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第I章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて(PDF

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第I章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて(PDF
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
第Ⅰ章
第1節
食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
食料自給率の向上に向けた管内の取組
(1)食料自給率の向上に向けた関東農政局の取組
21年度、関東農政局では、意見交換会の開催、広報活動等を通じ、「食料・農業・農村
計画」の施策に沿って、地産地消、食育、米の消費拡大、飼料増産・食品残さの飼料化等
の推進を図ることにより、食料自給率の向上に向けた国民の理解醸成に取り組んだ(表Ⅰ
-1-1)。
表Ⅰ-1-1
食料自給率の
向上に対する
理解醸成
地産地消
食育
米の消費拡大
飼料増産・
食品残さの
飼料化
食料自給率の向上に向けた関東農政局の主な取組
・「農業経営体との意見交換会」、「市町村長懇談会」等で、食料自給率向上に
向けて意見交換を実施
・「食料自給率向上に資する優良取組事例」の収集及びその情報発信
・消費者モニターを対象に「食料自給率アンケート」調査を実施し、現状把握
・地域における地産地消の実践的な計画(地産地消推進計画)の策定推進
・地産地消の取組を支援する各種施策の紹介
・優良事例(地産地消優良活動、地産地消の仕事人、地産地消給食等メニュー)
の収集と情報発信、表彰を実施
・「食事バランスガイド」を活用して、米を中心とした日本型食生活の実践の
啓発を実施
・食育シンポジウムの開催
・ごはん食推進キャンペーンポスターの掲示依頼、米飯学校給食回数増加支援
事業の推進による米飯給食回数増加要請及び米粉食品の利用拡大として、販
売場所拡大等の取組を実施
・「関東地域飼料増産及び食品残さ飼料化(エコフィード)合同会議」等を開
催し、飼料増産に向けて、飼料作物の生産・利用拡大やエコフィード等の利
用推進などの取組について検討
(2)管内都県の農業振興ビジョン等における食料自給率向上に向けた取組
管内で食料自給率の全国平均41%(20年
表Ⅰ-1-2
(単位:%)
度、カロリーベース)を超えているのは茨
カロリーベース
城県、栃木県、長野県の3県となっている
(表Ⅰ-1-2)。
管内都県の農業振興ビジョン等におい
て、各都県の食料自給率目標等を設定して
いるのは22年3月末現在、6都県となっ
ている(表Ⅰ-1-3)。
管内各都県の食料自給率の現状
生産額ベース
19年度
20年度
20年度
(確定値)
(概算値)
(概算値)
国
40
41
65
茨城県
69
72
125
栃木県
74
74
112
群馬県
33
34
88
埼玉県
11
11
23
千葉県
29
30
71
東京都
1
1
5
神奈川県
3
3
13
山梨県
19
19
84
長野県
52
53
121
静岡県
18
17
52
全
資料:農林水産省「食料需給表」
注:都道府県別食料自給率は、「食料需給表」、「作
物統計」、「生産農業所得統計」等を基に農林水
産省で試算。
-- 60
60 -
第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
表Ⅰ-1-3
都県名
管内各都県の農業振興ビジョン等と食料自給率目標等の設定状況
策定時期
農業振興ビジョン等名
食料自給率目標等の設定状況
茨城県
H18年3月
茨城県農業・農村振興計画'06-'10
~いばらき農業“元気アップ”宣言~
カロリーベース:H16年度※72%
→H22年度見通し※73%
→H27年度見通し※75%
注:数値(%)は国が示している試算式による。
栃木県
H18年3月
とちぎ“食と農”躍進プラン~首都圏農
業の新たな展開~
カロリーベース:
H13~15年度平均76%
→H22年度目標78%
→H27年度見通し80%
生産額ベース:
117%
→120%
→123%
群馬県
H18年3月
群馬県農業振興プラン2010
生産額ベース:H15年度
93%
→H22年度目標100%
埼玉県
H16年3月
埼玉県民の健康とくらしを支える食料・
農業・農山村ビジョン
カロリーベース:H14年度12%
→H22年度目標15%
千葉県
H22年3月
千葉県総合計画「輝け!ちば元気プラン」
東京都
H18年6月
東京農業振興プランの中間評価と今後の
地域別取組
~新たな農業振興プランに向けて~
※品目別食料自給率
野菜自給率(うち緑黄色野菜):
H16年 7.5% (6.4%)
→H22年 6.1% (6.4%)
神奈川県
H17年3月
かながわ農業活性化指針
~県民の豊かな生活を支える都市農業を
めざして~
※品目別生産努力目標
米自給力:H14年度15,800t(22万人分)
→H27年度16,400t(24万人分)
牛乳:88,551t(224万人分)
→92,300t(234万人分)
山梨県
H19年12月
やまなし農業ルネサンス大綱
-
長野県
H19年9月
長野県食と農業農村振興計画
~食と農が織りなす 元気な信州農業~
-
静岡県
H18年3月
静岡県農林水産業新世紀ビジョン2001-
2010【2006改定版】
-
-
茨城県では、平成21年度から米粉の利用拡大に向けた取組として「米粉流通推進モデ
ル事業」及び「米粉調理講習事業」を実施している。
米粉流通推進モデル事業では、食品事業者や
加工グループ等に対して、米粉を無償提供し、
米粉製品の開発や料理教室等での普及拡大を推
進するとともに、イベント等での米粉製品、パ
ンフレット、レシピ等の配付による米粉の宣伝
活動等を行っている。この事業による米粉の提
供を受けた事業者が、試験的に米粉パンを店舗
で販売するなど徐々にではあるが、効果が現れ
始めている。
調理講習事業では、県内の調理学校に委託し、
米粉調理講習事業の様子
定期的に米粉食品の調理講習会を実施している。参加者の募集をタウン誌や市報等でし
ているが、毎回募集定員を超え、キャンセル待ちが出るなど反響が大きい。
この講習会では、米粉の栄養面や健康面での長所や食料自給率等を教えるようにして
いる。これは、米粉が単なる小麦粉の代替ではないと理解してもらわなければ、米粉の
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61 -
第Ⅰ章
事例:米粉の利用促進(茨城県)
第2部
資料:関東農政局調べ
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
定着にはつながらないとの考えからである。参加者からは「米粉とは思えない、美味し
い」といった料理の感想とともに「米粉を使うことの大切さが分かった」との意見をい
ただいている。
事例:県と市町村の協働食育推進イベント「ぐんま食育フェスタin桐生」(群馬県桐生市)
群馬県では、平成20年6月に開催した第3回食育推進全国大会により高まった食育への
理解と関心を、さらにステップアップして、県民への食育の定着が図られるよう、今年度
から市町村との協働により、県民に身近な地域単位の食育を推進するための県版食育推進
大会の開催をスタートした。
第1回目は、群馬県の東に位置する「絹織物」
で有名な桐生市との共催で、21年11月7日に「ぐ
んま食育フェスタin桐生」を開催した。桐生地
域を中心とした食育の様々な取組の出展があり、
当日は天気にも恵まれ、3千人の来場者に体験
や試食、講演を通じて楽しく食育についての理
解を深めていただいた。特に好評だったのは学
校給食コーナーで、給食の授業と地場産食材を
使用した学校給食の試食がセットとなった体験が
学校給食試食の様子
でき、メニューは、ごはん、牛乳、ソースかつ、田舎汁、ブロッコリーのアーモンド和え
で、このうち、ごはん、牛乳、カツの豚肉、野菜は地場産を使用。主菜のソースかつは桐
生の名物であり、地域の食文化を意識したものである。給食の授業と試食を通じて、保護
者や地域の方々に、学校における地産地消の取組を理解をしていただいた。
群馬県では、今後も、「ぐんま食育フェスタ」の中で、体験を通した地産地消や地域の
食文化への理解を促進していくこととしている。
事例:米粉用米の生産・消費拡大の支援(埼玉県)
主食用米が生産過剰となっている一方で、生産農家の高齢化等により不作付水田の増加
が見られることから、水田の有効活用を図り食料自給率の向上につなげることが強く求め
られている。
このため、埼玉県では、平成21年度は特に米粉用米の作付拡大を推進した結果、作付面
積が昨年の2haから209haに大きく拡大し、新潟県、秋田県に次いで全国第3位となった。
また、21年6月に、生産者・関係業者・関係機関等による「埼玉県米粉用米生産・消費
拡大推進会議」を立ち上げ、農商工連携を推進する体制を整備するとともに、国庫事業を
活用して県内製粉事業者が米粉製粉施設を整備した。
米粉用米は、湿田地帯など、水稲以外の作物への転換が難しい地域でも取組が可能であ
り、主食用米と栽培技術が共通で、新たな機械整備の必要もないことから、22年度におい
ても引き続き推進していく。
また、生産拡大を進めるに当たっては、需要先の確保が必要であることから、「埼玉県
米粉用米生産・消費拡大推進会議」により農商工連携として生産者と実需者などの連携を
支援するとともに、専用品種の選定や省力・低コスト生産を推進していく。
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第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
農 商 工連 携 の イ メ ー ジ
農 商 工連 携 に よ る 産 地形 成
生
産
・
消
費
拡
大
推
進
会
議
埼
玉
県
米
粉
用
米
製 粉業 者
連 携
・
推 進
JA 等集 荷・
流 通業 者
水 田 農 業 の活 性 化
二次 加工 業者
ビ ジ ネ ス チ ャン ス の 拡 大
県 産 米原 料 の 食 材 供 給
米 生産 農家
販売 店
埼玉県米粉用米生産・消費拡大推進会議開催風景
国庫補助事業で整備した製粉施設(気流粉砕機)
事例:エコフィード(ワインの搾りかす)を活用した
銘柄食肉(甲州ワインビーフ)の生産(山梨県)
第2部
山梨県甲斐市の(有)小林牧場は、山梨県が日本
を代表するワイン産地(ワイン製造量日本一)と
第Ⅰ章
いう立地条件を活かし、未利用資源であるブドウ
の搾りかす(ワインかす)の飼料化に山梨県酪農
試験場とともに取り組み、ワインかすとオカラ、
酒粕等を独自に配合した「甲州ワインビーフ混合
飼料」を開発し、飼料代を従来の3分の2に抑え
ることに成功した。この飼養技術は、近隣の肉牛
肥育経営者にも伝授され、甲州ワインビーフ生産
甲州ワインビーフ
組合が設立された。現在、この「甲州ワインビー
フ混合飼料」を給与・肥育した肉用牛の肉は、銘柄食肉「甲州ワインビーフ」として生産
・販売され、県を代表する地域ブランド食肉となっている。
また、当牧場では、地元小学校への甲州ワインビーフの供給や、子供たちの体験学習の
場としての農場の開放などの食育活動に加え、牧場に若いスタッフを積極的に雇用し、技
術習得と就農へのアドバイスを行うなど、次代を担う農業者の育成にも尽力している。
現在、「甲州ワインビーフ」の直売店として(有)美郷を県内に3店舗出店し、生産から
販売までの一貫体制を確立するとともに、平成16年10月には、県で初めて生産情報公表J
