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乳幼児期のテレビ接触を規定する要因
乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 ~“子どもに良い放送”プロジェクト・中間総括報告書から~ “子どもに良い放送”プロジェクト 1) 中井俊朗・西村規子・菅原ますみ(お茶の水女子大学教授) 要 約 私たちは生まれてすぐ,テレビを始めとする映像メディアに接触する。多くの家庭では,乳児は 母親に見守られて毎日を過ごしながら,母親の見ているテレビの音を聞き,画面の方に顔を向ける。 子どもは否応なくメディアにさらされているのである。こうしたメディアとの接触は子どもの発達 にどんな意味を持っているのか。子どもが育つ過程は複雑である。親の子育てに対する考え方,家 庭環境,家族や友だちとの人間関係など,心身の発達に影響を与えるファクターは多い。そうした ファクターの 1 つとして,映像メディアとの接触はどんな役割を果たしているのだろうか。あるい は映像メディア接触自体,他のファクターからどんな影響を受けているのだろうか。 こうした問題意識から平成 13 年にスタートしたNHK放送文化研究所の“子どもに良い放送” プロジェクトでは,このほど乳幼児期を総括する中間総括報告書をまとめた。報告書ではテレビ視 聴を中心に,子どもの映像メディア接触の実態を明らかにし,メディア接触の時間量を規定する要 因は何かを探っている。この調査は同じ子どもたちの集団を継続調査しているので,同時期に異な る年齢集団で調査するよりも,映像メディア接触・視聴量の年齢変化が鮮明に示されるはずである。 メディア接触・視聴は家庭文化の一断面ということもできよう。当然,テレビを見る時間量も見 る番組の内容も,子ども一人ひとり異なっている。親がテレビをよく見るかあまり見ないかによっ て,あるいは日ごろ親がどんな番組を見るかによって,子どものテレビに接する時間量や番組の内 容は異なってくるはずである。本稿では,子どものテレビ接触・視聴時間量に影響を与えている因 子には何があるかを分析する。 目 次 はじめに … ………………………………………… 296 1.“子どもに良い放送”プロジェクト 2. 調査の内容 3. 本稿の目的 1 0 歳~ 5 歳 テレビ接触・視聴の変化…………… 298 1. 接触時間,視聴時間の概要 2. 幼児期から始まる男女差 3. 4 歳から逆転する平日・日曜のテレビ時間 4. 誰と見ているか < 子どもだけ/大人と一緒 > の概要 2 0 歳~ 5 歳 ビデオ/ゲームの接触…………… 307 1. 接触率・接触時間 経年変化の概要 2. ビデオ・ゲームも 4 歳以降 男女差 3 0 歳~ 5 歳の子どものテレビ接触・視聴に 対する親のフィルタリング行動の変化… …… 310 1. 両親のフィルタリング行動の経年変化 2. フィルタリング項目の経年変化 3. 子どもの性別および出生順番と両親の フィルタリング行動との関連 4 0 歳~ 5 歳の子どものテレビ接触時間 および視聴時間の規定要因… ………………… 314 1. 接触時間と視聴時間の縦断的関連性 2. 接触時間・視聴時間の規定要因 : 階層重回帰分析の結果から おわりに…………………………………………… 324 295 はじめに 1.“子どもに良い放送”プロジェクト NHK文研との間で議論が交わされ,研究の 枠組み,仮説,調査方法等が決められていっ た。 研究仮説は以下の 3 点である(図 1)。 NHK放送文化研究所が“子どもに良い放 (1)映像メディア接触の内容と量が,子ど 送”プロジェクトを発足させたのは,平成 もの認知能力発達,身体発達,行動,社会認 13 年 11 月である。当時,日本国内のみなら 識に影響を与えている。 ず,世界的にも,テレビやビデオ,テレビゲー (2)メディア接触の子どもに与える影響は, ムなどの映像メディアが子どもの生活に深く 映像メディアへの接触の仕方によって,方向 浸透し,かれらの心身の発達にどのような影 (プラス・マイナス)や大きさが変化する。 響を及ぼしているのか,関心が高まってい (3)生活環境,家庭環境が,子どもの能力 た2)。しかし,子どもの映像メディア接触と 発達,身体発達,行動,社会認識に影響を与 その発達への影響について調べたもので,十 えているが,映像メディア接触が媒介してい 分信頼するに足る客観的な調査データは乏し る場合がある。この影響は,生活環境,家庭 く,科学的な調査に基づいて,メディア接触 環境が直接与える影響を,強めたり,弱めた と子どもの心身の発達の関係を明らかにす りする3)。 る,という意図の下に,本プロジェクトをス タートさせた。 図1 調査設計のための仮説 共同研究体制 子どもの メディア接触 プロジェクトはその性格上,医学,心理学, 教育学など,広範な学識を必要としており, NHK放送文化研究所は外部の専門家にプロ ジェクトへの参加を呼びかけた。 本プロジェクトに参加した共同研究者は, 個人の属性 発達 性・年齢・気質 ・性格・認知 身体・認知 社会性行動 小林登(国立小児病院名誉院長・小児医学), 家庭環境 生活環境 飽戸弘(東洋英和女学院大学学長・社会学), 小西行郎(同志社大学赤ちゃん学研究セン ター長) ,子安増生(京都大学教授・発達心 理学) ,榊原洋一(お茶の水女子大学教授・ 小児科学) ,坂元章(お茶の水女子大学教授・ 上記の仮説に基づき,調査は平成 15 年 1 月から始まった。 社会心理学) ,菅原ますみ(お茶の水女子大 学教授・発達心理学),箕浦康子(お茶の水 女子大学名誉教授・人類学)の各氏である。 研究仮説 プロジェクト発足直後から,共同研究者と 296 │NHK放送文化研究所年報 2010 2. 調査の内容 同じ子どもたちを継続調査 調 査 相 手 は, 平 成 14 年 2 月 か ら 7 月 ま 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 での半年間に川崎市で誕生した子どもたち, ていたか」を記入する欄があるのが特徴で, 1368 人。 こ れ は 地 域 別 に 無 作 為 抽 出 し た 特に,接触態度は以下の 3 つの指標に分類し 1600 人のうち,保護者から調査協力の承諾 たのがこの調査の大きなポイントになってい が得られた子どもたちである。川崎市を選ん る。 だ理由は,商工業地域,農地,住宅地などが ①ついているだけ…子どものいる部屋で画 面がついているだけの状態 散在し,各産業従事者,サラリーマン,自営 業従事者など,在住者の就いている仕事があ ②ながら視聴…他のことをしながら見てい る状態 る程度バランスが取れている点にあった。 調査は,最長 12 年にわたり,同じ子ども ③専念視聴…他のことはせずに専念して見 ている状態 たちを対象に継続して調査するパネル調査方 式であり,それがこの調査の最大の特徴と また,「誰と見ていたか」は映像メディア なっている。メディア接触がもたらす子ども 接触に対する保護者のコントロールという観 への影響に関する調査研究は散見されるが, 点から重要であるために設定した指標であ 本調査のように 1000 人単位で,同じ子ども る。 たちを対象に長期継続して行う調査はほとん 2)「メディアと子どもの発達に関する調査」 子どもの身長・体重に始まり,子どもや養 ど類を見ない。 調査内容 育者のメディアとの接触頻度や接触態度,養 本プロジェクトの調査は主として次の 2 つ 育者の子どものメディア接触に対する考え方 から構成される。 やコントロールのほか,子どもの社会性,養 1) 「テレビ・ビデオ・テレビゲーム 視聴・ 育者の子育てに対する意識など,広範な設問 利用アンケート調査」(以下,「テレビ視聴 から構成される。保護者 1 向け(子どもと接 日誌」という) する時間の最も長い養育者,大半は母親が回 これは 1 週間,毎日 15 分単位で子どもの 答),保護者 2 向け(保護者 1 に次いで,子 接触した映像メディアとその内容を記入して どもと接する時間が長い養育者,大半は父親 いくもの。 「接触態度(専念度)」と「誰と見 が回答)の 2 分冊から成る。 表 1 6 年間の調査概要 第1回 有効 回答数 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 調査相手の年齢 0歳 1歳 2歳 3歳 4歳 5歳 調査数 1368 人* 1) 1250 人 1244 人 1047 人 965 人 956 人 調査実施時期 2003 年 1 月 14 日〜 20 日 2004 年 1 月 13 日〜 19 日 2005 年 1 月 13 日〜 19 日 2006 年*2) 3 月 9 日〜 15 日 2007 年 1 月 11 日〜 17 日 2008 年 1 月 15 日〜 21 日 1160 票 (1160 票) 1070 票 (1051 票) 1060 票 (1028 票) 907 票 (874 票) 895 票 (854 票) 886 票 (842 票) テレビ視聴日記調査 (同上うち関東圏) 保護者への 質問紙調査 保護者 1 用 1224 票 1147 票 1105 票 941 票 907 票 916 票 保護者 2 用 1129 票 1078 票 1041 票 895 票 866 票 870 票 *1)2002 年 2 月〜 7 月に神奈川県川崎市に生まれた乳児 6000 人から居住地域による層化を行い,無作為に選んだ 1600 人の乳児の保護者のうち参加の同意が得 られた 1368 人が“子どもに良い放送”プロジェクトに登録された。 *2)第 4 回調査は調査票の検討が遅れたため,3 月に実施。一部の子どもは 4 歳になっていたが,3 歳時調査と位置づけた。 297 このほか,調査年によって,子どもに人 映像メディア接触を規定する要因などの解明 物の絵を描かせる「描画調査」,子どもが何 に置いた。6 年間の縦断分析なので,いずれ かしたいときにどんなメディアを使うのかを も各調査項目の変化を分析している。 たずねる「欲求充足調査」を行ってきた。 調査時期は年に 1 度,原則的に 1 月中旬 に実施してきた。 調査方法は郵送法による質問紙調査であ る。 6 年間の調査の概要を表 1(前ページ)に まとめた。 本稿は中間総括報告のうち,映像メディア 接触の実態と映像メディア接触を規定する要 因をまとめた。 メディア接触時間,視聴時間は年齢でどの ように変化していくのか,性別によって接触 時間,視聴時間の変化に異なりがあるのか, あるいは年齢や性別によって視聴する番組内 容にどんな変化が見られるか,メディア接触・ 3. 本稿の目的 就学前までの中間総括 調査相手のうち,平成 14 年 2 ~ 3 月生ま 視聴の時間量に対して父親,母親の介在がど のような影響を与えるのか――本稿は,こう した視点で乳幼児期の子どもの映像メディア 接触の分析を行う。 れの子どもたちは平成 20 年に,4 ~ 7 月生 まれの子どもたちは平成 21 年に小学校に入 学した。現在,3 分の 1 が小学 2 年生,3 分 の 2 が小学 1 年生である。 プロジェクトでは,調査相手全員が就学前 である 0 ~ 5 歳までの 6 回の調査結果を元に, 1 0 歳~ 5 歳 テレビ接触・ 視聴の変化 1. 接触時間,視聴時間の概要 乳幼児期の中間総括をまとめた。平成 15 年 本調査の開始にあたり,子どものテレビ視 1 月の第 1 回から平成 20 年 1 月の第 6 回調 聴については,前述の通り,①「他のことは 査までの 6 年間を総括するものである。 せず専念して見ていた ( 以下「専念視聴」と 乳幼児期中間総括で分析の対象としたサン する )」②「他のことをしながら見ていた(以 プルは,合計 6 回の調査に 2 回以上回答を 下「ながら視聴」とする)」③「画面がつい 行った 1189 人の子どもとその保護者とした。 ているだけだった(以下「ついているだけ」 本プロジェクトの目的は映像メディア接触 とする)」の 3 タイプに分けて記入してもら が子どもの発達に与える影響を解明すること うことにした。視聴時間は 15 分刻みで局別 にあるが,調査はまだ途上にあるため,乳幼 に測定し,視聴内容(番組名など)の記入も 児期中間総括報告では,メディア接触が及ぼ 依頼した。 す子どもの発達への影響を分析の対象とはせ NHK放送文化研究所が 2003 年に行った ず,テレビを中心とする乳幼児期の映像メ 「幼児生活時間調査」では,視聴形態区分と ディア接触の実態, 接触した番組内容の分析, して,①「専念視聴」②「ながら視聴」を調 生活時間配分との関連,親のフィルタリング, 査しているが,これに加え,本調査では,③ 298 │ NHK 放送文化研究所年報 2010 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 「ついているだけ」という概念を導入し,① 図 2 テレビ接触時間, 視聴時間の変化 ②③の 3 視聴形態を併せて「テレビ接触」と 専念視聴 ながら視聴 ついているだけ 内訳不明 位置づけた。子どもの居る部屋のテレビのス イッチが入っているだけといった,「テレビ の音声が子どもに聞こえていると考えられる 状態」の時間も把握したいと考えたからであ 2 つの意味がある。1 つは「ついているだけ」 の時間の経年変化を追うこと。もう 1 つは, 「ついているだけ」時間と区別した①「専念」 16 16 180 2時間44分 (3時間) 84 120 (2時間) 13 59 111 1時間44分 1時間32分 0 13 40 1時間36分 1時間6分 80 60 (1時間) 2時間29分 68 66 54 2時間13分 2時間9分 11 9 32 24 1時間30分 1時間36分 63 65 12 24 24 30 27 31 0歳 1歳 2歳 3歳 4歳 5歳 視聴時間 「ついているだけ」時間を把握することには 3時間24分 接触時間 る。 