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第15回経済学部 学内ゼミナール大会 光藤ゼミ提出論文 <日本における

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第15回経済学部 学内ゼミナール大会 光藤ゼミ提出論文 <日本における
第15回経済学部
学内ゼミナール大会
光藤ゼミ提出論文
<日本における電子商取引の
将来を考える>
はじめに
ー電子商取引とは?ー
991417
森
大三朗
第1章
BtoC取引の現状と将来を考える
991235
高橋
第2章
BtoB取引の現状と将来を考える
991062 梅岡
理英子
春
991324
野間
智子
991462 渡部
朱里
991263 田端 啓介 991392 眞鍋 弘 991460 渡部 圭
第3章
PtoP取引の将来性について考える
991113
上中
第4章
電子商取引の安全性について
康輔
991266 丹下
靖浩
991417 森
大三朗
991105 片岡 有 991393 丸山 英人 991421 森田 大輔 981441 山崎 剛嗣
終わりに
ー将来予測ー
991417
森
大三朗
1
はじめにー電子商取引とは?ー
私達は世界中で爆発的に広がっている電子商取引について取り上げ、その現状や将来性
などを調べました。まず、電子商取引(EC)とは経済主体間での財の商業的移転に関わ
る受発注者間の物品、サービス、情報、金銭の交換をインターネット技術を利用した電子
的媒体を通して行うことです。ここでいう「インターネット技術」とはTCP/IPプロト
コルを利用したものをさしており、物理的ネットワーク回線は、公衆電話回線網、ISD
N、専用IP網、インターネットVPN、衛星通信、ケーブルテレビインターネット、移
動通信網などが含まれます。また、ECに関する市場はいくつかの層がありますが、EC
として市場規模に含まれているのは、原則としてウェブサイト上で受発注が行われる「ネッ
ト完結型EC」(エンターティメント、旅行品目などに該当)と、インターネット上での受
発注前の行為が契機となって取引につながる「ネット非完結型EC」(金融、サービス、自
動車などに該当)があります。全体的にみると、ネット完結型ECは非完結型ECをわず
かに上回っているのが特徴です。現在、世界中でインターネットが普及し、企業や各個人
に様々な活用法で使われています。私達はBtoC、BtoB、PtoPの3つに形態に
ついて考えてみました。
BtoCは企業と個人の取引で日本での普及率、市場規模などを取り上げています。最
近ネットの普及が進むにつれ、書籍やCD、洋服などをネット上で注文しカードや銀行振
込で支払いをするだけで簡単にネット上で商品が手に入るのは、まさに購入する手段が増
えたといえるでしょう。そして、BtoCの新しい形態として出てきたのが携帯電話での
取引です。これは、i−modeを中心とした様々なコンテンツの配信や通信販売などの
サービスを行うものです。第1章ではこのような事について説明します。第2章のBto
Bは企業対企業の企業間取引の事です。例えば、自動車業界では部品の発注などにインタ
ーネットを利用してコストの削減、多くの企業の参加を募る、などの利点があります。こ
のようなことを詳しく説明します。第3章のPtoPは個人と個人の取引で競り売り形式
で売買するネットオークションをとりあげ、取引上のトラブルの解決策やお勧めのオーク
ションサイト紹介、問題点を説明していきます。最後に、第4章は電子商取引の安全性に
ついて取り上げています。セキュリティ問題や秘密・公開暗号方式、SSL、SETの方
式などについて詳しく説明していきます。
2
第1 章
BtoC取引の現状と将来を考える
1 BtoCの定義
(1)B to C とは?
電子商取引の形態のひとつであり、B = business C = consumer の略である。消費者
向けの小売りを意味する。インターネットのオンライン店舗などによるさまざまなサービ
スや物品の販売をしめす。B to Cのことを「コンシューマ EC」とも言う。「コンシューマ
EC」とは両者間の取引を電子上で行う新しい形態の商取引のことで、今までは近くの商店
街や都市の百貨店へ出かけて買い物をしていたのが、パソコン回線を利用して家庭やオフ
ィスから欲しいものが購入できる企業−消費者間 EC である。
(2)産業社会に衝撃を与える EC
パソコン及びインターネットの急速な発展・普及や経済・社会活動の変化により電子商
取引(EC)は企業間の取引(企業間 EC)、消費者対企業間の取引(コンシューマ EC)の
いずれも急速に拡大し、市場規模も高い予測がなされている。これほどまでに盛り上がり
を見せている大きな背景は、ビジネスのスピードアップ、グローバルな競争激化、産業構
造の変革などの企業を取り巻く経営環境が大きく変化しているからである。このような環
境の中で、電子商取引は企業活動におけるコストの削減のみならず新ビジネスの創造、消
費者への利便性の向上など企業変革の起爆剤になると期待されている。
一方、生活面では自宅にいながらにして世界中の品物を買うことのできるホームショッ
ピングを楽しんだり、天気予報、新聞ニュースなどの生活情報の収集や航空券、コンサー
トのチケットの予約を行ったりと様々なサービスが提供され、時間的・場所的制限から開
放されようとしている。また、EC は個人の生活に加え、産業の社会にも大きなインパク
トを与えている。
3
2 BtoCのメリット
・話題性の高いコンシューマ EC
オンラインショッピングに代表されるように、企業と消費者の間で行われる取引が活性
化されている。利用者サイドから見れば、
① 24 時間、365 日取引が可能であり、時間的な制約がない。
② 日本国内はもとより海外に至るまでグローバルな取引ができ、距離的制約もない。
③ さまざまな情報がリアルタイムに収集できる。
ことなどがメリットとしてあげられる。
コンシューマ EC のビジネス形態としては、商取引型(オンラインショッピング)
、コミ
ュニティ型、コンテンツ型(情報提供)の三つに分類することができる。商取引では、若
い女性を主要にターゲットにショッピング、チャットのサービスを行っている「まちこ」と
いうサイバーモールをはじめ、米国の「アマゾン・コム」に代表され、日本でも大手書店が
続々と参入している書籍販売やパソコン販売など、リアル店舗で、販売されている商品の
ほとんどをネット上でショッピングすることができる。
また、最近話題となっているのがインターネット・オークションだが、これは後の3章
でPtoPとして取り上げる。その他にも、インターネットによる音楽配信が現実となっ
