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「これからのテレビ」を巡る 動向を整理する Vol.4

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「これからのテレビ」を巡る 動向を整理する Vol.4
「これからのテレビ」を巡る
動向を整理する Vol.4
~ 2013 年 10 月- 2014 年 7 月~
メディア研究部
村上圭子
放送サービスの高度化の取り組みは,2014 年に入っていよいよ本格化している。6月には 4K 試験放送がスター
トし,秋からは,NHK がハイブリッドキャストサービスを総合テレビだけでなく,E テレや BS でもスタートさせる
としている。一方で,4K・8Kの新ロードマップの公表は予定より大きくずれ込み,民放でハイブリッドキャストサー
ビスをスタートさせようという局は依然出ていない。オールジャパンでテレビを盛り上げようという取り組みは今後
どこに向かっていくのだろうか。
また 7月には,これまでリアルタイム視聴率を唯一の指標としてきた地上波民放事業者の無料広告モデルに風
穴を開ける動きが相次いだ。半世紀以上維持されてきた盤石なビジネスモデルが変化していくのだとすると,そ
れは視聴者にとってどのような意味を持つのだろうか。
本稿は,通信放送融合時代のこれからのテレビのありようを継続的に研究するための作業の結果報告である。
今回は 2013 年 10月から2014 年 7月までの最新動向を整理,論考した。
キャッチコピーが躍る。肉眼を超えようとしてい
はじめに
る4Kの技術が,誰も見たことのない奥行きあ
6月2日,2014 FIFAワールドカップ開催に合
る映像をもたらすと解説されている。
わせる形で,日本初の 4K 試験放送「Channel
既に市場には4K 対応テレビが出回っている
4K」がスタートした。諸外国では,欧州を拠
が,そこに4K 映像が伝送されて“本物”
の 4K
点とする衛星運営事業者が 2013 年 9月から試
が見られるのはこれからである。今後どれだけ
験放送をスタートさせ,韓国では 2014 年 4月に
の人が家庭のテレビで4Kを視聴したいと思う
ケーブルテレビが専用チャンネルを開局してい
のか。その先に予定されている8Kについては
る。しかし総務省を始め関係者は,一般家庭
どうか。オールジャパンで取り組む「高画質化」
のテレビで4K 放送が見られる環境を整備した
という新サービスはスタートラインに立ったばか
という意味では,日本が世界初であると力説し
りである。
ている。
この動きと時を同じくして,NHK BSプレミ
7月末現在,全国 200 か所近くの家電量販店
アムで,あるドラマがスタートした。テレビ業
などに4Kテレビ視聴コーナーが設けられてい
界を舞台にした連続ドラマで,タイトルは『お
る。
「Channel 4K」のパンフレットには,
「あな
わこんTV 1)』。
“おわこん”とは“終わったコン
たは,
『本当はこうだったんだ』と思う。」という
テンツ”の略で,かつて一世を風靡したが今は
18
SEPTEMBER 2014
存在感や役割が完全に失われてしまった(=終
のビジネスモデルにも変化の兆しが見え始めて
わった)コンテンツのことを指す,ネット上の造
いる。もちろんこの動きは,経営的に苦境に立
語である。テレビや新聞など既存マスメディア
たされるテレビメーカーの様々な挑戦や,SIM
を揶揄する際によく用いられている。NHK が
ロックフリー政策でますます競争が激化する通
こうした自虐的ともいえるタイトルを掲げてドラ
信事業者の差別化戦略,グローバルな視点で
マを制作する意図や,どこまで内容面で踏み込
トライ&エラーを繰り返すネット事業者などの取
む覚悟があるのかなど,放送前から話題が集
り組みに比べると,ようやく重い腰を上げ始め
まっていた。
たというレベルかもしれない。しかし,地上波
ドラマは,本稿執筆中の 7月末現在も放送
民放事業者の新たなビジネスモデルへの取り
中のため論評は避けるが,
“テレビ=おわこん”
組みは,これまでリアルタイム視聴率のみを指
批判の底流にある,
“上から目線”の傲慢な取
標にした無料広告モデルが盤石であったが故
材姿勢,ユーザー目線が乏しい業界体質,閉
に,小さな動きでも見過ごさず観察しておく必
鎖的で旧態依然としたビジネスモデルなどへの
要がある。
違和感や抵抗感をくみ取り,それを,視聴率
また 2014 年前半は,放送サービスの高度化 3)
至上主義,下請け構造,パターン化した演出
を中心に,オールジャパンで進める様々なICT
など,視聴者に分かりやすいテーマに落とし込
施策の具現化をスタートさせる時期でもあった。
んで描いている。
冒頭に述べた4K・8Kや,2016 年の年明けま
さて,本稿「
『これからのテレビ』を巡る動向
でに配布が予定されている個人番号カード(以
を整理する」シリーズはこれまで,通信放送融
下,マイナンバーカード)を意識した新サービス
合時代におけるテレビに関連する新たな取り組
の開発など,国がけん引する業界横断の取り組
みに注目し,その可能性と課題を考えてきた。
みは,更に加速化していくだろう。しかし,事
このうち,特に放送事業者が提案する新サー
業者側は国の財政支援が途絶えた後も,これ
ビスに対しては,ネットユーザーを中心に人々
らの施策を自発的にサービスとして提供する心
の違和感や抵抗感が強く,その底流にはドラ
づもりがどの位あるのだろうか。また,人々から
マ『おわこんTV』で描かれているものと同じ感
“上から目線”と揶揄されることなく施策が普及
覚が存在している。2014 年2月に NHK 放送文
し,テレビの価値の再構築につながっていく見
化研究所(以下,文研)で行った 2 つの調査
2)
では,
「テレビ局押しつけのセカンドスクリーン
込みはどの位あるのだろうか。冷静に見極めな
ければならない。
サービスはいらない」
「テレビ局の生き残りのた
本稿は 3 部構成である。第 1章は 2013 年10
めのサービスというのが見え見え」
「これ以上テ
月から2014 年 7月まで(一覧表は編集作業の都
レビを高機能化してほしくない」など,否定的な
合上 2014 年 6月まで)の主な動きを事業者別に
声が多く聞かれた。新サービスのスタート段階
概観する。第 2 章はポスト
“リアルタイム視聴率”
で既にこうした受け止めがあることを,放送事
時代について展望する。第 3 章はオールジャパ
業者は肝に銘じておかなければならない。
ンで進める放送サービスの高度化はどこに向か
しかし2014 年に入ってからは,放送事業者
うのかについて考える。
SEPTEMBER 2014
19
1. 2013 年 10 月~ 2014 年 7 月のポイント
1-1 分類
化した。
事業者は,放送事業者,メーカー,ケーブ
ルテレビ事業者,通信事業者,ネット事業者,
本シリーズでは,テレビに関連する新たな取
4)
国・関係機関の 6 項目で変化はない。台頭する
り組みを,業界各紙誌 の記事を手がかりに事
動画配信サービス事業者については,ネット事
実関係を確認して一覧表を作成してきた。取り
業者とほぼ重なるため同じ括りとした。
組みをキーワードと事業者別に分類し,基本認
2013 年10月から2014 年 6月までの動向を整
識を得るためである。キーワードとその定義に
理した一覧表は本稿の最後に示した(表 2 )5)。
ついては,状況の変化に応じて変更を加えてい
本文と合わせて参照されたい。
るため,最新のものを表 1 に示した。
前回(本誌 2013 年12月号)からの変更は 3
1-2 概観
点である。まず,2013 年にはテレビの宅外 視
2013 年 10月から2014 年 7月までの動向にお
聴サービスが本格化したため「マルチデバイス
ける頻出キーワードは,
「4K」
「動画配信」
「プ
化」の小項目として「宅外化」を設けたが,こ
ラットフォーム」であった。では,事業者別に
の1年で一般化してきたので「マルチスクリーン
主な動きを整理していく。
化」に統合した。次に,テレビをネットにつな
ぎ様々なサービスを展開する「スマートテレビ
1-2-1 国・関係機関
化」だが,セットトップボックス(以下,STB)
最も慌ただしかったのは,2014 年 6月の試験
経由でのパッケージサービスが増えているため,
放送スタートに向けた4K 関連の動きであった。
小項目を設けた。3点目は,これまで「タイムシ
次世代放送推進フォーラム(以下,NexTV-F)
フト化」と「VOD 化」を同項目として扱ってきた
を窓口に,各事業者は伝送実験やコンテンツ
が,視聴者自身が録画し視聴する環境が広が
制作に取り組み,サッカーワールドカップに間
る「録画視聴化」と「VOD 化」は切り分けた方
に合わせる形で試験放送をスタートさせた。現
が実態をより正しく捉えることができると考え,
在,東経 124/128 度 CSデジタル放送で,1日
「タイムシフト化」を大項目にし,2 つを小項目
約 6 時間の放送が行われている。コンテンツは
7月末 現 在,ワール
表1
1
2
3
4
5
20
ドカップ関連を除く
キーワード
内容
マルチデバイス化
・マルチスクリーン化
・セカンドスクリーン化
スマートテレビ化
・放送連動(ハイブリッドキャスト)
・放送非連動・多機能
・セットトップボックス(STB)
タイムシフト化
・録画視聴化
・VOD 化
ソーシャル化
高画質化(4K・8K)
多様な端末の展開
・様々な端末でどこでも同じコンテンツが見られる
・テレビ端末に紐づいたサービス展開
テレビ端末をネットにつなげる展開
・テレビ端末をネットにつなぎ放送をより楽しむ
・テレビ端末をネットにつなぎテレビをより幅広く活用
・テレビ端末を STB につなぎ多様なサービスを展開
リアルタイム以外のコンテンツ視聴の広がり
・デジタル録画機,HDDや全録による録画視聴の広がり
・VOD サービスの利用の広がり
テレビの周りにコミュニケーションの場ができる
画面が高画質,高精細になる
SEPTEMBER 2014
と15 番 組しかなく,
それらが繰り返し放
送されている状況に
あ るが, 順 次 増 や
していく予定だとい
う。また,視聴者が
自宅で試験放送を見
ようとする場合,4K
対応テレビを持っているだけではだめで,対応
大臣の特認を得て行ってきた時差再生やマル
チューナー,HDMI2.0 ケーブル,CSアンテナ
チビューサービスなどが柔軟に行えるようにな
とICカードを揃えなければならない。7月末現
ると想定される。一方,民放においては,実
