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第 97回日商簿記検定2級解説
平成 1 2 年度第 9 7回日商簿記検定 2 級 ………… 解説 ……… 第1問 1.会社設立における株式の発行の処理である。 会社設立時の株式発行の処理 (1)額面株式 原則…全額資本金となる。 例外…額面金額と発行価格の1/2とを比較し、いずれか多い金額が資本金となる。 (2)無額面株式 原則…全額資本金となる。 例外…¥50,000 と発行価格の1/2とを比較し、いずれか多い金額が資本金となる。 よって、本問の場合の資本金の金額は、 ① 額面株式 額面金額(¥50,000)>発行価格(¥90,000)×1/2=¥45,000 ∴¥50,000 ¥50,000×10,000 株=¥500,000,000……資本金の金額 (¥90,000−¥50,000)×10,000 株=¥400,000,000…株式払込剰余金の金額 ② 無額面株式 ¥50,000>発行価格(¥90,000)×1/2=¥45,000 ∴¥50,000 ¥50,000×10,000 株=¥500,000,000……資本金の金額 (¥90,000−¥50,000)×10,000 株=¥400,000,000…株式払込剰余金の金額 資本金の合計 ¥500,000,000+¥500,000,000=¥1,000,000,000 株式払込剰余金の合計 ¥400,000,000+¥400,000,000=¥ 800,000,000 株式発行の費用については、創立費勘定を用いて処理をする。 2.社債発行の処理である。 社債を発行した場合は、社債勘定の貸方に社債額面で記入する。また、手取金(払込金額) と額面金額との差額は、社債発行差金勘定(繰延資産)で処理をする。 社債勘定(貸方)…社債(額面)総額¥50,000,000 当座預金勘定(借方)…¥50,000,000÷@¥100×@¥97=¥48,500,000 社債発行差金勘定(借方)…¥50,000,000−¥48,500,000=¥1,500,000 社債発行のための費用については、社債発行費勘定を用いて処理をする。 3.吸収合併の処理である。 吸収合併をした場合には、被合併会社の資産および負債を引き継ぐ。また、被合併会社 の株主へ株式を発行した場合には、資本金の増加となる。 勘定科目が指定されているため、勘定科目に注意すること。 引き継ぐ資産(借方)……売掛金¥3,000,000、建物¥11,000,000、土地¥18,000,000 引き継ぐ負債(貸方)……長期借入金¥8,000,000 資本金の金額(貸方)……@¥50,000×400 株=¥20,000,000 貸借の差額として、借方不足の場合には、営業権勘定で処理し、貸方不足の場合には、合 併差益勘定で処理(本問の場合)をする。 4.試用販売の処理である。対照勘定で処理されていることに注意すること。 試用販売では、商品を発送したときには、次のような処理が行われている。 (試用売掛金)××× (試用販売)××× よって、買い取りの意思表示を受けた場合には、対照勘定を取り消す処理をするとともに 売上を計上することになる。 5.保険料の前払分の処理である。 (決算日の処理) 前払保険料には、長期もあることに注意する。 保険料(当期の費用)……平成 12 年6月1日∼平成 12 年9月 30 日(決算日)4ヶ月 ¥720,000×4ヶ月/36 ヶ月=¥80,000 前払保険料……平成 12 年 10 月1日∼平成 13 年9月 30 日 12 ヶ月 ¥720,000×12 ヶ月/36 ヶ月=¥240,000 長期前払保険料……平成 13 年 10 月1日∼平成 15 年5月 31 日 20 ヶ月 ¥720,000×20 ヶ月/36 ヶ月=¥400,000 第2問 期首貸借対照表と各特殊仕訳帳の記入合計より残高試算表を作成する問題である。 各特殊仕訳帳の仕訳は、下記のようになる。 A.現金出納帳 (収 入) (現 金) 175,000 (売 上) 175,000 (現 金) 490,000 (売 掛 金) 490,000 (現 金) 280,000 (受 取 手 形) 280,000 (現 金) 55,000 (諸 口(借入金) ) 55,000 同 (支 出) じ 90,000 取 (仕 入) 90,000 (現 金) (買 掛 金) 350,000 (現 金) 350,000 同 引 (支 払 手 形) 180,000 (現 金) 180,000 じ で (諸 口(給 料) ) 234,000 (現 金) 234,000 取 あ (諸 口(光熱費) ) 32,000 (現 金) 32,000 引 る (諸 口(通信費) ) 24,000 (現 金) 24,000 で (諸口(支払利息) ) 8,000 (現 金) 8,000 あ B.仕入帳 る (仕 入) 90,000 (現 金) 90,000 (仕 入) 350,000 (買 掛 金) 350,000 (仕 入) 180,000 (支 払 手 形) 180,000 C.