3時間13分 分 (n=1114) (n=1067) (n=1054) (n=907) (n=894) (n=885) と②「ながら」を合わせた「テレビ視聴」時 間を,明確に把握できるようにすることであ 減少にある。特に,1 歳から 2 歳にかけての る。 減り方は大きい(1 時間 24 分→ 59 分)。実は, こうして得られた,1 週間の調査期間中に 0 歳から 1 歳にかけて,接触時間全体は増え 少しでもテレビに接した子どもの割合(= ているのだが,その中で「ついているだけ」 テ レ ビ 接 触 者 率 ) は,0 歳 で 97 %,1 歳 時間のみが減少している(1 時間 51 分→ 1 で 99 %,2 歳 で 97 %,3 歳 で 97%,4 歳 で 時間 24 分)。これは,年齢が上がるにつれ, 96%,5 歳で 96% と,ほとんど変わらず,そ 子どもの運動能力が発達し行動半径が広がる れぞれの時点での接触者率が 100%に近いの ため,テレビのスイッチの入っている部屋に で,本稿においては,テレビ接触時間,視聴 ただ居るだけの時間が減っていくからだと考 時間を,接触者平均時間ではなく,全員を分 えられる。 母とした平均時間 ( 調査期間中にテレビに接 また,テレビ視聴時間(=「専念視聴」+「な していない子どもも含めた平均時間 ) で分析 がら視聴」)は,0 歳から 1 歳にかけて,1 する。 時間 6 分から 1 時間 44 分に増えるが,2 歳 になるとやや減って 1 時間 32 分,以降 5 歳 接触は減少,視聴は次第に安定 テレビ接触時間,視聴時間の変化は(図 2) 時点まで毎年 1 時間 30 分台で安定している。 ちなみに,図中の「内訳不明」とは,テレ の通りである。テレビ接触時間は,0 歳時点(3 ビに接触していたとして日誌に記入された時 時間 13 分)と 1 歳時点(3 時間 24 分)では 間のうち,その視聴形態が「専念」 「ながら」 「つ 大きな違いがみられないが,2 歳時点で 2 時 いているだけ」のいずれであったか明記され 間 44 分と大幅に減り,その後,3 歳で 2 時 ていなかったものを示す。 間 29 分,4 歳で 2 時間 13 分,5 歳で 2 時間 9 分と,年齢が上がるにつれて減る傾向にあ る。その主要因は「ついているだけ」時間の 299 歳から 5 歳まで,男女別で比較してみると(表 2. 幼児期から始まる男女差 2) ,2 歳時点では男女ともにNHK教育の幼 テレビ接触時間,視聴時間の変化を男女別 児向け番組が多く見られていたが,3 歳,4 歳, に比較したところ(図 3),0 歳から 5 歳を通 5 歳と年齢が上がるにつれ,徐々に民放のア して,いずれも女児の方がやや長い傾向があ ニメ番組や戦隊ものシリーズ番組が上位に る。特に,2 歳,4 歳,5 歳時点では 1 日の 入ってくる。5 歳では,男児の上位 9 位,女 接触時間(週平均)に男女で 10 分程度の差 児の上位 5 位までが,そうした民放番組で占 があり,1 日の視聴時間(週平均)でみても められ,その内容については,例えば,5 歳 5 分程度の差がある。 男児の 1 位が「ポケットモンスター DP」に 幼児期から既に,視聴時間に男女差がみら 対して,5 歳女児の 1 位が「Yes !プリキュ れるのは, 興味深い。内訳をみると,1 日の「専 ア 5」であること,また,4 歳・5 歳男児の 念視聴」時間(週平均)は,どの年齢におい 上位には,常に「獣拳戦隊ゲキレンジャー」 ても男女でほぼ同じなので,視聴時間の差を 「轟轟戦隊ボウケンジャー」や「仮面ライダー」 生みだしているのは,何かをしながらテレビ シリーズといった“戦隊もの”が位置するこ を見ている「ながら視聴」時間の男女差であ と,などあきらかな男女差がみられる。 る(2 歳:男 1 時間 4 分 < 女 1 時間 11 分,4 これらの番組は,就園を期に,友達同士で 歳:男 1 時間 0 分 < 女 1 時間 7 分,5 歳:男 テレビ番組についての情報交換や,番組キャ 1 時間 0 分 < 女 1 時間 11 分)。 ラクターになりきる“ごっこ遊び”などが活 発になり,そうした友達とのコミュニケー 図 3 テレビ接触時間,視聴時間の変化(男女別比較) ションに欠かせない番組として,子ども自身 専念視聴 ながら視聴 ついているだけ 内訳不明 が「見たい」と主張するようになると考えら れる。 分 180 15 18 一方で,女児の方が男児より,年齢が上 15 17 80 88 120 109 114 64 63 14 12 39 42 71 65 68 53 55 12 13 24 23 24 25 31 30 男 女 0歳 男 女 1歳 男 女 2歳 男 女 3歳 10 30 60 12 9 35 9 29 21 67 60 71 ども向け番組を見ている傾向もみられる。表 視聴時間 0 56 82 77 60 (1時間) 12 接触時間 (2時間) がっても,比較的よくNHK教育の幼児・子 15 (3時間) 2 で網掛けしてあるのがNHK教育の番組だ が,2 歳から 5 歳にかけて,網掛け部分が漸 減していく度合いが,女児の方がやや緩や 28 27 31 31 かなのである(2 ~ 5 歳にかけて「ベスト 男 女 4歳 男 女 5歳 10」入りするNHK教育の番組の数は,男: 男(n=588) 男(n=563) 男(n=554) 男(n=477) 男(n=470) 男(n=469) 女(n=526) 女(n=504) 女(n=500) 女(n=430) 女(n=424) 女(n=416) 7 → 3 → 3 → 1,女:7 → 4 → 4 → 3)。視聴 率順位としては,子ども自身が「見たい」と 女児は男児よりNHK教育を視聴 調査相手の子どもたちがよく見ている,い わゆる視聴率上位番組(ベスト 10)を,2 300 │ NHK 放送文化研究所年報 2010 主張して見ている民放アニメ番組よりやや下 位に位置する傾向がある(4 歳女子で 5 位以 降,5 歳女子は 6 位以降)。 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 表 2 視聴率上位番組(男女比較) 【2 歳女児(n=502) ベスト 10】 【2 歳男児(n=558) ベスト 10】 順位 局 開始 放送 曜日 時刻 分数 番組名 視聴率 (%) 順位 局 曜日 開始 放送 時刻 分数 番組名 視聴率 (%) 1 NHK教育 木 08:30 30 おかあさんといっしょ 37 1 NHK教育 火 08:30 30 おかあさんといっしょ 38 2 NHK教育 木 08:10 15 いないいないばあっ! 33 2 フジテレビ 日 18:30 30 ※サザエさん 31 3 NHK教育 木 08:00 10 にほんごであそぼ 30 2 NHK教育 木 08:10 15 いないいないばあっ! 31 4 フジテレビ 日 18:30 30 ※サザエさん 25 4 NHK教育 木 08:00 10 にほんごであそぼ 28 5 テレビ朝日 金 19:00 30 ※ドラえもん 22 4 フジテレビ 日 18:00 30 ※ちびまる子ちゃん 28 6 フジテレビ 日 18:00 30 ※ちびまる子ちゃん 21 6 テレビ朝日 金 19:00 30 ※ドラえもん 25 7 NHK教育 火 17:20 10 ひとりでできるもん! どこでもクッキング 19 7 NHK教育 月 17:00 10 からだであそぼ 22 8 NHK教育 火 17:10 10 英語であそぼピタパタランド 18 7 NHK教育 月 17:20 10 ひとりでできるもん! どこでもクッキング 22 8 NHK教育 火 17:50 10 クインテット 18 7 NHK教育 月 17:10 10 英語であそぼピタパタランド 22 8 NHK教育 木 17:00 10 からだであそぼ 18 【3 歳男児(n=476) ベスト 10】 順位 局 曜日 開始 放送 時刻 分数 10 NHK教育 木 17:50 10 クインテット 21 【3 歳女児(n=431) ベスト 10】 番組名 視聴率 (%) 順位 局 曜日 開始 放送 時刻 分数 番組名 視聴率 (%) 1 NHK教育 水 08:35 25 おかあさんといっしょ 32 1 テレビ朝日 日 08:30 30 ※ふたりはプリキュア Splash Star 33 2 テレビ朝日 金 19:00 30 ※ドラえもん 29 2 NHK教育 金 08:35 25 おかあさんといっしょ 32 3 NHK教育 水 08:15 15 いないいないばあっ! 28 3 フジテレビ 日 18:30 30 ※サザエさん 30 3 フジテレビ 日 18:30 30 ※サザエさん 28 4 NHK教育 金 08:15 15 いないいないばあっ! 29 5 NHK教育 水 08:00 10 にほんごであそぼ 26 5 NHK教育 金 08:00 10 にほんごであそぼ 28 5 テレビ朝日 日 07:30 30 轟轟戦隊ボウケンジャー 26 6 テレビ朝日 金 19:00 30 ※ドラえもん 27 7 フジテレビ 日 18:00 30 ※ちびまる子ちゃん 24 7 フジテレビ 日 18:00 30 ※ちびまる子ちゃん 25 8 テレビ朝日 金 19:30 24 ※クレヨンしんちゃん 23 8 NHK教育 土 08:35 25 おかあさんといっしょ 22 9 テレビ朝日 日 08:00 30 仮面ライダーカブト 21 9 テレビ朝日 金 19:30 24 ※クレヨンしんちゃん 21 18 10 テレビ東京 日 09:30 30 ※おねがいマイメロディ 20 10 テレビ朝日 日 08:30 30 ※ふたりはプリキュア Splash Star 【4 歳男児(n=445) ベスト 10】 順位 局 曜日 開始 放送 時刻 分数 【4 歳女児(n=409) ベスト 10】 番組名 視聴率 (%) 順位 局 曜日 開始 放送 時刻 分数 番組名 視聴率 (%) 1 フジテレビ 日 18:30 30 ※サザエさん 36 1 フジテレビ 日 18:30 30 ※サザエさん 40 1 テレビ朝日 金 19:00 30 ※ドラえもん 36 2 フジテレビ 日 18:00 30 ※ちびまる子ちゃん 36 3 フジテレビ 日 18:00 30 ※ちびまる子ちゃん 33 2 テレビ朝日 日 08:30 30 ※ふたりはプリキュア Splash Star 36 4 テレビ朝日 金 19:30 24 ※クレヨンしんちゃん 30 4 テレビ朝日 金 19:00 30 ※ドラえもん 32 4 テレビ東京 木 19:00 30 ※ポケットモンスターDP 30 5 NHK教育 木 08:15 15 いないいないばあっ! 28 6 NHK教育 木 08:00 10 にほんごであそぼ 28 6 テレビ朝日 金 19:30 24 ※クレヨンしんちゃん 27 7 テレビ朝日 日 07:30 30 轟轟戦隊ボウケンジャー 26 6 NHK教育 木 08:00 10 にほんごであそぼ 27 7 NHK教育 月 08:15 15 いないいないばあっ! 26 8 NHK教育 金 08:35 25 おかあさんといっしょ 25 9 テレビ朝日 日 08:00 30 仮面ライダーカブト 24 9 NHK教育 水 17:50 10 ※アニメおじゃる丸 24 10 NHK教育 木 17:50 10 ※アニメおじゃる丸 22 【5 歳男児(n=443) ベスト 10】 順位 局 曜日 開始 放送 時刻 分数 10 テレビ東京 木 19:00 30 ※ポケットモンスターDP 23 【5 歳女児(n=399) ベスト 10】 番組名 視聴率 (%) 順位 局 曜日 開始 放送 時刻 分数 番組名 視聴率 (%) 1 テレビ東京 木 19:00 30 ※ポケットモンスターDP 39 1 テレビ朝日 日 08:30 30 ※ Yes! プリキュア 5 40 2 テレビ朝日 金 19:00 30 ※ドラえもん 37 1 フジテレビ 日 18:30 30 ※サザエさん 40 3 フジテレビ 日 18:30 30 ※サザエさん 34 3 フジテレビ 日 18:00 30 ※ちびまる子ちゃん 35 4 テレビ朝日 金 19:30 24 ※クレヨンしんちゃん 33 4 テレビ朝日 金 19:00 30 ※ドラえもん 33 5 フジテレビ 日 18:00 30 ※ちびまる子ちゃん 31 5 テレビ朝日 金 19:30 24 ※クレヨンしんちゃん 29 6 日本テレビ 月 19:00 30 ※ヤッターマン 30 6 24 7 テレビ朝日 日 08:00 30 仮面ライダー電王・最終回 27 7 日本テレビ 月 19:00 30 ※ヤッターマン 23 8 日本テレビ 月 19:30 30 ※名探偵コナン 24 8 22 9 テレビ朝日 日 07:30 30 獣拳戦隊ゲキレンジャー 22 8 テレビ東京 木 19:00 30 ※ポケットモンスターDP 22 9 22 10 NHK 教育 火 17:30 10 ※アニメぜんまいざむらい 21 NHK 教育 火 08:15 15 いないいないばあっ! NHK 教育 火 08:15 15 いないいないばあっ! NHK 教育 火 08:00 10 にほんごであそぼ NHK教育 ※アニメ番組 301 これらNHK教育番組に対する視聴状況の 図 4 テレビ総計の30分ごとの平均視聴率 (平日・5 歳男女比) 男児 女児 0 0 0 0 1 0 3 4 16 19 29 34 27 32 18 20 2 2 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 2 1 1 0 1 1 1 1 1 1 2 1 2 6 9 9 13 13 16 18 22 19 25 19 25 39 35 33 32 14 15 13 13 5 5 3 3 1 1 1 1 0 0 0 0 違いが,そのまま,1 日の男女の視聴時間の 差につながっているのではないだろうか。 