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日本の生協の2020年ビジョン

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日本の生協の2020年ビジョン
日本の生協の2020年ビジョン
CONTENTS
I
日本の生協の2020年ビジョン
II
いま、なぜビジョンなのか
1 新たな時代の要請に応え、協同組合の役割を発揮すべきとき
1
2 組合員のくらしが、かつてなくきびしさを増す時代
5
3 くらしへの役立ちをより一層高めていくことが求められる生協事業
7
4 いまこそ、新たなビジョンを掲げよう
7
ビジョン
1 ビジョン(10年後のありたい姿)
11
2 ビジョンを実現するための5つのアクションプラン
12
アクションプラン1
ふだんのくらしへの役立ち
13
アクションプラン2
地域社会づくりへの参加
17
アクションプラン3
世界と日本社会への貢献
19
アクションプラン4
元気な組織と健全な経営づくり
21
アクションプラン5
さらなる連帯の推進と活動基盤の整備
23
I
1
いま、
なぜビジョンなのか
新たな時代の要請に応え、協同組合の役割を発揮すべきとき
21 世紀を迎え、最初の 10 年が経過しました。私たちは、1997 年に 21 世紀を見据えて「自立した市民
の協同の力で 人間らしいくらしの創造と 持続可能な社会の実現を」を数十年変わらぬ理念として決
定しました。【資料 1】
しかし、この間、地球環境問題はむしろ深刻化し、イラク戦争をはじめとして、世界で戦火が絶える
ことはありませんでした。今でも世界で約 10 億人の人びとが飢餓に苦しんでおり、地震や異常気象による
大規模災害も増えています。資源、食料・水、地球環境の有限性もあらためて問題になり、世界が連帯
して取り組んでいくことが求められています。2008 年の世界的な経済危機は、利益追求型の市場原理主
義の歪みや矛盾を露呈しました。日本社会でも、格差や貧困が広がり、自立すら難しい人びとが増え、
共助、協同なくしてはくらしが成り立たない状況が広がっています。
私たちは今、あらためて人間らしいくらしの創造と持続可能な社会の実現に向けて、新しい社会の枠組
みや経済の構造を創り上げていかなければなりません。新たな社会づくりには、協同組合の価値・仕組
みの有効性を発揮し、社会の中で協同組合が積極的な役割を果たしていくことが期待されています。
1
協同組合のアイデンティティに関する ICA 声明は、
1978 年からの国際的な討議と
「レイドロー報告 」
「マ
2
3
ルコス報告 」
「ベーク報告 」の 3 つの報告を経て、
1995 年の ICAマンチェスター大会で確認されました。
この声明で協同組合は、
「共同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、共通の経済的・社会的・文化的ニー
ズと願いを満たすために自発的に手を結んだ人びとの自治的な組織である。
」
と定義されました。
また、協同組合の価値として「自助、自己責任、民主主義、平等、公正、そして連帯の価値を基礎と
する。それぞれの創設者の伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、正直、公開、社会的責任、そして
他人への配慮という倫理的価値を信条とする。
」を掲げ、実践への指針として「自発的で開かれた組合員
制」
「組合員による民主的管理」
「組合員の経済的参加」
「自治と自立」
「教育、訓練および広報」
「協同
組合間協同」
「コミュニティへの関与」の 7 つの原則が確認されました。【資料 2】
国連は、2012 年を「国際協同組合年」とする総会宣言を採択し、これまでの協同組合の活動を高く評価
4
しました。日本の中でも協同組合間提携を進め、ビジビリティ
(視認性・認知度) を向上させ、今後数十
年の協同組合の発展につなげていく契機にしていかなければなりません。【資料 3 】
5
6
また、
「新しい公共 」の議論などで非営利セクター への期待が高まっています。協同組合は、組合員自
らが出資し、事業体を通じて共通のニーズと願いを実現する協同の経済システムとしての法的・社会的な基
盤と歴史を持ち、現在の経済社会における一定の影響力と成果を確保してきています。今後、期待の高ま
る非営利セクターの中でますます重要な役割を発揮していくことが求められています。
私たちは、協同組合のアイデンティティに関する ICA 声明を事業や活動に貫き、日本社会の中で協同
組合として積極的な役割を果たし、生協の 21 世紀理念の実現をめざします。
1
2
3
4
5
6
1980 年の ICA モスクワ大会でレイドロー博士により報告された「西暦 2000 年における協同組合」。
1988 年の ICA ストックホルム大会で当時のマルコス会長により提起された「協同組合とその基本的価値」。
1992 年の ICA 東京大会でスウェーデンのベーク氏により提起された「変化する世界における協同組合の価値」。
社会や地域などへの広報やコミュニケーションを通じて、生協のブランドイメージを高め、生協の事業・活動を見えるようにしていくこと。第 9
回 ICA アジア太平洋地域総会(2010 年 9 月)にて、ビジビリティ(視認性・認知度)を高めることが提起され、2012 年の国際協同組合年に向
けて世界共通のメッセージとして協同組合をアピールすることと共に確認された。
内閣府・
「新しい公共」円卓会議の「新しい公共」宣言によると、「人びとの支え合いと活気のある社会。それをつくることに向けたさまざまな当
事者の自発的な協働の場」とされている。
様々な定義があるが、ここでは国・地方自治体の公共セクターと私企業の市場セクターではなく、民間で営利を目的としない団体や組織とする。
協同組合のほか、NPO や市民団体、社会福祉法人、公益法人などが民間非営利団体として挙げられる。
−1−
【資料1】生協の21世紀理念(1997年日本生協連第47回通常総会で決定)
自立した市民の協同の力で
人間らしいくらしの創造と
持続可能な社会の実現を
(「理念」のことばは少し長くなりますが、考え方を正確に表現することを重視しています。
)
● わたしたちは、
「自立した市民の協同の力で 人間らしいくらしの創造と 持続可能な社会の実現を」を
生協の21世紀理念とし、人類史的な社会の変革期に、なによりも人びとの幸せを大切にして行動します。
● 人びとの自立、自助をもとに、おたがいに助けあう新しい市民社会をつくってゆくことが必要です。
日本社会にありがちな画一的集団主義から脱皮し、自主性、自発性、個性を大切にした社会運営が求め
られます。一人ひとりの人間には、年齢、性別、価値観などのちがいがあります。それらを認めあい、助け
あって、人とひととが共生できる社会をつくることが求められています。
人間は、他の人との助けあいなしに、一人では生きてゆけません。私たちの目的はみんなの力を合わ
せてこそ、すなわち「協同」があってこそ達成できます。
「自立と協同」は個人と社会の関係をあらわすだけでなく、生協間の関係をも律する原理です。
また「自立と協同」は、全地球的に国や民族がお互いに認めあい、人とひととが共生できる社会をつ
くるために、そして自然との共生をはかるために、すなわち「持続可能な社会」を実現するために大切
な原理です。
わたしたちは、利益追求が自己目的化し、資本力がすべてをきめる資本の論理ではなく、
「市民の協同」
こそ、
「人間らしいくらしの創造と持続可能な社会の実現」をおしすすめる原動力であることを確信します。
● 人間らしいくらしとは、モノだけではなく、心の豊かさや、すこやかさ、ゆとりがあるくらしです。
そのためには、人間を大切にした、創造性ゆたかな経済・社会がつくられなければなりません。
また、おたがいの多様な生きかたの選択・個性を認めあう人間関係や、一人ひとりが大切にされる、ふ
れあいとぬくもりのあるコミュニティの創造がなければ、人間らしいくらしは営めません。高齢者が安
心してくらすことができ、若者たちが未来に希望をもち、子供たちがのびのびと成長できる社会の実現
が必要です。
わたしたちは、人間らしいくらしや社会を、与えられるものではなく、みずからつくりだす目標としてか
かげます。生協運動は、人びとの経済的・社会的・文化的ニーズやねがいを、組合員がみずからつくる事
業や活動をつうじて実現します。
● 地球環境をまもり、限りある資源を、自然との調和を大切にしながら有効に活用していくことは、いま
人類にもっとも求められている課題のひとつです。21世紀以降も人類が地球の一員として生存し、自然と