在,NexTV-F への視聴登録数は 285 件である。
証実験終了後にサービスをスタートさせると明
4K・8Kと共に放送サービスの高度化のもう1
言している局はまだない。
つの柱は,放送連動型スマートテレビサービス
もう1つ触れておきたいのが,チューナーが
のハイブリッドキャストである。現在,サービ
内蔵されていないモバイル端末でも,
“いつでも
スを行っているのは NHKのみである。民放に
どこでも”テレビ放送を楽しむ宅外視聴サービ
ついては,2014 年1月から3月にかけ,地上波
スの規格化が行われたことである。NexTV-F
キー 5 局などが,総務省の実証実験の枠組み
が公開した規格を採用した受信機(テレビもし
で,番組連動企画や CM 連動クーポン配布な
くは録画機)を購入し,モバイル端末とペアリ
どに取り組んだ。実証実験を請け負った三菱
ングすれば 利用が 可能で,2014 年 3月以降,
6)
総合研究所は報告書 で,ユーザーがまず専
対応機器が販売されている。 用テレビを準備し,次にテレビに対応したメー
実はこの種のサービスは,既に 2013 年初旬
カーのコンパニオンアプリをダウンロードし,更
からNAS 10)などを通じ提供する事業者が相次
にアプリに対応した端末とテレビとを同一無線
いでいた。しかし,それらは著作権保護の観
LAN 環境でペアリングしないと十分に楽しめ
点などからARIB 11)の運用規定上認められな
ないという,サービスそもそもの利用障壁の高
いとして,サービス提供事業者と放送事業者の
さについて指摘している。この指摘について
間で摩擦が生じていたのである12)。今回の規
は,6月末に(一社)IPTVフォーラム 7)が公開し
格化は,こうした摩擦を解消し,宅外視聴に
た「放送通信連携システム仕様 2.0 版」で,ア
いわば国の“お墨付き”を与えるものであった。
プリをメーカー共通で進める方向性が示唆され
ただ,自宅の受信機とのペアリングは 3 か月に
ている。ただ,メーカーがこれから発売するテ
1 度行わなければならず,放送事業者の意向を
レビにこの 2.0 の仕様を採用するのか,また,
くみ録画再生の CM スキップ機能搭載の実質
現在出荷済みのテレビの1.0 仕様をバージョン
禁止を謳うなど,これまで流通していたサービ
アップするのかについては,それぞれコストが
スより,ユーザー側からすると利便性に欠ける
かかるため,メーカーごとの判断に委ねられる。
内容となっている。
今後のハイブリッドキャストのサービス展開
については,NHK が今秋から 4 波 8)で展開し
ていくとしている。2014 年 6月末に放送法 等
の一部改正法が公布されたことで,放送済み
の番 組関連に限られていた NHKのネット活
1-2-2 メーカー
次にメーカーの動きであるが,やはり最初に
4K 関連について触れておこう。
(一社)電子情報技術産業協会(以下,JEITA)
9)
用業務は,放送前,放送中も可能となった 。
の統計 13)によると,4K 対応テレビの2013 年の
今後,NHK は実施 基 準を作り,それをもと
年間出荷台数実績は 26 万6,000 台であり,テ
にサービスを行うことになるが,これまで総務
レビ全体の中では約 5%と,まだ普及に向かっ
SEPTEMBER 2014
21
ているとは言い難い。ただ JEITAは今後 4K
対応機種がまだ発売されていないので言及は
が本放送へと向かっていく中,2017年には4K
控えるが,オールジャパンでハイブリッドキャス
と2Kの出荷台数が逆転し,2018 年には4K 対
トを進める中,この動きが今後どのような意味
応テレビがテレビ出荷台数全体の約 65%を占め
を持ってくるのか,注視していきたい。いずれ
ると予測している。
にせよ,この 2 社は自社によるスマートテレビ
4Kに関して,現在最も積極的なのはソニー
機能の開発を推し進めるより,前述したように
とシャープである。民間調査会社 BCNのデー
4Kの開発に集中して取り組んでいこうとしてい
タによると,2014 年上半 期の 4K 対応テレビ
ると思われる。
の国内シェアの約 65%はソニーが占めている。
2014 年 秋には, 試 験 放 送に対応するチュー
1-2-3 通信事業者
ナーの発売も予定している。シャープは,出荷
通信事業者では,NTTぷららのIPTVサー
台数のシェアでは 11.6%とソニーに大きく出遅
ビス,
「ひかりTV」の動きが目立った。ひかり
れているものの,既に 6月末に日本で初めてと
TVとは,地上波,BS,多チャンネル,VOD
なる4K 試験放送対応チューナー付き録画機を
サービスや,アプリなどの各種スマートテレビ
発売している。
機能を,NTTのフレッツ光回線を使って提供
続いて4K 以外の動きである。東芝ライフス
するサービスである。2014 年 3月現在で契約数
タイル(以下,東芝)とパナソニックは,引き続
は約 280万世帯,5 年で契約数を約 3 倍に伸ば
き全 録機の開発に熱心に取り組んでいる。2
している。
社とも,これまでの機能を大きく上回る時間と
現在,特に力を入れているのが 4Kサービス
チャンネル数の録画が可能な機種を発売した。
である。2014 年 4月には4KのVOD 配信 実 験
パナソニックの最新機種では,最大で10 チャ
を,6月末には試験放送をスタートさせた。試
ンネル,21日間の録画が可能となっている。
験放送では独自編成の「ひかりTV 4K」も放
東芝はスマートテレビ化についても熱心であ
送中で,コンテンツ制作にも意欲を見せている。
る。クラウドサービスを提供する画面上に動画
実サービスは,VODは 2014 年中,放送も2015
広告を掲載したり,外部のポイントサービスと
年のスタートを見込んでおり,VODと放送を同
連携し,クラウドサービスを利用するとポイン
一チューナーで視聴できるSTB の開発を進め
トが貯まるなどの取り組みを相次いでスタート
ている。
させている。テレビを“売り切る”のではなく,
ネットに接続してもらうことで,販売した後も継
続してビジネスができるような仕組み作りを模
1-2-4 ケーブルテレビ事業者
ケーブルテレビは IPTVと共に,4Kサービス
の早期実施に向け,国から強い期待がかけら
索している。
スマートテレビ化についてはこの他,2014 年
れている。帯域利用やチャンネル割り当てに調
6月末にGoogle のスマートテレビプラットフォー
整が必要な放送事業者に比べ,既に敷設して
ム「Android TV」の発表会の席で,ソニーと
いるケーブル網を使って同時再放送を行うこと
シャープが 採用を検 討する旨が発 表された。
が可能だからである。今後,全国 50 か所の店
22
SEPTEMBER 2014
頭や視聴スペースで試験放送を展開していく予
読み取り機能をケーブルテレビの STB 側に持
定である。また,NexTV-F への番 組提供や,
たせ,マイナンバーとケーブルテレビのIDを紐
将来的な展開を意識した地域映像のアーカイブ
づけることで,テレビをあらゆる情報関連サー
化にも取り組んでいくという。4K 対応の STB
ビスのウインドーにしていこうということが考え
については,2015 年に導入できるよう開発が進
られている15)。これが実現すると,ユーザーは
められている。
テレビ画面上で,例えば医療や薬情報の閲覧,
こうした4Kへの取り組みもさることながら,
自治体関連の様々な申請,公的施設の予約な
現在,ケーブルテレビ事業者は大きな変革の
どができ,逆に自治体側からは,テレビ画面
時を迎えている。事 業者の横断的連 携が急
を通じてユーザー個人への災害情報伝達や見
速に進められているからである。2013 年11月
守りサービスなどを行うことが可能となる。
には,日本ケーブルテレビ連盟内に「ケーブ
こうした方向性は,業界自身の模索というよ
ル・プラットフォーム推進ワーキンググループ」
り,どちらかというと国がけん引する形で打ち
と「ID 連携検討ワーキンググループ」を設置す
出されている。2014 年 6月末に政府が改定した
ることが決まった。これらは総 務省の「放送
「世界最先端 IT 国家創造宣言 16)
」では,暮らし
サービスの高度化に関する検討会(以下,高度
に関わる利便性の高い官民のオンラインサービ
化検討会)」の取りまとめを受けたものだが,こ
スを本人確認の連携で実現させる手段として,
うした連携を急ぐ背景には,加入数は日本の
スマホ,タブレットと共にケーブルテレビが明記
全世帯の過半数の約 2,800 万余りに上っている
された。しかし,スマホ,タブレットは端末そ
ものの,既存のサービスの提供にとどまってい
のものでありサービスではない。もしも並列な
ては,新たに台頭しているOTT
14)
に対抗して
らば単にテレビと記載すべきであろう。しかし,
いけないという危機感がある。2014 年 4月に
テレビではなく,敢えてケーブルテレビと明記さ
は業界1位と2 位のJ: COMとJCNの合併が行
れていることに意味があるのである。
われ,業界の寡占化が進んでいるが,一方で,
つまり,4Kやマイナンバーカードの普及など,
地域資本で成り立つ独立系事業者も少なくな
国は最先端のICT 政策を推し進めていく場とし
い。そのため,業界横断の“公器”的なプラッ
て,日本の過半数の世帯が加入しているケー
トフォームを形成することで,個々の事業者が
ブルテレビを効果的に活用しようとしているの
過度な設備投資を行うことなく,業界全体のス
である。 現 在 開 発 中の STB には,4K 対 応,
ケールメリットを生かし,より魅力的なサービス
マイナンバーカードリーダーの他,ハイブリッド
をユーザーに提供しようとしているのである。
キャスト機能も搭載される予定である。
そのプラットフォームの要として考えられてい
こうした一連の動きは,結果としてケーブル
るのが,2016 年の年明けまでに配布される予
テレビ事業者の顧客囲い込みを国が後押しし
定のマイナンバーカードである。マイナンバーは
ているのではないかとの疑念を招きかねない。
社会保障と税の共通番号だが,カードの普及,
(一社)日本ケーブルテレビ連盟の岡村信吾審議
利用促進に向け,公的個人認証の民間開放が
役(7月末時点)は筆者の取材に対し,
「確かに
行われる見込みである。現在,このカードの
そう映るかもしれない。しかし,ケーブルテレ
SEPTEMBER 2014
23
ビユーザーはもともと高齢者や,都会以外の住
広告付きモデル(AD-VOD)と,動画広告が挿
民など,ICTによるサービスを手にしにくい人