5 5 歳の男女で,平日朝 5 時~夜 24 時まで 6 30 分単位のテレビ視聴率総計を比較してみ たところ(図 4),朝 7 〜 8 時台と夕方 16 ~ 7 18 時台に,男児より女児の方がよくテレビ を見ている傾向がみられた。この時間帯は, 8 NHK教育が幼児向け番組を放送している時 9 間帯に一致する。 2つの時間帯の 30 分単位・教育テレビ視 10 聴率総計を男女別に比較してみると(図 5 − 1,2) , 朝 7 ~ 8 時 台 で は 2 ~ 3 %, 夕 方 16 11 ~ 18 時台では 3 ~ 4%,女児の視聴率が男 12 図 5-1 教育テレビ総計の30分ごとの平均視聴率 (平日平均・朝) [5歳児] 13 男児 14 男児 女児 15 16 17 女児 0 0 0 0 3 5 8 11 19 21 13 15 2 1 1 0 18 6 男児 女児 7 8 9 10 時0 10 20 30 40 (%) 50 図 5-2 教育テレビ総計の30分ごとの平均視聴率 (平日平均・夕方) [5歳児] 19 男児 20 21 22 23 時 0 10 20 30 302 │ NHK 放送文化研究所年報 2010 40 (%) 50 女児 0 0 4 7 5 9 11 13 15 18 11 15 9 13 1 1 16 男児 女児 17 18 19 時 0 10 20 30 40 (%) 50 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 児の視聴率を上回っている。 以上から,幼児期(特に 4 歳,5 歳)の女 図 6 テレビ総計の30分ごとの平均視聴率 (日曜・5 歳男女比) 男児 女児 0 0 0 0 く,それは,女児の方が男児より朝や夕方の 0 0 NHK教育の幼児向け番組をよく見ているか 1 1 17 5 36 17 42 28 児は,男児より,1 日のテレビ視聴時間が長 らだと言える。 ちなみに,同様の比較を日曜日についてし てみると(図 6),男児は朝 7 時半~ 8 時半ま 28 46 で,女児は 8 時半~ 9 時までの視聴率がピ 28 35 ンポイントで同程度に高く,これは男女それ 19 27 ぞれが夢中になって見るアニメや戦隊ものの 7 10 6 7 3 4 2 4 1 4 2 4 1 2 2 2 1 1 1 0 1 1 聴時間ともに, 平日が土日より長い。それが, 1 1 4 歳,5 歳になると,平日・土曜に比べ,日 3 2 3 2 5 7 6 7 で,5 歳時点で,平日・土曜の 2 倍近くになっ 33 37 ている(平日:28 分,土:27 分,日:52 分)。 37 43 こうした平日,土,日のテレビ接触時間, 26 31 27 32 20 20 放送時間に合致する結果である。 3. 4 歳から逆転する平日・日曜のテレ ビ時間 ここで,テレビ接触時間,視聴時間の経年 変化を曜日別に比較しておきたい(図 7)。 0 歳から 3 歳までは,テレビ接触時間,視 曜の方が,接触時間,視聴時間ともに長くな る。特に,日曜の専念視聴時間の伸びが顕著 視聴時間の変遷の背景には,4 歳時点で,調 査相手のほぼ全員が幼稚園・保育所などに就 17 17 園し,平日午後に友達同士で外遊びする時間 4 6 も増え,平日に家庭の中でテレビを見る時間 3 4 が物理的に減る状況が考えられる。 0 1 0 0 0 0 0 0 さらに,4 歳,5 歳で,日曜日のテレビ専 念視聴時間があきらかに長くなる背景には, 日曜朝の番組編成の影響が推測される。前述 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 男児 女児 15 16 17 18 19 20 21 22 23 時 0 10 20 30 40 (%) 50 303 図 7 テレビ接触時間,視聴時間の変化 (曜日別比較 ) 類し,テレビ視聴日誌に記入してもらった。 専念視聴 ながら視聴 ついているだけ 内訳不明 分析においては,①を「子どもだけ」視聴, 分 180 20 113 (2時間) 100 99 115 た。 13 13 75 74 96 14 11 38 9 12 11 11 46 29 46 73 73 64 58 54 56 10 39 41 9 9 22 30 65 54 46 66 59 66 62 38 28 27 56 0 歳から 5 歳までの,<子どもだけ/大人 28 視聴時間 60 13 53 88 (1時間) 59 0 13 78 接触時間 120 14 16 (3時間) ②③を併せて「大人と一緒」視聴と位置づけ 17 16 と一緒>別 1 日のテレビ接触時間(週平均) は図 8 の通りで,大人と一緒のテレビ接触時 間は,0 歳から 1 歳では,2 時間 20 分台で 52 変わらないが,1 歳から 5 歳にかけて,年齢 平日 土 日 平日 土 日 平日 土 日 平日 土 日 平日 土 日 平日 土 日 が上がるにつれだんだん短くなり,4 歳,5 41 45 15 7 5 0歳 (n=1114) 29 13 8 1歳 (n=1067) 27 15 19 2歳 (n=1054) 31 21 37 3歳 (n=907) 26 23 4歳 (n=894) 5歳 (n=885) 歳では,1 時間 20 分台後半で落ち着いている。 このうち, 「ついているだけ」時間を除いた, の通り,4 歳,5 歳に共通して,男児の視聴 大人と一緒のテレビ視聴時間は,1 歳時点で, 率上位番組(ベスト 10)(表 2) にランクイ 1 日に 1 時間 11 分(週平均)とやや長いが, ンする“戦隊もの” (7:30 ~「獣拳戦隊ゲキ 2 歳以降 5 歳まで,1 時間数分で落ち着いて レンジャー」 「轟轟戦隊ボウケンジャー」,8:00 いる4)。 ~「仮面ライダー」シリーズ),同じく,女 一方,子どもだけのテレビ接触時間は,1 児の視聴率上位番組にランクインする“アニ 歳以降,1 日 30 ~ 35 分程度(週平均)と安 メ女子戦隊もの” (8:30 ~「プリキュア」シ 定しており,大きな変化はない。ここに「つ リーズ, 以上すべてテレビ朝日系列にて放 いているだけ」時間は実態としてほとんど含 送)の存在は非常に大きい。 まれず,1 歳以降,子どもだけのテレビ視聴 平日,土,日と曜日別に比較した時,1 つ 気になるのは, 4 歳, 5 歳と年齢が上がっても, 時間も,1 日平均 30 分程度で安定している。 ちなみに,図中の「内訳不明」とは,テレ 土曜日に子どもがあまりテレビを見ていない (日曜ほどは見ていない)ことがある。日曜 と同様に休日であるはずの土曜に,テレビが 図 8 <子どもだけ/大人と一緒>別 1日のテレビ接触時間・視聴時間 (週平均) 子どもだけで 大人と一緒 内訳不明 視聴時間 見られない要因については,次項でふれたい。 分 29 180 本調査では,子どもがテレビを誰と見てい るかについても,①子ども(たち)だけで見 ていた ②保護者と一緒に見ていた ③保護 者以外の大人と一緒に見ていた の 3 つに分 304 │ NHK 放送文化研究所年報 2010 21 120 (2時間) 16 13 88 87 143 140 112 97 (71) (62) (63) (60) (64) 26 35 30 34 30 30 0歳 1歳 2歳 3歳 4歳 5歳 60 (1時間) 0 19 (n=1114)(n=1067)(n=1054)(n=907) (n=894) (n=885) 接触時間 4. 誰と見ているか<子どもだけ/大人と一緒> の概要 25 (3時間) 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 ビに接触していたとして日誌に記入されてい た時間のうち, 「子どもだけ」で見ていたの 図 10 曜日別比較 <子どもだけ/大人と一緒>別 1日のテレビ接触時間 子どもだけで 大人と一緒 内訳不明 か, 「大人と一緒」に見ていたのか,について, 分 明記されていなかったものを示す。 180 26 29 (3時間) 29 27 120 女児は「大人と一緒」にテレビを見る 142 (2時間) 142 <子どもだけ/大人と一緒>別,1 日のテ レビ接触時間の変化を男女別に比較したとこ ろ(図 9),0 歳,1 歳で,男女による違いは 124 60 143 (1時間) 0 31 14 11 25 149 21 21 24 21 21 16 16 141 109 118 125 95 101 90 43 18 13 37 15 15 40 16 21 15 16 82 97 18 107 34 17 23 13 13 14 79 97 114 33 18 28 平日 土 日 平日 土 日 平日 土 日 平日 土 日 平日 土 日 平日 土 日 0 歳(n=1114) 1 歳(n=1067) 2 歳(n=1054) 3 歳(n=907) 4 歳(n=894) 5 歳(n=885) ほとんどなかったが,2 歳以降では,大人と 一緒のテレビ接触時間が,男児より女児の方 ると,日曜日があきらかに長くなる(4 歳… が長い傾向がみられる。特に 2 歳,4 歳,5 日曜:1 時間 47 分>平日:1 時間 22 分 25 歳では,1 日に大人と一緒にテレビに接触す 分差,5 歳…日曜:1 時間 54 分>平日:1 時 る時間(週平均)は女児の方が 10 分程度も 間 19 分 35 分差,すべて週平均 1 日)。 長い(2 歳男 < 2 歳女 11 分差,4 歳男< 4 歳,5 歳になると,日曜の視聴時間が, 4 歳女 9 分差,5 歳男< 5 歳女 14 分差)。 平日・土曜よりも長くなることは前述したが, その内訳には,日曜朝のアニメや戦隊ものを 「子どもだけ」で見る場合だけでなく,その 図 9 男女別比較 <子どもだけ/大人と一緒>別 1日のテレビ接触時間(週平均) 他の番組を「大人と一緒」に見る場合も少な 子どもだけで 大人と一緒 内訳不明 分 180 (3時間) 25 このことは,日曜日の<大人と一緒>に見 25 26 19 120 (2時間) 32 140 140 からず含まれていると言えそうだ。 142 24 20 19 143 60 107 118 94 99 15 84 17 93 12 80 14 94 (1時間) 0 る民放視聴率統計を男女別に比較してみると よくわかる(図 11)。 日曜日のテレビ視聴には,男女ともに,8 23 28 34 36 30 31 34 34 29 31 28 32 時台,9 時台の“朝の視聴のピーク”に加え, 男 女 0歳 男 女 1歳 男 女 2歳 男 女 3歳 男 女 4歳 男 女 5歳 18 時台,19 時台の“夜の視聴ピーク”がある。 男(n=588) 女(n=526) 男(n=563) 女(n=504) 男(n=554) 女(n=500) 男(n=477) 女(n=430) 男(n=470) 女(n=424) 男(n=469) 女(n=416) 朝のピークはひとえに子ども向け番組(アニ メ,戦隊もの)によるものだが,夜のピーク 日曜夜 アニメの後も大人と一緒視聴 <子どもだけ/大人と一緒>別,1 日のテ では,18 時台に定番 2 大アニメ(「ちびまる 子ちゃん」「サザエさん」ともにフジテレビ) レビ接触時間の変化を,曜日別に比較したと が放送され,その後 19 時台から,民放各局 ころ(図 10),0 歳から 5 歳まで通して,子 が家族向けバラエティを放送しはじめる。図 どもだけでテレビに接する時間は,土日より 11 からは,5 歳の子どもが,18 時台から大 平日の方が長い。一方,大人と一緒のテレビ 人と一緒にアニメを見始め,19 時台もその 接触時間は,2 歳以降,特に 4 歳,5 歳にな まま一緒にテレビを見続けている様子がわか 305 図 11 民放テレビ総計の30分ごとの平均視聴率 <大人と一緒> (日曜平均) [5歳児] 男児 女児 0 0 0 0 0 0 0 0 8 3 18 7 26 18 18 29 16 18 13 15 5 6 4 5 2 4 1 3 0 3 1 4 1 1 2 2 1 1 1 0 1 1 1 1 2 1 2 1 4 5 5 3 27 29 30 34 22 27 22 27 18 16 16 14 4 5 3 4 0 1 0 0 0 0 0 0 る。こうした傾向は,4 歳,5 歳と年齢が上 がるにつれ,強まっている。 おそらく,日曜 18 時台の定番である 2 大 5 アニメを見ている子どもの多くは,19 時以 6 降も,テレビの前から去ることなく,例えば, 食事をしながら,あるいは,父母と一緒に居 7 間でくつろぎながら,家族向けのバラエティ を大人と一緒に見ており,こうした習慣が 8 幼児期から形作られていっているのだろう。 9 19 時台の視聴率が,男児より女児の方が高 い(女 27%>男 22%)ことは,女児の方が 10 大人と一緒に見ることが多い実態に通じる。 曜日別比較の中で,気になる点として,2 11 歳以降,土曜日は日曜日ほど,子どもがテレ 12 ビを見ていないことを先に挙げた(図 7)。し かし,<子どもだけ/大人と一緒>という観 13 点を加えてみると,3 歳以降,土曜の,大人 と一緒時間は,1 時間 30 分台でほぼ安定し 14 男児 ている。