ASの認定を受けて、牛の出生日、与えた飼料、と殺日などの生産情報を消費者に公表し
ている。
-- 63
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第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
(3)米消費拡大の取組
関東農政局管内における米の消費拡大に向けた取組については、
「ごはん食の推進」、
「米
飯学校給食の推進」及び「米粉食品の利用拡大」の3つの柱を基本とし、これらを有機
的に連携させ一層の米の消費拡大の推進を図った。
①
ごはん食推進の取組
映像メディアを活用した米を中心とした日本型食生活の普及・啓発
ア
お米・ごはん食による朝食の摂取を啓発
農林水産省では、朝食欠食の改善や米を中心と
した日本型食生活の普及・啓発を目的に食品関係
企業・団体の協力を得ながら「めざましごはんキ
ャンペーン」を実施した。関東農政局では各種学
校(高校・大学・専門学校、自動車教習所等)及
び駅なか食堂等に対して日本の食料事情を説明し
たうえで、ポスターの掲示、朝食を摂りやすい環
境への改善等を要請した。
さらに、駅前大型映像装置(さいたま新都心駅、
千葉駅)及び街頭大型映像装置(静岡市、沼津市)
JR千葉駅前大型ビジョン映像
を活用し、同キャンペーンのテレビCM(タレント及びプロゴルファー)を放映するこ
とで多くの方に朝ごはんの重要性をPRした。
イ
地域の食材を活かしたレシピ集を紹介
当農政局では、関東管内における「地域のおに
ぎり」を紹介するパンフレット「『おにぎりで朝
ごはん!』~忙しい朝の簡単・お手軽おにぎり&
つくってみよう、地域の逸品おにぎり~」を作成
した。
さらに、家族揃っての夕食を推進するため、家
族で丼ごはんにチャレンジできるよう当管内にお
ける地域で愛されている丼ごはんを紹介するパン
フレット「楽しく味わう!『おうちでごはん!』
大塚人参混ぜおにぎり
【山梨】
~地域食材を活かした食のすすむ丼ごはん~」と調理レシピを作成し、これらをホーム
ページに掲載した。
-- 64
64 -
第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
米飯学校給食推進の取組
②
米飯学校給食の少ない都市部で着実に増加
ア
米飯学校給食の現状
米飯学校給食は、昭和51年度に開始され、60年以降、文部科学省が米飯学校給食の実
施回数目標を週3回として推進してきた。22年目の平成19年には、全国平均週3.0回が達
成され、20年度では、更に増加し週3.1回となった。
なお、関東農政局管内では、農政局・農政事務所の調査によると19年度から20年度に
かけて埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県の実施回数増加により、管内の平均は週2.8回
から2.9回に増加したが、全国平均には達していない状況である。
イ
米飯学校給食推進の取組
(ア)米飯学校給食回数増加支援事業による推進
農林水産省では、学校給食における地場農畜産
物の利用拡大を図ることの一環として、21年度第
一次補正予算の中で、家庭用電気炊飯器を活用し
て米飯学校給食の回数を増加させる補助事業「米
飯学校給食回数増加支援事業」を実施した。関東
農政局では、関東管内都県及び市区町村等に対し、
第2部
我が国の食料事情や米飯学校給食の必要性を説明
し、推進した結果、管内4県9市町で炊飯器309
対して米飯給食の回数増加が図られた。
栃木県都賀町立合戦場小学校の米飯の配膳
また、米飯給食に活用しやすくなった政府備蓄米の無償交付制度について、都県及び市
区町村等に説明し、米飯学校給食の実施回数の増加を要請した。(21年度の要請回数は、
都県段階延べ26回、市区町村延べ496回、関係団体等延べ45回)
(イ)にっぽん食育推進委託事業による米飯給食の推進
農林水産省では、
「にっぽん食育推進委託事業(次
世代米消費育成事業)」の一環として、従来からご
はん食を中心とした食習慣の形成を図る取組の支
援を行っており、今年度は、埼玉県、東京都、神
奈川県において「ごはんで給食セミナー」(参加者
704名)及び「ごはんで給食メニュー講座」(参加
者170名)を開催した。
セミナーでは、食育の専門家による「家庭の食
育、学校の食育」についての講演、「ごはん食を家
庭や学校給食で取り入れることで何が期待できるか」
ごはんで給食セミナー(東京会場)
をテーマにパネルディスカッションが行われ、脳科学者、スポーツコーディネーター及び
-- 65
65 -
第Ⅰ章
台が購入され、20校の児童・生徒(6,972名)に
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
学校栄養士等それぞれの分野から、「子どもの頃からの好き嫌いなく食べる習慣が脳の発
達や健康に役立つこと」や「家族揃ってのごはん食の必要性」が指摘された。
また、栄養教諭・学校栄養職員を対象とした「ごはんで給食メニュー講座」では、新た
な学校給食メニューの提案として、プロの調理人による調理実演、試食が行われ、食材の
活かし方、調理のポイントが指導された。
③
米粉食品の利用拡大の取組
新たな米粉製品がぞくぞくと開発・販売
米の粉はこれまでも、せんべいや団子等の和菓子商品に用いられていたものの、平成18年頃
から小麦の国際価格が上昇基調に転じたこと等を受けて、輸入小麦の代替品として米粉の利用
が加速した。
新たに開発された米粉は従来の米の粉に比べ微細に製粉し、小麦粉と同等の用途に使えるよ
うにしたもの。
ア
米粉料理講習会の開催
米粉の認知度の更なる拡大を図るため、各都県
の米粉普及推進協議会と連携し、各地域で小学生、
専門学校生、食生活改善推進員及び地域女性組織
会員等を対象にピザ、ロールケーキ、シフォンケ
ーキなど様々な米粉料理の講習会を開催した(延
べ118回、約2,280人)。講習会では米粉の可能性、
我が国の食料自給率の現状等の講話を行い、参加
者からは家庭でも米粉を活用したいとの感想が寄
群馬農政事務所・沼田ガス(株)共催料理教室
せられた。
また、米粉パン及び米粉めんの先進的な製造者
群馬農政事務所・沼田ガス㈱共催料理教室
を講師に招き、パン・めんの製造者、又は今後製造する予定の方及び専門学校生等を対象
とした米粉食品製造技術講習会を4回開催し、参加者延べ280人に対して実演・講習を行
った。
イ
各種イベントでのPR活動の実施
各都県米粉普及推進協議会と連携し、各地域で開催さ
れた市民祭り、食育フェア、消費生活展、学園祭及び農
業祭等のイベント114回に参加し、パネル展示、資料配
布(米粉マップ等)や米粉食品の試食、販売等を通じ、
国際的な穀物の需給事情及び我が国の食料自給率の現
状、さらには、米粉の特徴、米粉利用の可能性(小麦粉
代替)、米粉利用で期待できる効果等について約41.5万
人の来場者にPRを実施した。
大好評の米粉食品試食会
また、第58回外食産業フェア2009(東京都)に米粉食
-- 66
66 -
第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
品の販路拡大を目的に外食事業者への周知を図るため、関東米粉食品普及推進協議会とし
て出展し、米粉・米粉製品の展示・試食やパネル、リーフレット等を活用し、米粉の魅力
について、PRを行った。
なお、期間中、約4,500人の方が来場し大好評であったが、「米粉食品は値段が高価」と
の感想も寄せられ今後、新規需要米の低コスト生産等を通じた低価格化を図ることが販売
拡大の課題となっている。
ウ
関東米粉食品普及推進協議会会員事業者による新製品等販売事例
これまで、管内の会員事業者では家庭用米粉、米粉めん、米粉パン及び米粉洋菓子など
が販売されていたが、今年度は一覧表のとおり新たな米粉、米粉利用製品が開発、販売又
は学校給食用として供給が開始された。
関東農政局管内における米粉食品等新製品一覧表
学校給食への米粉食品導入増加
当農政局及び管内各農政事務所は、米飯学校給食への米粉パン等米粉食品の導入要請を
行い、21年度には群馬県で学校給食に米粉パンの供給が開始され、管内全都県で米粉パン
等(玄米粥入りパンを含む)が学校給食に導入された。
オ
米粉原料としての新規需要米の利用
米粉原料としての新規需要米利用をPRし、生産者と製粉事業者等需要者のマッチング
を推進した結果、当農政局管内では30事業者が新規需要米を導入し、約4,200トン(玄米
換算)の米粉用米の供給が見込まれている。
カ
米粉情報の発信
当農政局は、関東米粉食品普及推進協議会会員間の情報の共有を図ることを目的に「関
東米粉メールマガジン」を発信(月2回、年間25回)し、地域における最新の料理講習会
やイベント開催情報など取組情報の共有を図った。
-- 67
67 -
第Ⅰ章
エ
第2部
販売都県
米粉製品名等
茨 城 カレールゥ 米粉カップケーキ 米粉クッキー 米粉プリン 米粉蒸しパン
栃 木 ル・マロニエ(ケーキ等用米粉) お米ラーメン シフォンケーキ ロールケーキ
群 馬 米粉入り乾麺 お好み焼き粉 米粉パン(学校給食用)
埼 玉 米粉パウダー(料理・製菓用) 国産米粉の角型パン ホワイトデコレーションケーキ
千 葉 米粉蒸しケーキ(学校給食用) 米粉焼きプリン 米粉クレープ
東 京 浅間ほわいと焼き(洋風お好み焼き) 米粉パスタ 日本のコメ粉(料理・お菓子用)
神奈川 米皮春巻 米粉クッキー 米粉カップケーキ
山 梨 お米からつくったほうとう麺 桜もちパン 米粉かりんとう
長 野 微細米粉(菓子用) パン用米粉
静 岡 冷凍米粉入りナン(学校給食用)
* 関東米粉食品普及協議会会員調査による。
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
(4)飼料自給率の向上に向けた取組
①
飼料作物
「食料・農業・農村基本計画」
(平成17年閣議決定)では、
「飼料自給率」について、
15年度の23%から27年度には35%まで引き上げることを目標とし、このうち粗飼料につい
ては、完全自給(100%)を目標としている。
この目標の達成に向け、関東農政局では17年7月に「関東地域飼料増産行動会議」(構
成員:関東農政局、都県、関係団体等)を設立した。同行動会議では、関東地域の飼料増
産に向けた行動計画を毎年度策定してその工程管理の徹底に努め、関係機関・団体等が一
体となって耕畜連携等による飼料作物の生産拡大、耕作放棄地の積極的な利用、国産稲わ
らの飼料利用等に取り組んでいるところである。21年度行動計画では、次のような具体的
な目標を掲げ取組を推進した(表Ⅰ-1-4)。
表 Ⅰ- 1-4 21 年度 行動 計画 にお け る 目標 と実績
取 組 項 目
目
飼 料 増 産 重 点 地 区 ( 注 1) 数 の 増 加
飼料作物作付面積の 拡大
稲発酵粗飼料の作付 面積拡大
標
実 績
各 都 県 1地 区 以 上 の 増
3地 区 増 ( 73 → 76 地 区 )
2,51 0h aの 増 加
2 65 haの 増 加
2 2 年 度 作 付 面 積 1,80 0h a以 上
1,4 47 ha (注 2)
放 牧 頭 数 1,700 頭 以 上
うち 水 田 放 牧 5 00 頭 以 上
肉用繁殖雌牛放牧頭数の 増加
コン トラ クタ ー 受 託 面 積 の 拡 大
国 産 稲 わらの 確 保
放 牧 頭 数 1,7 49 頭
うち 水 田 放 牧 425頭
1 ,20 0h a以 上
1,62 5h a (注 3 )
完全自給
自 給 率 97 %
注1:「飼料増産重点地区」とは耕作放棄地の活用や稲発酵粗飼料の作付拡大等により自給飼料の
増産が可能な地域で、飼料増産に向けた重点指導を行うこととしている地区をいう。