入されない見逃し番組やミニ動画などがあり,
達である。こうした人達に,若者や都会に住む
後者にはサイトにバナー広告などがつくことが
人と同じようにストレスなく最先端のICT サー
多い 18)。次にサービス主体である。主な主体と
ビスを活用してもらえる環境を整えることこそ
しては,①地上波放送事業者,②多チャンネ
が,ケーブルテレビの公共的使命である」と答
ル放送事業者(ケーブルテレビ,IPTV,有料
えている。
衛星),③動画配信サービス事業者(ネット,ビ
1-2-5 ネット事業者
デオレンタルなど),④通信事業者(携帯キャリ
ア),⑤テレビメーカー(アクトビラ)がある19)。
今回,ネット事業者の動きの大半は動画配
②以下は,コンテンツを集めて提供する事業を
信に関するものであった。Amazon, 楽天,
メインとするアグリゲーターであるが,コンテン
LINE がそれぞれ動画配信サービスをスタート
ツ制作を本業とする①の放送事業者は,自局
させ,KADOKAWAとの経営統合を発表した
単営のVOD サイトを運営しながら,②以下のプ
ドワンゴは新たなコンテンツプラットフォームを
ラットフォームに対し効果的にコンテンツを出し
形成すると発表した。しかし最も話題となった
分けていくというウインドー戦略をとっている。
のは,2014 年2月末,アメリカの動画配信サー
最近,放送事業者の取り組みで急速に増え
ビス事 業者のHulu が日本向け事 業を分社化
ているのが,無料の動画広告付きモデルであ
し,日本テレビ(以下,日テレ)に譲渡すると発
る。このモデルでオリジナル動画の配信をス
表したことであった。日テレはこれにより,自
タートさせたのがフジテレビ(以下,フジ)とテ
局のコンテンツだけでなく,動画コンテンツの
レビ東京(以下,テレ東)である。また,TBS
17)
アグリゲーター という立場で定額制動画配信
テレビ(以下,TBS)は 1999 年から無料配信し
サービスに参入することになったのである。こ
てきたニュース動画「News i」に対し,2014 年
の詳細については次項で改めて触れたい。
7月から動画広告を採用した。また,2014 年1
月から「日テレいつでもどこでもキャンペーン」
1-2-6 放送事業者
前回の原稿執筆の際(本誌 2013 年12月号)
,
と称し,番組の本編部分のみを配信していた日
テレも,7月から,放送時にCM が流されてい
放送事業者の動きで最も大きなトレンドだった
た箇所に動画広告を挿入するこのモデルに切り
のはセカンドスクリーンアプリであったが,今回
替えた。
は動画配信とプラットフォーム化であった。
自局サイトでの定額制モデルも広がりを見せ
動画配信にはいくつかのパターンがあるの
ている。例えば 2013 年 3月にテレ東が開始し
で,予め確認しておく。コンテンツの提供方法
たビジネス番組に特化したパッケージサービス
とサービス主体の2 つの観点から整理する。
は,順調に契約者数を伸ばしているし,NHK
まず提供方法である。大きく有料と無料に分
オンデマンドも見逃しや特選の見放題パックの
かれ,有料モデルには都度課金(T-VOD)
と定
会員数を伸ばし,2013 年度決算で黒字化にこ
額制(S-VOD)
がある。無料モデルには,動画
ぎつけた。これらの動きを見てみると,都度課
24
SEPTEMBER 2014
金から始まった放送事業者の自局単営のVOD
かし於保氏によれば,
「それぞれの局に日テレ
サイトは,次第に無料広告と定額制に比重を移
の方針を説明し理解していただいており,摩擦
してきているといえよう。
はない。民放 2 局には Huluのお盆キャンペー
また,同じ定額制でもプラットフォームとし
ンスポットも放送していただく」という。ただ,
て動画配信に乗り出したのが,前述した日テレ
フジとテレ朝からは今のところコンテンツの提
が運営するHulu Japan(以下,Hulu)
である。
供はない。
Huluでは, ユーザーは月額 933 円( 税 抜 )を
ここでもう1つ,このHuluの動きの前から,
払えば,海外ドラマや地上波の番組など 1 万
“日本のテレビの”動画配信プラットフォームを
3,000 余りのコンテンツを多様なデバイスで視
標ぼうしてきた,
「もっとTV」の取り組みの最
聴できる。日テレのインターネット事業局長の
新状況を紹介しておきたい。もっとTVは 2012
於保浩之氏は筆者の取材に対し,
「“日本テレ
年 4月,電通と地上波民放キー 5局(同年 7月
ビの”ではなく“日本のテレビの”動画配信プ
に NHKも参加)が,
“地上波放送のリアルタイ
ラットフォームとして Huluを育てたい。コンテ
ム視聴促進”を合言葉に業界横断でスタートさ
ンツを作る放送事業者自らがサービスを展開す
せたサービスである。対応テレビのリモコンの
る環境を,早く作らなければならない。OTT
専用ボタンを押すと,放送中の番組に関連する
に安くコンテンツを供出させられる環境ができ
VOD が並ぶ画面に遷移し,そこで直接購入し,
てからでは遅い。そのために日テレが先導役を
視聴ができるシームレスなサービスを最大の売
果たす」と語った。日本には現在,Netflix の
りにしていた。しかし,一部のメーカーにしか
ような圧倒的なシェアを誇るOTTの動画配信
対応機器の製造に応じてもらえず苦戦,その
サービスは存在しないが,例えば NTTドコモ
後モバイル端末への対応を経て,2014 年1月に
は「dビデオ」を,ソフトバンクは「UULA」を
地上波民放キー5局横断の定額制サービスをス
月額 500 円前後で提供しており,前者は約 413
タートさせた。しかし,月額 900 円(税抜)
で品
万人,後者は約111 万人の会員数を獲得してい
揃えが 300 エピソード程度というのは,他の定
る 。Huluの会員数は未公表だが,100 万人
額制サービスよりかなり割高であることは否め
には到達していないという。新規会員獲得に向
ない。Huluの日テレへの譲渡が発表されたの
けて海外ドラマの充実や,
「アンパンマンチャン
は,その翌月のことであった。
20)
ネル」を始め子ども向けアニメなど特徴を徐々
プラットフォームを形成する事業者側の大き
に打ち出しており,今後はオリジナルドラマも
なねらいは,ログデータ収集→ビッグデータ解
手がけたいという。
析→サービス拡大→新サービス展開,という
果たして Huluは今後,
“日本のテレビの”動
ビジネスモデルにある。アメリカのNetflixの成
画配信プラットフォームに進化していけるだろう
功が語られる際も常に紹介されるのは,ビッ
か。現在,Huluにはテレ東,TBS,NHK が
グデータ解析による最適化されたレコメンデー
コンテンツを提供しているが,日テレが運営す
ションと番組制作への活用,という内容であ
ることになると各局がコンテンツを引き揚げて
る。しかし,今回の地上波民放キー局のように
しまうのでは,との懸念も当初は聞かれた。し
競合関係にある事業者が集まって横断プラット
SEPTEMBER 2014
25
フォームを形成する場合,ログデータをどこが
して展開する事業は,災害対策を始め公共性
管理しどう活用していくか,つまりビジネスをど
が高い分野であり,特定の放送局が対応する
こが握るかが常に問題となる。もっとTVの場
だけでは効果が少ない」
「マイナンバーカードに
合は電通が 21),Huluの場合は日テレが収集,
対応した管理体制の実現に向けて,プラット
活用することになる。参加する個別の事業者
フォームの機能を果たす推進体制の構築を目
22)
はプラットフォーム事業者とNDA を締結して
指す」としている。
データ提供を受けることが可能だが,いずれに
気になるのは,このプラットフォームが社会
せよ全てのログデータを閲覧,活用できるのは
的課題の解決という放送事業者の公共的役割
プラットフォーム事業者であるという事実には変
を果たすことが最終目的なのか,それとも,そ
わりはない。このことが他の事業者の参加やコ
れを足がかりにした新たなビジネスの開拓まで
ンテンツ提供を消極的にさせているのである。
視野に入れているのか,ということである。先
こうしたプラットフォーム事業者による,ビッ
行してシステムを設計した日テレと,連携を呼
グデータを活用したビジネスモデルは,サービ
びかけられた事業者側が同床異夢にならない
スが一定の規模以上にならないと効果を生まな
よう,表層的でない議論が行われることを願い
い。今後,この2 つのサービスは“競合関係の
たい。またこの取り組みはマイナンバーカード
中の協調領域”をどこまで作ることができるの
の活用を謳うなど,前述したケーブルテレビ事
か。正念場はこれからであろう。
業者の取り組みと重なる部分も大きい。何らか
放送事業者によるプラットフォーム化という
の調整もしくは ID 連携などがなければ,サー
動きは,動画配信の領域だけにとどまらない。
ビスを利用する自治体や地域住民側の混乱を
最も早い取り組みとしては,2011年に発足し
招きかねない。社会実装にあたっては,サービ
た,ローカル民放事業者によるマルチスクリー
スを受ける立場に立った丁寧な設計が求められ
ン型放送研究会がある。これまではセカンドス
るであろう。
クリーンアプリや入力システムの共通化を図って
更にこれ以外にも,プラットフォーム化の動
きたが,そろそろアプリ経由で収集されるログ
きはいくつもある。放送のメタデータを作成,
データをビジネスに活用する段階になってきて
販売している事業者に対し,地上波民放キー 5
いる。50 局を超える加盟局間でどんな枠組みを
局と広告代理店が共同出資してサービスを統合
作っていくのだろうか。
していこうとする動きや,視聴誘導や番組レコ
また,日テレは,ネットに接続したテレビ端
メンドを行うアプリ「ハミテレ」24)を地上波民放
末とIDを連携させ,収集したログデータを活
キー 5局とNHKでリリースするなどの動きであ
用して災害情報伝達や見守りサービスを提供
る。いずれも各事業者が協調することでテレビ
するプラットフォーム「JoinTown」を提案してい
の価値最大化を図り,それが結果的に自局の
る。総務省の実証実験の枠組みで 2 回の避難
価値向上に結びつくという期待から生まれてい
訓練を行い,2014 年はサービスの社会実装に
るものである。6月末に公開されたハイブリッド
歩みを進める段階にある。日テレは総務省に
キャストの2.0 仕様も,放送事業者横断のサー
提出した書類
ビス展開が想定されている。
26
23)
で,
「テレビ放送とIDを融合
SEPTEMBER 2014
しかし,単にサービスをプラットフォーム化