一方,子どもだけ時間が,日曜に比 女児 15 べて 5 ~ 10 分少ない。これが,テレビ接触 時間全体を少なくしているといえる。 16 土曜日には一般的に,おけいこやレジャー など,外出が多い5)ことに加え,そもそも, 17 子ども向けの番組が少ないことも影響してい 18 るのだろう。 19 20 21 22 23 時 0 10 20 30 306 │ NHK 放送文化研究所年報 2010 40 (%) 50 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 2 0 歳 ~ 5 歳 ビ デ オ / ゲームの接触 30%,5 歳になると 44%に上がった。接触 者における 1 日のゲーム接触時間(週平均) は,4 歳・5 歳になると 30 分になる。 本調査の視聴日誌ではビデオ視聴,ゲーム こうした結果から,幼児期であっても,年 使用についての記入も保護者に依頼している。 齢が上がるにつれ,1 歳ごとに,ゲームが急 1. 接触率・接触時間 経年変化の概要 速に子どもたちの生活に浸透していく様子が わかる。 ビデオ(DVD 含む)は 2 歳がピーク 1 週間の調査期間中のビデオ接触者率(表 3) は,0 歳で 59%,1 歳で 78%,2 歳で 85% とピークを迎え,その後,3 歳で 80%,4 歳 で 73%,5 歳で 76%と,多少の増減はあり つつも徐々に減る傾向にある。また,接触 者における 1 日のビデオ視聴時間(週平均) は 0 歳で 34 分,1 歳で 47 分,2 歳で 50 分。 これをピークに,3 歳で 42 分,4 歳で 35 分, 5 歳で 42 分と減少傾向にある。 図 12 ゲーム接触者率と接触者接触時間 分 60 60 接触者接触時間 接触者率 44 40 20 30 23 21 22 28 0 1歳 2歳 (n=1054) 3歳 (n=907) 30 20 10 13 8 50 40 30 18 (n=1067) 表 3 0 ~ 5 歳 ビデオの接触者率と時間量(1 日平均) % 70 4歳 (n=894) 5歳 0 (n=885) 2003 年の「幼児生活時間調査」では,6 0歳 1歳 2歳 3歳 4歳 5歳 60 78 85 80 73 69 接触者平均時間(分) 34 48 50 42 35 30 レビゲームをしているという結果も出てお 全員平均時間(分) 21 37 43 34 25 21 り7),次回以降の調査(6 歳以降)の結果が 接触者率(%) 歳児の 4 人に 1 人が 1 日平均 1 時間程度テ 注目される。 徐々に減る傾向にあるとはいえ,国民生活 6) ゲームの接触者率・接触者接触時間につい 時間調査(2005 年) の結果で,10 歳以上の て男女別に比較したところ(図 13 − 1, 2),3 国民全体のビデオの行為者率が 8%あるのと 歳以降の接触者率で,男児が女児を上回るよ 比べると,0 歳〜 5 歳の時期には,多くの子 うになり,年齢が上がるにつれ,その差が広 どもがビデオに接している。 がる様相をみせている(3 歳:男 19%>女 17%,4 歳:男 33% >女 26%,5 歳:男 48% ゲームは 4 歳以降 男児に急速に浸透 ゲーム(テレビゲーム/携帯用ゲームの >女 39%)。1 日の接触者接触時間(週平均) は,3 歳以降,全体として徐々に長くなる傾 両方を含む)は,2 歳時点では接触者率が 向がみられるが,特に男児の伸びが大きく, 13%で,まだ使用経験のない子どもが 9 割 女児を 10 分程度上回るようになる(3 歳: 近く居た(図 12)。 男 27 分>女 16 分,4 歳:男 31 分>女 23 分, その後,接触者率は,3 歳で 18%,4 歳で 5 歳:男 34 分>女 25 分)。 307 図 14 テレビ/ビデオ/ゲームの接触・視聴・使用時間比較 (週平均・全員平均) 図 13-1 ゲーム接触者率(男女別比較) 60 % 男児 接触者率 女児 接触者率 50 48 40 33 39 30 10 10 8 0 1歳 13 17 4歳 5歳 図 13-2 ゲーム接触者接触時間(男女別比較) 103 23 19 23 24 23 96 66 21 2 0 0歳 37 43 2 3 4 1歳 2歳 3歳 34 25 8 21 13 4歳 5歳 (n=1114) (n=1067) (n=1054) (n=907) (n=894) (n=885) 25 16 240 男児ゲーム 女児ゲーム 男児テレビ 女児テレビ 206 200 (4時間) 188 180 173 202 152 (3時間) 女 5歳 男 女 4歳 男 女 3歳 男 女 2歳 男 女 1歳 男 0 130 91 分 34 31 134 97 92 男児ビデオ 女児ビデオ 27 150 図 15 テレビ/ビデオ/ゲームの接触・視聴・使用時間 (週平均・男女別比較) 分 40 20 164 60 (1 歳男 n=563) (2 歳男 n=554) (3 歳男 n=477) (4 歳男 n=470) (5 歳男 n=469) (1 歳女 n=504) (2 歳女 n=500) (3 歳女 n=430) (4 歳女 n=424) (5 歳女 n=416) 60 180 (3時間) (1時間) 3歳 203 194 (2時間) 12 2歳 (4時間) 120 26 19 20 テレビ(接触) テレビ(視聴) ビデオ ゲーム 分 240 156 120 141 128 60 0 3 36 39 2 3 1歳 2歳 2 0歳 46 38 36 5 32 3 3歳 28 10 140 121 (2時間) (1時間) 21 20 2. ビデオ・ゲームも 4 歳以降 男女差 148 22 23 6 4歳 18 16 10 5歳 ここで,現代の 0 歳から 5 歳の子どもを り,4 歳 で 13 分,5 歳 で 19 分 長 い。 一 方, 取り巻く主要な 3 つの映像メディア(テレビ, 1 日のビデオ視聴時間では 2 歳以降,常に男 ビデオ,ゲーム)を,いくつかの観点から, 児が女児より 5 ~ 6 分長く,1 日のゲーム使 横並びで比較しておきたい。 用時間では,4 歳で 4 分,5 歳で 6 分,男児 1 日のテレビの接触時間・視聴時間,ビデ の方が長い。 オ視聴時間, ゲーム接触時間(すべて週平均・ こうしたことから,調査相手のほぼ全員が 全員平均)の変化を,0 歳から 5 歳まで横並 幼稚園・保育所に就園した 4 歳以降,テレビ びで比較したものが(図 14)である。 だけでなく,ビデオ・ゲームなど映像メディ 2 歳以降,接触時間,視聴時間ともに安定 してくるテレビに比べ,ビデオ視聴時間は 2 ア全般の利用の仕方に,わずかではあるが男 女差が芽生え始めていると推測される。 歳をピークに減少,代わって,ゲームの接触 時間が,4 歳,5 歳と,徐々に伸びてきている。 4 歳から 男児はゲーム女児はテレビ 男女別で比較してみると(図 15),女児の 4 歳以降の男児と女児には,1 日のテレビ・ 1 日のテレビ接触時間(週平均)が,男児よ ビデオ・ゲームとの接し方に,どのような違 308 │ NHK 放送文化研究所年報 2010 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 いがあるのだろうか。 図 16 ビデオ/ゲームの視聴・使用時間 (曜日別比較) 5 歳時点ではまだ,ゲームの接触者率がテ レビほど高くなく,また接触時間も少ないた め,あくまで参考データとしてみることしか ビデオ平日 ゲーム平日 分 60 できないが,テレビ視聴率総計において女児 が男児より 5%程度上回る時間帯(平日夕方 40 17 時半~ 19 時,日曜夜 19 時~ 20 時)に おいて,男児のゲーム接触者率が女児を常に 上回る傾向がみられた。 34 24 23 50 38 36 39 33 19 0 ビデオ日 ゲーム日 54 51 30 ビデオ土 ゲーム土 3 2 36 13 4 0歳 3 3 1 1歳 55 5 2 5 3 2歳 3歳 35 28 23 11 7 4歳 34 27 19 18 17 11 5歳 (n=1114) (n=1067) (n=1054) (n=907) (n=894) (n=885) 4 歳以降,女児は男児より 1 日のテレビ視 聴時間が長くなり,平日夕方のNHK教育番 本調査では,出生後間もなくの乳児期から 組や,日曜夜の民放バラエティ番組を「大人 子どもの生活にテレビが深く浸透している と一緒に」視聴する機会が増える。これに対 データが得られた。また,ビデオも 1 歳か して男児は,女児より少なくなったテレビ視 ら 2 歳にかけて急速に子どもの生活に入り込 聴時間の代わりに,1 日にゲームに費やす時 み,2 歳時のピーク後は減少傾向にありなが 間を少しずつ増やし始めている,といえるの らも,今だに不可欠なメディアである実態が かもしれない。 垣間みえた。さらに 4 歳以降,就園を機に行 4 歳時点で萌芽が見え始めた,男女のメ 動・交友の幅を広げ,幼児から子どもへと成 ディア接触時間の違いについては,今後も注 長していく過程で,子どもたちの生活には, 目して調査していきたい。 親だけでなく,友達との付き合いを通じて, 新しいジャンルのテレビ番組や,ゲームが急 土曜はビデオ・ゲームを楽しむ 1 日のビデオ・ゲームの視聴・接触時間を, 速に浸透していく様子がみてとれた。 こうしたメディアと子どもたちの関わりは, 平日,土曜,日曜の曜日別で比較したところ 家族,親子の関係や,子ども自身の成長にどの (図 16) ,0 歳~ 5 歳を通じたビデオと,4 歳, ように関連しているのだろうか。また,親や家 5 歳のゲームについて,視聴・接触時間の長 族のメディア生活の有り方は,子どもたちにど い順に,①土曜 ②日曜 ③平日 という同じ んな影響を与えているのだろうか。次章以降に 傾向がみられた。 言及する。 前述の通り,テレビ接触時間,視聴時間と もに,土曜日の時間が短いのは,外出が多い ことと,子どもが見たがる,あるいは,家族 で一緒に見られるテレビ番組が少ないことに よると考えられる。そうした背景から,外出 しない土曜日には,親子でビデオやゲームを 楽しむ実態があるのかもしれない。 309 0 歳~ 5 歳の子どものテ レビ接触・視聴に対する 親のフィルタリング行動 の変化 3 1. 両親のフィルタリング行動の経年変化 子どもの発達との関連にどのようなルートで 影響を及ぼすのだろうか。 本プロジェクトでは,この問題に対して 2 つのルートを想定している。第 1 のルート は,子どものテレビへの接し方をコントロー ルするもので,子どもが見てよい番組や見て 子どものテレビ視聴については,この 10 はいけない番組を決めているかどうか,子ど 年の間にアメリカ8)や日本の小児科学会の発 もに見せたくない番組はチャンネルを変える 達初期でのテレビ視聴時間の制限に関する勧 か,また食事中はテレビを消しているかどう 告に代表されるように,各家庭で養育者が子 か,という項目を用意し,父母それぞれに自 どもの視聴時間を厳しくコントロールすべき 分がどうしているかを評定してもらった。第 であることが強調されてきている。本研究で 2 のルートは,テレビから発信される情報の は,研究当初よりこうした子どものメディア 親子の共有のしかたに関するもので,リアル 接触をめぐる親の役割に注目し,図 17 のよ タイムでの内容の共有,評価的なコメントや うな枠組みで測定をおこなってきた。本節で 解説を通じて子どもの情報処理や記憶に影響 は,0 歳から 5 歳までの親のフィルタリング を及ぼすルートである。こうした共有機能に 行動の経年変化の実態について,子どもの性 関する項目として,子どもと一緒にテレビを 別や出生順位との関連を含めて報告する。 よく見ているかどうか,見ているテレビの内 子どものテレビ接触(子どもが起きている 居室でテレビがオンになっている状態で,必 容について子どもと話すかどうか,という 2 項目で質問している。 ずしも子どもはテレビを視聴しているとは限 表 4 に共有と選択各項目の肯定群(4.や らない)やテレビ視聴(専念して,あるいは やあてはまる と 5.あてはまる に回答した 何かをしながらもテレビを子どもが見ている 人数の合計)と否定群(2.ややあてはまら 状態)に対する親のかかわり方は,テレビと ない と 1.あてはまらない に回答した人数 の合計)の割合を年齢別に示した。父親につ いて肯定群の人数の変化を見てみると,共 図 17 子どものメディア接触に対する親の フィルタリング行動 〈情報の取り組み〉 メディア情報 ↓ ⇒ ↑ 〈情報の加工〉 子どものメディア接触行動 a)調整機能 (監督:supervising ・統制:control) ↓ ⇒ ↑ 発達への影響 b)共有機能 (共視聴:co-viewing ・解説:comment) 有項目である「子どもと一緒にテレビをよ く見る」では,0 歳では 35.9% であるが 1 歳 で 56.1% に上昇しその後 5 歳まで 50% 台で 推移している。同じく共有項目の「見てい るテレビの内容について○○ちゃんと話す」 では 0 歳では 11.7%と低率であるが,1 歳 で 35.8%,2 歳で 53.8% に上昇して,5 歳で 養育者自身のメディア観・接触行動や接触態度 310 │ NHK 放送文化研究所年報 2010 63.2% に達している。