注2:平成21年度の稲発酵粗飼料の作付面積。
注3:平成20年度のコントラクター受託面積。
そして、これら飼料増産運動を実効あるものとするため、当農政局では、管内都県と連
携して「稲発酵粗飼料の生産・調製・給与に係る現地研修会」をはじめとした各種現地研
修会を開催した(表Ⅰ-1-5)。
表Ⅰ-1-5
研 修 会 名
青刈り とうもろこしの
生産・ 給与に係る現地
研修会
稲発酵 粗飼料及び飼料
用米の 生産・給与に係
る現地研修会
耕作放 棄地等の活用に
よる放 牧に係る現地研
修会
飼料用 米利活用シンポ
ジウム
飼料増産運動にかかる現地研修会等の開催状況
開催月
21年
8月
開催場所
群馬県前橋市
21年
9月
長野県佐久市
21年
10月
山梨県韮崎市
21年
11月
埼玉県さいたま
市
-- 68
68 -
概
要
青刈りとうもろこしの生産・給与技術に
係る事例発表及び講演、その収穫・調製
の実演等
稲発酵粗飼料及び飼料用米の生産・給与
に係る事例発表及び講演、稲発酵粗飼料
の収穫・調製の実演等
耕作放棄地等を活用した放牧に係る事例
発表及び講演、その実証等
飼料用米の取組、課題等に関する事例紹
介及び講演、パネルディスカッション等
第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
これらの取組が一因となって、当農政局管内の21年の飼料作物作付面積は、昨年度に引
き続き増加し、前年比0.9%増の4万4,200haとなった(表Ⅰ-1-6)。
表Ⅰ-1-6
飼料作物作付面積(平成16~21年)
(単位:ha、%)
区
分
16年
17年
18年
19年
20年
21年
45,500
914,400
5.0
24,300
16,200
44,600
905,800
4.9
23,800
15,800
43,700
898,100
4.9
23,300
15,500
43,300
897,200
4.8
22,900
15,400
43,800
901,500
4.9
22,800
15,400
44,200
901,500
4.9
22,500
15,200
対前年増減
(▲)%
管
全
内
(A)
国
(B)
(A)/(B)
管内のうち
牧
草
青刈りとうもろこし
0.9
0.0
▲ 1.3
▲ 1.3
資料:農林水産省「耕地及び作付面積統計」
ホール・クロツプ・サイレージ
また、管内の稲発酵粗飼料(稲WCS:whole crop silage。以下「稲WCS」という。)
の21年作付面積(見込み)は、前年比19.3%増の1,447haに増加(表Ⅰ-1-7)し、肉用
繁殖雌牛の放牧頭数は前年比6.8%増の425頭に増加した(表Ⅰ-1-8)。
表Ⅰ-1-7
稲発酵粗飼料用稲(稲WCS)の作付面積(平成16~21年)
(単位:ha、%)
区
管
全
分
内
(A)
国
(B)
(A)/(B)
16年
629
4,375
14.4
17年
691
4,594
15.0
18年
797
5,182
15.4
19年
853
6,339
13.5
20年
21年
対前年増減
(見込み) (▲)%
1,213
1,447
19.3
9,233
10,306
11.6
13.1
14.0
-
関東農政局管内の肉用繁殖雌牛の放牧頭数(平成16~21年)
(単位:ha、%)
区
分
水田放牧
畑、林地等
管
内
16年
70
812
882
17年
188
888
1,076
18年
260
1,093
1,353
19年
354
1,139
1,493
20年
21年
対前年増減
(見込み) (▲)%
398
425
6.8
1,267
1,324
4.5
1,665
1,749
5.0
資料:農林水産省生産局及び関東政局
事例:酪農協によるコントラクターとTMRセンターの運営
浜名酪農業協同組合(静岡県浜松市、湖西市、掛川市、菊川市)
浜名酪農業協同組合(浜松市、湖西市、掛川市、菊川市
の酪農家58戸)では、組合員における生産の低コスト省力
静岡県
化及び生乳生産量の増加及び乳質向上による経営改善を図
る方策として、20年度に「強い農業づくり交付金」で施設
浜松市
・機械を整備し、「コントラクターによる自給飼料作物生
産の拡大」及び「TMRセンター (注4)による良質で安価な
湖西市
菊川市
掛川市
浜名酪TMRセンター
(浜松市西区白洲町)
飼料供給」に取り組んでいる。
-- 69
69 -
第Ⅰ章
表Ⅰ-1-8
第2部
資料:農林水産省生産局及び関東政局
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
コントラクターは、職員8名で青刈りとうもろこし
の作付・収穫のほか、酪農家の堆肥舎の管理までを実
施しており、青刈りとうもろこしの作付ほ場に堆肥を
施用することにより、家畜ふん尿を安定的かつ適正に
処理できるようになった。また、ほ場の集積を進める
ため、酪農協の農地渉外職員2名が遊休農地の利用権
設定による借受を行うなど、遊休農地を活用した作付
拡大を図っている。21年度は、85ha(うち遊休農地20
ha)のほ場で延べ120haの青刈りとうもろこしを作付
青刈りとうもろこしの収穫
け、ロールベール体系でサイレージ化し、TMRの原料としている。
TMRセンターでは、搾乳牛用TMR60トン/日(6
種類)、乾乳牛用TMR12トン/週(1種類)を製造
し、フリーストール牛舎には給餌用トラックのバラ
積みで毎日、繋ぎ牛舎にはトランスバックで2日~
4日毎に配送している。
また、コンサルタント職員4名が、各酪農家に対
して飼料設計、飼養管理、繁殖管理等の指導を行い、
農場の状況を常に把握し、必要に応じてTMRの飼
T M R セ ン タ ー と 給 餌 用 ト ラ ッ ク 料設計の微調整を行っている。
酪農家は、飼料作物生産やTMRの製造、堆肥の
生産・流通から解放され、乳牛の飼養管理に専念で
きるようになった。また、バランスの良いTMRを
給与することにより生乳生産量が増加したほか、飼
料費が削減されたことから、TMR利用者の乳飼比(注5)
は、20年12月の66%から50%へ大幅に改善した。今
後は、ほ場の集積をさらに進めて、作付延べ面積200
haを目標に取り組み、特に遊休農地であったほ場で
は、施肥、除草、排水対策等の管理を徹底し、収量
乳牛へのTMRの給与
を増加させていくこととしている。
注4:TMRセンターとは、TMR(total mixed rations:粗飼料、濃厚飼料、ミネラル、ビタミン、添
加物等を混ぜ合わせた混合飼料)を製造する施設で、配合設計に基づき良質な飼料が安価で生産で
きるメリットがある。
注5:乳飼比とは、売り上げ乳代に対する購入飼料費の割合(乳飼比=購入飼料費÷牛乳売上代×100)
②
食品残さ等の飼料化(エコフィード)の推進
飼料自給率の向上を図っていくには、前述の飼料作物の増産に加えて、食品残さの飼料
化(エコフィード)等により、濃厚飼料の自給率を向上させることが重要となる。そこで、
全国段階の「全国食品残さ飼料化(エコフィード)行動会議」(構成員:農林水産省、都
道府県、農業関係団体、食品産業団体、消費者関係団体等)が、17年6月に設立されたこ
とを受け、関東農政局においても、
「関東地域食品残さ飼料化(エコフィード)行動会議」
-- 70
70 -
第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
(構成員:関東農政局、都県、農業関係団体、食品産業関係団体等)を17年7月に設立
した。
21年度は、「エコフィード」の名称の関係者等に対する認知が確実に進んできたことか
ら、全国段階の「全国食品残さ飼料化(エコフィード)行動会議」が「全国エコフィード
推進行動会議」に名称変更されたことに伴い、
「関東地域食品残さ飼料化(エコフィード)
行動会議」も「関東地域エコフィード推進行動会議」とし、第1回の本行動会議を21年5
月31日に開催し、21年度の行動計画等を決定した。
21年度の主な活動としては、昨年度に引き続き、一般消費者等を対象した「エコフィー
ド推進のためのシンポジウム」(21年8月、東京都)を開催するとともに、行政等の関係
者を対象とした「エコフィード推進のための現地検討会」
(22年2月、茨城県)を開催し、
ひたちなか市の特産品である干しいもの残さを活用したエコフィードの生産・利用の取組
事例を関係者に紹介した。
第2回関東地域エコフィード推進行動会議を22年2月26日に開催し、行動計画等の活動
者等に積極的に配布するとともに、引き続き、一般消費者向けのエコフィード理解醸
成チラシ(1万部)を消費者を対象としたシンポジウム等や都県を通じて配付等を行っ
た。
なお、「全国エコフィード推進行動会議」の構成員である(社)中央畜産会では、ホーム
ページ(http://ecofeed.lin.go.jp/)で公開の同意を得た全国のエコフィード製造事業
者について、所在地・製品・価格・取引条件等の情報を掲載しており、この情報のうち関
東管内分については関東農政局が調査等を実施しているところである。
-- 71
71 -
第Ⅰ章
報告を行った。また、関東エコフィード優良事例集(一千部)を作成し、都県、畜産関係
第2部
現地検討会(見学会:ひたちなか市)
干しいも加工施設:(株)幸田商店
現地検討会(講演会会場:水戸市)
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
第2節
食品産業等の現状と取組
(1)食品産業等の動向
①
食品産業の概要
管内の食品産業の全国シェアは、食品製造業(出荷額)、飲食料品卸売業(販売額)、
飲食料品小売業(販売額)とも約4割と大きなウェイトを占める。
食品製造業・食品流通業・外食産業からなる食品産業は、農水産物の加工・流通・消費
に至る一連の食品供給の流れ(フードシステム)の中で、食料の安定供給や食生活の多様
化・高度化を支えるという点で、生産部門である農水産業と並んで重要な役割を担ってい
る。
管内の食品産業が全国に占める割合は、食品製造業の出荷額が約13兆円で37.0%、飲食
料品卸売業(農畜産物、水産物卸売業を含む。)、飲食料品小売業の販売額がそれぞれ
約31兆円で41.3%、約16兆円で38.6%といずれも約4割と大きなウェイトを占めていると
ともに地域経済においても重要な位置づけにある。
また、管内の全製造業に占める食品製造業の出荷額の割合は10.7%、飲食料品卸売業、
飲食料品小売業の販売額がそれぞれ14.5%、30.0%となっている(表Ⅰ-2-1)。
表Ⅰ-2-1
管内の食品産業の概況
(単位:10億円)
全
国
(A)
食品製造業出荷額
全 製 造 業 出 荷 額
飲食料品卸売業販売額
全 卸 売 業 販 売 額
飲食料品小売業販売額
全 小 売 業 販 売 額
34,440
336,757
75,649
413,532
40,813
134,705
管
内
(B)
( 10.2)
(100.0)
( 18.3)
(100.0)
( 30.3)
(100.0)
12,739
119,434
31,270
216,305
15,751
52,466
( 10.7)
(100.0)
( 14.5)
(100.0)
( 30.0)
(100.0)
シェア(%)
(B)/(A)
37.0
35.5
41.3
52.3
38.6
38.9
資料:食品製造業出荷額は経済産業省「工業統計」(平成19年)。飲食料品卸売業販売額及び
飲食料品小売業販売額は、経済産業省「商業統計」(平成19年)。
注:1)食品製造業=食料品製造業+飲料・たばこ・飼料製造業
2)製造業は従業者4人以上の事業所
②
流通・小売業の効率化
食品の流通部門は、近年の少子高齢化等による食料消費の減少、食料消費・小売形態の