地上波民放キー 5局及び NHK 総合の番組のう
すればうまくいくというほど事はたやすくはな
ち,放送日も含め7日間以内の平均再生視聴率
い。協調する意味の熟慮や,効果の測定なく
が高かった上位 50 番組である 26)。最も高かっ
しては,関わっても労多くして益少なしとなり
たのは TBS 系列のドラマ『ルーズヴェルト・ゲー
かねない。また,業界横断の取り組みはイン
ム』で 7.7%,上位 10 番組のうち 8 つがドラマで
パクトが強いだけに,迷走すると却って視聴者
あった。これまでも,ドラマはよく録画再生さ
の混乱とテレビ離れの助長にもつながりかねな
れるとか,リアルタイム視聴の半分位の割合で
い。プラットフォーム化を打ち出すことが流行
再生視聴される番組もあるということが指摘さ
りのような放送事業者の昨今の風潮には,そう
れていたが 27),今回,それが測定データで裏
した危うさが潜んでいる。
付けられた形となった 28)。
いずれにせよ,こうした動きが増えたことで,
また,録画再生時にどの位 CM がスキップ
普段は競争関係にある各局の担当者同士が腹
されているのかについても,今回の調査で明ら
を割って議論する場が以前より増えていること
かとなった。筆者の取材に対しビデオリサーチ
だけは間違いない。こうした議論の中から,既
は,
「CM 再生視聴の割合は約半数という傾向
存の枠組みを超える新たな発想が生まれる可
が確認されている」との回答を寄せた。文研の
能性もある。プラットフォームの構築ありき,で
最新の調査 29)では,
「再生するときにCMを飛
はなく,そのプロセスで生み出される化学反応
ばして見る」に「よくある」と答えた人が 76.2%,
「ときどきある」が 11.9%,他社の調査 30)でも
に期待したい。
「いつも飛ばす」
「ときどき飛ばす」を合わせて
2. ポスト“リアルタイム視聴率”時代
8 割超という結果が出ており,今回の約半数と
いう数字はいささか意外ではあった。ともあれ,
2014 年 7月は,リアルタイム視聴率による無
日常化していると言われていた録画再生視聴
料広告モデルという,これまで半世紀以上続い
におけるCM スキップの実態が,測定データと
てきた地上波民放事業者のビジネスモデルに風
して初めて示された意義は大きい。
穴を開ける2 つの動きがあった。1つは録画再
海 外 に目を転じると, アメリカで は 既に
生視聴データの公表,もう1つは動画広告付き
2006 年に調査会社のニールセンが録画再生視
見逃し無料モデルのスタートである。2 つは別
聴率の測定を開始し 31),翌年には公表 32)して
個の動きではあるが,新たなビジネスモデルの
いる。現在は,その数字を含め CM 部分だけ
模索という意味では,底流でつながっている。
を切り出した CM 視聴率が広告取り引きの指標
以下,それぞれの意味を押さえておきたい。
として用いられている。日本では 2011年から
2-1 録画再生視聴データ公開の意味
7月14日,視聴率調査 会社のビデオリサー
25)
ビデオリサーチが 調査を開始し,3 年後の今
回,ようやく公開に至った。今後,2015 年1月
のデータ提供を目指すとしているが,取り引き
チは,録画再生視聴の調査データ を一部公
の指標とするかどうかについては明言していな
開した。公開したのは,2014 年 4月から6月の
い。単純に比較すると,アメリカと比べ取り組
SEPTEMBER 2014
27
みが 5 年以上遅れていることになるが,ビデオ
れる。言い換えると,総世帯視聴率の低下傾
リサーチは「アメリカと日本ではメディア環境や
向が続き,一方でネット広告費が拡大している
広告取り引きスタイルも異なるので,遅い早い
中,番組制作費をサポートしてくれるタイム広告
の問題とは捉えていない」と言う。
主のテレビ離れをいかに食い止められるか,そ
日本の広告ビジネスが他国と比べて特徴的
なのは,
「タイム」と「スポット」という2 つの異
なった広告形態が存在することにある。スポッ
トは「番組に関係なく局が定める時間に挿入さ
のための対策ということであろう。
2-2 動画広告付き
見逃し無料モデルの意味
れるCM 枠内で放送する広告」で,どれだけ
では,先にも少し触れたが,同じく7月にス
の人がどれだけの回数見たのかを示す「延べ
タートした日テレの動画広告付き見逃し無料モ
視聴率(GRP)」が取り引きする際の指標とな
デルはどのような意味を持つのだろうか。この
る。一方,タイムは「個別の番組を提供し,そ
モデルの最大の特徴は,放送時にCM が流さ
の番組に含まれるCM 枠内で放送する広告」で
れていた箇所に,その時の CMとは異なる広告
あり,契約期間は 2クール(6 か月)が基本で
主の動画広告を挿入するというものである。広
ある。料金には番組の制作費が含まれている。
告主には,1か月間に動画広告を露出する権利
広告主に個別の番組や放送枠を「提供」という
が「枠」として販売される。テレビでいえばス
形でサポートしてもらう代わりに,放送事業者
ポット枠的な位置付けである。番組本編は早送
は競合企業を排除し広告主の製品を番組内に
りできるが,動画広告はスキップできない。
登場させるなどブランドのイメージアップにも貢
日テレで見逃し無料サービスの企画が初めて
献する,いわば“持ちつ持たれつ”の日本特有
出されたのは 5 年前の2009 年に遡る。提案者
33)
の手法である 。世界的に見ればスポットが一
は,当時日テレに転職して2 年目の太田正仁氏
般的であり,特にオールスポットのアメリカで
であった。太田氏は,テレビ離れが進む若年
は,録画再生視聴も含めた CM 視聴率が,日
層に番組に接触してもらうにはこの方法以外に
本よりも早期に指標として確立してきたのであ
はないと考えた。しかし社内では,権利者へ
る。ビデオリサーチの言う“広告取り引きスタイ
の許諾や独自編成を行う系列局との調整をどう
ル”の違いとは,以上のことを示している。
するのか,そもそもそれ以前に,無料で見逃し
ビデオリサーチは当面の間,詳細データにつ
視聴できるようになるとリアルタイム視聴率への
いては公表する予定はないとしている。リアル
影響が出かねないのではないかと,慎重な受
タイム視聴率のように1分刻みのデータを公表
け止めが大勢を占めていたという。
すると,個々の CM スキップの実態が明らかに
しかし,既にイギリスでは 2006 年頃から見
なってしまうことがその理由の1つと思われる
逃し無料サービスが実施されていた。そこで太
が,そもそも今回のデータ提供は,これまでリ
田氏はイギリスの複数の放送局を訪問し,この
アルタイム視聴率でしか示せなかった番組や枠
サービスがリアルタイム視聴率には影響がない
の価値を,録画再生視聴の実態を示すことで
こと,動画広告が新たな収入源になっているこ
少しでも補強していくことがねらいであると思わ
となどの情報を収集し,プロジェクトチームで局
28
SEPTEMBER 2014
内,権利者,系列局,広告主などを回った。
「丁
視聴についてだが,これが仮に広告取り引きの
寧な説明は必要だったが,思っていた以上に理
指標となり,テレビ番組の制作費が維持もしく
解を得られた。広告主や権利者の中には,もっ
は増加し,その結果,放送事業者の良質な番
と早く対応してほしかった,という声も少なくな
組制作につながっていくのであれば,視聴者に
かった。最も説得するのが大変だったのが,リ
とっては朗報である。ただ,録画再生視聴は
アルタイム視聴を第一に考える社内だった」
。
新たに生まれた価値ではなく,これまで可視
追い風もあった。2013 年は“動画広告元年”
と言われ,これまでバナー広告やリスティング広
告
34)
が主流だったネット広告の世界の空気が一
変した。Twitter,Facebook,Yahoo! が 動 画
化される手段がなかっただけという見方もでき
る。そこに広告主がどれだけの価値を認めて
いくのか,もう少し成り行きを観察していく必
要がある。
広告をスタートさせ,広告配信技術を持った海
次に動画広告付き見逃し無料モデルについ
外のプラットフォーム事業者も日本市場に参入し
てである。2014 年2月に文研で行った調査 35)で
てきた。このため広告主の間でも,ネットに動
も,見逃し無料は,番組アクセスを促進させる
画広告を出したいという気運が一気に高まって
様々な新サービスの中でも飛びぬけてニーズが
いたといえよう。
高いという結果が出ていた。まさに視聴者に長
テレビ視聴率の世界とネットでの動画再生で
は数字の大きさはまるで異なる。しかし広告主
にとっては,録画再生視聴のようにCM スキッ
らく待たれていたサービスが実現しつつあると
いえよう。
ただ,このモデルが普及していくとすれば,
プを気にする必要はないし,また,現在は動
キー局制作の番組にローカル CMを流す系列
画広告はランダムに挿入されているが,ゆくゆく
局は内心穏やかではないだろう。ローカル民放
は個人の視聴傾向に合わせたターゲティングな
のプラットフォームであるマルチスクリーン型放
どができる可能性も秘めている。日テレは 8月
送研究会のサービス部会長で電通関西支社の
現在,7 社と契約しているが,動画広告を出し
今谷秀和氏は,2014 年 3月に文研が行ったシ
たいと希望する広告主はまだ相当数いるという。
ンポジウムで,放送事業者にとっては広告主を
太田氏は,
「強いプラットフォームが必要な課金
差し替える動画広告付き見逃し無料モデルでは
型 VODに比べ,既にコンテンツに動画広告が
なく,リアルタイム放送と同じローカル CM がそ
挿入されているので,単体でどこにでもばらまく
のまま流れる同時再送信などの新サービスが広
ことができる。自局 HP だけでなく,番組表や
がることが望ましい,としている。これらのい
番組記事,SNS,キュレーションメディアにも
わば“準リアルタイム放送”的なサービスには
展開し,どんどんシェアしてもらえる環境を作っ
どの位ニーズがあるのか。そして,その際のビ
ていきたい」と抱負を語った。
ジネスモデルをどう設計するのか。録画再生視
2-3 視聴者にとっての意味
聴の指標化ができれば,こうしたサービスに同
じ指標を当てはめることができるのかもしれな
以上の 2 つの動きは,視聴者にとってどのよ
い。ユーザーのニーズと放送事業者のビジネス
うな意味を持つのだろうか。まず,録画再生
モデルの接点がどこにあるのか,引き続き見つ
SEPTEMBER 2014
29
までのリリーフであり,登板を急がなければ海
めていきたい。
外のプレーヤーがマーケットを先取りして手遅
3. オールジャパンはどこに向かうのか?