てきたことや手数料の自由化などの規制緩和により、株の取引を行うインターネット証券
が登場している。次に、コミュニティ型、情報提供型ではビジネスマンに向けに出張の際、
行き先までの適切な交通機関や出発時刻の割り出し、ホテルの予約などのビジネス関連情
報を提供する「Business network」がある。そして、新聞ニュース、天気予報などの生活関
連情報、旅行、スポーツなどの趣味に関するサイトが数多くサービスを行っている。また、
インターネットを介して世界中の人々とひとつのゲームで楽しむネットワークも注目を集
めているもののひとつである。
4
3 BtoCの事例
楽天市場
http://www.rakuten.co.jp/
日本最大のネット販売
まちこ
http://www.machiko.or.jp/
楽天市場に次ぐネット販売
おみやげ日本
http://www.omiyage-nippon.com/
日本独特の商品をネットで販売
4
BtoCの現状と将来
(1)調整データが示す現状と将来
電子商取引推進協議会(ECOM)、アクセンチュア(旧アンダーセンコンサルティング)
及び、経済産業省(旧通商産業省)の共同調査、「平成12年度電子商取引に関する市場規
模・実態調査」(注1)によると、2000年のBtoC市場規模は8,240億円と推計され、
1999年調査時の2000年推計値7,730億円を6,6%上回り、2000年1年
間で約145%の急成長を遂げている。BtoC市場は今後5年間で約16倍の拡大が見込
まれていて、2005年には13,3兆円に達すると推計されている。
BtoC EC市場規模実績・予測
5
BtoC EC品目別市場規模予測
今後はエンタティンメント、金融、旅行(ホテル・航空券予約等)、サービス(飲食サー
ビスの予約等)、書籍・音楽等、購入の際に現物を直接見たり手に触れたりする必要性の薄
いセグメントで順調な拡大が見込まれ、2005年には、この5つのセグメントの合計で
全モバイルEC市場の4分の3程度にまで拡大するものと推計される。
5
EC の推進要因
(1)携帯端末
iモードを先頭に、携帯・インターネット利用者は既に2千万人を突破し、日本人の6
人に一人が利用しているなどインターネット利用の携帯電話は有力メディアツールにのし
上がっている。携帯メール・携帯コンテンツ利用者は現在圧倒的に若者層であり、平均年
齢は25歳前後よりやや若い層である。しかし、最近ビジネス用やビジネスマンの情報ツ
ールとして携帯メールを中心として深く浸透しつつあり、携帯端末の多様化と合わせて利
用されている。
その動きはアジアを中心に日本もトップグループにあり、アメリカを抜いているほか、
6
日本のモバイルコマース市場は2005年には1兆円を超えるといわれるなど大きな発展
を遂げている。携帯電話を中心として次の4グループが関連ビジネス領域を形成しており、
しかも、現状ではこれらはビジネス・技術ともに発展過程にあって、大中小・中堅企業を
問わず可能性を模索しているのが実態であることに注意したい。
あらゆるもの(情報端末・家電等を含む)がモバイル形式を含めてネットワーク化され
るといわれている。そのビジネスに及ぼす影響は非常に大きなものがあるが、利用者の日
常生活においても様々なサービスと機能の提供が予想される。例えば、携帯端末を利用し
た次のものなどが想定される。
①「テレビ電話や画像の遠隔送受信」
②「遠隔リモコン」(家電・各種機器の遠隔リモコンン)
③「電子財布」(公共交通機関・自販機・その他の料金回収、キャッシュ代行機能)
④「各種エ−ジェント」(ニーズ従い自動的に、又は適時、情報を検索提供する)
⑤「情報ゲットと保存」(電子チケット・クーポン等)等
(2)ブロードバンド
一般家庭用では ISDN(64kbps)よりも広帯域なネットワーク接続をいい XDSL, CATV ネッ
トワーク, FTTH などがブロードバンドにあたる。企業用としては明確な基準はなく、
ATM(155Mbps)以上をこう呼ぶ人もいれば、1Gbps 以上でないとブロードバンドと言わない
人もいる。
ブロードバンド化はユーザーのアクセス回線の帯域が多様化していくことを意味する。
各事業者には、それぞれの帯域に応じたサービス戦略が求められることになる。
(3)クリック&モルタル
伝統企業を意味するブリック&モルタル(店舗を構えて商売を営む伝統的ビジネスの総
称)の「ブリック」をネットビジネスの象徴であるマウスの操作の「クリック」に置き換えた
ものである。
2000年春に、それまで最高値を更新し続けていたドットコム企業の株価が一斉に値
を下げてしまってネットバブルが崩壊した。崩壊の経緯については、ドットコム企業の多
くが、「インターネットを導入しさえすれば、あらゆるビジネスを変えることができる」と
いう幻想を抱いていたからである。現実には、オンライン化(インターネット化)できる
7
部分はビジネスの全プロセスのごく一部にすぎないけれど、インターネットのあまりの革
新性と急激な普及がそうした現実を覆い隠してしまったのだ。
ネットバブル崩壊後、こうした反省を踏まえてインターネットと E コマースの中心はド
ットコム企業から既存ビジネスにインターネットを取り込んだ「クリック&モルタル」に移
りつつある。つまり、インターネットを伝統的ビジネスにバランスよく取り込むことによ
ってビジネスを効率化すると同時に、新たな市場を創造しようとする動きが活発になって
きているのだ。
IT ブームが真っ盛りの頃には、「すべてのビジネスはインターネット化できる」とか、「す
べての小売業はオンライン化され、街の店舗はいずれなくなってしまうだろう」といった極
端な見方が数多くあった。しかし極論というのは得てして間違っているものである。それ
は、バブルが崩壊した現在ごく一部を除いてほとんどのドットコム企業が倒産したり、買
収されたりしたことからも明らかである。
ほとんどの場合は、インターネットを切り離してビジネスが成立するわけではない。そ
のために、あるビジネス分野での経験を蓄えた伝統的な業者が、インターネットを取り込
んで効率化や販路拡大に役立てるという形のほうがよほど確率が高くなり、こうした伝統
的企業にとってインターネットは非常に効果的なツールとなる。このような伝統的ビジネ
スとオンラインビジネスの中間にあたる業態がクリック&モルタルである。
クリック&モルタルのポイントは、「まず既存ビジネスありき」である。インターネット
はそれを改良するツールにすぎないということである。
6EC の課題
ECの普及において解決しなければならない課題として、
①セキュリティー対策の強化
②通信コストの削減
③データ交換とプロトコルと決済プロトコルのオープン化、標準化、国際化
④魅力あるコンテンツの提供