変化、消費者ニーズの多様化、食の安全の確保などの社会的要請の高まりなどを背景に大
きく変化してきている。更に、消費者の消費行動における低価格志向の高まりから、量販
店を中心に従来以上に効率化・合理化が求められている。
これら経済的・社会的要請に対応して、POSシステムの導入などの情報ネットワーク
の活用等による流通の効率化、コールドチェーンの確立による流通の高度化に努める必要
がある。
そこで、関東農政局では、食品の流通構造の合理化と流通機能の高度化を図ることを目
-- 72
72 -
第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
的とした「食品流通構造改善促進法」に基づき、食品販売業者等が策定した販売・保管施
設等の整備に関する構造改善計画の認定を行っている。認定された食品販売業者等は、計
画に基づく施設等の整備を行う場合に、(株)日本政策金融公庫からの低利子融資や(財)食
品流通構造改善促進機構を通じたリース方式による機材の導入支援を受けることができ
る。
21年度における構造改善計画の認定は21件(計画の変更認定を含む)であった。事例と
しては、山梨県において食品販売事業者と農業者が長期に「地元野菜」の安定的・戦略的
取引契約を結び、一次処理加工施設を整備した。
この施設整備は農業経営の安定に寄与するとともに、適切な品質管理・温度管理の徹底
により高品質で安全な地元野菜の安定供給を可能とした。さらには、これまで各店舗毎に
行っていた下処理を一括処理することにより作業の効率化を可能とした。
③
食品産業の組織化
食品産業の大部分を占める中小企業は、概して経営規模が小さく、人材、技術力、信用
力が低いことや資金調達力、情報収集力が弱く事業活動等において不利な立場になる場合
が多い。そこで、中小企業者が相互扶助の精神に基づき、組織化して協同で経済事業を行
うことにより、経済的地位の向上を図っている。
中小企業者の組織化を図る手段として、「中小企業等協同組合法」や「中小企業団体の
組織に関する法律」があり、関東農政局では事業協同組合等の設立認可、運営指導を行っ
ている。22年3月末現在、関東農政局認可の事業協同組合等の数は、453組合となってい
関東農政局認可事業協同組合等の概況(平成22年3月末現在)
事業協
商 工
協 業
同組合
組 合
組 合
農林水産業
13
1
-
14
林業、造園業、林産燃料等
製
業
36
4
-
40
食料品37、材木・木製品2等
卸・小売業
143
1
-
144
造
合
計
内
訳
農畜水産物80、飲食店13、食料・飲料23、
その他28
サービス業
そ
合
の
他
計
4
-
1
5
250
-
-
250
446
6
1
453
貸植木鉢業、遊漁船業等
異業種組合等(情報、国際交流、経営)
資料:関東農政局調べ
注:「事業協同組合」とは中小企業の経営の合理化と取引条件の改善等を図るために設立される組合
であり、「商工組合」は業界全体の発展を図ることを目的とするもの、「協業組合」は参加す
る中小企業の事業を統合することを目的として設立される組合である。
-- 73
73 -
第Ⅰ章
表Ⅰ-2-2
第2部
る(表Ⅰ-2-2)。うち、21年度中に新たに7組合が設立された。
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
(2)卸売市場流通の課題と取組方向
①
卸売市場の概要
卸売市場数の取扱高は全国の4割を占める。
我が国総人口の38%が集中する管内は、首都圏を中心とした食料品の大消費地であるこ
とから、多種多様な食料品流通システムが形成されている。生鮮食料品等の流通拠点を担
う卸売市場についてみると、中央卸売市場が22市場(全国市場数の28.6% 、21年4月1日
現在)、地方卸売市場が293市場(同24.2%、20年4月1日現在)ある。また5年前との比
較では中央卸売市場数は△2、地方卸売市場数は△26と減少している(表Ⅰ-2-3)。
表Ⅰ-2-3
区 分
年 度
中 央
卸
売 市
場
卸 売 市 場 の 種 類 と 設 置 数
地
方
総 合 市 場
青 果
水 産
そ の
他
卸
売
市
場
水 産 物
青 果
市 場
消 費 地
市 場
産 地
市 場
食 肉
市 場
花 き
市 場
小 計
政 令 規
模 未 満
市 場
合 計
15
24
26
16
15 8
17
54
6
42
31 9
87
43 0
20
22
25
16
1 38
16
54
6
38
29 3
76
39 1
15
86
11 3
54
4 92
1 71
3 37
23
13 5
1 ,3 2 5
7 05
2 ,1 1 6
20
77
10 9
49
4 25
1 49
3 33
22
12 0
1 ,2 0 7
5 80
1 ,8 6 4
管 内
全 国
資料:農林水産省「地方卸売市場実態調査」
注:1)管内の市場数については、中央卸売市場数は21年4月1日及び15年4月1日現在、
地方卸売市場数及び政令規模未満の卸売市場数は20年4月1日及び15年4月1日現在
2)政令規模未満の卸売市場は、卸売市場法施行令第2条各号に掲げる卸売場面積
(青果物:330㎡、水産物200㎡、肉類:150㎡、花き:200㎡)未満の市場である。
19年度における管内卸売市場の全国に占める取扱金額の割合は、中央及び地方卸売市場
とも4割を占め、その価格形成において重要な役割を果たしている。特に中央卸売市場の
食肉及び花きについては、55.7%、66.5%と、ともに過半数を占めている(図Ⅰ-2-1)。
5年前との比較では中央卸売市場で93%、地方市場で86%とそれぞれ取扱い金額は減少
している。
-- 74
74 -
第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
図Ⅰ-2-1
卸売市場の取扱実績(平成19年度)
(単位:億円、%)
中央卸売市場
25,000
100.0%
90.0%
21,107
20,294
20,000
80.0%
66.5%
15,000
10,000
70.0%
60.0%
39.0%
37.8%
7,914
7,969
50.0%
55.7%
40.0%
管内
全国
全国比
30.0%
5,000
1,401
2,516
20.0%
1,037 1,559
0
10.0%
0.0%
青果
水産物
食肉
花き
地方卸売市場
25,000
20,000
10,000
43.9%
43.0%
33.4%
5,000
7,793
28.3%
2,600
546
1,271
2,724
771
0
青果
水産物
食肉
花き
資料:関東農政局調べ
注:水産物については産地市場を除く。
また、市場の集荷力の現状を野菜と生鮮水産物でみると、東京都中央卸売市場築地市場
及び大田市場は他市場からの集荷の割合が1%台と低い割合を示しており、市場の知名度
を背景に卸売市場流通において集出荷の中核的拠点としての役割を果たしている。(表Ⅰ2-4)
-- 75
75 -
第Ⅰ章
5,996
管内
全国
全国比
第2部
13,650
15,000
100.0%
90.0%
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
表Ⅰ-2-4
他市場からの集荷割合(平成18年度)
(単位:%)
野
菜
水産物(生鮮)
中 央(大都市)
3.0
3.6
大 田 市 場
1.0
-
築 地 市 場
-
1.6
9.3
5.7
16.5
11.4
中 央(中都市)
地 方
資料:農林水産省流通課調べ
注:大都市とは開設者が都道府県若しくは政令指定都市である市場を指す。
中都市とは開設者が大都市以外の都市市場を指す。
②
卸売市場の整備
中央卸売市場の流通機能の強化及び市場再編整備を推進する。
我が国では、多種類・多品種の農林水産物が各地で生産されており、これらを効率的、
かつ確実に全国の消費者まで流通させる上で、卸売市場流通は基幹的な役割を果たしてい
る。しかしながら、今後、卸売市場にかかわる流通の多様化、広域化及び情報化が進展す
るなか、卸売市場の再編や機能強化を進めて、生産・消費両サイドの期待に応えられる「安
全」、「効率的」な流通システムに転換を図ることが必要となっている。
管内では、「第8次中央卸売市場整備計画」(平成17年3月公表)に基づき、21年度の
「強い農業づくり交付金(卸売市場施設整備対策)」を活用して4市場で整備事業を行っ
た。
整備内容として、東京都中央卸売市場大田市場では、近年の青果物流通における大口取
引や大型車両の搬入出の増加に対応するため、昨年度に引き続き大屋根付き積込場の整備
を行った。これにより、分荷・配送機能の充実と大型車両の利便性向上が得られ、豊富な
荷揃えと市場競争力の強化が図られた。
東京都中央卸売市場世田谷市場では、産地から消費地までの一貫したコールドチェーン
(注1)
を展開するために、低温卸売場の整備を行った。これにより食品の鮮度維持機能が向
上し、品質管理の高度化と市場競争力の強化が図られた。また、市場内の各仲卸業者にお
いても品質管理マニュアルの策定がなされ、品質管理高度化の徹底が図られた。
横浜市中央卸売市場の食肉市場では、近年の取扱頭数増加に対応するために、小動物け
い留所の増改築を実施したことにより、生体の衛生管理状況が改善し、枝肉の品質向上が
図られた。
川崎市地方卸売市場南部市場では、取扱部類の水産物に関して市場内施設の効率的な再
配置と品質管理高度化施設の整備を行った。これにより、鮮度と品揃えのよい供給システ
ムが充実されたことから、集荷力の向上や新規需要者の確保に繋がった。
注1:生鮮食品や医薬品などを生産・輸送・消費の過程の間で途切れることなく低温に保つ物流方式。低
温流通体系とも呼ぶ。これにより、生鮮食品などの広域流通や長期間の保存が可能となった。
-- 76
76 -
第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
③
卸売市場の流通における取組
市場流通のコスト削減のため、卸売業者における商物分離取引への関心は高い。
中央卸売市場の取引では商物一致規制(注2)による流通が原則であったが、IT技術の進
展等により電子情報技術を活用した取引が拡大していることを踏まえ、16年の卸売市場法
の改正により一定の規格性や貯蔵性のある物品の取引に関して商物一致規制が緩和され
た。これに対し、中央卸売市場においてはインターネット等による電子商取引の導入によ
る商物分離直接流通の試みを進め、取引業務や市場内の仕分け・搬送業務に係る経費等の
市場流通コストの削減に取り組んでいる。
規制緩和以降における、卸売業者の商物分離取引の実態について「卸売市場流通の実態
に関するアンケート」(総合食料局流通課調査)調査を行った。同調査で回答があった関
東管内の卸売業者48社(全国143社)のうち、現在、商物分離を実施しているとした事業
者は青果では35.0%(全国32.8%)、水産物43.5%(同34.4%)、花き16.7%(同9.5%)
となっており、全国平均に比べて実施している卸売業者の割合は高い傾向にあった。
商物分離取引を行っている品目としては、全国的にばれいしょ、たまねぎなどの土物類、
だいこん、にんじんなどの根菜類、水産物では冷凍品と塩干品で多く行われている。
仕入先別では、青果が農協系出荷団体、水産物は商社からが多く、販売先としては青果
は仲卸業者、水産物は食品製造業者向けが商物分離取引で取引されている傾向にあった。
また、今後の取組については、青果のすべて(全国83.1%)、水産物の63.6%(同71.7
割近くが物流コストの軽減のため実施したいと回答している。次いで、鮮度の維持が容易
なお、インターネット等による電子商取引の活用に対する問題点としては、青果、水産
