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「パブリックコンサルテーション」 結果概要
参考1 「パブリックコンサルテーション」 結果概要 2016年7月 経済産業省 産業資金課 パブリックコンサルテーション結果①概要 外部からの意見・情報提供は国内外含め37件となりました。37件中10件が海外から の意見・情報提供で、国境を越えて貴重な情報を頂きました。 意見・情報の提供元と内容を整理すると以下のような結果です。 募集メールアドレスへ の提供 法律・コンサルタント等 7 IT 4 個人 11 事業会社 1 金融機関 8 国際機関 4 その他 2 小計 37 論点整理 外部からのエビデ ンス・情報提供 【1】FinTech検討の範囲(Scope)や意義について 13 【2】FinTechを取り巻く環境・背景について 10 【3】BtoC領域 19 【4】BtoB領域 16 【5】既存金融機関とベンチャー企業の競争と協調 16 【6】情報の活用と課題 9 【7】金融ITシステム 4 【8】新技術としてのブロックチェーン 13 【9】イノベーション 7 【10】人材 8 【11】環境整備に関する論点 15 その他 7 1 【参考】パブリックコンサルテーション 回答者 渥美坂井法律事務所 ヘッジファンドダイレクト SWIFT アビームコンサルティング ベーカー&マッケンジー法律事務所 個人 安全保障貿易情報センター 三井住友海上火災保険 クラウドサービス推進機構 三菱電機(社友) クラウドリアリティ 波多野巌松堂書店 光陽産業 みずほ証券 国際銀行協会 弥生 国際通貨研究所 リサーチステーション 新日本監査法人 FinTech協会 ソラミツ giftee 日本ユニシス Japan Deutsche Bank AG 日本植物燃料 NTTデータ 日本電気 PayPal 西村あさひ法律事務所 PwC 2 産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会) 論点整理概要 【1】FinTech検討の範囲や意義について 【2】FinTechを取り巻く環境・背景について ビジネス別トピック 【3】B to C領域(家計管理・資産運用・決済・送金・P2Pレンディング・クラウドファンディング・保険等) 【4】B to B領域(クラウド会計・決済代行サービス・融資等) 横断的トピック 【5】既存金融機関とベンチャー企業の競争と協調 【6】情報の活用と課題 【7】金融ITシステム 【8】新技術としてのブロックチェーン 【9】イノベーション 【10】人材 【11】環境整備に関する論点 3 【1】FinTech検討の範囲や意義について FinTechが経済・社会に与える影響や意義として着目すべき点、検討すべきことは何か。 FinTechが社会に大きなインパクトを与えるまでに掛かる時間軸をどう考えるか。 日本の文脈を踏まえるべきとの指摘に同意。米国と日本の違いとしては、米国では未だに紙の小切手が 一般的である等、金融機関は前近代的な面もあること、口座維持手数料の存在など収益志向が強い こと等が挙げられる。 先進国では、必要なルール整備や人材育成、大企業・ベンチャー等の連携促進が重要であり、新興国 ではファイナンシャルインクルージョンの意義が大きい。 FinTechの進展により、資金の流れに国境が無くなる可能性がある。その場合、金融政策が不可能に なるのではないか。恐慌の際に歯止めが利かなくなること、国ごとに設定する金融規制の実効性が無くな る可能性がある。 AIの技術は、トレーディング・金融分析等様々な金融サービスへの活用が考えられることから、着目すべ きであるが、海外に比して、規制当局・金融機関ともに対応に遅れがあると指摘。一方で、AIによる詐欺 行為等の側面にも注意が必要。 AIを使ったサービスを行うためには、サービスを提供する事業者が、AIに対するガバナンス体制を整備する 必要がある。また、そのガバナンス体制の適切性について、指針を作り、外部の検証者(公認会計士等) に定期的な監査をさせるべき。 ユーザーニーズの高度化・高速化に対応すること、マーケットインの視点から金融サービスの提供がなされ れているかに着目すべき。 アンバンドル化により、各分野において得意な機能を持つプレーヤーがサービスを提供するようになる。情報 サービス提供は、それぞれの得意な機能を取り込むことで、リバンドル化(再編成)が進展する。金融業 は過去の業態維持のみの会社は淘汰され、新たなニーズに応えることの出来る会社のみが生き残れる。 4 銀行の決済等、個人の日常生活に広範な影響を及ぼす領域では、FinTechが社会にインパクトを与え る時間軸は早まる。