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糖尿病と足病変
松園第二病院 第一回糖尿病教室 2014年09月05日(金)11:00-11:15 糖尿病と足病変 フットケアの重要性 松園第二病院 紺野 神経内科 衆 「糖尿病が強く疑われる者」および 「糖尿病の可能性を否定できない者」の推計人数 平成24年 国民健康・栄養調査結果の概要 厚生労働省 健康局がん対策・健康増進課 担 当: 栄養指導室栄養調査係 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital 糖尿病患者数ワースト10 順位 都道府県 総患者数 人口1万人 当たり 1 島根県 23,000人 313.73人 2 青森県 43,000人 300.59人 3 徳島県 23,000人 285.38人 4 香川県 28,000人 274.69人 5 秋田県 29,000人 256.45人 第6位 岩手県 34,000人 248.78人 7 大分県 30,000人 246.83人 8 長崎県 36,000人 245.03人 9 山形県 29,000人 242.87人 10 宮崎県 28,000人 241.17人 2008年厚生労働省 患者調査より改変 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital BMI平均値 ワースト20 平成24年 国民健康・栄養調査結果の概要 厚生労働省 健康局がん対策・健康増進課 担 当: 栄養指導室栄養調査係 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital 男子小中学生肥満率ランキング 順位 都道府県 肥満率 1 青森県 13.75% 2 徳島県 13.55% 3 福島県 13.20% 4 山形県 13.00% 5 宮城県 12.35% 6 岩手県 12.20% 7 秋田県 12.00% 8 栃木県 11.90% 9 山梨県 11.80% 10 沖縄県 11.60% 2010年文部科学省 全国体力・運動能力・運動習慣調査より改変 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital 糖尿病の合併症 糖尿病で恐ろしいのは合併症 全て合併症で亡くなり、約40%が血管病で死亡。 糖尿病の平均寿命67歳 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital 糖尿病患者の脳卒中発症率は非糖尿病者の約3.5倍 脳血管障害 /1,000人・年 10 約3.5倍 イ 8 ベ ン 6 ト 発 4 生 率 2 0 10 7.8 イ 8 ベ ン 6 ト 発 4 生 率 6.5 1.9~2.3 2 JDCS 9年次 久山町研究(1988) (2007) 非DM DM 虚血性心疾患 /1,000人・年 0 約5.6倍 8.9 5.0 1.6 非DM DM JDCS 久山町研究(1988) 9年次 (2007) 久山町研究:福岡県久山町の住民2,673例を1988年から前向きに追跡(第三集団)。 JDCS(Japan Diabetes Complication Study):1996年より日本の2型糖尿病患者2,205例を前向きに追跡。 山田信博:Heart View.8(9):91,2004 から作図;JDCS 9年次データは山田信博:糖尿病学の進歩(第41集):238,2007。 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital HbA1Cが1%上昇すると脳卒中の発生リスクは17%高まる 2型糖尿病患者におけるHbA1Cと 心血管イベント発生リスク メタアナリシス イベント / 人 RR (HbA1C 1%↑) 95%CI 脳・心血管疾患 (CHD+脳卒中) 1378/7435 1.18 1.10-1.26 致死的・非致死的CHD 1248/6684 1.13 1.06-1.20 致死的CHD 526/3042 1.16 1.07-1.26 脳卒中 396/5962 1.17 1.09-1.25 対象・方法:1966~2003年の間に報告された糖尿病患者におけるHbA1Cと心血管疾患に関する13コホート研究のメタアナリシス。 Selvin,E. et al.:Ann.Intern.Med.141:421,2004 から改変。 