れになる。収益になるか見定めてからという段
「はじめに」で述べたように,2014 年前半は,
する強い危機感が示された。こうした議論を踏
階ではない」と,4Kの実施が遅れることに対
日本の成長戦略,国際戦略の一環としてオール
まえて提出されたのが,試験放送スタートの時
ジャパンで進める放送サービスの高度化の施策
期を,4K は当初予定の16 年から14 年に,8K
が本格的に動き始めた時期であった。4Kの試
は 20 年から16 年にそれぞれ前倒ししたロード
験放送が無事スタートし,ハイブリッドキャスト
マップであった。これについて構成員からは,
の新たな技術仕様も公開された。しかし,日進
「非常にアグレッシブ」
「かなりきつい」
「奇跡を
月歩で進む技術とは裏腹に,新サービスの方
起こすイメージ」との発言も次々となされたが,
向性を見定めるための議論は困難に直面してい
やるしかない,やればできるはず,という空気
る。これは新しい取り組みを始める時につきも
が検討会を覆っていた。
のの“産みの苦しみ”なのだろうか。以下,4K・
伝送路としては,IPTV,ケーブルテレビを
8K,ハイブリッドキャストのそれぞれについて,
除くと,2014 年の試験放送でスタートさせるの
国の検討会などの議論を軸に考察する。
は「東経 124/128 度 CS」,続いて2016 年スター
3-1 4Kなのか? 8Kなのか?
4K・8Kの議論は,2012 年11月の高度化 検
トとして想定されるのが「東経 110 度 CS 左旋
円偏波 37)
(以下,東 経 110 度 CS 左旋)等」と
された。ちなみに右旋と左旋は同一周波数で,
討会からスタートし,翌年 6月にロードマップ
右旋が偶数チャンネル,左旋が奇数チャンネル
が示された。その1年後の2014 年 6月頃には,
である。これまで日本は「東経 110 度 CS」では
より具体的なロードマップが公表される予定と
右旋しか利用していなかったため,新たな帯域
36)
なっていた 。しかし,本 稿執筆時(7月末)
である左旋であれば十分なチャンネル数が確
になっても,新しいロードマップは示される気
保できると考えられたのである。そして2020 年
配がない。どこがボトルネックとなっているの
には,これらに加えて現在,BS 民放やNHK
か。以下,時系列に議論を振り返っていく。
のBS2 波,WOWOWなどが使っている「東経
3-1-1 前倒しのロードマップ
高度化検討会の第 1回では,
「4Kと8K がほ
110 度 BS 右旋 38)等」が候補とされた。
3-1-2 フォローアップで課題顕在
ぼ時を同じくしてサービスとして出てくる可能性
ロードマップが示された後,各事業者は補正
もある」
「コンテンツの制作に関してはいっそ最
予算を活用しながら,コンテンツの制作や受信
初から 8K で」など,日本以外で開発が行われ
機の開発,受信環境の検証などを行ってきた。
ていない 8Kに対し,いささか前のめりとも感じ
そこから見えてきた課題の解決とロードマップ
られるほど,期待が込められた発言が相次い
具体化に向け 2014 年2月から開催されているの
だ。第 2 回では,ある構成員から,
「4K は 8K
が,
「4K・8Kロードマップに関するフォローアッ
30
SEPTEMBER 2014
プ会合」である。
ンネルが,2015 年 3月に放送を終了することが
会合では,まず地上波民放事業者から,4K
7月に発表され,現在,今後空き帯域となるこ
コンテンツの制作がいかに困難か,課題が次々
の帯域を伝送路として利用することが検討され
と報告された。
「まだ一層の奇跡的な努力とブ
ている。ただし,ここで4K 放送を行おうとし
レークスルーが必要」というのがコンテンツ制
ても,最大で 3 チャンネル分しかとることがで
作に対する事業者達の概ねの認識であった。
きない。そのため,
「東 経 110 度 BS 右 旋」で
また伝送路については,
「チャンネルプランが
現在放送中のチャンネルの圧縮方式 39)を効率
どうなって,どう我々が関わっていいのかが見
化し,そこで新たに 3 チャンネル分の帯域を生
えない」
「何が 4K で何が 8Kなのか。4Kをどこ
み出して合計で 6 チャンネルとし,それを地上
まで進め,どの時点で 8Kにするのか」と疑問
波民放キー 5 局とNHKに割り当てるという案
の声が相次いだ。 も検討されているという。ただ,上記は4K 放
技 術面では,受信環 境の課題が報告され
送のみの話である。同じ帯域で同時に 8Kの
た。2016 年からの伝送路の候補として考えら
試験 放送を行おうとすると,各局にそれぞれ
れていた「東経 110 度 CS 左旋」だが,家庭で
24 時間フルで4Kを放送するチャンネルを割り
受信しようとすると,アンテナ,ブースター,同
当てることは物理的に成立しなくなる。そのた
軸ケーブル,チューナーを新たに設置しなけれ
め,当面は NexTV-F が地デジ難視聴対策チャ
ばならないなど視聴者の負担が大きく,それ
ンネル終了後の 3 チャンネルを所有して,各局
らを早期に解消するのは困難であることが,検
が制作した4Kと8Kのコンテンツを編成してい
討の結果,分かってきたのである。
き,2018 年に向けては,4Kのみ 6 チャンネル
こうした中,コンテンツの充実と放送の早期
での本放送になるのか,
「東経 110 度 CS 左旋」
開始を強く訴えたのが,4K 対応テレビの新機
「東経 110 度 BS 左旋(要国際調整)」の利用の
種を次々と市場に投入しているメーカーであっ
可能性も含めていくのか,現在,議論が行わ
た。2016 年の「東経 110 度 CS 左旋」スタート
れているという。
が難しいならば,ロードマップで 2020 年の伝
チャンネルさえ割り当てられれば,放送事業
送路の候補として掲げていた「東経 110 度 BS
者は各自,そこで課金や広告モデルでコンテン
右旋」利用の議論を前倒ししてほしいという提
ツ制作費を回収するビジネスモデルを模索する
案がなされた。メーカーからすると,伝送路が
ことができる。しかし,視聴者をどの程度確保
決まらなければチューナー内蔵テレビの製造が
できるかの目途が立たない中で個別に送信設備
できず,その結果,普及がなかなか進まないか
を抱えることにはリスクもある。また,4Kチャン
らであろう。
ネルが割り当てられた後,将来,技術革新が
3-1-3 新ロードマップと今後
進んで 8K 放送が可能にならないとも限らず,一
方で,現実性がないと言われてきた地上波の
「 東 経 110 度 BS 右 旋 」に は,BS 民 放 や
4K 放送が,本当に実現できないのか,期待も
NHKのBS2 波などと共に,地デジ難視聴対策
捨てきれない。以上のような先読みがつかない
のチャンネルが割り当てられていた。そのチャ
中での複雑な葛藤の渦中にあるため,合意形
SEPTEMBER 2014
31
成がなかなかできない,というのが放送事業者
のテーマの検討が行われたが,多言語字幕に
の実情なのではないかと思われる。ただ,チャ
ついては何度も議論が紛糾した。その議論に
ンネルの割り当てなしに4Kコンテンツを制作し
は,ハイブリッドキャストを始め放送事業者が
続けるためには国の補助が不可欠であるという
通信放送融合サービスを本格化させる上で避
のは,放送事業者の一致した見解のようである。
けては通れない重要な論点が存在した。以下,
会合の議論では,受信環境が整備されない
とビジネスモデルが構築できない,という意見
に対し,両者は“ニワトリとタマゴの関係”だ
検討会の議論から振り返っていく。
3-2-1 なぜ多言語字幕か? という意見が出ていた。チャンネルとコンテン
まずそもそもなぜ,スマートテレビによる多
ツの関係もこれと同様であろう。現状において
言語字幕サービスが検討されることになったの
は,伝送路ありきの議論に陥らず,伝送路に
か。その理由について総務省は,①東京オリ
紐づかなくとも成り立つコンテンツ主体のビジ
ンピック開催に向け多くの外国人観光客の訪日
ネスモデルを構築していくことが,日本のコン
が期待され,安心・安全情報を始め必要な情
テンツ制作を長年けん引してきたプロバイダー
報を円滑に提供する環境の構築が必要,②テ
としての地上波民放事業者及び NHK が果た
レビの多言語字幕の付与が有効だが,放送波
すべき役割なのではないだろうか。
による字幕提供は運用規定上,日本語を含め
6月にスタートした「Channel 4K」のキャッ
2 言語まで,③しかしスマートテレビ(総務省
チコピーが「あなたは,
『本当はこうだったんだ』
資料ではハイブリッドキャストと同義)では運
と思う。」であったことは前述した。ユーザー
用上の制約がなく,サードパーティーの参入も
が“本当はこうだったんだ”と思うテレビの「高
期待できるため,と整理している 40)。
画質化」は4K でとどまるのか,それとも8Kま
でいくのか。徐々に対応テレビやチューナーな
3-2-2 スマートテレビの
“ 世界観 ”
どが普及し,視聴環境が整い始める中,成長
検討会ではまず事務局側から,想定される
戦略や技術の進展,事業者のビジネスの論理
典型的なサービスとして2 種 類の案が示され
だけによらない,ユーザーニーズを踏まえたリ
た。1つはベストエフォートを予め前提とした
アリティーあるロードマップが提出されることを
サービス,もう1つは高い正確 性を確保した
心待ちにしたい。
サービスである。ベストエフォートとは,最大
3-2 安心・安全? ベストエフォート?