物部門ともに6割以上が情報通信インフラの未整備や情報だけでは商品評価を適正に行う
ことができないことを上げている。
注2:16年の卸売市場法改正前は、旧法第39条(市場外にある物品の卸売の禁止)により、中央卸売市場に
おける取引では、品質・規格の統一しにくい生鮮食料品の適切な価格の形成を図るため、市場に現物を
搬入して取引を行うことを原則としていた。法改正により、市場流通の効率化を進めるため、一定の規
格性のある商品については開設者の承認を受けて適切な価格形成上支障がない形でインターネットを活
用した取引を行う場合には、商物分離規制の例外となった。
-- 77
77 -
第Ⅰ章
となることや実需者の直接物流ニーズに対応するためとしている。
第2部
%)の卸売業者が引き続き実施又は拡大したいとしており、その理由として両部門とも9
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
(3)食品産業における環境対策の推進
我が国は、地球温暖化防止を目指す京都議定書において、2008~2012年までに1990年比
で6%の温室効果ガスの削減を約束したところであり、また、中長期的には2020年までに
1990年比で25%削減する目標を掲げている。
このような状況のもと、食品産業においては、温室効果ガスの排出削減、食品廃棄物及
び容器包装廃棄物の減量化、再資源化等の環境に配慮した一層の取組が求められており、
農林水産分野における地球温暖化対策の強化及びバイオマスの利活用の加速化を行うこと
としている。
我が国の廃棄物の発生状況についてみると、一般廃棄物(生活系・事業系ごみ)は、約
5,080万トン(19年度)、産業廃棄物は約4億1,900万トン(19年度)で、依然として高水
準で推移している(いずれも環境省調べ)。このため、環境負荷を低減し循環型社会を形
成していくためにも、食品産業においては食品製造と流通過程で大量に発生している食品
や容器包装等の廃棄物処理への対応が課題となっている。その対応策として「食品循環資
源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)が13年5月に、「容器包装に
係る分別収集及び再資源化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル法)が12年4月
に完全施行された。
①
食品産業分野における地球温暖化対策
地球温暖化対策として、温室効果ガスの削減や省CO2効果の「見える化」を検討
政府では、食品産業(食品製造業、食品流通業及び外食産業)団体に対して、環境自主
行動計画の策定を勧めており、食品産業の19団体・20業種(20年度)が策定している。策
定された計画については、毎年度、進捗状況を評価する等のフォローアップを実施してい
る。
また、20年7月に閣議決定された「低炭素社会づくり行動計画」の中で、国全体を低炭
素化に動かす仕組みの一つとして温室効果ガス排出量等の「見える化」が提言された。ま
た、農林水産省では、農林水産分野における省CO2効果の表示を進めるための検討を行
い、21年4月に「農林水産分野における省CO2効果の表示の指針」を公表した。
20年5月には省エネルギーを一層進めるため、
「エネルギー使用の合理化に関する法律」
(省エネ法)が改正され、現行の工場単位から、22年度には企業(事業者)単位の総合的
エネルギー管理義務に移行することとなった。このため、関東農政局では、食品工場への
訪問調査や資料配布等による事業者に対する省エネ法の改正内容等にかかる普及・啓発を
行った。
-- 78
78 -
第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
食品廃棄物及び容器包装廃棄物のリサイクル
②
循環型社会の形成に向けて、食品廃棄物と容器包装廃棄物のリサイクルを推進
ア
食品廃棄物のリサイクルの現状
食品廃棄物等は、食品の製造・流通段階における加工残さや売れ残り、外食産業におけ
る食べ残し等として食品関連事業者から年間約1,100万トン発生している(注1)。また、家
庭における食べ残し等によって大量に発生しており、家庭から出るごみが1年間で約
3,320万トンであり、このうちの3分の1が食品由来のごみ(注2)となっている。
食品廃棄物は、肥飼料等に再生利用することが可能であるにもかかわらず、大量に廃棄
される一方で、最終処分場の残余容量のひっ迫等、廃棄物処理をめぐる問題が深刻化して
いる。このような状況の中で、消費者、事業者、国及び地方公共団体等食品廃棄物にかか
わる者が一体となって、食品廃棄物等の発生の抑制、再生利用、減量等に努めていく必要
がある。
このため、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)が、
食品廃棄物の排出の抑制・再生利用等を目的として12年6月に制定(13年5月施行)され
た。その後、食品産業全体の再生利用等は着実に向上しているものの、食品小売業や外食
産業では多種多様な食品廃棄物等が少量かつ分散して発生すること、性状・品質が不均一
で異物混入のリスクが高いことから、依然として十分に再生利用等がなされていないこと
が実態調査(注1)の中で明らかとなり、19年12月に同法の一部改正が行われた。この改正で
等の発生量等の状況についての定期報告の義務化、②より一層の循環型社会の形成を図る
計画(食品廃棄物由来の肥飼料で生産された農畜水産物を食品関連事業者が引き取る。い
わゆる食品リサイクルループ)」の認定制度を創設した。
我が国では食用に向けられるもののうち、5~10%程度の約500~900万トンが、本来食べ
られるにもかかわらず廃棄されている(いわゆる「食品ロス」)と推計(注4)されている。
このため、農林水産省では、20年8月に「食品ロスの削減に向けた検討会」を設け、同年
12月に報告書「食品ロスの現状とその削減に向けた対応方向について」を公表し、21年9
月にヤクルトホール(東京都港区)において「食品ロス削減セミナー」を開催した。食品
ロス削減に向けて実態把握や削減目標の明確化や具体的な行動計画を策定すること、食材
を無駄にしないこと等食品企業や消費者が取り組むべき課題と対応方向が示された。
注1:農林水産省統計部「平成19年食品循環資源の再生利用等実態調査の結果の概要」
注2:環境省調べ
注3:食品関連事業者とは、食品の製造、加工、卸売又は小売を業として行う者、又は飲食店業その他食
事の提供を伴う事業を行う者をいう。
注4:農林水産省総合食料局推計(17年度データ)
-- 79
79 -
第Ⅰ章
ため、食品関連事業者、リサイクル業者、農林漁業者の3者が連携して、「再生利用事業
第2部
は、①食品廃棄物等の発生量が年間100トン以上の食品関連事業者(注3)に対し食品廃棄物
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
イ
容器包装廃棄物のリサイクルの現状
「容器包装に係る分別収集及び再資源化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル
法)は、容器包装廃棄物の排出の抑制、分別収集等の措置を講じることなどにより、廃棄
物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図ること、更には、事業者に再商品化の義
務付けなどを規定している。その後、国、地方自治体、事業者、消費者等のすべての関係
リ デ ュ ー ス
リ ユ ー ス
者の協働のもと、容器包装廃棄物の3R[発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利
リ サ イ ク ル
用(Recycle)]の効果的な推進等を図るため、18年6月に、①排出抑制のために、小売業
に用いる容器包装の使用量が50トン以上の業者について、容器包装の使用量等の定期報告
の義務化、②分別基準適合物の質的向上を促進するために、事業者が市町村に資金を拠出
する仕組みの創設、③再商品化義務を履行しない事業者(いわゆる「ただ乗り事業者」)
への罰則強化等の改正が行われた。関東農政局では、各事業者に対して訪問指導や資料の
配付等により事業者が社会的意義に関する理解を深め、法令遵守を徹底するよう指導等に
努めている。
-- 80
80 -
第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
第3節
食生活上の課題と食育の推進
「食育推進基本計画」の実現に向けた各種取組を実施
近年、栄養の偏りや食生活の乱れによる肥満や生活習慣病が増加している。この状況に
対処し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を国民運動として推進す
るため、食育基本法(平成17年7月施行)に基づき、内閣府に設置された食育推進会議(会
長:内閣総理大臣)において、18年3月31日に食育推進基本計画が決定された。
本基本計画では22年度までに、
①食育に関心を持っている国民の割合を17年度の70%から90%以上とする、
②生活習慣の形成途上にある子ども(小学生)で朝食を欠食する者の割合を12年度の4%
から0%にする、
③学校給食における地場産物を使用する割合を16年度の21%から30%以上とする、
④「食事バランスガイド」(17年6月・厚生労働省、農林水産省決定)等を参考に食生活
をおくる国民の割合を60%以上とする、
⑤市町村等の関係者によって計画が作成され様々な主体による教育ファームの取組がなさ
れている市町村の割合を60%以上とする、
などの目標を掲げており、関東農政局としても、本基本計画の実現に向け各種取組を実施
している。
食育月間等の取組
食育推進基本計画のなかで、毎年6月を「食育月間」、毎月19日を「食育の日」と定め
①「食育月間」における消費者の部屋特別展示等の実施
関東農政局の消費者の部屋において、「教育ファーム等農業体験の取組」、「食事バラ
ンスガイド」、「食育推進ネットワーク参加者の取組」等をパネル展示やパンフレット
で紹介した。
その他、各農政事務所においても、食育を推進するため、管内で「食事バランスガ
イド」等のパネル展示やパンフレットの配布を実施した。
②管内の食育推進ネットワーク参加者の「食育月間」の取組を関東農政局のホームペー
ジ「食育ひろば」に掲載した。
(URL: http://www.maff.go.jp/kanto/syo_an/seikatsu/shokuiku/index.html)
③栄養相談会の開催
6月19日に関東農政局において、(社)埼玉県栄養士会による栄養相談会を開催した。
④食育月間セミナー等の開催
6月25日に「~いま、そして、これからの食育を考える~」をテーマとした食育月
間セミナーを関東農政局で開催した(参加者137名)。この他、群馬農政事務所におい
ても6月25日に食育シンポジウムを開催した。
-- 81
81 -
第Ⅰ章
られており、関東農政局管内では21年度の「食育月間」において以下の取組を実施した。
第2部
(1)
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
『 食育月間セミナー ~ いま、そして、これからの食育を考える ~ 』
◇
内
容:
(1)食育推進の現状について
関東農政局
消費生活課
食育基本法における「食育」の位置付けや法律の目的などの概要、食育基本計画
における食育の推進に関する施策「基本的方針」、「食育の推進の目標」、「食育の総
合的な促進」などの概要、さらには、農林水産省の施策として取組んでいる「日本
型食生活」の普及啓発の取組、「食事バランスガイド」の解説や地域版食事バランス
ガイドである埼玉県版「野っ葉(やっぱ)!