共生してゆくためには、リオ環境サミット「アジェンダ21」で強調された「持続的な発展」の共通課題を解
決しなければなりません。そして、そのことを人類の共通の認識としてゆくことが求められています。
産業や生産中心につくられてきた社会を、人びとの消費を起点にした人間優先の社会につくりなおし
てゆくことが必要です。それは、男女共同参画社会を実現するためにも必要です。さらには、科学万能と
いう科学技術観、自然観をはじめ近代文明の価値観を見なおしてゆくことが求められています。それ
は、科学や技術を否定することではなく、人類の知恵の成果を環境保全型システムなど、人々の幸せの
ための新しい枠組みで有効に活用してゆくことを意味します。
「継続可能な社会の実現」のためには、国や民族をこえた協調が不可欠です。経済、政治、文化のグ
ローバル化のもとで、人類共通のねがいである核兵器のない平和な地球を実現し、また南北問題を解
決するために、生協運動の立場からの努力をつづけます。
−2−
【資料2】協同組合のアイデンティティに関する声明(1995年、ICAマンチェスター大会で決定)
定義
協同組合は、共同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、共通の経済的・社会
的・文化的ニーズと願いを満たすために自発的に手を結んだ人々の自治的な組織で
ある。
価値
協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、そして連帯の価値を基礎とす
る。それぞれの創設者の伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、正直、公開、社会的
責任、そして他人への配慮という倫理的価値を信条とする。
協同組合原則は、協同組合がその価値を実践に移すための指針である。
原則
[第1原則] 自発的で開かれた組合員制
協同組合は、自発的な組織である。協同組合は、性別による、あるいは社会的・人種
的・政治的・宗教的な差別を行わない。協同組合は、そのサービスを利用することが
でき、組合員としての責任を受け入れる意思のある全ての人々に対して開かれている。
[第2原則] 組合員による民主的管理
協同組合は、その組合員により管理される民主的な組織である。組合員はその政策
決定、意思決定に積極的に参加する。選出された代表として活動する男女は、組合員
に責任を負う。
単位協同組合では、組合員は(一人一票という)平等の議決権をもっている。他の段階
の協同組合も、民主的方法によって組織される。
[第3原則] 組合員の経済的参加
組合員は、協同組合の資本に公平に拠出し、それを民主的に管理する。その資本の少
なくとも一部は通常協同組合の共同の財産とする。組合員は、組合員として払い込ん
だ出資金に対して、配当がある場合でも通常制限された率で受け取る。組合員は、
剰余金を次の目的の何れか、または全てのために配分する。
・準備金を積み立てることにより、協同組合の発展のため、その準備金の少なくとも
一部は分割不可能なものとする
・協同組合の利用高に応じた組合員への還元ため
・組合員の承認により他の活動を支援するため
[第4原則] 自治と自立
協同組合は、組合員が管理する自治的な自助組織である。協同組合は、政府を含む他
の組織と取り決めを行ったり、外部から資本を調達する際には、組合員による民主的
管理を保証し、協同組合の自主性を保持する条件において行う。
[第5原則] 教育、訓練および広報
協同組合は、組合員、選出された代表、
マネジャー、職員がその発展に効果的に貢献
できるように、教育訓練を実施する。協同組合は、一般の人々、特に若い人々やオピニ
オンリーダーに、協同組合運動の特質と利点について知らせる。
[第6原則] 協同組合間協同
協同組合は、ローカル、ナショナル、リージョナル、インターナショナルな組織を通じて
協同することにより、組合員に最も効果的にサービスを提供し、協同組合運動を強化
する。
[第7原則] コミュニティへの関与
協同組合は、組合員によって承認された政策を通じてコミュニティの持続可能な発展
のために活動する。
−3−
【資料3】国際協同連合年(IYC)について
−4−
1
2
組合員のくらしが、かつてなくきびしさを増す時代
今、組合員のくらしは、格差や貧困が広がり、年金や雇用など将来に不安を抱え、きわめ
3てきびしい状況です。今後 10 年間の組合員のくらしは、日本社会の構造変化が急速に進む中
で、より一層きびしさを増すことが予想されます。
人口減少と高齢化の進展により、労働力人口の減少、国内市場の縮小が進みます。企業の
4海外移転などが進むと、さらに経済規模や雇用、税収が減少するため、日本の経済は今後と
も景気が低迷し、デフレや不況から抜け出せない可能性もあります。非正規雇用の拡大など
による不安定な雇用状況はますますきびしさを増し、地域間格差と所得格差はさらに拡大す
ると予測されます。現在でもくらしはきびしい状況にあり、さらに悪化する状況は防いでい
5かなければなりません。【資料 4】
日本の高齢化率 は、既に 23%となっており、諸外国に例のない超高齢社会【資料 5】です。
7
62020 年には高齢化率 29%となり、ますます高齢世代が地域の中で大きな存在になります。
世帯構成も大きく変化【資料 6】しています。かつての「標準世帯」
(夫婦と子ども世帯)は
減少し、すでに最も多い家族構成は、
「単身世帯」となっています。近年、未婚化が進み、生
7涯未婚率は男性 16%・女性 7%(2005 年)に達しています。子育て世帯は減る傾向にあり、
家族のあり方は大きく変容しています。高齢者世代、子育て世代、単身者世帯、外国人など
の多様な人びとで構成される社会となっています。
8 地域社会は、都市においても地方においても、人と人のつながりが希薄化し、孤立する
人びとが増えています。このままでは、買物弱者 の増加や地域の中での孤立がさらに深刻
8
になります。地域社会の希薄化や孤立化がこれ以上進まないように食い止めなければなり
ません。
【資料 7 】
9 年金をはじめとした社会保障制度も、将来不安が払拭できない状況です。また、国と地方
をあわせた長期債務残高 は、869 兆円(2010 年度末)に達する見込みで、社会保障と税・財
9
10
政に関わる問題が、今後の組合員のくらしと将来を大きく左右する課題となります。
くらしを取り巻く環境がきびしさを増していく中で、誰もが安心して、人間らしいくらし
をつづけていくことができる社会づくりに向けて、家族のきずなや地域のつながりを新たに
11
紡ぎ、社会的セーフティネットを構築することが求められています。くらしの困難に生協が
どのように応えていくのかが問われています。
私たちは、地域の行政や諸団体などと協働しながら、事業や活動を通じて、生協の強みを
活かし、くらしに関わる課題に積極的に取り組んでいきます。
7
65 歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合。
8
商店街の衰退や店舗の撤退、交通手段不足などで、日常の買物が不自由な人のこと。
9
国負担分の長期債務である普通国債、借入金、交付国債等に、地方負担分の長期債務を合計したもの。
−5−
【資料4】世帯所得分布の変化
【資料5】日本の年齢別人口の推移
(%)
20
(千人)
2500
18
16
2005年
65歳 75歳
2025年、団塊の世代が後期
高齢者入り
中・上位の割合が低下し
2000
14
2015年、団塊の世代が本格的に
高齢者入り
95年
12
1500
10
8
1000
2010年
2015年
2020年
2025年
2030年
6
4
2000年
500
下位の割合が上昇
2
0
0
100万円 100∼ 200∼ 300∼ 400∼ 500∼ 600∼ 700∼ 800∼ 900∼ 1000万円
未満 200万円 300万円 400万円 500万円 600万円 700万円 800万円 900万円 1000万円 以上
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100 105+
(出典)国立社会保障・人口問題研究所「都道府県別将来推計
人口」より作成 (備考)1. 厚生労働省「国民生活基礎調査」により作成。
(出典)内閣府「平成 21 年度版経済財政白書」
【資料6】世帯類型別構成比率の推移
2005年
29.5
19.6
2010年
31.2
2015年
32.7
2020年
2025年
36.0
2030年
37.4
10%
20%
単独
8.4
12.7
