Comments
Description
Transcript
港湾工事における石炭灰混合材料の 有効利用ガイドライン 平成 23 年 3 月
港湾工事における石炭灰混合材料の 有効利用ガイドライン 平成 23 年 3 月 財団法人 石炭エネルギーセンター 財団法人石炭エネルギーセンター 石炭灰有効利用ガイドライン委員会 委員構成 委員長 河野 広隆 (京都大学 大学院工学研究科 教授) 委員 石川 淳 (電源開発株式会社 火力発電部 石炭灰利用推進グループ グループリーダ) 勝見 武 (京都大学 大学院 地球環境学堂 教授) 菊池 嘉昭 (独立行政法人 港湾空港技術研究所 地盤・構造部 部長) 貴田 晶子 (一般社団法人 廃棄物資源循環学会 副会長) 佐藤 研一 (福岡大学 工学部 社会デザイン工学科 教授) 下垣 久 (財団法人 電力中央研究所 環境科学研究所 環境ソリューションセンター 水谷 聡 (大阪市立大学 大学院 工学研究科 准教授) 山本 修司 (財団法人 沿岸技術研究センター 理事) 横田 季彦 (日本国土開発株式会社 技術センター 所長) 所長) ※順序は50音順 ※所属・役職は平成 23 年 3 月現在 財団法人 石炭エネルギーセンター 石炭灰有効利用ガイドライン WG 委員会 委員構成 委員長 佐藤 研一 (福岡大学 工学部 社会デザイン工学科 教授) 委員(幹事) 横田 季彦 (日本国土開発株式会社 技術センター 所長) 委員 大仲 昭 (宇部興産株式会社 エネルギー・環境事業部 技術開発室 石炭開発部 主席 寺前 剛 (出光興産株式会社 販売部 石炭事業室 石炭・環境研究所 チームリーダ) 山中 譲 (株式会社 ジェイペック 環境・資源リサイクル事業部資源グループ 部員) グループリーダ) 成田 健 (東北電力株式会社 研究開発センター 電源・環境グループ 主幹研究員) 伊野場誠治 (財団法人 電力中央研究所 環境科学研究所 環境ソリューションセンター 主任研究員) 肴倉 宏史 (独立行政法人 国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター 物質管理研究室 研究員) 山田 水谷 理 (独立行政法人 産業技術研究所 エネルギー技術部門 主任研究員) 崇亮 (独立行政法人 港湾空港技術研究所 地盤・構造部 地盤研究領域 基礎工研究チーム リーダー) 川口 正人 (清水建設株式会社 技術研究所 生産技術センター 主任研究員) 石井 光裕 (株式会社 四国総合研究所 土木技術部 部長) 陣内 久雄 (九州電力株式会社 土木部 技術戦略グループ 課長) 西川 力 吉田 貴昭 (中部電力株式会社 発電本部 土木建築部 技術・企画グループ グループ長) (太洋基礎工業株式会社 東京支店 営業部 技術顧問) ※所属・役職は平成 23 年 3 月現在 旧委員等 森 憲広 (旧委員;東北電力㈱) 前畠 龍三 (旧委員;九州電力㈱) 堀内 澄夫 (旧オブザーバー;清水建設㈱) 田野崎隆男 (旧オブザーバー;太平洋セメント㈱) ※所属は当時 目 第1章 次 総則 1.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.2 石炭灰有効利用の現状および課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1.3 石炭灰および石炭灰混合材料のメリット・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 1.4 ガイドラインの内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 1.5 適用範囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 1.6 港湾工事における石炭灰混合材料の利用イメージ・・・・・・・・・・・・・・ 8 1.7 用語の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 1.8 関連法律 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 第2章 2.1 港湾工事での適用方法 埋立・裏埋め・道路・盛土材料への適用・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 2.1.1 石炭灰混合材料(破砕材・造粒材) ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 2.1.2 石炭灰混合材料(スラリー材・塑性材) ・・・・・・・・・・・・・・・ 19 2.2 補強・機能向上への適用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 2.3 道路・盛土・築堤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 2.3.1 石炭灰混合塑性系材料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.4 第3章 27 その他の適用方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 石炭灰混合材料の製造方法 3.1 石炭灰混合材料の基本的物性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 3.2 石炭灰混合材料(破砕材・造粒材) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 3.2.1 固化体破砕材・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 3.2.2 固化体造粒材・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 3.3 石炭灰混合材料(スラリー材・塑性材) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 3.3.1 スラリー材・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 3.3.2 塑性材・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 第4章 環境安全配慮品質及び検査方法 4.1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 4.2 用語及び定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 4.3 基本的な考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 4.4 環境安全配慮品質基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 4.5 検査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 4.5.1 環境安全配慮形式検査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 4.5.2 環境安全配慮受渡検査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52 4.6 検査の運用方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 4.6.1 検査の実施者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 4.6.2 検査の頻度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 4.6.3 検査結果の判断基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 4.6.4 再検査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 4.6.5 ロットの管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 4.6.6 検査の記録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 4.6.7 検査記録の報告及び保管・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 4.6.8 その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 参考資料 1.石炭灰・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 1.1 原炭について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 1.2 石炭灰の種類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 1.3 わが国の石炭灰の溶出特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 1.4 バイオアッセイ法(マイクロトックス)による評価事例・・・・・・・・・・ 70 1.5 石炭灰の有効利用状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72 2.審査証明取得技術一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76 3.関連法律の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84 「港湾工事における石炭灰混合材料の有効利用ガイドライン」の発刊にあたって 本年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖大地震は東北地方の太平洋沿岸に大きな被害 をもたらすと共に、わが国がこれまで経験したことのない原子力発電所事故を誘発しまし た。これにより、今後、わが国のエネルギー政策は大きな影響を受けることが予想されま す。即ち、原子力発電の比率を低くし、より安全性が高く、環境負荷が少ない太陽光発電、 風力発電およびバイオ発電等の再生可能エネルギーへの転換が求められることになると思 われます。しかしながら、これらの再生可能エネルギーを大々的に導入するためには技術 やコスト等の課題があり、当面は化石燃料による発電比率を高めることで対応せざるを得 ないのが実情です。とりわけ石炭火力発電は発電コストも安いことから、石炭火力発電の 比率を高めることが短期的な対応策として期待されます。 本ガイドラインは石炭火力発電を行った際に副生される石炭灰の有効活用促進を目的と したものです。わが国における石炭灰の発生量は既に年間 1,000 万tを超えています。そ の約 70%はセメント原料として利用されており、土木分野での利用は僅か 15%に満たない のが現状です。石炭灰にセメント、水、用途に応じて土砂、更に添加材料等を必要に応じ て混合した石炭灰混合材料の開発に関しては、電力会社、大学および建設会社等が進めて おり、既に多くの施工実績も報告されておりますが、公共工事等で定常的に活用するまで には至っていません。 そこで、本ガイドラインでは石炭灰混合材料の材料的優位性が活用できる港湾工事への 適用に関する事項を取り纏めました。内容的には港湾工事で石炭灰混合材料を用いるメリ ット、実際の適用方法、製造方法および安全性評価方法について、多くの写真・図表を織 り交ぜて分かりやすく解説しています。 前述の東北地方太平洋沖大地震による被災地では、港湾部が大きな被害を受けただけで なく、沿岸部においては大規模な地盤沈下も生じています。このように被災地においては 石炭灰混合材料を利用できる箇所も少なくありません。本ガイドラインの発刊が全国の港 湾工事における石炭灰混合材料の利用促進に繋がるだけでなく、東北地方太平洋沖大地震 による被災地復興の一助になることを期待します。 平成 23 年 3 月 東京工業大学 名誉教授 (財団法人 石炭エネルギーセンター 長瀧 重義 石炭灰利用委員会 委員長) 財団法人石炭エネルギーセンター 石炭灰有効利用ガイドライン委員会 委員構成 委員長 河野 広隆 (京都大学 大学院工学研究科 教授) 委員 石川 淳 (電源開発株式会社 火力発電部 石炭灰利用推進グループ グループリーダ) 勝見 武 (京都大学 大学院 地球環境学堂 教授) 菊池 嘉昭 (独立行政法人 港湾空港技術研究所 地盤・構造部 部長) 貴田 晶子 (一般社団法人 廃棄物資源循環学会 副会長) 佐藤 研一 (福岡大学 工学部 社会デザイン工学科 教授) 下垣 久 (財団法人 電力中央研究所 環境科学研究所 環境ソリューションセンター 水谷 聡 (大阪市立大学 大学院 工学研究科 准教授) 山本 修司 (財団法人 沿岸技術研究センター 理事) 横田 季彦 (日本国土開発株式会社 技術センター 所長) 所長) ※順序は50音順 ※所属・役職は平成 23 年 3 月現在 財団法人 石炭エネルギーセンター 石炭灰有効利用ガイドライン WG 委員会 委員構成 委員長 佐藤 研一 (福岡大学 工学部 社会デザイン工学科 教授) 委員(幹事) 横田 季彦 (日本国土開発株式会社 技術センター 所長) 委員 大仲 昭 (宇部興産株式会社 エネルギー・環境事業部 技術開発室 石炭開発部 主席 寺前 剛 (出光興産株式会社 販売部 石炭事業室 石炭・環境研究所 チームリーダ) 山中 譲 (株式会社 ジェイペック 環境・資源リサイクル事業部資源グループ 部員) グループリーダ) 成田 健 (東北電力株式会社 研究開発センター 電源・環境グループ 主幹研究員) 伊野場誠治 (財団法人 電力中央研究所 環境科学研究所 環境ソリューションセンター 主任研究員) 肴倉 宏史 (独立行政法人 国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター 物質管理研究室 研究員) 山田 水谷 理 (独立行政法人 産業技術研究所 エネルギー技術部門 主任研究員) 崇亮 (独立行政法人 港湾空港技術研究所 地盤・構造部 地盤研究領域 基礎工研究チーム リーダー) 川口 正人 (清水建設株式会社 技術研究所 生産技術センター 主任研究員) 石井 光裕 (株式会社 四国総合研究所 土木技術部 部長) 陣内 久雄 (九州電力株式会社 土木部 技術戦略グループ 課長) 西川 力 吉田 貴昭 (中部電力株式会社 発電本部 土木建築部 技術・企画グループ グループ長) (太洋基礎工業株式会社 東京支店 営業部 技術顧問) ※所属・役職は平成 23 年 3 月現在 旧委員等 森 憲広 (旧委員;東北電力㈱) 前畠 龍三 (旧委員;九州電力㈱) 堀内 澄夫 (旧オブザーバー;清水建設㈱) 田野崎隆男 (旧オブザーバー;太平洋セメント㈱) ※所属は当時 目 第1章 次 総則 1.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.2 石炭灰有効利用の現状および課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1.3 石炭灰および石炭灰混合材料のメリット・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 1.4 ガイドラインの内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 1.5 適用範囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 1.6 港湾工事における石炭灰混合材料の利用イメージ・・・・・・・・・・・・・・ 8 1.7 用語の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 1.8 関連法律 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 第2章 2.1 港湾工事での適用方法 埋立・裏埋め・道路・盛土材料への適用・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 2.1.1 石炭灰混合材料(破砕材・造粒材) ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 2.1.2 石炭灰混合材料(スラリー材・塑性材) ・・・・・・・・・・・・・・・ 19 2.2 補強・機能向上への適用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 2.3 道路・盛土・築堤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 2.3.1 石炭灰混合塑性系材料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.4 第3章 27 その他の適用方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 石炭灰混合材料の製造方法 3.1 石炭灰混合材料の基本的物性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 3.2 石炭灰混合材料(破砕材・造粒材) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 3.2.1 固化体破砕材・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 3.2.2 固化体造粒材・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 3.3 石炭灰混合材料(スラリー材・塑性材) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 3.3.1 スラリー材・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 3.3.2 塑性材・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 第4章 環境安全配慮品質及び検査方法 4.1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 4.2 用語及び定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 4.3 基本的な考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 4.4 環境安全配慮品質基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 4.5 検査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 4.5.1 環境安全配慮形式検査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 4.5.2 環境安全配慮受渡検査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52 4.6 検査の運用方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 4.6.1 検査の実施者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 4.6.2 検査の頻度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 4.6.3 検査結果の判断基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 4.6.4 再検査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 4.6.5 ロットの管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 4.6.6 検査の記録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 4.6.7 検査記録の報告及び保管・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 4.6.8 その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 参考資料 1.石炭灰・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 1.1 原炭について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 1.2 石炭灰の種類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 1.3 わが国の石炭灰の溶出特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 1.4 バイオアッセイ法(マイクロトックス)による評価事例・・・・・・・・・・ 70 1.5 石炭灰の有効利用状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72 2.審査証明取得技術一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76 3.関連法律の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84 第1章 総則 1.1 はじめに 火力発電所等から発生する石炭灰は図-1.1 に示すように、2009 年度は前年度に比べて減尐している ものの、1,000 万tを超えている 1)。この石炭灰の有効利用に関しては 1991 年に制定された「資源有効 利用促進法(リサイクル法) 」において石炭灰が利用を促進すべき指定副産物に定められたこと等から、 電力会社を中心に積極的に進められているが、1.2 で述べるように有効利用上の課題も尐なくない。 そこで、本ガイドラインは、平成 13 年環境省通知「土壌の汚染に係る環境基準についての一部改正 について」 (環水土第 44 号)にある「再利用物の利用の促進と安全性の確保の観点から、再利用物の利 用実態に即したリサイクルガイドライン」の策定を目的としたものである。 即ち、実際の土木工事においては石炭灰をそのままの状態で使用するよりも、石炭灰にセメント、水、 土砂、石こう等を混合して石炭灰混合材料として活用するケースが多い。そこで、実際の使用状態で環 境安全性を評価することを目的に、石炭灰混合材料を港湾工事で利用する際の利用範囲を明らかにして 品質管理手法および安全性の評価方法をとりまとめたものである。このガイドラインの発刊が石炭灰混 合材料の土木工事分野、とりわけ港湾工事分野での利用拡大に大きな役割を果たすことを期待している。 14,000 電気事業 12,000 一般事業 合計 発生量(千t) 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 年度 図-1.1 石炭灰の発生量の推移 1 1.2 石炭灰有効利用の現状および課題 石炭灰の有効利用分野の内訳を図-1.2 に示す。同図に示すように、有効利用分野の内訳ではセメント 分野(セメント原料としての利用)が 65~70%の範囲を占めており、他の利用先を大きく離している。 このセメント分野における利用については、セメントそのものの生産量が低下しても、セメント製造 時における活用比率(セメント1t 製造時における石炭灰の混入量)を増加させることで対応をしてき た。しかしながら近年、大型公共工事の減尐によりセメント生産量も激減し、2009 年度の生産量は約 5,300 万 t であり、2010 年度は更に落ち込むことが予想されている。これらの数字は 10 年前の 2/3 レ ベルであり、前述の活用比率がほぼ上限になっていることを合わせて考えると、今後、セメント分野へ の利用率は低下することが予測される。また、その他利用の大部分は火力発電所敷地内における海面埋 立利用であり、本来の有効利用とは異なった性質のものである。このような現状から、石炭灰の有効利 用率を今後も高水準で維持するためには、現状 15%に満たない土木分野での有効利用率の拡大が望まれ ている。 