父親の選択に関する項 目でもっとも肯定群の割合が多かったのは 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 表 4 親のフィルタリング行動の変化(0 歳~ 5 歳) 父親 0歳 Yes * No ** 1歳 Yes No 2歳 Yes No 3歳 Yes No 4歳 Yes No 5歳 Yes No 共有 ○○ちゃんと一緒にテレビをよく見る 35.9% 44.4% 56.1% 26.2% 57.7% 26.8% 53.5% 33.3% 54.4% 32.1% 58.8% 27.8% 見ているテレビの内容について○○ ちゃんと話す 11.7% 75.4% 35.8% 39.8% 53.8% 24.9% 57.8% 25.5% 59.7% 23.1% 63.2% 18.5% ○○ちゃんに見せたくない内容の番組 はチャンネルを変えたりして見せない 24.3% 55.7% 40.1% 34.4% 55.1% 22.9% 58.9% 18.8% 59.4% 19.0% 60.9% 18.7% 選択 ○○ちゃんが見てよい番組を決めている 13.3% 67.1% 26.0% 40.4% 35.4% 34.5% 38.1% 30.4% 39.2% 31.2% 44.2% 30.9% ○○ちゃんが見てはいけない番組を 決めている 9.2% 食事中はテレビをつけない 25.9% 60.9% 33.5% 53.8% 38.3% 47.3% 41.8% 44.9% 40.0% 44.0% 42.4% 44.8% 母親 69.1% 17.0% 50.3% 26.7% 40.1% 29.4% 37.7% 29.2% 39.3% 33.9% 36.3% 0歳 Yes No 1歳 Yes No 2歳 Yes No 3歳 Yes No 4歳 Yes No 5歳 Yes No 共有 ○○ちゃんと一緒にテレビをよく見る 54.9% 28.2% 77.3% 11.6% 72.8% 12.2% 63.8% 18.0% 62.2% 19.7% 61.9% 19.4% 見ているテレビの内容について ○○ちゃんと話す 26.8% 59.3% 65.4% 19.0% 80.3% 8.6% 78.0% 9.8% 77.4% 75.1% 9.4% ○○ちゃんに見せたくない内容の番組 はチャンネルを変えたりして見せない 41.2% 41.8% 62.7% 19.9% 75.0% 9.8% 77.2% 9.1% 77.1% 10.8% 76.7% 8.8% 9.9% 選択 ○○ちゃんが見てよい番組を決めている 26.1% 50.7% 50.8% 26.3% 56.3% 20.0% 57.8% 19.8% 58.8% 18.1% 61.8% 17.5% ○○ちゃんが見てはいけない番組を 決めている 16.6% 58.9% 27.0% 40.7% 38.6% 30.4% 41.0% 29.2% 43.7% 25.8% 45.2% 27.6% 食事中はテレビをつけない 37.8% 50.2% 38.7% 44.7% 43.0% 42.5% 45.6% 39.2% 49.3% 37.1% 49.4% 38.8% 注) * : 4.ややあてはまる と 5.あてはまる の合計% ** : 2.ややあてはまらない と 1.あてはまらない の合計% 「見せたくない番組はチャンネルを変えたり して見せない」 であり,0 歳では 24.3% であ らかな差があり,一貫して母親の方が父親よ りも高い得点を示している。 るが,1 歳で 40.1%,2 歳で 55.1%と半数を 超え,5 歳で 60.9% に達している。母親の共 有に関する項目では,「一緒にテレビをよく 2. フィルタリング項目の経年変化 見る」 で 0 歳でも 54.9%とすでに半数を超 0 歳から 5 歳までの親のフィルタリング行 えており,1 歳で 77.3%と最高に達し,その 動の構造を確認するために年齢ごとに因子分 後 5 歳時の 61.9%までゆるやかに低下する。 析(主因子法,プロマックス回転)をおこ 選択に関する項目では,父親と同様に 「見せ なったところ,両親ともに仮定したとおりの たくない番組はチャンネルを変えたりして 2 因子(選択 4 項目,共有 2 項目)が年齢共 見せない」 でもっとも肯定群の割合が高く, 通に抽出された。 0 歳 で 41.2 % で そ の 後 上 昇 を 続 け,3 歳 で したがって,共有も選択も活発に機能して 77.2%に達し,その後も 80%近い値が継続 いる家庭が存在するとともに,共有はするが している。両親とも経年ごとに肯定群が増加 選択は甘い家庭,反対に選択は厳しいが共有 しており,親の子どものテレビ視聴に対する は少ない家庭,どちらもあまり活発ではなく 共有とコントロールに対する意識や行動は, 親の関与の薄い家庭など,フィルタリング機 子どもの発達に伴って向上していく傾向が明 能については多様なパターンの家庭が存在 らかになった。またこの傾向には両親間で明 している可能性がありえることになる。今 311 後テレビ視聴の発達に対する影響性を検討 荷量は小さいものの同じくテレビ接触の選択 していくにあたっては,各家庭のフィルタ 機能に関する項目「食事中はテレビをつけな リングのパターンを考慮していくことが重 い」の計 4 項目から構成されている。各項目 要であろう。 は 1.あてはまらない~ 5.あてはまる の 5 第 1 因子はフィルタリング機能のうち共有 段階で評定されているので,共有に関する得 機能を内容とする 2 項目「○○ちゃんと一緒 点は 2 点~ 10 点,選択に関する得点は 4 点 にテレビをよく見る」「見ているテレビの内 ~ 20 点の範囲に分布する。それぞれの因子 容について○○ちゃんと話す」で構成されて 構成項目の評定値を加算して共有得点,選択 いる。第 2 因子は,番組選択に関する 3 項 得点とし,以降の分析に用いた。 目 「○○ちゃんが見てよい番組を決めている」 図 18・図 19 には両親それぞれの共有得点 「○○ちゃんが見てはいけない番組を決めて と選択得点の平均値の経年変化を示したが, いる」 「○○ちゃんに見せたくない番組はチャ 共有・選択ともにすべての年齢段階で両親間 ンネルを変えたりして見せない」と,因子負 に統計的に有意な差( p < .01)が認められた。 選択得点については母親と父親の得点の上昇 図 18 両親のフィルタリング行動の経年変化 共有(父母) 8 7.83 7.5 7.51 かたちで得点が推移している。共有得点では 7.43 7.38 6.62 6.73 7 共有得点 6.5 6 5.5 6.67 7.38 6.97 5 0 両親で共通しているが,その後父親はゆるや 迎えたあとゆるやかに下降し,5 歳に向かっ 父親 母親 4.5 0 歳から 1 歳へと急激に得点が上昇するのは かに上昇するものの,母親は 2 歳でピークを 6.18 5.53 がほぼ平行しており,母親が常にリードする 聴をコントロールするというしつけ機能を 4.45 0歳 て父親との差が縮小する。子どものテレビ視 1歳 2歳 3歳 4歳 5歳 年齢 伴った親の選択行動と,子どもと一緒にテレ ビを見て話す,といったコミュニケーション に関する共有行動では異なる変化曲線を示す 図 19 両親のフィルタリング行動の経年変化 選択(父母) られるのか測定が待たれるところである。 16 15 13.65 14 選択得点 13.84 14.06 14.09 12.37 12.43 12.60 12.55 13 12 11 10.16 10 11.96 父親 母親 8.30 0歳 図 20・21 に子どもの性別による両親の共 有・選択得点の平均値を示した。共有得点で 7 0 3. 子どもの性別および出生順番と両親 のフィルタリング行動との関連 10.64 9 8 可能性が示唆され,今後どのような変化がみ 1歳 2歳 3歳 年齢 312 │ NHK 放送文化研究所年報 2010 4歳 5歳 は,母親は子どもの性別による有意な差はみ られなかったが,父親については 3 歳以降男 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 図 20 子どもの性別による父母間のフィルタリング 行動の比較 共有×性別 図 22 子どもの出生順番による父母間のフィルタリング 行動の比較 共有×出生順番別 第一子 第二子以降 男児 女児 9 8 7.45 7.57 7 7.53 7.37 6.84 6.40 6.70 6.67 6.14 6.22 5.56 5.49 6 7.85 7.82 6.93 7.46 7.29 6.52 7.45 7.34 7.13 6.81 8 ** 7 ** 6.15 5 4.91 4.42 8.21 7.94 7.45 7.05 7.13 6.20 ** ** ** ** 7.78 7.09 7.16 7.11 6.27 6.10 5.63 ** ** 7.63 7.63 7.34 7.13 7.11 6.58 4.87 母親 父親5歳 母親 父親4歳 母親 父親3歳 母親 父親2歳 母親 父親1歳 母親 図 21 子どもの性別による父母間のフィルタリング 行動の比較 選択×性別 ** 3.94 父親0歳 母親 父親5歳 母親 父親4歳 母親 0 父親3歳 1 0 母親 1 父親2歳 2 母親 3 2 父親1歳 3 母親 4 父親0歳 4 ** 6.70 6 5 4.47 ** ** 9 * ** ** 図 23 子どもの出生順番による父母間のフィルタリング 行動の比較 選択×出生順番別 男児 女児 第一子 第二子以降 * 16 16 14 12 10 8 10.07 10.25 14.37 13.68 14.18 13.88 13.84 13.88 13.75 13.60 12.64 12.62 12.60 12.57 12.18 11.96 12.47 12.35 12.47 11.93 10.72 10.57 14 12 10 8.11 8.52 8 12.74 12.12 12.37 11.77 10.79 10.30 10.51 10.03 13.94 13.78 12.74 12.00 * ** 14.23 12.71 12.10 13.84 13.23 14.26 13.89 11.91 8.39 8.23 母親 父親5歳 母親 父親4歳 母親 父親3歳 母親 父親2歳 母親 父親1歳 母親 父親0歳 母親 父親5歳 母親 父親4歳 母親 0 父親3歳 0 母親 2 父親2歳 2 母親 4 父親1歳 4 母親 6 父親0歳 6 ** 13.72 13.57 * = p < . 0 5 ** = p < . 0 1 児との共有得点が女児の場合よりも有意に高 の場合により得点が高い傾向が示されたが, い傾向が認められた。“男同士”のテレビ視 その他では有意な差はみられなかった。 聴時間の共有がこの時期から始まるのかもし 図 22・23 には子どもの出生順番(第一子 れず,具体的にどのような番組を父子で共有 と第二子以降)による共有・選択得点の平均 しているのかを分析していくことも興味深い 値を図示した。共有得点については出生順番 であろう。選択得点では 5 歳時の母親で男児 の効果は明らかで,両親ともどの年齢でも第 313 一子のほうが第二子以降の子どもより有意に 関連をみてみると(表 5・6),接触時間では 共有得点が高くなっている。最初の子どもの 年度間の相関が r = .43 ~ .74(いずれも p < 子育て時には両親とも子どもと一緒にテレビ .01 )で,0 歳時と 6 歳時との相関も . 43 と を視聴するより多くの機会や時間をとってい 中程度以上の相関係数を示している。視聴時 るが,第二子以降では子育ての忙しさが増し 間の年度間の相関は r = .15 ~ .66(いずれも たり,きょうだいでの視聴が多くなるなどの p < .01 )と接触時間よりも低めの値を示し, 理由で共有時間が減るのかもしれない。親の とくに 0 歳から 1 歳以降の時期への相関は 影響という観点からすると,出生順番は重要 .15 ~ .34 と比較的小さな値となっている。 な属性変数のひとつであるといえるだろう。 家庭ごとの接触時間は経年で比較的安定した 一方,選択機能については共有機能ほど顕著 傾向があるのに対し,子どもがついているテ ではないが,3 歳以降の父親で第一子のほう が第二子以降よりも有意に得点が高くなって いる。さらに年長の小学生期でも同様な傾向 がみられるのかどうか,今後も継続して検討 していきたい。 4 0 歳~ 5 歳の子どものテ レビ接触時間および視聴 時間の規定要因 1. 接触時間と視聴時間の縦断的関連性 図 2 でみたように,乳幼児期の子どもが 家庭内でテレビに接する時間量(接触時間) とテレビを見る時間量(視聴時間)は異なる 表 5 テレビ接触時間の個人差の縦断的関連 (ピアソンの相関係数) 測定時期 (人数) T2(1 歳) T3(2 歳) T4(3 歳) T5(4 歳) T6(5 歳) .52 ** T1 テレビ 接触時間 (1005) .44 ** .43 ** .45 ** (850) (839) (829) .67 ** .61 ** .59 ** .51 ** T2 テレビ 接触時間 - (948) (822) (815) (805) T3 テレビ 接触時間 - - .68 ** .64 ** .59 ** (839) (825) (819) T4 テレビ 接触時間 - - - .70 ** .64 ** (802) (792) T5 テレビ 接触時間 - - - T6 テレビ 接触時間 - - .74 ** (804) - - - - ** : p < .01 表 6 テレビ視聴時間の個人差の縦断的関連 (ピアソンの相関係数) 変化曲線をたどることが明らかになった。