限努力はするが品質や正確性は保証しないとい
う意味で,今回の場合,多言語翻訳の精度が
「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ
ある程度の水準に達したら,不十分でも早めに
会合」とほぼ同時期に,総務省ではもう1つ,
サービスインを目指そう,という意味で使われ
放送サービスの高度化に関連する検討会が立
ていた。
ち上がった。
「スマートテレビ時代における字
この提案に対し,いずれのサービスも難し
幕等の在り方に関する検討会」である。この検
いと真っ向から反発したのが NHK であった。
討会では「多言語字幕」と「CM 字幕」の 2 つ
32
SEPTEMBER 2014
「NHK が行うなら放送番 組におけるベストエ
フォートは許容されないと認識」と述べ,日本
ることで,何とか落とし所を見いだした。
語字幕でも正確性の確保に多大な労力を投入
もう1つは,NICTのような自動翻訳サービ
しているのに,
(正確な)多言語字幕に取り組
スが広がると,放送事業者による多言語字幕
むのは難しいと主張した。更に,サードパー
サービスがビジネスとして成立しないのでは,
ティーがベストエフォート型サービスを展開する
という疑 念であった。 例えば 放 送の 音声を
ことに対する協力にも消極的な姿勢を示した。
キャッチしたりAR 42)でテレビの日本語字幕部
このNHKの姿勢に対し,
「考え方は分かる
分をかざして自動翻訳ができるようになると,
がそれでは話が進まない」と切り返したのは,
放送事業者が労力を割いて正確性の高いサー
慶應義塾大学教授の村井純氏であった。
「放
ビスを提供しても,それにお金を払う人などい
送番組の内容は 100%提供側の問題(責任)だ
ないのではないか,というものである。放送事
が,字幕は番組を受け取る側の問題と捉える
業者側から見れば,放送した音声や字幕をア
こともできるのでは」
「字幕を受け取る側が多言
プリで読み取る行為はただ乗りに見えるかもし
語サービスの質の向上に参画できる仕組みを
れないが,だからといってわざわざハイブリッ
作ることが大事」と,受け手の当事者責任を
ドキャスト技術で放送と通信を同期させなくと
強調し,そもそもスマートテレビの世界観とは
も,この手のサービスを開発するのは自由で
そういうものではないかと持論を展開した。
あるし可能なのである。NICTの自動翻訳とス
マートテレビの字幕サービスをつなげようとした
3-2-3 「 ビジネスにならない」
この検討会は,結果的にこうした根本矛盾を露
検討会では個別案件についても対立が続い
た。総 務省は 2014 年 4月,(独)情報通信研究
機構(以下,NICT)が開発する多言語音声翻
呈する格好になってしまった。
3-2-4 積み残された課題
訳システムを“おもてなし”のアプリなどに社会実
2014 年 7月に出された取りまとめでは,ベス
41)
装する「グローバルコミュニケーション計画 」
トエフォート型サービスの提供について,テレ
を打ち出しており,翻訳システムの精度向上と
ビ放送とは「利用者から見て外形的に,明確
サービス展開の受け皿という二重の意味で,テ
に区別できる工夫・形態が,少なくとも当面は
レビ字幕を作成する放送事業者(特に NHK)
必要」であるとされた。また内容面でも「利用
に大きな期待を寄せていた。そのため検討会
者の安心・安全の観点から,分野によっては,
では NICT 側が NHKに対し,翻訳の精度を
一定の正確性が求められるとの考え方もある」
上げるため字幕や音声データの提供を強く要
との文 言が盛り込まれた。つまり,ベストエ
望した。しかしNHK は,事前提供は原則とし
フォート型は,安心・安全を担保する放送事業
て行わないし事後も提供のハードルは高いと首
者サービスとは明確に切り分けること,そして
をなかなか縦に振らなかった。
ベストエフォートとはいえ,放送リソースを利用
理由は 2 つあった。1つは権利上の問題であ
するからには一定程度のクオリティーは担保さ
る。これについては研究目的としてのデータ提
せることが必要ではないか,というものである。
供と,外部のメタデータ会社のデータを活用す
これは,村井純氏の“世界 観”とは全く異な
SEPTEMBER 2014
33
る。字幕という言葉に引きずられがちだが,こ
のサービスには,テレビ画面への表示とセカン
おわりに
ドスクリーン展開という2 種類がある。後者の
筆者は 2012 年からこれからのテレビを巡る
ようにユーザーの能動的選択が明らかなサービ
最新動向を見ているが,このところ急速に事態
スに対しては,柔軟に対応するようなルールの
が変化してきている印象を抱く。乗り越えられ
切り分けがあってもいいのではないか。これは
ないと思われてきた壁に挑む取り組みや,これ
本ケースだけでなく,今後展開されるであろう
まで避けてきたテーマに真正面からぶつかり合
サードパーティーによるハイブリッドキャストア
う議論に遭遇する機会も増えた気がする。壁
プリ全般に当てはまる論点であろう。
や対立を乗り越え,テレビや放送の新しいあり
また,今回の検討会を傍聴し,ハイブリッド
キャストでなければできないサービスとは何か,
ように向かうその胎動を捉えるため,引き続き
変革と挑戦の現場を追っていきたい。
一歩進めると,このままの方向性でビジネスに
(むらかみ けいこ)
なるサービスが本当に作れるのかを,そろそろ
本気で考える時期にきているのではないかと感
じた。今回の議論から見えてきたのは,放送
と通信を無理やり同期させるサービスを設計し
ようとすると,却って混乱が生じてしまうとい
う現実であった。
“放送局が持つメタデータを
サードパーティーに提供し,魅力的なサービス
を開発してもらい,視聴者に楽しんでもらうこ
とで,そのことが放送事業者の新たなビジネス
モデルにつながる”。ハイブリッドキャストの意
義として繰り返し語られてきたこのフレーズが
単なるお題目でないかどうかを確かめるには,
“放送イコール安心・安全”
“放送イコール公共
性”という既成概念を一旦脇に置く位の覚悟で,
“何に”
“どこまで”その概念を当てはめるのか
を検討する必要があるのかもしれない。
多言語字幕の取り組みは,これから実証実
験が行われるという。多言語翻訳という,困難
な,だが個別ニーズが極めて高い公共的なテー
マにおいて,サードパーティーがビジネス化し,
かつ放送事業者にもメリットがあるモデルを形
成するには何が必要か,有用なケーススタディ
を行ってほしい。
34
SEPTEMBER 2014
注:
1)http://www.nhk.or.jp/drama/owakon/
2)新サービスの利用・認知をインターネット調査
で,新サービスのユーザーに対してはグループ
インタビューを行った。詳細は「テレビの未来
~変容するメディア空間で何が求められるの
か?~」
(
『放送研究と調査』2014 年 7 月号)
3)総務省
「放送サービスの高度化に関する検討会」
で 4K/8K,ハイブリッドキャスト,ケーブル・
プラットフォームを日本の成長戦略,国際戦
略として進めるという取りまとめが出されて
い る。http://www.soumu.go.jp/menu_news/
s-news/01ryutsu12_02000044.html
4)
『放送研究と調査』の「国内の動き」「メディア
フォーカス」
,
『映像新聞』
,
『日経ニューメディ
ア』
,
『日刊合同通信』
,
『ITpro』
(日経 BP 社)
,
『AV WATCH』
(インプレス)他
5)一覧表の作成は,今回から東京大学大学院修士
課程の長谷川裕氏と共同作業で行っている
6)http://www.mri.co.jp/news/press/uploadfiles/
20140619HCResult.pdf
7)IP を使用した動画配信の仕様の標準化を行う
標準化団体
8)総合テレビの他,E テレ,BS1,BS プレミアムの
計4波
9)常時同時送信は認められていない。詳細は「メ
ディアフォーカス 放送法等の一部改正法 公
布」(『放送研究と調査』2014 年 8 月号)
10)ネットワーク接続型のハードディスク
11)
(一社)電波産業会。放送技術の標準規格や運用
規定などを策定している
12)詳細は,村上圭子「『これからのテレビ』を巡
る動向を整理する~ 2013 年 1 月─ 5 月~」
(『放
送研究と調査』2013 年 7 月号)の 98P
13)CE 部会発行「AV & IT 機器世界需要動向~
2018 年までの展望~」(2014 年 2 月)
14)オーバーザトップの略。通信事業者やインター
ネットサービスプロバイダーによらず,通信容
量を大量に使いサービスを提供する事業者
15)ICT 街づくり推進会議共通 ID 利活用サブワー
キンググループの議論より
ht t p: //w w w. sou mu .go .jp/ma i n _ content /
000290704.pdf
16)http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/
pdf/20140624/siryou1.pdf
17)収集,整理する主体を指す。ネット上の動画を
収集しプラットフォームビジネスを行う事業者
は,コンテンツアグリゲーターと呼ばれる
18)HJ ホールディングス合同会社のヴァイスチェ
アマン船越雅史氏の整理を参考にした
19)野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサル
ティング部上級コンサルタント山口毅氏の整理
を参考にした
20)
「d ビ デ オ 」 は 2014 年 6 月 末 現 在,「UULA」
は 3 月末現在の数字
21)もっと TV のサイトのよくある質問コーナー参
照 http://www.mottotv.jp/info/faq.php
22)秘密保持契約。機密情報について,第三者に漏
えいしない約束で取り交わす契約
23)ICT 街づくり推進会議共通 ID 利活用サブワー
キンググループ(第 6 回会合)より
h t t p : // w w w . s o u m u . g o . j p / m a i n _
content/000293931.pdf
24)http://hamitv.jp/pc/
25)関東地区視聴率調査と同一エリアで,自家用テ
レビを所有する 300 世帯を無作為抽出(タイム
シフト視聴可能世帯は 78%)
26)http://www.videor.co.jp/press/2014/140714_
data.htm
27)例えば,野村総合研究所「視聴実態調査」(2014
年 4 月発表)http://www.is.nri.co.jp/actual/
28)ちなみに『ルーズヴェルト・ゲーム』のリアル
タイムの平均視聴率は 14.5%だった
29)NHK 放送文化研究所「テレビ 60 年調査」
(2012
年 11 月実施)
30)リサーチ・アンド・デべロップメントのネット
調査(2011 年 2 月)では,
「いつも飛ばす」が
63%,
「ときどき飛ばす」が 25%であった
31)