他方、デジタルとアナログ(面談・電話・文書等)のバランスへの配慮が必要。既存 金融機関の利用者には高齢者が多く、金融サービスのデジタル方式への移行によって、逆に利便性が 損なわれる消費者が生じるリスクにも着目が必要。 FinTechの意義は、国内における金融リテラシーの向上、個人資産流動化促進、各産業が有機的に 繋がり合うことによる相乗効果と新しい価値創出。 電子決済企業に着目すべき。インバウンドの増加により、国際基準にあわせて国内の小売店業界等で は新たな電子決済を導入せざるを得なくなる。国内スタートアップ等が出遅れると海外企業の後塵を拝 する懸念がある。また、電子決済以外でも、投資教育や中小企業の経営効率化にFinTechの意義が ある。 5 【2】FinTechを取り巻く環境・背景について FinTechビジネスを取り巻く環境として、特に重要な点は、解決されるべき課題、潜在・顕在ニーズは なにか。 FinTechを取り巻く環境として、包括的・横断的規制、リスクベース・アプローチ、特定且つ最小限の法 規制、自主規制の尊重の4点が重要。 本人確認手続きのグローバル化、資金決済法のもとでの取引金額の制限という文脈は特に重要。 日本の国民性として、リスク回避的な行動が取られがちであること、個人情報の取扱いに過敏なところが あることが課題。 日本国民のITリテラシーは、世界的に見ても高くないことが課題。 日本の富は、高齢者に偏重しており、若年層がFinTechを利用できるほどの富が無いのではないか、高 齢者はITに対して否定的ではないか。 20年後には、完全に資産保有者層が入れ替わるが、その時に日本に競争力を持たせることが重要。 FinTechはもともと、(特に欧米においては)リーマンショック後の金融機関に対する批判が出発点。 そこからイノベーティブなアイデアが生まれている。日本ではあまりそのイメージがなく、むしろ金融機関と FinTech事業者はパートナーシップを結ぶ方向で進んでいる。その意味で本当に消費者利益になるもの が出てくるようなメッセージが必要ではないか。業界団体寄りではなく消費者目線をキープすることが重要。 産業経済省の研究会だけでなく、金融庁・文科省・総務省においても別途に同様な取組が始まってい る。縦割りの弊害を打破すべく、相互の意見交換が必要と思われる。 日本にない分野の新しい製品を広げるに当たり、その会社が所有するノウハウを敢えて公開して市場を 拡大した業界の様に、知識の共有・協調推進が必要と思われる。 6 今後の社会を大きく変える力を有するFinTechの早期の進展を、官民学連携の上、日本の中心課題 として進める必要がある。 本人認証技術の拡大等でFinTechの効果を享受するには、各種業法等様々な法規制の柔軟化が求 められる。他方、Fintechにより決済情報やセンシティブレベルの高い情報を含むデータが、ネット環境で やり取りされるので、従来以上のセキュリティ対策が求められる。 FinTechビジネスは、スマートデバイスを中心に進展すると考えられるが、説明遵守事項が多いと顧客利 便性を却って損ねる可能性もある。各種規制等は、FinTechの動向を踏まえ、中和性を持ったものとし ていく必要性がある。 7 【3】BtoC領域 BtoC領域のFinTechサービスの提供は、どのような課題を解決しうるのか。 それは資金循環に変革をもたらすのか。 日本のクラウドファンディングは、報酬型が主たるものになっているが、英国ではLending、Invoice Financeなどが主であり、エクイティの成長が大きく期待されている。日本においても、クラウドファンディング の市場を拡大させることにより、中小企業を支援していくことが必要である。クラウドファンディングの融資型 ・株式型の位置づけを変えることで、NISA市場、そしてクラウドファンディングの2次市場を作ることも可能 になるはず。 エクイティ型のクラウドファンディングに関して、海外は先行して新しい資本市場が創設される流れになって いる。取り残されないように海外の動きを見据えながら市場整備に関わる検討をすべきではないか。 途上国においても、2015年の時点で携帯電話を一人あたり0.9台以上保持しており、モバイルマネーの サービスが広がる素地はできている。 世界銀行の資料によると、世界全体で銀行のサービスを受けられな い人の割合は、成人人口の38%(20億人)にも及ぶ。携帯電話が普及していて、銀行のインフラが乏しく、 人口が多いアフリカは、モバイルマネーが普及して、m-pesaのようにファイナンシャルインクルージョンを起こす にはうってつけの地域である。 