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03 輪ゴムエンジンを作る

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03 輪ゴムエンジンを作る
03
輪ゴムエンジンを作る
~シンプルな熱機関~
はじめに
日常生活で利用する電気エネルギーは、光や動力など様々な形態に変換することが容
易で、インフラさえあれば輸送の必要もなく、現代社会において質の高い不可欠なエネ
ルギーである。電気エネルギーの大半は、一次エネルギーから熱を取り出し、その熱を
利用してつくった水蒸気でタービンを回して得られている。しかし、日常生活で、熱エ
ネルギーでタービンを回すなどの動力に変換している場面に出会う機会は余りない。
そこで、熱エネルギーを力学的エネルギーに変換する装置(輪ゴムエンジン)を作
り、エネルギーの変換を学ぶとともに、熱エネルギーを 100%利用することが不可能
であることを理解させたい。
単元及び目標
(1) 単元
(2) 人間生活の中の科学 ア 光や熱の科学 (イ) 熱の性質とその利用
(2) 単元の目標
①エネルギーには様々な形態があり、その形態を変換してエネルギーを取り出し、日
常生活に役立てることができることを知る。
②現代では、科学技術を高度に利用してエネルギー変換を行い、そのエネルギーを使
うことで便利かつ快適な生活が成り立っていることを知る。
③我々が利用できるエネルギーは無尽蔵ではなく有限であり、その有限なものを効率
よく利用することの意味を考えさせる。
原理
(1) ゴムは加熱されると縮む性質がある。
(2) 加熱前は重心と回転軸が一致しており、輪ゴムエンジンはどちら向きにも自然に
動き出すことはない。(図 1)
B
A
B
C
加熱前は、重心と車軸が
一致し、回転しない。
(注:○車軸(爪楊枝)の位置
C
A
D
図1
A
C
D
図2
A 付近が加熱されると、
輪ゴムが縮み車軸が左へ寄る。
×重心の位置)
B
D
図3
重心が車軸の真下に下りる
ことで回転が始まる。A 付近は放熱
し、新たに D 付近が加熱される。
(3) 図1の左半分を加熱するとゴムが縮み、加熱された左側に車軸がずれる。重心の
位置はほとんど変化しないため、重心が回転軸の真下に下りることで、回転が始ま
る。図2ではA付近が加熱され熱を吸収する。
(4) 90°回転した後の図3ではD付近が加熱され、ゴムが縮み始めるが、A付近では
-1-
放熱が始まり、ゴムの長さは次第に元に戻る。
(5) 同様の原理が繰り返され、加熱中はエンジンが回転を続ける。
(6) 熱機関の熱効率 e は下記の式で与えられる。この式から、熱機関を使って熱エネ
ルギーを仕事 W(この実験では回転エネルギー)に変換する際に必ず捨てる熱 Q 2
が必要であり、その結果吸収した熱 Q 1 を 100%仕事に変換できないことが分かる。
自動車のガソリンエンジンなども同じ原理であり、ガソリンを燃やして得た熱エネ
ルギーのうち、自動車を走らせる仕事に変換できるのは 20~30%程度である。輪
ゴムエンジンは熱機関における熱効率の原理をイメージさせるために適した 教材
である。
熱効率
e
W Q1  Q2

Q1
Q1
W・・・取り出した仕事(回転エネルギー)
Q 1 ・・・吸収した熱
Q 2 ・・・放出した熱
製作のポイント
(1) 事前にエンジン本体に使用するセロハンテープと同じくらいの円を別紙に描き、そ
の円を 16 等分する線を描いておく。その円上にセロハンテープを載せて 16 等分する
位置にマジックで印を付けるとよい。
(2) エンジン本体を車軸受け(フォーク)に載せたとき、もし時計回り(右回り)に自
然に回転しはじめたなら、左側の外周に粘土を適量付ける(反時計回りならばその
逆)。エンジン本体を様々な角度で車軸受けに載せこの操作を繰り返す。どのように
載せても自然に回転しないようになれば完了である。成功するか否かは、この調整次
第であり、粘り強く作業させることが必要である。
適量の粘土を左側に付け
る。
手を離すと時計回り(右回り)に
回転する場合
-2-
結果例
実験1
温風を当てると輪ゴムはどうなったか。
おもりが上昇したため輪ゴムは縮んだ。
実験2
1 片側に冷風を当てたとき、エンジンはどうなったか。
回転しなかった。
2 片側に温風を当てたとき、エンジンはどうなったか。
ゆっくり回転した。
3 中心付近に温風を当てると、エンジンはどうなったか。
回転しなかった。
考察例
1 輪ゴムエンジンが回る原理を考えなさい。
・ゴムは加熱すると縮む性質があるので、輪ゴムエンジンの片側を加熱する と、加熱
された側のゴムが縮み、車軸が重心からずれて重心が下へ下りる向きに回転する。
2
輪ゴムエンジンが回ったとき、熱風を当てたところでは輪ゴムが熱を吸収して縮んで
いる。熱風を当てていない側では、どのようなことが起きているかを説明しなさい。
・加熱されて縮んでいたゴムが温風の当たらない側にくるので、熱を放出して元の長
さに戻っている。
3
輪ゴムが「吸収する熱」、「放出する熱」に注目し、輪ゴムエンジンが連続して回転を
続けるためには、熱がどうなればよいか。熱の「吸収」、「放出」という言葉を使って説
明しなさい。
・エンジンの片側でゴムが熱を吸収し、その部分が反対側へ移動したときに熱を放出
する。この熱の吸収と放出が繰り返されることで、連続した回転運動を行う ことが
できる。
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