石炭灰のセメント分野以外での有効利用技術の開発は石炭灰の主な排出業者である電力会社をはじ め、大学および建設会社等の多岐にわたる部門で進められてきており、既に多くの適用実績も報告され ている 2)、3)、4)、5) 。しかしながら、石炭灰を公共工事等で定常的に使用している事例は尐なく、セメント 分野以外での利用は停滞している。この理由としては、石炭灰利用時における周辺環境安全性の評価が あげられる。即ち、石炭灰を土木分野で使用する場合、石炭灰中に含まれている表-4.1 に示す微量成分 の溶出に対して環境安全性を確保することが必要となる。 内訳比率 (%) 1995 1996 1997 1998 セメント分野 土木分野 建築分野 農林・水産分野 その他 65.2 10.0 65.1 10.8 65.1 10.1 71.1 1999 年度 2001 2002 4.6 2.1 14.8 5.3 2.1 9.8 70.2 11.7 68.8 11.7 2006 68.2 13.2 66.1 2008 14.1 70.8 2009 66.5 図-1.2 14.8 石炭灰の有効利用内訳 2 4.9 1.8 5.8 4.7 2.1 3.8 2.2 3.6 2.6 3.7 1.5 3.6 1.3 11.4 11.9 5.2 2.0 5.8 8.8 2005 2007 14.4 12.5 75.5 2004 15.7 5.7 1.7 78.7 2003 14.6 1.9 10.1 74.5 15.9 1.9 7.2 11.1 70.6 2.9 7.6 7.1 67.3 2000 6.0 3.4 1.2 3.41.1 7.9 12.1 13.4 13.3 15.0 13.2 14.2 1.3 石炭灰および石炭灰混合材料のメリット 産業副産物である石炭灰を港湾工事で利用することは、以下に示すようにリサイクル材の有効活用促 進の観点からも有意義である。 ① 副産物の有効活用であり、天然資材を利用するのに比べて環境負荷が尐ない。 ② 産業副産物であり材料コストが購入土砂等と比較して安い。 ③ 石炭灰の発生位置(火力発電所位置)が沿岸域にあるため、船舶での大量な輸送が可能で運搬コ ストの低減が図れる。 ④ 石炭灰の発生位置(火力発電所位置)が全国に分布しており、供給体制が取りやすい。 ⑤ 大量に発生する(全国で 1,000 万 t/年以上)ものであり、大規模な工事への供給が可能である。 また、化学的特性および物理的特性の観点からは、石炭灰の特性を活用したメリットも多い。石炭灰 の特性を生かした石炭灰混合材料のメリットを表-1.1 に示す。同表に示すように、石炭灰の化学的およ び物理的特性を生かすことで、石炭灰混合材料は非常に有用な建設資材となり、本ガイドラインの策定 により港湾分野の利用が拡大されることが望まれる。 表-1.1 石炭灰および石炭灰混合材料のメリット 石炭灰の特性 石炭灰混合材料のメリット 化学的特性 ・原料である石炭は元来自然界に存在して ・ポゾラン反応を有している場合は、セメ いたものであるため、化学組成が一般的な ント等の固化材の使用量を低減するこ 自然の土壌・岩石類に近い。 とが可能で、長期的な強度を確保しやす ・発生箇所(火力発電所)、使用する原炭に い。 よって若干性質はことなるが、他の産業副 ・セメントを添加することで安定し、要求 産物に比べると基本性状のばらつきが比 品質が確保しやすくなると共に重金属 較的小さい。 等の溶出が抑制される。 ・他の産業副産物に比べて、塩素含有量が比 較的尐ない。 物理的特性 ・シルト質で土粒子密度が小さく、軽量埋立 ・比較的軽量であることから、軟弱な地盤 資材として優れた性質を有している。 上では沈下量を低減することが可能。 ・軽量であり、セメント等で固化させた場 合、構造物への土圧、側圧を軽減するこ とが可能。 ・スラリー状にした場合、微粒分が多いた め流動性が改善され充填性能に優れる。 ・固化させることで海上への吸出しがな く、水質への影響が尐ない。 3 1.4 ガイドラインの内容 本ガイドラインは火力発電所等から発生する石炭灰のうちのフライアッシュに、水、セメント、土砂、 必要に応じて添加材料を混合して製造した石炭灰混合材料の港湾工事への利活用促進を目的にしたも のであり、以下の内容で構成している。 第 1 章ではガイドラインの作成目的を述べると共に、石炭灰および石炭灰混合材料のメリットを整理 し、石炭灰混合材料を港湾工事に適用した場合の有用性を示す。 第 2 章では実際の港湾工事において、石炭灰混合材料の適用提案および事例を示し、計画から施工ま での流れを適用用途毎に解説することで、通常の土砂材料を使用する場合との違いを整理し、どのよう にすれば石炭灰混合材料を港湾工事に適用できるか、適用した場合、構造上および施工上どのようなメ リットがあるかを示す。 第 3 章では、第 2 章で示した港湾工事に利用する石炭灰混合材料の製造方法、および製造された石炭 灰混合材料の基本的物性を、製造方法・利用形態毎に実例をもとに示す。 第 4 章では、石炭灰混合材料を港湾工事で利用するための環境安全品質および検査方法(案)を示した ものであり、スラグ類の有効活用を目的に日本工業規格において導入が検討されている「循環資材を利 用する際の、環境安全性の側面から配慮すべき品質の規定とその検査方法」の石炭灰混合材料への適用 に関して解説している。即ち、すべてのライフサイクルの中で「最も配慮すべき曝露環境」に注目して 環境安全品質を規定し、「環境安全形式検査」及び「環境安全受渡検査」を実施することで、石炭灰混 合材料の環境安全品質を合理的に保証することを示す。 参考資料では石炭灰の発生フロー、基本的特性および発生量を解説するほか、既往の石炭灰有効利用 技術、産業副産物である石炭灰混合材料を港湾工事で利活用する際に遵守すべき法律をとりまとめてい る。 4 表-1.2 ガイドラインの目次 第1章 総則 1.1 はじめに 1.2 石炭灰有効利用の現状および課題 1.3 石炭灰および石炭灰混合材料のメリット 1.4 ガイドラインの内容 1.5 適用範囲 1.6 港湾工事における石炭灰混合材料の利用イメージ 1.7 用語の定義 1.8 関係法律 第2章 港湾工事での適用方法 2.1 埋立・裏込め・道路・盛土材料への適用 2.2 補強・機能向上への適用 2.3 道路・盛土・築堤 2.4 その他の適用方法 第3章 石炭灰混合材料の製造方法 3.1 石炭灰混合材料の基本的物性 3.2 石炭灰混合材料(破砕材・造粒材) 3.3 石炭灰混合材料(スラリー・塑性材) 第4章 環境安全品質及び検査 4.1 はじめに 4.2 用語及び定義 4.3 基本的な考え方 4.4 環境安全品質基準 4.5 検査方法 4.6 検査の適用方法 参考資料 石炭灰 1 1.1 原炭について 1.2 石炭灰の種類 1.3 石炭灰の溶出特性 1.4 バイオアッセイ法(マイクロトックス)による評価 1.5 石炭灰の有効利用状況 審査証明取得技術一覧 2 関連法律の概要 3 5 1.5 適用範囲 本ガイドラインは石炭火力発電所から副生される石炭灰のうち、微粉炭燃焼ボイラーの燃焼ガスから 集じん装置で採取されたフライアッシュの港湾工事へ利用拡大を目的としたものであり、石炭灰の単体 利用ではなく、石炭灰にセメント、水、用途により土砂、更に添加材料等を必要に応じて混合した石炭 灰混合材料の適用方法、製造方法および安全性評価方法について規定している。 これは、1.1 で述べたように、実際の土木工事においては石炭灰をそのままの状態で使用するよりも 品質が安定した石炭灰混合材料の状態で使用されるケースが殆どであること、本ガイドラインの本来の 策定趣旨でもある「利用実態に即した評価方法の確立(有姿評価)」を行う上で、石炭灰単体で評価す るよりも実際に施工箇所で使用される石炭灰混合材料での評価の方が実用的であると考えられること、 によるものである。 また、本ガイドラインの適用範囲を港湾工事における裏込め等の地中利用に限定していることは環境 リスクを評価する上でも非常に有効であると考えられる。利用時の環境を考慮した環境安全配慮品質に ついては第 4 章で詳述するが、石炭灰混合材料を有効利用する際には、影響を受ける大気、土壌、地下 水、海水などの環境媒体が当該の環境基準等を満足することが要求される。 即ち、港湾工事での地中利用においては大気が媒体となる飛散・揮散リスク、および土壌が媒体とな る接触・付着リスクについては石炭灰混合材料の表層部を舗装等で覆い表面を露出させないことで環境 リスクを最小化できるだけでなく、施工後も事業者が管轄・管理するケースが殆どであること、第三者 によって掘削・再利用されるケースも殆どないと想定されること、海水に交わることから地下水の飲用 がないことなどからもこれらのリスクを小さく見積もることが可能である。さらに地下水が媒体となる 浸透リスクに関しては、施工箇所を浸透した地下水は途中で利用されることなく海域に流入することか ら,海域に対する環境リスクに注目すれば良いと考えられる。 図-1.3 は石炭灰混合材料の適用箇所と安全性評価方法との関係を示したものであり、石炭灰混合材料 を土工材料として利用する場合、現状では用途に係わらず一律の安全性評価手法が用いられるケースが 殆どであるが、「摂取の観点からの環境リスク」と「土地利用の観点から見た管理の容易さ」に基づい た「安全性評価手法」を定めることが合理的である。このような観点から本ガイドラインは、「有姿で の安全性評価手法」を用いることで港湾工事における石炭灰混合材料の利用拡大を目指したものであり、 「摂取の観点からの環境リスク」および「土地利用の観点から見た管理の容易さ」が計画・設計時点の 通りとなっていることが条件である。即ち、施工時の検査記録(工事記録等)を定められた期間保管す るだけでなく、施工後に掘り返して再利用が行われる場合は土壌環境基準との適合性を検証する必要が ある。 図-1.4 に石炭灰混合材料の基本的な製造フローを示す。同図に示すように、石炭灰混合材料の製造は 予め利用場所と異なる位置(現場外もしくは現場内)で石炭灰(フライアッシュ)にセメント、水、土 砂および添加材料等を混合して石炭灰混合材料を製造して、施工場所まで運搬して利用する土砂代替品 6 としての利用方法と、石炭灰とセメント、水、土砂および添加材料を施工場所まで運搬し原位置で石炭 灰混合材料をスラリー状で製造して利用する方法とが考えられる。なお、これらの製造方法の詳細につ いては第3章に実例を踏まえて解説する。 なお、火力発電所から副成され、既に長期間埋立地等に埋め立てられている既成灰に関しては、化学 的には安定しており重金属等の溶出も尐ないとの報告もある 6)が、 、その利用については関連機関の確認 を得る。 土 地 利 用 の 観 点 か ら 見 た 管 理 の 容 易 さ 難 現状で の安全性評価手法に基づく考え方 管理基準値 の緩和 易 低 高 環境リスクの観点から見た摂取の可能性 図-1.3 石炭灰混合材料の適用箇所と安全性評価方法の考え方 石炭火力発電所等 石炭灰 土砂、セメント、石こう、水 石炭灰混合材料 配合試験・形式検査 No 受入基準を 満足するか? Yes 施工・受渡検査 竣工 図-1.4 石炭灰混合材料の基本的な製造フロー 7 等 1.6 港湾工事における石炭灰混合材料の利用イメージ 港湾工事で用いられる地盤材料としては、大量に入手可能であり、しかも品質が安定していることが 条件となる。さらに、使用する箇所に応じて表-1.3 に示す性質が求められる。 図-1.5 はこのうち、裏込め材および埋立て材として石炭灰混合材料を利用したイメージを示したもの であり、表-1.4 に各利用時における石炭灰混合材料の効果を示す。これらの利用イメージに示されるよ うに、石炭灰混合材料は表層部を舗装等で覆い表面を露出させない地中利用とするとともに、石炭灰混 合材料で施工した個所と他の地盤材料で施工した個所とが混じらないように区分する必要がある。 矢板 ケーソン 石炭灰混合材料 控え杭 裏込石 石炭灰混合材料 基礎マウンド 地盤改良土 (1) 重力式岸壁(護岸)の裏込め・埋立材料への適用 (2) 矢板式岸壁(護岸)の裏込め・埋立材料への 適用 矢板 臨港道路橋梁 不同沈下抑制 石炭灰混合材料(置換) 橋台 石炭灰混合材料 杭基礎 (3) 矢板式岸壁(護岸)の利用向上 (4) 橋台背面盛土への適用 臨海仮設道路 矢板 被覆土 石炭灰混合材料 捨石 軟弱地盤 (5) 軟弱地盤上盛土への適用 図-1.5 港湾工事における石炭灰混合材料の利用イメージ 8 表-1.3 一般港湾工事用材料に求められる性質 材料 求められる性質 石炭灰混合材 料の適用性 地盤改良材(SCP) 砂状のもの。ダイレタンシィーが大きいもの。固化する ものについては議論の余地あり。 ○ 透水性がよいこと △ サンドドレーン材 基礎砕石 裏込め材 粒子が大きいものがよい。割れにくいこと。かみ合わせ がよいこと。 強度が高いこと(特にcがあるとよい)→土圧低減のた め。軽いことも有利。 × ○ 埋立て材 軽いこと。圧縮しにくいこと。 ○ 中詰め材 固まらないこと。 △ 重いと有利。海中で用いる場合は粒子が大きいこと。 × カウンターウエイト 凡例 ○:適用可、△:条件により適用可、×:適用不可 表-1.4 石炭灰混合材料による効果 適用例 石炭灰混合材料による効果 (1) 重力式岸壁(護岸)の裏込め・埋立 ・土圧低減(堤体断面の縮小、基礎マウンドの縮小、 材料への適用 地盤改良範囲の縮小) ・沈下防止(軟弱地盤上の岸壁、背後地) ・液状化防止 (2) 矢板式岸壁(護岸)の裏込め・埋立 ・土圧低減(堤体断面の縮小、根入れ長の低減、控え構造 材料への適用 の低減又は省略、地盤改良範囲の縮小) ・沈下防止(軟弱地盤上の岸壁、背後地) ・液状化防止 (3) 矢板式岸壁(護岸)の利用向上 ・側方変位の抑制 ・不同沈下の抑制 (4) 橋台背面盛土への適用 ・側方変位の防止 ・沈下による段差の抑制 ・滑り破壊の防止 (5) 軟弱地盤上の盛土 ・沈下抑制 ・地盤改良、押え盛土の軽減又は省略 ・滑り破壊の防止 9 1.7 用語の定義 本ガイドラインに用いる用語を次のように定義する。 石炭灰 :石炭火力発電所等で微粉炭を燃焼したあとに残渣として副成されるもの フライアッシュ:石炭灰のうち、微粉炭燃焼ボイラーの燃焼ガスから集じん装置で採取されたもの クリンカアッシュ:石炭灰のうち、ボイラー底部で回収される溶結状のものを砕いたもの 既成灰 :火力発電所から副成され、既に長期間埋立地等に埋め立てられている石炭灰(掘削す ると塊状を呈する) 新生灰 :新たに火力発電所から発生した石炭灰で、埋め立てがされていないもの、既成灰に相 対する用語 石炭灰混合材料:石炭灰にセメント、水、必要に応じて土砂、石膏等を混合して固化させた地盤材料 固化体破砕材 :石炭灰にセメント、水、必要に応じて石膏を混合して一旦固化させた後、掘削・破砕 した土砂代替材。以下、破砕材と記す 固化体造粒材 :石炭灰にセメント、添加材および水を加えて造粒して製造した砂質土代替材、以下、 造粒材と記す スラリー材 :施工場所において、石炭灰にセメント、水を混合してスラリー状にしたもの。以下、 スラリーと記す 石炭灰塑性材 :工事現場近傍において、石炭灰にセメント、土砂および水を混合攪拌して製造した石 炭灰混合材料 裏込め :重力式岸壁および矢板式岸壁において土圧低減等の効果を期待して背後地盤を埋める こと 埋立 :埋立、裏埋め、中詰め等による地盤造成 土圧 :土砂による圧力。土砂の物理定数(c、φ)によってことなる 側方変位 :構造物が側方に移動すること 浚渫土 :浚渫工事によって発生する土砂 環境安全品質 :影響を受ける周辺環境が、当該の環境基準やその達成のために適用される対策基準等 を達成するために配慮が要求される品質で、溶出量等の具体的数値で示される。 環境安全形式検査:施工で使用する材料が環境安全配慮品質を満足するかの判定をするための検査。工 場等で製造された石炭灰混合材料を対象に実施する。 環境安全受渡検査:実際に利用者へ受渡される、もしくは実際に施工されるものと同じロットの材 料を用いて、環境安全配慮品質を満足するかどうかの判定をするための検査。石炭灰 混合材料を対象に施工現場で実施する。 ポゾラン反応 :シリカ質物質が水酸化カルシウムと反応して硬化する反応。石炭灰混合材料はこの反 応により長期強度が増加する。 10 1.8 関連法律 産業副産物である石炭灰は、一般的には廃棄物としての性格を有することから、港湾分野での利用に おいては関連法規・基準を遵守し、環境保全上の問題が生じないように対策を講じる必要がある。 わが国における環境保全に関連する法律、および産業副産物を港湾事業で使用する際に関係する法律 としては表-1.5 に示すものが考えられる。なお、各法律の概要については参考資料に記している。 表-1.5 港湾工事でのリサイクル材利用に係わる法律一覧 法律名称 制定日 ①公有水面埋立法 1935 年 4 月 9 日法律第 57 号 ②港湾法 1950 年 5 月 31 日法律第 218 号 ③海岸法 1956 年 5 月 12 日法律第 101 号 ④廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法) 1970 年 12 月 25 日法律第 137 号 ⑤海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(海防法) 1970 年 12 月 25 日法律第 136 号 ⑥資源の有効な利用の促進に関する法律(リサイクル法) 1991 年 4 月 26 日法律第 48 号 ⑦環境基本法 1993 年 11 月 19 日法律第 91 号 ⑧環境影響評価法 1997 年 6 月 13 日法律第 81 号 ⑨国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法) 2000 年 5 月 31 日法律第 100 号 ⑩建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法) 2000 年 5 月 31 日法律第 104 号 ⑪循環型社会形成推進基本法 2000 年 6 月 2 日法律第 110 号 ⑫土壌汚染対策法(土対法) 2002 年 5 月 29 日法律第 53 号 表-1.5 に示す法律は、港湾領域の利用に関するもの(①、②、③、⑤)、リサイクル材の有効活用に 関するもの(⑥、⑦、⑨、⑩、⑪) 、廃棄物の適正処理に関するもの(④、⑩)、および有害物質の拡散 防止等の環境保全に関するもの(⑤、⑧、⑫)に大別される。即ち、港湾工事において石炭灰を有効利 用する際には、石炭灰の利用形態が廃棄物処理法上適正であることを確認し、海洋環境に悪影響を及ぼ さないものであることを示す必要がある。港湾・空港等整備におけるリサイクル技術指針 7)では、産業副 産物を海洋工事で利用する場合、海防法上の取り扱いに関しては、以下の項目について整理し、客観的 に説明することが望ましいとしている。 (1)環境保全上の問題がないことの説明 ・有害物質等の確認。 (2)積極的に材料として使用することの説明 ・用途別の材料基準に合致するかの確認。 ・基準がない場合は基準を作成する。 11 (3)施工者側における十分な管理体制の説明 ・運搬、仮置き、工事施工における管理・配慮が求められる。 ・管理マニュアル等があると便利。 ・但し、万が一管理不十分のため異物や材料基準に合致しないものの混入が認められた場合は廃棄 物と見なされ海防法の規制を受ける。 一方、石炭灰等の産業副産物を港湾工事に利用する際には、 「港湾の施設の技術上の基準・同解説」8) および「港湾工事共通仕様書」9)を準拠して、港湾工事の特性および使用する産業副産物の品質や特性、 供給量および環境への影響を十分検討する必要がある。特に、「港湾工事共通仕様書」に関しては各都 道府県で独自に策定しているところも尐なくなく、検討および計画・設計段階においてはこれらについ ても準拠することが望まれる。 参考文献 1) 財団法人 石炭エネルギーセンター:石炭灰全国実態調査報告書(平成 20 年度実績),2010. 2) 石原弘一:港湾整備事業における石炭灰の活用について,石炭灰有効利用シンポジウム講演集,pp.1 ~10,1998. 3) 荘司喜博,高橋邦夫,浅井正,角野隆:セメント添加した石炭灰の岸壁裏込め材への利用,土木学 会論文集,No.637,pp.137~148,1999. 4) 小林仁,田中則和,高橋昌之:石炭灰を用いた水中硬化体の開発,電力土木,No.284,pp.9~13, 1999. 5) 吉田貴昭,佐々木康裕,木下秀之:石炭灰を利用した水中土工材の埋立事業への適用,電力土木, No.297,pp.125~128,2002. 6) 井野場誠治,下垣久:埋立処分された石炭灰の再資源化に関する研究-既成灰の性状と土工材料と しての適用性-,電力中央研究所報告,V08031,2009. 7) 国土交通省 港湾・空港等リサイクル推進協議会:港湾・空港整備におけるリサイクル技術指針, 2004. 8) (社)日本港湾協会:港湾の施設の技術上の基準・同解説,2007. 9) (社)日本港湾協会:港湾工事共通仕様書(平成 16 年度版),2004. 12 第2章 港湾工事での適用方法 第 1 章5節で述べたように、 石炭灰混合材料利用工法は従来使用してきた材料の有効な代替材料として、 盛土・埋立や構造物の裏埋め、埋立材料等に適用することにより、自然由来材料に比べ環境負荷の軽減お よび、土圧低減、既設護岸・岸壁の補強及び機能向上、液状化抑止、軟弱地盤上の盛土などの幅広い用途 に用いることができる。本章では、これらの用途に適用される港湾工事の提案または事例を示し、計画か ら施工までの流れを解説する。 2.1 埋立・裏込め・道路・盛土材料への適用 2.1.1 石炭灰混合材料(破砕材・造粒材) (1) 適用イメージと適用時のメリット 構造物の背面に埋立材料として適用する石炭灰混合材料は軽量な固化体であるため、一般土砂による 埋立工法に比べ埋立地盤の沈下抑制に寄与するとともに、構造物に対し背面土圧を軽減する。また、従 来使用してきた自然由来の材料(捨石・購入土砂・砂利等)に比べ採掘・選別等の環境負荷も軽減でき る。図-2.1 に対象工事の断面(適用イメージ)を示す。 図-2.1 対象工事の断面(適用イメージ) (2) 適用可能な製造方法 石炭灰混合材料(破砕材料)の製造は、石炭灰生産場所である火力発電所内等で実施されることが多 い。生産されたフライアッシュに水・セメント・石膏を加え混合して製造した原材料を、締固め・養生 乾燥・掘削・破砕して塊状に加工する材料と、フライアッシュに水・セメント・溶出抑制剤・添加剤を 混合し造粒した製品を養生・保管する製造方法がある。事前に製造された破砕材料を粒度調整しないで 搬出する場合や目的に応じた大きさに粒径分類して使用する製品がある。対象構造物の機能、特性等を 踏まえて石炭灰混合材料に求める要求性能を確認し、製造固化体の強度をセメント添加量によって調整 することができる。材料の製造方法の詳細については第 3 章で述べる。 (3) 設計方法 適用する護岸・岸壁の設計基準は「港湾の施設の技術上の基準・同解説」および「港湾工事共通仕様 13 書」を準拠して、港湾工事の特性および使用する石炭灰混合材料の品質や特性、供給量および環境への 影響を十分検討する必要がある。特に「港湾工事共通仕様書」に関しては各都道府県で独自に策定して いるところもあり、設計段階においてこれらに準拠することが望ましい。 (4) 施工方法 図-2.2 に石炭灰混合材料の配合試験から計画、設計、施工までの全体の流れを示す。 石炭火力発電所等 石炭灰 配合試験 石炭灰混合材料配合検討 水、セメント、添加剤 (石膏・溶出抑制剤) 石炭灰混合材料 NO 受入基準を 満足するか? 事業者立会 製造者確認 YES 石炭灰混合材料の製造 運 搬 施工現場に材料搬入 受入基準:品質の確認 施 工 事業者立会 施工者確認 施 工 図-2.2 石炭灰混合材料の配合試験から計画、設計、施工までの全体フロー図 (5)品質管理方法 石炭灰混合材料の品質管理は、第 3 章石炭灰混合材料の製造方法で確認されるので、施工中および施 工完了後に適用した石炭灰混合材料の品質管理について記述する。製造された石炭灰混合材料は破砕材 料と粒状材料によって異なるが、破砕材料は工事現場にて搬入数量 200m3に 1 回程度粒度分布を確認す る。粒状材料の場合は製造ロットで確認されており現地での品質管理はミルシート等で確認する。施工 完了後の品質確認はチェックボーリング等による。 14 (6)適用事例 (6)-1 固化体破砕材(頑丈土) ①施工概要:石炭灰混合材料を発電所構内で締固めて養生し、破砕材を製造・運搬して埠頭の道路の 路床および下層路盤に適用した事例である。計画図を図-2.3 に示す。 平面図 標準断面図 図-2.3 計画図 ②施工場所:福島県いわき市 ③石炭灰混合材料:フライアッシュ+水+セメント ④製造:火力発電所施設場内で製造 製造段階は 2 段階あり石炭灰混合材料で製造した固化体を養生し破砕して破砕材として使用する。 