スマートフォンによる地域創生の可能性、具体的には地域通貨の管理・利用による利便性向上に着目 するべき。紙・カードを使わずに済むメリットも大きい。 消費者に対し、「安全であること」をどのように訴えていくのか。 将来的には、国家の信用の影響を受けないグローバル通貨としての仮想通貨マーケットが、一定の意味を 持つのではないか。それに向けての発信を日本としてもやっていくべき。 8 日本の銀行の利益の源泉は、次の3種類。①集めた預金に支払う金利と貸し出した金利の金利差から 得られる金利収益、②株や債券の様な金融商品を販売した時の手数料、③振り込みやアドバイスの提 供など、サービスの提供に対するサービス料。この収益の源泉がどう変化していくか検討すべき。 日本の現金決済は50%以上であるのに対し、米国は20%未満であり、今後FinTechの進展により、 現金決済は限りなく減少すると思われるが、その進展が重要であり、規制は最低限とし、民間の自由な 工夫を尊重すべき。 FinTechの進展により、資産保有者の高齢者でも一定程度投資が進展し、30~50代でも投資意識 が更に高まり、資金循環は運用マネーを中心にシフトしていくと考えれられる。資金循環を活性化させる には、チャネル多様化や手続きの煩雑さの排除が課題であると指摘。 グローバルでは決済手段のデファクトスタンダード化が重要である。また、国内では投資教育が十分では ないため、FinTechにより投資を身近にすることで金融機関のビジネスチャンスも広がると指摘。 日本特有の課題として、ITリテラシーが必ずしも十分でないことに加え、個人情報保護が極めて重視さ れていることを指摘。利便性の享受には個人情報の提供が必要であることを国民が理解しないと、 FinTechの社会受容性は高まらないと指摘。 ソーシャルレンディングについて、プラットフォーム運営者のみならず資金提供者に対しても貸金業登録を 義務付けることは過剰な規制であると指摘。 不動産クラウドファンディングについて、不動産特定共同事業法における書面の電子交付の必要性を指 摘。 自社プロジェクトへのファイナンス手法におけるFinTech利用の可能性。クラウドファンディング等の資金調 達手法を活用すると、財政基盤の脆弱な新興国のインフラ投資等のプロジェクトのファイナンス手法が広 がると指摘。 9 【4】BtoB領域 現在のFinTechビジネスの動向・課題、企業経営革新の可能性、革新の実現に向けた課題は何か。 地域デジタル通貨を発行することによる、直接コスト(金券の印刷等)と間接コスト(決済事務作業 等)の削減、クレジットカードに比較しての安価な決済手段の供給の可能性を指摘。 米国では、特に地方を中心に、アンダーバンクトと言われる、銀行と取引ができない事業者も多い。テク ノロジーの進歩により可能となった、固定手数料、迅速な審査、売上金からの返済という特色を持つオン ライントランザクションレンディングが提供されることで、(中小)事業者は、機会と選択を与えられた。 日本では、中小事業者のスタートアップ、リスクマネーの需要がある中で、従来の銀行等による融資審査 の過程をより効率的なものとするニーズは多い。日本でオンライントランザクションレンディングを行おうとす ると、貸金業登録の有無が問題となると指摘。従来の貸金業における、貸付けおよび利息の概念を吟 味したうえで、オンライントランザクションレンディングのような新しいサービスへの規制のあてはめの是非を 整理する必要がある。 小規模企業や中小企業が、FinTechに移行(ITを活用)するためクレジットカード決済は不可欠。一 方、小規模事業者は審査に通らないことが多いのが実態である。小規模事業者であってもクレジットカー ド決済を利用できるような支援が必要である。 個人のネット口座利用は無料だが、法人は無料ではない。月額2000円程度。故に、小規模企業 での利用率は低く、銀行に赴き支払っている中小企業がまだ多いのが実態である。大企業と比べて取引 量が少ない中小企業にも同じような費用を求めるのは不公平である。FinTechを活用すべくインターネッ トバンキングを中小企業が活用できるための中小企業振興策として、幅広い企業にその効果を認識して もらうためにも、個人口座同様無料化すべき。 企業経営革新の影響をコスト面で最も大きく受けるのは、全国に支店を持つ大企業である。AIでの対 応代行、ネット上での決済・送金ができれば支店統廃合、人員効率化が見込まれる。 10 FinTechサービスによって運転資金の管理にイノベーションが起きる。運転資金の管理は様々な要素か らなり、事業会社はBS等をリアルタイムで把握できる等のメリットがあるが、イノベーションにはリスクもあ ることは認識すべき。 下請法では、最長60日以内に支払わなければならないと規定。