以上の課題は技術的、制度的には解決される方向にあってECの展開により企業にとっ
てビジネス拡大、コスト削減が実現できるだろう。また、電子商取引(EC)は企業存続の
かぎを握るものと考えられ、企業経営や戦略をサポートする上での最重要課題になるとい
える。
8
注1:電子商取引サイト運営事業者、電子商取引支援サービス事業者等への郵送アンケー
ト調査および聞取り調査から得た情報をベースに前回、前々回の調査時の情報、既存公知
データを適宜参考にして推計した。アンケート回収393社の回答を集計、分析。将来市
場規模予測については、98年調査時使用の予測モデルに改良を加えるとともに、今回新
たな予測モデルを構築して各市場に合わせ複数の予測モデルを使用したものである。
参考文献
程近智、堀田徹哉著
アクセンチュア EC レポート
東洋経済
2001年
小林雅一著
図解わかる!クイック&モルタル
ダイアモンド社
2001年
9
第2章 BtoB 取引の現状と将来を考える
1 BtoB とは
BtoB とは、Business To Business、つまり企業対企業の電子商取引のことである。現
在、企業間電子取引において、通信インフラの主役は、従来のような VAN を中心とした
クローズな(閉じた)専用ネットワークから、インターネットに移ってきている。インタ
ーネットの普及により、企業間の商取引も一気にその視野を広げることが可能になった。
私達は、BtoB でもBtoC同様、インターネットで受発注が行われる取引を原則的には
BtoB とみなしている。しかし、アクセンチュアECレポート(文献①)の定義にそって、
一部例外として、受発注の前工程部分のみをインターネットで行っても、商取引行為の一
部を構成することにし、かつそれが契機となって受発注に至った取引についても、電子商
取引額に含めている。
2 BtoB ECとクローズな専用ネットワークの差異
ここで改めてクローズド専用ネットワークと比較した、インターネットの特色を挙げて
みよう。インターネットの長所としては次のようなものがある。
① 異なる業種で共通の通信プロトコル(TCP/IP)をもちいている。
② 幅広く普及しており、多数の参加を募りやすい。
③ ローコストである。(中小企業でも導入可能)
④ 画像処理、E メールなどの対応技術が多く、非定型な業務を取り扱いやすい。
一方、短所としては次のようなものがある。
① 通信回線の品質が落ちる。すなわち、一定の回線容量に対してアクセスする人の数を
制限するなどの帯域の保証がないため、混雑時にはデータ交換のスピードが落ちる。
② ネットワーク全体に対する管理者がいないため、セキュリティやメンテナンスを自己
責任で行う必要がある。
そもそも企業間取引は、対消費者向けの取引とはさまざまな点において異なっており、電
子商取引を導入するにあたっても、これらの特色を踏まえて行うべきである。
10
3 BtoB ECのメリット
企業にとって e コマースを利用することのメリット
①
企業活動のコスト削減・スピードアップ
受発注にかかわる情報を電子的に処理することによって人手による作業が減りコストを
削減することができる。
②
ネットワークコストの削減
インターネットは専用の回線や特別な機器を必要としないため、従来のネットワークに
比べれば接続のための費用も安価で済む。
③
調達先や販売先の拡大
企業は世界中の組織や個人と情報交換をすることができる。世界中の企業から部品や原
材料を調達し、世界中の消費者に対して商品を販売することも可能になる。
④ 双方向性を活かしたマーケティング
インターネットの双方向性を活かせば、消費者に一方的に情報を提供するだけでなく、消
費者のニーズを効果的に収集することができる。
4 BtoB ECの主要な形態としてのEマーケットプレイス
(1)E マーケットプレイスとは
E マーケットプレイスとは、「新規取引企業の参加を前提とし、インターネット技術を活
用した複数企業間での取引形態」である。この E マーケットプレイスには、アクセンチュ
アECレポートでの定義に従って、不特定多数のサプライヤー同士がオープンな参画形態
で自由に取引を行う、いわゆる“エクスチェンジ”に加え、限られた大手企業を中心とし
て、調達または販売をオープンに行う“調達ネットワーク”および“販売ネットワーク”
を含めている。
(2)E マーケットプレイスの事例
①自動車業界「コビシント」
2000 年 2 月にフォード、GM、ダイムクライスラーの 3 社が共同で発表したコビシント
は、その後、日産、ルノーなどの日本、欧州のメーカーも参加し、世界最大の自動車部品
取引市場サイトになろうとしている。年間取引額が 2400 億ドルと予想されており、すで
に大手部品メーカーが 30 社以上も参加を決定しており、自動車業界の企業間取引を一手
11
に押さえる勢いである。
②新しい商社像、総合ネット商社を目指す「イービストレード」
イービストレード社は一社で複数のeマーケットプレイスを立ち上げることにより、
・速く、安く、収益性のある市場の構築ノウハウの蓄積。
・ある市場で構築済みのモジュールを別の市場に転用する資産の共有、といったノウ
ハウの一元的統合による知的資産の集約化を目指している。
さらに、統合商社のもつ長所をeマーケットプレイスの運営に活かそうとしている。
例えば、同社が現在運営している紙の市場には食品会社が紙を購入しにくることもある。
その食品会社は紙と食品の両方の市場で取引をするであろうが、請求書が一本化され、
また商品が一緒に配達されれば大変便利であろう。同社はこの考え方を「クロスeマー
ケットプレイス」と称している。
③エレクトロニクス業界「ファーストパーツ」
ファーストパーツはエレクトロニクス関連の製造業向けの会員制度のオークションとシ
ョッピングモールのサイトである。1999 年にはこのウェブサイトで取引された電子機器関
連の製造業とアセンブリー関連の企業の取引金額は 1400 億ドル、製造機械で 100 万ドル
にのぼる。希望部品の提示掲載、販売可能時の連絡通知、余剰在庫企業と在庫不測企業間
の即時調達を可能にしたサイトである。
5 BtoB ECの現状と課題
(1)BtoB ECの現状
全世界での市場規模は、2003 年には、BtoB は約1兆800億ドルと推定されている。
1998 年から年間の平均伸び率は108%である。
アメリカ市場では、2003 年で5700億ドル(平均伸び率94%)と予想される。全世
界に占めるアメリカの割合は、1998 年には74%であるが、2003 年には 50%まで低下す
ると見られている。
日本では、2000 年の EC 調査では、全 BtoB EC市場は約 21.6 兆円に達した。98 年の