27.9
9.0
11.8
20.1
26.2
9.5
11.4
19.9
24.6
9.9
11.2
23.1
10.2
11.2
21.9
10.3
11.2
20.1
34.4
0%
29.9
19.6
19.2
30%
40%
50%
60%
夫婦と子
夫婦のみ
70%
80%
ひとり親と子
90%
100%
その他
(出典)国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」より作成
【資料7】近所付き合いの程度の推移
あまりつき合って
いない
つき合いはしてるが
あまり親しくない
親しくつき合っている
つき合いは
していない
わからない
(年)
52.8
1975
32.8
11.8
0.8
1.8
49.0
86
42.3
97
よく行き来している
2000
32.4
14.4
35.3
ある程度行き来
している
あまり行き来
していない
40.7
13.9
16.7
ほとんど行き来
していない
あてはまる
人がいない
23.1
18.4
54.6%
2007
10.7
22.3%
30.9
19.4
30.9
41.6%
0
20
38.4%
40
60
80
(出典)内閣府「平成 19 年度版国民生活白書」
−6−
3.8 0.4
5.3
0.4
(1975、86、
(備考) 1. 内閣府「社会意識に関する世論調査」
97 年)により作成および「国民生活選好度調査」
(
2000、2007 年)により特別集計。
2. 1975、88、97 年は「あなたは、地域での付き合
いをどの程度していらっしゃいますか。この中で
はどうでしょうか。
」という問に対し、回答した
無回答
人の割合。
2000、2007 年は「あなたは現在、次にあげる人た
3.9 0.0
ち(
「隣近所の人」
)とどのくらい行き来していま
すか。
(○はそれぞれ 1 つずつ)」という問に対し、
回答した人の割合。
3. 回答者は、1975、86、97 年は全国の 20 歳以上
の者。2000 年は、全国の 20 歳以上 70 歳未満の
7.5
0.6
男女。2007 年は、全国の 20 歳以上 80 歳未満の
男女。
100(%)
2
3 くらしへの役立ちをより一層高めていくことが求められる生協事業
日本の生協が大きく飛躍した 1970 〜 80 年代は、
「標準世帯」を中心とした家族構成や「家族主
4
義
」
「地域のつながり」
「福祉国家 」といった社会的条件が存在し、生協の発展基盤でした。
10
11
しかし、1990 年代以降は、そうした社会的条件は失われてきています。
また、国内市場の縮小と流通の寡占化が進んでいます。流通小売業の厳しい競争環境は、グロー
バル企業としてアジアに進出する全国チェーンや地域でリージョナル展開する食品スーパーとの間でさ
5
らに激化していきます。生協の事業の新たな展望を創り上げなければ、日本の生協全体が存続の危
機に陥ることも自覚しなければなりません。
6
全国の地域生協の組合員数は、これまで一貫して増加しつづけてきました。しかし一方で、長ら
く一人当たりの利用高の減少傾向がつづいており、全国の地域生協の総事業高も 2008 年度を起点
した。こうした状況は、組合員のくらしや食生活における生協利用のウエイトが
1に減少傾向に転じま
7
下がり、生協の事業が組合員のニーズの変化に応えられていないことを意味しています。組合員一人
ひとりのくらしとニーズに深く結びついた事業を創り上げていくことが求められています。組合員のく
らしの中で生協利用を継続・定着させるとともに、くらしにおける生協利用のウエイトを高めて、
2
8
組合員一人当たり利用高の減少から増加へと転じていく必要があります。組合員と生協とのつながり
を基本視点に据えて、生協事業のくらしへの役立ちをより一層高めていきます。
【資料 8】
【資料 9】
3
9
4
10
いまこそ、新たなビジョンを掲げよう
「日本の生協の 2020 年ビジョン」は、日本の生協運動全体を視野に置きつつ、主に地域購
5
11
買生協のありたい姿を共通認識にするためのものです。
変化が激しい時代だからこそ、協同組合の役割発揮が期待され、先を見通したビジョンが
必要です。全国の生協の役職員と、活動の中心を担っている組合員一人ひとりが、10 年後の
6
ありたい姿について主体的に考え、自ら語れるビジョンを掲げて挑戦していかなければ、現
状から脱却して前進へと転換することはできません。
私たちは、10 年後のありたい姿として「日本の生協の 2020 年ビジョン」を掲げ、組合員の
7
くらしの変化に正面から向き合いながら、生協のめざすもの、果たすべき社会的役割を明ら
かにして挑戦していきます。
8
10
家族主義は、介護や子育てなどの世話は、家族に大きく依存する社会慣習で、主に主婦である女性が担っていた。
11
一般に、国家の機能を安全保障や治安維持などに限定するのではなく、社会保障制度の整備を通じて国民の生活の安定をはかる国家。
9
−7−
10
【資料8】40年間(1970∼2009年度)の組合員数と供給高
地域生協の組合員数の推移
2000年代
138%伸長
2,000
1,800
90年代
158%伸長
1,600
150
140
130
1,200
80年代
310%伸長
1,000
120
前年度比
組合員数 万人
1,400
800
110
600
70年代
370%伸長
400
100
200
0
90
70
72
74
76
78
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
2000
2002
2004
2006
2008 年度
前年比
組合員数
地域生協の供給高の推移
30,000
90年代
118%(一進一退)
2000年代
105%(一進一退)
25,000
150
140
80年代
322%伸長
130
15,000
120
10,000
110
70年代
862%伸長
5,000
0
100
90
70
72
74
76
78
80
82
84
86
88
90
供給高
−8−
92
94
前年比
96
98
2000
2002
2004
2006
2008 年度
前年度比
供給高 億円
20,000
【資料9】10年間(2000∼2009年度)の生協の到達点
(1)組合員数は着実に増加(1859万人)、組合員世帯加入率は35%へ
(万人)
(%)
2000
36.0
35.0
1800
34.0
1600
33.0
1400
32.0
31.0
1200
30.0
1000
2001
2002 2003
組合員数
2004
2005 2006
2007
2008 2009
29.0
加入率
(2)総事業高は2008年度から後退、食品小売シェア1は5%台で推移(09年度5.7%)
(億円)
28000
27000
26000
25000
24000
23000
22000
21000
20000
(%)
6
5
4
3
2
1
2001
2002 2003
2004
総事業高
2005
2006
2007 2008
2009
0
食品小売シェア
(3)宅配事業の中心は班配から個配へ、ただし個配も伸び率が鈍化
(億円)
18000
16000
14000
12000
10000
8000
6000
4000
2000
0
2001
2002 2003 2004
個配事業高
2005 2006 2007
2008 2009
班配事業高
※本資料の2009年度の数値は、いずれも推計値。
(4)店舗事業は小型店の閉店進むが、出店が進まずに供給高は減少傾向
(億円)
(店舗数)
11000
900
10500
800
10000
700
9500
600
9000
500
8500
400
8000
2001
2002 2003
2004
2005 2006
供給高
2007 2008
店舗数(1000m2未満)
店舗数(1000m 以上)
2
−9−
2009
300
(5)総合経常剰余率は、2006年度から低下傾向
(%)
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
2001
2002 2003 2004
総合経常剰余率
2005
2006
2007
2008
2009
購買事業経常剰余率
※2009年度の総合経常剰余率は、地域生協の共済事業がコープ共済連へ元受返上し
たため、購買事業剰余率との差が大きく縮小した。
(6)店舗は赤字構造続く、宅配は2000年代後半に収益性が低下傾向
(%)
4.00
3.00
2.00
1.00
0.00
-1.00
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