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital アテローム血栓症を全身の血管病変 Polyvascular diseaseの可能性を考えて管理する必要 神経内科、脳神経外科 × 脳 Cerebrovascular Disease (CVD) • アテローム血栓性脳梗塞 • 一過性脳虚血発作(TIA) × × Atherothrombosis アテローム血栓症 循環器内科 心臓 × Coronary Artery Disease (CAD) • 安定/不安定狭心症 • 心筋梗塞 循環器内科、心臓外科 末梢動脈 「脳梗塞患者さんだけれども,心臓や 足の動脈は大丈夫なんだろうか?」 常に、他の血管系にも関心をもちながら診療。 Peripheral Arterial Disease (PAD) • 間歇性跛行 • 安静時疼痛 • 壊疽・壊死 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital 世界における死亡原因の割合(2002年) 24.6% アテローム血栓症* 14.2% 感染症 12.5% 癌 事故死 WHO 9.1% 肺疾患 6.5% AIDS 4.9% 0 5 10 15 20 25 30(%) 死亡原因の割合 * アテローム血栓症:虚血性心疾患、脳血管疾患、炎症性心疾患および高血圧性心疾患(末梢動脈疾患は含まれていない)。 † 調査対象は、WHO地域による加盟国(アフリカ、アメリカ、東地中海、ヨーロッパ、東南アジア、および西太平洋)と定義した。 The World Health Report 2004. Geneva: WHO: 2004.より作成 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital 2010年の健康寿命(厚労省) 健康寿命:介護が必要なく元気で過ごせる期間。 歳 健康寿命の全国平均 平均寿命 日本経済新聞 男性70.42歳 男性79.55歳 女性73.62歳 女性86.30歳 2012年6月2日 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital アテローム血栓症を全身の血管病変 Polyvascular diseaseの可能性を考えて管理する必要 神経内科、脳神経外科 × 脳 Cerebrovascular Disease (CVD) • アテローム血栓性脳梗塞 • 一過性脳虚血発作(TIA) × × Atherothrombosis アテローム血栓症 循環器内科 心臓 × Coronary Artery Disease (CAD) • 安定/不安定狭心症 • 心筋梗塞 循環器内科、心臓外科 末梢動脈 「脳梗塞患者さんだけれども,心臓や 足の動脈は大丈夫なんだろうか?」 常に、他の血管系にも関心をもちながら診療。 Peripheral Arterial Disease (PAD) • 間歇性跛行 • 安静時疼痛 • 壊疽・壊死 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital PAD患者の生命予後 PAD重症度分類別の生存率 5年生存率 (%) 5) 100 100 84.6 80 64.0 生 存 率 67.3 61.6 80 68.0 60 47.8 40 生 存 率 対象 60 40 重症虚血肢 20 間歇性跛行 20 0 0 1 ) 2) 3) PAD 4) 1) 1) 5 10 15(年) 追跡期間 1)厚生労働省がん研究助成金「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成16年度報告書 2)対馬信子 他:循環器病研究の進歩12(1):26-36.1991 3)Kobayashi M et al:jpn Cir J.64(12):925-927.2000 4)熊倉久夫 他:脈管学46(5):565-570.2006 5)Norgren L et al:Eur J Vasc Endovasc Surg.33(Suppl 1):S1-75.2007 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital 末梢動脈疾患のリスクファクター TASCⅡ日本脈管学会 1 オッズ比 2 3 4 男性(女性と比較して) 年齢(10年単位) 糖尿病 抗血小板薬+リスク管理 喫煙 高血圧 脂質異常症 高ホモシステイン血症 人種(アジア系/ヒスパニッシュ系/黒人 対 白人) CRP 腎不全 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital 血圧脈波測定装置 ABI-formによるABI/PWVの測定法 ・Ankle brachial