大企業で経理のシステム化が進んだ 現在、リアルタイムに、日々の売上や原価、債権債務も確定でき、納品が確認されればすぐにでも支払う ことが可能ではないか。ゼロ金利、そしてマイナス金利の時代には、締め日にまとめて支払うのではな く、 支払いの平準化、買掛負債の早期支払いによる保有資金の平準化が財務管理としてふさわしい。大 企業が率先して早く支払うことで、需要増大、景気浮揚への即効薬になる。電子受発注、データでの請 求書受領、即支払いというFinTech実施による最終的な成果と して、中小企業への支払いが早期化 することが望ましいと指摘。 FinTechは、企業同士の業務がつながることに大きな価値がある。現在、入金の際に口座番号は伝え られないので、受取り企業は、電文のカタカナから支払元を類推し、手作業で請求消込を行うという、ま さに旧式の手作業実務が普通に行われている。これが日本の生産性が低い本当の原因である。昨年末 に公開された法人番号を取引データに付記することで、特に中小企業へ請求消込の業務省力化が促 進され、人手不足にあえぐ経営への大きな支援につながる可能性を指摘。 進出先の国の会計基準が、日本とは微妙に異なり、外国に進出した中小企業の経営実態を把握する ことには多少の困難が伴っている。その判断に、FinTechが活用できると良いと思われる。 日本の中小企業は、人材面で財務の専門家やITの専門化を確保できない実態にあり、せいぜい会計 ソフトに、担当者が数値を入れ、月一回程度税理士により、その会計ソフトで月度決算をしてもらうのが 実態である。ここでFinTechによる経営分析が可能となると、大きな経営支援に繋がると指摘。 中小企業は顧客満足という視点で多品種少量対応を行っているところが多く、出荷単位が少数でも出 さざるを得ない取引形態である為、生産の判断を誤ると、取引先の出荷要請に対し、ディレイを起こし 兼ねない場合もある為、FinTechによるベストなポートフォリオの生産と販売の調和が計られれば、企業 経営革新を実現できると指摘。 11 【5】既存金融機関とベンチャー企業の競争と協調 既存金融機関とFinTechベンチャー・異業種等の競争関係・協調関係に関して最も重要なことは何 か。 既存金融機関の危機感をあおるため、2020年までに、既存金融業界のビジネスの23%が脅威にさら されるとしつつ、①既存金融機関はFinTechの取り込みによるUXの向上を戦略的に進めるべき、②金 融サービスへのアクセスにはモバイルアプリが中心になることを受け入れるべき、③既存金融機関は FinTechベンチャーとコラボすべき、などと提言。 ルール整備を進めるにあたり、資金力のないベンチャーに代わってコンサルが果たしうる役割を提言。具体 的には、今後要求され得る投資先の詳細な情報開示や監督官庁による規制、業界団体による自主規 制等の各種の対応についてはコンサルにノウハウがあるので、コンサル料を収受せずに出資持分等のみな し有価証券を収受するという形でベンチャーのエクイティを持つことで、協業できる可能性がある。 金融機関とベンチャーの連携事例として仏クレディ・アグリコムのオープンAPIやインキュベーションの取り組 みを紹介。前者では、APIをオープン化しアプリストアを開設するのみならず、開発者コミュニティとの連携、 事前に顧客にアイデアへのコメント等を問える環境の提供を行っている。後者では、インキュベーション施 設(Le Village)を運営し、ベンチャーをはじめとする他の企業との連携のハブとしている。 「競争」から「協調」に路線は変わってきているので、戦略的パートナーを見つけた既存銀行とイノベーター が長期にわたり成功することができると指摘。 金融業界への異業種参入が相次いでいるが、金融業界からの異業種参入が見受けられない。既存金 融機関が異業種に参入しにくい環境(子会社での業務の制限等)を見直すべき。APIにより「外部と つながる金融機関」像(APIエコノミー)を提示。 公共財としての金融システムに関わるので、殆どのFinTechベンチャーは過去に経験の無いクレジットサイ クルが下降局面に入った時の対応について、既存金融機関とFinTechベンチャーの情報交換により問 題解決の枠組みの構築が必要である。 12 APIエコノミーにより外部と繋がる金融機関像を提示。各エンティティが保有する様々な「財」「能力」を、 従来型の1対1による流通から、N対Nのチャネルによる流通に進化させ、高速化・小口化・自動化を図 り、情報(個人の購買履歴など)も価値・価格のある「財」として流通させる。 デジタル化した金融サービスでは、金融・非金融それぞれのサービス提供者が同じフィールドに立っている。 