-2.00
-3.00
店舗経常剰余率
宅配経常剰余率
(7)CO・OP共済事業の加入者数は1.8倍に増加
(百万人)
750
700
650
600
550
500
450
400
350
300
(%)
112
110
108
106
104
102
2001
2002 2003
加入者数
2004 2005
前年比
2006
2007
2008
2009
100
(8)福祉事業の事業高は伸長し、いくつかの生協で黒字化の見通し
(億円)
(事業剰余率)
120
110
100
90
0
2006
2007
2008
2009
0
-5
-10
事業高
事業剰余率
− 10 −
経常剰余率
-15
II
ビジョン
1 ビジョン(10 年後のありたい姿)
2
私たちは、
人と人とがつながり、笑顔があふれ、
3
信頼が広がる新しい社会の実現をめざします
私たちは、協同組合のアイデンティティに関する ICA 声明と生協の 21 世紀理念「自立した市
民の協同の力で 人間らしいくらしの創造と 持続可能な社会の実現を」を生協の事業・活動に
4
貫きます。
私たちは、安心・信頼を育む協同の社会システムとして、協同して助け合い、分かち合う協同
組合の価値を広げます。地域の誰もが参加できる生協をめざして生涯を通じて利用できる事業・
5
サービスを創り上げ、2020 年にはそれぞれの地域で過半数世帯の参加をめざします。【資料 10】
平和で持続可能な社会の実現に向けて、積極的な役割を果たします。失われつつある人と人のつ
ながりを新たに紡ぎ、くらしに笑顔があふれ、一人ひとりが人間としての尊厳と個性を大切に、
6
信頼して助け合う消費者市民社会 の実現をめざします。
私たちは、地域の行政と
7
の連携、協同組合間の提携、
消費者団体や NPO・NGO
などとのさまざまなネット
8
ワークを広げながら、地域
社会づくりに積極的に参加
します。
9
12
【資料10】世帯加入率の状況(2009年度末)
全国平均は36.3%
世帯加入率
都道府県数
50%以上
4
40%以上50%未満
9
30%以上40%未満
19
30%未満
15
(資料)日本生協連第61回通常総会資料集より
(数字は2009年度末)
10
11
12
平成 20 年版国民生活白書 ( 内閣府 ) では、消費者市民社会は、消費者・生活者の行動を通して、公正な市場、社会的価値の創出、心の豊かさ
を実現する社会としている。
− 11 −
1
2
ビジョンを実現するための5つのアクションプラン
ビジョン(10 年後のありたい姿)を掲げるだけでは、その実現に近づくことができません。現状と
3ビジョン(10 年後のありたい姿)を対比し、具体的にどう行動したら実現に近づけるかを考え、
行動していかなければなりません。ビジョン(10 年後のありたい姿)の実現に向けて、行動課題を
5 つのアクションプランとしてとりまとめました。
4
アクションプランは、事業体を通じて共通のニーズと願いを実現する組織と定義した協同組合のアイ
デンティティに関する ICA 声明に基づいて、
「ふだんのくらしへの役立ち」をアクションプラン 1として
中核に据えました。そして、
「ふだんのくらしへの役立ち」から、アクションプラン 2「地域社会づくり
5への参加」、アクションプラン 3「世界と日本社会への貢献」につなげています。
アクションプラン4「元気な組織と健全な経営づくり」とアクションプラン 5「さらなる連帯の推進と活動基
盤の整備」は、アクションプラン1・2・3を実践していく基盤として位置づけました。
6
7
8
アクションプラン3 〈世界と日本社会への貢献〉
アクションプラン2〈地域社会づくりへの参加〉
9
アクションプラン1〈ふだんのくらしへの役立ち〉
10
11
アクションプラン4
アクションプラン5
〈元気な組織と健全な経営づくり〉
〈さらなる連帯の推進と活動基盤の整備〉
− 12 −
アクションプラン 1
ふだんのくらしへの役立ち
組合員の願いを実現するために、食を中心にふだんのくらしへの役立
ちをより一層高めます。事業革新に不断の努力をつづけ、組合員のくら
しに貢献し、信頼を培います。
①それぞれのライフステージに対応した商品事業の革新をはかり、誰もが生涯を
通じて利用しつづけられる事業・サービスを構築します。
②さまざまな事業の効果的な連携をはかり、くらしにおける生協利用のウエイト
を高めます。事業革新の手段として、IT 技術を活用していきます。
③事業への組合員参加とコミュニケーションを着実に前進させます。食品の安全
の課題では、社会をリードする役割を果たします。
④「正直・公開」の姿勢を貫き、組合員から信頼される事業を築きます。消費者
のくらしを起点とした効率的な流通経済のしくみづくりに挑戦します。商品事
業における社会的責任と役割を果たしていきます。
⑤宅配事業では、IT 技術の活用や配送・注文の仕組みの改革など新たな事業革新
に挑戦します。宅配事業においてすべての都道府県で世帯数の 20%以上、全
国で 1,000 万世帯の利用を実現します。
⑥店舗事業では、地域のくらしに密着し、店舗の近隣で大多数の世帯が利用でき
る黒字の店舗事業を確立します。そのために、食品スーパーマーケットとして
のチェーン展開をめざします。
⑦くらしの保障事業では、生命・医療保障分野で、組合員とその家族から一番に
選ばれる共済事業をめざします。保険商品の提供も含め、組合員の保障ニーズ
に総合的に応えます。
⑧福祉事業では、介護保険事業の損益改革を前進させ、居住系サービスを含めた
新たな福祉事業に挑戦します。地域の諸団体と連携し、医療福祉生協、生協関
連の社会福祉法人との関係を強化します。
生涯を通じて利用しつづけられる事業・サービスの構築と商品事業の革新
日本は 2005 年より人口減少社会に入り、2015 年から世帯総数も減少に転じます。これまで
生協利用の中心だった「夫婦と子ども世帯」は減少し、世帯構造も大きく変化しています。社会
に開かれた組織として、地域の誰もが気軽に参加できる生協をつくり、生涯を通じて利用継続
が可能な事業・サービスを構築していくことが求められています。また、県を越えて転居した場
合にも、途切れることなく新しい県で生協を継続利用できる仕組みにも挑戦していきます。
− 13 −
生涯を通じて利用継続が可能な事業・サービスの実現のためには、若い世代や子育て期、高齢
期など、それぞれのライフステージに対応した商品事業(MD )の革新が不可欠です。ライフステー
13
ジに応じて、品質、価格、提供単位、健康などのテーマ開発、食生活・メニュー提案などへの要求
に的確に応えていく必要があります。
また、コープ商品と産直事業の強化を進め、組合員のくらしに貢献し、価値あるブランドとして
確立していきます。フードチェーン全体の品質保証やリスク管理の取り組みを積み重ね、コープ商品
と産直事業の安全・品質の向上をはかります。
くらしに深く結びついた生協事業の確立と IT 技術の活用
生涯を通じて利用しつづけられる事業・サービスの構築とともに、組合員のくらしに深く結びついた生協
事業を確立し、組合員の食を中心としたふだんのくらしにおける生協利用のウエイトを高めます。
毎年、多くの消費者が生協に加入すると同時に、多くの組合員が脱退をしていることは、生協が組
合員加入時の期待に応えられずにいるということを示しています。全国生協組合員意識調査の結果 で
14
も、ほとんどの品目で主な購入先として、生協ではなく他のスーパーマーケットが選ばれており、組合員
の中でさえ、購入先で一番になっていません。特に、加入が少なくなっている若い世代は、生協に対
する価格への不満が強く
【資料 11】
、対応が求められています。組合員一人ひとりのくらしの視点を重視
した生協の各種事業間の効果的な連携により、組合員のくらしの役立ちをより一層高める提案力や
マネジメント、その仕組みを構築し、より多くの組合員が食費・日用品費の半分以上を生協で利用でき
るようにしていきます。
IT 技術の急速な進展がくらしに
大きな影響を与える中で、事業革新
の手段として IT 技術の活用を進め
ます。会員組織である生協は、多く
の組合員の声が集まり、膨大な組合
員の利用データを有していますが、
それらを有効に活用しきれていると
はいえません。IT 技術(CRM や
【資料11】若い世代へのアンケート調査結果より
2011 年 1 月に日本生協連が実施したインターネットによる調査。
有効回答数 500 人(生協加入者 234 人/未加入者 266 人)
。回答者の平均年齢は 33.3 歳。
問 ふだんの食料品の買物で、もっとも利用するのは?