「 視 聴 率, 録 画 も 本 格 調 査 へ …」( 朝 日 新 聞
2013 年 8 月 6 日)の中のニールセン社担当者
インタビュー
32)小島博「デジタル時代のメディア接触をどう測
るか~ ESOMAR 国際視聴者調査会議 2007 か
ら~」
(
『放送研究と調査』2007 年 10 月号)
33)http://www.sales-ntv.com/jissen/index.html や
広告会社の営業担当のヒアリングなどを参照
34)検索入力したキーワードに連動した広告
35)調査結果は「テレビの未来~変容するメディア
空間で何が求められるのか?~」
(
『放送研究と
調査』2014 年 7 月号)
36)http://www.soumu.go.jp/main_content/
000276935.pdf
37)電磁波の方向性が反時計回りの電波のこと。時
計回りは右旋となる。左旋と右旋は同一周波数
38)東経 110 度 BS は,右旋を日本,左旋を韓国が
利用。仮に日本が左旋を利用したい場合には,
国際調整が必要。会合ではこのことも検討中
39)MPEG-2 のこと。改良されて,使用スロット数
の圧縮を行っても現状と同程度の画質の確保が
可能であろうとの報告がなされている
40)「 スマートテレビ時代における字幕等の在り方
に関する検討会 」 取りまとめ 6 ~ 7P
ht t p: //w w w. sou mu .go .jp/ma i n _ content /
000301177.pdf
41)http://www.soumu.go.jp/main_content/
000285578.pdf
42)拡張現実の意味。例えばモバイルでかざした映
像に位置情報を加えたり,特定の物体を認識し
て追加情報を加えるなど,視覚的に情報を加え
ていくこと。アプリの主力となってきている
SEPTEMBER 2014
35
表 2 これからのテレビを巡る最新動向〈2013 年 10 月- 2014 年 6 月〉
高画質化(4K・8K)
○
○
○
○
○
○
NTT ぷらら ひかり TV で 2014 年 2 月に 4K/60p映像の試験配信と,
「NHK ワールド TV」の放送開始を発表
○
22 日 メ
シャープ 2Kパネルで 4K相当表示ができる新液晶テレビを発表
○
24 日 公
工学院大学と計測技術研究所 4Kを 8K表示に変換可能な超解像技術を共同開発
28 日 ケ
J:COM 各種ネットサービス利用できる KDDI「Smart TV Box(通称:白ボックス)
」導入,関西などで 11 月開始と発表
30 日 放
WOWOW 視聴者参加型番組を 11 月 15 日開始と発表。視聴者はスマホで参加。若年層へのアプローチねらう
30 日 ネ
Google Google Play で『半沢直樹』など国内外テレビドラマ配信開始。バンダイチャンネルや NHK のアニメ追加。見逃し配信も開始
○
○ ○
○
Hulu TBS テレビと包括的コンテンツ・パートナーシップを締結。TBS ドラマや映画など 3,000 エピソードを配信開始
6日 放
民放連主催の第 61 回「民間放送全国大会」シンポ プレイスシフト・タイムシフトが進行する中,隙間時間への対応焦点に
○ ○
イッツコム STB とタブレット端末を無線 LAN でつなぎ,番組を好きな場所で視聴できるサービス開始
○
13 日 メ
Inter BEE 2013 幕張メッセで開幕。メーカー各社から 4Kテレビ対応のカメラや業務用モニターなど多数展示
14 日 ケ
日本ケーブルテレビ連盟特別委 プラットフォーム,ID 連携,4K・8K の WG 設置決定。総務省「高度化検討会」に対応
15 日 放
日本テレビ 「JoinTV」を活用した新広告・販促モデルの「O2O2O」推進プロジェクト始動。日本マイクロソフト等がパートナー企業に
月
11 19 日 ケ
19 日 ケ
J.COTT と米 TuneIn Inc. ケーブルテレビ向けスマートテレビ「COTT」にネットラジオ提供で合意
○
○
1 日 放ネ
7日 ケ
○
○
○ ○
○
○
○
○
○
○
○ ○
J:COM と JCN 2014 年 4 月に合併すると発表。スマートテレビサービス連携,サービス向上で競争力強化図る
○ ○
20 日 放公
総務省 NHK のソチ五輪のネット配信と,
「NHK Hybridcast」の新サービスを大臣特別認可
22 日 ケ
日本ケーブルテレビ連盟と J:COM,JE 全国ケーブルテレビコンテンツ配信システムと milplus の連携を発表。コミチャン VOD 充実へ
26 日 ネ
Amazon 映像配信サービス「Amazon インスタント・ビデオ」を開始。洋画,邦画やテレビドラマなど 2 万 6,000 本超を提供
○
27 日 ネ
niconico とディズニー コンテンツ配信連携を本格化すると発表。ディズニーの映画本編が niconico で視聴可能に
○ ○
28 日 通ネ
NTT 西日本とキテラス,ドワンゴ NTT 西日本の STB「光 BOX+」に対応した動画サービス niconico アプリを提供すると発表
○ ○
1日 放
日本テレビと四国放送 ネットに接続したテレビ経由で個別災害情報伝達と見守りを行うサービス「JoinTown 徳島」サービスイン
○
6日 メ
LG エレクトロニクス LG Smart TV を民放キー 5 局と電通が進める「もっと TV」に対応。パナソニック・東芝に次ぎ 3 社目
○
6日 ケ
電通 フューチャーリンクネットワークと提携。ケーブルテレビ STB 対応アプリを共同開発へ。地域情報をテレビで配信
○ ○
10 日 放
ビデオリサーチ Twitter と共同でテレビ番組への反応を測る新たな視聴指標「Twitter TV 指標」を 2014 年 6 月から提供と発表
11 日 放
テレビ東京 有料動画配信サービス「テレビ東京ビジネスオンデマンド」会員が 2 万人突破。開始から約 8 か月で達成
11 日 公放
民放キー 5 局他 ハイブリッドキャスト技術を活用した総務省のスマートテレビ実証実験の実施を発表。実験請け負いは三菱総研
月
12 16 日 放
○
○
○
○
○
○
○
NHK 「NHK Hybridcast」のタブレット連携サービスを開始。タブレットやスマホから双方向番組などに参加可能に
○ ○
イッツコムと Cueform 緊急時にテレビ電源を自動オンして,緊急地震速報や特別警報等を知らせる実証実験を開始
18 日 公
総務省 補正予算案にて,衛星・ケーブル・IP 網での 4K・8K 伝送のシステム実証の実施やコンテンツの海外展開のパッケージ支援など発表
19 日 放
日本テレビ 新たな番組連動アプリ「フリフリ TV」を無料提供
○
20 日 放
フジテレビ テレビ CM 連動のキャンペーン「スマホで CM キャッチ!」の実施を発表。
「G ガイドモバイル」の音声認識機能を利用
○
25 日 ネ
Hulu NHK 及び NHK エンタープライズとのパートナーシップに基づき『プロジェクト X』や『タイムスクープハンター』等を配信開始
26 日 公
○ ○
NexTV-F 実証トライアルで HEVC で 4K/60p 映像をリアルタイム伝送するデモを実施
○
○
○
○
○
月
3日 放
テレビ東京 スマホなどでインベーダーゲームに参加する民放初のハイブリッドキャスト連動番組を放送
6日 メ
LG エレクトロニクス 2014 年に自社スマートテレビの 7 割以上に webOS を搭載へ。他のデバイスとの連携強化を容易に
7日 メ
2014CES 中国,韓国含むメーカー各社 4K対応テレビを拡充。Netflix が 4Kストリーミングを年内開始と発表
7日 放
民放キー 5 局 VOD サービス「もっと TV」
,放送局横断の月額見放題パックを開始。月額 900 円
9日 放
NHK ソチ五輪の放送計画発表。
「NHK Hybridcast」で時差再生サービス,8K映像パブリックビューイング実施
○
日本テレビ 「日テレいつでもどこでもキャンペーン」開始。ドラマ『戦力外捜査官』を放送後 1 週間,無料ネット配信。スマホ視聴対応
○
SEPTEMBER 2014
○ ○
○
16 日 ケ
11 日 放
36
VOD化
テレビ東京 経済報道番組を視聴できる VOD サービス「テレビ東京ビジネスオンデマンド」のスマホアプリ登場。2 番組無料視聴可能
月
13 21 日 放
年
10 21 日 通
14
年
1
○
○
東芝 ブルーレイディスクを省き小型化した 6ch 全録レコーダーなど発表。タイムシフトマシン利用者拡大と多様な視聴スタイルに対応
NTTドコモ ビデオ配信「d ビデオ」が iPhone 5s/c に対応。ドラマやアニメ,オリジナル番組など 8 万 2,000 コンテンツ以上視聴可能に
ソーシャル化
8日 メ
10 日 通
録画視聴化
日本テレビ 「JoinTV」オープンプラットフォーム化を決定。第 1 弾として WOWOW が無料番組に採用しセカンドスクリーン企画実施
STB
CEATEC JAPAN 2013 幕張メッセで開幕。国内主要メーカー,4K対応テレビやテレビのスマート連携システムを展示
7日 放
放送連動 ( ハ イ ブ リ ッ ド キ ャ ス ト )
1日 メ
放送非連動・多機能
内 容
セカンドスクリーン化
事業者
※
月
日
マルチスクリーン化
マルチ スマート タイム
デバイス化 テレビ化 シフト化
○ ○
○
○
○
○
○
○
○
○
20 日 放
民放連 ソチ五輪の放送予定発表。未放送競技は「gorin.jp」でネット配信。生放送しない種目のライブストリーミング実施
○
23 日 放通
NTT ぷらら 「NHK オンデマンド in ひかり TV」配信開始。スマホ・PC 視聴に対応
○
○
24 日 放
フジテレビ オリジナルコンテンツを配信する無料動画配信サービス「フジテレビ+」開局 PC,スマホ,タブレットで視聴可能
○
○
○ ○ ○
○
1日 ケ
J:COM 独自開発の STB 第 2 弾「Smart J:COM Box(通称:黒ボックス)
」提供開始。HTML 5 対応
(ハイブリッドキャストには未対応)
4日 通
ソフトバンク BB iPhone で地デジ視聴と録画ができる 1万 2,720 円の「ポケットフルセグ」開発。3 月中旬以降に販売と発表
9日 放
MBS 『情熱大陸』で番組連動のスマホ企画,
「G ガイドモバイル」の音声認識機能を活用
○ ○
○
○
○
12 日 ネ
楽天ショウタイム 新たな動画配信サービス「楽天 SHOWTIME」を開始。テレビ向け配信も予定
○
13 日 放
NOTTV 蓄積型放送コンテンツとして電子雑誌「NOTTVブックス」の提供開始を発表
○
13 日 公
NexTV-F 宅外リモート視聴の技術要件を公開。ペアリングは 3 か月に 1 度で 6 台まで
○
16 日 放
マルチスクリーン型放送研究会 「SyncCast」のハイブリッドキャスト及びセカンドスクリーンの OAトライアル開始
18 日 公
JEITA 「AV&IT 機器世界需要動向」発表。2018 年の 4K テレビの国内需要は 2013 年の約 20 倍と予測