接 測定時期 (人数) 触時間は,0 歳時の 3 時間 13 分からスター .34 ** T1 テレビ 視聴時間 (1005) トして 1 歳時にピークに達し,その後 2 歳 .47 ** (991) T2(1 歳) T3(2 歳) T4(3 歳) T5(4 歳) T6(5 歳) .24 ** .24 ** .20 ** .15 ** (991) (850) (839) (829) .55 ** .46 ** .43 ** .38 ** T2 テレビ 視聴時間 - (948) (822) (815) (805) T3 テレビ 視聴時間 - - .58 ** .53 ** .45 ** (839) (825) (819) T4 テレビ 視聴時間 - - - .62** .57 ** (802) (792) T5 テレビ 視聴時間 - し変動がほとんどみられなくなる。また,接 T6 テレビ 視聴時間 - 触時間と視聴時間に関する個人差の縦断的 ** : p < .01 から 5 歳へと低下していった。 一方視聴時間は,0 歳時の 1 時間 6 分から 1 歳時の 1 時間 44 分へと急激な増加を示す が,2 歳以降は 1 時間 30 分前後でほぼ一定 314 │ NHK 放送文化研究所年報 2010 - - - .66 ** (804) - - - - 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 レビを見るかどうかには経年での変動性が相 て解析に投入することにした),出生順番(1 対的に大きい,といえよう。とくに 0 歳から =第一子,2 =第二子以降)の 3 つの変数を 1 歳で視聴傾向が変化する子ども(0 歳時に 測定した。 テレビをよく見ていたのに 1 歳以降はあまり 第 2 ブロック: 家庭の社会経済的要因 見なくなる,あるいは 0 歳時にはあまりテレ 父親の最終学歴および母親の最終学歴(1 ビに興味がなかったのに 1 歳以降テレビが好 =中学卒業,2 =高等学校卒業,3 =高専・ きになる,など)が少なからず存在すること 短大卒業,4 =大学卒業,5 =大学院卒業), を示しており,0 歳台(本研究の対象児童は 世帯収入(両親それぞれに尋ねた年収の合 生後 5 ヶ月~ 11 ヶ月で測定が開始されてい 計),母親の就労の有無(1 =無職,2 =有職) るので,正確に言えば 0 歳台の後半,となる) の 4 変数を測定した。世帯収入については, と 1 歳以降では個々の子どもにとってのテレ 2 歳までは両親それぞれの年収(1.100 万 ビの意味が大きく変化する可能性を示唆する 円未満~ 11.1200 万円以上)を合算した値 興味深い結果である。 を使用し,3 歳以降は母親に尋ねた家庭の経 2. 接触時間・視聴時間の規定要因: 階 層重回帰分析の結果から 1)接触時間・視聴時間に影響が予想される 要因について 済的ゆとりの程度(1.ゆとりが感じられな い~ 5.ゆとりがある の 5 段階評定)を投 入した。 対象の子どもが家庭外の保育施設を利用 しているかどうかは,子どもの家庭滞在時 間に大きく影響する。子どもの 24 時間にわ 本プロジェクトでは,子どものテレビ接触 たる正確なメディア視聴実態を把握するため 時間や視聴時間に影響することが予想される には,家庭外での利用状況を測定することが 要因として以下の 4 つのブロックを想定し, 必要であるが,本研究では家庭内での利用に 計 21 の変数について 0 歳から 5 歳まで 6 時 限定して日誌による測定をおこなってきてい 点で測定をおこなった。以下では,各年齢時 る。家庭内外を通した測定は今後の大きな課 でのテレビ接触時間と視聴時間を従属変数と 題となるが,今回の分析では,6 時点それぞ しておこなわれた,階層重回帰分析の結果に れにおける母親の就労の有無に関する変数を ついて報告する。 投入することによって,おおまかではあるも のの家庭内での利用時間のばらつきを統制す 第 1 ブロック: 子どもの基本属性要因 性別(男児= 1,女児= 2)と月齢(対象 ることにした。 第 3 ブロック: 子どもの他の活動時間 となった子どもたちは平成 14 年 2 月から 7 首都圏に住む 0 ~ 6 歳の乳幼児の生活時 月の間に生まれており,調査実施時には毎回 間調査9)では,24 時間から睡眠や入浴など 5 ヶ月間の月齢差が生じる。乳幼児期におけ の必需行動時間と移動などの拘束時間を引い る 5 ヶ月間の発達差は顕著なものと考えら た家庭での自由な“可処分時間”は,0 歳か れるため,全体の結果に対する統制変数とし ら 3 歳までは約 6 時間,4 ~ 6 歳では 5 時間 315 から 4 時間に減少していくと報告されてい 第 4 ブロック: 家庭内のテレビ使用環境 る。本プロジェクトでは,こうした家庭での 家庭内で子どものテレビ接触時間や視聴時 自由な可処分時間のなかに,乳幼児期の発達 間に影響することが予想される要因として, に必要な様々な活動 ―― 親や保育者,同年 両親自身のテレビ使用のあり方や,両親が子 齢や異年齢の子どもとの対人的コミュニケー どものテレビ接触にどのような考えや行動を ション,絵本読み,屋外での遊びなど―― 示しているかについて変数化し,経年で調査 がどう配分されているか,そこにテレビやビ を実施してきている。両親自身がふだんどれ デオなどの映像メディアを用いた活動がどの くらいテレビを見ているか(0.テレビは見 ような割合で配置されているかを同時に検討 ない~ 9.8 時間以上,の 10 段階,父母そ していくことによって,よりクリアにメディ れぞれが自己評定したもの),子どもに対す アの子どもの発達に対する影響性を論じるこ るテレビの影響に関する意識(1.悪い影響 とが可能となるだろうと仮定している。就学 のほうが多い~ 5.よい影響のほうが多い, 前の段階では,こうしたメディア接触活動以 の 5 段階で,両親それぞれに尋ねたもの),3 外の活動時間として,屋外での遊び時間と絵 節でみた両親のフィルタイリング得点(共有, 本読みの頻度や時間を取り上げて測定をおこ 選択)の 3 変数であるが,それぞれ 0 歳~ 5 なった。 歳までの 6 時点で測定をおこなったデータを 屋外遊びの時間については,0 歳調査時に 解析に投入した。 は質問票の項目として尋ねている。ふだんの また今回の分析では,乳幼児期のテレビ接 日の 1 日あたりの散歩を含む外遊び時間に 触時間に影響を及ぼすことが予想されるもう ついて,外遊びはしない・させないを 0 点, ひとつの要因として,母親の子育てストレス 30 分 ぐ ら い を 1 点,1 時 間 ぐ ら い を 2 点, 感の程度も取り上げている。都市化や核家族 以降 1 時間刻みで 5 時間以上を 6 点として 化,また父親の就労をめぐる厳しい社会状況 点数化し解析に投入した。1 歳以降は視聴日 の影響もあって,昼間母親がひとりで子育て 誌のなかでその日 1 日の外遊び時間を記録し を担当する家庭が増加しており,テレビやビ てもらい,その実時間を解析に用いた。絵本 デオ,ゲームなどが“子育てのお助けツール” 読みについては,0 歳と 1 歳時は保護者 1 用 としての機能を有している可能性がこれまで 質問紙のなかで, “絵本をよく読んであげる” のプロジェクトの結果からも示されてきてい という設問に対する評定値(1.あてはまら る10)。 ない ~ 5.あてはまる)を,2 歳以降は視聴 そこで今回の分析においても,経年で質問 日誌のなかで記録してもらったその日 1 日の を継続してきた母親の子育てストレス感を規 絵本読み時間(読み聞かせを含む)を解析に 定要因の 1 つとして取り上げることにした。 用いた。 子育ての肯定感に関する 3 項目(「(子育てに) また,視聴日誌でテレビ接触時間と同様な 充実感を味わっている」「毎日が新鮮である」 手法で測定をおこなったビデオ接触時間と 「(子育てに)自信がもてるようになった」)と, ゲーム接触時間も解析に投入した。 316 │ NHK 放送文化研究所年報 2010 否定感に関する 3 項目(「時間が足りなくて 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 苦しい」 「やりたいことが思うようにできな 表 7 0 歳時の接触時間の規定要因(階層重回帰分析) い」 「ひとりでホッとできるひまがない」)の 計 6 項目で尋ねており,各項目は 1.あては まらない~ 5.あてはまる の 5 段階評定で ある。各年齢調査時で測定された評定値を肯 定感,否定感ごとに加算した得点を以降の分 析で用いた。 2)接触時間に関する階層重回帰分析の結果 上記の 4 つのブロックをステップ 1 ~ス テップ 4 の順に投入した結果を表 7 ~表 12 に,また最終ステップの結果を図 24 ~ 29 に示した。最終ステップで有意な効果量を示 している変数については,そのほかの変数の 効果をすべて考慮したうえでも接触時間の長 短に対して規定力を持つもの(主効果)と推 定することができる。 表 7 の 0 歳時点での接触時間の分散に対 する効果量を見てみると,ステップ 1(子ど 性別 月齢 出生順番 父親学歴 母親学歴 世帯収入 母親就労の有無 - - - - ビデオ接触時間 ゲーム接触時間 外あそび時間(カテゴリ) 絵本読み頻度(カテゴリ) - - - - - - - - 父親テレビ時間 母親テレビ時間 父親テレビ影響観 母親テレビ影響観 父親フィルタリング共有 母親フィルタリング共有 父親フィルタリング選択 母親フィルタリング選択 母親子育て肯定感 母親子育て否定感 R2 R 2 変化量 - - - - - - - - - - .011* - - - - - - - - - - .045** .034** 庭の社会経済的状況に関する変数ブロック) による R2 変化量は .034( p < .05),ステッ プ 3(子どもの他の活動時間に関する変数ブ ロック)による R2変化量は .008(n.s),ステッ プ 4(親自身のテレビ使用,フィルタリング に関する意識と行動,母親の子育てストレス の程度に関する変数ブロック)による R2 変 化量は .241( p < .01),最終的な R2 値は .293 ( p < .01)となり,子どもの他の活動変数以 外のブロックがその効果の大小はあるもの の,有意な効果量を持つことが明らかになっ た。また,投入した 21 変数によって 0 歳時 点でのテレビ接触時間全体の 3 割弱を説明す ることが可能であった。図 24 にあるように, - .046 - .044 .034 - .103** - .095* - .007 - .089* -.081* - .011 .009 .006 - .013 - .040 .052 - .009 - .062 - - - - - - - - - - .052** .008 - .034 .069* - .005 - .012 .132** .389** .031 .064* - .004 .154** - .054 - .034 - .043 - .026 .293** .241** 従属変数 : テレビ接触時間 表 8 1 歳時の接触時間の規定要因(階層重回帰分析) もの基本属性に関する変数ブロック)の決定 係数 R 2は11).011( p < .05),ステップ 2(家 β ステップ ステップ ステップ ステップ 1 2 3 4 .060 .052 .057 .064* .049 .038 .046 .033 - .081* - .092** - .098** .025 性別 月齢 出生順番 β ステップ ステップ ステップ ステップ 1 2 3 4 .062 .052 .059 .040 - .012 - .023 - .014 - .025 - .039 - .053 - .069* .040 父親学歴 母親学歴 世帯収入 母親就労の有無 - - - - ビデオ接触時間 ゲーム接触時間 外遊び時間(日誌) 絵本読みの頻度(カテゴリ) - - - - - - - - 父親テレビ時間 母親テレビ時間 父親テレビ影響観 母親テレビ影響観 父親フィルタリング共有 母親フィルタリング共有 父親フィルタリング選択 母親フィルタリング選択 母親子育て肯定感 母親子育て否定感 R2 2 R 変化量 - - - - - - - - - - .005 - - - - - - - - - - .092** .087** 従属変数 : テレビ接触時間 - .064 - .175** - .067 - .150** - .042 .025 - .172** - .081* - .072 - .006 - .157** - .105** - .184** - .042 - .054 - .219* - .187** - .050 - .077** - .117** - - - - - - - - - - .177** .084** .108** .380** .011 .014 - .004 .095** - .092** - .091** - .074* .044 .406** .229** *= p < .05 **= p < .01 317 表 9 2 歳時の接触時間の規定要因(階層重回帰分析) 性別 月齢 出生順番 β ステップ ステップ ステップ ステップ 1 2 3 4 .087* .084* .075* .074* - .027 - .032 - .030 - .039 .018 .019 .001 .070* 父親学歴 母親学歴 世帯収入 母親就労の有無 - - - - - .173** - .113** - .078 - .103** ビデオ接触時間 ゲーム接触時間 外遊び時間(日誌) 絵本(本)読み時間(日誌) - - - - - - - - 父親テレビ時間 母親テレビ時間 父親テレビ影響観 