製造・養生・破砕・搬出の流れを図-2.4、図-2.5 に示す。 石炭灰サイロ セメントサイロ 水 混合 タ ン ク ベルトコンベア 般一 石炭灰(乾灰)積込み 計重 構内横持 石炭灰(乾灰)受入 頑丈土製造 積込・構内運搬 図-2.4 石炭灰混合材料の一次製造フロー図 頑丈土 頑丈土 般一 般一 掘削・破砕・粒度調整 締固め・固化・養生 図-2.5 石炭灰混合材料(破砕材)の製造フロー図 ⑤運搬方法:ダンプトラックによる搬送 破砕材料として貯蔵された石炭灰混合材料の搬出をダンプトラックで行う。 15 積込 ⑥施工方法:施工手順を図-2.1.6 に示す 路床の施工 下層路盤の施工 図-2.6 施工フロー図 ⑦施工写真: 写真 2.1 頑丈土の製造、破砕材の製造 写真 2.2 ダンプカーによる材料運搬 写真 2.3 ブルドーザ、モータグレーダによる撒きだし状況 写真 2.4 完了全景(基盤、頑丈土破砕材下層路盤、上層路盤) 16 (6)-2 造粒材(ゼットサンド) ①施工概要:埋立地場内に築堤造成のため石炭灰混合材量をダンプ運搬し、ブルドーザやバックホ ウにて横持・整形し、タイヤローラで転圧・舗装を行うものである。図-2.6 に適用された築堤断面図 と石炭灰混合材料(造粒材)投入位置を示す。 図-2.6 適用された築堤断面図 ②施工場所:山口県宇部市 ③石炭灰混合材料(造粒材) :フライアッシュ+水+セメント+溶出抑制剤+添加材 ④製造:火力発電所施設場内で製造・貯蔵 第 3 章にて詳細を記載するのでこの事例では概要フローを記載する。図-2.7 に適用された石炭灰 混合材料(造粒材)の造粒過程と養生・保管をフロー図で示す。 ②造粒工程 ①火力発電所等 フライアッシュ セメント ③石炭灰混合造粒材料養生 ④石炭灰混合造粒材料貯蔵 添加材 保管ヤード 水 溶出抑制剤 出荷 貯留・搬出 造粒機 養生ヤード ゼットサンド 図-2.7 石炭灰混合材料(造粒材)の造粒過程と養生・保管フロー図 ⑤運搬方法:保管ヤードに貯留された石炭灰混合材料(造粒材)は、ペイローダやホイールローダ によりダンプトラックに積み込みまれ使用現場に出荷・搬送される。 ⑥施工方法:図-2.8 に施工手順図を示す。ダンプ運搬された石炭灰混合材料(造粒材)をバックホ ウで敷き均し、タイヤローラで転圧する一般的な施工形態を示す。粒状形状に大きな差が無いため 取り扱いが容易で断面整形はバックホウで実施されことが多い。転圧はマカダムローラやダンデムロ ーラ等も使用する。 17 ①材料運搬 ④転圧・被覆・舗装 ③造成・整地 ②横持ち・整形 ダンプトラック バックホウ タイヤローラー ダンプトラック ホイールローダ ブルドーザ 図-2.8 施工手順図 ⑦施工写真: 写真-2.5 材料巻き出し嵩上げ状況 写真-2.6 石炭灰混合材料(造粒材)築堤延長状況 18 2.1.2 石炭灰混合材料(スラリー) (1)適用イメージと適用時のメリット 既設護岸の背面や岸壁背面の裏込め材料は従来捨石や雑石が採用されてきた。石炭灰混合材料(ス ラリー)は捨石や土砂よりも密度が低く背面に裏込めした場合に構造物に対し背面土圧を軽減し、護岸・ 岸壁の背面補強構造となる。ケーソン背面などでは固化体による充填施工となるため、背面を埋立てた 土砂の吸出し防止にも効果的である。構造物の背面に裏込め材料として適用する石炭灰混合材料(スラ リー)は軽量な固化体となるため、一般土砂による埋立工法に比べ埋立地盤の沈下抑制に寄与する。図 -2.9 に対象工事の断面(適用イメージ)を示す。 図-2.9 裏込め・腹付け材料への適用例 図-2.9 において、石炭灰混合材料の選定は注入方式で施工する場合はスラリーを適用する。ガット船や ダンプトラック等による投入方式で施工する場合は塑性材料を選定し基本計画を検討する。 (2)適用可能な製造方法 既設護岸の背面や岸壁背面に裏込め・埋立に適用する石炭灰混合材料は、対象構造物の機能、特性、 等を踏まえて石炭灰混合材料に求める要求性能を確認し、フライアッシュ+水+セメントで計画するか、 フライアッシュ+水+セメント+浚渫土砂(現場発生土)とするか検討する。またスラリーまたは塑性 材料とするかは施工条件や設計条件によって決定する。石炭灰混合材料(スラリー)を製造する場所が 制限されるため、石炭灰混合材料(スラリー)を使用する現場で製造するか発生元である火力発電所内 で石炭灰混合材料(スラリー)を製造し運搬するか判断する。材料の製造方法の詳細については事例で 述べる。 (3)設計方法 石炭灰混合材料(スラリー)に適用する護岸・岸壁の設計基準は「港湾の施設の技術上の基準・同 解説」および「港湾工事共通仕様書」を準拠して、港湾工事の特性および使用する石炭灰混合材料(ス ラリー)の品質や特性、供給量および環境への影響を十分検討する必要がある。特に「港湾工事共通仕 様書」に関しては各都道府県で独自に策定しているところもあり、設計段階においてこれらに準拠する ことが望ましい。 (4)施工方法 図-2.10 に石炭灰混合材料(スラリー)の配合試験から計画、設計、施工までの全体の流れを示す。 19 石炭火力発電所等 石炭灰 配合試験 石炭灰混合材料配合検討 水、セメント、土砂、 添加材料 石炭灰混合材料 NO 事業者立会 受入基準を 満足するか? 製造者確認 施工者確認 YES 石炭灰混合材料の製造 原材料の運搬:フライアッシュ、セメント、(土砂・添加材料) 施工現場内で材料混合して製造 受入基準:品質の確認 施 工 事業者立会 施工者確認 施 工 図-2.10 裏込め・埋立材料への計画から施工までの流れ 図-2.10 において、基本計画は対象構造物の機能、特性、などを踏まえて要求性能を確認する。対象構造 物ごとに安定性や沈下・変形量などに対する許容値も構造物の種類や重要性によって大きく異なる。そ のため、要求性能の確認では、対象構造物に対する基準に則って設定する。 施工上の留意点:スラリー施工において打設高さは 1.0m~1.5m以下とする。これは室内配合試験のブ リージング調査や密度試験・施工事例で品質確認を行ったところ、石炭灰混合材料のスラリーは打設後 1.0m~1.5m厚み以上では上層と下層の密度に密度差が発生する場合があるためである。 (5)品質管理方法 石炭灰混合材料(スラリー)の品質管理は施工事例の中で石炭灰混合材料(スラリー)の製造方法に おける確認方法、施工中および施工完了後に適用した石炭灰混合材料の品質管理について記述する。製 造された石炭灰混合材料(スラリー)は工事現場にて製造ロット毎または 300m3未満または施工延長 20 mに 1 回程度マッドバランスやテーブルフロー値等にて密度や粘度を確認する。 20 (6)適用事例 ①施工概要:新設される消波岸壁の背面に石炭灰混合材料(スラリー)を裏込め材料として投入する。 消波機能を持ったケーソン岸壁は軽量なため背面土圧を軽減し、波浪に対する受動にも対応するた め石炭灰混合材料(スラリー)を採用して機能向上させるものである。 ②施工場所:酒田港外港地区(-14m)国際ターミナル岸壁 図-2.11 に適用された消波ケーソン岸壁断面図と石炭灰混合材料(スラリー)投入位置を示す。 図-2.11 適用されたケーソン岸壁断面図 ③石炭灰混合材料(スラリー) :フライアッシュ(既成灰)+海水+セメント ④⑤製造・運搬方法:火力発電所灰処分場内で製造・トラックミキサーによる搬送 この施工事例はフライアッシュが屋外灰処分場に 3~4 年貯留された既成灰を利用しているため、 石炭灰処分場内に設置した溶解槽で海水とフライアッシュを攪拌混合して作液を製造する。事前 配合試験で確認した目標強度の配合比率に対応するフライアッシュスラリー液の密度を測定し規 定値に調整完了するとトラックミキサー車に設定量を圧送する。 トラックミキサー車に注入されたフライアッシュスラリー液に設定量のセメントを添加し、攪拌 混合しながら施工現場まで搬送し、石炭灰混合材料(スラリー)の製造を完了する。既成灰のフ ライアッシュに対するセメント量は重量比で5%~8%の配合比であった。 図-2.12 に火力発電所内灰処分場でのフライアッシュ集積から製造・搬出までの流れを示す。 石炭灰スラリーの圧送 電磁流量計 配管 水と石炭灰を攪拌 石炭灰の集積と積込運搬 ブルドーザ セメントサイロ ロータリー式バックホウ タイヤショベル 石炭灰スラリーの積込 電磁流量計 トラックミキサ車 配管 水中ポンプ 攪拌槽 貯水槽・水中ポンプ セメント量管理 図-2.12 フライアッシュの集積・石炭灰混合材料(スラリー)製造・搬出の流れ 21 ⑥施工方法:図-2.13 に石炭灰混合材料(スラリー)の運搬・コンクリートポンプ車による圧送・海 上配管・潜水士船・潜水夫による裏込め投入施工の流れを示す。コンクリートミキサー車にて搬 送された石炭灰混合材料(スラリー)をコンクリートポンプ車にて投入位置まで圧送する。石炭 灰混合材料(スラリー)は海上に設置したフロート上に配管された圧送管により、沖合いに設置 された潜水士船または投入台船(ポンツーン)に搬送され、ケーソン背面の投入施工位置へ潜水 士によるトレミー管先端誘導操作にて裏込めする。 図-2.13 搬出された石炭灰混合材料(スラリー)の圧送から裏埋め投入施工の流れ ⑦施工写真: 写真-2.7 既成灰集積・運搬 写真-2.8 溶解・混合・スラリー製造 写真-2.9 石炭灰混合材料(スラリー)製造・運搬 22 写真-2.10 コンクリートポンプ車に投入 2.2 補強・機能向上への適用 2.2.1 石炭灰混合材料(スラリー) (1)適用イメージと適用時のメリット 図-2.14 に対象工事の断面(適用イメージ)を示す。修復または劣化した既設護岸・岸壁の補強・機 能向上は、既設護岸の背面を石炭灰混合材料(スラリー)で補強・修繕した結果、復元修復より修復 費用・工事期間ともに縮減される。背面に軽量で固化体となる石炭灰混合材料(スラリー)を採用す ることで、背面土圧が軽減されることから同等の護岸構造物を新規に築造する比較設計においても、 背面に石炭灰混合材料(スラリー)を使用した護岸・岸壁構造は設計段階で省力化(構造物のスリム 化)が可能となることがある。 図-2.14 補強・機能向上への適用例 図-2.14 において適用する石炭灰混合材料は、スラリーや土砂代替材で基本計画を検討する。 (2)適用可能な製造方法 修復の必要な劣化した既設護岸・岸壁や岸壁の前面水深を増深するために背面に補強・機能向上を目 的に裏込め・充填に適用する石炭灰混合材料(スラリー)は、対象構造物の機能、特性、等を踏まえて 石炭灰混合材料(スラリー)に求める要求性能を確認し、フライアッシュ+水+セメントで計画するか、 フライアッシュ+水+セメント+浚渫土砂(現場発生土)が適切か検討する。新設する護岸・岸壁と異 なり施工場所や施工条件で石炭灰混合材料(スラリー)を製造する場所が制限されることが多く、石炭 灰混合材料(スラリー)を使用する現場で製造するか発生元である火力発電所内等で石炭灰混合材料(ス ラリー)を製造し運搬するか検討する。材料の製造方法の詳細については事例で述べる。 (3)設計方法 適用する補強・機能向上の設計基準は「港湾の施設の技術上の基準・同解説」および「港湾工事共通 仕様書」を準拠して、港湾工事の特性および使用する石炭灰混合材料(スラリー)の品質や特性、供給 量および環境への影響を十分検討する必要がある。特に「港湾工事共通仕様書」に関しては各都道府県 で独自に策定しているところもあり、設計段階においてこれらに準拠することが望ましい。 23 (4)施工方法 図-2.15 に、補強・機能向上への適用工法における計画から施工までの流れをフロー図で示す。施工上 の留意点として、スラリー投入においては前記事例で述べたように打設高さは 1.0m~1.5m以内とし、 水中においてはトレミー方式で海水を混入させないよう投入する。 石炭火力発電所等 石炭灰 配合試験 石炭灰混合材料配合検討 水、セメント、土砂、 添加材料 石炭灰混合材料 NO 事業者立会 受入基準を 満足するか? 製造者確認 施工者確認 YES 石炭灰混合材料の製造 原材料の運搬:フライアッシュ、セメント、(土砂・添加材料) 施工現場内で材料混合して製造 受入基準:品質の確認 施 工 事業者立会 施工者確認 施 工 図-2.15 補強・機能向上への適用工法における裏埋め・充填の計画から施工までの流れ (5)品質管理方法 施工事例に示す石炭灰混合材料(スラリー)の製造方法で製造時の品質確認と施工中および施工完 了後に適用した石炭灰混合材料(スラリー)の品質管理について記述する。製造する石炭灰混合材料(ス ラリー)は事前に実施する室内配合試験により、目標強度に適応した配合設計が決定され、計量管理さ れたプラント記録より石炭灰混合材料の材料配合結果を確認する。スラリーは工事現場にて製造された 石炭灰混合材料(スラリー)がアジテータにて補充攪拌されるので、圧送前にマッドバランスやテーブ ルフロー測定装置等を用いて密度や粘性度が設定許容値以内かを確認する。石炭灰混合材料が塑性状の 24 場合は工事現場にて製造され現場に投入する前に、スランプやテーブルフロー測定装置で施工管理の範 囲に入っているかを確認する。 (6)適用事例 ①施工概要:ブロック式護岸の劣化が進行しているため、護岸背面を掘削撤去し背面に石炭灰混合材 料(スラリー)を投入して劣化護岸の補強と背面の安定を目的とする工事事例である。 ②施工場所:九州電力・電源開発共用岸壁北側旧護岸修復工事 図-2.16 に適用された補強・機能向上の断面図と石炭灰混合材料(スラリー)の投入位置を示す。 図-2.16 適用された補強・機能向上の断面図 ③石炭灰混合材料(スラリー):石炭灰+海水+セメント ④製造方法:火力発電所から現場に石炭灰を搬送し、施工現場に設置されたスラリープラントで水・セ メントとともに攪拌混合し製造する。フライアッシュとセメントの配合比は目標とする石炭灰混合材 料(スラリー)の強度によって設定されるので、配合比は事前に実施する室内配合試験によって決定 する。低強度から高強度までセメント配合比を変動させ目標強度配合を決定するが、一般にフライア ッシュに対し重量比で5%~15%で設定されることが多い。 ⑤運搬:スラリープラントが投入現場に近い場合(100m程度)はグラウトポンプで現場施工箇所まで 圧送しトレミー管で投入充填する。この現場では施工延長が 100mを超える施工箇所もあるので、近 距離は圧送配管による施工と遠距離はトラックミキサー車に搭載して施工位置まで搬送し、グラウト ポンプに流し込み圧送してトレミー管で充填投入する2つの方法が採用された。 ⑥施工方法:圧送された石炭灰混合材料(スラリー)を作業員がトレミー管先端を操作し、投入施工は 作業手順に従った管理高さ及び施工位置で投入する。図-2.17 に、フライアッシュの生産・運搬・貯 蔵から石炭灰混合材料(スラリー)の製造、製造プラントから施工現場までポンプ圧送の場合とトラ ックミキサで施工箇所まで搬送する場合等をフロー図に示す。 25 図-2.17 フライアッシュの運搬・石炭灰混合材料(スラリー)の製造・搬送・投入フロー図 ⑦施工写真 写真-2.11 スラリー製造プラントから積出 写真-2.12 スラリー状況・アジテータの内部 写真-2.13 護岸背面掘削状況 写真-2.14 護岸背面 3・4 段目スラリー投入状況 26 2.3 道路・盛土・築堤への適用 2.3.1 石炭灰混合材料(塑性材) (1) 適用イメージと適用時のメリット 図-2.18 に、機能向上嵩上げや盛土道路イメージ断面図を示す。盛土・築堤に適用する材料(浚渫土 砂や現場発生土砂)に石炭灰を混合することで軽量材料である石炭灰混合材料(塑性材)は、盛土・ 築堤の支持地盤にかかる荷重を軽減することで沈下量が低減し、盛土・築堤断面を経済的に設計す ることができる。また、構造物に近接する盛土工事も通常土砂を適用した場合に比べ、石炭灰混合 材料(塑性材)は変位量を軽減することができる。 舗装 覆土 石炭灰混合材料 軟弱地盤・埋立地盤 図-2.18 機能向上嵩上げや盛土道路イメージ断面図 (2) 適用可能な製造方法 盛土・築堤に適用する石炭灰混合材料(塑性材)は、盛土・築堤する基盤の強度・地盤特性、等を踏 まえて石炭灰混合材料(塑性材)に求める要求性能を確認し、石炭灰+水+セメントで計画するか、石 炭灰+水+セメント+浚渫土砂(現場発生土)が適切か設計検討する。さらに軽量化が必要な場合は気 泡混合や発泡ビーズを混合した石炭灰+水+セメント+(気泡混合または発泡ビーズ)の石炭灰混 合材料(塑性材)を採用するが、盛土・築堤する施工場所によって施工条件が異なるため、石炭灰混合 材料(塑性材)は使用する近接現場で製造・運搬することが一般的である。材料の製造方法の詳細につ いては施工事例で述べる。 (3) 設計方法 適用する盛土・築堤の設計基準は「港湾の施設の技術上の基準・同解説」および「港湾工事共通仕様書」 を準拠して、港湾工事の特性および使用する石炭灰混合材料(塑性材)の品質や特性、供給量および環 境への影響を十分検討する必要がある。特に「港湾工事共通仕様書」に関しては各都道府県で独自に策 定しているところもあり、設計段階においてこれらに準拠することが望ましい。 (4) 施工方法 図-2.19 に、盛土・築堤の設計から施工までの方法をフロー図で示す。 27 石炭火力発電所等 石炭灰 配合試験 石炭灰混合材料配合検討 水、セメント、土砂、 添加材料 石炭灰混合材料 NO 受入基準を 満足するか? 事業者立会 製造者確認 施工者確認 YES 石炭灰混合材料の製造 運搬 港湾工事施工場所 受入基準:品質の確認 施 工 事業者立会 施工者確認 施 工 図-2.19 補強・機能向上への適用工法における裏埋め・充填の計画から施工までの流れ (5)品質管理方法 石炭灰混合材料(塑性材)の品質管理は施工現場における石炭灰混合材料(塑性材)の製造過程で確 認する。事前に実施した室内配合試験で得られた配合比率で製造されているかを確認し、製造プラント 計量装置で印字記録する。製造された石炭灰混合材料(塑性材)は施工現場に搬出する前または施工中 にスランプ測定を行い、室内配合試験で設定された許容範囲(数値により水中不分離抵抗性能を発揮す る)か品質管理を行う。確認頻度は 300m3に 1 回程度スランプ等にて確認する。目標強度の確認は工事 完了後 1~2ヶ所チェックボーリング等を行い、コアを採取して石炭灰混合材料(塑性材)の品質を 確認する。 (6)適用事例 ①施工概要:浚渫仮置きされている土砂(シルト質砂)に石炭灰とセメントを混合し、水中投入して 28 も分離しない含水比に調整し土砂混合機で攪拌混合した石炭灰混合材料(塑性材)をダンプトラッ クで運搬し、海中にバックホウにて投入・撒き出しを行い、埋立護岸の中仕切り堤を築造する。 ②施工場所:北海道苫小牧東港埋立護岸中仕切り堤築造工事 図-2.20 に適用された盛土・中仕切り堤築造の断面図と石炭灰混合材料(塑性材)の位置を示す。 図-2.20 盛土・築堤に適用する施工断面図 :石炭灰+海水+セメント+再利用土砂 ③石炭灰混合材料(塑性材) ④⑤製造方法・運搬:火力発電所で製造したセメント混合石炭灰を搬送し、再利用土砂(現地発生土 砂)にセメント混合石炭灰を現地で攪拌混合し、製造された石炭灰混合材料(塑性材)をダンプに 積込み投入現場へ搬送する。図-2.21 に、盛土・中仕切り堤に適用する石炭灰混合材料(塑性材) の製造・搬出の流れを示す。 セメント混合石炭灰サイロ 土砂投入用 バックホウ 障害物除去 土砂搬送 土砂混合装置 石炭灰混合材料 振動フルイ ベルトコンベア 連続ミキサ 搬出用バックホ 図-2.21 盛土・中仕切り堤に適用する石炭灰混合材料(塑性材)の製造・搬出の流れ 29 ⑥施工方法:ダンプトラックにより搬送された石炭灰混合材料(塑性材)を施工位置にダンピング し、バックホウによって所定の位置に投入・撒き出しを行う。図-2.22 に、盛土・中仕切り築堤施 工方法の手順を示す。 ①石炭灰混合材料製造 ホイールローダ ②材料運搬 ③三次盛り土 嵩上げ・舗装 ④二次盛り土 撒き出し・拡幅造成 仮置き石炭灰混合材料 ダンプトラック ⑤一次盛り土 海中投入・撒き出し バックホウ 海面 図-2.22 盛土・中仕切り築堤施工の手順 ⑦施工写真 写真-2.15 混合機に土砂・石炭灰・添加材投入状況 写真-2.16 製造された石炭灰混合材料(塑性材) 写真-2.17 石炭灰混合材料(塑性材)のダンプ運搬・バックホウによる築堤撒き出し状況 30 2.4 地盤改良材料への適用 2.4.1 石炭灰混合材料(CDM-FGC材) CDM-FGC材とは、深層混合処理工法として広く採用されているCDM工法にFGC(Fフライ アッシュ+G石膏+Cセメント)をセメントの代替として注入・混合するものである。 (1) 適用イメージと適用時のメリット CDM-FGC材を用いた深層混合処理杭の改良体は低強度の山留め改良躯体が構築できるので、 掘削 面と山留め躯体を加工掘削することにより、構造物と一体化して利用する。また山留め材として使用さ れる鋼矢板や鋼管杭の撤去・埋め戻しなどを必要としないため、土留め壁・底盤・低強度基礎地盤改良 の目的で適用される。低強度地盤改良を施工することにより、改良地盤の掘削や鋼管杭・鋼矢板等の施 工が可能である。図-2.23 に地盤改良体として山留め・底盤改良に適用されたイメージ図を示す。 山留地盤改良杭 崩壊保護地盤 土留杭・底盤改良後 開削・掘削する 底盤改良杭 図-2.23 山留め・底盤改良適用イメージ図 (2) 適用可能な製造方法 フライアッシュとセメントの配合比率は改良柱体の目標強度によって変動する。 (低強度改良ほどフラ イアッシュの配合量が多くなる)配合製造は火力発電所内または施工現場内でフライアッシュとセメン トを混合し製造する。材料の製造方法の詳細については施工事例で述べる。 (3) 設計方法 適用する地盤改良工の設計基準は「港湾の施設の技術上の基準・同解説」および「港湾工事共通仕様 書」を準拠して、港湾工事の特性および使用する石炭灰混合材料(CDM-FGC材)の品質や特性、供 給量および環境への影響を十分検討する必要がある。特に「港湾工事共通仕様書」に関しては各都道府 県で独自に策定しているところもあり、設計段階においてこれらに準拠することが望ましい。 (4) 施工方法 山留めや底盤改良に適用する地盤改良は石炭灰混合材料(CDM-FGC材)を供給し処理機先端に圧 送注入・攪拌して軟弱土を固化し土留壁や底盤改良を行う。図-2.24 に、目的に応じた設計から地盤改良 工の施工方法をフロー図で示す。 31 石炭火力発電所等 石炭灰 配合試験 石炭灰混合材料配合検討 水、セメント、 添加材料 石炭灰混合材料 NO 受入基準を 満足するか? 事業者立会 製造者確認 施工者確認 Y ES 運搬 港湾工事施工場所 施 工 石炭灰混合材料の製造 受入基準:品質の確認 事業者立会 施工者確認 施 工 図-2.24 地盤改良工への適用における配合計画から施工までの流れ (5) 品質管理方法 現場にて配合設計に基づき石炭灰計量、セメント計量、水計量を行い攪拌混合してアジテータに一時 貯留する。品質確認は印字データの確認で設定どおりの配合数量であるかチェックする。また、アジテ ータに貯留された石炭灰混合材料(CDM-FGC材)が設定された規定値範囲の密度であるか計測し、 含有セメント量を確認する。使用器具はマッドバランスや密度計などでスラリー密度を計測する。計測 頻度は施工開始前に実施する。 目標強度の品質最終確認はチェックボーリングにて 1~2ケ所程度実施する。 (6)適用事例 ①施工概要:適用された工事は低強度で安定した地盤改良を目的に、石炭灰混合材料(CDM-FGC 材)を使用して深層混合処理工事を行い、上部H鋼や鋼管杭を打ち込み可能な強度で地盤改良を行い、 鋼杭施工後は改良土を掘削撤去し支保鋼材や鋼管杭を残す。 ②施工場所:神奈川県磯子火力発電所増設区域 下部の底盤地盤改良は構造物基礎として高強度改良とした。図-2.25 に、施工標準断面図を示す。 32 CDM-FGC深層混合処理区域 55.86m 切梁H鋼 21.10m 石炭灰混合材料(地盤改良) 石炭灰混合材料(地盤改良) 土留め鋼管杭 切梁支保H鋼 図-2.25 施工標準断面図 ③石炭灰混合材料(CDM-FGC材):フライアッシュ+水+セメント+(石膏) ④製造:施工現場にて製造する。火力発電所にてフライアッシュとセメントを配合して現場に搬出す る場合は、有価物として搬送するので廃棄物処理法には抵触しないで一般道路を運搬し、施工現場に 搬入することができる。火力発電所から離れた場所で施工する場合には、フライアッシュ、石膏、セ メントを廃棄物処理施設の許可を受けた現場に運搬し、石炭灰混合材料(CDM-FGC材)を製造 しなければならない。フライアッシュとセメントの配合比率は事前に採取した現地土砂を持いた室内 配合試験にて目標強度を確認した配合比とする。一般的に目標強度 600KN/m2 ではフライアッシュ重 量比で 7%前後を添加する。強度変化は対象土砂の性状やフライアッシュの性状によって変動するの で、室内配合試験によって発現強度を確認してセメント添加量やフライアッシュ添加量を決定する。 ⑤運搬方法:事前混合した場合にはジェットパック車で現場に設置したフライアッシュ・セメント混合 材料備蓄サイロに搬送。現地で混合する場合はジェットパック車でフライアッシュをフライアッ シュ備蓄サイロに、セメントはローリー車でセメント備蓄サイロに、石膏を添加する場合には石膏備 蓄サイロに搬入し、スラリープラントにて設計配合量を各々計量して投入し、水(海水)を混合して 攪拌し、石炭灰混合材料(CDM-FGC材)を製造する。図-2.26 に、地盤改良に適用する石炭灰 混合材料(CDM-FGC材)の製造・搬出の流れを示す。 ①火力発電所等 ②運搬 フライアッシュサイロ ③CDM-FGC材製造 フライアッシュ生産 CDM-FGC材料 製造装置 ジェットパック車 水タンク 図-2.26 ④圧送 ミキサー セメントサイロ アジテータ スラリー圧送 グラウトポンプ CDM施工機へ 供給 地盤改良に適用する石炭灰混合材料(CDM-FGC材)の製造・搬出フロー図 33 ⑥施工方法:製造されたCDM-FGC材は CDM-FGC 処理機の先端にグラウトポンプで圧送され、図 -2.27 に示す標準的な CDM-FGC 深層混合処理混合処理工法施工順序図の手順に従い地盤改良材として 注入される。 CDM-FGC工法施工順序図 ①位置決め ②地盤改良作業 CDM-FGC 処理機を施工 位置に移動 する 石炭灰混合材料 をCDM-FGC 処理機の先端か ら吐出しながら 貫入・攪拌し、 原地盤を固化 改良する ③先端処理作業 処理機先端が所定 深度に到達し、 コラムの先端部を 補強処理し処理機 の引抜を開始する ④引抜処理作業 CDM-FGC 処理機を攪拌し ながら引抜処理 作業を行う ⑤移動 CDM-FGC 処理機を引抜 完了し、次の 施工位置に 移動する 改良完了 改良予定杭 先端処理 図-2.27 標準的な CDM-FGC 深層混合処理工法施工順序図 ⑦施工写真 写真-2.18 CDM-FGC 処理機の地盤改良状況 写真-2.19 地盤改良後、切梁施工し底盤まで掘削 撤去している状況 34 第3章 石炭灰混合材料の製造方法 前章で述べたように,石炭灰混合材料は従来使用してきた材料の有効な代替材料として幅広く用いる ことができ,現在までに適用用途毎に数多くの混合材料が開発されている。本章では,本ガイドライン において対象とする石炭灰混合材料の製造方法,その製造された石炭灰混合材料の基本的物性について 紹介する。 3.1 石炭灰混合材料の基本的物性 石炭灰混合材料としては,第 1 章 5 節で述べた土砂代替品やスラリー材が代表的なものであるが,そ の他にも材料種別毎に列記すれば,セメント混合材料,土砂混合材料,スラリー材料などがある。各種 石炭灰混合材料の基本物性を表-3.1 に示す。 (1) 密 度 混合材料の種別にも依り,また,想定している用途により異なるが,単位体積重量が概ね 2g/cm3 以下であり,自然の土より軽量である。 (2) 強 度 密度同様,混合材料や用途により変わるが,圧縮強さやコーン指数は自然の土と同等程度である。 (3) 土質定数 セメント混合材料については,せん断抵抗角が概ね 30°,粘着力を考慮する場合には 30kN/m2 程 度あることから,砂礫質材料と粘性質材料の特徴を併せ持っていると考えられる。 土砂混合材料については,主として含水比調整に用いられ,最適岩水比は 20~30%となっている。 スラリーについては,主として施工性改善あるいは流動性改善のために用いられ,土質定数は公 表されていないが,施工後は周囲の材料との一体性が要求されるため,施工の都度,目標値が決め られている。 (4) 透水性 混合材料や用途にも依るが,1×10-2 ~10-5cm/s であり,砂~微細砂と同程度である。 (5) 施工性 混合材料や用途にも依るが,石炭灰を使用しない従来材料と同様、あるいはより良好な施工性を 有する。 (6) 環境安全性 重金属等の有害物質の溶出試験および含有量試験の結果によれば,溶出量基準および含有量基準 にそれぞれ適合している。また,水質環境にも悪影響を及ぼさないことも確認されている。 35 36 ○透水係数 1x10-4cm/s以上 ○通常の施工手順および建設機 械で施工が可能 ○通常の下層路盤材と施工性は ○粉塵量の発生が少ない 同程度 ○締め固めた後の長期強度は過 大ではなく、容易に掘削が可能 ○透水係数 1x10-3~10-5 cm/s ○透水係数 1x10-3cm/s以上 程度で微細砂と同等 ○透水係数 1x10-4~10-5 cm/s ○圧縮性:透水性があり埋立てと ○トラフィカビリティー:コーン貫入 同時に沈下が収束する ○在来のSCP工法と同様な方法 ○トラフィカビリティー:陸上部の 抵抗は1,200N/m2以上 で施工できる。 2 コーン貫入抵抗は1,200N/m 以上 ○粉 塵:粉塵の発生は少ない ○粉 塵:粉塵の発生は少ない 透水性 施工性 なお,本品には粒度がシルト(ML) 程度の「コアソイルQ・Sタイプ」もあ ○開発者 る(下記資料参照)。 沖縄電力㈱,日本国土開発㈱ ○出典 ○開発者 港湾関連民間技術の確認審 九州電力㈱ 査・評価報告書 第06003号 石炭 ○出典 灰を有効利用した埋立て材料「頑 建設技術審査証明報告書 土 丈土破砕材」,財団法人 沿岸技術 木系材料・製品・技術(建技審証 研究センター,2006.11 第0316号)石炭灰を利用した人工 ほか 地盤材料「コアソイルQ」,(財)土 木研究センター,2003.12 その他 ○裏込め材, ○埋立て材 ○裏込め材, ○埋立て材 工事用 材 料 ○開発者 中部電力㈱ ○出典 港湾関連民間技術の確認審 査・評価 評価証説明資料 技術 名:「SCP工法の砂代替材として粒 状化した石炭灰を活用するリサイ クル技術」第01001号 (財)沿岸 開発技術研究センター 2001.3 ○地盤改良材(SCP) ○粒径 5~20mm ○裏込め材, ○埋立て材 ○内部摩擦角 35°以上 ○95%修正CBR 20%以上 (参考)粘着力 約48kN/m2 ○透水係数 1x10-2~10-4cm/s程度 ○せん断抵抗角 35°程度以上 ○粘着力 50kN/m2以上 ○修正CBR 20%以上 ○圧縮強さ (材齢90日) 1000kN/m2 程度以下 ・コーン指数 (材齢90日)(参考) 15,000kN/m2 程度以下 ○粒 度 礫質土 ○細粒分含有率 15%未満 ○粒子の乾燥密度 1.3~1.6g/cm3 石炭灰+セメント+水 固化体造粒材 (灰テックビーズ) ○開発者 中国電力㈱ ○出典 エネルギア・エコ・マテリア㈱, Hiビーズ,同社ホームページ参 照 ○地盤改良材(SCP) ○開発者 四国電力㈱ ○出典 建設技術審査証明報告書 土 木系材料・製品・技術(建技審証 第0414号)石炭灰を利用した粒状 地盤材料「灰テックビーズ」,(財) 土木研究センター,2009.11更新 ○裏込め材, ○埋立て材 ○SCP(高置換)材として十分適 ○通常の土質材料と同様の施工 用可能な材料である。 ○SCP材として使用する場合の設 性を有する。 計値と管理値を提案している。 ○透水係数 1.34x10-3cm/s(6Ec) ○内部摩擦角 47.6°(6Ec) (参 考) 粒子強度 ・圧潰強度 2 (7日) 1.069MN/m (28日)1.606MN/m2 (参 考) 粒子強度 ・圧縮強度(参考) 118~164kN/m2 ・コーン指数(参考) 4.13~8.26MN/m2 石炭灰+セメント +ベントナイト+水 固化体造粒材 (Hiビーズ) ○形状 ほぼ球状 ○自然含水比 11.6% ○粒の湿潤密度 1.747g/cm3 ○吸水率 16.4% ○スレーキング率 0.21% ○平均粒径 7.5mm ) ○粒度分布は砂質土と同等 ○最大粒径 4~50mm ○平均粒径 0.3~2mm ○礫分含有率 15~50% ○細粒分含有率 30%以下 ○粒子密度 2.4g/cm3以下 石炭灰+セメント+水+添加材 ○開発者 宇部興産㈱,大成建設㈱,電 源開発㈱ ○出典 建設技術審査証明報告書 土 木系材料・製品・技術(建技審証 第0410号)石炭灰を用いた人工地 盤材料「ゼットサンド」,財団法人 ○出荷時に破砕材に結合材(石炭 土木研究センター,2004.11 灰・セメント・石膏)と水を添加した ものが「アッシュロバン」。 ○開発者 中部電力㈱ ○出典 建設技術審査証明報告書 土 木系材料技術(技審証 第0902 号)石炭灰を用いた下層路盤材 「アッシュロバン」,(財)土木研究 センター,1997.7 ○裏込め材, ○埋立て材 ○圧縮強さ (材齢28日) 1,800kN/m2以上 ○最大粒径 40mm ○最大乾燥密度 1.20~1.50g/cm3 ○単位容積重量 (Wet) 1.25±0.15g/cm3 (Dry) 1.05±0.1g/cm3 ○最適含水比 20~30% 石炭灰+セメント+二水石膏+水 固化体造粒材 (ゼットサンド) ○内部摩擦角 30°以上 ○粘着力 5 kN/m2 以上 ○内部摩擦角 35°以上 ○CBR 20%以上 ○膨張比 1%以下(良好な状態) ○粒度 細粒分混じり砂質礫 (GS-F) 石炭灰+セメント+水 固化体破砕材 (SCP工法用砂代替材) ○せん断抵抗角 30°以上 ○修正CBR 40%以上 ○液状化抵抗比 Ri20≒0.3 1 土質定数 の 圧縮強度 そ ○長期強度 1,000kN/m2 程度以下 ( ○圧縮強さ (材齢28日) 300~800kN/m2 覧 ○湿潤密度 1.55g/cm3以下 (乾燥密度 1.0~1.2g/cm3以下) 一 物 性 性 ○粒度 細粒分混じりの土質材料 ○土粒子密度 2.3~2.4 g/cm3 ○最大乾燥密度 1.25g/cm3以下 ○強熱減量 10%以下 物 石炭灰+セメント+水 本 石炭灰+セメント+水 +スラグ,石膏 基 主原料 の 固化体破砕材 (アッシュロバン) 材 料 破 砕 材 ・ 造 粒 材 合 固化体破砕材 (コアソイルQ・Gタイプ) 混 固化体破砕材 (頑丈土) 灰 技術の 種 類 石 炭 混合材料 種 別 表-3.1 37 ○一軸圧縮強さ (材齢28日) 300~1,000kN/m2以上 圧縮強度 料 の 基 本 物 性 一 覧 ( ○事前処理(振動フルイ)により障 害物除去と最大粒径50mm以下 ○フライアッシュの配合比で密度 変動 ○単位容積重量 1.6~2.0g/cm3 ○最適含水比 20~30% ○事前処理(振動フルイ)により障 害物除去と最大粒径50mm以下 ○フライアッシュの配合比で密度 変動 ○単位容積重量 1.6~2.0g/cm3 ○最適含水比 20~30% -3 -5 ○裏込め材 ○出典 九州電力㈱ホームページ他 ○裏込め材 ○出典 北海道電力㈱ホームページ 施工性 工事用 材 料 その他 ○開発者 電源開発株式会社 ○裏込め材 -5 ○裏込め材, ○埋立て材 ○適正な含水調整で水中不分離 性能を発揮させ、埋戻しや裏込め 撒きだし施工で汚濁低減が可能と なる。 -3 ○透水係数 1x10 ~10 cm/s ○開発者 国土交通省北海道開発局, ○出典 北海道電力株式会社, 石炭灰を利用した水中土工材 東洋建設株式会社 の水中不分離性と力学特性,電力 土木№295,2001.9 なお,本品には仮置き脱水土砂を 含む ○裏込め材, ○埋立て材 ○流動性に優れポンプ打設が容 易(水中打設可能) ○トラフィカビリティー:陸上部の ○流動性に優れ、狭隘な箇所での ○適正な含水調整で埋戻しや裏 施工性が良好 込め施工が容易となる。 2 コーン貫入抵抗は1,200N/m 以上 (材齢3日) 8 ○透水係数 1x10- cm/sオーダー ○透水係数 1x10 ~10 cm/s ○一軸圧縮強さ (材齢28日) ○一軸圧縮強さ (材齢28日) 300~20,000kN/m2以上 300~1,000kN/m2以上 ○一軸圧縮強さ (材齢28日) 300~1,000kN/m2以上 石炭灰+セメント+浚渫土 石炭灰+セメント+土砂 ○粒度 礫分0%,砂分5%程度, シルト分80%程度,粘土分15%程度 3 ○土粒子密度 2.2 g/cm3 程度 ○単位容積重量 1.6~1.7g/cm ○スランプ 数cm~20cm 3 ○湿潤密度 1.6g/cm 程度 3 ○乾燥密度 1.2g/cm 程度 ○一軸圧縮強さ (材齢28日) 1,000kN/m2以上 ) 浚渫土,セメント系改良土 (種類:砂質土・シルト系) 2 石炭灰+セメント+水 の セメント系改良土 (種類:現場発生土) そ スラリー (フライアッシュモルタル) ス ラ リ ー ・ 塑 性 材 材 スラリー (FCスラリー) 合 石炭灰+セメント+水 混 ○フライアッシュを利用すること で,ベアリング効果により流動性 が高く,自己充填性を有する。 ○セルフレベリングするので,仕 上げ施工が不要。 透水性 土質定数 ○フロー値 160~240mm ○単位体積重量 3 1.6~1.9t/m 程度 石炭灰+セメント+水 主原料 灰 物 性 スラリー (Fスラリー) 石 炭 技術の 種 類 混合材料 種 別 表-3.1 3.2 石炭灰混合材料(破砕材・造粒材) 石炭灰,セメント,水を主原料とし,これに石膏等の添加材料等を加えて製造する石炭灰混合材料は, 固化体破砕材と固化体造粒材に大別される。以下に,それぞれの代表例の製造法,基本物性を示す。 3.2.1 固化体破砕材 (1) 製造法の概要 固化体破砕材の代表例, 「頑丈土」の製造方法の概略を図-3.1 に,製品を写真-3.1 に示す。 「頑丈土」は,石炭灰に水,セメント,高炉スラグ微粉末や石膏などの添加剤を混合したものを 締固めて固化させ,後に掘削・破砕して製造する。また,セメント固化による強度増加と有害物質 の不溶化を目指したものである。 フライアッシュ セメント 添加剤(石膏) 計量 計量 計量 運搬 重力式混合 締固め・養生 掘削・破砕 運搬 打設 水 図-3.1 固化体破砕材(頑丈土)の製造フロー 写真-3.1 固化体破砕材(頑丈土)と製造プラント また,頑丈土の標準的な配合例を表-3.2 に示す。 表-3.2 固化体破砕材(頑丈土)の配合例(質量比)2) 石 炭 100 灰 高炉セメントB種 水 7 ~ 9 30 ~ 40 38 石 膏 0 ~ 10 (2) 基本的物性 固化体破砕材(頑丈土,海域使用の場合)の代表的な物性は表-3.3 に示すとおりである。 「頑丈土」は軽量および液状化し難い材料特性を有するため,港湾構造物に使用した場合,地盤 沈下減少,地盤改良の省略あるいはその範囲の縮小および構造物のスリム化などの特徴がある 2)。 表-3.3 固化体破砕材(頑丈土)の物性・性能 2) 粒 度 細粒分混じり土質材料~砂質土の粒度範囲 最大粒径は調整可能 物 土粒子密度 2.3~2.4g/cm3 性 最大乾燥密度 1.25g/cm3 以下 強熱減量 10%以下 透水係数 1×10-4~10-5cm/s 強 せん断抵抗角 30°以上 度 修正CBR 40%以上 液状化抵抗比 Ri20≒0.3 施 圧縮性 透水性があり埋立てと同時に沈下が収束する 工 トラフィカビリティー 陸上部のコーン貫入抵抗は 1,200kN/m2 以上 特 性 性 粉 塵 粉塵の発生は少ない (3) 同種品 固化体破砕材の同種品に,表-3.1 に示したコアソイルQ(Gタイプ,Sタイプ)がある。 S タイプ G タイプ 写真-3.2 固化体破砕材(コアソイルQ) 39 3.2.2 固化体造粒材 (1) 製造法の概要 固化体造粒材の代表例, 「ゼットサンド」の製造方法の概略を図-3.2 に,製品を写真-3.3 に示す。 「ゼットサンド」は石炭灰(フライアッシュ)に,セメント,添加材および水を加え造粒して製造 する。また,近年枯渇しつつある天然砂質土の代替材として適用することにより,資源の有効活用 と環境保全を図るものである。 フライアッシュ セメント 添加材 水+溶出抑制剤 計量 計量 計量 計量 攪拌・造粒 養生 運搬 保管 打設 図-3.2 固化体造粒材(ゼットサンド)の製造フロー 写真-3.3 固化体造粒材(ゼットサンド)と製造プラント ゼットサンドの代表的な配合例を表-3.4 に示す。 表-3.4 固化体造粒材(ゼットサンド)の配合例(質量比)4) 石 炭 灰 77 ~ 92 セメント 添加材(造粒助剤) 水 溶出抑制剤 3 ~ 8 5 ~ 15 約 25 ~ 40 0 ~ 1.0 程度 (2) 基本的物性 固化体造粒材(ゼットサンド)の物性・性能は表-3.5 に示すとおりである。 40 表-3.5 固化体造粒材(ゼットサンド)の物性・性能 4) 試 験 項 目 測 定 値 管 理 基 準 値 試 験 方 法 最大粒径 26.5~9.5 4~50mm JIS A 1204 平均粒径 1.46~0.35 0.3~2mm JIS A 1204 礫分含有率 39.7~20.9 15~50% JIS A 1204 細粒分含有率 25.8~5.1 30%以下 JIS A 1204 粒子密度 2.323~2.308 2.4g/cm3 以下 JIS A 1202 透水係数 1.0×10-3~1.4×10-3 1.0×10-4cm/s 以下 JIS A 1218 内部摩擦角 40.3~39.0 35°以下 JGS 0523 95%修正CBR 41.0~33.5 20%以上 JIS A 1211 (3) 同種品 固化体造粒材の同種品に,表-3.1 に示したSCP工法用砂代替材,Hiビーズ,灰テックビーズ 等がある。また,石炭灰固化物(破砕材)もある。 発電所貯灰サイロ 写真-3.4 固化体造粒材(灰テックビーズ)と製造プラント 41 製造プラント 3.3 石炭灰混合材料(スラリー・塑性材) 石炭灰,セメント,水,現地発生土などを主原料とし,これに添加材料等を加えて製造する石炭灰混 合材料は,スラリーと塑性材に大別される。以下に,それぞれの代表例の製造法,基本物性を示す。 3.3.1 スラリー (1) 製造法の概要 石炭灰スラリーは,フライアッシュにセメントを少量添加し,水を加えてスラリー状にしたもの である。特徴としては,石炭灰スラリーが硬化して固化体となり,構造物に対する背面土圧が低減 され安定性が向上する。 製造上の特徴は,重力式混合プラントを使用した点である。具体的には,重力式混合プラントに 石炭灰とセメントをベルトフィーダなどにより定量・連続供給し,重力式混合装置により自由落下 させ,装置内の衝撃ダンパーとせん断バーによって粉体として混合するもので,混合した粉体を撹 拌用鋼製水槽に投入し,水を加え,浅層混合用撹拌機(ツインヘッダー)により撹拌しスラリー化 させ連続して製造した 5)。 スラリー材料の代表例, 「FCスラリー」の製造方法の概略を図-3.3 に示す。 フライアッシュ セメント 水 計量 計量 計量 重力式混合 撹拌・スラリー化 圧送 図-3.3 スラリー材料(FCスラリー)の製造フロー 写真-3.5 スラリー材料(FCスラリー) 42 施工 FCスラリーの代表的な配合例を表-3.6 に示す。 表-3.6 スラリー材料(FCスラリー)の配合例 配合量(kg/m3) セメント 水粉体比 石炭灰 セメント 水 混合量 F C W C/F(%) 955 57 557 6.0 W/(C+F)(%) シリンダ フロー管理 55 値(㎜) 250±30 (2) 基本的物性 スラリー材料(FCスラリー)の代表的な物性・性能は表-3.7 に示すとおりである。 表-3.7 スラリー材料(FCスラリー)の物性・性能 項 目 特 性 値 湿潤密度 1.6 g/cm3 程度 乾燥密度 1.2 g/cm3 程度 コーン貫入抵抗(材齢 3 日) 1,200 kN/m2 以上 圧縮強さ(材齢 28 日) 1,000 kN/m2 以上 (3) 同種品 スラリー材料の同種品に,表-3.1 に示したFスラリーがある。また,先に第 2 章で紹介したものも ある。 43 3.3.2 塑性材 (1) 製造法の概要 浚渫土を改良した土砂混合材料の一例として,海上築堤の施工事例 6,7)がある。この改良工法は, 高含水の浚渫土砂や汚泥に石炭灰を添加し,石炭灰の吸収性と硬化特性を利用して土砂を最適な状 態に調整するもの。搬出・運搬がベルトコンベヤーやダンプトラックで可能となり,施工がブルド ーザーやバックホウ等の建設機械で可能であり,特殊な機会を必要としない。また,改良土として の強度が必要な場合には目標強度に応じて添加剤(セメント等)を適時混合することで可能となる。 土砂混合材料(塑性材)の製造方法の概略を図-3.4 に,浚渫土投入・混練状況を写真-3.6 に示 す。 フライアッシュ セメント 浚渫土 水(海水) 計量 計量 計量 計量 運搬 混合 打設 図-3.4 塑性材の製造フロー 写真-3.6 浚渫土投入・混練状況 土砂混合材料(浚渫土)の代表的な配合例を表-3.8 に示す。 表-3.8 塑性材の配合例 土砂(浚渫土) フライアッシュ セメント 海水 (kg/m3) (kg/m3) (kg/m3) (kg/m3) 1170 ~ 1220 300 90 ~ 120 412 ~ 456 44 (2) 基本的物性 塑性材の代表的な物性値は表-3.9 に示すとおりである。 表-3.9 塑性材の物性・性能 項 目 特 性 値 粘着力(N/mm2) 0.37 内部摩擦角(φ) 26.4 圧縮強さ(N/mm2) 1.39 透水係数(室内,m/s) 1 ~ 9 ×10-7 参考資料 1) 民間開発建設技術の技術審査・証明事業認定規定に基づく土木系材料技術・技術審査証明 (技審証 第 1220 号) 報告書 石炭灰を利用した人工地盤材料「頑丈土破砕材」,財団法人 土木研究セン ター,2000,12 2) 港湾関連民間技術の確認審査・評価報告書 第 06003 号 石炭灰を有効利用した埋立て材料「頑丈土破 砕材」,財団法人 沿岸技術研究センター,2006.11 3) 日本国土開発㈱ http://www.n-kokudo.co.jp/tec_civil/tough_soil.html 4) 建設技術審査証明報告書 土木系材料・製品・技術(建技審証 第 0401 号) 石炭灰を用いた人工 地盤材料「ゼットサンド」,財団法人 土木研究センター,2004,11 5) 前川文誓,飯干信幸,小川信行:塩害及び化学的侵食により劣化した護岸(直立型消波ブロック式) の補修対策,電力土木,№303,pp.66-70,2003.1 6) 小林仁,田中則和,高橋昌之:石炭灰を用いた水中硬化体の開発,電力土木,№284,pp.9-13,1999.11 7) 水口洋,田中則和,下田哲司,北原繁志:石炭灰を用いた水中硬化体の開発(その2),電力土木, №288,pp.59-63,2000.7 45 第 4 章 環境安全品質及び検査方法 4.1 はじめに 石炭灰混合材料中には、環境安全性において配慮すべき微量物質を含む場合がある。これまで、石炭 灰やその混合材料の環境影響は数多く検討が重ねられており(参考資料 1.3 及び 1.4 参照) 、十分に制 御が可能なものであることが把握されている。そこで石炭灰混合材料の利用を進めるにあたって、前章 までで示した物理的性質や粒度などの材料としての品質とともに、環境安全性に配慮するための品質 (以下、 「環境安全品質」という。)とその検査方法を、国内外の技術面や法令面からの動向を踏まえて、 現実的かつ合理的な観点から定めることとした。 なお、本章で定める内容は平成 13 年環境省通知「土壌の汚染に係る環境基準についての一部改正に ついて」 (環水土第 44 号)にある「再利用物の利用の促進と安全性確保の観点から、再利用物の利用実 態に即したリサイクルガイドライン」を目指すものであるとともに、石炭灰と同様の循環資材であるス ラグ類に対して日本工業規格において導入が検討されている環境安全品質検査方法(仮称)と共通の考 え方に基づくものである。 4.2 用語及び定義 特に本章で用いる用語及び定義は、次による。 (1) 環境安全品質 影響を受ける周辺環境が、当該の環境基準やその達成のために適用される対策基準等(以下、「環境 基準等」という。)を達成するために、石炭灰混合材料に配慮が要求される品質で、溶出量の具体的数 値(基準値)として示される。 (2) 環境安全形式検査 石炭灰混合材料の製造工場等で生産された石炭灰混合材料が、環境安全品質を満足するかどうかを判 定するための検査。 (3) 環境安全受渡検査 実際に利用者へ受渡される又は実際に施工されるものと同じロットの石炭灰混合材料を用いて、環境 安全品質を満足するかどうかを判定するための検査。 46 4.3 基本的な考え方 循環資材が建設工事に利用される際には、その出荷から、施工、利用を経て、利用終了後の再利用又 は処分も含めたすべてのライフサイクルにおいて、影響を受ける大気、土壌、地下水、海水などの環境 媒体が当該の環境基準等を満足できるように配慮しなければならない。 そこで、次の考え方と手順によって石炭灰混合材料の環境安全品質を保証することとする。まず、ラ イフサイクルの中で「最も配慮すべき曝露環境」に注目し、その曝露環境における環境媒体が環境基準 等を満足できるように環境安全品質を規定する。そして、その曝露環境における石炭灰混合材料の状態 を模擬した試料調製方法、及び、石炭灰混合材料からの微量物質の放出経路を踏まえた検査項目を規定 する。