8.6 兆円から、規模にして 2.5 倍、年率 60%の急成長である。前回調査した 98 年には 2000
年時点で 19.2 兆円と予測していたので、約 2.4 兆円もの上方修正となる。
12
しかし産業別に見た場合、21.6 兆円のうち 19 兆円以上、約 9 割が、電子・情報関連製品
と自動車産業で占められている。順調な伸びといっても、実際はEC市場のほとんどがこ
の 2 産業によって成り立っているわけである。
EC先進産業ともいうべき電子・情報関連産業と自動車・自動車部品産業は、ここ 2 年間
で EC 化率を倍増させており、特に電子・情報関連産業は 2.5 倍以上にも至っている。この
2産業の伸びが BtoB の成長を引っぱっている。
一方、EC 後発産業である、化学や鉄・非鉄・原材料、建設、食品などの他産業の伸びは、
先進産業の伸びに比してきわめて小さい。
なぜ、産業間格差が生じるのかというと、EC 先進産業は、電子機器メーカーや自動車
メーカーが EC 活用の必要性を感じて、そのまま EC をとり込むことができた。一方 EC
後発産業は、製品の購買先である完成品メーカー商社との間に、すでに専用線網が敷設さ
れており、そのために多大な投資を行っている。この減価償却が足かせとなって、新たに
インターネットの活用になかなか踏み出せない。また、各企業の取り組み姿勢も一因とな
っている。
産業間のEC化格差是正というようなマクロレベルの取り組みには、民間企業や業界ご
との努力だけでは限界がある。このような取り組みに、行政や業界団体が積極的な役割を
果たすことが、産業間デジタルデバイドの克服策として求められるだろう。
(兆 円 )
120
100
80
60
40
20
0
BtoB全体EC市場の前回調査比較
111
87
9
12 19
22 29
36 45
51
68 67
1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005
98年調査
参考文献;アクセンチュアECレポート
2000年調査
P105
13
消費財
2%
食品
3%
運輸・物流
1%
化学製品
1%
2000年 セ グ メ ン ト別 構 成 比
建設
1%
産業用機器
鉄・非鉄・原材料
1%
2%
電子・情報関連製
品
55%
自動車・自動車部
品
34%
産業用機器
2%
鉄・非鉄・原材料
5%
2005年 セ グ メ ン ト別 構 成 比 予 想
電子・情報関連製
品
24%
建設
15%
消費財
9%
食品
6%
運輸・物流
5%
紙・事務用品
2%
自動車・自動車部
品
16%
化学製品
16%
参考文献;アクセンチュアECレポート
P106
(2)BtoBECの課題
①デジタルデバイドの克服
企業間取引のEC化によって享受できるメリットには、多くのメンバーを取引に参加さ
せる取引先の集積(アグリゲーション)
、取引の自動化・システム化をもたらす取引プロセ
14
スの統合(インテグレーション)の 2 つの方向性がある。
このようなEC化によるメリットはすでに先進企業では現実のものとなりつつある。例
えばEC調達によるコスト削減については、日立グループが調達EC化により 460 億円も
の調達コスト削減を見込んでいるし、外食大手のすかいらーくは年間調達額の 1 割、100
億円の調達コスト削減に取り組んでいる。
逆にEC化の遅れはこういったメリットを享受する機会を失うことになる。その結果、
企業の競争力は相対的に低下する可能性がある。それがある産業全体で起こった場合、産
業全体の競争力が相対的に低下する事態になりなねない。
EC先進産業がそれ以外の産業からどれくらいの商品を購入しているかというと、先進
産業が先進産業自身から購入する割合が 3 分の2とかなり高い。これは取引の多くがEC
先進産業内で完結しているため、企業間のEC化の動きもECの進んだ産業内で完結して
しまいかねないことを意味する。
このように、放置すればEC化の取り組みが特定産業に偏りがちな構造であるからこそ、
それを是正するためには意識的に先進産業から後発産業へのEC化の働きかけを行ってい
かなければならない。これには個別企業ごとの取り組みだけではなく業界全体や行政機関
の補助が不可欠となってくる。
②Eマーケットプレイスの課題
2000 年の市場調査結果では、Eマーケットプレイスの取引実績は約 2000 億円と推計さ
れるが、これは BtoB 取引全体の 1%にも満たない規模である。その要因は、日本特有の
業界構造に問題がある。
先進産業であるはずの電子・自動車業界が、Eマーケットプレイスについては米国に比べ
て大きく出遅れている。BtoBEC化の促進要因となった系列関係の強さが、ECにおい
ても閉鎖的な取引につながり、オープン化を通したEマーケットプレイスへの移行を阻ん
でいる。
また、標準化の遅れもEマーケットプレイスの低迷に拍車をかけている。現在、大手部
品メーカーなどのサプライヤーは、バイヤーごとに異なる個別のEDI(注①)に対応した
端末で取引を行っている。またメーカー側も、複数のサプライヤーマーケットから一部の
情報を取り出す複雑なネットワークを持っている。
これでは E マーケットプレイスのもつアグリゲーション機能を生かし、多くの取引先と
15
そのつど柔軟に契約していくことは難しい。E マーケットプレイスの本格化には、こうし
たデータのフォーマットなどの統一化と的確な情報を 1 つのソースとして維持・管理でき
るプロセス準拠のセキュアなメッセージ交換インフラが必要となる。このような課題を克
服すれば、今後日本の E マーケットプレイスは先進産業を中心として建設、繊維・消費財
をはじめ、他産業にも浸透していくだろう。
注①;EDI(Electronic Data Interchange)とは、異なる企業間で電子的にデータをやり
取りすることを指す。主に専用線を使って受発注データなど、大量のデータを蓄積、交換
する場合に使われている。データの受け渡しのために企業ごと専用のプログラム開発が必
要だったり、
送るデータにいろいろ制約があったり、お金と手間が大変かかるものである。
参考文献
程近智、堀田徹哉著
アクセンチュアECレポート
2001 年
東洋経済
アーサー・B・スカリー、W・ウィリアム・A・ウッズ著
実践ガイド
前田俊一訳
BtoB入門
2000 年
日本経済新聞社
碓井聡子,浜屋聡著
企業間電子商取引
東洋経済新報社
BtoBのしくみ
2001 年
小池良次著
第二世代 BtoB
インプレス
2001 年
浜田英子、武間光生著
あなたの会社を強くする
フォレスト出版
BtoBのしくみ
2001 年
吉岡克哉、田中彰夫著
B2Bネットビジネス最前線
工業調査会
2001 年
16
第3章PtoP取引の将来性について考える
1PtoPとは?