野菜たま!!」の紹介、教育ファームの意
義・目的など、食育推進の現状について幅広く説明。
(2)「地域における「食事バランスガイド」の活用について」
財団法人食品産業センター普及・食育推進部
主事
二瓶
徹
氏
地域における食育の取組を推進するにあたり、
居住する地域や個人には様々な特徴が見られるこ
とから、様々な機関・人に対して、多岐にわたる
アプローチが必要である。その具体的な推進方策
として、①1機関・1人だけでの取組は限界があ
るため、行政や学校、企業、ボランティア団体な
どに声をかけ、様々な機関と多岐にわたる取り組
みの実施(ソーシャル・マーケティング ※ 戦略の
必要性)、②行政機関やコーディネート機関を立ちあげ、地域の連携を推進する必要
性、③「食育」は継続することに意義があるため、参加者・取組側がWin-win
の関係となるよう、参加者のニーズや抱える問題点を把握するとともに、取組側の
負荷とメリットを念頭に仮説を立てて取組むことが重要となる旨を説明。
(※ ソーシャルマーケティングは、商業マーケティングの方法論を、行政、医療、
教育関連の非営利組織の活動、あるいは企業の社会的責任の達成に関する活動に適用
することをいう。
(すなわち、社会全体の利益向上を追求するために適用すること。))
(3)「教育ファーム」の効果について
さいたま市立仲本小学校
仲本小学校は浦和駅の東口から約7分のところ
に位置。校区内は住宅地で農業体験を行う田んぼ
や畑がない場所ではあるが、当校は5年生が社会
科の授業で農業(特に米つくり)の勉強をしてい
ることから、さいたま市農業後継者対策協議会が
主催している「児童体験農園」に5年ほど前から
参加。この取組では、「5月の田植え」と「9月
の稲刈り」のみを実施。
-- 82
82 -
教諭
白井昌弥
氏
第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
昨年度は、
「教育ファーム」の取組に参加し、従来からの取組の他に、野菜の栽培、
草取り、生き物調査にも参加。講演では、昨年度実施した「教育ファーム」の取組
における子どもたちと先生の意識の変化をエピソードを交えながら、
「教育ファーム」
の効果について説明。
(議事概要、講演資料はhttp://www.maff.go.jp/kanto/syo_an/seikatsu/shokuiku/index.htmlを参照)。
(2)「教育ファーム」等の体験を通じた取組
関東農政局では食育の一環として、自然の恩恵や食への理解を深めることを目的とし、
一連の農作業を体験する「教育ファーム(注1)」を推進している。
①
「教育ファーム」を内容としたシンポジウム等の開催
関東農政局では、前述の食育月間セミナーの他、第21
回全国生涯学習フェスティバル「まなびピア埼玉2009」(注2)
の参加事業として、11月2日に「教育ファームを地域全
体に広げていくために」をテーマとした食育シンポジウ
ム(埼玉県さいたま市)を開催した。その他、2月13日
に長野農政事務所で食育シンポジウム(長野県長野市)、
3月5日には茨城農政事務所、茨城県、茨城県教育委員
会の主催で食育連携フォーラム(茨城県水戸市)を開催
した。
「まなびピア埼玉2009」参加事業
食育シンポジウムの様子
教育ファーム意見交換会の開催
関東農政局では、実際に教育ファームに取組んでいる
団体等との情報交換等を通じて、管内における「教育フ
ァーム」の取組が継続的に取組まれる環境を醸成するた
め、農林水産省にっぽん食育推進事業「教育ファーム
推進事業」の協力団体、都県農政部局担当者、農政事
務所担当者を参集し、1月27日に関東ブロック「教育
関東ブロック「教育ファーム意見交
ファーム意見交換会」を開催した。
また、「教育ファーム」の推進に向け、小中学校の理
換会」の様子
解を深めるためには、将来、教員となる教育学部等の大学生が自ら体験し理解するこ
とが有効であると考えられることから、大学生の農業体験への参加に向け、3月8日
に文教大学教育学部の学生との「教育ファーム」意見交換会を開催した。
この他、管内の各農政事務所等においても、地方公共団体や農業団体等と連携し、
「教
育ファーム」の指導者となる農林漁業者の方への周知方法等や「教育ファーム」の推
進方策についての意見交換を計10回開催した。
-- 83
83 -
第Ⅰ章
②
第2部
注1:自然の恩恵や食に関わる人々の様々な活動への理解を深めることを目的として、農林漁業者など
が一連の農作業等の体験の機会を提供する取組である。なお、一連の農作業等の体験とは、農林漁業
に実際に携っている者による指導を受けて、同一人物が同一作物について2つ以上の作業を年間2日
間以上行うことである。
注2:あらゆる世代の人たちが、学ぶ楽しさや大切さを感じ、学びのきっかけづくりを提供する全国規
模の参加体験型のイベント。愛称は「まなびピア」。平成元年から始まり、各県持ち回りで毎年実施し
ている。
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
消費者の部屋特別展示の実施
③
関東農政局では、6月の食育月間における展示等の他、子どもたちにホンモノ体験
の場を提供する「教育ファーム」の取組を広げていくため、その概要や管内の教育フ
ァーム取組事例のパネル展示等(開催期間:10月13日~11月6日)を実施した。
④
市町村等に対する教育ファーム推進計画策定に向けた働きかけ
管内市区町村に対して、教育ファーム実態調査の実施に向けて、関東農政局版の教
育ファームの啓発用パンフレットを使用するなどして、教育ファーム推進計画の策定
の働きかけを実施するとともに、計画策定に向けたアドバイス等を実施した。
また、管内の全市区町村に対し、「教育ファーム」の取組状況を把握するために、教
育ファーム実態調査を実施した。
(計画策定済市区町村:20年度 38市町村 → 21年度 68市町村)
(3)「食事バランスガイド」の活用による「日本型食生活」の実践に向けた取組
「食生活指針」(12年3月24日、文部省、厚生省、農林水産省決定)を具体的な行動に
結び付ける「食事バランスガイド」
を多くの方が実践し、一人一人が食
生活を見直すきっかけとして広く普
及・活用するためには、日々の食生
活を支える食品産業分野における取
り組みが重要である。このようなこ
とから、「食事バランスガイドの活
用と留意点」と題して、食品産業分
「食事バランスガイド」活用セミナーの様子(2月25日)
野における「食事バランスガイド」活用セミナーを2月25日に関東農政局で開催した。(講
師:女子栄養大学・大学院教授博士(栄養学)武見ゆかり氏)
この他、管内農政事務所においても計9回開催した。
また、「食事バランスガイド」をより身近に感
じ活用することにより、「日本型食生活」の普及
を図るため、各地域における地元産食材や料理
を使った「地域版食事バランスガイド」を消費
者等を対象にした各種イベント等において配布
し、説明等を行った。
なお、「地域版食事バランスガイド」は、関東農
政局ホームページの「食育ひろば」(http://www.ma
ff.go.jp/kanto/syo_an/seikatsu/balance_area/ind
ex.html)に掲載している。
-- 84
84 -
地 域 版 食 事 バ ラ ン ス ガ イ ド の 例( 多 摩 市 )
第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
(4)食育推進ネットワークの活動を進める取組
関東農政局では、食に関心のある方々や食育を
実践している方々の間で、取組内容等の情報交換
を行えるようにするため、15年12月に管内各都県
ごとに「食育推進ネットワーク」を立ち上げた。
当ネットワークの参加者は、管内1都9県で
1,280機関・団体等(22年3月末現在)で、学校、
消費者団体、医療・栄養団体、食育ボランティア、
NPO、民間企業、個人等と幅広いものになって
いる(表Ⅰ-3-1)。
さいたま食育推進ネットワーク交流会
これらネットワークのうち、さいたま食育推進
( 1 月 19日 )
ネットワークでは、1月19日に関東農政局におい
て、「さいたま食育推進ネットワーク交流会」を開催した。交流会では、「先進的な取り
組みから学び、埼玉の食育を広げよう!」をテーマに、先進的な取り組みである「S食
育ネット(注1)」の活動事例を紹介するとともに、会場の参加者と情報交換を行った。この
他、管内農政事務所においても、このような交流会を計9回開催した。
また、毎月19日の「食育の日」には、メールマガジンなどの形で「食育ネット通信」を
ネットワーク参加者へ配信し、新しい施策や参加者の主催するイベントの紹介等の情報提
供を行っている。
表Ⅰ-3-1 管内各都県における「関東地域食育推進ネットワーク」
茨城食育推進ネットワーク
食育ネットとちぎ
群馬地域食育推進ネットワーク
さいたま食育推進ネットワーク
関東地域(ちば)食育推進ネットワーク
東京食育推進ネットワーク
神奈川食育推進ネットワーク
食育推進ネットワークやまなし
食育情報リンクネットながの
関東地域食育推進ネットワーク(静岡)
-- 85
85 -
第Ⅰ章
ネットワークの名称
第2部
注1:坂戸保健所管内を中心に食育活動を行っている人達が、活動を充実するために協力しあえる仲間づ
くりを目的に結成したネットワーク。(2004年~)
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
(5)地産地消の取組
①
関東農政局の取組
「地産地消」は、地域の消費者ニーズに即応した農業生産と、生産された農産物を地域
で消費しようとする活動を通じ、農業者と消費者とを結びつける取組であり、消費者に、
農業者と「顔が見え、話ができる」関係で地域の農産物・食品を購入する機会を提供する
とともに、地域農業や関連産業の活性化にも資する取組として進めている。
また、地産地消は、地場農畜産物の選択機会が増えることにより、食料自給率の向上に
寄与することから、「食料・農業・農村基本計画」(平成22年3月閣議決定)においても、
重点的に取り組むべき事項として位置づけられている。
このため、関東農政局新基本法農政推進本部地産地消推進部会としても、管内における
地産地消の取組への各種支援や情報提供を通じ、農業者と消費者の顔が見える関係づくり
及び食料自給率の向上に資するため、局内関係部課の連携のもと、推進に取り組んでいる。
ア
平成21年度補正予算「地産地消・産直緊急推進事業」活用支援
地産地消や大都市への直売などの取組を緊急的に拡大し、地域に所得や雇用の機会を創
出するため、都市部等における直売所の整備やインショップの展開、公園等での仮設型の
直売施設の試験展開等を支援する「地産地消・産直緊急推進事業」が21年度補正予算で措
置がされた。その周知を図るため、各農政事務所農政推進課を窓口として説明会を開催す
るとともに事業希望者への相談を通じ推進をしてきた。
その結果、関東管内では1都8県から40事業実施主体が21年度事業に取り組んだ。取組
内容では、直売所の機能強化として、①直売所から生産者へ即時に売り上げ情報を提供す
るPOSシステムの導入が最も多く②大型冷凍・冷蔵庫③ショーケース、商品陳列台、ラベ
ルプリンター等の整備がされた。
イ
地産地消の取組事例の収集と情報提供
21年度における地産地消優良活動表彰については、管内1都6県から9事例が推薦され、
関東農政局地産地消推進部会ワーキンググループによる審査を経て、4団体を「全国地産
地消推進協議会」へ中央推薦した。
その結果、関東管内からは2事例が農林水産省生産局長賞を受賞し、(社)全国農業改良
普及支援協会(21年度の全国地産地消推進協議会の事務局)のHPに掲載され、関東農政
局HPからもリンクして情報提供を行っている。