index (ABI):ASOの指標. ABI<0.9は下肢虚血症状にかかわらず ASOが疑われる. ABIおよびPWV 同時に測定可能 form PWV/ABI (COLIN) 14年前から使用の機種 ・脈波伝播速度 (pulse wave velocity; PWV): 動脈壁硬化の指標. ABI測定の対象者(ACCF/AHAのPADガイドライン、2011) ・65歳以上 ・50~69歳で喫煙または糖尿病 ・労作時の下肢症状または身体機能の低下 ・下肢虚血検査の異常 ・心血管系リスクの評価 ・測定方法: PWVおよびABIは,オシロメトリック法を原理とする血圧脈波測定装置 ABI-formを用いて、 上腕および下腿にマンシェットを巻き、四肢血圧および脈波を同時に測定して算出される。 ・測定時間: 7~8分前後 (door to door)。実際の測定時間5分くらい。当院では臨床検査技師が測定。 ・正常値: ABI 1.0~1. 2。 ABI < 0.9は下肢虚血症状にかかわらずASOが疑われる。 感度95%、特異度99% (ペンシルバニア大 Mohler先生)。 ・保険点数: 130点 (H20年4月~)。以前は150点。 ・検査回数: 6ケ月に1回程度が望ましい。当院では、レセプト対策に前回検査日を併記。 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital 検査結果:53歳、男性のABI/PWV 経時変化 ABI 60代男性の 平均ライン PWVの 経時変化 PWV ● PWVの グラフ ABIの 経時変化 体重の 経時変化 ・baPWV(cm/s)=距離(上腕-足首動脈)/脈波伝播時間 baPWV: brachial-ankle pulse wave velocity, 上腕足首動脈の脈波伝播速度. ・PWVの値が大きいほど、動脈壁の硬化が進展していることを示す。 ・ABI=足首最高血圧/上腕最高血圧 経時変化をみることで治療効果を判定できる。 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital 東北糖尿病合併症フォーラム 06 2006年3月6日、仙台. 外来での糖尿病患者様 へのフットケアの現状 松園第二病院 看護科 田中奈保子 糖尿病患者100例の背景 平 男性 62名/ 女性 年齢 糖尿病罹病歴 HbA1c 高血圧 高脂血症 喫 煙 飲 酒 38名 65.6 歳 10.0 年 7.56% 70% 60% 55% 43% 【はじめに】 糖尿病で受診していた患者様が、壊疽 による足関節から切断に至った事例の 体験から患者様自身が神経障害の程度 を知り、合併症の早期発見と足病変へ の意識を高めて自己管理できるように 5月から外来でフットケアに取り組ん でいる。 フットケアの実際 調査票を用いて足の状況の観察をしている。 問 診:神経障害症状、視力、腎機能などの 合併症、食事や運動、入浴などの生活 習慣について聞き取り 視 診:傷や白癬、皮膚色、ウオノメ、タコ、 皮膚の乾燥 触 診:アキレス腱反射、痛覚、動脈触知 こむらがえり ある29% n=100 なし71% 足の自覚症状 症状の程度 しびれ感 ピリピリ痛む 砂利の上を歩いている/ 紙が張りついた感じ 弱い 12 10 3 やや強い n=100 強い 75% 6 21 91% 10 1 2 87% 無し 入浴回数および湯たんぽ使用 n=100 入浴回数 毎日 68% 4~6/週 2~3/週 11% 19% 0~1/週 1% 無回答 1% 湯たんぽの使用 無し 86% 有り 10% 無回答 4% 足の外観 異常あり 異常なし 白 癬 皮膚乾燥 変 形 潰 瘍 その他 n=100 79% 21% 47% 17% 4% 0% 0 72% 皮膚色調不良30、タコ等23名 (多重回答あり) 指導の実際 観察の仕方:入浴時や寝る前に傷や発赤、指の 間の浸潤などの確認を毎日するよう に家族も含めて説明 入浴の仕方:足の感覚が低下しているので手で お湯の温度を確かめてから入浴す るよう指導 熱 傷 予 防:熱傷の写真を見せながら電気毛布の 使用をすすめる 皮膚ケア:清潔の必要性についてポイントを説明。 とくに、高齢者の方には実際に足浴 しながら習得できるよう指導 足浴の指導:血流の改善に効果的であることを 説明。皮膚色の悪い方にはフットバス 15分間実施 爪の切り方:爪の切り方のパンフレットを用いて 指導。必要時看護師が実施 当院では今後、外来を中心に 糖尿病の方の足を守るための フットケアに力を入れる予定 Department of Neurology, Matsuzono Second Hospital