PtoPとは person to person の略で個人と個人の消費者の間での電子商取引である。
例えば、ネットオークションや個人のサイトのフリーマーケットなどが主流である。特に
インターネットを通じて競り売り形式で売買が行われるネットオークションは、日本にお
いても急速に利用が拡大し始めており、その取扱高は 1800 億円と推定されている。特に
最近では、売り手・買い手ともに個人であるPtoP型のネットオークションに人気が集中
し、利用者・取扱商品、取引高ともに急激に増加している。ネットオークションとは、オ
ークションの場をインターネット上で実現したもの。ホームページ上で紹介された商品に
希望購入価格を書き込んで入札し、締切期限までに一番高い金額をつけた人が落札する仕
組みを使って行う電子商取引市場の事である。
一方で、代金の決済や商品の引渡しの遅いことや、詐欺事件等のトラブルも次第に増加
しており、何らかの対策が求められている。しかし、ネットオークションは既存の商習慣
にとらわれない、新しい形態であるため通常の電子商取引(Electronic commerce)と比
べ、法整備や業界関係者の自主的なガイドラインなどの環境整備が遅れているのだ。これ
から、ネットオークションについてを取り上げてPtoPの電子商取引を見ていこうと思う。
2ネットオークションの分類
ネットオークションの形態は、サイト運営者、売り手、買い手の違いに注目すると、
大きく 3 形態に分類できる。このうち、「PtoP型オークション」と「B to C型オークシ
ョン・サイト仲介型」は、売り手とサイト運営者が異なる主体であり、サイト運営者は直
接商取引には関与しない。特にPtoP型では、個人間取引が原則である点が、販売手法の
一つとしてオークションを行う、
「B to C型オークション・自営型」とは異なる点である。
・オークションサイトの比較
ビッダーズ
出品は無料だが商品が売れた場合落札額の5%がクレジットカードから引き落とされる方
式。商品数はそこそこ多い。
http://www.bidders.co.jp/topA.html
17
楽天市場
出品するのは有料。比較的に出品数が多いが個人が出品しているのではなく企業側が出品
しているBtoC取引が主流。
http://www.rakuten.co.jp/
ebay
世界最大のオークションサイト 全世界から商品が集まっているのでかなり多くの商品が
集まっている。日本では yahoo!オークションのほうが人気がある。
http://www.ebay.co.jp/
オークションエキサイト
会員登録無料
商品数あまり多くない
http://auction.excite.co.jp/
Yahoo!オークション
会員登録有料
日本では最大のオークションサイト
商品数多数
http://www.auctions.yahoo.co.jp/
easyseek
会員登録無料
オークション形式ではなくフリーマーケット方式
商品数多数
http://www.easyseek.net/i_index.php3
オークションサイトは、Yahoo!や ebay のような大手サイトがよく利用されている。そ
の中で、出品数は300万点以上にのぼり商品はCDや書籍のようなものから不動産まで
多岐にわたっている。これらのサイトを実際に見てみると、やはり商品数が多いサイトの
ほうが探しているものが見つかりやすいので人気がある。料金の面で見ると Yahoo!オーク
ションなどは定額で決まっているが、ビッダーズのように商品ごとに決まっているの物も
ある。Yahoo!オークションは初めのうちは無料だったが、セキュリティ面などを考慮して
有料になったが、出品者たちの数が減っていないのはやはり人気があるということだろう。
ebay は世界中から商品を検索できるため日本では手に入りにくいものが安価で手に入る
が、外国からなので送料が高くなったり、料金の支払いを為替やカードしたり不便な点も
ある。
18
3ネットオークションのトラブルの現状
最近、Yahoo!のオークションのサイトで商品を落札し、お金を払ったのに商品が届
かない詐欺事件が報道されたのをご存知だろうか?このようなネットオークションでの詐
欺被害が増加している。詐欺の特徴は、同一の容疑者と思われる詐欺被害が相次いでいる
点である。詐欺の手口は落札者が入金後、商品を発送しないという典型的なものが多く、
一人あたりの被害額は数万円∼十数万円程度であるケースが多い。また、落札したブラン
ド品がにせものであったり、パソコンなどの場合は故障していたりするトラブルも多発し
ているが、個人間取引であるため商品の品質を事前に証明する手段がなく、金銭を伴うト
ラブルよりも解決に苦慮するケースも多い。被害者の多くは、ネットに慣れていない初心
者が多く、そのほとんどは、取引相手を十分に確認しないまま相手を信用して入金するな
ど基本的な自衛策が取られていない。初心者ほど自衛に対する意識が弱く、オークション
の安全性が問われている。
4ネットオークションの構造的な問題点
トラブル多発の背景には、以下のようなPtoP型ネットオークションの構造的な問題
がある。サイト運営者側は取引の仲介を行う「場」を提供することに徹し、個人間の取引
には直接関与しない。そのため、深刻なトラブルが起こりやすい。
①商品の配送や代金の支払いに関して、サイト運営者側は一切責任を負わない。個人
間取引には消費者保護の関連制度は適応されないため、制度上はトラブルの受け皿がない
のである。トラブルに遭った利用者は、サイト運営者に頼ることもできず、相談窓口もな
いのが現状である。トラブルの解決は自力で行うか、泣き寝入りするケースがほとんどで
ある。②サイト運営に関する法的な枠組みが明確でないということである。ネットオーク
ションでは、サイト運営者は販売行為を行っておらず、単に取引情報を仲介しているに過
ぎない。だが、古物営業法に基づく古物販売許可や酒類の通信販売酒類小売免許の取得が