②
各都県における取組
これまで培われてきた地場農産物消費を増やす「地産地消の日」や、地場農産物を販売
する協力店認定等の取組が益々拡大され、各地域でのイベントとして定着しつつある。
特に、21年度は補正予算「地産地消・産直緊急推進事業」の中で、「学校給食地場農畜
産物利用拡大事業」が措置され、管内では6県で取り組むことになった。この事業は、学
校給食での地場農畜産物の利用拡大メニューの開発・原料費等に対して助成をするもので
あり、事業実施期間は21年度~22年度の2年間となっている。本事業を利用して地場の野
菜や肉類等の利用拡大を図る献立の導入に取り組んでいる。
-- 86
86 -
第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
第4節
食の安全と消費者の信頼確保
(1)消費・安全行政の推進
消費・安全行政を推進するとともに、消費者をはじめ関係者への情報提供を行う。
平成21年度において、関東農政局は、引き続き、農薬等の生産資材の適正使用・管理、
家畜防疫体制の強化、牛トレーサビリティ制度の適正な運用、GAP推進体制の整備、食
品表示の監視業務等を行った。
また、食品の安全確保にかかる業務を推進するためには地方自治体との連携が重要なこ
とから、農林水産省の取組方針や各都県の実情等について意見交換等を行う、管内各都県
の担当者との連絡会議を開催した。
なお、食品の危害に関する情報やインフルエンザ関連情報(鳥インフルエンザ等も含む)
などについて、消費者団体等へ適宜、情報提供を行った。
(2)リスク管理の推進
①
農作物のリスク管理等を推進するための調査の実施
農作物のリスク管理等を推進するため、カドミウム、ヒ素、かび毒、かび毒産生菌、農
薬の実態調査を実施
有害化学物質の実態調査
関東農政局では、産地段階における農作物のリスク管理等を的確に行うため、平成21年
○
国内産米穀のカドミウム実態調査(モニタリング)
産地におけるカドミウム低減対策の効果を検証することを目的とした実態調査(16点)
を行った結果、食品衛生法の1.0ppm以上のカドミウムを含む米穀は検出されなかった。
また、食品衛生法上の問題はないが、消費者感情に配慮して食用として流通しないよう
措置している0.4ppm以上1.0ppm未満のカドミウムを含む米穀も検出されなかった。
○
国内産米穀及び畑作物中カドミウム実態調査(サーベランス調査)
22年にJECFA(注)においてカドミウムの毒性の再評価が行われており、結果によってはカ
ドミウム国際基準が見直される可能性がある。一方、国内では22年4月8日に米のカドミ
ウムの食品衛生法上の規格基準が現行の1.0ppm未満から0.4ppm以下へ改正され、23年2月
28日から施行される予定である。また、畑作物については、厚生労働省が3~5年後に食
品衛生法上の規格基準設定の必要性等について検討を行うこととされている。
このため、農林水産省は、食品中のカドミウムにかかる国際基準及び国内基準の検討に
当たっての基礎資料とするため、21~22年にかけて国内産米穀及び畑作物中のカドミウム
含有実態を詳細に調査することとし、21年度は全国で、米穀が1,000点(うち関東で188点)、
注:JECFA:FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会
食品添加物、汚染物質及び動物用医薬品の安全性の評価を行う国際機関。
-- 87
87 -
第Ⅰ章
度に有害化学物質であるカドミウム、ヒ素、かび毒について調査を行った。
第2部
ア
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
畑作物が20品目3,480点(うち、関東で17品目1,053点)の試料採取を行った。
○
水田土壌、米及び稲わらのヒ素含有量調査
21年度から食品安全委員会によるヒ素の食品健康影響評価の審議が開始されたこと、過
去の農林水産省の実態調査や厚生労働省のトータルダイエット調査の結果から、農産物か
らのヒ素の主要な摂取源は米であること、また米のカドミウム低減のための湛水管理にお
いてカドミウムとヒ素がトレードオフの関係にあること、21年度から食品安全委員会によ
るヒ素の食品健康影響評価の審議が開始されたこと等に対応すべく、水田土壌、米及び稲
わらのヒ素含有量調査を行った。全国で湛水管理実施水田、湛水管理非実施水田から各試
料を約250点ずつ(うち、関東は12点)採取した(分析結果は、農林水産省でとりまとめ
中)。
○
米麦のかび毒実態調査
農林水産省は、「麦類のDON・NIV汚染低減のための指針」(20年12月17日付け20消安
第8915号、20生産第5731号農林水産省消費・安全局長、生産局長連名通知)を策定し、赤
かび病の適期防除、赤かび病被害粒の選別等の取組を推進し、より一層の汚染低減に取り
組んでいるところである。
このリスク管理措置の効果の検証及び検討の基礎資料に資することを目的に、デオキシ
ニバレノール、ニバレノール、オクラトキシンA等の米麦のかび毒実態調査を行った。全
国の試料採取点数は420点(うち、関東で97点)であり、栽培管理の聞き取り調査の上、
試料を採取した(分析結果は、農林水産省でとりまとめ中)。
イ
国内ほ場土壌のかび毒産生菌調査の実施
アフラトキシンやオクラトキシンAの産生菌の全国的な分布を把握すべく田の土壌の実
態調査を行った。全国の試料採取点数は480点(うち、関東で93点)であり、作付面積に
応じて試料採取を行った(分析結果は、農林水産省でとりまとめ中)。
ウ
農薬の使用状況調査及び残留実態調査
関東農政局では、リスク管理にかかる施策の企画・立案等のための基礎資料等を得る
ため、21年度は農産物について、農家等での農薬の使用状況調査を行った。その結果、
農薬を不適正に使用した事案については、地方農政事務所が当該生産者に、農薬の適正
使用を徹底するよう指導した。
②
生産資材の適正な使用・管理の推進
生産資材の適正な使用・管理について、法制度等の周知を図った
ア
ポジティブリスト制度の啓発
食品衛生法等の一部を改正する法律(15年法律第55号)により、18年5月29日から農薬、
飼料添加物と動物用医薬品について、食品への個別の残留基準値が設定されていない場合
であっても、これらが一定量以上含まれる食品の販売等を原則禁止する制度(いわゆる「ポ
ジティブリスト制度」)が導入された。
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第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
同制度の施行に伴い、防除対象の農作物の農薬が飛散(ドリフト)して、当該農薬の残
留基準が設定されていない周辺の農作物に付着するという意図しない汚染から、基準値違
反が発生する可能性があり、農薬の飛散低減対策を講じる必要がある。このため、関東農
政局では、農薬の使用基準を遵守し周辺に飛散することがないよう注意するなど、農薬の
使用状況等の調査の機会に関係者への啓発を行った。
イ
農薬の適正使用の取組
関東農政局管内では、20年度、数例の農産物において農薬残留基準値を超過した事案が
発生した。このため、関東農政局では、都県等の原因究明や再発防止に向けた取組に対し
て支援を行うとともに、残留基準値の超過に至った原因(農家の誤使用、散布器具の不洗
浄等)を踏まえ、生産現場における適正な農薬選定・農薬使用等についての周知を図った。
また、関東農政局では、農薬登録が行われていないにもかかわらず農薬効果を標榜する
などのラベル表示のある資材について、是正を行うよう製造者、販売者に指導を行った。
病害虫防除対策の推進
③
効果的かつ安全な防除技術確立のための技術的な検討等を実施
ア
ウメ輪紋ウイルス(プラムポックスウイルス・PPV)のまん延防止対策の実施
21年4月、東京都青梅市のウメの樹に、これまで我が国で報告がなかったウメ輪紋(プ
省は、本ウイルスの発生状況について全国調査を行った。その結果、東京都あきる野市、
が確認された。
その後、水戸市及び小田原市では感染樹を直ちに処分した。また、東京都で感染樹が確
認された5地区では22年2月より、植物防疫法に基づき宿主植物の防除区域内からの移動
制限等を内容とする緊急防除を行うこととし、円滑に実施されるよう関係者への助言・指
導等が行われた。
注:モモ、スモモなどのサクラ属植物にアブラムシの媒介により感染する植物ウイルスで、感染により葉
に退緑斑点や輪紋が生じるほか、果実の表面に斑紋が現れ、商品価値が損なわれたり、成熟前の落果に
より減収するとの報告がある。
イ
難防除病害虫対策の検討
近年、微少害虫が媒介するウイルス病の発生が顕著となる中、その防除対策が急務とな
っている。そのうち、コナジラミ類やアザミウマ類はウイルスを媒介するのみならず、作
物への加害も問題となっている。このため、関東農政局は、21年11月管内各都県の病害虫
防除担当者等関係者を参集した検討会を開催し、昆虫媒介性ウイルスの発生及び被害状況
の把握を行うとともに、その防除上の課題、導入可能な防除技術についての検討を行った。
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第Ⅰ章
八王子市、奥多摩町、日の出町、茨城県水戸市及び神奈川県小田原市のウメの樹にも感染
第2部
ラムポックスウイルス・PPV)(注)による植物の病気の発生が確認されたため、農林水産
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
ウ
総合的病害虫・雑草管理(IPM)の普及・推進
近年、化学農薬の使用により抵抗性を有する病害虫の防除が困難となっているため、こ
れまでの化学農薬の使用を主体とする防除のみならず、天敵生物の利用、光や熱の利用
等様々な防除技術を組み合わせた、「総合的病害虫・雑草管理(IPM:Integrated Pest M
anagement)
」の普及・推進を行うこととし、「食の安全・安心確保交付金」により、防除
技術の確立や実証に係る経費についての支援を行うとともに、管内各都県における取組事
例の把握に努めた。
エ
無人ヘリコプターを利用した病害虫防除における安全対策
近年、病害虫防除を目的とした無人ヘリコプターの利用増加に伴い、住宅地周辺等での
利用における安全対策の強化が求められている。このため、管内各都県におけるの無人ヘ
リコプターによる病害虫防除実施状況を把握するとともに、利用上の安全対策の強化策と
して、生産者、周辺住民、行政機関等をメンバーとする協議会等の組織作りの推進等につ
いて、関係者に対する指導を行った。
農業生産工程管理(GAP)の推進
④
農業生産工程管理(GAP)の導入・促進
ア
GAPの推進に向けて
農林水産省は、20年1月「GAP手法導入マニュアル」を策定し、産地においてGAP
(注)
に取り組む上で必要となるGAPの考え方、導入手順・効果等を示した。
また、より一層の推進を目的として、21年度においては、農林水産省が我が国における
GAPの共通の基盤としての食品安全、環境保全、労働安全に係る標準的なGAPを作成
するため、
「農業生産工程管理(GAP)の共通の基盤づくりに関する検討会」を開催し、
標準的なGAPの検討を進めている。
今後は、本検討会で決定された、GAPの共通基盤部分に関するガイドラインを普及す
ることで、より一層GAPを推進していくこととなる。
このような取組を通じ、23年度までに、全国のおおむね全ての主要産地である2千産地
でGAPの導入を目指すこととしている。
注:農業生産工程管理(GAP:Good Agricultural Practice)
農業生産活動を行う上で必要な関係法令等の内容に則して定められる点検項目に沿って、農業生産活