新しい格差を生む可能性について指摘。大規模コンピューティングパワーの調達力が新しい格差を生む 可能性がある。コンテンツ創造、情報リテラシーなどが新しい能力として需要が増す一方で、単純労働な どの価値が相対的に下がる可能性がある。 13 【6】情報の活用と課題 現在のFinTechビジネスの動向、あるべき金融情報の活用方法や克服すべき課題は何か。 ビッグデータがあるのに日本ではそれをうまく活用できていないのではないか、 ImplicitではなくExplicitな データとして活用できる仕組みを構築することが必要ではないか指摘。 金融の情報とそれに携わる商品等の取引情報を連携し、一体的に管理できる仕組みがあると良い。 債務者データの共有、シェアリングエコノミーが実現し、これらのメリットを享受できる方法として、Commu nity Credit を提言。日本にはあまり例がなく、阪神淡路大震災の際に、15 社が、コンソーシアムを組 んで、個別には信用力にもとるが、そのうちの1 社の受信に際し、他の14 社が返済を支援することによ り、信用力の共有を実現し、与信を可能とするといったビジネスモデルである。世界の類似の例として、バ ングラデシュでBOP ビジネスを推進するに当たり利用されて、特に繊維産業向け融資が多かった故か、 女性の社会進出に効果があった。 FinTechは既存金融機関に対するディスラプターを指すだけでなく、既存金融機関のイノベーションのア ジェンダである。 金融情報活用により、情報入手コストの削減、情報入手手数の減少、従来不可能と思われていた判 断基礎資料の入手が可能となることが利便性として考えられる。一方で、個別の会社状況等の資料に 基づくことになる為、情報の管理がきちんとなされなければ、問題が生じると指摘。 購買履歴を活用した金融情報データベースが整備され、適切な範囲で顧客情報が活用されることが期 待される。 アカウントアグリゲーションサービスなどを念頭に、情報活用のルール整備の必要性を指摘。加えて、公平 な競争を促す観点から、セキュリティ基準などについて、金融機関にもベンチャーにも公平なルールを整備 すべきと指摘。 14 日本の個人情報保護法について、企業は過剰な運営をしている面もあり、共用できる情報を明確にす れば、より新しいサービスの展開が見込まれる。 注目すべきビジネスモデルには、プラットフォームビジネスが考えられ、収益源泉はプラットフォーム利用手 数料、利用客属性に基づくターゲティング広告の収入が考えられる。 15 【7】金融ITシステム FinTech企業の台頭は、金融ITシステムに変革を迫るのか。 システムに対する知識の非対称性による不正等について留意が必要ではないかと指摘。 また進化の速 度が早いため、第三者によるシステム監査・財務諸表監査・分別管理監査等に加えて、システムに関す る統制についても第三者(公認会計士等)による検証の枠組みを構築するのはどうかと指摘。 日本において既存のIT大手企業は概ね、ユーザー仕様に基づきシステムを構築するSIerであり、IT企 業が自ら提案したサービスを提供しているところは少ない。SIビジネスは極めて安定的であり、大手ITとし てもなかなかリスクを取って新しいパッケージソフトウェアを開発しようとはしていない。また金融機関側もカ スタマイズ指向が強く、結果としてIT投資コストを下げている。FinTech活用によりこのような文化が変わ ることは望ましい。例えば、製造業における研究開発支援と同じように、革新的なITサービスに対する研 究開発支援制度を設けられないかと指摘。 既存の金融機関は、貸出金利と預金金利との金利差と、金融商品の販売手数料、振り込み等のサー ビス料が利益の源泉であったが、FinTechにより、自己否定をすることで、今まで経験のしなかった顧客 ニーズを取り込み、ITにより新たな製品として提供することが必要となる。 米国ではIT企業を中心に拡大したFinTechだが、日本ではまだ実験・研究段階であり、他国の成否 結果を調査の上、マイナス面を少なくする推進が期待できると指摘。 日本では金融へのセキュリティに対する期待が大きく動きが遅くなる懸念があると指摘。 16 【8】新技術としてのブロックチェーン ブロックチェーン技術は金融サービスにどのような変革をもたらすのか 昨年頃から、エンタープライズ領域でブロックチェーン技術の導入を目指し、ブロックチェーンプラットフォーム 開発の動きが活発になっていることとして、Hyperledger ProjectやR3コンソーシアム等の例を紹介。 また、アカデミック領域では東大生産研などでも共同技術研究が立ち上がり始めており、大手ITベンダー の一部も技術面の課題や運用面の課題に対して取組みを始めていることを指摘。 