必要との見方もある。しかし、管轄官庁ではまだ正式な統一見解を出しておらず、サイト
側の責任や義務の範囲が明確になっていない。
個人間取引を安全に行うためには、事実上、個人情報を開示することが前提となってい
る。インターネット上で見知らぬ相手に個人情報を開示することは、取引とは別の危険性
が含まれている。しかし、ネットオークションでの安全な取引と、個人情報の開示が表裏
一体なのが現在の構造である。サイト運営者側のトラブル防止策が不充分なケースもある。
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ネットオークションをビジネスとして成立させるためには、出品数の豊富さが決め手であ
り、オークションの参加に関する制限はなるべく少ない方がよいというサイトもある。
5問題解決に向けての具体策
今後、PtoP型ネットオークションの拡大のためには、先に挙げたいくつかの問題点を
解決し、健全な取引の確保に努める必要があろう。そこで、様々な問題解決の方向性を上
げてみた。
(1)個人間取引を支援するサービスの形
ネットオークションのように、個人間取引で起こる様々なトラブルを避けるため米国で
は「エスクロー」呼ばれる取引仲介サービスが広く利用されている。エスクロー会社が、
出品者と落札者の間に立ち、双方が商品および代金を、エスクロー会社を介して取引をす
るというシステムである。サービス事業者によって若干方式は異なるが、代金が直接出品
者に振り込まれないため、詐欺被害を未然に防ぎ、取引を円滑に行うことができる。この
エスクローサービスを利用するかどうかは、あくまで利用者の任意であり、手数料につい
ても利用者が負担することになる。このことから、より少ない費用で利用できることが、
日本での普及の鍵であると考えられる。
(2)出品者の注意点
身の回りで使っていないものやいらなくなったものを高く売る方法としてもネットオー
クションが使える。出品者側は自分で「最低価格」を設定する事ができ、希望した価格より
も値段が下回る事はない。
また取引が成立しなかった場合でも何度も出品する事ができる。
出品する方法も簡単で商品のタイトル、説明、画像、キーワードやカテゴリーの登録、入
金方法・発送方法を決定してからオークションサイトに登録をして初めて自分の商品を出
品することができる。ネット上で商品を探している利用者の購買力を自分が出品している
商品にいかに目を向けさせるかという工夫をこらす事が落札してもらう方法である。なお、
ネットオークションでは出品に向かないものであったり、売ってはいけないものがあるの
で注意が必要である。
また、出品料(手数料)についてはサイトによって全く異なる。オークションの大手
サイトである Yahoo!と ebay を例にあげると、まず Yahoo!の方だが、Yahoo!オーク
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ションでより安心して利用するために、オークション参加者の本人確認を2001年5月
28日から実施し、本人確認の実施以降、Yahoo!オークションへ出品、入札、Q&A を使
った出品者への質問をする場合には、本人確認を済ませておくことが必要になった。オー
クションの参加費は月額300円である。だから、手数料といえばオークションでトラブ
ルや詐欺を防ぐためのサービスだと考えればよい。また、セキュリティ対策の強化を図る
ために上記で説明したエスクローサービスも2000年9月から導入された。一方 ebay
の方はアイテムの閲覧・入札は無料で、従来はアイテムを売る際に出品料・落札料を支払
う必要があったが、現在は一部のオプション料金を除き無料である。
(3)利用者への心構え
ネットオークションを利用する利用者自身のトラブルに対する意識が低いのも、問題の
一つである。積極的に自衛策を講じていると思われる人は全体の約 4 割に留まっている。
今後インターネット利用者の拡大に伴って、インターネット初心者が増えてくることを
考えると、利用者の啓発活動をいかに行うかが課題になる。ネットオークションに限らず、
オンラインショッピングなどインターネットを利用する際のモラルや危険性についての知
識は、今後ますます重要性を増すことは必至であり、一般利用者に対する教育制度や仕組
みの整備が急務である。将来、インターネットを通じての商品の売買はさらに広がってい
くと見ることができる。その中で、個人と個人のような取引がだんだん増えていくことは
十分に予想できる。これからの電子商取引はセキュリティをまず考え、それをもとに個人
対個人、個人対企業のような形で発展していくことが考えられる。
参考文献
秋月昭彦著
すごいぞ!ハマるぞ!GO!GO!ネットオークション
すばる舎
2000年
参考HP
アライド・ブレインズ社
http://www.a-brain.com/index.html内
http://www.a-brain.com/HP/rep/04.html
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第4章 電子商取引の安全性について
1通信販売が抱えるリスク
テレビ・ショッピングやカタログ・ショッピングなどが盛んな米国では、日常的に通信
販売が行われている。通信販売ではインターネットであるかどうかには関係なく、多くの
トラブルが発生している。注文したものとは色や型が違うものが送られてきたり、品数が
多かったり少なかったり壊れていたりと、なかなか一筋縄ではいかない。中でもよく話題
に上るのが、インターネット・ショッピングに関連したクレジットカード関連のトラブル
である。あるサービスの使用のために登録したクレジットカード番号から、継続の意思も
ないのにどんどん使用料金が引き落とされるとか、買った覚えのない商品の請求が届くと
か、トラブルの種類はさまざまである。クレジットカードの番号は、いわゆる「盗聴」とい
われる方法によってカード番号を盗まれる危険性がある。
2インターネットにおける盗聴とは?
