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あっせん文

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あっせん文
総 評 相 第 247 号
平成 26 年 10 月 31 日
厚生労働省保険局長 殿
総務省行政評価局長
保険薬局と保険医療機関との一体的な構造を規制する規定の解釈の見直し
(あっせん)
当省では、総務省設置法(平成 11 年法律第 91 号)第4条第 21 号の規定に基づき、
行政機関等の業務に関する苦情の申出につき必要なあっせんを行っています。
この度、当省に対し、
「保険薬局と保険医療機関とが隣接している場合、国が一旦
公道に出て入り直す構造を求めていることもあり、両施設の敷地境界にフェンス等
を設けている。フェンス等により仕切られていると身体が不自由な者、車いすを利
用する者、子供連れ、高齢者にとっては不便であるので、一旦公道に出て入り直す
べきとする杓子定規な考え方は見直してほしい。」との申出がありました。
この申出について、総務大臣が開催する行政苦情救済推進会議において民間有識
者の意見を聴取するなどにより検討した結果、当省としては、下記のとおり、保険
薬局が保険医療機関から経営上独立していることが十分に確保されている場合には、
構造上の独立性に関する規定は緩やかに解釈するのが相当であり、身体が不自由な
者等の利便に配慮する観点から規定の解釈を見直す必要があると考えますので御検
討ください。
なお、これらに対する貴省の措置結果等について、平成 27 年1月 30 日までにお
知らせください。
記
1 保険薬局と保険医療機関との土地又は建物の一体的な構造を規制する規定
(1) 関係法令における取扱い
「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」
(昭和 32 年厚生省令第 16 号)第2
条の3によれば、保険薬局は、保険医療機関(健康保険法の規定により厚生労
働大臣の指定を受けた病院又は診療所)と一体的な構造とし、又は保険医療機
1
関と一体的な経営を行ってはならないとされている。
(2) 実務上の取扱い
「保険医療機関及び保険医療養担当規則の一部改正等に伴う実施上の留意事
項について」(平成8年3月8日付け保険発第 22 号厚生省保険局医療課長、歯
科医療管理官発、都道府県民生主管部(局)保険主管課(部)長、国民健康保険主
管課(部)長宛て通知。以下「実施上の留意事項」という。)によると、次のとお
りとされている。
①
保険医療機関と一体的な構造とは、保険薬局の土地又は建物が保険医療機
関の土地又は建物と分離しておらず、公道又はこれに準ずる道路を介さずに
専用通路等により患者が行き来するような形態のものをいう。
②
保険薬局の独立性の確保の観点からは、いわゆる医療ビルのような形態は
好ましくないが、このような場合にあっては、当該建物について、患者を含
む一般人が自由に行き来できるような構造になっている旨を十分に確認する
こと。加えて、このような形態の場合には、患者誘導が行われるような実態
のないよう、併せて留意すること。
③
総合的に判断して医療機関の調剤所と同様とみられるものについては、地
方社会保険医療協議会に諮った上、保険薬局の新規指定を行わないこと。ま
た、現に存するものについては、次回更新時までに改善を指導し、これに従
わない場合は、地方社会保険医療協議会に諮った上、更新を行わないこと。
2
本件相談の趣旨に関連があると考えられる本件とは別の訴訟の概要及び判決の
概要
(1) 訴訟の概要(背景・請求の趣旨)
原告(保険薬局の指定申請者)は、医療機関が同居する区分建物の1階に保険
薬局の開設を予定し、平成 23 年1月、東北厚生局長に対して保険薬局の指定を
申請。
東北厚生局長は、同薬局について、省令で禁止している「保険医療機関と一
体的な構造」が認められるとして、平成 23 年3月に保険薬局指定拒否処分を実
施。これに対し、原告は、処分の取消し及び指定処分の義務付け並びに損害賠
償を求め、同年8月に訴訟を提起。
東京地方裁判所での原審判決は被告(国)が全面勝訴(平成 24 年 11 月1日)
したが、原告が東京高等裁判所に控訴し、控訴審判決では被控訴人(国)が一
部敗訴(平成 25 年6月 26 日)。
(2) 東京高等裁判所における控訴審判決の概要
2
医薬分業の目的達成という見地からは、経営上の独立性と比べて構造上の独
立性は、より間接的な要件といえるから、本件事案において、経営上の独立性
が十分に確保されている場合には、構造上の独立性に関する規定は緩やかに解
するのが相当である。本件においては、経営上独立しており、医療機関と敷地
が同一ではあるものの、一体的な構造にあるということはできないため、指定
拒否処分は違法な処分と認められる。
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厚生労働省の意見
(1) 実務上の取扱い
「実施上の留意事項」における「総合的に判断して医療機関の調剤所と同様
とみられるもの」か否かは、各地方厚生(支)局が、現地の状況を踏まえて個
別具体的に判断する。また、その際は、「フェンス等が設置されているか否か」
によって判断するのではなく、
「公道又はこれに準ずる道路等を介さずに専用通
路等により患者が行き来するような形態」に該当するかどうかにより、判断を
行う。なお、指定に当たっては、各地方厚生(支)局が地方社会保険医療協議
会に諮った上で、最終的に決定する。
(2) 上記2の控訴審判決後の対応
当該判決は、当該事案において、薬局と医療機関は一体的な構造にあるとい
うことはできないため、指定拒否処分は違法な処分としたものであり、一体的
な構造についての考え方を変更したものではない。
よって、司法上、一体的な構造の考え方を変更するよう求めたものではない
ため、当該判決以降、厚生労働省として一体的な構造の考え方を変更した事実
はない。
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改善の必要性
上記2の控訴審判決によると、
「医薬分業の目的達成という見地からは、経営上
の独立性と比べて構造上の独立性は、より間接的な要件といえるから、本件事案
において、経営上の独立性が十分に確保されている場合には、構造上の独立性に
関する規定は緩やかに解するのが相当である。本件においては、経営上独立して
おり、医療機関と敷地が同一ではあるものの、一体的な構造にあるということは
できない。」としている。このうち「医薬分業の目的達成という見地からは、経営
上の独立性と比べて構造上の独立性は、より間接的な要件といえる」ことについ
ては、本件訴訟の事例に限られるものではないものと考えられる。
また、厚生労働省は、医薬分業における経営上の独立性については一切の例外
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を認めていないものの、構造上の独立性については「保険薬局の独立性の確保の
観点からは、いわゆる医療ビルのような形態は好ましくないが、このような場合
にあっては、当該建物について、患者を含む一般人が自由に行き来できるような
構造になっている旨を十分に確認すること。加えて、このような形態の場合には、
患者誘導が行われるような実態のないよう、併せて留意すること」とし、昨今の
不動産事情のすう勢を見極めて例外を認める見解を示している。
このため、経営上の独立性が十分に確保されている場合には、構造上の独立性
については、敷地の境界が仕切られていると身体が不自由な者、車いすを利用す
る者、子供連れ、高齢者にとっては不便であるので見直してほしいとする要望を
踏まえ、緩やかに解釈するよう考え方を見直す余地はあるものと考える。
したがって、厚生労働省は、保険医療機関に隣接して設置されている保険薬局
の指定(更新)を行うに当たり、当該保険薬局における、保険医療機関からの経
営上の独立性が確保されていることが確認できる場合には、構造上の独立性につ
いて、例えば「両施設の敷地境界がフェンス等によって仕切られている必要があ
る」といった杓子定規な考え方はせずに、上記2の訴訟の判決を踏まえ、対応す
る必要がある。
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