金融/非金融それぞれのユースケースについて言及し(金融分野:銀行間支払等、非金融分野:エ スクロー等)、ブロックチェーンの課題として以下の5つを指摘。①ファイナリティの確保、②リアルタイム処 理、③運用性、メンテナンス性、④開発環境、運用環境の整備、⑤情報の秘匿性。さらに、バズワード として過大な期待が抱かれると、問題があった際の失望・逆風も大きくなるため、地道な課題解決・検証 を続けていくことが社会インフラへの導入には重要であると指摘。 参加企業数が増加すると、合意形成に時間がかかる点は課題。 会計監査を受ける場合には、自己及び第三者による検証可能性を担保する必要がある(ブラックボック ス化してはならない)。 特にブロックチェーン自体の監査証拠としての信頼性・正確性等の検証が必要 ではないかと指摘。データ及びプロセスの信頼性・網羅性についての保証は必ず必要な領域である。 スマートコントラクトや仮想通貨と組み合わせたプロセス全体の自動化に、より大きな革新性があるので はないかと指摘。 スマートコントラクトは重要で、様々な市場間で、ブロックチェーンの技術を最大限に活用してデジタル通 貨で契約を行うことが可能になる。参加者間でのスタンダードな契約の認識の共有も一方で必要である。 ブロックチェーンはコスト減(Oliver Wymanのレポートによると、2022年までにトレードサービスのコスト が650~800億ドルから150億ドルまで減る)やシステミックリスク減につながり得る。 17 ブロックチェーンについて着目すべき点は、ネットワーク上の参加者が分散して記録し、過去の総ての取引 をすべての参加者が記録している為、これを見れば取引の整合性を参加者の誰もが検証できること、ビッ トコイン等日本向けアレンジと周知システムといった活用が為されている。 金融分野においては、デリバティブや転換社債など、取引所を経由しないで相対取引できるものを電子 取引システムヘ置き換えるサービスが見込まれる。 18 【9】イノベーション FinTechサービスを国際的に競争力あるものとし、イノベーションを創出していくために政府・企業は 何をすべきか。 イノベーションを興すという観点では、国内企業を守ろうとしないことが必要である。オープンなマーケットを 構築するような施策を検討し、その上で日本にメリットとなる施策を考えるべき。 日本の金融機関は人事での減点主義にみられるように、新しいことを創造するよりも、決まったマニュアル にそって完璧なオペレーションをすることの方が得意であるように見受けられる。多様性チームビルディング の観点では、オープン思考の人材とマニュアルにそってオペレーションをこなす人材が認め合い仕事ができ る環境を整備すべき。 健全なイノベーションを促進するにはSandboxのような試験的な場が提供され、検証に基づいて規制当 局が指針を明示し、民間企業のイノベーション促進に繋がるという好循環が必要である。 イノベーションにおいては、大企業とのベンチャーとの連携に向けた取り組みが引き続き重要であり、金融 領域においては特に消費者保護等が重要であることから、イノベーションに親和的な事後的な対応の仕 組み(事前規制は緩和しつつ、問題発生時の罰則を明確にする等)が重要である。 今後はクロスボーダー取引の加速が想定されるため、租税条約だけではなく、国際税法等で世界的な税 務の取扱いを整備し、取扱いにおいて各国間での齟齬・差異がないようにすべきではないかと指摘。 国内FinTechの取り組みを英文にして発信すること、FinTech企業に対する海外進出支援が必要であ る。外国の規制に関して助言する、法・税務・会計などの専門家サービス利用料は高く、利用ハードルが 高くなっている。 専門家の業務が業界自体の成長に資するものとするため、政官から、業界団体を通じ た各会員への資金的な援助が必要である。 FinTechにとどまらず、金融業界全体の国際化を推進する必要がある。現在、国内独自の決済フォーマ ットや、各種規制・制度の日本語問題、様々な固有の取引プロセスによる日本独自のITの発展等、他 業界に比べても金融業界はガラパゴス化している。 19 事業認可をサポートする体制を整備する必要がある。英国にはFCAに委託されてFCAの認可を受ける プロセスを支援する会社がある。日本の自動車免許取得の教習所みたいなもので、代行して免許取得 の全プロセスを指導して、認可後の指導もしてもらえる。起業側は、アウトソースすることもできる。彼らが FCAの事情を殆ど理解しており、FCAも全て自前でやるという考えではなく、どんどん民間に委託している。 スタートアップ企業への投資を促進するために、投資家向けの税制優遇を整備すべき。 