母親テレビ影響観 父親フィルタリング共有 母親フィルタリング共有 父親フィルタリング選択 母親フィルタリング選択 母親子育て肯定感 母親子育て否定感 R2 R 2 変化量 - - - - - - - - - - .009** - - - - - - - - - - .100** .019 性別 月齢 出生順番 β ステップ ステップ ステップ ステップ 1 2 3 4 .117** .096* .102** .091** - .023 - .033 - .037 - .060 .009 - .020 - .040 .036 - .164** - .114** - .090* - .104** - .030 - .057 - .027 - .090** 父学歴 母学歴 経済的ゆとり 母親就労の有無 - - - - - .068 .021 - .060 - .114** - .088** - .028 - .062 - .106** ビデオ接触時間 ゲーム接触時間 外あそび時間(日誌) 絵本(本)読み時間(日誌) - - - - - - - - - .118** - .363** - - .008 - .068* - .012 - .005 - - .113** - - .106** - .002 - .098** .121** .340** .001 .070* 父親テレビ時間 母親テレビ時間 父親テレビ影響観 母親テレビ影響観 父親フィルタリング共有 母親フィルタリング共有 父親フィルタリング選択 母親フィルタリング選択 母親子育て肯定感 母親子育て否定感 R2 R 2 変化量 - - - - - - - - - - .014* - - - - - - - - - - .092** .077** 従属変数 : テレビ接触時間 - .101* - .182** - .093* - .054 - .107* - .177** - .081** - .043 - .009 - .094** - .041 - .032 - .018 - .058 .064 .015 - .123** - .093** - .052 - .014 - .096** - .395** - .010 - .067* - .044 - .051 - - .185** - - .017 - .043 - .018 .117** .385** .025** .267** 従属変数 : テレビ接触時間 表 10 3 歳時の接触時間の規定要因(階層重回帰分析) 性別 月齢 出生順番 表 11 4 歳時の接触時間の規定要因(階層重回帰分析) β ステップ ステップ ステップ ステップ 1 2 3 4 .041 .038 .037 .044 - .035 - .049 - .055 - .068* .033 .012 .010 .080* 父親学歴 母親学歴 経済的ゆとり 母親就労の有無 - - - - - .158** - .162** - .116** - .123** ビデオ接触時間 ゲーム接触時間 外遊び時間 絵本(本)読み時間(日誌) - - - - - - - - 父親テレビ時間 母親テレビ時間 父親テレビ影響観 母親テレビ影響観 父親フィルタリング共有 母親フィルタリング共有 父親フィルタリング選択 母親フィルタリング選択 母親子育て肯定感 母親子育て否定感 R2 R 2 変化量 - - - - - - - - - - .004 - - - - - - - - - - .117** .113** 従属変数 : テレビ接触時間 318 │ NHK 放送文化研究所年報 2010 - .160** - .170** - .110** - .130** - .052 - .063 - .081* - .089** 表 12 5 歳時の接触時間の規定要因(階層重回帰分析) 性別 月齢 出生順番 β ステップ ステップ ステップ ステップ 1 2 3 4 .169** .162** .156** .123** - .027 - .029 - .033 - .037 .047 .015 .004 .050 父親学歴 母親学歴 経済的ゆとり 母親就労の有無 - - - - - .088* - .099** .031 .007 - .075* - .070* - .054 - .032 ビデオ接触時間 ゲーム接触時間 外遊び時間(日誌) 絵本(本)読み時間(日誌) - - - - - - - - - .093* - .360** - .010 - .034 - .046 - .038 - - .095* - - .095* - .003 - .030 .135** .333** .017 .198** 父親テレビ時間 母親テレビ時間 父親テレビ影響観 母親テレビ影響観 父親フィルタリング共有 母親フィルタリング共有 父親フィルタリング選択 母親フィルタリング選択 母親子育て肯定感 母親子育て否定感 R2 R 2 変化量 - - - - - - - - - - .032** - - - - - - - - - - .100** .067** 従属変数 : テレビ接触時間 - .123** - .118** - .039 - .161** - .143** - .052 - .070 - .067 - .045 .003 .014 .007 - .083* - .084* .030 .010 - .037 - .035 - .094* - .079* - .056 - .354** - .009 - .045 - .073 - .055 - - .085* - - .082* - .090* - .050 .117** .320** .017* .203** *= p < .05 **= p < .01 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 図 24 0 歳時のテレビ接触時間の規定要因 (階層重回帰分析、最終ステップの結果) 月齢 出生順番 .064* 家族の 社会経済的要因 家族の 社会経済的要因 父親学歴 母親学歴 世帯収入 母親就労の有無 .069* 外遊び時間 絵本読み頻度 =.293** テレビ 接触時間 子どもの 生活時間要因 子どもの 生活時間要因 ビデオ接触時間 ゲーム接触時間 子どもの 基本属性要因 子どもの 基本属性要因 0 歳時( = 830) 性別 図 25 1 歳時のテレビ接触時間の規定要因 (階層重回帰分析、 最終ステップの結果) 月齢 出生順番 父親学歴 母親学歴 世帯収入 母親就労の有無 ビデオ接触時間 母親テレビ時間 母親テレビ影響観 父親フィルタリング共有 .154** 母親フィルタリング共有 父親フィルタリング選択 母親フィルタリング選択 -.077** 絵本読み頻度 -.117** 母親テレビ時間 =.406** テレビ 接触時間 .380** 父親テレビ影響観 母親テレビ影響観 父親フィルタリング共有 母親フィルタリング共有 父親フィルタリング選択 .095** -.092** -.091** 母親フィルタリング選択 -.074** 母親子育て肯定感 母親子育て肯定感 母親子育て否定感 母親子育て否定感 最終ステップまで有意な主効果を保持してい -.187** 外遊び時間 父親テレビ時間 .389** .064* -.105** .108** 家族の メディア環境要因 家族の メディア環境要因 父親テレビ影響観 -.081* ゲーム接触時間 .132** 父親テレビ時間 1 歳時( = 750) 性別 < .01 )であった。 た説明変数は 6 変数で,子どもの性別(女児 1 歳時になると,さらに多くの変数が有意 のほうが長め) ,ゲーム接触時間(ゲーム接 な効果量を示すようになり,全体の決定係数 触時間が長いほうが長め),父親と母親のテ R 2 値も .406( p < .01)と 0 歳時点よりも大 レビ時間(両者とも長いほうが長め),母親 きな値を示している(表 8,図 25)。ステップ のテレビ影響観(肯定的なものと考えている ごとの効果量では,ステップ 1 の子どもの基 ほうが長め) ,母親のフィルタリングの共有 本属性変数ブロック以外の 3 つのブロックで 傾向(共有しているほうが長め)の各変数で そ れ ぞ れ 有 意 な 値 を 示 し た( ス テ ッ プ 2 あったが,もっとも効果量が大きかったのは =.087, ステップ 3 = .084,ステップ 4 =.229, 母親のテレビ時間(β =.389, p < .01 ),次 それぞれ p < .01)。図 25 にあるように,最 いで母親のフィルタリング共有(β =.154, p 終ステップまで有意な主効果がみられた説明 319 図 26 2 歳時のテレビ接触時間の規定要因 (階層重回帰分析、最終ステップの結果) 月齢 2 歳時( = 654) .074* 出生順番 .070* 家族の 社会経済的要因 家族の 社会経済的要因 父親学歴 子どもの 基本属性要因 子どもの 基本属性要因 性別 図 27 3 歳時のテレビ接触時間の規定要因 (階層重回帰分析、 最終ステップの結果) 母親学歴 世帯収入 母親就労の有無 月齢 出生順番 父親学歴 外遊び時間 絵本(本)読み頻度 -.106** 経済的ゆとり 母親就労の有無 =.340** 母親テレビ時間 テレビ 接触時間 ゲーム接触時間 外遊び時間 -.070* 絵本(本)読み頻度 母親テレビ影響観 父親フィルタリング共有 母親フィルタリング共有 父親フィルタリング選択 父親テレビ時間 .363** .068* -.113** -.106** 母親フィルタリング選択 =.333** テレビ 接触時間 .093* 母親テレビ時間 家族の メディア環境要因 家族の メディア環境要因 父親テレビ影響観 -.081* ビデオ接触時間 -.099** .118** 父親テレビ時間 .080* -.089** 子どもの 生活時間要因 子どもの 生活時間要因 ゲーム接触時間 -.088** -.068* 母親学歴 -.090** ビデオ接触時間 3 歳時( = 684) 性別 .360** 父親テレビ影響観 母親テレビ影響観 父親フィルタリング共有 母親フィルタリング共有 -.095* 父親フィルタリング選択 -.095* 母親フィルタリング選択 母親子育て肯定感 .098** 母親子育て肯定感 母親子育て否定感 母親子育て否定感 変数は 11 変数で,母親の学歴(学歴が低い 感(肯定感が低いほど長め)の各変数であっ ほど長め) ,母親の就労の有無(無職群で長 たが,もっとも効果量が大きかったのは 0 歳 め) ,ビデオ接触時間(ビデオを長く見てい 時点と同様に母親のテレビ時間(β = .380, るほうがテレビは短め),外遊び時間(外遊 p < .01 であり),次はビデオ接触時間(β = びを多くしているほうが短め),絵本読み頻 -.187, p < .01 )であった。 度(絵本をたくさん読んでもらっているほう 2 歳時点( 表 9,図 26) では 4 つのステッ が短め) ,父親と母親のテレビ時間(両者と プの R2 変化量はすべて有意な値を示し,最 も長いほうが長め) ,母親のフィルタリング 終ステップで有意な値を示した変数は 11 変 の共有傾向(共有しているほうが長め),両 数であった。性別(女児のほうが長め),出 親のフィルタリングの選択傾向(選択を厳し 生順番(第二子以降のほうが長め),母親の くしているほうが短め),母親の子育て肯定 就労の有無(無職群で長め),ビデオ接触時 320 │ NHK 放送文化研究所年報 2010 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 図 28 4 歳時のテレビ接触時間の規定要因 (階層重回帰分析、最終ステップの結果) 月齢 .091** 出生順番 家族の 社会経済的要因 家族の 社会経済的要因 父親学歴 母親学歴 経済的ゆとり -.094** 母親就労の有無 =.385** ゲーム接触時間 外遊び時間 -.093** 絵本(本)読み頻度 テレビ 接触時間 子どもの 生活時間要因 子どもの 生活時間要因 ビデオ接触時間 子どもの 基本属性要因 子どもの 基本属性要因 4 歳時( = 663) 性別 図 29 5 歳時のテレビ接触時間の規定要因 (階層重回帰分析、 最終ステップの結果) 5 歳時( = 615) 性別 月齢 .123** 出生順番 父親学歴 母親学歴 経済的ゆとり 母親就労の有無 ビデオ接触時間 ゲーム接触時間 -.084* 外遊び時間 絵本(本)読み頻度 -.079* =.320** テレビ 接触時間 .096** 父親テレビ時間 母親テレビ時間 .067* 母親テレビ影響観 父親フィルタリング共有 母親フィルタリング共有 -.185** 父親フィルタリング選択 母親フィルタリング選択 母親テレビ時間 家族の メディア環境要因 家族の メディア環境要因 父親テレビ影響観 父親テレビ時間 .395** .354** 父親テレビ影響観 母親テレビ影響観 父親フィルタリング共有 母親フィルタリング共有 -.085* 父親フィルタリング選択 -.082* 母親フィルタリング選択 .090* 母親子育て肯定感 母親子育て肯定感 母親子育て否定感 母親子育て否定感 間(ビデオを長く見ているほうがテレビは短 リ ン グ の 選 択 傾 向 と 絵 本 読 み 時 間( β = め) ,絵本読み頻度(絵本をたくさん読んで -.106, p < .01 )であった。 もらっているほうが短め),父親と母親のテ 3 歳時点(表 10,図 27)では 3 つのステッ レビ時間(両者とも長いほうが長め),母親 プの R2 変化量で有意な値を示し(ステップ のテレビ影響観(肯定的なものと考えている 2・3・4),最終ステップで有意な値を示し ほうが長め) ,両親のフィルタリングの選択 た変数は 10 変数であった。