生協のお店
スーパー
マーケット
生協の宅配
生協加入者
12.0%
69.2%
17.5%
0.9%
0.4%
生協未加入者
3.0%
90.6%
0.4%
1.1%
4.9%
生協以外の
食品宅配
その他回答
15
One to one Marketing 、ソーシャ
16
ルメディア )などの活用に取り組み
17
ながら、組合員一人ひとりのくら
しや多様なライフスタイルへの対
問 コープ宅配の優れている点・良くない点(複数回答可。各上位の 4 回答)
良くない点
優れている点
商品の品質(38.8%)
1位
商品の価格(37.2%)
配達の利便性(36.4%)
2位
宅配料金(22.8%)
信頼感(21.0%)
3位
品揃え
(12.2%)
注文の利便性(18.4%)
4位
注文の利便性(11.4%)
応を進めていきます。
13
マーチャンダイジング(merchandising)の略。消費者のニーズに適合する商品を、適正な数量・価格で、適切な時期・場所に供給する活
動や商品化計画。
14
2009 年度全国生協組合員意識調査では、食品を中心とした 15 品目のうち、生協がスーパーマーケットを上回っているのは、「米」と「冷
凍食品」のみ(基礎化粧品は除く)。
15
Customer Relationship Management の略。情報システムを応用して企業が顧客と長期的な関係を築く手法。
16
個々の消費者の嗜好やニーズ、購買履歴などに合わせて、一人一人個別に展開されるマーケティング活動のこと。提供する情報や応対内容
を一人一人変化させることにより、消費者や顧客は、企業と消費者が一対一の関係を築いているように感じる。
17
ブログやツィッター、SNS など誰もが参加できる情報発信技術を用いて、社会的な対話を通じて広がっていくように設計されたメディア。
− 14 −
事業への組合員参加・コミュニケーションと食品の安全
組合員の運営参加は、生協の基本であり、生協の事業の先進性と強さ
の保障です。組合員のニーズを把握し、商品の改善や事業の改革、政策
づくりにいかしていきます。組合員の声に応えた品揃え、コープ商品づ
くりなどに積極的に取り組み、実践を積み重ねながら、組合員の商品活
動を広げ、組合員参加とコミュニケーションを強めていきます。
食品の安全の課題では、引き続き品質保証の取り組みを積み重ね、
科学的知見に基づいた情報提供を強化し、
「双方向で」
、
「何度でも繰
り返し」
、
「正直・公開」を大切にしたリスクコミュニケーションを丁
寧に進めながら、社会的なレベルを引き上げる取り組みを進めます。
2010 年 3 月発行
商品事業と社会的責任・役割発揮
コンプライアンス 経営を徹底し、正直と公開を信条とした日常の事業活動、組合員や社会との
コミュニケーションを通じて、事業活動の総合的な信頼を培います。
消費者のくらしを起点とした効率的な流通経済のしくみづくりに挑戦していきます。取引先や生産
者とともに、合理的な商品調達と供給展開のシステムづくりを進めます。
すべての事業を環境保全の視点で見直し、取り組みを強化します。
19
持続可能な農業や漁業を応援する商品、地域の食文化を守る商品、環境配慮商品、フェアトレード 、
20
寄付金付き商品 などに取り組み、商品購入を通じた組合員の社会参加を広げます。
すべての事業を福祉の視点で見直していきます。誰もが使いやすい注文の仕組みや商品・品揃え、
21
店づくりなどを進めていきます。さらに、ユニバーサルデザイン の取り組みを広げるとともに、高齢
22
者の見守り活動 など既存事業のインフラを活用した取り組みを進めます。
18
宅配事業の革新
宅配事業では、IT 技術の活用や配送・注文の仕組みの改革など新たな事業革新に挑戦し
ます。共働き世帯や高齢者、
若い世代がより多く、
より便利に利用できる配送や注文の仕組み、
カタログの検索性の向上、世帯別対応、食生活提案などに取り組みます。あわせて、班やス
テーション、地域の見守り活動など生協利用を通じたつながりを重視し、組合員にとってさ
らに便利で役立つ宅配事業をめざします。
また、宅配事業の地域の世帯比率(登録
【資料12】宅配登録組合員の総世帯比率の状況
組合員ベース)は全国平均で 17.7%ですが、
10%前後の生協から 30%近い生協まで、全
総世帯比率
都道府県数
25%以上∼
10
国で大きくばらついています。2020 年には、
20%以上∼25%未満
10
先進生協の経験に学ぶことによって、登録
15%以上∼20%未満
16
組 合 員 25 % 以 上、 利 用 組 合 員 20 % 以 上、
∼15%未満
11
日本生協連第61回通常総会資料集より
(数字は2009年度末)
全国 1000 万世帯が利用する宅配事業の確
立をめざします。【資料 12】
18
19
20
21
22
法令遵守と訳されるが、民法や刑法といった法律を守ることにと
どまらず、企業経営にかかわる法令、社内規則、企業倫理といった幅広い領域にわたって、あるべき行動規範を守ることを意味する。
発展途上国の最貧層にある生産者が、社会、経済、環境面において望ましい暮らしをおくれるように充分に配慮した交易を行うこと。透明性、
倫理性、労働条件、雇用機会の平等、人びとへの配慮、環境への配慮、文化的背景の尊重、教育と啓発が取り組みの基本指針として挙げら
れている。
売上の一部が国際協力や社会貢献の募金、NGO などへの寄付となる商品。
文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障がいの有無などにかかわらず、利用することができる施設・製品・情報の設計。
必ず週 1 回配達する宅配事業の仕組みを活用して、離れて暮らす高齢者などの家族の在宅状況をメールで伝えたりする安否確認の取り組み。
− 15 −
店舗の近隣で大多数の世帯が利用できる黒字の店舗事業の確立
地域のくらしに密着し、店舗の近隣で大多数の世帯が利用できる店舗事業を確立していきます。
地域とくらしのニーズを分析・把握して地域の組合員のくらしに適合した店舗をつくり上げていきます。
店舗事業は、地域の誰もが最も利用しやすい業態です。食を中心としたふだんのくらしにより
一層役立ちを高めるためには、店舗事業の確立が不可欠です。また、地域の中で生協のビジビリティ
(視認性・認知度)の向上につながるものです。
店舗事業の収益性を改善していくためには、新たな出店と同時に、赤字店舗の閉鎖・撤退を含め
た経営判断をしていく必要があります。競争力ある店舗の確立に向けて、生鮮・惣菜の強化、品揃
えやオペレーションの標準化、日常的な接客や挨拶など現場力の強化に取り組み、地域に密着した
食品スーパーマーケットとしてのチェーン展開 をめざします。
23
一番に選ばれる共済事業とくらしの保障事業の展開
万一に備えるくらしの保障への支出は、収入が増えない中でできるだけ低く抑えたいという組合員
の願いがより強くなります。
共済事業は、組合員どうしの助け合いのしくみであることを広く伝え、助け合いの輪を広げ、少な
い支出で必要な保障が準備できるようにすることで、生命・医療保障分野で、組合員とその家族か
ら一番に選ばれる存在になります。共済事業だけではまかなえない分野については、保険商品の提
供を含め、生協全体としてくらしの保障ニーズに総合的に応えていきます。また、組合員が生協、
CO・OP 共済をずっと利用しつづけられる仕組みの構築に取り組むなど、新たなチャレンジにより組
合員の満足を高めていきます。ライフプランニング活動 を充実させることや、CO・OP 共済らしい積
24
立金の運用などを通じて、生協の社会的価値を高める一翼を担います。
福祉事業の確立と新たな挑戦
超高齢社会に入り、地域のつながりが希薄化する中で、事業と活動をもつ生協への期待が高まっ
ています。
福祉事業は、介護保険事業の安定的な黒字化とサービスの質の向上を焦点に、事業確立をはか
ります。医療福祉生協、生協関連の社会福祉法人との関係を強化するとともに、より幅広く地域の
諸団体とのネットワークを広げます。生協間での事業の共同化の推進、居住系サービス(泊まる・住
まう)への新たな挑戦を進めていきます。また、生活支援を進める事業や障がい者福祉についても
取り組みを進めます。
23
多数の店舗を直接に経営・管理する小売業の組織形態。チェーンストアとしての店舗数は、11 店舗以上と言われる。
24
生協ライフプラン・アドバイザーが中心となり、組合員のくらしに役立つ保障の選択ができる力をつけ、くらしのお金全般について学ぶ機
会を提供していく活動のこと。
− 16 −
アクションプラン 2
地域社会づくりへの参加
地域のネットワークを広げながら、地域社会づくりに参加します。
①生協の事業・活動のインフラを活用しながら、地域社会の変化から生まれる新
たなニーズに応えた取り組みを展開します。
②地域社会の中で、行政やさまざまな団体と協働しながら、高齢者世代、子育て
世代、障がい者世帯、外国人など、地域のニーズに応えた相談活動や支援の取
り組みを広げ、安心してくらせる地域社会づくりに参加します。