盗聴というと音声電話の盗聴というのがまず頭に浮かぶ。しかし、コンピュータネット
ワークにおける盗聴とは、もっと複雑なもので、デジタル化したデータやネットワークの
仕組みを利用してデータを盗むということを指す。例えばネットワーク内では、データを
パケットと呼ばれる小さな単位にして送受信しているが、これをネットワークの途中で拾
い集めて、解析してしまうことによりデータの内容を読めるようにしてしまう行為がある。
また、管理者パスワードを不正に入手するなどしてメールサーバーへ侵入して、直接メー
ルの中身を読んでしまうなどということも盗聴にあたる。このように、通信の途中、また
は、メールサーバーやデータベースサーバーへ不正にアクセスして内容を傍受してしまう
ことにより、その内容を知るというケースが盗聴にあたる。
3盗聴を防ぐための暗号技術
インターネットは盗聴されている可能性はあるというものの、日常的にすべての情報が
盗聴されているわけではない。インターネットを飛び交う情報があまりにも多いために、
盗聴しても、それらを保管、転送することが難しいからだ。しかし、特定の相手やパスワ
ード、クレジットカード番号など特定の情報を盗聴することは容易なのである。そこで、
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盗聴を防ぐ暗号技術が必要となる。
(1)秘密鍵暗号方式と公開鍵暗号方式
送り手と受け手だけが知っている暗号方式を秘密鍵暗号方式と呼ぶ。秘密鍵と呼ぶ一つ
の鍵を使って暗号化と複合化を行う。一つの鍵を 2 人で共有するため、共有鍵暗号方式と
呼ぶこともある。現在秘密鍵暗号方式として幾つかの方式が利用されている。代表的なの
がDES(Data Encryption Standard)と呼ばれる方式である。
DESは1970年代前半にIBM
が開発したもので、その後、米国政府の標準的な暗号方式として採用されている。さて、
このように秘密鍵暗号方式という暗号システムがあり、データを暗号化して送ることがで
きることが分かった。この技術があればインターネット上で安全にデータを交換できるか
というともちろん“イエス”なのだが多くの相手と秘密鍵暗号方式を使って情報を交換す
るのには、相手ごとに違う鍵を使う必要があるために、鍵の管理が非常に面倒になるとい
う問題がある。インターネットを経由した場面においては、ほとんど秘密鍵の交換ができ
ないということになってしまう。そこで登場するのが公開鍵暗号方式である。公開鍵暗号
方式の基本は、ペアになっている公開鍵と個人鍵という 2 つの鍵があり、公開鍵で暗号化
した暗号文は、ペアの個人鍵でしか複合できず、個人鍵で暗号化した暗号文はペアの公開
鍵でしか複合できないということなのである。ペアになったもう一つの鍵でしか複合でき
ないというのがミソなのである。
(2)実際に使うとなると
インターネット上でクレジットカードを利用するときには、盗聴によってカード番号を
盗まれる危険があるので、それを回避するために暗号技術を使ってカード番号を送るわけ
だが具体的には一体どうすればよいのか。秘密鍵暗号方式を使えばいいのだろうか、それ
とも公開鍵暗号方式を使えばいいのだろうか。さらに他にも世の中にはたくさんの暗号シ
ステムがある。クレジットカード番号を送ろうとしている相手は同じ方式の暗号システム
を持っているのか。また、秘密鍵暗号方式を使うのなら、秘密鍵をどのようにしてインタ
ーネット上の商店に渡せばよいのだろうか。公開鍵暗号方式を使うのなら、まずは公開鍵
と個人鍵のペアを作らなければならないが、これらは利用者が作れるのか、通信相手に公
開鍵を渡すにはどうすればよいのか。考えてみるといろいろと難しそうなのである。
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(3)S S L ( S e c u r e S o c k e t s L a y e r ) ・S E T ( S e v u r e E l e c t r o n i c T r a n s a c t i o n )
実はカード番号を暗号化するといっても、利用者自らの手で暗号化作業を行い、カード
番号を送るわけではない。暗号化を行うにあたり、利用者がいちいち暗号化のための操作
を行うことは面倒であり、操作そのものが難しくなるために、インターネット上で利用す
るサーバーとクライアントの両方のソフトウェアに、送信する情報を自動的に暗号化、複
合化するしくみが組みこまれている。まずはインターネット上に構築されたショッピング・
モールで買い物をする場合を考えてみる。最近の Web サーバーやブラウザには、通信を
暗号化するためのしくみが組みこまれており、その機能を使えば利用者が暗号をどのよう
に使うかを考えることなく、安全に通信が行える。このしくみを SSL(Secure Sockets
Layer)と呼んでいる。SSL は米国ネットスケープ社が開発した暗号化規格で SSL の特徴
として、公開鍵暗号化方式、秘密鍵暗号化方式のどちらにも対応しており、複数の暗号化
手法を利用することができるということがある。これは暗号技術の輸出規制などから国に
よって利用できる暗号化手法が異なるという理由と、安全性の確保のための選択肢を多く
設けて利便性をはかるためである。SSLは業界標準の規格として NN にも IE にも搭載さ
れているので、どちらのブラウザでも利用することができる。SSL は基本的には WWW
サーバーとブラウザが安全にデータのやり取りを行うための暗号化通信プロトコルで、
Web サーバーの通信プロトコルである HTTP だけでなく、FTP にも対応しているので、
データ通信全般に利用できる暗号化技術である。したがって、ブラウザとサーバーにその
機能が組みこまれていなければならない。逆にいえば、SSLの機能が組みこまれているた
めにユーザーは暗号化について意識しなくても済んでいるのである。
次に SET。VISA、Master Card ほかが提唱している三者間プロトコルである。Web
ブラウザのほかに、SET 専用のウォレット(電子財布)ソフトが必要となる。このウォレ
ットソフトによって、購入者は、販売業者に対し SET 専用ソフトで暗号化したクレジッ
トカード情報を送り、販売業者は、これを金融機関に照会する。その際、カード番号、有
効期限は公開鍵で暗号化されているため、販売業者自身も見ることができない。なお、
SET
では、販売業者だけでなく購入者も認証局が発行した電子証明書を使用するので、両者と
もがなりすましを防止できるという利点もある。したがって、なりすましの防止、および、
販売業者に対しても購入者のクレジットカード情報が明らかにならないという意味で、上
記 SSL のリスクが軽減され、SSL よりも安全性が高いといわれている。しかし、販売業
者も購入者も SET 特有のソフトを導入しなければならず、手間と費用がかかるため日本
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やアメリカではあまり普及していない。 なお、現在は、SET 専用ウォレットも購入者各
自に提供せず、サーバー側で一括管理するというサーバー管理型ウォレットという決済シ
ステムも実用化されている。サーバー管理のため、購入者各自が自己のコンピューターに
SET 専用ウォレットソフトを導入する必要がない。
(4)S S L や S E T を使えば安全なのか
SSL や SET を使うことでクレジットカード番号のような重要な情報を暗号化すること