月齢(月齢が低 傾向(選択を厳しくしているほうが短め), いほど長め),出生順番(第二子以降のほう 母親の子育て否定感(否定感が強いほど長め) が長め),経済的ゆとり(ゆとりがないほう の各変数であったが,もっとも効果量が大き が長め),母親の就労の有無(無職群で長め), かったのはここでも母親のテレビ時間(β = ビデオ接触時間(ビデオを長く見ているほう .363, p < .01 であり),次は父親のフィルタ がテレビは短め),外遊び時間(外遊びを多 321 くしているほうが短め),父親と母親のテレ 方向に作用していた。ここでは,1・2 歳時と ビ時間(両者とも長いほうが長め),両親の は異なり,子育て肯定感が強いほど視聴時間 フィルタリングの選択傾向(選択を厳しくし が長めとなる傾向が示されている。 ているほうが短め) の各変数であったが,もっ とも効果量が大きかったのはここでも母親の テレビ時間(β = .360, p < .01)であり,次 3)視聴時間に関する階層重回帰分析の結果 接触時間と同様の上記 21 変数を投入し, はビデオ接触時間(β = -.099, p < .01)で 視聴時間を従属変数とする階層重回帰分析も あった。 行った。その結果,最終ステップでも有意な 4 歳時点(表 11,図 28)では 4 つのステッ 2 主効果がみられた変数の内容は若干の違いは プの R 変化量で有意な値が示され,最終ス あるものの,ほぼ接触時間と共通した傾向が テップで有意な値を示した変数は 7 変数で 認められた。しかし,今回の解析に投入した あった。子どもの性別(女児のほうが長め), 4 ブロック 21 変数での全体の説明率(決定 母親の学歴(学歴が低いほど長め),外遊び 係数 R2 値)を比較してみると,接触時間で 時間(外遊びを多くしているほうが短め), は .293 ~ .406(平均 .346)と 3 割から 4 割 父親と母親のテレビ時間(両者とも長いほう 程度であったのに対し,視聴時間では .167 が長め) ,母親のテレビ影響観(肯定的なも ~ .282(平均 .242)と比較的低い値を示し のと考えているほうが長め),父親のフィル ている。家庭内でテレビが“オンになってい タリングの選択傾向(選択を厳しくしている る”ことと,それを子どもが“見る”という ほうが短め)の各変数であったが,もっとも ことは必ずしも同じ現象を指しているのでは 効果量が大きかったのはここでも母親のテレ なく,オンになっていても子どもがそれを見 ビ時間(β = .395, p < .01 であり),次は父 るかどうかにはさらに別の規定要因が関わっ 親のフィルタリングの選択傾向(β = -.185, ている可能性を示唆する結果であるといえよ p < .01)であった。 う。今後小学生期になると,子ども自身での 5 歳時点(表 12,図 29) でも 4 つのステッ 2 番組選択や時間選択の自主性も顕著になって プの R 変化量は有意な値が示されているが, くることが予想され,視聴時間の規定因につ 最終ステップで有意な値を示した変数は 7 変 いては,子ども自身のテレビに対する嗜好性 数と 4 歳時点と同じ数であったものの,1% や欲求充足性,視聴に対する集中性など子ど 水準で有意な主効果が観測されたのは性別と も自身の個人内的要因を重視した測定も必要 母親のテレビ時間だけであり,他の 5 変数は になってくると考えられる。 5%水準と比較的弱い効果量であった。性別 では女児のほうが男児よりも長めであり,ビ 4)まとめ デオ接触と絵本読み時間ではそれぞれテレビ 表 13 と 14 に,接触時間と視聴時間それ 視聴時間とは負の関係にあり,母親のテレビ ぞれの 0 歳~ 5 歳までの重回帰分析のまと 時間の長さは正の関係,また両親のフィルタ めを示した。前述のように接触時間と視聴時 リングの選択傾向がテレビ接触を短めにする 間では若干異なる結果の部分があり,それぞ 322 │ NHK 放送文化研究所年報 2010 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 れ年齢ごとに詳細に吟味していく必要はある う。 が,ここでは両者をあわせておおまかな規定 ②家庭の社会経済的要因では,家庭の経済的 因の特徴について以下 5 点にまとめておきた ゆとりや母親の学歴に関する変数が有意な い: 関連性を示しており,欧米に比べて階層差 が比較的小さいといわれるわが国において ①有意な効果がみられない年齢段階もあった も,家庭の社会経済的状況と子どものテレ が,子どもの基本属性については男児より ビ接触・視聴との関連は無視できないもの 女児のほうがテレビの接触および視聴時間 であると考えられる。 は長めである傾向がみられ,同様に出生順 ③子どもの可処分時間を分けるものとして測 番では第二子以降のほうが長めであった。 定をおこなった子どものテレビ接触・視聴 なぜ女児や第二子以降の子どものほうが長 時間以外の活動時間:ビデオやゲーム接触 めの接触や視聴となるのか,そのメカニズ 時間,外遊び時間,絵本読み時間は,0 歳 ムについて検討していくことが必要であろ 時のゲーム接触時間を除いて,すべて仮説 表 13 接触時間の規定要因のまとめ 0歳 <子どもの基本属性要因> 性別 + 月齢(0 歳時月齢) 出生順番 1歳 測定時点 2歳 3歳 + + 表 14 視聴時間の規定要因のまとめ 4歳 5歳 ++ ++ - + 0歳 <子どもの基本属性要因> 性別 月齢(0 歳時月齢) + 出生順番 1歳 + 測定時点 2歳 3歳 + - ++ 4歳 5歳 ++ + <家庭の社会経済的要因> 父親学歴 - -- 母親学歴 世帯収入 / 経済的ゆとり - 母親就労の有無 -- -- -- <子どもの生活時間要因> ビデオ接触量 -- -- -- - ゲーム接触量 + 外あそび時間(カテゴリ) -- - -- /(日誌) 絵本読み頻度(カテゴリ) -- -- - / 時間(日誌) <家庭のメディア環境要因> 父親テレビ時間 ++ ++ ++ + ++ 母親テレビ時間 ++ ++ ++ ++ ++ ++ 父親テレビ影響観 母親テレビ影響観 + + + 父親フィルタリング共有 母親フィルタリング共有 ++ ++ 父親フィルタリング選択 -- -- - -- - 母親フィルタリング選択 -- -- - - 母親子育て肯定感 - + 母親子育て否定感 ++ R2 .293** .406 ** .340 ** .333 ** .385 ** .320 ** <家庭の社会経済的要因> 父親学歴 - - - 母親学歴 世帯収入 / 経済的ゆとり - 母親就労の有無 -- - -- <子どもの生活時間要因> ビデオ接触量 -- -- -- -- -- ゲーム接触量 外あそび時間(カテゴリ) - - /(日誌) 絵本読み頻度(カテゴリ) -- -- / 時間(日誌) <家庭のメディア環境要因> 父親テレビ時間 ++ 母親テレビ時間 ++ ++ ++ ++ ++ ++ 父親テレビ影響観 母親テレビ影響観 + + 父親フィルタリング共有 + 母親フィルタリング共有 ++ ++ ++ ++ 父親フィルタリング選択 -- - -- 母親フィルタリング選択 ++ 母親子育て肯定感 + 母親子育て否定感 R2 .167** .236 ** .244 ** .260 ** .282 ** .264 ** 従属変数 : テレビ接触量 係数の符号が正:+:p<.05; ++:p<.01 係数の符号が負:- :p<.05; -- :p<.01 従属変数 : テレビ接触量 係数の符号が正:+:p<.05; ++:p<.01 係数の符号が負:- :p<.05; -- :p<.01 323 通り負の関連性を示した。子どもの生活時 子どものテレビに対する接触・視聴時間の長 間のなかでテレビが大きな割合を占めると 短には,子ども自身の要因,家庭の社会経済 いうことは,その他の活動の時間が短縮す 的要因,そして子どもの活動時間のあり方 るという現象を伴うものであることが確認 やテレビ視聴をめぐる親の教育的かかわり されたといえるだろう。小学生期では学習 (フィルタリング)といった家庭内の生活文 や読書,習い事活動など,さらに重要な活 化的要因といった多様な要因がかかわってい 動の種類が増えていくことが予想され,子 ることが明らかになった。それぞれの要因は どもの発達への影響性を検討していくため さらに複雑なメカニズムによって各家庭での にもこうした他の活動時間の測定は重要で テレビ時間の長短を決めていると考えられ, あろう。 今後は変数間の関係性の構造について検討を ④親自身のテレビ時間は子どものテレビ接触 おこなっていきたいと考えている。 や視聴時間の最大の規定因であり,乳幼児 期の子どもは両親がオン・オフするテレビ 環境のなかに包み込まれている状態である といえるだろう。とくに母親のテレビ時間 おわりに 本稿では,“子どもに良い放送”プロジェ は全年齢段階で強い効果量を有していた。 クトの乳幼児期の中間総括をもとに,調査対 一方,親のフィルタリング機能では,共有 象の子どもたちのテレビ視聴実態,およびテ は接触・視聴時間を増やし,選択は短縮す レビ接触時間・視聴時間を規定する要因につ る効果が認められた。とくに父親の選択の いて分析を行った。その結果,子どものテレ 効果が相対的に大きかった点は注目に値 ビの接触・視聴は成長とともに少しずつ変容 し, 家庭でのより適切なテレビ・コントロー しており,また母親のテレビ視聴時間をはじ ルの啓蒙や教育活動の対象に父親を含めて めとするさまざまな要因が複雑に絡み合っ いくことの有効性を示唆する結果であると て,子どものテレビの見方を規定しているこ 考えられる。 とがみえてきた。 ⑤ 1 歳時・2 歳時の母親の子育てに対するス 繰り返しになるが,本調査の最大の特徴は トレス感の強さはテレビの接触・視聴時間 同じ子どもたちを継続して調査するパネル調 を増加させる効果を持つことが示唆され 査である点にある。すなわち,0歳以降,成 た。子どもにもっとも手がかかるこの時期 長とともに,子どものテレビを中心とする映 に母親が子育ての補助的ツールとしてテレ 像メディアとの接触がどう変わっていくかが ビを使用している可能性も考えられ,④と たどれると同時に,映像メディアとの接触が 同様に,乳幼児期の適切なテレビ利用の啓 子どもにどんな影響を与えるかについて分析 蒙や教育活動の際に考慮すべき事項のひと が可能になる。 つであるといえるのではないだろうか。 本プロジェクトは,子どもの小学校卒業ま で調査を継続する予定であるが,あくまでも 以上のように,今回の分析から乳幼児期の 324 │ NHK 放送文化研究所年報 2010 分析の本線はメディア接触・視聴が子どもの 乳幼児期のテレビ接触を規定する要因 心身の発達にどのような影響を与えるかにあ 多様な観点から分析し,一定の知見を見出し る。一定の年齢で見られた影響が年齢ととも たいと考えている。 に消えていくことも考えられ,中間総括では, (なかいしゅんろう にしむらのりこ すが 子どもの心身の発達への影響は分析の対象か わらますみ) ら外した。それについては,調査が終了した 時点で,子どもの社会性・協調性などの性格 形成に関連があるのか,子どもの知的あるい は, 心の成長にどんな影響が見出されるのか, 注: 1) “子どもに良い放送”プロジェクトは「はじめに」 に述べているように,共同研究体制であり,本稿 のベースになっている研究成果は共同研究者全体 に帰属するものである。共同研究者としては,本 文に挙げた 8 名のほか,プロジェクトスタート時 にNHK放送文化研究所研究主幹であり,その後 活時間・2005』 「放送研究と調査」2006 年 4 月 号 7)中野佐知子『多様化する幼児のメディア利用 幼児生活時間調査 2003・報告』 「放送研究と調査」 2003 年 8 月号 8)American Academy of Pediatrics: 1999 Television and the Family. http://www/aap.org/ 甲南女子大学教授となった一色伸夫がいる。また, 9)NHK放送文化研究所幼児生活時間調査 2003. 共同研究者が指名して研究に協力する協力研究者 10)NHK放送文化研究所 2005“子どもに良い として,郷式徹(静岡大学准教授),酒井厚(山 放送”プロジェクト 第 2 回 フォローアップ調 梨大学准教授),向田久美子(駒沢女子短期大学 査報告書 准教授),松本聡子(お茶の水女子大学リサーチ 11)R2 は,関連要因として投入した独立変数〈表 フェロー),室橋弘人(お茶の水女子大学アソシ の左側に列挙された要因〉全体によって説明可能 エイトフェロー),近江玲(お茶の水女子大学ア な接触時間の分散(個人差)の割合を表わす。寄 カデミックアシスタント),田島祥(お茶の水女 与率ともいう。たとえば,0 歳時ステップ 4 では, 子大学大学院)がプロジェクトに参加している。 表の左側にある要因全体で,接触時間を決めてい 2)「“子どもに良い放送”プロジェクト フォロー る要因の 29.3%を説明していることになる。 アップ調査中間報告 第 1 回調査報告書」(NH K放送文化研究所) 3)同上 4)0 歳時点については,<大人と一緒/子どもだ け>という「誰と一緒に見たか」について,テレ ビ接触時間(専念+ながら+ついているだけ)の み調査しており,テレビ視聴時間(専念+ながら) の調査は 1 歳時点より開始した。 5)国民生活時間調査 2005 によると,土曜日は日 曜日より,一般的に外出する機会が多い傾向がみ られる。 6)吉田理恵・中野佐知子・渡辺洋子『日本人の生 325