動の各工程の正確な実施、記録、点検及び評価を行うことによる持続的な改善活動のこと。
イ
管内の取組状況
関東農政局では、ホームページ上で管内におけるGAPの先進的な取組事例等を提供し、
GAP取組の効果等を生産者のみならず、消費者、実需者等にも広く周知を行っている。
さらに、管内都県においては、「食の安全・安心確保交付金」を活用し、①GAP推進
協議会などの推進体制の整備、②GAPの導入・推進のための地域版マニュアルの策定、
③地域版マニュアル策定のための実証ほ場の設置等を行っている。また、農政事務所にお
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第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
いても、GAPをテーマとする消費者等との意見交換会を開催している。
このような取組により、管内のGAPに取り組む産地は、21年3月末現在、279産地とな
っており、前回調査(20年7月末日時点)の約2倍となっている。今後も引き続きGAP
に取り組む産地をより一層拡大していく必要がある。
事例:「ハラダ製茶株式会社」における取組
静岡県島田市において製茶工場を経営している「ハラダ製茶株式会社」では、20年4
月より「農業生産法人 株式会社ハラダ製茶農園」を設立し、茶園の管理及び荒茶の製造
を行っている。ハラダ製茶農園では、自社農園だけではなく茶葉を生産する契約農家も
含めて、GLOBALGAPおよびJGAPの団体認証を取得している。
認証を取得する過程では、食品安全、環境保全、労働安全に対するそれぞれのリスク
を評価し、管理基準を明確にすることができた。その結果、第三者認証のGAPを取得
することができ、特に食の安全性が高いレベルで管理されていることを取引先にわかり
やすく説明することができるようになった。
(3)リスクコミュニケーション等の推進
リスクコミュニケーション等を実施し、消費者関連情報を提供
食品安全行政においては、政策の策定過程の公正性と透明性を確保し、国民の意向の反
業者など関係者の間で、情報・意見を相互に交換するリスクコミュニケーションを図るこ
関東農政局では、「体細胞クローン技術の取扱いに係る農林水産省の対応方針等に関す
る説明会」(21年7月)、「食品の安全とリスク」のセミナー(10月)、「埼玉県消費者団体
との意見交換会」(7月、22年1月)を開催した他、管内の各地域段階においても、各地方
農政事務所が「消費者団体懇談会」(6月、東京都千代田区)、「リスク管理セミナー」(8
月、栃木県宇都宮市)、
「食の安全・安心セミナー」(9月、群馬県桐生市)等を開催した。
このように、主に消費者を対象に「食の安全と消費者の信頼確保」をテーマとした意見交
換、農薬やGAPなどをテーマとしたリスク管理セミナー、食品表示等の制度に関する食
品表示セミナーなどの意見交換会等を計156回開催した。
また、消費者団体等が開催する食の安全等に関する講習会等に講師として農政局職員を
計485回派遣した。
なお、関東農政局では、消費者重視の観点から、食の安全、食育、農業・農村に対する
消費者の理解の醸成を図るための取組・イベント等の内容について、ホームページ(http:
//www.maff.go.jp/kanto/syo_an/index.html)等で情報を提供している。
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第Ⅰ章
とが重要である。
第2部
映を図るため、リスク分析の全過程において、リスク評価者やリスク管理者が消費者、事
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
(4)消費者の信頼の確保
①
牛トレーサビリティ制度の監視・指導
牛トレーサビリティ制度の監視・指導等により、牛肉に対する消費者の信頼の確保に努
める。
農林水産省は、牛海綿状脳症(BSE)のまん延防止措置の的確な実施や牛肉に対する
消費者の信頼確保を図るため、牛を個体識別番号により一元管理し、生産から流通・消費
の各段階で当該個体識別番号を確実に伝達するために、牛トレーサビリティ制度を構築し
ている。
関東農政局では、本制度の信頼性を確保するため、生産段階での耳標の装着や所定の届
出の徹底を図るとともに、流通段階における、適正な個体識別番号の表示・伝達及び帳簿
の備え付けについて指導を行った。
②
高病原性鳥インフルエンザ発生時への対応
高病原性鳥インフルエンザ発生時等の緊急時に、迅速な対応が可能な体制を構築し、早
期に事態の収拾を図る。
農林水産省では、国内で高病原性鳥インフルエンザが発生した場合には、「高病原性鳥
インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針」(16年11月18日農林水産大臣公表)に
基づき、迅速な患畜・疑似患畜の殺処分や関係施設周辺の移動制限等の防疫措置を行い、
早期に事態の収拾を図ることとしており、関東農政局においても、本病の対策マニュアル
を備え、迅速な対応を行う体制を構築している。
また、本病発生時において、都県等と国が一体となって迅速かつ適切な対応を行えるよ
う、各都県が開催する防疫演習会等に参加し、本病発生に際しての対応について意見交換
を行った。
21年2月に愛知県において高病原性鳥インフルエンザが発生した際には、5月の移動制
限等の規制が解除されるまでの間、管内各都県と連携のうえ情報収集等を行うとともに、
管内の小売店等における「当店では愛知県産のうずらの卵は扱っておりません」などの不
適切な表示等に対する監視活動を実施し、不適切な表示等に対しては、小売店舗について
是正指導及び正確な情報提供等の啓発を行ったほか、一般消費者に対しても正確な情報の
提供を行った。
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第Ⅰ章 食料自給率の向上と健全な食生活に向けて
(5)食品表示の適正化
生鮮食品等の表示調査等の実施、食品表示110番及び食品表示ウォッチャーの情報を活
用した任意調査等の実施により食品表示の適正化を推進
関東農政局では、管内都県の「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」
(JAS法)担当部局や食品衛生担当部局、(独)農林水産消費安全技術センター等の関係
機関と連携を図りながら、小売店舗等の生鮮食品等の表示調査を実施し、適正な表示が行
われるよう啓発・指導等を行った。
また、生鮮食品等の表示調査のほか、食品表示110番、食品表示ウォッチャーからの情
報を活用して法令違反の疑いのある業者に対し任意調査等を実施し、法令違反が確認され
た業者については、指示・公表を行うなど、厳正に対処した。
さらに、食品表示制度の普及・啓発を図るため、埼玉県及び東京都において、食品の
製造業者、流通・小売業者を対象とした説明会に講師として参画するとともに、都県ごと
に消費者や食品事業者向けのセミナーを開催した。また、要請に応じて消費者や事業者が
主催する説明会等に講師派遣を行った。
①
ア
巡回点検調査による食品における表示調査の実施
一般調査(生鮮食品、加工食品)
一般調査として、日常的に生鮮食品の名称や原産地、加工食品の原材料の原産地等の表
21年度は、小売業者約13,000店舗を対象に実施し、不適正な表示や表示の欠落のあった
況等の調査を実施し、不適正な表示が認められた業者に対し改善指導を行った。なお、生
鮮食品の調査と併せて実施した加工食品の調査については、約34,000商品を対象に調査を
実施し、原料原産地等で不適正な表示が認められた業者に対し改善指導等行った。
一般調査における不適正な表示や表示の欠落のあった店舗の割合は、20年度は名称で5
%、原産地表示で11%であったものから、21年度は名称で5%と横ばいであったが、原産
地表示では10%と昨年度より1ポイント改善されている。
イ
一般調査(有機農産物、特別栽培農産物等)
小売業者に対する一般調査の際、有機農産物、特別栽培農産物、「無農薬」等の表示が
付された農産物の調査を実施した。
有機農産物については、小売業者で取扱いのあった約2,600店舗に対して調査を実施し、
不適正表示(注1)のあった管内業者に対し改善指導を行った。
さらに、特別栽培農産物(注2)、「無農薬」表示農産物等については、店舗における表示
根拠の確認を行うとともに、表示根拠に不適正な行為の疑いのあった流通業者及び生産者
に対する遡及調査を実施し、不適正表示のあった業者に対して改善するよう啓発を行った。
なお、有機農産物等の調査を実施するに当たっては、約60件の有機農産物等の買上げを
行い、(独)農林水産消費安全技術センターに残留農薬の分析を依頼した。
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93 -
第Ⅰ章
店舗に対し改善指導を行った。さらに、中間流通業の約1,600業者を対象に表示の伝達状
第2部
示実施状況の調査を実施している。
第2部 ( 動向編 ) 関東食料・農業・農村の動向
注1:有機JASマークが付されていない農産物には「有機」である旨を表示することはできない。
注2:「特別栽培農産物」:地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の
使用状況)に比べて、節減対象農薬の使用回数が5割以下及び化学肥料の窒素成分量が5割以下で栽培
された農産物のこと。
ウ
特別調査
特別調査として、品目を特定して、小売業者を対象に店舗における表示状況調査を以下
のとおり実施した。
「そば加工品」の原材料表示の真正性等について、21年7月から調査を実施するととも
に、「21年産袋詰精米」にかかる表示について、21年10月から調査を実施した。
なお、これらの調査において表示の根拠に疑義が生じたものについては、表示根拠の確
認のため、製造業者や中間流通業者等への遡及調査を実施した。
②
消費者と連携した監視
食品表示に対する消費者の関心の高まりを踏まえ、関東農政局では、JAS法に基づく
品質表示等の一層の適正化を図る観点から、広く国民から情報提供を受けるためのホット
ラインを関東農政局及び管内農政事務所に設置し、14年2月から運用を開始している。21
年度は食品表示に関する情報提供や問い合わせ等約6,300件(20年度約5,700件)に対応し
た。
また、消費者が日常の購買活動を通じて小売店における食品の表示状況をモニタリング
する食品表示ウォッチャーを14年度から委嘱しており、21年度は、約360名の食品表示ウ
ォッチャーが管内10都県で活動を行った。
③
立入検査、任意調査等
食品表示110番、食品表示ウォッチャー等の情報を活用し、食品表示について法令違反
の疑いのある業者に対し立入検査、任意調査等を行い、法令違反のあった業者に対して指
示・公表するなど、改善指導を行った。
④
食品表示制度の普及・啓発
関東農政局では、21年11月、22年1月、2月(3回)、埼玉県さいたま市で、1月(1回)には
東京都で、それぞれ説明会(食品表示適正化技術講座)に講師として参画し、食品の製造業
者、流通・小売業者への食品表示制度の普及・啓発を行った。
説明会では、食品の製造業者若しくは流通・小売業者の対象業者別に、適正な食品表示
を行うための表示方法等について説明し、参加者の食品表示についての理解を深めた。
また、各都県において、消費者、事業者等を対象とした食品表示セミナー等を開催する
とともに、事業者等からの要請を受けた講師派遣等実施し、食品表示制度の普及・啓発を
図った。
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