さらに、検査の実施は「環境安全形式検査」と「環境安全受渡検査」によるものとし、「環境安 全形式検査」では石炭灰混合材料が環境安全品質を満足することを出荷前や施工前に確認し、これと同 じ製造条件、配合条件の石炭灰混合材料について、製品の受渡時や施工完了後の受渡までに、「環境安 全受渡検査」を行う。なお、両検査は、それぞれ適切な実施者が行うこととする。 ここで、本ガイドラインの適用範囲においては、港湾施設の利用は数十年規模の長期的(半永久的) なものであること、自治体等の港湾施設管理者は、使用した石炭灰混合材料の検査記録や施工記録を残 すこととしている。また、仮に撤去された場合も海水に長期間曝露され塩濃度が高い等の理由のために 他の用途への再利用は難しく、適切に最終処分がなされることとなる。以上の検討に基づき、港湾施設 へ利用される石炭灰混合材料の「最も配慮すべき曝露環境」は,港湾施設の利用環境そのものとして設 定する。したがって、石炭灰混合材料を港湾施設へ利用後に掘削・破砕等を経ての再利用は想定しない ことから、試料調製方法は、破砕材・造粒材の場合は利用有姿を基本とし、スラリー・塑性材の場合は 成形体を作製することとする。次に、微量物質の放出経路は、本ガイドラインの適用範囲において石炭 灰混合材料は施工完了後に表面に露出しないことから、粉塵飛散等による直接摂取の経路は想定せず、 雨水浸透水や海水への溶出経路のみを想定する。以上を踏まえて、試験方法は JIS K 0058-1 の 5.(利 用有姿による溶出試験)1)を適用する。また、石炭灰が石炭の燃焼後の残渣であることから、評価対象 物質は無機物質に限定する。 以上の考え方を図-4.1 に、試験の流れを図-4.2 に、JIS K 0058-1 の 5.(利用有姿による溶出試験) の試験状況の写真を図-4.3 にそれぞれ示す。 47 石炭灰混合材料(破砕材・造粒材) 環境安全形式検査 石炭灰 48 ・雨水浸透水との接触 ・海水との接触 有姿による評価 (JIS K 0058-1の5.による) 港湾 利用時の環境 石炭灰混合材料(スラリー・塑性材 ) 石炭灰 ・雨水浸透水との接触 ・海水との接触 (2) スラリー・塑性材 供試体による評価 (JIS K 0058-1の5.による) 港湾 利用時の環境 (1) 破砕材・造粒材 環境安全受渡検査 溶出 放出イベント 溶出 放出イベント 図-4.1 石炭灰混合材料の港湾工事利用におけるライフサイクルと微量物質の放出イベント 環境安全形式検査 供試体による評価 (JIS K 0058-1の5.による) 港湾工事土砂代替材料 (埋立、裏込め、盛土等) 用途・製品 有姿による評価 (JIS K 0058-1の5.による) 港湾工事土砂代替材料 (埋立、裏込め、盛土等) 用途・製品 環境安全受渡検査 半永久 的利用 半永久 的利用 石炭火力発電所等 石炭灰 石炭灰混合材料 土砂、セメント、石こう、水 等 配合試験・形式検査 No 受入基準を 満足するか? Yes 施工・受渡検査 竣工 図-4.2 試験の流れ(図-1.4 再掲) 図-4.3 JIS K 0058-1 の 5. 利用有姿による試験 実施状況 49 4.4 環境安全品質基準 環境安全品質の検査項目と基準値は、次のとおりとする。ただし、港湾用の材料が備えるべき環境安 全品質に関する知見は今後の蓄積が必要なところであることから、当面の間の基準とする。新たな学術 的知見や関係基準に変更がなされた場合は、速やかに見直しを行うことが望ましい。 (1) 環境安全形式検査 表-4.1 の全項目とする。 (2) 環境安全受渡検査 表-4.1 のうち、六価クロム、ひ素、セレンは必ず測定し、他の項目の測定については環境安全形式検 査の結果をもとに石炭灰混合材料製造業者と利用者との合意の上、省略できるものとする。 表-4.1 環境安全品質基準 項目 溶出量 (mg/L) 参考 カドミウム 0.03 以下 鉛 0.03 以下 六価クロム 0.15 以下 ひ素 0.03 以下 水銀 0.0015 以下 セレン 0.03 以下 ふっ素 15 以下 ほう素 20 以下 環境安全品質基準の設定理由 本ガイドラインの適用範囲とする港湾施設の供用期間は数十年規模の長期的(半永久的)なものであ り、且つ、自治体等の港湾施設管理者は、使用した石炭灰混合材料の検査記録や施工記録を残すことと している。また、仮に撤去された場合、海水に長期間曝露され塩濃度が高い等の理由のために他の用途 への再利用は難しいと考えられる。以上のことから、石炭灰混合材料のライフサイクルを通した環境へ の影響を検討するに際して「最も配慮すべき曝露環境」は、再利用を考慮しない港湾施設としての利用 環境とした。 このような港湾施設に使用される石炭灰混合材料が備えるべき環境安全品質基準の参考となる値と して、日本工業標準調査会による「コンクリート用スラグ骨材に環境安全品質及びその検査方法を導入 するための指針」における港湾用途の環境安全品質基準がある。この基準の適用の対象となる港湾用途 50 とは、海水と接する環境で、かつ、再利用しない用途(岸壁、防波堤、砂防堤、護岸、堤防、突堤等が 挙げられる)に限定したものである。このような設備からの直接摂取、あるいは周囲の地下水の飲用は 考えられず、海水に対する影響を考慮する。港湾施設構造物の表面から海水への溶出による湾内の化学 物質濃度上昇を計算した結果からは、この基準を満たす資材による濃度上昇への寄与はほとんど無視で きるレベルであることが考察された。しかしながら,水産物への濃縮を介しての人への影響等の観点か ら科学的知見をさらに蓄積することの必要性を言及するとともに、港湾用途におけるコンクリート用ス ラグ骨材の当面の間の基準として環境安全品質基準(表-4.1 と同等の値)が設定された。基準値は、海 水による過大な希釈効果に期待せず、水底土砂基準や排水基準ではなく、より環境基準に近い値として フッ素とホウ素を除いて土壌環境基準の 3 倍が設定され、フッ素とホウ素については、海域でのバック グラウンド値が高く、水質環境基準が海域に対して適用されていないことも考慮して、土壌環境基準の 20 倍程度が設定されている。 本ガイドラインで対象とする港湾施設用石炭灰混合材料は、港湾内を回流する海水に対してはコンク リート製の擁壁等の構造物等を介し、また、上部は舗装や覆土を行い露出させないように施工すること としている。このような点からは、石炭灰混合材料はコンクリート用骨材よりも、港湾内の海水や地上 部への影響は小さい利用法であると考えられる。しかしながら、生態系保全や科学的知見の蓄積必要性 等の上記の観点を踏まえて,当面の基準として、コンクリート用骨材と同等レベルの基準として表-4.1 のように設定することとした。 なお、コンクリート用骨材の指針においても、港湾用途以外に関しては、人体への直接摂取等の可能 性を考慮して道路用骨材と同様に土壌環境基準と同値の基準の適用としており、このガイドラインにお いても資材を域外に持ち出す場合には、土壌環境基準の適用を検証することとしている。 4.5 検査方法 検査の流れを図 4-4 に示し、以下にその内容を説明する。 4.5.1 環境安全形式検査方法 (1) 試料の採取 石炭灰混合材料製造業者は、石炭灰混合材料の製造実態、品質管理実態等を考慮し、石炭灰混合材料 を代表し、かつ、再検査を実施する場合に備えて十分な量を確保できる合理的な採取方法を定め、それ に基づいて試料を採取する。 (2) 試料の調製 破砕材・造粒材の場合は、(a)による。スラリー・塑性材の場合は、(b)による。 (a) 破砕材・造粒材の場合 51 JIS K 0058 -1 の 5.(利用有姿による試験)の 5.3.2(試料の調製)の粉塊状の試料による。 (b) スラリー・塑性材の場合 50 mmφ×100 mm のモールドを用い、JIS A 1132(コンクリート強度試験用供試体の作り方)の 4.(圧 縮強度試験用供試体)によりキャッピングまでを行う。養生は封かん養生とし、7 日間の養生後に、検 液の調製を行う。再検査に備えて 3 本作製する。なお、現位置撹拌工法の場合は別途協議する。 (3) 検液の調製と分析 JIS K 0058 -1 の 5.による。ただし、5.3(試料)を除く。 4.5.2 環境安全受渡検査方法 (1) 試料の採取 現地で受渡しが行われる石炭灰混合材料を代表し、かつ、再検査を実施する場合に備えて十分な量を 確保できる合理的な採取方法を定め、それに基づいて試料を採取する。再検査を実施する場合に備えて 十分な量を確保しておかなければならない。 (2) 試料の調製 4.5.1 (2)と同様に行う。 (3) 検液の調製と分析 4.5.1 (3)と同様に行う。 52 環 境 安 全 形 式 検 査 試料の採取 試料の調製 検液の調製と分析 環境安全品質基準 合格 石炭灰混合材料製造箇所にて行う。 破砕材・造粒材の場合: JIS K 0058‐1の5.利用有姿試験 5.3.2 試料の調製 (粉塊状の試料) スラリー・塑性材の場合: JIS A1132の4.圧縮強度試験用供試体 封かん養生7日間 JIS K0058‐1の5. 全基準項目 同一の製造方法・配合条件のもの 環 境 安 全 受 渡 検 査 試料の採取 試料の調製 検液の調製と分析 環境安全品質基準 合格 受け渡される石炭灰混合材料を用いる。 破砕材・造粒材の場合: JIS K 0058‐1の5.利用有姿試験 5.3.2 試料の調製 (粉塊状の試料) スラリー・塑性材の場合: JIS A1132の4.圧縮強度試験用供試体 封かん養生7日間 JIS K0058‐1の5. 六価クロム,ひ素,セレンは必須。 図-4.4 検査の流れ 4.6 検査の運用方法 4.6.1 検査の実施者 環境安全形式検査及び環境安全受渡検査のいずれの場合も、次のとおりとする。 (1) 試料の採取は、製造者、又は発注仕様書や施工計画書等に定める者が実施する。 (2) 検液の調製は、石炭灰混合材料製造業者から委託を受けた ISO/IEC 17025(JIS Q17025)に適合し ている試験事業所又は計量証明事業所が実施する。 4.6.2 検査の頻度 (1) 環境安全形式検査 工事ごとに、施工前に実施することが望ましい。なお、以下に該当する場合は必ず実施する。 - 石炭灰混合材料の原料として供給される石炭灰の品質が大きく変化し、環境安全品質を定める 微量物質の増加が生じる可能性がある場合。 53 - 石炭灰混合材料製造設備の改良、製造プロセスの変更などの要因にともなって、環境安全品質 を定める微量物質の増加が生じる可能性がある場合。 - 配合条件を新たに定める都度。ただし、石炭灰と他の材料との配合率だけを変える場合で、石 炭灰の配合率を少なくするときは、省略できる。 (2) 環境安全受渡検査 受渡当事者間の協議によって定めた頻度で実施する。ロット単位で実施することが望ましい。なお、 ロットの大きさ及びサンプリングの個数は工事仕様に定める。 5000 m3 につき 1 回以上の頻度とすることが望ましい。 注記 4.6.3 検査結果の判定基準 環境安全形式検査及び環境安全受渡検査は、いずれも 4.4 の環境安全品質基準に適合したものを合格 とする。 4.6.4 再検査 4.6.3 で不合格となった場合は、材料等の検査で一般的に行われている次の方法で再検査を実施する。 すなわち、当該ロットについて、新たに 2 回の検査を行い、そのいずれもが適合した場合は、当該ロッ トは合格とする。新たに行った検査結果のうち、1 回以上不適合となった場合は、当該ロットは不合格 とする。 注記 上記の再検査のスキームは JIS Z8402-62)の 5.に示される考え方によるもので、JIS におけるスラ グ類の環境安全品質検査にも採用される予定である。 4.6.5 ロットの管理 石炭灰混合材料の品質を確保するために、石炭灰の成分を把握するとともに、石炭灰混合材料の製造 プロセスを管理し、環境安全品質をロットごとに管理できるようしなければならない。 4.6.6 検査の記録 検査記録には、次の事項を記載しなければならない。 a) 製造業者名、施工業者名又はそれぞれの略号 b) 製造年月日、製造年月、製造期間又はこれらのいずれかの略号 1) c) 製造番号又は製造ロット番号 2) 54 2) d) 使用材料及び配合 e) 検査年月日 f) 試験事業者名及び検査員名 g) 環境安全形式検査結果 h) 環境安全受渡検査結果 i) 検査結果の判定 注 1) 製造年月日又は製造年月の略号は一般に分かりやすい方法とする。 2) b)と c)はいずれか 1 つ以上を記載すればよい。 4.6.7 検査記録の報告及び保管 石炭灰混合材料の製造業者は、石炭灰混合材料の出荷時に(又は先だって)次の項目を記載した検査 報告書を利用者に提出しなければならない。製造業者は、その検査報告書(又は写し)を 5 年間保管し なければならない。また、利用者は、その検査報告書(又は写し)を、施設を供用している間、保管し なければならない。 a) 4.6.6 の a)~i)の検査記録 b) その他必要な事項 4.6.8 その他 施工後に長期モニタリングを行うことが望ましい。 参考文献 1) 日本工業標準調査会 JIS K0058-1 スラグ類の化学物質試験方法-第 1 部:溶出量試験 2) 日本工業標準調査会 JIS Z8402-6 測定方法及び測定結果の正確さ(真度及び精度)-第 6 部:正確さ に関する値の実用的な使い方 55 56 カドミウム 鉛 六価クロム 0.03 以下 0.0015 以下 環境安全品質基準値(mg/L) 環境安全受渡検査値(mg/L) 検査項目(○印のあるもの以外は 製造業者と利用者の合意による) 0.03 以下 0.03 以下 0.03 以下 ○ ○ 0.15 以下 砒素 六価クロム 0.0015 以下 水銀 試験事業者名及び検査員名 0.15 以下 検査年月日 鉛 0.03 以下 製造番号又は製造ロット番号 カドミウム 0.03 以下 水銀 製造年月日、製造年月、製造期間 又はこれらのいずれかの略号 使用材料及び配合 環境安全受渡検査 環境安全品質基準値(mg/L) 環境安全形式検査値(mg/L) 砒素 試験事業者名及び検査員名 検査年月日 検査項目(全項目) 製造番号又は製造ロット番号 年 製造年月日、製造年月、製造期間 又はこれらのいずれかの略号 使用材料及び配合 環境安全形式検査 施工業者 製造業者 平成 月 付表 石炭灰混合材料 環境安全形式検査・受渡検査成績書(例) 0.03 以下 ○ セレン 0.03 以下 セレン 日 15 以下 ふっ素 15 以下 ふっ素 20 以下 ほう素 20 以下 ほう素 参考資料 1.石炭灰 1.1 原炭について 石炭は、他の化石燃料と異なり、世界的に広く存在し、その可採年数は、石油、天然ガスに比べ長く、 また、カロリー単価で安価であることから、調達安定性、経済性に優れた資源として広く利用されている。 我が国は、一次エネルギー供給の 83%を占める化石燃料のほぼ 100%を海外に依存しており 1)、経済性に 優れた石炭の有効利用は、エネルギー政策上、極めて重要である。 参考図 1.1 に日本の国内炭・輸入炭供給量の推移を示す 2)。輸入量は 1970 年度には国内炭の生産量 を上回り、1988 年度には 1 億トンを突破し、2007 年度は 1 億 8,761 万トンと過去最高に達した。同年 度の石炭の輸入先はオーストラリアが 61.3%を占めており、インドネシア(17.8%)と中国(7.3%) からの輸入がこれに続く(参考図 1.2)2)。 (百万トン) 200 180 輸入炭 160 国内炭 140 120 100 80 60 40 20 0 65 70 75 80 85 90 95 00 05 07 (年度) 参考図 1.1 国内炭・輸入炭の供給量推移 (輸入一般炭に無煙炭を含む) (出典:2009 年エネルギー白書) カナダ 6.0% ベトナム 1.2% その他 0.5% ロシア 6.0% 中国 7.3% 総輸入量 インドネシア 1億8,761万トン 17.8% オーストラリア 61.3% 参考図 1.2 日本の石炭輸入元(2007 年) (出典:2009 年エネルギー白書) 世界の一般炭貿易構造は、アジア-オセアニア市場と欧州-アフリカ市場の2市場に大きく区分でき る。アジア-オセアニア地域の一般炭消費量が過去 10 年間で 2 倍に急拡大しており、2009 年の世界の一 57 般炭消費量の 65.6%を占有している 3)。我が国は世界の一般炭貿易量の 17%を占める輸人大国である。 近年、中国の経済成長により、同国の石炭消費量は急速な伸びを示しており、中国の今後の動向が、ア ジア-オセアニア市場、更には、我が国の一般炭調達にも大きく影響してくるものと考えられる。 (千トン) 100,000 (千トン) 200,000 180,000 90,000 160,000 80,000 140,000 70,000 120,000 60,000 100,000 50,000 80,000 40,000 60,000 30,000 40,000 20,000 20,000 10,000 0 65 70 75 80 85 90 95 00 総販売量(左軸) 電気業(右軸) 鉄鋼(右軸) 窯業土石(右軸) コークス(右軸) 0 05 07 (年度) 参考図 1.3 石炭の産業別販売量の推移 (出典:2009 年エネルギー白書) 電気業における石炭消費量は、1960 年代は 2,000 万トンを上回っていたが、石油への転換が進み 1975 年前後は 757 万トンにまで低下した。しかし、第2次石油ショック以降、石油代替政策の一環としての 石炭火力発電所の新設及び増設に伴い、石炭消費量は再び増加し、現在では最大の石炭消費者である(参 考図 1.3)。 石炭の需給がタイトになるなか、より安価な石炭を求め、インドネシアの亜瀝青炭を使用するなど、 これまでと同様、多くの種類の石炭が使用されるものと考えられる。 参考資料 1) Energy Balances of OECD Countries (2009) 2) 2009 年 エネルギー白書 3) Statistica1 Review of World Energy (2010) 58 1.2 石炭灰の種類 1.2.1 発生箇所による分類 石炭には5~30%程度の灰分が含有されているため,石炭火力発電所等で微粉炭を燃焼し たあとその残渣として石炭灰が発生する。石炭灰は、集じん装置で集められたフライアッシ ュとボイラ底部で回収される溶結状の石炭灰を砕いたクリンカとに大別される。 石炭灰の発生工程は、参考図1.4に示すとおりである。また,発生箇所による分類を行うと 次のとおりである。 (1)フライアッシュ 微粉炭燃焼ボイラの燃焼ガスから電気集じん器(EP)で採取された石炭灰。 フライアッシュを分級装置等により粒度調整を行った細かい石炭灰を「細粉」と言い、J IS規格のⅠ種またはⅡ種品となる。また、粗い石炭灰を「粗粉」と言い、JIS規格の Ⅳ種品となる。 (2)シンダ 微粉炭燃焼ボイラの燃焼ガスが空気予熱器・節炭器などを通過する際に落下採取された比 較的に粗い石炭灰。(注1) (3)クリンカ 微粉炭燃焼ボイラの炉底(クリンカホッパ)に落下採取された石炭灰。クリンカの処理方 式により、湿式法(冷却式)又は乾式法(風冷式)により冷却され、クリンカクラッシャ ー(粉砕機)により、粉砕されて粒度調整されて砂状または粉体状となる。(注2) ボイラ 節炭器 空気 電気集じん器 予熱器 ②シンダ 煙道 ①フ ライアッシュ クリンカ ホッパ ③クリンカ 分級器 回収原粉 サイロ 粉砕機 脱 水 または 細粉 粗粉 サイロ サイロ 非回収 原粉 サイロ 沈殿池 クリンカ 細粉 粗粉 参考図1.4 原粉 石炭灰の発生工程 59 59 原粉 (注1).シンダは総称してフライアッシュと呼ぶこともある。 (注2).クリンカはボトムアッシュと呼ぶこともある。 1.2.2 石炭灰の利用用途による分類 (1)コンクリート構造物等への利用は、コンクリート及びセメントの混和材として利用されて おり、「コンクリート用フライアッシュ(JIS A 6201)」規定されているⅠ種、Ⅱ種、Ⅲ種、 Ⅳ種の4種類の規格があり使用されている。 【フライアッシュを混和材として使用した場合の特徴】 ①長期強度の増進 セメントやコンクリートにフライアッシュを混合した場合、セメント中のカルシウムと フライアッシュ中の二酸化けい素によってポゾラン反応 ( ※ 1 ) が長期間継続するため、 セメントだけの場合よりも長期強度が増進し、耐久性に富んだ構造物ができる。従って セメントの使用量の節減を図ることができる。 ( ※ 1 ):ポゾラン反応 フライアッシュ中のガラス状の二酸化けい素(SiO2)や酸化アルミニウム(Al203) がセメントの水和によって発生される水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と徐々に反応 して、カルシウムシリケート水和物を生成する。この反応をポゾラン反応と呼び、生成 された水和物はセメントの水和生成物と類似した化合物となり、コンクリートの耐圧製、 耐久性を高める。 ②ワーカビリティ(作業性の向上) フライアッシュは微細な球形粒子を多く含み、これを混合することにより、コンクリー トの流動性が著しく改善されるので打設作業を効率的に施工できる。また、同一スラン プを得るための所要水量は、フライアッシュ代替量に比例して減少し、単位水量の低減 効果が得られる。 ③水密性の向上(塩害対策) 初期材齢では、水密性がやや低下するが、長期材齢の水密性は著しく増加する。これは、 ポゾラン反応で述べたカルシウムシリケート水和物の生成により、水密性を高める効果 によるものである。海洋コンクリートとして使用される場合は、水密性の向上より塩分 の浸透が減少し、塩害による構造物の崩壊を防止する効果も期待される。 ④水和熱の減少 フライアッシュを混和することでコンクリートの水和に伴う熱の発生を緩和するのに有 効である。この温度上昇は代替率が増加するほど温度の減少が見られ、マスコンクリー ト工事、特にダム工事に極めて効果を発揮している。 マスコンクリートの場合は、フライアッシュを用いないものに比べ7日材齢で6℃程度 温度上昇が少なくなる。 ⑤その他の効果 フライアッシュを用いる効果として「アルカリシリカ反応の抑制」、「乾燥収縮の減少」、 「化学抵抗性の向上」および「耐熱性の向上」等の効果がある。 60 60 【フライアッシュのJIS規格】 我が国では、1950年代前半にフライアッシュのセメント・コンクリート分野への利用技 術が確立され、1958年にJIS A 6201が制定された。以来、コンクリート用混和材として、 約半世紀に亘りモルタル及びコンクリートに使用されてきた。 また、混和材としてのフライアッシュの利用促進を図るため、複数品種のフライアッシ ュ の 供 給 体 制 を 整 え る こ と が 重 要 で あ る と し て 研 究 が 進 め ら れ た 結 果 、 1999年 の JIS A 6201改正では、表1.1に示すとおり、従来1種類であったコンクリート用フライアッシュ の品質が4種類に等級化された。 (品質区分) 【フライアッシュⅠ種】 流動性付与効果などの混和材としての性能の高いものと位置づけフロー値比及び活性度 指数も他種に比べ高目に設定された。 減水効果が大きいことから高流動コンクリート、高強度コンクリートへの適用が考えら れている。 【フライアッシュⅡ種】 標準的なフライアッシュとして位置づけ、基本的に旧JIS規格を踏襲する品質として 設定された。 【フライアッシュⅢ種】 Ⅱ種と粉末度は同等であるが、強熱減量が高目ものと位置づけ強熱減量の上限値を8.0% と設定された。(現状、全国的にⅢ種については販売されていない状況である。)強熱減 量が大きいことから減水効果の程度、所要空気量を確保するためにAE剤の種類、使用 量などの配慮が必要とされている。 【フライアッシュⅣ種】 Ⅱ種と強熱減量は同等であるが、粉末度が低目のものと位置づけ、ブレーン比表面積値 の下限を1500・/gと設定された。 粒度が粗いことよって減水効果があまり期待できないことから強度発現が、やや遅れる ことに配慮が必要とされている。 参考表1.1フライアッシュの品質 種 項 類 目 二酸化けい素 湿分 強 熱 減 量 ( 注1 ) 密度 % % % g/cm 3 45μ mふ る い 残 分 粉 末 度 (網ふ る い 方 法 )( 注 2) % ( 注 3 ) 比 表 面 積 (ブレーン方 法 ) cm 2 /g フロー値比 % 材 齢 28日 活 性 度 指 数 % 材 齢 91日 フライアッシュ Ⅰ種 フライアッシュ Ⅱ種 フライアッシュ Ⅲ種 フライアッシュ Ⅳ種 45.0以上 1.0以下 3.0以下 5.0以下 8.0以下 5.0以下 10以下 40以下 40以下 70以 下 5,000以上 2,500以上 2,500以上 1,500以上 105以上 90以上 95以上 80以上 85以上 80以上 75以 上 60以 上 100以上 90以上 90以上 70以上 1.95以上 (注 1)強熱減量に代えて、未燃炭素含有率の測定をJIS M 8819又はJIS R 1603に規定す 61 る方法で行い、その結果に対し強熱減量の規定値を適用してもよい。 (注2)粉末度は、網ふるい方法又はブレーン方法による。 (注3)粉末度を網ふるい方法による場合は、ブレーン方法による比表面積の試験結果を 参考値として併記する。 (2)土木用資材的な用途へは、大量利用に供給可能であり、安価な資材として「原粉フライア ッシュ ( ※ 2 )」がFAモルタルや固化体の原料として利用されている。 ( ※ 2 ):原粉フライアッシュは、電気集塵機で回収された石炭灰(シンダ灰を含む場合が ある)で、分級装置等による粒度調整が行われていない石炭灰である。 (3)クリンカは、土砂の代替材として軽量盛土材や埋戻し材として利用されている。 クリンカの特徴は土砂に比べ密度が低いことから軽量盛土や埋戻材等に使用されている。 また、透水性および保水性に優れており、ゴルフ場やグランド、野球場の排水材として利 用されている。 【利用分野による石炭灰の使用例】(参考表1.2-①用途別分類表) 利用分野 項目 用途 石炭灰の種類(参考例) セメント・コンク ・セメント原料 粘土代替 原粉灰、シンダ、クリンカ リート分野 ・セメント混和材 普通ポルトランドセメント フ ラ イ ア ッ シ ュ ( Ⅰ 種 ,Ⅱ 種 ) フライアッシュセメント フ ラ イ ア ッ シ ュ ( Ⅰ 種 ,Ⅱ 種 ) ダムコンクリート フライアッシュⅡ種 高流動コンクリート フ ラ イ ア ッ シ ュ ( Ⅰ 種 ,Ⅱ 種 ) 道路材(アスファルトフィラー材) フ ラ イ ア ッ シ ュ ( Ⅱ 種 ,Ⅳ 種 ) ・コンクリート混和材 土木建築分野 ・道路材 (土工材) 路盤材・路床材 ・盛土・埋立材 ・護岸裏込材 ・地盤改良材 ・土質改良材 クリンカ ポゾテック 原粉灰 不拡散高密度埋立 原粉灰 FAC軽量土工材 原粉灰 軽量盛土材 クリンカ スラリー工法 原粉灰 事前混合工法 原粉灰 FAC軽量土工材 原粉灰 スラリー工法 原粉灰 FGC深層混合処理工法 原粉灰 SCP材 原粉灰 建設発生土 原粉灰 浚渫土 ・海中基礎工 PC工法 原粉灰 CAP工法 原粉灰 スラリー工法 原粉灰 62 (参考表1.2-②用途別分類表) (建築材) 農業・ 項目 用途 石炭灰の種類(参考例) ・人工骨材 軽量骨材 原粉灰 ・建築材 建材(壁材、フロワー材) フライアッシュⅡ種、原粉灰 窯業製品 フライアッシュⅡ種 セメント製品 フライアッシュⅡ種 特殊肥料 原粉灰 ケイ酸カリ肥料 原粉灰 土壌改良材 原粉灰 漁礁 原粉灰 湧昇流用マウンド材 原粉灰 ・農業用資材 水産分野 ・海洋構造物 参考文献 1)日本フライアッシュ協会 石炭灰ハンドブック(第4版) 平成17年度版 (4) 既成灰 a. 既成灰の定義 「1.7用語の定義」で定義したように、火力発電所から副成され、既に長期間埋立地等に埋 め立てられている石炭灰を指す。また、加湿した石炭灰を「湿灰」と呼ぶことがあるが、 その状態で長期間貯蔵された石炭灰も既成灰と似た性状を有すると考えられる。 b. 特徴 新生灰と比較した場合、以下の特徴があることが報告されている 1) 。ただし、既成灰の性状 は、埋め立てられた石炭灰の性状、処分場の立地環境、埋立後の経過時間等によって変わる ことが予想されるため、対象地点毎に調査が必要である ①性状 ・含水比で20~80%程度の水分を含む ・ pHの高い既成灰については、灰表面にアルミノシリケート水和物やセメント水和物等が 観察されることがある ・処分場表層付近から採取した既成灰の中には炭酸化の進んだものも含まれる ・造粒作用により、新生灰よりも大きなメジアン径を有する粒度分布を持つ ②運用面での利点 石炭灰処分場から掘り起こして利用するため、以下の利点がある。 ・スポット的な大量需要や不測の受け入れ変更に柔軟に対応可能 ・あらかじめ性状を調査することが可能 ・処分場の延命化に直接寄与する ・石炭灰処分場は発電所の近隣に設置されることが多いため、掘り起こした既成灰は新生 63 灰と同様に船による大量輸送が容易 ③土工材料としての適用性 セメントを添加して作製した石炭灰混合材料は以下の特徴を持つ。 ・乾燥密度は0.9~1.1g/cm 3 程度で、新生灰を用いた石炭灰混合材料よりもやや軽い ・7日養生後の一軸圧縮強さは、300kN/m 2 以上(セメント添加率5%)。 ・新生灰よりも低いセメント添加率で土壌環境基準に適合させることが可能 c. 法規制について 最終処分場から埋立物を掘り起こして利用することを禁止する法規制はない。自治体 が主 体となって一般廃棄物最終処分場を掘り起こし、埋立物の再処理による減容化と再資源化に よる処分空間の確保を行った事例が報告されている 2) 。 d. 利用実績 3) 1998年 、 運輸 省 第一 港湾 建 設局 (現 国 土交 通省 東 北地 方整 備 局 )は、 約 52,000m 3 の 既 成灰を 酒田港国際ターミナルの公共岸壁の裏込め材に使用した。作業は、火力発電所内に設置され た簡易プラントにおいて、既成灰に水(含水比55%)とセメント(5%)を添加して練り混ぜした後、 ミキサー車で打設現場に搬送し、スラリーで打設することで行われた。打設されたスラリー を 室内養生し た供試体の 28日強度は 平均 392kN/m 2 以 上を満 足するとと もに、砕石 を使用 し た 場合と比較して10%以上のコスト縮減を図ることができた。 0.10 2.0 土壌環境基準 0.05 土壌環境基準 1.0 0.5 0.00 0 2 0.05 4 6 8 10 0.0 0 2 0.10 セメント添加率 [%] 0.04 4 6 8 10 セメント添加率 [%] 砒素 セレン 0.03 As [mg/L] Se [mg/L] ホウ素 1.5 B [mg/L] Cr(VI) [mg/L] 六価クロム 0.02 0.05 土壌環境基準 0.01 土壌環境基準 0.00 0.00 0 2 4 6 8 10 セメント添加率 [%] 参考図1.5 0 2 4 6 8 セメント添加率 [%] 既成灰にセメントを添加した石炭灰混合試料の微量物質溶出性 1) 64 10 参考文献 1) 井野場ら:埋立処分された石炭灰の再資源化に関する研究-既成灰の性状と土工材料として の適用性-、電力中央研究所報告、V08031、2009. 2) (財)日本環境衛生センター編:廃棄物埋立地再生技術ハンドブック、鹿島出版、2005. 3) 荘司ら:セメント添加した石炭灰の岸壁裏込め材への利用、土木学会論文集、637/VI-45、 167-148、1999. 65 1.3 石炭灰および石炭灰混合材料の溶出特性 1.3.1 石炭灰の溶出特性 石炭は、石炭紀から新第三紀にかけて地中に堆積した植物が地熱や圧力を受けて変質、炭化したもの である。そのため、植物体が生育期間中に吸収、貯蓄した微量成分や、現地の地質的条件に由来する微 量成分を含んでいる 1)。発電所において、高温下の火炉に投入された石炭は、有機成分が燃焼するとと もに、無機成分は熱分解あるいは酸化を受けながら、一部が石炭灰粒子を形成する。微量成分について も、燃焼に伴って一部は石炭灰粒子を形成したり、石炭灰の表面に付着したりすると考えられている 2)。 表 1.3 は、国内の発電所から発生した石炭灰を対象に、環境省告示 46 号試験もしくは環境省告示 13 号試験を行った結果をまとめたものである。溶出濃度は灰によってまちまちではあるが、溶出する可能 性のある元素としては、六価クロム、砒素、セレン、ホウ素及びフッ素が挙げられる。 参考表 1.3 石炭灰の溶出試験結果例 平均濃度 [mg/L] 標準偏差 n 総水銀 <0.0005 - 21 カドミウム <0.01 - 25 鉛 <0.01 - 33 六価クロム 0.08 0.12 56 砒素 0.028 0.055 47 セレン 0.092 0.110 54 ホウ素 5.0 7.9 56 フッ素 1.4 1.8 34 項目 2000 年~2008 年度に公開された報告書・論文 24 編を対象に、国内の発電所から発生し た石炭灰について環告 46 号または環告 13 号試験をおこなった結果を抽出し、まとめた もの 石炭灰の微量物質の溶出特性は、灰分組成、燃焼条件、電気集じん装置の設定条件等の影響を受けて いると考えられ、一般化は難しい。ここでは、これまでに報告されている内容の要点についてまとめた。 (1)砒素 砒素は石炭灰の表面付近での確認例があり 3), 4)、アルミノシリケート化合物や鉄酸化物に収着し た形、もしくは砒酸カルシウムとして存在することが報告されている 5)-8) 。液相には砒酸イオン (AsO43-)または亜砒酸イオン(AsO33-)として溶出する。アルカリ性を示す石炭灰では溶出率が低くな る傾向がみられ、 pH10 以上のカルシウム塩基性下では、砒酸カルシウムの溶解度が溶出濃度を決 める条件の一つになっている可能性が報告されている 8)。 (2)セレン 砒素と同様に、石炭灰表面で存在が確認された例がある 3)。セレンの主な形態として、6価、4 66 66 価、0価、-2価があることが知られている。石炭灰中における存在形態は良く分かっていないが、 石炭灰から接触したばかりの水からは、主に4価セレンである亜セレン酸イオン(SeO32-)が検出さ れる 8)。砒素と異なり、セレンの溶出濃度を決めるようなセレン化合物は確認されておらず、石炭 灰中のセレン含有量と溶出量に正の相関があることが報告されている 9)。 (3)六価クロム 石炭灰中のクロムは、XAFS(X 線吸収微細構造)分光法や溶解平衡試験結果から、主に3価クロム として存在する可能性が報告されている 5) 。一方、溶出水中では主に6価の酸化物イオン(CrO42-) として存在し、3価クロムイオン(Cr3+)の溶出濃度は非常に低い。また、石炭灰と水が接触するこ とで生成する水和物の消長が6価クロムの溶出に影響を与えている可能性も指摘されている 10)。 (4)ホウ素 SIMS(二次イオン質量分析)による分析結果から、石炭灰表面部分に比較的高濃度で存在すること が報告されている 11)。石炭灰から溶出するホウ素は、ホウ酸イオン(B(OH)4-)の形態をとり、2成分 モデルで溶出を表現できることが経験的に知られている 12)。この2成分モデルでは、石炭灰中のホ ウ素が比較的溶解性の高い形態で存在するホウ素と、溶解性の低い形態で存在するホウ素とで構成 されると仮定し、それぞれの含有量と溶出速度から溶出量を求める。また、pH が高く、カルシウム 溶出濃度の高い灰ではホウ素が溶出しにくい傾向も観察されており、石炭灰中のカルシウムがホウ 素の溶出性に影響を与えている可能性も指摘されている 9)。 (5)フッ素 フッ素は揮発温度が低いため、電気集じん装置の操作温度が高い条件下では石炭灰には濃集せず、 より後段で除去される 13) が、操作温度が低ければ石炭灰への移行量が多くなることが予想される。 坪内らは亜瀝青微粉炭燃焼灰を対象に分析を行った結果、フッ素の大部分は石炭灰中の未燃炭素と 結合した状態で存在していると推定している 14)。また、石炭灰から溶出するフッ素は大部分がフッ 化物イオン(F-)として存在し、高 pH 領域下では溶出率が低下することが報告されている 15),16)。 1.3.2 石炭灰混合材料の溶出特性 石炭灰と石炭灰混合材の溶出試験を行なった一例を下記に示す。 (1)石炭灰および石炭灰混合材料の試料 ①石炭灰は(N231、T201、NN201)3試料 ②石炭灰混合材(N231、T201、NN201)3試料 (2)試験方法および項目 ①溶出試験 前処理方法:JIS K 0058-1:2005 スラグ類の化学物質塩権法 溶出試験方法:JIS K 0102:工業排水試験方法準拠 ②分析項目:水銀、ガドミウム、鉛、セレン、フッ素、ベリリウム、バナジウム、全クロム、銅、 ニッケル、亜鉛、ホウ素 (全12項目) 67 67 参考表 表4 石炭灰及び石炭灰造粒材の溶出試験の化学分析結果(参考値) 1.4 (単位:mg/L) 試料名 石炭灰 T201 石炭灰造粒材 N231 T201 NN201 N231 NN201 分析項目 水銀(T-Hg) <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 カドミウム(Cd) <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 鉛(Pb) 0.083 <0.005 0.013 0.005 <0.005 <0.005 セレン(Se) 2.2 0.1 3.0 0.1 0.1 0.2 フッ素(F) <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 ベリリウム(Be) 0.10 0.25 0.60 0.17 0.29 0.10 バナジウム(V) 0.07 0.01 0.03 0.07 0.02 全クロム(T-Cr) 0.08 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 銅(Cu) <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 ニッケル(Ni) 0.006 0.005 0.008 0.005 <0.005 0.007 亜鉛(Zn) 3.9 1.2 0.16 0.39 14 1.2 ほう素(B) *溶出前処理は”利用有姿でプロペラ攪拌により前処理を行った。 定量下限値 0.0005 0.005 0.005 0.005 0.1 0.005 0.005 0.005 0.005 0.005 0.005 0.05 参考文献 1) 竹田栄蔵、本邦における石炭中の微量成分に関する研究、地質調査所月報、Vol.32, No.11, 583-682, 1981. 2) 横山隆壽、石炭火力排ガス中の微量元素のマスバランスについて、石炭灰有効利用シンポジウム、 2004. 3) Hansen, D. L. et al.: Elemental distribution in coal fly ash particles, Environmental Science & Technology, 14, 1111-1117, 1980. 4) 大木ほか: X 線光電子分光による石炭飛灰および廃棄物焼却灰の分析, 第 13 回廃棄物学会研究発表 会講演論文集, 875-877, 2002. 5) Huffman, G.P. et al.: Speciation of arsenic and chromium in coal and combustion ash by XAFS spectroscopy, Fuel Processing Technology, 39, 47-62, 1994. 6) Zielinski, R.A. et al.: Mode of Occurrence of Arsenic in Feed Coal and its Derivative Fly Ash, Black Warrior Basin, Alabama, 2001 Int. Ash Utilization Symposium, 2001. 7) Bool, E. L. III et al.: A Laboratory Study of the Partitioning of Trace Elements during Pulverized Coal Combustion, Energy & Fuels, 9, 880-887, 1995. 8) 井野場ほか:石炭灰中の砒素・セレンに関する溶出特性の検討,電力中央研究所報告,U03064,2003. 9) Iwashita, A. et al.: Leaching characteristics of boron and selenium for various coal fly ashes, Fuel, 84, 479-485, 2004. 10) 安池ほか:高アルカリ性石炭灰の中和処理方策の開発-実埋立を想定した長期カラム試験-、電力 中央研究所報告、U03026、2003. 11) 田野崎ら:石炭灰フライアッシュのキャラクタリゼーション(2)、第 39 回地盤工学会研究発表会発 68 68 表講演集、655-656、2004. 12) 下垣ほか:石炭灰陸上埋立に伴う環境影響予測手法-微量物質の溶出・移行挙動の予測-、電力中 央研究所報告、U92015、1992. 13) Alvarez-Ayuso, E. et al: Emvironmental impact of a coal combustion-desulphurisation plant: Abatement capacity of desulphurisation process and environmental characterization of combustion by-products, Chemosphere, 65, 2009-2017, 2006. 14) 坪内ら:微粉炭燃焼時に生成したフライアッシュ中のフッ素と炭素の化学形態、石炭科学会議発表 論文集、42、59-60、2005. 15) 坪内ら:フライアッシュ中のホウ素とフッ素の溶出挙動、石炭科学会議発表論文集、43、33-34、 2006. 16) Piekos, R. et al: Leaching characteristics of fluoride from coal fly ash, Fluoride, 31, 188-192, 1998. 69 1.4 バイオアッセイ法(マイクロトックス法)による評価事例 1.4.1 1.4.1.1 材料と方法 石炭灰及び固化体からの試験液調整 試 験 サ ン プ ル は 、 石 炭 灰 4 種 類 ( NO.410,411,424,454) を 対 象 と し た 。 セ メ ン ト 固 化 体 は この石炭灰を元に製造した。試験液は一般的に評価されている蒸留水に加え、沿海域利用を 想 定 し 海 水 を 用 い て 溶 出 液 を 調 製 し た 。振 と う 時 間 は 環 境 長 告 示 第 46 号 法 に 示 さ れ る よ う な 6 時 間 の 他 、24 時 間 、48 時 間 と し た 。使 用 し た 海 水 は 、日 本 沿 海 に お い て は 清 浄 度 の 高 い と いう結果が得られている小笠原諸島父島大村で採取されたモノを煮沸殺菌後濾過し使用した。 海 水 サ ン プ ル は 無 調 製 の ま ま 試 験 に 供 し た 。蒸 留 水 抽 出 サ ン プ ル に は マ イ ク ロ ト ッ ク ス 試 験 試 薬 に 付 属 し て い る OAS( 浸 透 圧 調 製 液 ) を 10% 添 加 し ( マ イ ク ロ ト ッ ク ス 試 験 法 マ ニ ュ ア ル 準 拠 )、 塩 分 濃 度 を 調 整 し て か ら 試 験 に 供 し た 。 石 炭 灰 や 石 炭 灰 固 化 体 等 の 材 料 か ら の 抽 出 液 は 、全 般 的 に ア ル カ リ 性 領 域 の 高 い p H を 示 す こ と が 多 く 、本 検 討 に お い て も ア ル カ リ 性 を 示 し て い る 。こ の よ う に ア ル カ リ 性 で あ る こ と は 、特 に 他 の 成 分 が 含 ま れ て い な く て も マ イ ク ロ ト ッ ク ス 試 験 結 果 に 重 篤 な 影 響 が 示 さ れ る 。マ イ ク ロ ト ッ ク ス 試 験 で は 、中 性 領 域 近 傍 に 設 定 することが大切であことからマイクロトックス試験に供する抽出液は事前に塩酸を用いてpH =8付近に調整した。 1.4.1.2 試 験 方 法 Microtox R ( マ イ ク ロ ト ッ ク ス ) は 一 般 水 質 毒 性 を 表 す 指 標 と し て 、 発 光 バ ク テ リ ア ( Photobacterium phosphoreum )を 使 用 す る 。 こ れ は 海 洋 発 光 バ ク テ リ ア が 毒 性 に よ り そ の 発 光量が減少する事を利用した試験である。測定機器は、試験温度の制御、発光量測定のため の光電子倍増管、データの取り込み・処理のためのコンピュータからなる。これは発光バク テリアの発光現象が呼吸系と連動していることを利用し、ある化学物質に晒されたときの発 光量の減少の割合でその毒性値を表す方法である。 他 の バ イ オ ア ッ セ イ 結 果 と 比 較 的 相 関 が 高 く 、検 出 時 間 が 15 分 と 短 い う え 試 験 検 体 量 も 数 ml と 少 な く て す む の で 、毒 性 の ス ク リ ー ニ ン グ や 経 時 的 な モ ニ タ リ ン グ と し て も 広 く 用 い ら れている。 試 験 操 作 は マ イ ク ロ ト ッ ク ス の マ ニ ュ ア ル に 従 い 行 っ た 。 試 験 条 件 を 参 考 表 1.5 に 示 す 。 70 70 参 考 表 1.5 生物試験の試験条件 発光バクテリア 生物試験 発光阻害試験 Microtox ® 試 験 法 に 準 拠 試験方法 発光バクテリア 供試生物 ( Photobacterium phosphoreum ) 1.4.2 曝露期間 15( min) 試験濃度 対 照 区 +4 濃 度 区 観察時間 試 験 開 始 後 5, 15( min) エンドポイント 発光量阻害 評価値 EC 2 0 , EC 5 0 ( %) マイクロトックス試験結果 マ イ ク ロ ト ッ ク ス 試 験 の 結 果 を 、 参 考 表 1.6 に 示 す 。 全ての試験サンプルで急性毒性は認められなかった。 石 炭 灰 424 の 海 水 に よ る 24 時 間 振 と う し た 試 料 で は 発 光 量 阻 害 影 響 が 僅 か に 認 め ら れ た が 、 そ の 他 の サ ン プ ル は マ イ ク ロ ト ッ ク ス に 対 す る 影 響 は 検 出 限 界 以 下 で あ っ た 。こ の こ と か ら 、 本実験に使用した各種のサンプルからの抽出液からは著しいマイクロトックスに関する環境 影響はないものと判断される。 参 考 表 1.6 マ イ ク ロ ト ッ ク ス 試 験 結 果 410 411 424 454 抽出 振 とう 水種 時間 灰 固化体 灰 固化体 灰 固化体 灰 固化体 6h N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 24h N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 48h N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 6h N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 24h N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 蒸留水 海水 71 71 effect 14.99% 1.5 石炭灰の有効利用状況 火力発電所等から発生する石炭灰は表 1.7 に示すように、2005 年度以降 1,000 万tを超えており、有 効利用に関しては 1995 年度で 67%であったものが 2009 年度では約 98%となっている。一方、その利 用分野については表 1.8~表 1.10 に示すように、 セメント分野(セメント原料としての利用)が 65~70% の範囲を占めており他の利用先を大きく離しており、2008 年度の実績においては、セメント分野への利 用が 70%を超える結果になっている。 参考表 1.11 および参考図 1.7 は、セメント生産量、石炭灰発生量および石炭灰のセメント分野利用 量の推移を示したものである。なお、セメント生産量は(社)セメント協会の HP に示されているデータ を使用した。これらの図表から、セメント生産量が減少しているにも関わらず、石炭灰のセメント分野 への利用が増加していることが分かる。これは、セメント製造時の粘土代替としての石炭灰の利用比率 を上げた結果によるものであるが、これ以上の利用比率のアップは望みにくく既に頭打ち状態にあると 言われている。このため、今後、セメントの生産量が減少すれば石炭灰の利用量も減少することが懸念 されている。 また、石炭灰有効利用内訳で約 15%を占めている「その他」の殆どは火力発電所内における海面埋立 であり、リサイクルの本来の趣旨からは有効利用にカウントされるべき数字でないとの指摘がされてい る。 