21 日 メ
博報堂 DY メディアパートナーズと DAC 東芝 REGZA に動画広告配信開始。味の素,花王などが提供し,メーカーに広告収入
○
○ ○
○
21 日 放通
TBS テレビ CS 放送チャンネル「TBS チャンネル 2」を,ひかり TV へ提供すると発表
26 日 ネ
LINE 公式アカウントを API 公開し各企業に提供する「LINE ビジネスコネクト」発表。LINE の投稿内容をテレビ画面で表示可能に
26 日 公
総務省 「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合」第 1 回開催。ロードマップの具体化や課題解決について検討
28 日 ネ放
Hulu 日本向け事業を分社化し日本テレビに譲渡と発表。日本テレビは定額制動画配信(S-VOD)事業に参入へ
○
○
○
○
○
3日 放
スカパー ! ソチ・パラリンピックの見逃し映像をスマホ,タブレットに配信。アプリ提供も
○
○
3日 通
NTT ぷらら ひかり TV においてスマホで VOD をダウンロードする機能提供を発表。宅外でも HD 画質でオフライン視聴可能に
○
○
4日 ケ
J:COM 他 IP-VOD サービス「milplus」のシステム基本部分を日本デジタル配信に移管を合意。共通プラットフォーム化の推進へ
6日 放
NHK ソチ五輪で「NHK Hybridcast」の時差再生サービスを 12 番組で実施 ,8K 映像は 5,000 人超が体感したと発表
7日 放
フジテレビ 初のハイブリッドキャスト対応番組『人狼』放送。テレビとスマホでゲームに参加
7日 ネ
シード・プランニング インターネット動画広告市場に関する調査結果発表。2017 年には 2013 年の約 5 倍の 640 億円になると予測
○
○
月
○
20 日 放
民放連 ソチ五輪動画サイトの配信結果を発表。ユニークユーザーは前回大会の約 3 倍。大半がスマホからアクセス
○
20 日 ネ
LINE 子ども(1~ 6 歳対象)向けスマートフォン動画配信サービス「LINE KIDS 動画」を発表
24 日 公
NexTV-F リモート視聴対応チャンネルを公開。地デジは全局対応。BS デジタルでは WOWOW 等が非対応
25 日 放
日本テレビ デジテク 2014 を開催。4K 放送を見据えたライブ伝送デモ,ハイブリッドキャストコンテンツ,JoinTV の最新動向を紹介
25 日 公
総務省情通審 4K・8K 衛星放送の技術的条件で答申
28 日 放
NHK と民放キー 5 局 全局のテレビ番組の情報を網羅した無料アプリ「ハミテレ」を共同開発し,提供開始
31 日 ネ
Twitter ソーシャルテレビ解析の欧州 2 社を買収。米国優先で展開していたソーシャルテレビ戦略を米以外にも拡大
月
パナソニック 8ch 全録レコーダー発売。 音声操作,リモート視聴も可能に
1 日 メ放
○
○
○ ○
○ ○
○
○
○
J:COM 「J SPORTS」等の番組をリアルタイムでスマホ配信開始。アプリ利用して無料の視聴も可能に
総務省電監審 V-High 帯の移動受信用地上基幹放送として新たに 5 局 6 番組を認定
○
○
フジテレビ CS 番組を有料同時配信する「フジテレビ NEXTsmart」開始。月額 1,200 円
4日 メ
○
○ ○
14 日 放
9日 公
高画質化(4K・8K)
VOD化
NHK 8K スーパーハイビジョン,地上波での放送を想定した長距離伝送実験に成功
ソーシャル化
録画視聴化
エム・データ 民放キー 5 局,広告代理店 2 社と資本提携。各社共通仕様のテレビメタデータプラットフォームを構築
20 日 放
22 日 放
月
5
STB
16 日 放
1日 ケ
4
放送連動 ( ハ イ ブ リ ッ ド キ ャ ス ト )
月
3
放送非連動・多機能
月
2
内 容
セカンドスクリーン化
月
1
日
事業者
※
マルチスクリーン化
マルチ スマート タイム
デバイス化 テレビ化 シフト化
○
○
○
野村総研 視聴実態調査結果発表(ネット調査)
。録画含めたテレビ視聴はリアルタイム視聴の約 1.21 倍
○
アクトビラ 「フジテレビオンデマンド」の提供開始。アクトビラはフジテレビの配信開始で民放全キー局対応へ
○
14 日 放
マルチスクリーン型放送研究会 総会,シンポジウムを開催。ビジネストライアルを今年度後半に実施予定と発表
○
14 日 ネ
ドワンゴと KADOKAWA 経営統合に基本合意。世界に類のないコンテンツプラットフォーム目指す
○ ○
15 日 放ネ
テレビ東京と日本テレビ 動画広告プラットフォームの Adap.tv と契約締結 ○
15 日 放ケ
NHK と J:COM 既存ケーブルテレビ施設で 8K 映像の伝送実験に成功したと発表
15 日 放
NHK ワールドカップの 8K 映像ライブパブリックビューイングの実施を発表。6 月 15 日から国内 4 会場で
16 日 公ケ
IT 総合戦略本部「マイナンバー等分科会」 ケーブルテレビの次世代 STB でマイナンバーカード読み取り機能内蔵など対応を検討
○
○
○ ○
SEPTEMBER 2014
37
高画質化(4K・8K)
VOD化
ソーシャル化
録画視聴化
STB
放送連動 ( ハ イ ブ リ ッ ド キ ャ ス ト )
20 日 メ
シャープ 初の 4K チューナー付き録画機を 6 月 25 日に販売すると発表。 店頭参考価格は 10 万円前後
○
21 日 メ
ソニー 4K 放送用チューナーを今秋発売すると発表。外付け HDD への録画も可能
○
21 日 放通
スカパー JSAT と NTT 「フレッツ光」で HD と 4K 映像の同時伝送に成功したと発表。来春にも有料サービス開始へ
○
22 日 放
関西テレビ 4K/60P の映像を,ISDB-T 規格の地上波で伝送し 4K テレビに再生する実証実験実施
22 日 ネ
ピクセラ Windows 用のハイブリッドキャスト機能を開発したと発表。PC 視聴への対応により利用機会拡大へ
23 日 ケ
ジャパンケーブルキャスト 4K 試験放送をケーブルテレビ事業者向けに光回線で配信すると発表
27 日 通
NTT ぷらら ひかり TV を使ったシニア向けスマートテレビのトライアルの開始を発表。買い物,旅行・健康相談が可能に
27 日 ケ放
J:COM ケーブルテレビサービス「J:COM テレビ」で TBS ラジオと文化放送,ニッポン放送を同時再放送開始。441 万世帯で聴取可能
○
28 日 ネ
Google HDMI テレビアダプタ「Chromecast」日本発売。4,200 円。スマホの操作性のまま,テレビで VOD 視聴など可能に
○
○ ○
○
28 日 通
NTT ドコモ 「d ビデオ」が「Chromecast」に対応。6 月 27 日から会員対象に「Chromecast」をプレゼントするキャンペーン実施
○
○ ○
○
29 日 放
NHK 放送技術研究所 「技研公開 2014」開催。2020 年に向け,8Kの研究成果が展示の中心に
30 日 放
テレビ東京 テレ東グループのオリジナルコンテンツの無料動画ポータルサイト「テレ東プレイ」サービス開始。動画広告も配信
2日 公
NexTV-F スカパー ! の帯域を利用して 4K試験放送スタート。チャンネル名は「Channel 4K」
。1 日 6 時間程度の番組を編成
2日 ケ
J:COM NexTV-F の放送コンテンツを同時再放送する試験放送を開始
4 日 公ケ
総務省 「ICT 街づくりサミット」開催。地域の課題解決や災害情報伝達のため,テレビやケーブルテレビの役割が強調される
9日 ネ
LINE 子ども向けスマホ動画配信アプリ「LINE KIDS 動画」が 2 か月で 100 万ダウンロードを突破したと発表
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○ ○
○
月
10 日 メ
東芝ライフスタイル REGZA の Twitter 連携機能「SNS TV」において,ツイートのフィルタリングを実施開始
○
10 日 メ
東芝ライフスタイル Tポイント・ジャパンと協業し,テレビのクラウドサービス利用で Tポイントが貯まるサービス開始
○
12 日 放
NOTTV 契約不要で見られる 2 つの無料放送を 7 月開始と発表。チャンネル構成を変更し,有料 2ch+ 無料 2ch へ
14 日 放ネ
Hulu 『キャプテン翼』
『それいけ ! アンパンマン』など子ども向けコンテンツの配信開始
16 日 公
NexTV-F ワールドカップの 4K 試験放送の決定を発表。丸の内でのパブリックビューイングも実施
17 日 放
多チャンネル放送研究所 「多チャンネル放送の現状と課題 2013 ~ 2014」発表。VOD サービスが広がる中,市場の停滞感を指摘
19 日 公
三菱総研 スマートテレビの実証実験「Hybridcast 2014」の結果発表。端末による仕様の差異,サービス認知度に課題ありと指摘
○
20 日 公
総務省 「スマート・ジャパン ICT 戦略」公表。4K・8Kのインフラ整備や利活用促進,放送コンテンツ海外展開記載
○
24 日 放
NHK 2013 年度決算発表。NHKオンデマンドが 2008 年のサービス開始以来初の黒字に
25 日 メネ
Google Android を使ったテレビ向けプラットフォーム「Android TV」発表。ソニーは対応を明言,シャープは対応検討
25 日 メ
アクトビラ テレビ向け 4KVOD 配信の商用サービスを 12 月開始と発表。ストリーミングとダウンロード形式で回線に応じ配信
26 日 公
NexTV-F 4K 試験放送の「Channel 4K」の 7 月度番組編成を発表。ゴジラ映画やワールドカップ決勝などを放送
27 日 メ
ソニー テレビ事業新会社「ソニービジュアルプロダクツ」発足を発表
27 日 放ネ
Hulu と日テレオンデマンド アニメ『戦国 BASARA Judge End』をテレビ放送前に配信すると発表
27 日 通
NTT 西日本 プロ野球阪神戦の 4Kライブ・ビューイング実証実験の実施を発表
27 日 通
NTT ぷらら ひかりTVで 4K 映像の IP による配信トライアル開始。IP 放送と VOD の映像を同一チューナーで視聴可能に
27 日 公
政府 放送法及び電波法の一部を改正する法律を公布。NHK がネットを通じて提供する放送関連サービスの対象を拡大
30 日 通
KDDI KADOKAWA「月刊ニュータイプ」とコラボレーションし,スマホ向けアニメ見放題サービス「アニメパス」を開始
SEPTEMBER 2014
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
※ 放送事業者:放 メーカー:メ ケーブルテレビ事業者:ケ 通信事業者:通 ネット事業者(動画配信事業者含む)
:ネ 国・関係機関:公
38
放送非連動・多機能
月
6
内 容
セカンドスクリーン化
月
5
日
事業者
※
マルチスクリーン化
マルチ スマート タイム
デバイス化 テレビ化 シフト化
○
○
○
○ ○
○
○
○
Fly UP