政府系金融機関のKPIを変えることが必要である。英国では、日本政策金融公庫と大きく異なり、どれ だけ融資額を伸ばすかではなく、中小企業にいかに融資等ができるようになるかの事業環境作りをKPIと して、中小企業に公平な環境を整備するためのポリシー作りに大きな力を入れている。 市場全体が、オープン、公平な競争を促すことが必要である。例えば、既存の銀行が牛耳っている部分 をチャレンジャー銀行に解放しようという取り組みが必要である。その結果、取引銀行のスイッチ、 Overdraftの問題などをオープンにしている。 英国のように、オンラインで登記することができ、その日から企業活動ができる等、容易・安価に起業でき る仕組が必要である。日本では登記に一月はかかり、司法書士に依頼すると30万円くらいの支出とな る。 英国財務省(HMRC)、FCA(金融庁)などのFinTechへの力の入れ方が大きく、世界を牽引するリーダ ーシップをもっているので、日本の政府も見習う必要がある。FinTechにおけるBenchmarkの定義など も行われおり、Silicon Valley、NYなどの大都市だけでなく、数年先の状況を見越して中国、イスラエル の台頭を考慮した政策が打たれている。 日本のFinTech企業のグローバル化を推進するのであれば、日本のプロトコルに合わせないで作るのがベ ターだという点も重要である。例えば、銀行明細のフォーマット、全銀手順、Anserサービスなどは日本で しか通用しないということを理解して取り込むことが重要である。 FinTech企業は積極的にアフリカ等の新興国に進出すべき。日本のような先進国では大手企業に関し て、イノベーションのジレンマと呼ばれる問題が存在し、既存の大手企業が新興企業に投資し、言わば「 飼い殺し」状態にすることでイノベーションの進行を防いでいると指摘。 20 【10】人材 FinTech産業を国際市場で競争力あるものにしていくために人材の観点での課題は何か。 英国のFinTechには銀行などファイナンス出身者・経験者が50%はいるが、フランスでは10%以下 で、それは恐らく日本も同じであろう。FinTechは、ファイナンス経験者が取り組まないと発展しないと考え る人もいる。そういうTalentを、市場で活躍させられる環境整備が必要である。英国のFinTechでは、貧 困層向けの仕組み、移民向けの仕組み(RefuseeTech)などの取り組みもでてきて、既に先にどんどん 進んでいる。 海外のFinTech企業のベースとなっているキーパーソンの多くは金融機関とIT部門を行き来して両方の 知見を持っている人材。IT、金融業界は比較的流動性が高いものの、特に(優秀な学生が希望する) 大手の会社についてはほとんどが終身雇用制で人材の流動性が乏しい。従って起業家となりえる人材層 が薄く、結果的にイノベーションが起こりにくい状況になっている。 文理両面の知識が要求されることから、文理融合型の学部や専門職大学院の充実が必要と指摘。プ ログラミングの学校教育への導入・留学生促進等の施策を実施すべき。 社会人に対するIT教育への補助金制度創設、法人に対するIT教育減税の導入等の施策を実施すべ き。 所得税法の改正をすべき。High specの人について高所得となるが、日本は所得税の累進課税率が 諸外国に比較して大きいため、優秀な高額所得者が国外に流出してしまっている。また、所得格差につ いても否定的な風潮があるが、High specの人が海外に流出するリスクをきちんと考慮し、日本にそうい った人材を確保する(海外からの流入も含めて)施策が必要である。 21 【11】環境整備に関する論点 金融関連サービスの理想象・将来像をどのように想定するか。 FinTechを活用した金融機能を国際市場で競争力あるものにしていく環境整備とは 業種を問わず横串のルールを設けることで、公正な競争環境を整備し、技術発展の加速に繋がると考 える。公序良俗の確保の為に一定のルールを定めるべきだが、過度な規制はサービス低下やビジネスモデ ルに制約が出かねず、行政の監督もプリンシプルベースの考え方で実施すべき。 法規制のアービトラージが起きないように、包括的、横断的な新しい法体系を策定すべき。つまり、類 似のサービスには類似の規制を課することによって、事業者には公平な競争の場を確保すべき。 シェアリングエコノミー等のCtoC取引活性化を念頭に置いたルール整備の必要性の他、日本において重 要な決済手段となっている収納代行の事務プロセスのデジタル化を進めるべきと指摘。 日本法下の本人確認手続き効率化のためのより即効的な本人確認の手法は、「一定の特定事業者 が行った本人確認およびその記録の保存を確認する方法」をより柔軟に認めることである。