③社会的課題の学習機会や消費者力の向上の取り組みなどを広げます。自立した消費
者市民として、くらしに関わる主体的な力を高める取り組みを地域で進めます。
生協の事業・活動のインフラを活用した地域社会づくりへの参加
地域社会は、少子高齢化とともに、
格差や貧困の広がり、外国人居住者
の増加など、より多様な人びとが構成
する社会へと大きく変化しています。
人と人のつながりの希薄化が進む中
で、単身者の増加など世帯人数の減
少も伴い、孤立する人びとも増えてい
ます。誰もが安心して、人間らしいくら
9.5
8.40
7.0
7.80
5.0
5.0 5.20
図書館や集会施設などの
公共施設が不足
26
7.50
5.4
散歩に適した公園や
道路がない
0.0
の移動販売車 、貸付事業、葬祭事
業、リフォーム事業、高齢者の資産
9.20
8.2
近隣道路が整備されて
いない
活用しながら、夕食宅配、買物支援
12.0
10.00
11.6
10.0
交通機関が高齢者には
使いにくい、または
整備されていない
25
15.0
交通事故にあいそうで
心配
生協の事業・活動のインフラ を
H13
H17
16.60
医院や病院への通院に
不便
会づくりが求められています。
(%)
20.0
日常の買い物に不便
しをつづけていくことができる地域社
【資料13】全国の高齢者が生活環境において不便に感じる点
【出所】内閣府「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果」平成17年度
管理支援 、地域の見守り活動、地
27
25
インフラストラクチャーの略。基幹施設・基盤のこと。
26
トラックの荷台部分を冷蔵・冷凍ケースを設置するなど店舗用に改造した移動店舗。過疎地域などに住む高齢者や自動車を持たない人の支援
策として取り組まれている。
27
高齢者が認知症などにより十分に資産管理できなくなった場合、日常的金銭管理のサービス(年金などの手続き、税金、医療費の支払い、日
常に必要な預金の払い戻しや預け入れなど、本人に代わって行うサービス)や、書類等の預かりサービス(年金証書や通帳、不動産の権利
証や契約書類、実印や銀行印など金融機関の貸金庫などに保管してくれるサービス)が考えられる。
− 17 −
域の集いの場、行政サービスの受託、フードバンク支援 、地域の NPO 支援など、それぞれ
28
の地域のニーズに応えた取り組みを展開します。地域の外国人の仲間づくりや生協利用を補助す
る外国語ツールの作成など に取り組みます。地域の生産者などと連携して、地産地消や地場
29
産業を応援するなど地域経済への貢献に取り組んでいきます。【資料 13】
地域福祉の視点から、組合員自身が自発的に地域の諸問題に取り組む「くらしのたすけあい活動」
や「ふくし de まちづくり」などの活動を大切にして、進めていきます。若い世代のニーズに応え、子
育て支援活動を広げながら、地域ぐるみで子どもを育てる環境をつくり上げていきます。学童期の子
どもを対象とした取り組みや親子で参加できる取り組みを広げます。思春期の子どもとその親を対象
にした取り組みも進めます。
安心してくらせる地域のネットワークづくり
生協は、地域の誰もが安心してくらせる地域社会をめざ
して、地域の行政やさまざまな団体と協働しながら、地域
のネットワークづくりを主体的に進めます。地域の行政、
生協・協同組合、地縁組織 、消費者団体、労働者団体、
30
NPO・NGO、社会福祉協議会、事業者などがネットワー
クの中でそれぞれの役割・特徴を発揮することで、個々の
組織だけでは生み出せない成果が生まれます。各組織間
同士の相互理解を深めながら、関係性を強め、地域のセー
フティネットを構築していきます。
2010 年 9 月発行
ネットワークづくりを通して、生協や協同組合の理解と共感を地域に広げ、より身近な存在に
なります。行政や地域の諸団体と協力しあえる場や仕組みをつくりながら、地域に見える形で
日常的な相談窓口機能を設置し、日常のさまざまな生活課題に地域のネットワークと連携しな
がら対応していきます。
地域やくらしに関わる主体的な力を高める取り組み
私たち一人ひとりが消費者力など、自立した消費者市民としての主体的な力を備えて
いかなければ、社会的課題の解決や地域社会の再生は実現しません。地球環境問題や食
料・農業問題など社会的課題についての学習機会や消費者力の向上、食育の取り組みを
広げ、地域の声や地域課題に向き合いながら、くらしに関わる主体的な力を高める取り
組みを地域で進めます。生協への参加や活動を通して、組合員のくらしや地域における
主体的な能力の向上やスキルアップをはかり、社会参加や組合員自身の生きがいづくり
にもつなげていきます。子どもたちや若い世代との関わりも深めていきます。地域の行
政や諸団体などと協働しながら、消費者市民が主体となって行動する消費者市民社会へ
の展望を切り拓きます。
28
包装の傷みなどで、品質に問題がないにもかかわらず市場で流通できなくなった食品を、企業から寄付を受け、生活困窮者などに配給する
活動およびその活動を行う団体。
29
2008 年度日本生協連国際活動委員会報告書「くらしと地域のグローバル化への対応」には、地域で外国人が増える中で、生協で取り組み
たいことや先進事例が示されている。
30
町内会や自治会、老人会、子ども会など地縁による組織。
− 18 −
アクションプラン 3
世界と日本社会への貢献
平和で持続可能な社会と安心してくらせる日本社会の実現をめざし、
積極的な役割を果たします。
①協同組合の価値への社会的な理解と共感を広げます。国際的な協同組合運動で
は、発展途上国を中心に貢献します。
②平和な社会の実現に向けて、核兵器の廃絶や戦争体験を次世代に伝える活動な
どの取り組みを広げます。
③国際協力の活動では、ユニセフを中心としながら、国連のミレニアム開発目標
の実現に貢献します。
④ 2020 年に事業における温室効果ガス排出総量の 30%削減 (2005 年比 ) など、
低炭素・自然共生・循環型の社会実現に向けて、環境保全に取り組みます。
⑤世界的な食料事情を見据え、日本の食料の自給力を高めていくために、食料・
農業問題に取り組みます。
⑥安心してくらせる日本社会をめざして、国への政策提言を積極的に進め、実現
に向けた取り組みを進めます。
国際協同組合年と国際的な協同組合運動の展開
協同組合の価値とその活動を内外にアピールし、理解と共感を社会や地域に広げていくこ
とが必要です。2012 年の国際協同組合年に向けた取り組みを進め、その後の協同組合の発展
につなげていきます。
今後 10 年間は、中国、インド、ブラジル、ロシアの BRICs 諸国の経済成長に注目が集まり
ます。その後、ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチンの VISTA と呼
ばれる 5 ヶ国の急速な発展が予想されています。今後発展する途上国の生協・協同組合との関
係を強化します。
海外の生協・協同組合と学びあいながら、国際的な協同組合運動に貢献していきます。
核兵器廃絶と平和な社会の実現をめざして
核兵器の廃絶に向けて、2010 年の NPT 再検討会議 では、核軍縮、核不拡散、原子力の
平和的利用について、具体的な行動計画を含む最終文書が採択されました。しかし、核軍縮
の期限設定・工程にまで至っておらず、核兵器の廃絶に向けて、引き続き平和の取り組みを
広げていく必要があります。また、被爆者や戦争体験者の高齢化により、どのように被爆や
戦争の体験を私たちが受け継ぎ、次世代に伝えていくかは差し迫った課題です。日本国憲法
の基本原則(国民主権、平和主義、基本的人権の尊重など)を大切にしながら、地域で学ぶ
場づくりを広げます。
31
31
NPT( 核兵器不拡散条約 ) は、1970 年に発効した条約で、米 ・ 露 ・ 英 ・ 仏 ・ 中国の5ヶ国を「核兵器国」と定め「核兵器国」以外への核兵
器の拡散を防止すること、そして各締約国による誠実に核軍縮交渉を行う義務を定めている。
− 19 −
飢餓や貧困などのない世界をめざす国際協力
世界の子どもたちのために、ユニセフを中心とした国際協力活動を進めます。あわせて、極
度の貧困と飢餓の撲滅、平和と安全、開発、環境、人権などの課題を掲げた国連のミレニアム
32
33
開発目標 の実現に、国際機関 や NGO などと連携しながら、貢献します。引き続き、地震
や異常気象による大規模災害支援の取り組みを行ないます。
低炭素・自然共生・循環型の社会実現に向けて
低炭素社会、自然共生社会 、循環型社会に基づく
持続可能な社会の実現に向けて、①生協事業における
温室効果ガス排出総量削減、②商品事業における環境
配慮、③事業からの廃棄物の削減・ゼロ化、④組合員
活動としての環 境保 全の取り組みの 4 つのテーマを、
2020 年に向けた政策と課題として取り組みます。生協事
業における温室効果ガス排出総量削減では、2020 年ま
でに 30%削減目標(2005 年比)をめざします。
34
2010 年 5 月発行
食料・農業問題への積極的な関わり