参考表 1.7 石炭灰の発生量の推移 年度 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 電気事業 5,149 5,288 5,408 5,029 5,757 6,322 6,785 6,920 7,475 8,052 8,334 8,097 8,802 8,934 8,096 発生量(千t) 一般事業 1,974 1,920 1,890 1,760 1,843 2,097 2,025 2,316 2,391 2,801 2,818 2,872 3,192 3,351 2,856 合計 7,123 7,208 7,298 6,789 7,600 8,419 8,810 9,236 9,866 10,853 11,152 10,969 11,994 12,285 10,952 電気事業 3,114 3,375 3,352 3,512 4,449 4,932 5,271 5,495 6,105 7,128 7,899 7,813 8,479 8,680 7,826 72 利用量(千t) 一般事業 合計 1,668 4,782 1,683 5,058 1,606 4,958 1,578 5,090 1,686 6,135 1,999 6,931 1,902 7,173 2,229 7,724 2,275 8,380 2,664 9,792 2,774 10,673 2,844 10,657 3,146 11,625 3,323 12,003 2,842 10,668 利用率(%) 67.1 70.2 67.9 75.0 80.7 82.3 81.4 83.6 84.9 90.2 95.7 97.2 96.9 97.7 97.4 100 90 有効利用率 (%) 80 70 60 50 40 30 20 10 0 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 年度 参考図 1.6 石炭灰の有効利用率の推移 参考表 1.8 石炭灰の有効利用内訳の推移(利用量) 年度 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 セメント分野 3,117 3,295 3,230 3,620 4,129 4,892 5,343 6,080 6,327 6,878 7,343 7,271 7,681 8,498 7,099 土木分野 479 547 503 359 683 703 898 683 822 1,148 1,250 1,409 1,635 1,366 1,582 利用量 (千t) 建築分野 農林・水産分野 289 139 384 95 356 93 289 89 283 131 364 144 371 144 376 139 396 172 373 212 379 275 395 161 415 154 407 150 358 116 その他 758 737 776 733 909 828 417 446 663 1,181 1,426 1,421 1,740 1,582 1,513 合計 4,782 5,058 4,958 5,090 6,135 6,931 7,173 7,724 8,380 9,792 10,673 10,657 11,625 12,003 10,668 参考表 1.9 石炭灰の有効利用内訳の推移(利用比率) 年度 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 セメント分野 65.2 65.1 65.1 71.1 67.3 70.6 74.5 78.7 75.5 70.2 68.8 68.2 66.1 70.8 66.5 土木分野 10.0 10.8 10.1 7.1 11.1 10.1 12.5 8.8 9.8 11.7 11.7 13.2 14.1 11.4 14.8 利用量内訳比率 (%) 建築分野 農林・水産分野 6.0 2.9 7.6 1.9 7.2 1.9 5.7 1.7 4.6 2.1 5.3 2.1 5.2 2.0 4.9 1.8 4.7 2.1 3.8 2.2 3.6 2.6 3.7 1.5 3.6 1.3 3.4 1.2 3.4 1.1 73 その他 15.9 14.6 15.7 14.4 14.8 11.9 5.8 5.8 7.9 12.1 13.4 13.3 15.0 13.2 14.2 合計 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 参考表 1.10 石炭灰の利用分野における用途内訳 (単位:千t) 電気事業 一般産業 合計 利用量 構成比(%) 利用量 構成比(%) 利用量 構成比(%) 4,661 59.56 2,135 75.12 6,796 63.70 116 1.48 132 4.64 248 2.32 55 0.70 0 0.00 55 0.52 4,832 61.74 2,267 79.77 7,099 66.54 428 5.47 114 4.01 542 5.08 409 5.23 76 2.67 485 4.55 8 0.10 0 0.00 8 0.07 159 2.03 97 3.41 256 2.40 9 0.12 0 0.00 9 0.08 281 3.59 0 0.00 281 2.63 1,294 16.53 288 10.13 1,582 14.83 161 2.06 163 5.74 324 3.04 0 0.00 0 0.00 0 0.00 34 0.43 0 0.00 34 0.32 195 2.49 163 5.74 358 3.36 21 0.27 5 0.18 26 0.24 0 0.00 0 0.00 0 0.00 27 0.35 63 2.22 90 0.84 48 0.61 68 2.39 116 1.09 45 0.58 0 0.00 45 0.42 3 0.04 5 0.18 8 0.07 1,409 18.00 51 1.79 1,460 13.69 1,457 18.62 56 1.97 1,513 14.18 7,826 100.00 2,842 100.00 10,668 100.00 項目 分野 内容 セメント分野 セメント原材料 セメント混合材 コンクリート混和材 合計 土木分野 地盤改良材 土木工事用 電力工事用 道路路盤材 アスファルト・フィラー材 炭坑充填材 合計 建築分野 建材ボード 人工軽量骨材 コンクリート2次製品 合計 農林・水産分野 肥料(含;融雪剤) 漁礁 土壌改良剤 合計 その他 下水汚泥処理剤 製鉄用 その他 合計 有効利用合計 参考表 1.11 年度 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 電気事業 5,029 5,757 6,322 6,785 6,920 7,475 8,052 8,334 8,097 8,802 8,934 8,096 石炭灰の利用分野における用途内訳 発生量(千t) 一般事業 1,760 1,843 2,097 2,025 2,316 2,391 2,801 2,818 2,872 3,192 3,351 2,856 合計 6,789 7,600 8,419 8,810 9,236 9,866 10,853 11,152 10,969 11,994 12,285 10,952 74 セメント分野 利用量(千t) 3,620 4,129 4,892 5,343 6,080 6,327 6,878 7,343 7,271 7,681 8,498 7,099 セメント生産量 (千t) 80,609 79,919 79,319 75,009 70,726 68,105 66,630 69,637 69,815 66,160 60,993 52,989 90,000 80,000 70,000 (千t) 60,000 石炭灰発生量 セメント分野利用量 セメント生産量 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 年度 2005 2006 2007 2008 2009 参考図-1.7 セメント生産量、石炭灰発生量およびセメント分野への利用の推移 75 2010 参考資料 2.技術審査証明取得技術一覧 民間によって研究開発された技術を建設事業に反映させる制度として「建設技術審査証明事業」があ る。これは平成 13 年 1 月 5 日まで、建設大臣告示に基づいて建設大臣から認定を受けた 14 の財団法人 が実施してきた「民間開発建設技術の技術審査・証明事業」を、14 の財団法人が会員となった建設技術 審査証明協議会が引継ぎ実施しているものであり、民間の開発者によって申請された技術を学識経験者 により技術審査し、その内容を客観的に証明し、普及活動に努める事業である。また、これと同様に港 湾分野における技術審査証明事業として、(財)沿岸技術研究センターによる「港湾関連民間技術の確認 審査・評価事業」がある。 これらの技術審査証明を取得することは技術普及の一助になるとの判断から、石炭灰有効利用技術の うちで既に技術審査証明等を取得しているものも少なくない。技術審査証明の取得に際しては,施工マ ニュアル的なものがあることが要求されていることから,石炭灰有効利用に関する技術審査証明を整理 し,ガイドライン作成に活用する。 表 2.1 に技術審査証明を取得している石炭灰有効利用技術を、表 2.2~2.5 にこれらの概要を示す。 なお、表 2.1 に示した技術以外にも「ポゾテック」、 「アッシュロバン」 、 「ゼットサンド」が過去に技術 審査証明を取得している。これら3技術については、技術審査証明の有効期限(取得後 5 年)を経過し て更新がなされていないことから表.1 への記載は行わなかったが、石炭灰利用技術として確立されてい ることから、その概要を表.2.6~表.2.8 に示す。 参考表 2.1 技術審査証明取得技術一覧 審査実施期間 技術名称 審査証明依頼者 (財)土木研究センター コアソイル Q 九州電力 灰テックビーズ 四国電力 頑丈土破砕材 沖縄電力、日本国土開発 頑丈土破砕材 沖縄電力、日本国土開発 (財)沿岸技術研究センター 76 参考表 2.2 技術審査証の概要(コアソイルQ) 技術の名称 石炭灰を利用した人工地盤材料「コアソイルQ」 審査証明機関 (財)土木研究センター 有効期限 平成 25 年 12 月 1 日 審査証明依頼者 九州電力㈱ 技術の概要 特徴 審査証明結果 留意事項 火力発電所で副成される石炭灰に水とセメントなどを混合して製造した人工地盤材料で あり、製造した材料を締固めて使用する。また、通常の土質材料と同等以上の強度特性、 軽量性、施工性を有し、環境に安全な材料である。 Sタイプ; 混合製造後、直接出荷する湿潤粉体状の人工地盤材料 Gタイプ; 混合製造後、製造場所で一旦締固めて固化・養生した後に、掘削・粉砕して製造出荷 した粒状体の人工地盤材料 (1)強度特性 三軸圧縮試験、CBR 試験、平板載荷試験、一軸圧縮試験、コーン貫入試験等の強度特 性に関する試験によれば、砂質土と同等以上の強度特性を有し、道路や構造物の基礎 として適用可能。また、長期強度が過大でなく、盛土として適用可能な材料の提供も 可能。 (2)軽量性 粒度試験によれば、密度は 1.6g/cm3 以下であり、通常の土質材料よりも軽量である。 (3)粒度 現場調査の結果によれば、粒度の調整が可能である。粒度試験結果によれば、通常の 土質材料と同様に施工できる粒度範囲である。 (1) 透水性 透水試験結果によれば、透水係数は 1×10-5~1×10-4cm/s の範囲であり、微細砂とほ ぼ同等である。 (2) 施工性 現場調査の結果によれば、施工時の粉塵発生が少なく、通常の土質材料と同等に施工 ができる。 (6)環境に対する安全性 溶出試験によれば、 「コアソイル Q」からの有害物質の溶出が、平成 3 年環境庁告示第 46 号「土壌の汚染に係る環境基準について」に定める基準以下であること。 「コアソイルQ」の製造および使用にあたっては、 「コアソイルQ」製造マニュアルなら びに「コアソイルQ」使用マニュアルを参考に、適正な管理のもとに行うこと。 77 参考表-2.3 技術審査証の概要(灰テックビーズ) 技術の名称 石炭灰を利用した粒状地盤材料「灰テックビーズ」 審査証明機関 (財)土木研究センター 有効期限 平成 26 年 11 月 25 日 審査証明依頼者 四国電力㈱ 技術の概要 石炭火力発電所で副産される石炭灰(フライアッシュ)に水とセメント、必要に応じて 消石灰を特殊ミキサーで攪拌・混合・造粒して製造する人工地盤材料。 粒径 0.075~35mm の球形・粗粒状の軽量な粒状体であり、盛土、護岸背面や擁壁などの 構造物の裏込めや埋戻し、河川構築、土地造成、路床、路体などの用途に対して、通常 の砂質土および礫質土と同様の設計・施工を行うことができる。 審査証明結果 (1) 強度特性 三軸圧縮試験、CBR 試験、長期強度確認試験および再掘削性確認試験の結果によれば、 砂質土および礫質土と同等の強度特性を有し、締め固めた「灰テックビーズ」は長期 材齢においても大きな強度とならず、再掘削が可能である。また、粒子の強度試験結 果によれば軟岩と同程度の強度である。 (2) 物理特性 粒度試験によれば、礫分が 50%以上の礫質土に分類され、粒度の密度試験結果によれ ば、粒度の密度は 1.4~1.6g/cm3 であり、通常の砂質土および礫質土よりも軽量であ る。また、透水試験結果によれば、透水係数は 1×10-2~1×10-4cm/s 程度であり、砂 質土および礫質土と同等である。 (3)耐久性 粒子のスレーキング率試験によれば、乾湿繰返しにより 1mm 以下の粒径になるもの は少なく、スレーキングに対する抵抗性は大きい。また繰返し試験結果によれば、圧 縮沈下量は小さく、長期的に安定している。 (4)施工性 施工性確認試験によれば、施工時に粉塵発生や重機転圧による粒子破壊は少なく、通 常の土質材料と同様に施工ができる。また、重機で施工された地盤は、通常の土質材 料と同等の強度ならびに締固め特性を有する。 (5)環境安全性 特定有害物質含有量試験によれば、原料とする石炭灰および「灰テックビーズ」の特 定有害物質(重金属等)含有量は、土壌汚染対策法に定める土壌環境基準以下である。ま た有害物質溶出試験によれば、「灰テックビーズ」からの有害物質(重金属等)溶出量は 基本的に土壌環境基準以下であり、有害物質溶出量が基準値を超える場合であっても、 消石灰を添加することで溶出量を土壌環境基準以下に抑制することができる。 留意事項 「灰テックビーズ」の製造および使用にあたっては、 「灰テックビーズ製造マニュアル」、 「灰テックビーズ使用マニュアル」を参考に、適正な管理のもとに行うこと。 78 参考表 2.4 技術審査証の概要(頑丈土破砕材) 技術の名称 石炭灰を利用した人工地盤材料「頑丈土 破砕材」 審査証明機関 (財)土木研究センター 有効期限 平成 23 年 2 月 更新・内容変更手続き中 審査証明依頼者 沖縄電力㈱、日本国土開発㈱ 技術の概要 石炭火力発電所で副産される石炭灰に水と数種類の添加剤、セメントを混合して製造す る「頑丈土」を締固めて固化・養生した後に掘削・破砕して製造する人工地盤材料。路 床、路体(盛土) 、構造物の裏込めや埋戻し、河川構築、土地造成の用途に対して、通常 の地盤材料と同様の設計・施工を行うことができる。 審査証明結果 (1)強度特性 一面せん断試験、CBR 試験、コーン貫入試験などの強度特性に関する試験によれば、 砂質土と同等以上の強度特性を有し、道路路床に適用可能な強度を有している。また、 締固めた後の長期強度は 1,000kN/m2 以下であり過大にならない。 (2)軽量性 粒度試験によれば、密度は 1.6g/cm3 以下であり、通常の土質材料よりも軽量である。 (3)粒度 現場調査の結果によれば、粒度の調整が可能であることが確認された。粒度試験の結 果によると、通常の土質材料と同様に施工できる粒度範囲である。 (3) 透水性 透水試験結果によれば、透水係数は 1×10-5~1×10-4cm/s のオーダーであり、微細砂 と同等の範囲である。 (4) 施工性 現場調査の結果によれば、施工時の粉塵発生が少なく、通常の土質材料と同等に施工 ができる。 (6)環境に対する安全性 溶出試験によれば、「頑丈土 破砕材」の有害物質溶出量は平成 3 年環境庁告示第 46 号(改正 平成 13 年環境庁告示第 16 号)「土壌の汚染に係る環境基準について」に 定める基準以下であること。 また、含有量試験によれば、 「頑丈土 破砕材」の有害物質含有量は平成 14 年環境庁告 示第 29 号「土壌に含まれる特定有害物質の量」に定める基準以下であることが確認さ れた。 留意事項 「頑丈土 破砕材」の製造および使用にあたっては、 「頑丈土 破砕材」製造マニュアル、 「頑丈土 破砕材」使用マニュアルを参考に、適正な管理のもとに行うこと。 79 参考表 2.5 技術審査証の概要(頑丈土破砕材) 技術の名称 石炭灰を有効利用した埋立て材料「頑丈土破砕材」 審査証明機関 (財)沿岸技術研究センター 有効期限 平成 23 年 11 月 1 日 審査証明依頼者 沖縄電力㈱、日本国土開発㈱ 技術の概要 石炭灰にセメントおよびスラグ・石膏等の添加剤と水を混合処理して製造した「頑丈土」 を貯蔵ヤードで固化後、バックホウなどの掘削機械で掘削・破砕し、必要に応じて粒度 調整した埋立材料。 「頑丈土」の製造に当たっては、セメント、添加剤等の添加率は重金 属等の溶出量が土壌環境基準(平成 3 年環境庁告示第 46 号)を満足するように予め配合 試験を行い決めている。 「頑丈土破砕材」は、軽量で液状化しにくい材料特性を有するため、港湾構造物に使用 した場合、地盤沈下の減少、地盤改良の省略あるいはその範囲の縮小および構造物のス リム化などの効果が期待できる。 審査証明結果 留意事項 (1) 湿潤単位体積重量が 17kN/m3 以下であり、礫質土および砂質土に比較して軽量である ことが確認された。 (2) せん断抵抗角は30°以上であり砂質土と同程度であることが確認された。 (3) 「頑丈土 破砕材」を埋立て材料として用いた場合、土壌環境基準を満足することが 確認された。また、実規模の試験により水質環境に悪影響を及ぼさないことが確認 された。 (4) 「頑丈土 破砕材」を埋立て材料として用いた場合、施工時の粉塵が少ないこと、埋 立て後の圧縮性が砂質土と同等であること、および陸上部でのトラフィカビリティ ーが良いことが確認された。 (1)「頑丈土 破砕材」の供給量は、1発電所当たり最大 10~20 万トン/年程度である。 (2)「頑丈土 破砕材」はアルカリ性のため、排水が発生する場合は水質汚濁防止法の排 水基準(海域:pH5.0~9.0)を満足するように管理し、必要に応じて排水の中和設 備を設ける。モニタリング中に測定値が環境基準を超えるおそれがある場合には次 の対策を行う。 ・汚濁防止膜設置範囲の拡大によるアルカリ拡散の防止 ・1日当たりの埋立量を制限することによるアルカリ量の削減 また、陸上で使用する場合には覆土等の対策を検討する。 (3)「頑丈土 破砕材」の透水係数は、通常埋立材料として使用されている礫質土や砂質 土より小さい。 (4)「頑丈土 破砕材」は、材料として販売される製品で、利用者は規格を指定して購入 することとなる。 80 参考表 2.6 技術審査証の概要(ポゾテック) 技術の名称 石炭灰を利用した路盤・路床・盛土材「ポゾテック」 審査証明機関 (財)土木研究センター 有効期限 平成 22 年 3 月 15 日 審査証明依頼者 日本コークス工業㈱ 技術の概要 石炭火力発電所で同時に発生する二つの副産物、いわゆる石炭灰と脱硫スラッジ(石膏 または石膏と亜硫酸石膏の混合物)に必要に応じて生石灰または消石灰を添加し、水分 調整して混合した湿潤状態の粉体で、石炭灰が脱硫スラッジや石灰中のカルシウム分と 反応して硬化する性状を利用し、それを締固めて使用することにより下層路盤材、路床 材あるいは盛土材といった土工材料としての強度・支持力を確保するものである。 特徴 (1) 環境に安全な材料である。 (2) ポゾラン反応により強度発現がある。 (3) 締固めた固化体は土砂に比較して軽量である。 審査証明結果 (1) 環境に対する安全性 有害物質の溶出は「平成 3 年度環境庁告示第 46 号(改正平 6 環告 25)」および「昭和 46 年総理府令第 35 号(改正平 5 環告 40)」の基準値以下である。また、粉塵による大 気汚染がない。 (2)強度・支持力特性 アスファルト舗装要綱に定める下層路盤材および路床材としての強度・支持力を満足 する。 (3)施工性および供用性 通常の材料と同様に施工ができ、また、通常の下層路盤材および路床材を使用した場 合と比較して同様の供用性がある。 留意事項 (1)「ポゾテック」の製造にあたっては、「製造マニュアル」にしたがい適正な品質官吏 の下に行うこと。 (2)「ポゾテック」の使用に際しては、 「使用マニュアル」を参考にして適正な施工管理 のもとに行うこと。 81 参考表 2.7 技術審査証の概要(アッシュロバン) 技術の名称 石炭灰を用いた下層路盤材「アッシュロバン」 審査証明機関 (財)土木研究センター 有効期限 平成 19 年 7 月 24 日 審査証明依頼者 中部電力㈱ 技術の概要 石炭灰をプラントで安定処理を施し、取扱い易くした下層路盤材。石炭灰にセメントと 水を加えて造粒し、養生後これを破砕した石炭灰固化物(破砕材)として貯蔵し、出荷時 に結合材(セメント、二水石膏、石炭灰)と水を添加したもの。現場においてクラッシャ ラン等の下層路盤材と同様な方法で施工でき、転圧時に石炭灰固化物(破砕材)の一部が 圧砕されるが結合材の硬化作用により固化し、セメント安定処理工法の基準を満足する。 特徴 (1) 通常の下層路盤材と同様な方法で施工できる。 (2) 通常の下層路盤材に比べて比重が小さいため、運搬効率が良い。 (3) 通常の材料を用いた下層路盤と同程度の耐久性を有する。 (4) 無害で、環境上の問題がない。 審査証明結果 (1) 強度特性 一軸圧縮強さ試験によれば、アスファルト舗装要綱に定めるセメント安定処理工法に よる下層路盤材の品質規格の一軸圧縮強さ〔7 日〕10kgf/cm2(0.98MPa)を満足すること が確認された。 (2) 施工性 転圧試験および施工性調査によれば、通常の下層路盤材と同様な施工方法で所定の締 固め度が得られることが確認された。 (3) 耐久性 繰返し平板載荷試験によれば、通常の材料を用いた下層路盤と同程度の耐久性がある ことが確認された。 (4) 環境に対する安全性 溶出試験によれば、「アッシュロバン」からの有害物質の溶出が、昭和 48 年総理府令 第 5 号(改正:平6総令 61)、平成 3 年環境庁告示第 46 号(改正:平 6 環告 25)および 昭和 46 年環境庁告示第 59 号(改正:平 5 環告 65)に定める基準値以下であることが確 認された。 留意事項 (1)「アッシュロバン」の製造にあたっては、 「製造マニュアル」にしたがい適正な品質 管理のもとに行うこと。 (2)「アッシュロバン」を適用した下層路盤の施工にあたっては、 「使用マニュアル」を 参考にして適正な施工管理のもとに行うこと。 82 参考表 2.8 技術審査証の概要(ゼットサンド) 技術の名称 石炭灰を用いた人工地盤材料「ゼットサンド」 審査証明機関 (財)土木研究センター 有効期限 平成 21 年 11 月 4 日 審査証明依頼者 宇部興産㈱、大成建設㈱、電源開発㈱ 技術の概要 石炭火力発電所等から発生する石炭灰(フライアッシュ)を、セメント、添加材、およ び水を加えて造粒化した砂質状の人工地盤材料。石炭灰を母材とした、環境に安全な「ゼ ットサンド」を、盛土や裏込め、埋戻し、土地造成に、近年枯渇しつつある国内の天然 砂質土の代替材として適用することにより、資源の有効活用と環境保全を図る。 特徴 (1) 石炭火力発電所等から発生する石炭灰(フライアッシュ)を、セメント、添加材、お よび水を加えて造粒化した人工地盤材料である。 (2) 粒度分布は砂質土と同等であり、通常の砂質土や粘性土よりも軽量で、かつ透水性 が比較的良い。 (3) 地盤材料として適用可能な強度および支持力特性を有する。 (4) 通常の施工手順および建設機械で施工が可能であり、粉塵量の発生が少ない。また、 締め固めた後の長期強度は過大ではなく、容易に掘削が可能である。 (5) 重金属等の有害物質の溶出量および含有量は、溶出量基準および含有量基準にそれ ぞれ適合する。 (6) 物理特性、強度および支持力特性に関する性状の時間的な変化は小さく、環境に対 して長期に亘り安全であり、長期的に安定している材料である。 審査証明結果 (1)物理特性 粒度試験、密度試験、締固め試験、および室内透水試験の結果によれば、粒度分布は 砂質土と同等であり、通常の砂質土や粘性土よりも軽量で、かつ透水性が比較的良い 材料である。 (2)強度および支持力特性 一軸圧縮試験、三軸圧縮試験、室内コーン試験、室内 CBR 試験、および盛土施工試験 による地盤調査の結果によれば、地盤材料としての適用可能な強度および支持力特性 を有する。 (3)施工性 実証盛土に対する現場調査の結果によれば、通常の施工手順および建設機械で施工が 可能であり、施工時に発生する粉塵量は少ない。また、締め固めた後の長期強度が過 大ではないことから、容易に掘削が可能である。 (4)環境に対する安全性 重金属等の有害物質の溶出試験および含有量試験の結果によれば、 「土壌の汚染に係る 環境規準について」(平成 3 年度環境庁告示第 46 号)の定める溶出量規準および「土壌 含有量調査に係る測定方法を定める件」(平成 15 年度環境庁告示第 19 号)の定める含 有量基準にそれぞれ適合する。 (5)安定性 実証盛土に対する長期的な調査結果によれば、正常の時間的な変化は小さく、環境に 対して長期に亘り安全であることから、長期的に安定した材料である。 留意事項 「ゼットサンド」の製造および使用にあたっては、 「ゼットサンド」製造マニュアルなら びに「ゼットサンド」使用マニュアルを参考に、適正な管理のもとに行うこと。 83 参考資料 3.関連法律の概要 ①公有水面埋立法 1935 年に制定された日本の河川、沿岸海域、湖沼などの公共水域の埋立、干拓に関する法律。 公共水面とは広義には、国や都道府県などの公共団体が所有する水域を言うが、一般的には「国が 所有する河、海、湖、沼その他の公共の用に供する水流又は水面」を言う。このため、私有地および、 公有地でも溝渠やため池の用途変更などに伴うものは対象外であると共に、護岸工事や築堤は土地造 成が目的でないため対象外となっている。また、1973 年の改正によって、公有水面の埋立の規制を 図るため、「埋立を行う者は都道府県知事の免許を受けなければならない」等の規定が追加され、工 業団地の造成、空港の整備、干拓など公有水面を埋め立てることによる沿岸海域の生態系維持能力や、 浄化作用の消失による公害・環境汚染、漁業被害に歯止めが設けられた。また、主務大臣は国土交通 大臣であるが、面積 50ha 以上または環境影響評価法対象の 40ha 以上の埋立に関しては、環境大臣 の意見を聴取することになっている。 なお、近年は内陸部において廃棄物等の処理場の整備が困難なため、広域的な廃棄物埋立処分場の 立地を公有水面に求めることが多くなっている。 ②港湾法 1950 年に制定された港湾組織等を定める法律。 一般には、港湾とは船舶の係留施設とその周辺水域(港)をいうが、狭義には「港湾法」の対象と する港をいう。なお、 「漁港」は、 「漁港法」の対象とする港で「港湾」とは区別される。港湾法では、 港湾の重要度に応じて定義を行っており、国際海上輸送網又は国内海上輸送網の拠点となる港湾その 他の国の利害に重大な関係を有する港湾で政令で定めるものを「重要港湾」、重要港湾のうち国際海 上輸送網の拠点として特に重要な港湾で政令で定めるものを「特定重要港湾」、重要港湾以外の港湾 を「地方港湾」と定めている。なお、暴風雨に際し小型船舶が避難のためてい泊することを主たる目 的とし、通常貨物の積卸又は旅客の乗降の用に供せられない港湾で、政令で定めるものを「避難港」 という。重要港湾では、港湾の整備等に関して「港湾計画」を定めることになっている。日本では、 公有水面を埋め立てて大規模な工業団地を造成することが多いが、これらのほとんどは港湾計画に基 いて行われる。この意味で、港湾計画は単に港を整備する計画ではなく、港を中心とした沿海部開発 計画と呼ぶべきものである。また、近年は内陸部において廃棄物等の処理場の整備が困難で、海面に それらの埋立処分地を求めざるを得ないため、広域的な廃棄物埋立処分場を港湾計画に基く港湾施設 として整備することが多くなっている。 ③海岸法 1956 年に津波、高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護することを目的 に制定された法律。 1999 年 5 月には、総合的な海岸管理制度を目指し、(1)海岸環境の整備と保全、(2)公衆の海岸の適 正な利用、が追加され、防護、環境、利用の調和のとれた総合的な海岸管理制度となった。本法に基 づいて都道府県知事が指定した海岸保全区域においては、環境の保全、適正な利用の観点から、海岸 への大型四輪駆動車の乗り入れや、一定の行事に伴う構造物の設置が制限または禁止されている。 84 ④廃棄物の処理及び清掃に関する法律 1970 年に制定されたもので「廃棄物処理法」または「廃掃法」と略称される場合もある。 廃棄物の排出抑制と適正な処理、生活環境の清潔保持により、生活環境の保全と公衆衛生の向上を 図ることを目的に、従来の「清掃法」 (1954)を全面的に改めて制定された。同法では、廃棄物の定 義や処理責任の所在、処理方法・処理施設・処理業の基準などが定めており、廃棄物を「自ら利用し たり他人に売ったりできないため不要になったもので、固形状または液状のもの」と定義すると共に、 廃棄物の発生要因、発生箇所等から産業廃棄物と一般廃棄物とに分類している。また、廃棄物の処理 については、産業廃棄物は排出事業者が処理責任をもち、事業者自らか、または排出事業者の委託を 受けた許可業者が処理することを義務化すると共に、一般廃棄物については当該に市町村が処理の責 任を持つことを示しており、廃棄物行政における国、都道府県、市町村、事業者および国民の責任を 明確化することで、衛生処理および生活環境の保全の観点で、廃棄物の発生抑制、リサイクルの推進 および適正な処理を推進することを目的としている。 ⑤海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律 1970 年に制定された法律で「海防法」と略称される。 同法では船舶、海洋施設及び航空機から海洋に油、有害液体物質等及び廃棄物を排出し、船舶及び 海洋施設において油、有害液体物質等及び廃棄物を焼却することを規制している。さらに海洋の汚染 及び海上災害の防止に関する国際約束の適確な実施を確保し、海洋環境の保全並びに人の生命及び身 体並びに財産の保護に努めることとしている。また、1972 年の廃棄物その他の物の海洋投棄による 海洋汚染の防止に関する 1996 年の議定書(96 年議定書)を締結するため、2004 年に改正が行われ た。主な改正点は、(1)廃棄物の船舶からの海洋投入処分を許可制とすること、(2)廃棄物の海域にお ける焼却の禁止など、である。 ⑥資源の有効な利用の促進に関する法律 「再生資源利用促進法」 (1991 年制定)を抜本的に改正し、2000 年に制定されたものであり、 「リ サイクル法」 、あるいは「資源有効利用促進法」と略称される場合もある。 循環型社会形成の観点から、資源の有効利用の促進を目的にリサイクルの強化や廃棄物の発生抑制、 再使用を定めた法律。同法は、リサイクルしやすい設計を行うべき製品、使用済み製品を回収・リサ イクルすべき製品、生産工程から出る廃棄物を減らしたりリサイクルすべき業種、リサイクル材料を 使用したり部品などを再使用すべき業種など 7 項目について、10 業種 69 品目(2009 年現在)を具 体的に指定している。資源の有効利用の視点から「循環型社会形成推進基本法」で示された「3R(リ デュース・リユース・リサイクル) 」という廃棄物処理の優先順位の考えをもとに、製造・設計段階 における3R 対策、分別回収の識別表示、事業者による自主回収・リサイクルシステムの構築を規定 している。 ⑦環境基本法 従来の「公害対策基本法」または「自然環境保全法」に対して、地球環境保全という新しい視点を 盛り込んで 1993 年に新しく制定された法律。 (1)環境の恵沢の享受と継承等、(2)環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等、(3)国 際的協調による地球環境保全の積極的推進を基本理念に 46 条からなる基本法。同法では、国内で対 85 策を講じるだけでなく、国際的な連携の下に他国との協力を推進する必要があるとの観点から、国、 地方公共団体、事業者、国民の責務を明らかにし、環境保全に関する施策(環境基本計画、環境基準、 公害防止計画、経済的措置など)を順次規定している。また、同法の制定に伴い[公害対策基本法]は 廃止され、「自然環境保全法」も改正された。 なお、同法において 6 月 5 日を環境の日とすることも定められている。 ⑧環境影響評価法 1997 年に制定された、開発事業に対して行われる環境アセスメントの手続を定めた法律。一般に 「アセス法」 、「環境アセスメント法」或いは「環境アセス法」と略称される。 土地の形状の変更、工作物の新設等の事業を行う事業者が、その事業の実施にあたり予め環境影響 評価を行うことが環境保全上重要であることから、環境影響評価について国等の責務を明確にすると 共に、環境影響の程度が大きな場合は適切な措置を講じて、環境保全を確保することを目的とした法 律。本法における環境影響評価とは、事業の実施が環境に及ぼす影響について環境の構成要素に係る 項目ごとに調査、予測・評価を行い、その事業の環境保全の措置を検討し、環境影響を総合的に評価 すること定義されている。また、環境アセスメントを実施する対象事業としては、道路、河川、鉄道、 飛行場、発電所、廃棄物最終処分場、埋立て・干拓、土地区画整理事業、新住宅市街地開発事業、工 業団地造成事業、新都市基盤整備事業、流通業務団地造成事業および宅地の造成事業の 13 事業が定 められており、それぞれ事業規模の大きさによって第一種事業と第二種事業を定めている。 ⑨国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律 2001 年 4 月に施行された法律で「グリーン購入法」と略称されている。 グリーン購入とは、商品やサービスを購入する際に必要性をよく考え、価格や品質だけでなく、環 境への負荷がすくないものを優先的に選定する行為をさす。たとえば、再生紙のノートや低公害車な どの調達を推進すると共に、環境物品等に関する適切な情報提供を供給することで持続可能な循環型 社会の構築を実現することを目的としている。国の事業ではグリーン購入が最優先であり、地方公共 団体は国に準ずるもの、民間は努力規定となっている。国等が重点的に調達を行う環境物品に関して は、特定調達品目に定められている。なお、特定調達品目とは、グリーン購入法で定められている国 等の各機関が重点的に調達を推進する環境物品等の種類であり、特定調達品目およびその判断基準等 については、毎年見直しが行われている。 ⑩建設工事に関わる資材の再資源化等に関する法律 2000 年 4 月に制定されたもので「建設リサイクル法」と略称されている。 一定規模以上の建設工事を行うにあたり、資源の有効利用や廃棄物の適正処理を推進するため、建 設廃棄物(建設工事で出る廃棄物)の分別・リサイクルなどを行うことで、建設廃棄物の排出量の抑 制、減量、再生利用を推進することを目的とした法律。 同法では、一定規模以上の建築物の解体・新築工事を請け負う事業者に、対象となる建設資材(土 木建築工事に使われる資材)の分別・リサイクルを義務付けた。特に、コンクリート、 アスファル トおよび木材の3品目については特定建設資材と規定し、リサイクルを義務化している。また、工事 の発注者や施工者には、工事の時期や工程、建設資材の種類や量などを事前に都道府県知事に届け出 ることが義務付けられた。 86 ⑪循環型社会形成推進基本法 循環型社会の形成を総合的・計画的に推進することを目的に 2000 年に制定された法律。 同法は資源消費や環境負荷の少ない「循環型社会」の構築を促すことを目的として、国、都道府県、 市町村、事業者および国民の役割分担を明確にすると共に、循環型社会形成推進基本計画の策定、排 出者責任並びに拡大生産者責任等施策の基本となる事項を定めている。また、同法では(1)循環型社 会の定義の明確化、(2) 「循環資源」の定義(廃棄物や生産活動で排出される不要物などのうち、売 れるか売れないかに関わらず、再び利用できるもの)と再使用やリサイクル推進、(3)廃棄物処理や リサイクル推進における「排出者責任」と「拡大生産者責任」の明確化、(4)廃棄物処理やリサイク ルの優先順位(発生抑制→再使用→再生利用→熱回収(サーマルリサイクル)適正処分)の規定、な どを示している。 ⑫土壌汚染対策法 2002 年 5 月の制定された法律で「土対法」と略称されている。 土壌汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康被害の防止に関する措置を定める こと等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護することを目的としたものであ り、現行法では(1)法が定める有害物質使用特定施設を廃止するとき、および(2)土壌汚染により健康 被害が生じる恐れがあると都道府県知事が認めるときに、土壌汚染調査の実施を義務付けしていたが、 2009 年の改正により、(3)3,000m2 以上の土地の形質変更の届出時において、都道府県知事がその土 地に汚染の恐れがあると見なしたとき、も土壌汚染調査の実施が義務付けられた。 調査によって基準に適合しない区域の土地は都道府県知事等により指定区域に指定・公示されると ともに、指定区域台帳に記帳して公衆に閲覧される。また、当該指定区域の土壌汚染により健康被害 が生ずるおそれがあると認められる場合には、汚染原因者、汚染原因者が不明等の場合は土地所有者 等に対し、汚染の除去等の措置が命令されると共に、当該指定区域においては土地の形質の変更が制 限される。土壌汚染による健康被害に対するリスクは土壌・地下水の暴露経路をもとに、土ほこりを 吸引するなどの「直接摂取」と、地下水を飲用する「間接摂取」の観点から判断されている。すなわ ち、暴露があった場合は土壌環境基準以下に浄化されればリスクはない、あるいは許容されると判断 され、暴露がある場合であっても、汚染されている土壌に触れる事がない場合や、地下水の飲用がな い場合はリスクはない、あるいは許容されると判断される。 なお、土壌汚染対策法では土壌環境基準に示される 25 物質が特定有害物質として示されている。 87 石炭灰混合材料利用時に関連する法律一覧(1/2) 名称 ①公有水面埋立法 通称・略称 埋立法 法令番号 大正 10 年法律第 57 号 種類 ④廃棄物の処理及び清掃に関す ⑤海洋汚染及び海上災害の防止 ⑥資源の有効な利用の促進に関 る法律 に関する法律 する法律 リサイクル法、資源有効利用推 廃棄物処理法 海洋汚染防止法、海防法 進法 ②港湾法 ③海岸法 昭和 25 年法律第 218 号 昭和 31 年法律第 101 号 昭和 45 年法律第 137 号 昭和 45 年法律第 136 号 平成 3 年法律第 48 号 法律 法律 環境法 産業法 法律 主な内容 水面埋立と干拓について 港湾などについて 海岸の保護などについて 廃棄物の抑制と適正な処理、生 海洋汚染や海上災害の防止等に リサイクルについてなど 活環境の清潔保持 ついて 最新改正 1978 年 9 月 20 日 2008 年 6 月 13 日 2002 年 2 月 8 日 2002 年 5 月 2 日 2007 年 5 月 30 日 2002 年 2 月 8 日 主務官庁 国土交通省 国土交通省 国土交通省 環境省 国土交通省 経済産業省、環境省 概要 対象は「公の水面を埋め立てて 土地を造成する」行為とその実 施者。私有地および護岸工事や 築堤は土地造成が目的でないた め対象外。 面積 50ha 以上または環境影響 評価法対象の 40ha 以上の埋め 立てに関して、環境大臣の意見 を聴取する必要がある。 交通の発達および国土の適正な 利用と均衡ある発展に資するた めに、港湾の秩序ある整備と適 正な運営を図るとともに、航路 を開発し、保全することを目的 とした法律。港湾管理者である 港務局等の設立、その業務・組 織・財務などのほか、港湾計画、 港湾区域内の工事等の許可、臨 港地区の指定、港湾工事の費用、 開発保全航路など、港湾の開 発・利用および管理の方法など について定めたもの。 制定時は津波、高潮、波浪等に よる被害から海岸を防護するこ とを目的としたが、1999 年の改 正により、 「海岸環境の整備と保 全」、 「公衆の海岸の適性な利用」 を追加。 廃棄物の排出抑制と適正な処 理、生活環境の清潔保持により、 生活環境の保全と公衆衛生の向 上を図ることを目的に、従来の 「清掃法」 (1954)を全面的に改 めて制定された法律。 廃棄物の定義や処理責任の所 在、処理方法・処理施設・処理 業の基準などが定められてい る。 船舶、海洋施設及び航空機から 海洋に油、有害液体物質等及び 廃棄物を排出し、船舶及び海洋 施設において油、有害液体物質 等及び廃棄物を焼却することを 規制した法律。 廃棄物の船舶からの海洋投入 処分の許可制、廃棄物の海域に おける焼却の禁止なども追加規 定されている。 循環型社会形成の観点から、資 源の有効利用の促進を目的にリ サイクルの強化や廃棄物の発生 抑制、再使用を定めた法律。 リサイクルしやすい設計を行う べき製品、使用済み製品を回 収・リサイクルすべき製品、生 産工程から出る廃棄物を減らし たりリサイクルすべき業種、リ サイクル材料を使用したり部品 などを再使用すべき業種などを 具体的に指定している。 基本的には港湾設備の機能を定 義する法律であることから、使 用材料に関する規定は対象外と 考えられる。 海岸の防護、海岸環境の整備・保 全が主たる目的の法律であるた め、石炭灰混合材料を護岸構造 物の背面に利用することで、護 岸構造物(堤体等)の断面寸法 を縮小しても同様の機能が得ら れること、液状化に対しても有 効であることを確認する必要が ある。 廃棄物の定義において、フライ アッシュがばい塵、クリンカア ッシュが燃え殻に該当すること から使用する石炭灰が適性に処 理されていることを確認する必 要がある。一般に石炭灰を利用 する際には、 「有償売却」 、 「自ら 利用」のスキームを利用する方 法と、石炭灰を再生加工して「新 たな産業資材」として使用する 方法が考えられる。 石炭灰混合材料を用いた施工時 において、海洋の汚染がないこ とを水質(濁度等)を監視する ことで確認する必要がある。供 用時においては、石炭灰混合材 料を利用した箇所からの有害物 質の流出がないことを確認する 必要がある。 電力事業に係る石炭灰が指定副 産物に指定されていることか ら、石炭灰混合材料の利用が資 源有効利用推進の上で有用なも のであることを工事発注者、事 業者に認識してもらう必要があ る。 △ ◎ ◎ ○ ○ ◎ http://law.e-gov.go.jp/htmldata/ S45/S45HO136.html http://law.e-gov.go.jp/htmldata/ H03/H03HO048.html 石炭灰混合材料を港 護岸整備および築堤を行う場合 は対象外と考えられる。 湾工事に利用する場 港湾埋立材料として石炭灰混合 材料を使用する場合は、事業者 合の留意点 が都道府県知事に許可申請を行 う際に、埋立材料として石炭灰 混合材料を用いることを明示す る必要がある。 計画時 ○ 利用時の 設計時 関連性 施工時 ○ 供用時 △ 条文HP http://law.e-gov.go.jp/htmldata/ T10/T10O057.html http://law.e-gov.go.jp/htmldata/ S25/S25HO218.html http://law.e-gov.go.jp/htmldata/ S31/S31HO101.html 88 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/ S45/S45HO137.html 石炭灰混合材料利用時に関連する法律一覧(2/2) 名称 ⑧環境影響評価法 ⑦環境基本法 通称・略称 ⑨国等による環境物品等の調達 ⑩建設工事に係る資材の再資源 ⑪循環型社会形成推進法 の推進等に関する法律 化等に関する法律 アセス法、環境アセス法、環境 グリーン購入法 アセスメント法 建設リサイクル法 ⑫土壌汚染対策法 土対法 法令番号 平成 5 年法律第 91 号 平成 9 年法律第 81 号 平成 12 年法律第 100 号 平成 12 年法律第 104 号 平成 12 年法律第 110 号 平成 14 年法律第 53 号 種類 環境法 産業法 産業法 産業法 法律 行政法 主な内容 環境保全について 環境影響評価など グリーン購入について 建設資材のリサイクルについて 循環型社会の構築など 土壌汚染の防止など 最新改正 1993 年 11 月 19 日 2008 年 6 月 18 日 2003 年 7 月 16 日 2004 年 12 月 1 日 主務官庁 環境省 環境省 環境省 国土交通省 環境省 環境省 概要 環境保全の基本理念を定め、国、 地方公共団体、事業者及び国民 の責務を明らかにすると共に、 環境の保全に関する施策の基本 事項を設定した環境保全に関す る基本法。 「環境への負荷」、「地球環境保 全」および「公害」を定義。 地の形状の変更、工作物の新設 等の事業を行う事業者が、その 事業の実施にあたり予め環境影 響評価を行うことが環境保全上 重要であることから、環境影響 評価について国等の責務を明確 にすると共に、環境影響の程度 が大きな場合は適切な措置を講 じて、環境保全を確保すること を目的とした法律。 商品やサービスを購入する際 に、価格や品質だけでなく、環 境への負荷がすくないものを優 先的に選定することの推進を目 的にした法律。 国の事業ではグリーン購入が最 優先であり、地方公共団体は国 に準ずるもの、民間は努力規定 となっている。国等が重点的に 調達を行う環境物品に関して は、特定調達品目に定められて いる。 一定規模以上の建設工事を行う にあたり、資源の有効利用や廃 棄物の適正処理を推進するた め、建設廃棄物(建設工事で出 る廃棄物)の分別・リサイクル などを行うことで、建設廃棄物 の排出量の抑制、減量、再生利 用を推進することを目的とした 法律。 廃棄物・リサイクル問題の解決 のため、「大量生産・大量消費・ 大量廃棄」型の社会から脱却し、 環境への負荷が少ない「循環型 社会」形成を推進するための基 本的な枠組みとなる法律。 「循環型社会の定義」、「資源循 環の定義」、 「排出者責任」と「拡 大生産者責任」の明確化、 「リサ イクルの優先順位の規定」など を示している。 土壌汚染の状況の把握に関する 措置及びその汚染による人の健 康被害の防止に関する措置を定 めること等により、土壌汚染対 策の実施を図り、もって国民の 健康を保護することを目的とし た法律。 2009 年の改正により、3,000m2 以上の土地の形質変更の届出時 において、都道府県知事がその 土地に汚染の恐れがあると見な したとき、も土壌汚染調査の実 施が義務付けられた。 港湾工事そのものに体して環境 影響評価を行う必要がある。こ の際に石炭灰混合材料を使用す ることで、新たな環境影響があ ると判断された場合は、事前に 適切な環境保全対策措置を講じ る必要がある。 石炭灰と同様に産業副産物であ るスラグ類(高炉スラグ、銅スラ グ、フェロニッケルスラグ等) は、コンクリート用骨材のみな らず、これらを用いた盛土材、 ケーソン中詰め砂が既に特定調 達品目に指定されており、港湾 工事で利用する石炭灰混合材料 も裏埋め材、盛土材として特定 調達品目に指定されることが有 効活用を促進させる上で必要。 浚渫土を含む建設発生土に石炭 灰を混合して石炭灰混合材料を 製造して有効利用することで、 建設発生土の発生抑制に寄与で きることを示す必要がある。 石炭灰混合材料の使用が、産業 廃棄物の再使用、再生利用に該 当することを工事関係者(事業 者、排出責任者等)が認識するこ とが重要。また、天然の土砂を 使用せず、石炭灰リサイクル材 を用いることで自然環境への負 荷も軽減できることを周知させ る必要がある。 基本的には本ガイドラインで適 用範囲として港湾工事箇所は対 象外と考えられる。なお、本法 では土壌汚染による健康被害に 対するリスクは土壌・地下水の 暴露経路をもとに、土ほこりを 吸引するなどの「直接摂取」と、 地下水を飲用する「間接摂取」 の観点から判断しており、地下 水の飲用がない港湾において石 炭灰混合材料を利用する場合 は、表面が暴露されなければリ スクはない、あるいは許容され ると考えられる。 石炭灰混合材料利 護岸構造物の裏埋め等に石炭灰 混合材料を使用することで、港 用における留意点 湾内への有害物資の流出がない ことを、逆に石炭灰を利用する ことで土砂等の吸出し等がなく なり、周辺環境への負荷が軽減 されることを確認する必要があ る。 2009 年 4 月 24 日 利 用 時 計画時 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ の 関 連 設計時 ○ ○ ○ ○ ◎ 性 △ △ ◎ 施工時 ○ 供用時 条文 △ http://law.e-gov.go.jp/htmldata/ H05/H05HO091.html http://law.e-gov.go.jp/htmldata/ H09/H09HO081.html ○ http://law.e-gov.go.jp/htmldata/ H12/H12HO100.html 89 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/ T10/T10O057.html http://law.e-gov.go.jp/htmldata/ H12/H12O110.html http://law.e-gov.go.jp/htmldata/ H14/H14HO053.html