将来的には、 特定当事者間で特定取引を委託した場合以外にも、取引時確認の省略ができる方向へ法規制改正 を検討すべき。 フィンテック関連環境整備のモデルとしてのEUにおける包括的、総合的な規制として2015年、改正E U決済サービス指令(以下、「PSD2」)がEuropean Parliamentで採択された。資金決済にかかる サービス分野を横断的に規制し、資金決済機関として権限を与えられるための要件を、営む業務内容 およびそのリスクに応じて決定する。今後のフィンテック関連の法規制の1モデルになり得ると考えられる。 世界銀行のFinancial Inclusionに、日本としてもっと強くコミットし、国際競争力の増大など、このよう なコミッティで国際社会との調和を保ちながら、日本の強みをキチンと認識し、対応すべき。ハードカレンシ ー・ソフトカレンシー問わず各中央銀行でコミッティやディスカッションをできる場所を設立すべき。 22 FinTechにより国際市場での競争力を高める為には、その源泉となるビッグデータの収集に関し、政府が 収集しているデータの共有化等を図ってはどうか。 金融関連サービスの理想象・将来像として、健康への気配りが高い人や、安全運転な人ほど保険料が 安い、といった、きめ細かい保険サービスの提供、法定通貨も分散型データベースでデジタル化することに より、社会的なコストが削減されるキャッシュレス社会の実現が期待される。 事業者にとって分かりやすい規制にするために、積極的な対話を繰り返すべき。不確実性が高いとクリエ イティビティとアジリティを阻害する。 サービスや業務の自動化により、金融機関ではフロント・バックを問わず人員削減が進むと思われるが、 機械にリプレイスされ失業した人たちに対する雇用の問題は必ず社会問題になる。安定した社会の実現 のためには、今から積極的な議論が必要である。 AI等を活用したRegTechを用いて、事業者自身がコンプライアンス・リスクマネジメントに関する規制をセ ルフチェックできる仕組を検討。 英・豪・星が提案するSandbox制度と、日本の企業実証特例・グレーゾーン解消制度・FinTechサポ ートデスク・ノーアクションレター制度・国家戦略特区を比較し、運用改善により同内容を実現できる可 能性があると指摘。 一部のスタートアップに限らず国内FinTech企業を広く発展させるには、適切な規制(社会問題解決、 個人情報保護、消費者利便性を踏まえた規制)やインフラ整備が求められる。 FinTech企業についてもいずれ、「コンプライアンス、ディスクロージャー、アカウンタビリテイ、コーポレート・ガ バナンス」、更には「資金洗浄(AML:アンチマネロン)」等の視点からのルール整備が必須になってくる ので、その際は欧米の先進国の規制・ルール等を十分精査し、金融業界・産業界を巻き込んだ広範な 検討が必要である。 会計・財務領域については、金融業界以外の事業者にも新しいサービスに伴うネット取引・クロスボーダー 取引でのエビデンスの信頼性確保と費用計上・売上計上のタイミング、相殺取引、為替の評価等をどう するかといった既存の金融業界と同様の複雑な決算に対応することが必要になってくる。 23 FinTechで海外との垣根が低くなるため金融機関の国際競争力を強化すべき。 高齢者に対するITリテラシー向上施策を進めるべき。 オンライン質屋について、質屋営業法上の営業所の解釈が不明確で、身元確認の方法が限定的なた め普及の妨げになっている。 金融庁におけるFinTechサポートデスクや、オーストラリアのInnovation Hubを高く評価。 P2P Lendingもシェアリングエコノミーであり、既存の法令ではその存在が想定されていないものの、貸金 業法や利息制限法への抵触する可能性がある為、ライドシェアや民泊と同様に新たなルール整備が求め られる可能性を指摘。 フィンテック関連法規制試案。資金決済にかかる、送金、振込、支払い、決済、清算等のサービスを横 断的に包含する形で、「資金決済サービス業(仮称)」を新たに定義する。ここで、商品・サービスの支 払いに関する決済サービス(収納代行業)の位置付を明確にしなければならない。最高裁判例に則る 限り、収納代行サービス等も含め、商取引に伴う支払い、決済、純粋な送金に伴う資金の移動はすべ て、「為替取引」に含まれるとすべきであるが、歴史的背景を有する既成事実を覆し、規制の対象外に あった収納代行業務に現時点で規制を及ぼすことは現実的ではないので、喫緊の対応として、収納代 行業については、為替取引に該当するとしたうえで、一定の規制の対象から除外することを検討すべき (登録制でなく届出制とする等)。 24