世界の飢餓状況や世界的な食料問題の動向、日本の農
業の現実を見据えながら、日本の食料自給力向上の取り組
みを進めていきます。消費と生産のきずなを大切にしなが
ら、消費者の視点から生産のあり方を考え、また消費のあ
り方も見直しながら、食料・農業問題に積極的に取り組み
ます。産直事業の展開をはじめとした事業活動を強化しま
35
す。フードチェーン 全体を通じて、安全性を確保し、社会
(環境含む)コストを低減させ、マーチャンダイジング機能
を活用し、食卓と農業をつなぐ役割を果たします。
2010 年 5 月発行
安心してくらせる日本社会をめざして
安心してくらせる日本社会、消費者の権利が守られる公正で健全な消費者市民社会を創り上げて
いくために、生協は、消費者市民の立場から、食品の安全、消費者政策、食料・農業政策、社会
保障制度、福祉や環境の分野などにおいて、積極的に行政への働きかけや政策提言を行ない、政
策形成に主体的に参画し、実現に向けた取り組みを進めます。
32
開発途上国の貧困問題の解決のために、国連や各国政府などの諸機関が共通の目標として 2000 年にとりまとめたもの。2015 年を期限と
して「世界の貧困を半減すること」など 8 つの目標を掲げている。
33
国連世界食糧計画(WFP)や国連食糧農業機関(FAO)、国連環境計画(UNEP)などがある。
34
多くの種の絶滅や生態系崩壊による生物多様性の危機が起きており、生物多様性の損失は、人類の将来に大きな影響を与える。私たちの身
近な森林や河川、生物などの自然環境は私たちのくらしに不可欠であり、自然と調和し共生できる社会やくらし方が必要。
35
食料の一次生産から最終消費までの流れ。食品やその材料の生産から加工・流通・販売までの一連の段階および活動。
− 20 −
アクションプラン 4
元気な組織と健全な経営づくり
組合員が元気に参加し、職員が元気に働き、学びあい成長する組織と、
健全な経営を確立します。
①多様な組合員の関心や必要性に応える組合員活動と誰もが参加したくなる仕組
みをつくり、組合員活動への参加を広げます。活動や組織の中心的な担い手の
育成を進めます。
②地域社会で役割発揮ができる組合員組織づくりを進めます。
③生協で働く誰もが協同組合の価値を学び、雇用形態にかかわらず、組合員の願
いやニーズに共感し、期待に応えられる組織風土づくりを推進します。
④男女共同参画とワーク・ライフ・バランスの取り組みを進め、女性も男性も元
気に働きながら、目標を持って能力発揮ができる職場をめざします。
⑤生協全体で 2020 年代の担い手育成をはかります。
⑥経常剰余率 2%以上を安定的に確保し、ゆるぎない財務体質とともに、健全な
事業経営を確立します。
⑦社会に開かれた組織として信頼に応えるべく、より公正で民主的なガバナンス
を構築し、コンプライアンス経営を実現しつづけます。
組合員の誰もが参加しやすい元気な組合員組織
組合員自らの関心やニーズに基づき、誰もが元気にいきいきと参加できる組合員活動と参加した
くなる仕組みが必要です。平日夜間・土日も参加できる工夫や IT 技術を活用した参加とネットワー
クの仕組みづくりを進め、趣味・スポーツ・文化などの活動支援や連携にも取り組みます。働く現
役世代や高齢世代が知識や経験を地域社会で活用できるような活動や企画などに取り組みます。
より多くの若い世代や地域の多様な人びと、単身者が参加しやすい運営や仕組みづくりを進め、
活動に参加する組合員同士がつながりを育みあえる組合員組織を創ります。
主体的な組合員活動を進めながら、学びあい、活動や組織の中心的な担い手づくりを進めます。
地域社会で役割発揮ができる組合員組織
安心してくらせる地域社会をめざして、地域社会で役割発揮ができる組合員組織づくりを進めます。
人と人のつながりである生協の組合員組織が元気であることは、希薄化した地域社会に、連
帯や共生の価値を広げる上での基盤の 1 つです。あらためて協同組合の価値を学び直しながら、
地域に開かれた組織として、地域の諸団体とのネットワークを形成し、組合員組織を生かした地
域のつながりづくり、生協外でも活躍する組合員との連携などを進めます。N PO などを通して、
より専門的な活動に取り組みたい組合員や活動グループへの支援と連携にも取り組みます。
生協で働く誰もが元気に働ける職場づくり
生協の雇用形態、労務構成の多様化が進み、正規職員・パート職員・委託会社社員など
が同じ職場で働くようになりました。組合員の期待に応え、満足度を高めるのは、現場の正規
職員やパート職員、委託会社社員の力です。現場が働きがいを持って元気に仕事ができるマネジ
36
− 21 −
メント改革と現場リーダーの育成を進めます。生協で働く一人ひとりが協同組合の価値を学び、
実践し、誇りを持って力を発揮できる仕組みづくりを進めます。
雇用情勢の変化に合わせながら、正規職員・パート職員・委託会社社員などを適切に組み合
わせて業務の効率化を進めます。
多様な人びとが働きつづけられる組織風土
男女共同参画により女性職員の活躍の場を増やすことは、多様化する組合員の潜在的なニーズ
を探る力を強化し、
くらしに求められる商品やサービスの提供、
事業への貢献につながります。ワー
ク・ライフ・バランスの推進により、男性中心の働き方を変え、女性も男性も元気に働きつづけら
37
れる組織風土づくりが必要です。ポジティブアクション
(積極的改善措置)を策定し、
目標 を持っ
て男女共同参画の取り組みを推進します。さらに、人種や性別、ハンディキャップの有無など多様
な人びとが一緒に働くことを職員同士が認め合い、助け合える職場風土をめざします。
2020 年代の担い手育成
2020 年代に向けて、組合員の信頼を得て、期待に応えられる専門的な技術や能力を持った
38
職員集団を育成していきます。また、職員集団をリードし、ガバナンス やマネジメントを担う幹
部役職員の育成をはかり、人材確保と人事交流を進めます。
経常剰余率 2%以上の健全な事業経営
経済環境が大きく変化する中で、健全な収益構造の事業経営を確立することが差し迫った課題
であり、生協の未来への展望を拓き、存続していく大前提です。安定的に 2%の経常剰余率を確
保できる健全な経営を確立します。
低収益・高コスト構造を脱却して、出店や事業革新の投資など新たな成長の基盤をつくります。
自己資本の増強につとめ、強い経営基盤を確立していきます。
継続的な投資を可能とする財務体質を確立していきます。生協グループとして資金を有効活用す
るために、大規模なインフラ整備などの共同事業の推進には、単位生協・事業連合・日本生協連
が連携して、資金調達・投資・回収の計画を立てることが必要です。
民主的ガバナンスとコンプライアンス経営
2008 年の改正生協法の主旨を踏まえ、生協における効率的かつ健全な経営をめざすと
同時に、組合員の総意を反映できる、より公正で民主的なガバナンスを実現します。社会
39
的責任 もますます求められるようになります。社会に開かれた組織としてステークホル
40
ダー に対する説明責任を果たし、地域社会、組合員からの信頼を培います。
理事会機能、監事(会)機能の強化など、機関運営を通じた生協の意思決定の透明性を確保
41
するとともに、内部統制 の取り組みを進め、ガバナンスの基盤としての生協のマネジメント
力を強化します。危機管理体制を構築しながら、コンプライアンス経営を実現しつづけます。
36
生協の職場では、正規職員・パート職員・委託会社社員のほか、派遣職員や個人業務請負の方など多様な担い手で構成されている。
37
国は、2003 年に「社会のあらゆる分野において、2020 年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも 30%程度になるよう期待する」
という目標を掲げ、第3次男女共同参画基本計画(2010 年 12 月)の数値目標としている。
38
組織が自らを健全に統治すること。組織や社会に関与するメンバーが主体的に関与を行なう、意思決定、合意形成のシステム。
39
組織活動が社会及び環境に及ぼす影響に対して組織が担う責任のこと。2010 年 11 月に、社会的責任に関する国際規格 ISO26000 が発効さ
れた。中核主題として、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティへの参加及びコミュニティの発展が示されている。
但し、認証規格ではなく、社会的責任に関する手引としてまとめられた。
40
組織の意思決定や活動の実施に影響を受ける個人や組織・団体。
41
組織内に「業務を適切に進めるための決まりごとを設け、組織の中の人びとがそれに基づいて業務を行っていくプロセス」
。
− 22 −
アクションプラン 5
さらなる連帯の推進と活動基盤の整備
全国の生協が力を合わせ、組合員のくらしに最も役立つ生協に発展さ
せます。
①リージョナル事業連帯では、さらなる連帯の強化、機能統合を進めます。
②地域に密着した民主的な運営を一層充実させながら、県域を越えた生協づくり
にも挑戦します。