売上帳 (現 金) 175,000 (売 上) 175,000 (売 掛 金) 450,000 (売 上) 450,000 (受 取 手 形) 300,000 (売 上) 300,000 普通仕訳帳 1/1 (支 払 家 賃) 15,000 (前 払 家 賃) 15,000 (前 受 手 数 料) 3,000 (受 取 手 数 料) 3,000 1/15 (備 品) 50,000 (未 払 金) 50,000 残高試算表の各勘定科目の金額は下記のように計算する。 現金の金額 期首貸借対照表+収入合計−支出合計 ¥330,000+¥175,000+¥490,000+¥280,000+¥55,000−¥90,000−¥350,000 −¥180,000−¥234,000−¥32,000−¥24,000−¥8,000=¥412,000 受取手形の金額 期首貸借対照表−現金出納帳の収入+売上帳 ¥313,000−¥280,000+¥300,000=¥333,000 売掛金の金額 期首貸借対照表−現金出納帳の収入+売上帳 ¥550,000−¥490,000+¥450,000=¥510,000 繰越商品 期首貸借対照表 ¥322,000 備品 期首貸借対照表+普通仕訳帳 ¥270,000+¥50,000=¥320,000 前払家賃 期首貸借対照表−普通仕訳帳 ¥15,000−¥15,000=¥0 支払手形 期首貸借対照表−現金出納帳の支出+仕入帳 ¥256,000−¥180,000+¥180,000=¥256,000 買掛金 期首貸借対照表−現金出納帳の支出+仕入帳 ¥448,000−¥350,000+¥350,000=¥448,000 借入金 期首貸借対照表+現金出納帳の収入 ¥400,000+¥55,000=¥455,000 未払金 普通仕訳帳 ¥50,000 貸倒引当金 期首貸借対照表 ¥23,000 備品減価償却累計額 期首貸借対照表 ¥70,000 前受手数料 期首貸借対照表−普通仕訳帳 ¥3,000−¥3,000=¥0 資本金 期首貸借対照表 ¥600,000 売上 売上帳 ¥175,000+¥450,000+¥300,000=¥925,000 受取手数料 普通仕訳帳 ¥3,000 仕入 仕入帳 ¥90,000+¥350,000+¥180,000=¥620,000 支払家賃 普通仕訳帳 ¥15,000 給料 現金出納帳の支出 ¥234,000 光熱費 現金出納帳の支出 ¥32,000 通信費 現金出納帳の支出 ¥24,000 支払利息 現金出納帳の支出 ¥8,000 第3問 精算表を作成する問題である。 決算日に判明した事項を先に行い続いて決算修正事項を行うこと。 A.決算日に判明した事項 (1)貸倒れの処理 (貸 倒 引 当 金) 35,000 (不 渡 手 形) 35,000 (2)未決算勘定の処理 (現 金 預 金) 360,000 (未 決 算) 450,000 (火 災 損 失) 90,000 現金預金の金額…¥450,000×80%=¥360,000 火災損失の金額…¥450,000×20%=¥ 90,000 B.決算修正事項 (1)商品の処理 (仕 入) 570,000 (繰 越 商 品) 570,000 (繰 越 商 品) 450,000 (仕 入) 450,000 (棚 卸 減 耗 費) 10,000 (繰 越 商 品) 10,000 (商 品 評 価 損) 44,000 (繰 越 商 品) 44,000 期首商品の金額[試算表の繰越商品]570,000 期末商品の処理 帳簿棚卸高 900 個[帳簿棚卸数量]×@¥500[原価]=¥450,000 棚卸減耗費 (900 個[帳簿棚卸数量]−880 個[実地棚卸数量] ) ×@¥500[原価]=¥10,000 商品評価損 (@¥500[原価]−@¥450[時価] )×880 個[実地棚卸数量] =¥44,000 原価@¥500 商品評価損 ¥44,000 棚 時価@¥450 卸 貸借対照表価額 減 耗 ¥396,000 費 ¥10,000 実地数量 帳簿数量 880 個 900 個 (2)貸倒引当金の設定(精算表上の勘定科目より洗替法と推定できる。 ) ①貸倒引当金戻入の金額[試算表 − A) (1) ] ¥72,000−¥35,000=¥37,000 (貸 倒 引 当 金) 37,000 (貸倒引当金戻入) 37,000 ②貸倒引当金繰入の金額[割引手形を含まないことに注意すること。 ] [{(受取手形−割引手形)+売掛金}×5%] {(¥850,000−¥120,000)+¥1,350,000}×5%=¥104,000 (貸倒引当金繰入) 104,000 (貸 倒 引 当 金) 104,000 (3)減価償却費の計上 建物 (¥4,000,000−¥1,620,000)×20%=¥476,000 備品 (¥1,200,000−¥420,000)×20%=¥156,000 減価償却費の金額 ¥476,000+¥156,000=¥632,000 (減 価 償 却 費) 632,000 (建物減価償却累計額) 476,000 (備品減価償却累計額) 156,000 (4)新株発行費の償却[商法の定める最低限度額を計算する。 ] 3年内の毎決算期において均等額以上の償却をすることが規定となっている。 当期償却分(1年目)¥72,000÷3年=¥24,000 (新株発行費償却) 24,000 (新 株 発 行 費) 24,000 (5)給料の未払分の計上 (給 料) 75,000 (未 払 給 料) 75,000 (6)保険料の前払分の計上 (前 払 保 険 料) 36,000 (支 払 保 険 料) 36,000 (7)利息の未払分の計上 (支 払 利 息) 28,000 (未 払 利 息) 28,000 (8)受取手数料の未収分の計上 (未 収 手 数 料) 47,000 (受 取 手 数 料) 47,000 第4問 単純総合原価計算の完成品原価および月末仕掛品原価を算定する問題である。 (1)月初有高(月初仕掛品原価) [原料費+加工費] 226,000 円+43,100 円=269,100 円 (2)当月製造費用 ①原料費(当月の材料消費額を計算する。 ) [月初有高+当月仕入高−月末有高] 500,000 円+5,100,000 円−600,000 円=5,000,000 円 ②加工費(直接作業時間を配賦基準として予定配賦することに注意する。 ) [当月実際直接作業時間×加工費予定配賦率] 2,500 時間×1,800 円=4,500,000 円 (3)当月完成高(平均法を用いていることに注意する。 ) ①原料費 [完成品数量] 2,480 ㎏ (226,000 円+5,000,000 円)× =4,984,800 円 2,480 ㎏ + 120 ㎏ [完成品数量] [月末仕掛品数量] ②加工費 [完成品数量] 2,480 ㎏ (43,100 円+4,500,000 円)× =4,488,800 円 2,480 ㎏ + 120 ㎏×1/4 [完成品数量] [月末仕掛品完成品換算数量] ③完成品原価[原料費+加工費] 4,984,800 円+4,488,800 円=9,473,600 円 (4)月末有高(平均法を用いていることに注意する。 ) ①原料費 [月末仕掛品数量] 120 ㎏ (226,000 円+5,000,000 円)× =241,200 円 2,480 ㎏ + 120 ㎏ [完成品数量] [月末仕掛品数量] ②加工費 [月末仕掛品完成品換算数量] 120 ㎏×1/4 (43,100 円+4,500,000 円)× =54,300 円 2,480 ㎏ + 120 ㎏×1/4 [完成品数量] [月末仕掛品完成品換算数量] ③月末有高[原料費+加工費] 241,200 円+54,300 円=295,500 円 第5問 製造間接費の差異の分析に関する問題である。 問1 製造間接費配賦差異を求める。 ①製造間接費配賦率 年間製造間接費予算÷年間正常作業時間 7,200 万円÷24,000 時間=0.3 万円 ②当月の製造間接費予定配賦(正常配賦)額 製造間接費配賦率×当月の実際直接作業時間 0.3 万円×1,800 時間=540 万円 ③製造間接費配賦差異 製造間接費予定配賦(正常配賦)額−当月の製造間接費実際発生額 540 万円−590 万円=−50 万円(不利差異)…借方(差異)となる。 問2 製造間接費の固定予算を前提とする差異の分析である。 ①予算差異 固定予算額(月間製造間接費予算額)−当月の製造間接費実際発生額 600 万円−590 万円=10 万円(有利差異)…貸方(差異)となる。 ②操業度差異 実際直接作業時間に対する製造間接費予定配賦額−固定予算額(月間製造間接費予 算額) 0.3万円×1,800時間=540万円…実際直接作業時間に対する製造間接費予定配賦額 540 万円−600 万円=−60 万円(不利差異)…借方(差異)となる。 予算差異 10 万円 操業度差異 60 万円 実際発生額 590 万円 予算 600 万円 配賦率 0.3 万円 1,800 時間 2,000 時間 実際直接作業時間 正常作業時間 問3 製造間接費の公式法変動予算を設定していたときの差異の分析である。 ①予算差異 実際直接作業時間に対する予算許容額−当月の製造間接費実際発生額 0.1 万円×1,800 時間+400 万円=580 万円(予算許容額) 580 万円−590 万円=−10 万円(不利差異)…借方(差異)となる。 ②操業度差異 実際直接作業時間に対する製造間接費予定配賦額−固定予算額(月間製造間接費予 算額) 400 万円÷2,000 時間=0.2 万円(固定予算の配賦率) 0.2万円×1,800時間=360万円(実際直接作業時間に対する製造間接費予定配賦額) 360 万円−400 万円=−40 万円(不利差異)…借方(差異)となる。 実際発生額 予算差異 590 万円 −10 万円 変動費率 0.1 万円 直接作業時間に対する 固定費率 0.2 万円 予算許容額 月間固定費 操業度差異 予算400万円 −40 万円 1,800 時間 2,000 時間 実際直接作業時間 正常作業時間