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「やさしい」は、 褒め言葉じゃない MARK IS 静岡店(静岡県) SW MGR 伊

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「やさしい」は、 褒め言葉じゃない MARK IS 静岡店(静岡県) SW MGR 伊
interview 04
「やさしい」は、
褒め言葉じゃない
MARK IS 静岡店(静岡県)
いとう はなこ
SW MGR 伊藤 華子さん
「やさしい」と言われば、
大半の人が嫌な気はしないだろう。
ほとんどの場合が褒め言葉であるからだ。
しかし、
長所と短所は表裏一体であったりもする。
3年前、
専業主婦からマクドナルドのクルーになった伊藤華子さん。
どんな人にもやさしく接してきた彼女が仲間をリードしていく
SW MGRとなった時、
やさしさの本質と向き合うこととなった。
profile
兵庫県出身、二児の母。
2013年のMARK IS 静岡店のグ
ランドオープン時に入店。マクドナルドで働き始めて私
生活で変わったことは、二人の息子さんへの接し方。以
前は何にでも口を出して過保護気味だったが、
お子さん
の考えや行動を尊重できるようになったとのこと。
誰もが感じている魅力
「いつもニコニコしている子供だったそうです」。伊藤さ
んはニコニコしながら、自身の幼少期について語る。物
腰が柔らかく、笑顔を絶やさない。少し抜けているところ
も見受けられるが、彼女に悪い印象を抱く人はほとんど
いないだろう。「やさしい」。一緒に働いている誰もが感
じている彼女の魅力。しかし、そのやさしさこそが彼女の
前に立ちはだかる大きな壁であった。
結婚を期に地元の神戸から静岡にやってきた伊藤さん
は、専業主婦として15年以上にわたって家庭を支えてき
た。二人のお子さんが大きくなり、親離れを意識し始め
た時、突然不安に襲われた。「この子たちが自立したら、
私は何をすればいいのだろう」。昨日まで当たり前のよう
に歩いていた道に、急に暗雲が立ち込めた。そんな時、
目に留まったのがマクドナルドのオープニングスタッフ募
集のチラシだった。「高校生の時に働いていたマクドナル
ドなら大丈夫かも」。心の中に残っていたかすかな自信が、
十数年ぶりに社会に飛び出そうとしていた彼女の背中を
押してくれた。
オープニングスタッフが集まったキックオフミーティン
グ。数十名のクルーの中で、彼女は最年長だった。「不
安もありましたが、ワクワクする気持ちの方が強かったで
す」。どんどん成長していく若いクルーたちと仕事に励む
日々は、とても充実していた。ある日、クルールームに戻
ると店長からお願いをされた。「SW MGRを目指しません
か?」。驚きのあまり、状況を飲み込むのに少しだけ時間
がかかった。
本当のやさしさとは?
「なんとか 期待に応えたい 」。その一心で選んだSW
MGRへの道。しかし、テキストを読み進めていくほどに、
気持ちは沈んでいった。「この仕事は私には向いていな
い」。分かってはいたが、SW MGRのリーダーとしての役
割を知れば知るほど、自分にはまったく適性がないように
思えた。仲間をコーチングして、
時には的確に指示を出し、
チームをまとめる……、そんな経験は人生で一度もしたこ
とがなかったからだ。それでも、日々の努力は認められ、
SW MGRのユニフォームが店舗に届く。「重かったです
ね」。袖を通したベストは、心に深く食い込んでいた。
伊藤さんがSW MGRとして働き初めて数カ月、毎日
が小さな失敗の連続だった。店舗はいつもバタついてい
たが、その理由が分からなかった。仲間からたくさんア
ドバイスをもらって実行したが、なかなか根本的な改善
がされない。とにかく、自分が必死で働くことで、なん
とか店舗を回していた。ある日、よく休憩の申し出をす
る高校生のクルーからいつものように言われた。「少し
休憩させてください」。ただ、その日は別のSW MGRが
店舗運営を任せられていたため、その人に相談するよう
にお願いをした。
ところが、一向に相談する素振りはなく、
彼はそのまま働き続けたのだ。「おかしい」。仕事が終
わった後に、なぜ休憩の申し出をしなかったのかを聞い
た。「伊藤さんは、やさしいから許してもらえると思って
……」。ショックだった。自分の甘さがクルーたちの仕事
に対する責任感とモチベーションを希薄にしていたこと
に、その時初めて気づいた。そして、「やさしい」が必
ずしも褒め言葉ではないことにも……。
「今日から私は厳しくします!」。翌日、伊藤さんはイ
ンする前に仲間に宣言した。何も言えないままじゃ、誰
も成長しない。お店も良くならないし、お客様に満足し
ていただくこともきっとできない。仲間のために、お店
のために、何よりお客様のために、彼女は自分を変える
ことを固く誓った。「あなたならこの仕事はできるはずで
す」。「入店して6カ月なので、ここまでお願いします」。
クルー一人ひとりがどこまで成長しているかを確認しな
がら、それぞれが最大限に力を発揮すればできる限界
ギリギリの仕事の質と量を必ず求めるようにした。単な
る指示ではなく、仲間に対して期待を伝える。彼女の言
葉に対して、首を横に振る者は一人もいなかった。店舗
は次第に気持ちのよい緊張感と熱を帯びるようになって
いった。
周りを見渡すと……
「人は変われる」。言葉にするのは簡単だが、実際は
なかなかうまくはいかない。大人になってからであれば、
なおさらだ。伊藤さんは今日もニコニコしているし、少
しおっちょこちょいなところも相変わらずだ。威厳があ
り、みんなをグイグイ引っ張っていくリーダーになったか
と聞かれるとそうではない。しかし、彼女の周りを見渡
すと、その景色が変わっていることに気づく。彼女に甘
えてばかりいた高校生のクルーたちは、いつしか黒いユ
ニフォームを身にまとって彼女を支えている。バタバタと
慌ただしかったお店は、落ち着きとホスピタリティにあ
ふれている。失敗と挫折の中で彼女が掴んだ“本当の
やさしさ” に導かれ、この店舗で働く人たちは日々成長
し続けている。
軽々しく口にできない。しかし、彼女とともに働いてき
た仲間は自信を持って言えるだろう。「人は変われる」と。
© McDonald's
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