱はなかっ 長補佐)という。 「Googleトークやカ コードを記述した(図1) 。 た。ただ, 「メール・アカウントの登録 レンダーなどのサービスはGmailを使 後者については,パスワード,学籍 に時間がかかり,3万件登録するのに, おうと思ったら付いてきた」 (同)とい 番号や名前,学部,学年,在学/停学 3日半かかった」 (小野課長補佐) 。こ うのが本当のところだ。 /退学などのステータスをメール・ア れはグーグルが不正アクセス対策を目 Google Apps Education Editionのベ カウントにひも付けたデータベースを 的に,アカウントの登録に時間がかか ータ期間中に協力したということで利 管理システムの基盤とした。このデー るようにしていたため。現在は,グー 用料金は無料だった。これまで14学部 タベースに変更があった場合は動的に グルの技術スタッフとの交渉で素早い のメール・サーバーの運用に年間約2 Gmailのアカウント情報を更新する(図 登録が可能になっている。 億円かかっていた。Google Appsに全 2) 。また,学生がGmailサイトでパス Gmail以外のGoogle Appsの利用は, 面移行した後は,この運用経費がまる ワードを変更した場合は,その情報を 今後の検討課題である。学校行事や まる浮くことになる。 管理システムに反映させている。 休講などをGoogleカレンダーで告知す データベースとGmailの同期は,グ るといったことも考えられるが,今の アカウントの同期システムを自作 ーグルがインターネット上で公開して ところ計画はない。 「システム部門が Google Appsに対応するための準備 いるXMLベースのAPIを使うことで実 押し付けがましく使い方を考えるより, 作業は二つあった。一つは,日大のド 現した。Gmailのメール・アカウント Web 2.0らしく,サービスを使っている メインあてのメールがGmailのメール・ を作成/削除したり,メールの送受信 学生や教職員からの声を集め,どのよ サーバーに転送されるようにするため を禁止したりできる。またグーグルか うに使うべきかを模索したい」 (小野 のDNSレコードの追加。もう一つは ら日大へのパスワード通知は,グーグ 課長補佐)と考えている。 (中道 理) NIKKEI COMMUNICATIONS 2007.6.1 77