③生協や協同組合を取り巻く法制度が、生協の組織や事業活動にふさわしく、
より社会的な責任を果たし役割発揮できる法制度となるよう、働きかけます。
④全国で広報活動を連携し、生協のビジビリティ(視認性・認知度)を向上させます。
さまざまな事業や活動を通じて、総合的な生協ブランド形成に挑戦します。
⑤全国の生協の力を合わせ、組合員のくらしに最も役立つ共同事業を推進します。
⑥日本生協連は、事業種類毎の生協の全国連合会とともに、中央会機能の強化を
はかります。
リージョナル事業連帯の強化と県域を越えた生協づくり
リージョナル事業連合では、組合員のくらしに貢献する手段として、さらなる機能統合を進めて、
連帯の強化をはかります。また、地域に密着した民主的な運営を一層充実させながら、県域を
越えた生協づくりにも挑戦します。
生協の組織や事業活動にふさわしい法制度の環境づくり
生協法や会計制度などにおいて、社会的信頼の観点からも必要なルールを取り入れながらも、
生協の組織や事業活動にふさわしい法制度の実現をめざし、取り組みの支障となる規制や制約
を廃し、制度的な環境づくりを進めます。
ビジビリティの向上と総合的な生協ブランド形成への挑戦
日本社会の中で、生協への理解と共感を広げていくためには、全国で広報活動を連携し、社会
とより広いコミュニケーションの強化をはかりながら、生協のビジビリティ(視認性・認知度)を向
上させます。広報活動の連携とともに、さまざまな事業や活動を通じて、総合的な生協ブランド形
成にも挑戦します。特に、若い世代にアピールできる取り組みやイメージづくりを進めます。
− 23 −
組合員のくらしに最も役立つ共同事業の推進
全国の生協の力を合わせ、
組合員のくらしに最も役立つ商品事業を確立します。そのために、
単位生協・リージョナル事業連合・日本生協連で合理的な事業設計のもとで連携・協力関係
を築きます。
また、事業連帯の枠組みを発展させ、物流や IT 開発、調査研究、財務課題など、共同事業
を推進し、組合員のくらしと生協組織を発展させます。【資料 14】
【資料14】CO・OP共同開発商品の供給額推移
供給額
(百万円)
250,000
200,000
エリア共同開発
全国共同開発
130,615 122,470
150,000
128,876
117,374
101,747
100,000
79,275
65,174
50,868
50,000
35,252
22,871
0
8,730
2001
24,534
02
36,665 43,198
03
04
49,835
05
60,059
06
74,716
07
86,503 89,737
08
09
90,850
10(年度)
(資料)日本生協連第61回通常総会資料集より
中央会機能の強化
日本生協連は、行政や政治などとの渉外機能、生協法改正などの政策・制度対応機能、社
会的な情報発信などの広報機能を中心に、事業種類毎の生協の全国連合会とともに、中央会
42
43
機能 の強化をはかっていきます。日本協同組合連絡協議会 (JJC) を通じて協同組合間連携
を強化し、消費者団体、労働者団体、事業者団体などとの連携を広げます。また、日本生協
連が併せ持つ中央会機能、購買生協連(運営・組織)機能、商品事業連機能の運営の透明化
とガバナンスの整理を進めながら、危機管理体制の充実や人材育成の支援などを含めてそれ
ぞれの機能を強化します。
また、都道府県生協連には、地域生協・大学生協・学校生協・職域生協・医療福祉生協・
共済生協など各種の生協間の協同・連携、渉外活動や政策提言などを通じた地方自治体との
関係強化など、多面的な役割が期待されます。
42
日本生協連・組織構造等検討小委員会(2007 年)では、条件が整えば、中央会としての専門性を高める上からも新たに中央会組織を全国
の生協の合意で作り上げていくことが望ましいと答申されたが、2010 年度第 4 回理事会にて、当面 2015 年ごろまでは現状の組織構造で
進めることを確認し、中長期的な中央会のあり方は論議を継続することとした。
43
JJC は、Japan Joint Committee of Co-operatives の略。日本の ICA 加盟組織が、各種協同組合運動の連携と、海外協同組合運動との連携
強化を図ることを目的に、1956 年に設立された。現在、JA 全中、JA 全農、JA 共済連、農林中金、家の光協会、日本農業新聞、日本生協
連、全漁連、全森連、全労済、日本労協連、大学生協連および労金協会の 13 団体が加盟。
− 24 −
【資料16】2020年ビジョンのできるまで
2009 年 6 月 「2020 年ビジョン策定検討委員会」
日本生協連第 59 回通常総会で、全国
生協の長期ビジョンを検討していくこ
とを決定。理事会の下に専門委員会と
して設置されました。
2009 年 11 月
『危機に立ち向かう
ヨーロッパの生協に学ぶ』
(2010 年・コープ出版)
欧州生協調査
ビジョン策定検討委員メンバーを中心
に、イギリス、イタリア、スウェーデ
ンの生協を訪問しました。調査レポー
トは『危機に立ち向かうヨーロッパの生
協に学ぶ』
にまとめられています。
『協同組合の
アイデンティティに関する
ICA 声明を考える』
(2010 年・コープ出版)
2010 年 6 月 『生協の 2020 年ビジョン・20 の論点
∼論点整理・資料集∼』
全国論議の素材として、ビジョン策定
検討委員会で論点をまとめました。
2020 年ビジョンホームページ
専用のインターネットサイトを開設し、
意見募集も行いました。
生協の 2020 年ビジョン・
20 の論点
∼論点整理・資料集∼
2010 年 6∼7 月 『2020 年ビジョン公開学習会』
全国論議のキックオフとして、6 人の
外部有識者に講演いただきました。
(全国 3 会場で 423 人が参加)
2010 年 8∼10 月 『2020 年ビジョン策定に向けた組合員
ワークショップ』
組合員の生活実感・活動実感からの意
ビジョンホームページ
見を出し合うことを目的に開催しまし
た。ワークショップの気楽な雰囲気の
中で、くらしの変化について感じてい
ること、生協の強み・弱み、社会から
求められる役割などについて率直な意
見を出し合い、整理を行いました。
(全国 6 会場で 196 人の参加)
公開学習会・会場写真
− 25 −
『2020 年 ビ ジ ョ ン 策 定 に 向 け た 職 員
ワークショップ』
第一線で活躍する生協職員の実感を出
し合うことを目的に開催しました。生
協の内部状況(強み・弱み)と外部環境
(機会・脅威)についてグループで論議
した上で、10 年後に向けたアイデアを
出し合いました。
組合員ワークショップ・会場写真
(全国 6 会場で 152 人の参加)
2010 年 11 月
『生協の 2020 年ビジョン・第一次案』
ビジョン策定検討委員会で、ここまで
の全国論議を中間的にまとめました。
各地の生協でワークショップや学習会を
職員ワークショップ・会場写真
開催
全国各地の生協でワークショップや学
習会の独自に開催されました。
(少なくとも 25 の会員生協で実施)
2011 年 1 月
『若い世代へのアンケート・ヒアリング
調査』
組合員に限らず 20∼30 才代の意見を
生協の 2020 年ビジョン・
第一次案
幅広く集めるために、インターネット
を利用したアンケートを実施しました。
(有効回答 500 人)
また、20∼30 才代のさいたまコープの
ブロック委員 13 人を対象にグループイ
ンタビューを実施しました。
2011 年 1 月
『全国政策討論集会』
(全体で 443 人の参加)
生協の 2020 年ビジョン・
第二次案
2011 年 2 月
『生協の 2020 年ビジョン・第二次案』
2011 年 2 月
『生協の 2020 年ビジョン・地連別討論会』
全国 6 会場で 89 生協 417 名の参加。第二次案について 20 生協の論議
報告・意見表明と 82 名の会場発言がありました。
2011 年 5 月
日本生協連理事会で総会議案として確認
2011 年 6 月
日本生協連第 61 回通常総会で確定
− 26 −
日本の生協の2020年ビジョン
CONTENTS
I
日本の生協の2020年ビジョン
II
いま、なぜビジョンなのか
1 新たな時代の要請に応え、協同組合の役割を発揮すべきとき
1
2 組合員のくらしが、かつてなくきびしさを増す時代
5
3 くらしへの役立ちをより一層高めていくことが求められる生協事業
7
4 いまこそ、新たなビジョンを掲げよう
7
ビジョン
1 ビジョン(10年後のありたい姿)
11
2 ビジョンを実現するための5つのアクションプラン
12
アクションプラン1
ふだんのくらしへの役立ち
13
アクションプラン2
地域社会づくりへの参加
17
アクションプラン3
世界と日本社会への貢献
19
アクションプラン4
元気な組織と健全な経営づくり
21
アクションプラン5
さらなる連帯の推進と活動基盤の整備
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