が可能である。しかし、安全にクレジットカードのやり取りができ、不正にカード番号を
使われることがないのかというと、それほど甘いものでもない。確かに通信路上では暗号
化されているが、相手のサーバーに届いた辞典で複合化されてしまうので、サーバーに保
存されている状態では、クレジットカード番号などは平文に戻っているということを忘れ
てはならない。もしも、相手のサーバーの管理や守りが十分でなかったら、外部からの侵
入者や、内部の犯罪者に簡単に持ち出されてしまう可能性もある。結局のところ、クレジ
ットカードというしくみや通信販売という取引形態が 100%の安全を確保できないという
ことだ。しかし、多少のリスクがあっても便利なものは使いたくなるものである。やはり
利用者がリスクの大きさをしっかりと認識し、そのリスクを見越したうえで、自己責任に
おいて使うことが重要なのである。
(5)今後のセキュリティー動向
現在実用化が始まっている認証技術応用分野は、インターネットのサーバー・クライア
ント間通信、暗号化電子メール、インターネットクレジットカード決済だが、この内のク
レジットカード決済について、「SET(Secure Electronic Transaction=クレジットカード
会社のビザとマスターカードが中心となって策定したインターネット上でのクレジットカ
ードを使った電子決済用プロトコル)
」
という国際標準に支えられた分野が一番大きな分野
に成長すると考えられている。最新の仕様は、SET 1.0 である。IC カードでも使える SET
2.0 の仕様が来年以降に公開される予定である。
次に実用化が間近なものとしては、デジタル署名つきデータ通信、「VPN
(VirtualPrivateNetwork=セキュリティ対策が施されたイントラネット同士を接続して
実現される仮想私設網)
」
、クレジットカード、キャッシュカードの IC カード化、オンラ
インによる銀行・証券取引などが挙げられる。後 3 者は SET を基盤にしている。
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暗号技術は広範囲に用いられるわけだが、これらは使用する暗号が十分に安全であると
いう前提があって始めて成立する。したがって、暗号は十分な強度を持たなければならな
い。暗号は、攻撃を行なう側が解読するために必要とする計算量が多ければ多いほど安全
で強い暗号である。最近では CPU の処理能力が飛躍的向上しているので、十分に強度の
ある暗号アルゴリズムと、十分な長さを持つ強い鍵を用意する必要がある。
関連する最近の動向として、米国政府の米国商務省標準技術局(NIST)によって選定作業
が行われている AES (AdvancedEncryption Standard)の動きが上げられる。過去 20
年に渡り米国政府が決めた標準暗号として DES ( Data Encryption Standard)が使わ
れてきた。しかし近年、DES の安全性が十分とはいえない状況になってきてきた。そこで
NISTは DES に代わる次世代の暗号標準として、AES 候補となる暗号方式を全世界から
公募した。世界中から集まった 15 の方式が審査を受けていたが、2000 年 10 月に、ベル
ギーの暗号開発者 Joan Daemen 氏と Vincent Rijmen 氏が開発した「 Rijndael」という方
式が選ばれた。
しばらく時間がかかると思われている分野としては、オンライン会社間取引、電子公証、
オンライン税金・保険申告、遠隔医療・電子カルテ等が挙げられる。これらのサービスの
速やかな実現を阻んでいるのは必ずしも技術的な制約ばかりではなく、現行法がデジタル
を想定していないということも原因となっている。これらの技術革新が法律改正へのきっ
かけとなるであろう。実際に欧米を始めとしてデジタル署名法の制定が始まっており、法
務省は同法に対し積極的であるようだがが、郵政省と通産省の研究会では民間のガイドラ
インにとどめるべきだとしている。
26
参考文献
熊谷誠治著
誰も教えてくれなかったインターネット・セキュリティのしくみ
日経 BP 社
1999 年
村松英和著
図解入門
よくわかる
秀和システム
インターネットセキュリティと『安号』の仕組み
2000 年
参考 HP
ZDNet Japan http://www.zdnet.co.jp/内
http://www.zdnet.co.jp/help/ebusiness/08/02.html
システムインテグレータ社
http://www.sint.co.jp/内
http://www.sint.co.jp/internship/watanabe/html/EC%82%C6%83Z%83L%83%85%83%8A%83e%
83B.htm
国際大学グローバル・コミュニティセンター
http://www.glocom.ac.jp/top/index.e.html 内
http://www.glocom.ac.jp/lib/aoyagi/denshisho.html
日本消費者協会(JCA)
http://www1.sphere.ne.jp/jca-home/densi/
27
終わりにー将来予測ー
現在、日本はIT関連産業が低迷し、ネットバブルが崩壊するという現象が起こりまし
た。このような中で、将来EC市場はどうなってしまうのかということですが、私達は各
章で上げた課題を解決していく事により十分成長が見込めると思います。
なぜなら、このECの成長を支える技術革新が3つあります。モバイルの進化、ネット
ワークのブロードバンド化、そしてコンテンツにおけるデジタル化の加速です。まず、モ
バイルの進化ですが、多くの先進国ではすでに2人に1台の割合で携帯電話や携帯端末が
普及していて、特にインターネットへのアクセス手段として堅固たる位置づけにあり、こ
れから数年の間はこの立場が継続するでしょう。次にネットワークのブロードバンド化で
ありますが、現在、ADSLやケーブルネットなどでものすごく早くネットワークにつな
げることができ、しかも安い価格でつなげるというサービスが出てきています。各企業が
このようなサービスを導入しており、これがEC市場のさらなる発展につながるでしょう。
最後に、コンテンツにおけるデジタルの加速ですが、あらゆる情報をデジタル化するため
に今まで記録されずにあった情報や、紙に埋もれていた情報がネットワークにいつでも乗
せられる環境が整いつつあります。また、セキュリティー、データの圧縮技術も信頼性が
増しコンテンツの配信が容易になりました。著作権の問題がまだ残されているものの、技
術的にはこの分野のハードルが非常に低くなっています。これらの他にも情報技術はたく
さんありますが、今後これらが融合する事は間違いなく、
大きな革新をもたらすでしょう。
そして、これから日本企業に求められるのは、ITやEコマースがもたらすインパクト
を正しく理解して、自社の構造改革や競争力強化にどのように貢献するかの評価を行うこ
とです。それと、明確な戦略を持ち、最も効果が見える領域からIT投資と構造改革を実
践することにより、企業の生産性を高い水準に引き上げる努力をするべきであります。こ
うしたIT企業が、EC市場も引っ張っていくかもしれません。まだまだ発展途上のEC
市場ですが伸びていく可能性は十分にある市場ではないでしょうか。
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